社員が使う業務システムやクラウドサービスのログインを、いまもパスワードだけで守っていないでしょうか。パスワードの使い回しや漏えい、リセット対応の負担は年々重くなり、フィッシングや認証情報の窃取による不正ログインの脅威も続いています。
こうした課題の解決策として、パスワードそのものをなくすパスキー(FIDO2)対応のパスワードレス認証が広がっています。では、数あるサービスの中から、自社の環境に合うものをどう選べばよいのでしょうか。
本記事では、社員の業務システム・クラウドのログイン保護を目的に、パスキー(FIDO2/WebAuthn)に対応したパスワードレス認証サービスを比較・解説します。対応方式や既存ID基盤(Active Directory・SAML・IDaaS)との連携、提供形態、料金、導入支援まで整理し、自社に合う候補を絞り込むための材料としてご活用ください。
また、自社の状況に合わせて最適なサービスを最短で見つけられるよう、「30秒で終わる選定診断ツール」をご用意しています。ぜひこちらもご活用ください。
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目次
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パスキー(FIDO2/WebAuthn)によるパスワードレス認証とは|仕組みとフィッシング耐性
ここでは、サービスを選ぶ前提として、パスキー(FIDO2/WebAuthn)がどのような仕組みで、なぜフィッシングに強いのかを整理します。

パスキーは、FIDO Alliance が策定した FIDO2 と、その中核であるブラウザ標準の WebAuthn(Web Authentication)にもとづく認証情報です。パスワードのように共有する秘密を使わず、公開鍵暗号(公開鍵と秘密鍵のペア)によって本人であることを証明します。
サービス側(サーバー)が保管するのは公開鍵だけで、秘密にあたる情報を持ちません。FIDO Alliance は、この仕組みを次のように説明しています。
パスワードを暗号化キーのペアに置き換えることで、フィッシングに強いサインインセキュリティとユーザーエクスペリエンスの向上を実現します。
出典:パスキー:パスワードレス認証|FIDO Alliance
ログイン時は、秘密鍵で署名したデータをサービス側が公開鍵で検証します。秘密鍵は利用者の端末や認証器の中にとどまり、規格上も、資格情報の秘密鍵は原則としてそれを生成した認証器から出ないことが想定されています。
フィッシングに強い理由は、鍵ペアがサイト(ドメイン)ごとに結び付けられる点にあります。偽サイトには正規サイト用の署名を渡せないため、利用者が気づかずに偽サイトへ誘導されても認証が成立しません。WebAuthn の仕様は、資格情報が利用先のサービス(RP)ごとに限定されることを次のように定めています。
Conceptually, one or more public key credentials, each scoped to a given WebAuthn Relying Party, are created by and bound to authenticators as requested by the web application.
出典:Web Authentication: An API for accessing Public Key Credentials Level 3|W3C
フィッシング耐性は公的な指針でも重視されます。米国の NIST SP 800-63B は、フィッシングを「検証者なりすまし(verifier impersonation)」と位置づけ、これに耐える方式を上位の保証レベルの要件とします。国内でもデジタル庁の本人確認ガイドライン(DS-511)が、リアルタイムフィッシングを防ぐ手法としてパスキーや公開鍵基盤(PKI)型の認証を挙げています。
出典・参考資料(2件)
パスワード認証の限界とパスキーが解決すること
パスワード認証には、仕組みに由来する弱点があります。利用者が同じパスワードを複数のサービスで使い回せば、一つの漏えいが連鎖的な不正ログインにつながります。推測や総当たり、フィッシングによる窃取のリスクも避けられません。
運用面でも負担は小さくありません。定期変更やリセット対応、複雑なパスワードポリシーの維持は、情報システム部門とヘルプデスクの工数を押し上げます。
パスキーは、これらの弱点の多くを解消します。利用者とサービスの間で共有する秘密がそもそも存在しないため、使い回しや漏えいの対象になるパスワードがなく、リセットや変更に伴う運用負担も生じません。フィッシングへの強さは、前述の仕組み(ドメインごとに分かれる鍵)によって確保されます。
パスキー認証を導入するメリット(フィッシング耐性・運用負荷の軽減・利便性)
ここでは、パスキーを導入したあとに企業が得られる効果を、運用とログイン体験の面から整理します。
不正ログインのリスクが下がります。前述のとおり盗める共有の秘密がなく、フィッシングにも強いため、アカウント乗っ取りに起因する被害の抑制が見込めます。
運用の負担も軽くなります。パスワードの定期変更やリセット対応が減り、問い合わせ件数の削減につながります。パスワードポリシーの維持管理から解放される点も、情報システム部門にとっての効果でしょう。
こうした運用負担の軽減について、提供企業のひとつは自社の導入事例を次のように挙げています。

導入と同時にパスワードレス認証に切り替えた企業では、IT部門の業務の約20%を占めていたパスワード関連のヘルプデスク業務が「0%」になったという事例があります。
ログイン体験も改善します。利用者は端末の生体認証やPIN、物理キーでサインインでき、長く複雑なパスワードを覚えて入力する手間がなくなります。
デバイスバインド型と同期型(Synced Passkey)の違い|企業導入の選定の分かれ目
ここからは、企業導入で選定が分かれるデバイスバインド型と同期型(Synced Passkey)の違いを解説します。

パスキーは、鍵の持ち方によって2種類に分かれます。FIDO Alliance は、両者を次のように定義しています。
クラウドサービスを介してユーザーのデバイス間で同期されるパスキーは一般に「同期パスキー」と呼ばれ、単一のデバイス(UAFアプリ上のものを含む)を離れないパスキーは「デバイスバインドパスキー」と呼ばれます。
出典:パスキー:パスワードレス認証|FIDO Alliance
デバイスバインド型は、秘密鍵が単一の端末や物理セキュリティキーから出ません。FIDO セキュリティキー上のパスキーもこれに含まれます。端末や鍵を持つ本人しか認証できないため、フィッシング耐性に加えて鍵の持ち出しにも強い一方、端末や鍵を紛失・故障した際は、別の認証器で再登録する運用が必要になります。
同期型は、クラウドを介して複数の端末に鍵が同期されます。新しい端末でもすぐに使え、端末を買い替えても鍵を引き継げるため、利便性と復元のしやすさに優れます。一方で、同期の経路や同期先アカウントの保護が運用上の論点になります。
どちらが適するかは、自社が守りたい対象の重要度や、端末運用・復旧の体制によって変わります。特権アカウントや高い保証レベルが求められる領域と、一般の業務ログインとで、求める強度と利便性のバランスを見極めて選ぶとよいでしょう。
パスキー対応のパスワードレス認証サービスの種類(用途・提供形態別)
ここからは、パスキーに対応したパスワードレス認証サービスを、用途と提供形態の観点から3つのタイプに整理します。自社がどの入り口から始めるかを見極める手がかりになります。

統合ID管理(IDaaS/SSO)でパスキーに対応するサービス
SSO(シングルサインオン)やID基盤に FIDO2/WebAuthn のパスキー認証を組み込み、多数のクラウドサービスや社内システムのログインを横断でパスワードレス化するタイプです。Active Directory・SAML・IDaaS との連携範囲が広く、複数のサービスを一度の認証でまとめて保護したい組織に向きます。
セキュリティキー・認証器でパスキーを実現するサービス
FIDO2準拠の物理セキュリティキーや認証器を社員に配布し、デバイスバインド型の強い認証を実現するタイプです。秘密鍵が物理デバイスから出ないためフィッシング耐性が特に高く、特権アカウントの保護や、スマートフォンを業務で使えない現場のログインにも適しています。
多要素認証基盤にパスキー(FIDO2)を組み合わせるサービス
既存の多要素認証やアクセス制御の基盤に、パスキー(FIDO2)を認証要素の一つとして加えるタイプです。まず第2要素として導入し、段階的にパスワードレスへ移行する進め方がとれます。デバイスバインド型と同期型のどちらで運用するかを選べる製品もあります。
次のセクションからは、これらのタイプごとに、各サービスの対応方式や特徴を比較表とともに紹介します。しかし、自社がどのタイプに適しているかの判断が難しいこともあります。そのような場合でも最適なサービスを最短で見つけられるよう、「30秒で終わる選定診断ツール」を以下にご用意しています。ぜひこちらもご活用ください。
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パスキー対応のパスワードレス認証サービスを比較【比較表】
ここからは、自社の要件に合わせて客観的に比較・選定できるよう、主要なパスキー対応のパスワードレス認証サービスを一覧で整理します。対応方式や既存ID基盤との連携、提供形態、多要素認証の併用、料金の目安を横並びで確認できます。
「パスワードレス可否」列の見方として、「単独ログイン可」はパスキー単体でパスワードなしにログインできること、「第2要素中心」はパスワード+パスキーの併用を前提とすることを表します。
料金は各社の公開条件どおりに記載しています(2026年10月時点)。円/ユーザー・円/ID・ドル/ユーザーなど課金単位が異なる点にご注意ください(ドル建ては目安です)。
| サービス名 | CloudGate UNO | Okta | Microsoft Entra ID | トラスト・ログイン byGMO | OneLogin | IIJ IDサービス | Gluegent Gate | Extic | Keycloak | a-FILTER | YubiKey as a Service | RSA ID Plus | Soliton OneGate | Cisco Secure Access by Duo | Entrust Identity | SafeNet Trusted Access | JumpCloud | Beyond Identity |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 提供形態 | 統合ID管理(IDaaS/SSO) | 統合ID管理(IDaaS/SSO) | 統合ID管理(IDaaS/SSO) | 統合ID管理(IDaaS/SSO) | 統合ID管理(IDaaS/SSO) | 統合ID管理(IDaaS/SSO) | 統合ID管理(IDaaS/SSO) | 統合ID管理(IDaaS/SSO) | 統合ID管理(IDaaS/SSO) ※OSS・自社構築 | 統合ID管理(IDaaS/SSO) +端末ログオン認証 | セキュリティキー・認証器 (物理キー+サブスク運用) | セキュリティキー・認証器 (MFA/IAMプラットフォーム) | セキュリティキー・認証器 (証明書ベースIDaaS) | 多要素認証基盤に併用 (既存VPN/アプリに後付け) | 多要素認証基盤に併用 (IAM/MFA製品群) | 多要素認証基盤に併用 (IDaaS/アクセス管理) | 多要素認証基盤に併用 (オープンディレクトリ基盤) | 多要素認証基盤に併用 (ワークフォース向けパスワードレス専業) |
| パスキー対応方式 | FIDO2/WebAuthn対応 (生体認証・セキュリティキー) | FIDO2/WebAuthn対応 Okta FastPass(デバイスバインド型) | FIDO2対応(パスキー・セキュリティキー) Windows Hello for Business | FIDO2対応(パスキー、2024年1月提供) 生体認証 | WebAuthn(FIDO2)対応 端末生体認証(Windows Hello・Touch ID) | FIDO2(WebAuthn)対応 (生体認証・YubiKey等) | FIDO/FIDO2の外部デバイス認証・生体認証 | パスキー(FIDO2)対応 (セキュリティキー・Windows Hello・Touch ID) | FIDO2/WebAuthn対応 デバイスバインド型・同期型いずれも可 | パスキー(FIDO)パスワードレス (指紋・顔・PIN) | FIDO2/WebAuthn対応 デバイスバインド型(物理キー) | FIDO2/WebAuthn対応 ハードウェアキー(iShield Key 2・DS100) | FIDO2/WebAuthn対応 (ATKey.Pro等の指紋付きUSBキー) | FIDO2/WebAuthn・パスキー対応 (生体認証・ローミング認証器) | FIDO2/パスキー対応 PKI証明書ベースのパスワードレス | FIDO対応(FIDO U2F・FIDOパスキー) (STAプラン以上) | FIDO2/WebAuthnキーは第2要素 Vaultはパスキーサインイン対応 | デバイスバインド型パスキー(公開鍵暗号) |
| パスワードレス可否 | 単独ログイン可 (全プラン無制限) | 単独ログイン可 | 単独ログイン可 | 単独ログイン可 (SSOへ一度の認証) | 第2要素中心 | 単独ログイン可 | 第2要素中心 | 単独ログイン可 | 単独ログイン可 | 単独ログイン可 | 単独ログイン可 | 単独ログイン可 | 単独ログイン可 | 単独ログイン可 (第2要素からの段階移行) | 単独ログイン可 | 第2要素中心 (スマートSSOで段階強化) | 標準の社員ログインは第2要素中心 (完全パスワードレスはVault・JumpCloud Goの一部機能) | 単独ログイン可 (パスワードを完全排除) |
| 既存ID基盤連携 | AD(Enterprise Plus以上)・SAML・OIDC | AD・SAML・OIDC・SCIM (8,000超のアプリ連携) | AD(ハイブリッド同期)・SAML・OIDC | AD・Entra ID・M365・Google Workspace・SAML・OIDC | AD・LDAP・SAML・OIDC・SCIM (6,000超のアプリ連携) | AD(Directory Sync)・SAML・OIDC | AD・SAML・OIDC (人事システム連携) | AD・LDAP・DB・SCIM・SAML (人事情報起点のID自動生成) | AD・LDAP・SAML・OIDC・OAuth 2.0 | AD・Entra ID・Google Workspace同期・SAML SSO | FIDO2対応のSaaS・ID基盤に対応 (CloudGate UNO連携) | SAML・OIDC・RADIUS クラウド/オンプレ ディレクトリ | AD・Entra ID連携・SAML(連携数無制限)・OIDC | 既存VPN・RDP・オンプレ/クラウドアプリにMFA後付け・SAML | SSO/フェデレーション対応 クラウド/オンプレ・ハイブリッド | SSO・SAML SaaS・VPN・VDI・オンプレアプリを保護 | AD連携(ADI・双方向同期)・SAML・OIDC・SCIM | 既存の認証基盤に重ねて導入 (Okta・Ping Identity等と連携) |
| 多要素認証の併用 | OTP・生体認証・セキュリティキー等と併用可 | Adaptive MFA(リスクベース)等と併用可 | 条件付きアクセス(P1以上)等と併用可 | OTP・プッシュ通知・顔認証等と併用可 | SmartFactor(アダプティブ認証)等と併用可 | デバイス証明書・メールOTP・SmartKey等と併用可 | パスワード・ICカード・証明書等と組合せ可 | TOTP・メールOTP等と併用可 | WebAuthn等と組合せ可(要構築) | 認証アプリ・ICカード・QRコード等と併用可 | PIV・OTP・OpenPGP等にも対応 | 生体・プッシュ・OTP・RSA Risk AI等と併用可 | クライアント証明書・顔認証・ICカード・スマホ認証等と併用可 | Duo Push・OTP・デバイス健全性チェック等と併用可 | OTP・モバイルプッシュ・スマートカード・AI顔認証等と併用可 | OTP・プッシュ・SMS/音声・PKI証明書等と併用可 | TOTP・プッシュ・JumpCloud Go等と併用可 | —(デバイスバインド型パスキー単体でパスワードレス完結。デバイスポスチャ検証を付加) |
| 導入支援 | 30日間無料トライアル 国産・日本語サポート | 30日間無料トライアル Okta Japanが提供 | 30日間無料トライアル 日本マイクロソフトが日本語対応 | 無料SSOフリープランあり 国産・日本語サポート | 30日間無料評価版 国内代理店(サイバネット等)経由 | 初期費用0円 国内通信事業者IIJが自社運用 | 国産IDaaS(サイオステクノロジー) | 無料トライアルあり 国産IDaaS(エクスジェン) | ソフトウェアは無償(要構築) 商用サポートはRed Hat・NRI | 無料試用版あり 国産メーカー(デジタルアーツ) | キッティング・初期設定代行 予備キー・CSM支援(サブスク付帯) | 無料トライアルあり 国内代理店(テクマトリックス等)経由 | 30日間無料トライアル 国産(ソリトンシステムズ) | 10ユーザーまで無料Freeプラン 30日間無料トライアル/国内代理店経由 | 国内はエントラストジャパン・日立ソリューションズ等経由 | 無料評価トライアルあり 国内はタレスDIS・キヤノンMJ等経由 | 30日間無料トライアル 国内は代理店(アクト等)経由・日本語対応 | 国内は三井情報・SCSK等の代理店が日本語対応 |
| 料金の目安 | 月額400〜600円/ユーザー(税抜) | 月額940円/ユーザー〜(税抜) | 無償版あり 条件付きアクセスはP1(月額1,049円/ユーザー)〜 | 無料プランあり パスキーはSSOプロ(月額300円/ID・税抜) | 要問い合わせ(代理店により異なる) | 月額120円/ID〜 (SSO+MFAで240円/ID・税抜) | 月額100円/接続〜 (Professional 250円/ユーザー・税別) | 月額300円/ID〜 パスキーはオプション(月額50円/ID〜・税別) | ライセンス無償(OSS) 運用・サポートは自社/商用契約 | 月額500円/ユーザー(税別・年間契約) | 要問い合わせ (サブスク、最低200ライセンス) | 月額3〜7ドル/ユーザー (最上位は要問い合わせ) | 月額150円/ユーザー〜(PKIプラン・3段階) | 無料プランあり Essentials 月額3ドル/ユーザー〜 | 要問い合わせ(個別見積もり) | 要問い合わせ(オールインクルーシブ) | 要問い合わせ(米ドル建て/国内は代理店見積もり) | 要問い合わせ(国内は代理店の個別見積もり) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | 公式サイトをご覧ください | 公式資料を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | 公式サイトをご覧ください |
サービス個別紹介
ここからは、比較表で取り上げた各サービスを、タイプ別に詳しく紹介します。対応方式や連携範囲、提供形態の違いに注目して読み進めてください。
統合ID管理(IDaaS/SSO)でパスキーに対応するサービス
まずは、SSOやID基盤にパスキーを組み込み、複数のシステムを横断で保護するサービスです。
1. CloudGate UNO(株式会社インターナショナルシステムリサーチ)

株式会社インターナショナルシステムリサーチが自社開発する、SSO・多要素認証・アクセス制限・ID管理を統合したクラウド型のID管理基盤(IDaaS)です。2008年のSSOサービス提供開始後、2014年にFIDOアライアンスへ加盟し、2019年にFIDO2準拠のパスワードレス認証を提供開始しました。
一度の認証で複数のクラウドサービスへアクセスするSSOに、パスキー(FIDO2/WebAuthn)認証を組み込める構成です。生体認証やPINはデバイス側で検証し、検証結果のみをサーバーへ送るため、生体情報はネットワークを流れません。パスキー認証は上位プラン限定とせず、全プラン・全ユーザーで無制限に利用できます。
連携はSAML 2.0・OpenID Connect・フォームベース認証に対応し、Active Directory連携はEnterprise Plus以上で利用できます。月額料金はStandard Plus 400円・Enterprise Plus 500円・Smart Pack 600円(いずれも税抜、1ユーザーあたり)で、30日間の無料トライアルを用意しています。
2. Okta(Okta Japan株式会社)

米Okta, Inc.が開発し、日本ではOkta Japan株式会社が提供する従業員向けのクラウド型ID管理基盤(IDaaS)です。シングルサインオン・多要素認証・ユーザーディレクトリ・IDライフサイクル管理を統合しています。
パスワードレスでフィッシング耐性を持つ認証として、FIDO2/WebAuthn(ハードウェアキー・パスキー)と、デバイスの暗号鍵と生体認証を使う独自の「Okta FastPass」に対応します。アクセスのたびにデバイスや位置情報などのリスクを評価するAdaptive MFAも組み合わせられます。
SSOはOpenID ConnectとSAMLに対応し、オンプレミスのActive Directory連携や8,000以上の構築済みアプリ連携(OIN)を備えます。料金はStarter(月額940円/ユーザー)から複数のスイートがあり、リスクベースのAdaptive MFAはCore Essentials(月額2,020円/ユーザー)以上に含まれます。30日間の無料トライアルも利用できます。
3. Microsoft Entra ID(日本マイクロソフト株式会社)

Microsoft 365やAzureの認証基盤を担う、クラウド型のID・アクセス管理(IAM)サービスです。これらを既に利用している組織は、追加導入なしにSSO・多要素認証・条件付きアクセスを有効化できます。
多要素認証の方式として、パスキー(FIDO2)、Microsoft Authenticatorでのパスキー、Windows Hello for Businessなどに対応します。公式は、同期パスキーを従来のMFAに代わる手段と位置づけ、FIDO2セキュリティキーを規制業界や特権ユーザー向けに挙げています。
ユーザー・場所・デバイス・サインインリスクに応じてアクセスを制御する条件付きアクセスや、Active Directoryとのハイブリッド同期を備えます。条件付きアクセスによる柔軟なMFA制御はMicrosoft Entra ID P1(月額1,049円/ユーザー)以上が必要で、無償版でも基本的なMFA強制は利用できます。
4. トラスト・ログイン byGMO(GMOグローバルサイン株式会社)

電子認証事業を手がけるGMOグローバルサイン株式会社が提供する、クラウド型のID管理サービス(IDaaS)です。SSO・ID管理・アクセス制限・ログ機能を無料プランから使い始められる点を打ち出しています。
パスキー認証(FIDO2)は2024年1月に追加され、トラスト・ログインへ一度パスキーで認証すれば、登録した社内SaaS全体へSSOでアクセスできます。ほかにアプリ型・メール型のOTPやプッシュ通知認証などのパスワードレス手段もそろえています。
SSOはSAML・OIDC・フォームベース・Basic認証に対応し、Active Directory・Microsoft Entra ID・Microsoft 365・Google Workspaceと連携できます。無料のSSOフリープランがある一方、パスキー認証を含むパスワードレス機能は有料のSSOプロプラン(月額300円/ID、税抜)が必要です。
5. OneLogin(One Identity LLC)

米One Identity LLC(旧OneLogin)が開発するクラウド型ID管理サービス(IDaaS)で、日本ではサイバネットシステム株式会社などの国内代理店を通じて提供されます。SSO・多要素認証・ディレクトリ連携・アカウント管理の自動化を統合します。
多要素認証はWebAuthn(FIDO2)や端末の生体認証(Windows Hello・Touch IDなど)に対応します。機械学習エンジン「Vigilance AI」がログインごとのリスクを評価し、追加認証やアクセス拒否を動的に行うSmartFactor Authentication(アダプティブ認証)を備えます。
SSOはSAML・OpenID Connect・SCIMに対応し、事前統合アプリは6,000以上、Active DirectoryやLDAPとの同期も可能です。円建ての料金は代理店により異なり、公式には要問い合わせで、30日間の無料評価版が用意されています。
6. IIJ IDサービス(株式会社インターネットイニシアティブ)

国内通信事業者の株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)が自社で開発・運用する、クラウド型のID管理・認証サービス(IDaaS)です。1つのIDで複数のクラウドサービスへログインするSSOを中核に据えています。
多要素認証ではFIDO2認証(WebAuthn)に2020年から対応し、Windows Hello・Face ID・Touch ID・YubiKeyなどの認証器でパスワードレスログインを実現します。デバイス証明書認証、メールOTP、スマートフォンアプリによるSmartKey認証も選べます。
SAML 2.0・OpenID Connect 1.0への対応に加え、Active Directoryのユーザー情報を自動同期するDirectory Syncや統合Windows認証を備えます。料金は初期費用0円で、SSOのみが月額120円/ID、SSOと多要素認証を合わせても月額240円/ID(税抜)で、FIDO2を含む各認証方式に追加料金はかかりません。
7. Gluegent Gate(サイオステクノロジー株式会社)

サイオステクノロジー株式会社が2011年から提供する、SSO・多要素認証・統合ID管理を備えたクラウド型のID管理サービス(IDaaS)です。1回のログインで、SAML・OpenID Connectなどで連携した複数サービスを利用できます。
多要素認証では、FIDO/FIDO2の外部デバイス認証や生体認証を、サービスごとにパスワードやICカード、証明書などと組み合わせてアクセス制御ルールに設定できます。
人事システムやActive Directoryと連携した自動プロビジョニング/デプロビジョニングで、退職者・異動者のアカウント削除漏れを抑えます。料金は接続単位課金のConnects(月額100円)と、ユーザー単位でSSO連携を無制限にできるProfessional(月額250円)・Enterprise(月額500円)・Unlimited(月額1,000円)があり、いずれも税別です。
8. Extic(エクスジェン・ネットワークス株式会社)

ID管理専業のエクスジェン・ネットワークス株式会社が「国産IDaaS」として提供する、統合ID管理とSSO・多要素認証を一体化したサービスです。オンプレミス型ID管理パッケージ「LDAP Manager」で培ったノウハウをクラウド化しています。
多要素認証の第2要素として、パスキー(FIDO2)・TOTP・メールOTPに対応し、セキュリティキーやWindows Hello・Apple Touch IDを登録したパスワードレスログインも可能です。外部IdPとしてMicrosoft Entra IDやOkta、学認とも連携できます。
SSOはSAML 2.0とフォームベース認証に対応し、人事情報を起点にしたID自動生成やAD・LDAP・DB・SCIM連携を備えます。料金は用途別にStandard(100ID時300円/ID〜)・IdP(同150円〜)・IdM(同210円〜)のコース制で、パスキー(FIDO2)はオプション(月額50円/ID〜)として追加します(いずれも税別)。
9. Keycloak(オープンソースプロジェクト、主要スポンサー Red Hat)

Keycloakは、Apache License 2.0で公開されているオープンソースのID・アクセス管理(IAM)ソフトウェアです。CNCF(Cloud Native Computing Foundation)のプロジェクトとして開発され、自社のサーバーやコンテナ環境に構築して運用します。
パスキー(FIDO2/WebAuthn)は2025年9月のバージョン26.4.0で正式サポートになり、ユーザー名欄からブラウザのオートフィルで選ぶ方式と、ボタンでダイアログを出す方式の両方に対応します。デバイスバインド型・クラウド同期型いずれのパスキーも利用できます。
SSOはOpenID Connect・OAuth 2.0・SAML 2.0に対応し、LDAPやActive Directoryとのユーザー連携を備えます。ソフトウェアのライセンス費用は無償で、サーバー構築・データベース・脆弱性対応などの運用は自社が担います。商用サポートはRed Hatの「Red Hat build of Keycloak」やNRI(野村総合研究所)が提供します。
10. a-FILTER(デジタルアーツ株式会社)

Webフィルタリング製品で知られるデジタルアーツ株式会社が提供する認証プラットフォーム(IDaaS)です。クラウド型ID管理サービス「StartIn」に端末ログオン認証を加え、2026年3月に「a-FILTER」として提供を開始しました。
指紋・顔・PINによるパスキー(FIDO)のパスワードレス認証を標準で搭載し、PCの端末ログオンからクラウドサービス利用までを一元的に保護します。端末ログオン時には、スマートフォン承認・ICカード・QRコードによる多要素認証も利用できます。
SSOはSAML 2.0(JITプロビジョニング)に対応し、Active Directory・Microsoft Entra ID・Google WorkspaceとのID同期や、Microsoft 365・Google Workspaceへのプロビジョニングを備えます。料金は1ユーザーあたり月額500円(税別、年間契約)で、ISMAP登録製品です。
セキュリティキー・認証器でパスキーを実現するサービス
続いて、物理セキュリティキーや認証器でデバイスバインド型の認証を実現するサービスです。
11. YubiKey as a Service(株式会社インターナショナルシステムリサーチ)

Yubico社の物理セキュリティキー「YubiKey」を、サブスクリプション型で導入できるサービスです。株式会社インターナショナルシステムリサーチが、自社のゼロトラストSSO基盤CloudGate UNOのオプションとして提供しています。FIDO2/WebAuthnによるパスワードレス認証に対応します。
秘密鍵とPINが物理キーの内部に保持され外部に送信されないデバイスバインド型で、物理キーを持つ本人しか認証できません。スマートフォンを業務で使えない現場でも利用でき、FIDO U2F・PIV・OTPなど幅広い規格にも対応します。
導入はサブスクリプション形式で、キッティング代行や故障・紛失時のバックアップキー同梱、専任担当による導入・運用支援が含まれます。契約期間は3年または5年、最低200ライセンスからで、料金は構成に応じた個別見積もりです。
物理セキュリティキーが実際にどのような現場で選ばれているかについて、同社はインタビューで次のように述べています。

最も多いのは、全社員へのスマートフォン支給が困難なケースです。派遣社員や協力会社のスタッフがシステムにアクセスする際の認証手段として活用されています。また、店舗やコールセンターなどのシフト制の現場において、IDとパスワードの管理負担を軽減しつつ、確実な本人認証を実現する手段としても選ばれています。近年はサプライチェーン対策としての需要も高まっています。経済産業省による新たなセキュリティ対策評価制度の開始を見据え、委託先の認証強化を急ぐ企業が増えています。
12. RSA ID Plus(RSA Security LLC)

1990年代から続くSecurIDのハードウェアトークンを源流とする、多要素認証を中核としたID・アクセス管理プラットフォームです。開発元はRSA Security LLCで、現在はFIDO2・パスキー対応のパスワードレス認証を主要なソリューションに据えています。
FIDO2準拠のハードウェアセキュリティキー「iShield Key 2」や、FIDO2機能を統合したハードウェアトークン「DS100」を用意しています。iShield Key 2はFIPS 140-3レベル3認定の暗号モジュールに準拠し、AAL3相当のハードウェア認証に対応します。生体認証やプッシュ、OTPとも併用できます。
提供形態はクラウド・ハイブリッド・オンプレミスに対応し、エアギャップ環境まで展開できます。公式に公表されるユーザー単価は月額3〜7ドル(プラン別、最上位プランは要問い合わせ)で、日本国内はテクマトリックス株式会社などの代理店を通じて販売・サポートを受けられます。
13. Soliton OneGate(株式会社ソリトンシステムズ)

株式会社ソリトンシステムズが開発・提供する、クラウド型の認証基盤(IDaaS)です。デジタル証明書(クライアント証明書)による多要素認証を軸に、SSOとID管理を組み合わせています。FIDO2/WebAuthnのパスワードレス認証にも対応し、指紋付きUSBキーのATKey.Proなどを対応デバイスに挙げています。
認証局(CA)機能を標準搭載し、クライアント証明書の発行・配布から失効までを1製品で管理できます。端末に配布した証明書によって、信頼できる利用者とデバイスにアクセスを限定するデバイス認証を実現し、顔認証・ICカード・スマホ認証とも組み合わせられます。
保護対象はクラウドや社内システムに加え、VPNやWi-Fi(IEEE802.1X EAP-TLS)のネットワーク認証まで一元管理できます。料金はユーザー月額150円のPKIプランなど3段階で、30日間の無料トライアルを利用できます。
多要素認証基盤にパスキー(FIDO2)を組み合わせるサービス
最後に、既存の多要素認証基盤にパスキーを組み合わせ、段階的なパスワードレス化を支えるサービスです。
14. Cisco Secure Access by Duo(シスコシステムズ合同会社)

元は独立系スタートアップのDuo Securityが開発し、2018年にシスコが買収したクラウド型のアクセスセキュリティサービスです。多要素認証・デバイスの健全性チェック・適応型(アダプティブ)アクセスポリシーを組み合わせ、既存のVPN・RDP・オンプレミスアプリ・クラウドSaaSの認証に後付けで被せられます。
認証方式は、Duo PushやワンタイムパスコードのほかにFIDO2/WebAuthn・パスキーに対応します。Touch ID・Face ID・Windows Helloなどの生体認証や、USB・NFC・BLEのローミング認証器を利用でき、既存の多要素認証にパスキーを認証要素として加えて段階的にパスワードレスへ移行できます。
料金は、10ユーザーまで恒久無料のFreeプランに加え、Essentials(月額3ドル/ユーザー)・Advantage(同6ドル)・Premier(同9ドル、いずれもUSD)の有償プランがあります。全有償プランで30日間の無料トライアルを利用できます。国内はテクバン・SB C&S などの代理店経由での提供が中心です。
15. Entrust Identity(Entrust Corporation)

PKI・証明書基盤を長年の中核事業としてきたEntrust Corporation(米国)の、ID・アクセス管理(IAM)/多要素認証の製品群です。クラウド型のIdentity as a Serviceと、オンプレミス/ハイブリッドで導入するIdentity Enterprise(旧IdentityGuard)から提供形態を選べます。
OTP・モバイルプッシュ・FIDO2/パスキー・PKI証明書・スマートカード・モバイルスマートクレデンシャル・AI顔認証まで、幅広い認証方式を単一ベンダーでカバーします。FIDO準拠・証明書ベースのパスワードレス認証に対応し、リスクに応じて認証強度を変えるアダプティブ認証と組み合わせて、高保証の証明書認証とクラウド向けのパスキーを一社で両立できます。
料金は公開されておらず、個別見積もりとなります。国内はエントラストジャパン株式会社や日立ソリューションズなどの販売パートナー経由で提供されます。
16. SafeNet Trusted Access(タレスDISジャパン株式会社)

決済カードやHSMなど暗号・物理セキュリティで実績を持つThales(タレスグループ)のクラウド型アクセス管理サービス(IDaaS)です。シングルサインオン・多要素認証・条件付き(シナリオベース)アクセスポリシーを1つのプラットフォームに統合し、SaaSだけでなくVPN・VDI・オンプレミスアプリも保護対象に含みます。
認証方式は、OTP(ソフト/ハード)・プッシュ・SMS/音声に加え、FIDO(FIDO U2F/FIDOパスキー)に対応します。FIDO認証は中位のSTAプラン以上、X.509のPKI証明書認証は最上位のSTA Premiumプランで利用できます。セッション履歴とポリシーに応じて必要なときだけ追加認証を求めるスマートSSOと組み合わせ、段階的に認証を強められます。
料金は個別見積もりで、公式はトークン・サポート込みのall-inclusiveライセンスを訴求しています。無料評価トライアルがあり、国内はタレスDISジャパン株式会社とキヤノンマーケティングジャパン・アセンテックなどの代理店が提供します。
17. JumpCloud(JumpCloud, Inc.)

クラウドディレクトリを中核に、SSO・多要素認証・デバイス管理・パスワード管理を1つに統合した「オープンディレクトリ・プラットフォーム」です。開発元は米JumpCloud, Inc.で、日本法人はなく国内は株式会社アクトなどの正規代理店経由で提供されます。Windows/macOS/Linux/iOS/Androidを横断して社員のIDとデバイスを一元管理できます。
パスキー(FIDO2)関連の対応は製品ごとに範囲が分かれます。FIDO2/WebAuthnのセキュリティキーや端末認証器は、User PortalとSSOの多要素認証の要素(パスワードに加える第2要素)として利用できます。資格情報保管庫のJumpCloud Vaultでは、パスキー(FIDO2)によるパスワードを使わないサインインに対応します。
管理対象デバイス向けのパスワードレスログイン「JumpCloud Go」もあり、Secure Enclave(Apple)やTPM(Windows)で生成した鍵でサインインします(FIDO2/WebAuthn準拠かは公式に明記されていません)。料金は米ドル建てで、多要素認証やパスワードレス認証は機能単位で追加でき、国内は代理店経由の個別見積もりです。30日間の無料トライアルがあります。
18. Beyond Identity(Beyond Identity, Inc.)

社員ログイン向けのフィッシング耐性パスワードレス認証に特化した、米Beyond Identity, Inc.のクラウド型アクセス管理プラットフォームです。公開鍵暗号でログインを特定の端末に暗号的に束縛する「デバイスバインド型パスキー」でパスワードを置き換えます。
ログイン時だけでなくセッション中も、管理端末・非管理端末の双方でデバイスの健全性(デバイスポスチャ)を継続的に検証し、ゼロトラストの動的なアクセス制御に組み込みます。CrowdStrike・SentinelOne・Zscaler・Jamf・Ping Identityなどのセキュリティ/ID製品と連携するため、既存の認証基盤に重ねる形で導入できます。
公開価格は掲示されておらず、国内は三井情報株式会社やSCSK株式会社などの販売代理店を通じた個別見積もりとなります。
パスキー対応サービスの選び方(連携・提供形態・デバイスバインド/同期・段階移行)
ここからは、自社の要件でサービスを絞り込むための観点を整理します。
要件が複数ぶつかるときは、まず「守る対象の重要度」を最優先の軸に据えるのが基本です。特権アカウントや規制対応が絡む領域はフィッシング耐性を最優先し、日常の業務ログインは利便性と全社展開のしやすさを重視する、と対象ごとに優先順位を変えると迷いにくくなります。そのうえで既存ID基盤との連携可否と提供形態を突き合わせると、候補を数社に絞り込めます。
既存基盤からの絞り込みは次が目安です。Microsoft 365・Entra ID中心なら、まず手持ちのパスキー機能で着手し、横断統合が要るときにIDaaSを足します。多種のSaaSを束ねたいなら対応アプリ数の多い統合ID管理型を軸に、オンプレミスのActive Directory中心ならAD連携の深いサービスから候補を挙げます。
既存ID基盤(AD/SAML/IDaaS)・多要素認証と組み合わせた段階的な移行
パスワードレス化は、一度にすべてを切り替える必要はありません。まず既存の多要素認証の第2要素をパスキーに置き換えるところから始め、次に特権アカウントや規制対応が絡む重要度の高い操作・アカウントでパスキーを必須にします。その後、一般の社員へ対象を広げて全社的に展開し、最後に古いパスワードによるログインを無効化します。この順序なら、利用者の負担を抑えながら移行できます。
移行の過程では、対象のシステムが FIDO2/WebAuthn に対応しているか、ID基盤側でパスキーの登録・管理をどこまで自動化できるかを確認しておくことが重要です。管理者が利用者の鍵をまとめて登録・失効できる仕組みがあると、全社展開の負担を抑えられます。
導入・運用で押さえる注意点(レガシー非対応システムの併用・端末紛失時の運用 等)
パスキーに対応していない古いシステムが社内に残る場合は、当面はパスワードや他の認証方式との併用が必要になります。どのシステムから移行し、どれを併用するかを棚卸ししておくと、移行計画を立てやすくなります。
端末や物理キーを紛失・故障したときの運用も、あらかじめ決めておくことが大切です。デバイスバインド型は別の認証器での再登録、同期型は同期先アカウントからの復元というように、タイプによって復旧の手順が異なります。予備の認証手段や、管理者による再登録の手続きを整えておくと、ログインできない社員が業務を止めずに済みます。
まとめ
パスキー(FIDO2/WebAuthn)は、共有する秘密を使わず、ドメインごとに分かれた鍵で認証するため、パスワード運用の弱点とフィッシングのリスクを大きく減らせます。社員の業務システム・クラウドのログイン保護では、統合ID管理型・セキュリティキー/認証器型・多要素認証基盤の併用型という3つの入り口があり、既存のID基盤や求める強度に合わせて選ぶことが大切です。
デバイスバインド型と同期型の選び分け、段階的な移行の進め方、非対応システムや端末紛失時の運用まで見据えて、自社に合う候補を数社に絞り込んでください。比較表と診断ツールもあわせてご活用ください。
パスキーに限らず、ワンタイムパスワードや生体認証なども含めた多要素認証(MFA)システム全体を見渡して比較したい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。
多要素認証(MFA)システムおすすめ17選を徹底比較|認証方式・料金・タイプ別の選び方
ID とパスワードだけのログインは、もはや「鍵をかけていない」のと同じ状態に近づいています。攻撃者は流出したパスワードのリストを使い回し、本物そっくりの偽サイトで認証情報を抜き取り、正規利用者になりすまして社内システムやクラウドサービスへ侵…
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よくある質問(FAQ)
Q. パスキーとは何ですか?
A. パスキーは、FIDO Alliance が策定した FIDO2 規格にもとづき、公開鍵暗号を使ってパスワードなしで本人を確認する認証情報です。サービス側のサーバーは公開鍵だけを保管し、秘密にあたる鍵は利用者の端末や認証器の中にとどまります。パスワードのように共有する秘密を持たないため、漏えいやフィッシングに強いのが特徴です。
Q. パスキーとFIDO2・WebAuthnは何が違うのですか?
A. FIDO2/WebAuthn は技術仕様の名称で、パスキーはその仕様で作られる認証情報を利用者向けに呼びやすくした言葉です。WebAuthn はブラウザと認証器をつなぐ W3C 標準の API、FIDO2 はそれを含む規格の総称で、パスキーはこれらにもとづく鍵を指します。サービス選定では「FIDO2/WebAuthn に対応しているか」がパスキーを使えるかの実質的な判断材料になります。
Q. パスキーはなぜフィッシングに強いのですか?
A. パスキーはサイト(ドメイン)ごとに別々の鍵ペアを作るため、偽サイトには正規サイト用の署名を渡せず、認証が成立しないからです。利用者が気づかずに偽サイトへ誘導されても、認証情報が盗まれません。米国の NIST SP 800-63B も、こうした「検証者なりすまし(フィッシング)」に耐える認証を、上位の保証レベルの要件として位置づけています。
Q. パスキーは、パスワードと第二要素を組み合わせた多要素認証より安全ですか?
A. パスキーは、パスワードを前提とした多要素認証と違い、盗める共有の秘密(パスワード)がそもそも存在しない点で、不正ログインへの耐性が高い認証方式です。SMS や OTP を足す従来の多要素認証では、パスワードやコードの窃取・フィッシングの余地が残ります。パスキーは鍵がドメインに結び付くため、これらのリスクを根本から抑えられます。
Q. パスキー対応のパスワードレス認証サービスでは、デバイスバインド型と同期型のどちらを選ぶべきですか?
A. フィッシング耐性を最優先するならデバイスバインド型、端末の買い替えや復元のしやすさを重視するなら同期型が向きます。デバイスバインド型は鍵が単一の端末や物理キーから出ず、鍵の持ち出しにも強い一方、紛失時は再登録が必要です。同期型はクラウド経由で複数端末に鍵が行き渡り使い勝手に優れます。特権アカウントはデバイスバインド型、一般の業務ログインは同期型と使い分けるのが基本です。
Q. 同期パスキーは多要素認証(MFA)として扱えますか?
A. 同期パスキーも、所持(端末)と生体認証・PIN という2つの要素を同時に満たすため、多要素認証に相当する認証として扱えます。ただし規制対応などで「鍵が単一の端末から出ないこと」が求められる場合は、デバイスバインド型や物理セキュリティキーの採用を検討します。自社が準拠すべき基準に照らして方式を選ぶとよいでしょう。
Q. パスキーでサインインするとき、社員の生体情報はサービス側に送られますか?
A. 指紋や顔などの生体情報は端末内で照合され、サービス側(サーバー)には送られません。生体認証はあくまで端末内で秘密鍵を使うための本人確認に用いられ、サーバーへ渡るのは鍵による署名の検証結果だけです。そのため、生体情報が外部へ漏れる心配は原則としてありません。
Q. パスキー対応のパスワードレス認証サービスは、既存のActive Directory・SAML・IDaaSと連携できますか?
A. 多くのサービスが Active Directory 連携や SAML/OpenID Connect に対応しており、既存のID基盤を活かしてパスキーを導入できます。連携できる範囲や方式は製品ごとに異なるため、自社が使っている基盤(オンプレミスの AD、各種 IDaaS、SAML 連携する SaaS)に合うかを、比較表や各社資料で確認することが選定の要になります。
Q. パスキーは既存の多要素認証と併用して、段階的に移行できますか?
A. できます。まず第2要素としてパスキーを追加し、重要なアカウントから必須化して、最後に旧来のパスワードを無効化する、という段階的な移行が現実的です。一度に全社を切り替える必要はなく、既存の多要素認証基盤にパスキーを組み合わせられる製品を選ぶと、利用者の負担を抑えながら移行できます。
Q. パスワードは完全に廃止すべきですか?
A. 必ずしも一度に完全廃止する必要はなく、パスキーを主としつつ、パスキー非対応の古いシステム向けにパスワードを当面残すハイブリッドな運用が現実的です。重要度の高い操作からパスワードレスを必須にし、対応範囲が広がった段階で旧パスワードを無効化していくと、業務を止めずに移行できます。
Q. パスキーに対応していない古いシステムが社内に残っている場合はどうすればよいですか?
A. 当面はパスワードや他の認証方式との併用で対応し、どのシステムから移行しどれを併用するかを棚卸しして計画的に進めます。レガシーなシステムの多くはパスキーに未対応のため、全システムの一斉切り替えは困難です。対応状況を整理したうえで、優先度の高いログインからパスワードレス化を進めるのが現実的です。
Q. 社員が端末を紛失したり機種変更したりした場合、ログインはどうなりますか?
A. デバイスバインド型は別の認証器での再登録、同期型は同期先アカウントからの鍵の復元で対応します。タイプによって復旧の手順が異なるため、予備の認証手段や、管理者が利用者の鍵を再登録・失効できる仕組みを備えた製品を選び、運用手順をあらかじめ決めておくことが大切です。
Q. スマートフォンを業務で使えない現場でもパスキーは使えますか?
A. FIDO2準拠の物理セキュリティキーを配布するタイプのサービスを使えば、スマートフォンがなくてもパスキーによるパスワードレス認証を実現できます。工場や店舗の共有端末、私用スマートフォンの持ち込みを制限している環境では、物理キーを用いるデバイスバインド型が適しています。
Q. パスキー対応のパスワードレス認証サービスの料金はどのように決まりますか?
A. 多くは1ユーザーあたりの月額課金で、SSO や多要素認証を含む機能範囲やプランによって金額が変わります。無料プランやライセンス無償のオープンソース製品から、1ユーザー月額数百円〜の IDaaS、要問い合わせの製品まで幅があります。物理セキュリティキーを使う場合は、キー本体の費用や初期設定の支援費用も見込んでおきます。
Q. パスキー導入の費用対効果(ROI)はどう考えればよいですか?
A. パスワードのリセット対応やヘルプデスクへの問い合わせが減る運用コストの削減と、不正ログイン被害のリスク低減の両面で評価します。利用料に加え、導入・移行の工数も含めて総コストを見積もり、削減できる運用負荷やセキュリティ上の効果と照らして判断するとよいでしょう。
Q. パスキーの導入にはどのくらいの期間がかかりますか?
A. 導入期間は、対象とするシステムの数や既存ID基盤との連携の複雑さ、全社展開の範囲によって変わります。既存の IDaaS や多要素認証基盤にパスキーを追加する構成なら比較的短期間で始められますが、多数の社内システムを横断して移行する場合は、試験導入から全社展開まで段階を踏むことになります。各社の導入支援の有無も期間を左右します。
Q. パスキーは特定のOSやブラウザでしか使えないのですか?
A. パスキーは FIDO2/WebAuthn という標準にもとづくため、主要な OS・ブラウザで利用でき、特定の環境に縛られません。ただし同期パスキーの対応状況やクロスデバイスでの使い勝手はプラットフォームによって差があります。自社の端末・ブラウザ環境で想定どおり使えるかを、導入前に確認しておくと安心です。
Q. 中小企業や既存のMicrosoft環境からでも、パスキーは導入できますか?
A. 既に使っているID基盤(Microsoft 365・Entra ID など)のパスキー機能から始められるため、中小企業でも無理なく導入できます。専用の基盤を新たに構築しなくても、既存環境の機能を有効化してパスワードレス化に着手できます。横断的に SaaS を統合したい場合は、IDaaS 型のサービスを組み合わせる構成が選択肢になります。
Q. 社員のログインを守るサービスと、自社サービスの会員ログインにパスキーを組み込むサービスは違うのですか?
A. 異なります。本記事で比較しているのは、社員が使う業務システムやクラウドのログインを守るためのサービスです。自社が提供するアプリや Web サービスの会員ログインにパスキーを組み込みたい場合は、開発者向けの認証基盤(パスキー認証SDK)が適しており、選ぶべきサービスのカテゴリが変わります。まず自社の目的がどちらなのかを見極めることが、適切なサービス選びの出発点になります。
自社サービス・自社アプリの会員向けログインにパスキーを実装したい場合は、開発者向けのパスワードレス認証(パスキー認証SDK)を比較した以下の記事が参考になります。
パスワードレス認証とは?自社サービスに組み込む生体認証・パスキー対応SDK/APIを機能・料金で比較【選び方も解説】
自社アプリやWebサービスのログインを、パスワードに頼らない方式へ切り替えたいと考える開発・プロダクト部門が増えています。パスワードの使い回しやフィッシングによる不正ログインが後を絶たず、パスキーやFIDO2といったパスワードレス認証が、そ…
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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