取引先や経営層から「もし当社でサイバー攻撃や情報漏えいが起きたら、対応にいくらかかるのか」と問われて、答えに詰まった経験はないでしょうか。実際にインシデント(情報漏えいやランサムウェア感染などの事故)が起きたあとは、原因を調べる調査費用から、被害者への対応、システムの復旧、損害賠償まで、さまざまな費用が立て続けに発生します。
しかし、その金額は「事故の規模による」とだけ説明されることが多く、自社だとおよそいくらになるのかを具体的な数字でつかめないまま、予算化や備えの検討が止まってしまいがちです。専任のセキュリティ担当を置きにくい中小・中堅企業ほど、見当がつかずに後回しになっている、というケースは少なくありません。
本記事では、インシデント対応にかかる費用を費目別・規模別・事故タイプ別の金額の目安で整理します。調査(フォレンジック)費用がどう決まるか、情報漏えい・ランサムウェア・ビジネスメール詐欺といった事故タイプごとのモデルケース、サイバー保険でカバーできる範囲、そして費用を抑えるための備えまでをまとめました。自社の想定被害額を見積もる材料としてご活用ください。
目次
一括ダウンロードする
インシデント対応の費用は総額でいくら?まず結論
インシデント対応にかかる費用は、中小企業でも数千万円単位、被害の内容によっては億単位にのぼることがあります。これは日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)が公表した「インシデント損害額調査レポート」や、同調査をもとにした総務省の資料で示されている水準です。
金額がこれほど大きくなるのは、インシデント対応の費用が1つの支払いで完結せず、いくつもの費目に分かれて積み上がるためです。事故の原因を調べる調査費用、被害者への問い合わせ対応や謝罪、システムの復旧、弁護士への相談、損害賠償、事業が止まることによる損失まで、対応の各段階で費用が発生します。
そこでまずは、どの費目にどれくらいの費用がかかるのかを一覧で把握するところから始めます。次の章で、費目ごとの金額の目安を表にまとめました。
出典・参考資料(2件)
【費目別】インシデント対応費用の金額目安一覧
ここからは、インシデント対応で発生する主な費目と、その金額の目安を一覧で確認します。金額はJNSAの調査資料と総務省の資料で示されている水準で、いずれも対応の規模によって変動しますが、各費目の相場感をつかむ手がかりになります。
| 費目 | 金額の目安(1件あたり) |
|---|---|
| 原因・被害範囲の調査(フォレンジック調査) | 300万〜400万円程度〜 (対象台数・調査範囲で変動) |
| 弁護士への相談・法律対応 | 数十万円〜 |
| 問い合わせ対応のコールセンター | 1席1か月あたり120万円〜 (3か月対応・初月3席の例で総額600万円〜) |
| お詫び状の作成・発送 | はがき1通80円〜・封書1通100円〜 |
| 謝罪のための新聞広告 | 全国紙240万円前後/地方紙50万円前後 |
| 被害者への見舞金(金券の送付) | 1件650円〜 (券面500円+作成・送付費) |
| ダークウェブ上の情報流出調査 | 数百万〜数千万円 |
| システムの復旧 | 被害範囲・データ量に応じて都度見積もり |
| 損害賠償金 | 漏えい1人あたり想定で平均2万8,308円(後述)ほか |
| 事業中断による損失 | 停止期間中に減った利益分(業種・規模で変動) |
※上記はJNSA・総務省の調査資料で示された金額の目安です。実際の費用は事故の規模・対応内容により変動します。
表のとおり、費用は調査や復旧といった「自社が直接負担する対応費用」だけでなく、被害者への謝罪・見舞金、損害賠償、事業中断による損失まで広がります。JNSAはこうした損害を、対応費用・賠償・事業中断による利益の損失・金銭の直接被害・行政上の処分・信用低下の6種類に整理しています。なかでも金額が読みにくいのが調査費用で、次の章で決まり方を見ていきます。
出典・参考資料(2件)
調査(フォレンジック)費用はどう決まる?規模別の目安
ここからは、費目のなかでも金額の幅が大きい調査費用について、決まり方と規模別の目安を解説します。フォレンジック調査とは、端末やサーバーに残されたログやデータを解析して、事故の原因や被害の範囲を特定する調査のことです。
総務省の資料によると、フォレンジック調査の費用は「規模にかかわらずかかる基本費用」に、「調査する端末の台数 × 1台あたりの単価」を加えて算出されるケースが多いとされています。1台あたりの単価の一例として、サーバー1台10万円、クライアントPC1台5万円、スマートフォン1台3万円といった水準が挙げられています。
この単価で計算すると、たとえばサーバー5台・PC100台・スマートフォン10台を調査する場合、サーバー50万円+PC500万円+スマートフォン30万円で、端末だけでも580万円ほどになります。ネットワーク機器まで精査すれば、1台あたりさらに数十万円が加わります。台数が多いほど費用がふくらむため、調査対象をどこまで広げるかが金額を大きく左右します。
規模別のおおよその目安としては、法律事務所系のコンサルティング会社が次の水準を示しています。自社の端末数や事故の広がりに照らして、どのレンジに近いかを見当づける材料になります。
| 調査の規模 | フォレンジック調査費用の目安 |
|---|---|
| 小規模(PC1〜2台・簡易な調査) | 50万〜200万円程度 |
| 中規模(複数端末・ログ分析) | 200万〜400万円程度 |
| 大規模(ランサムウェア・全社対応) | 500万〜1,000万円超 |
※規模別の目安はTMIプライバシー&セキュリティコンサルティングの公表情報にもとづきます。
調査会社によって料金体系は異なり、5営業日・2人体制の基本料金として200万円程度からとする事業者や、事前のコンサルティングを含む総合契約として500万円程度からとする事業者もあります。初動が遅れて調査範囲が広がると費用も増えやすいため、早い段階で範囲を絞り込めるかどうかが金額に効いてきます。
出典・参考資料(2件)
事故タイプ別に見る費用のモデルケース
ここからは、情報漏えい・ランサムウェア・ビジネスメール詐欺という代表的な事故タイプごとに、費用がどう積み上がるかをモデルケースで見ていきます。どの費目が中心になるかは事故のタイプで変わるため、自社が警戒すべき事故に近いケースを手がかりにしてください。
情報漏えい(個人情報の流出)の場合
個人情報が漏えいした場合は、調査費用に加えて、被害者への損害賠償が大きな費目になります。JNSAの調査では、個人情報の漏えい1人あたりの平均想定損害賠償額は、過去3か年の平均で2万8,308円とされています。これは実際に確定した賠償額ではなく、算定モデルにもとづく想定額です。漏えいした人数が多いほど、賠償の総額は膨らみます。
クレジットカード情報が漏れた場合は、不正利用の被害が加わります。JNSAはカード不正利用の平均被害額を1枚あたり約10万円とし、モデルケースとして「カード情報1,000件が漏えいし、その30%が不正利用された場合」を示しています。
この場合、不正利用額が1,000件×10万円×30%で3,000万円、カード再発行手数料が1件1,100円で110万円となり、損害賠償金は合計3,110万円にのぼる計算です。
訴訟に発展すれば弁護士費用も発生します。旧日本弁護士連合会の報酬基準を目安にすると、損害賠償請求訴訟の請求額が1億円の場合、着手金が約369万円、成功時の報酬金が約738万円となります。これらは目安であり、実際の費用は依頼内容や契約によって異なります。
ここまでの費目を1つのシナリオで足し合わせると、総額のイメージがつかめます。
たとえばパソコン100台規模の企業で個人情報1,000件が漏えいしたと仮定すると、原因・被害範囲の調査(複数端末の中規模フォレンジック)で200万〜400万円、問い合わせ対応のコールセンター(初月1席)で120万円前後、被害者への見舞金(1,000件×650円)で約65万円、損害賠償(想定額1人2万8,308円×1,000人)で約2,831万円となります。
これらを合計すると、おおよそ3,200万〜3,400万円規模です。あくまで一定の前提(漏えい1,000件・調査は中規模・訴訟や事業中断は含まない)を置いた概算で、実際の金額は被害の内容によって変わり、事業が止まればその間の損失がさらに加わります。
この積み上げはモデルケースですが、国内の実態と照らしても水準は大きく外れていません。総務省の資料が引用するJNSAの調査では、ウェブサイトからの情報漏えい被害を受けた組織の平均被害金額は3,843万円と報告されています。
ランサムウェア感染の場合
ランサムウェア(データを暗号化して身代金を要求する不正プログラム)に感染した場合は、調査・復旧の費用に加えて、攻撃者から身代金を要求されることがあります。海外のセキュリティ企業Covewareの集計では、2021年第1四半期に支払われた身代金の平均額は約22万ドル(当時の為替で約2,400万円)でした。これは海外の集計で時点も古く、国内の実態とは差がある点に留意が必要です。
国内の実態に近い数字としては、総務省の資料が引用するJNSAの調査で、ランサムウェアに感染した組織の平均被害金額が2,386万円と報告されています。身代金を支払わなかった組織の数字で、調査・復旧・事業中断などの費用から成り、被害組織のほとんどで金額が1,000万円を超えています。
あわせて、メールを起点に感染が広がるEmotet(エモテット)に感染した組織の平均被害金額は1,030万円と報告されています。いずれも回答数が限られる調査のため実際の損失はさらに大きくなりうる点に留意は要りますが、自社の見積もりでは海外の身代金額よりこうした国内データを手がかりにするほうが現実的です。
身代金の支払い自体は推奨されるものではなく、支払ってもデータが復旧する保証はありません。しかし、事業が止まった状態が続けば、その間の売上減少という損失も重なります。ランサムウェアは調査・復旧・事業中断の費用が同時に発生しやすく、被害が大きくなりやすい事故タイプといえます。
この被害を抑える鍵は、感染を前提に予防・バックアップ・感染時の対応をあらかじめ用意しておくことです。何から手を付け、どの順で備えを進めればよいかは、以下の記事で基本を確認できます。
ビジネスメール詐欺(BEC)の場合
ビジネスメール詐欺(BEC)は、取引先や経営幹部になりすましたメールで送金を促す詐欺で、金銭が直接だまし取られる点が特徴です。日常的にやり取りされる金額をねらうため気づきにくく、被害額が高額になりやすい事故タイプです。
JNSAが挙げる国内関連の事例では、2017年に大手航空会社が取引先の担当者を装った偽メールにより約3億8,400万円をだまし取られたケース、2019年に大手自動車部品メーカーで外部の第三者による虚偽の指示により約40億円が流出したケース、同じく2019年に大手新聞社の米国子会社で約2,900万ドル(当時の為替で約32億円)が流出したケースが報告されています。
いずれも大企業の事例ですが、送金額がそのまま金銭被害になるため、企業規模を問わず1件でも大きな損失につながります。
出典・参考資料(2件)
費用を大きく左右する3つの要因
同じ種類の事故でも、対応費用は大きく変わります。ここでは、金額を左右する主な3つの要因を整理します。これらを押さえておくと、なぜ早めの備えや初動が費用を抑えるのかが見えてきます。
1つ目は、被害の規模です。前章のとおり、調査費用は調べる端末の台数に単価を掛けて積み上がるため、感染や漏えいの影響が及んだ範囲が広いほど費用は増えます。復旧の対象となるシステムやデータの量も、金額に直結します。
2つ目は、初動の遅れです。事故の覚知から対応の着手までに時間がかかると、被害が広がり、調べるべき範囲も広がります。結果として調査費用が増え、事業が止まる期間も延びやすくなります。どこまで被害が及んだのかを早く特定できるかどうかが、費用の分かれ目になります。
3つ目は、事業が止まることによる損失です。システムの停止は売上の減少につながりますが、ここで注意したいのは、この損失が復旧費用とは別物だという点です。JNSAも、事業中断による利益の損失は、売上高の減少額そのものではなく、本来得られた利益が得られなくなった分として捉えるべきだと整理しています。復旧の見積もりが出ても、止まっていた間の損失は別に積み上がる、と考えておく必要があります。
逆にいえば、事故を早く覚知して正しい順で初動を踏めれば、調査の範囲も事業停止の長さも抑えられます。発生時に何を・どの順で行い、報告の義務や避けるべき行動は何かを整理した手順は、以下の記事にまとめています。
サイバー保険でカバーできる費用・できない費用
ここまで見てきた費用の一部は、サイバー保険で備えることができます。ただし、保険が下りる範囲には境界があり、やみくもに頼れるわけではありません。予算化や保険の検討にあたって押さえておきたいポイントを整理します。
サイバー保険の補償は、一括ではなく、調査・復旧・通知・広報・法律相談といった区分ごとに支払限度や条件が分かれているのが一般的です。区分ごとに「内枠の上限」(サブリミット)が設定されていることがあり、原則として区分をまたいだ流用はできません。ある区分の費用が上限に達しても、ほかの区分の枠を回して補うことはできない、という点に注意が必要です。
また、調査や復旧を外部へ発注する際は、保険会社の事前承認や指定事業者の利用が条件になっていることがあります。承認を得ないまま先に発注してしまうと、その費用が補償の対象から外れる場合があるため、発注前に自社の保険証券の条件を確認することが大切です。一方で、被害の拡大を防ぐ封じ込めや、法令にもとづく報告・本人への通知は、保険会社の回答を待たずに進めるべき対応とされています。
事業中断による利益の損失は、調査・復旧の費用とは別の枠(別の特約や契約)で扱われることが多く、補償が始まるまでの待機期間が設けられている場合もあります。どの費用がどこまでカバーされるかは契約ごとに異なるため、個別の判断は自社の保険証券と約款で確認してください。
出典・参考資料(2件)
一括ダウンロードする
インシデント費用を抑える・事前に備える方法
ここまで見てきたとおり、インシデント対応の費用は、被害の規模・初動の速さ・事業中断の長さで大きく変わります。裏を返せば、事前の備えでこれらを小さくできれば、事故が起きたときの費用も抑えられます。ここからは、費用を抑えるための具体的なアプローチと、それを支えるサービスを紹介します。
事前に備える3つのアプローチ
事故時の費用を抑える備えは、大きく3つの方向に整理できます。1つ目は、侵害の有無を手早く調べられるようにしておくことです。すでに感染や情報の持ち出しが起きていないかを定期的に点検できれば、被害が小さいうちに気づけ、調査費用がふくらむ前に手を打てます。
2つ目は、通信やログを記録しておくことです。事故が起きてから原因を調べる際、どの通信で何が起きたかをさかのぼれる記録が残っていれば、調査の範囲を絞り込みやすく、調査にかかる手間と費用を減らせます。
3つ目は、バックアップの備えです。改ざんされにくい形でデータを保管しておけば、ランサムウェアで暗号化されても復旧の費用と時間を抑えられ、事業中断による損失も小さくできます。あわせて、サイバー保険で損害を移転しておく備えも有効です。

以下では、これらの備えに対応するサービスを紹介します。
1. CoWorker 端末侵害診断サービス(CoWorker株式会社)

侵害の有無を手早く調べたい企業に向くのが、CoWorker株式会社の「端末侵害診断サービス」です。対象のパソコンから専用ツールでログを集め、自社開発のAIとセキュリティ専門家が、すでにマルウェア感染や情報の持ち出しが起きていないかを事後に解析します。常時監視する製品ではなく、退職者のPC点検やインシデントが疑われたときなど、タイミングを区切って実施する診断サービスです。
速報は1週間以内、最終レポートは1か月以内に提供されます。料金は端末1台あたりの単価制で、初期費用20万円に加えて診断費用が1台あたり50万円(税別。2026年10月時点)、導入事例への協力を条件とするトライアル価格は1台20万円(税別)とされ、台数が増えるほど1台あたりは割安になります。
本格的なフォレンジック調査は一式で数百万円規模(規模別の目安では中〜大規模に相当)になりやすく、専門家も限られていたのに対し、必要な端末に絞って手早く侵害の有無を確かめられる選択肢として設計されています。
「被害が小さいうちに確かめる」という考え方の背景について、CoWorker社はインタビューのなかで、従来のフォレンジック調査の費用感と、定期的な診断が必要になっている事情を次のように説明しています。

フォレンジックはこれまで、1台あたり100万円から200万円ほどの費用がかかり、専門家も少ないという課題がありました。そこにAIの発達が組み合わさって、高速化・低価格化が実現できるようになったことが、このサービスを開発した大きなきっかけです。従来のフォレンジックは、何か大きな問題が起きてから重い腰を上げて対応するというイメージが強かったのですが、問題がまだ小さいうちに、より簡易でスピーディーに診断できるものが必要だと考えました。あわせて、攻撃者側もAIを使ってランサムウェアを高速化させていますので、年に1回ではなく、より定期的な診断が不可欠になってきているという背景もあります。
2. Network Blackbox(株式会社クワッドマイナージャパン)

事故が起きたときの調査の手間を減らしたい企業に向くのが、Network Blackboxです。ネットワークを流れる通信(パケット)をすべて保存し、検知から調査・対応までをカバーするNDR(ネットワーク検出・対応)製品で、通信そのものを記録しておく点に特徴があります。
ログだけでなく通信の中身まで保存しているため、事故の後でも、いつどの通信で何が起きたかをさかのぼって確認し、パケットやファイルを再構成できます。原因や被害範囲の特定を記録から追えるので、調査にかかる時間と手間を抑えやすくなります。ミラーリング方式で導入するため、既存のネットワークへの影響を抑えられる点も、運用しながら備えたい企業にとって検討しやすい要素です。料金は要問い合わせとなっています。
3. KATABAMI サイバーセキュリティ対策パッケージ(株式会社SYNCHRO)

復旧と補償の両面で備えたい企業に向くのが、KATABAMIサイバーセキュリティ対策パッケージです。脆弱性を見つける「予防」、データを復旧できるようにする「復旧」、損害を補う「補償」の3つを1つにまとめて提供します。
予防では、ネットワーク内部から毎月(年12回)脆弱性を点検し、改善策を提示します。復旧では、隔離された経路でデータを自動バックアップし、前日の状態まで戻せるようにします。補償では、あいおいニッセイ同和損害保険のサイバー保険を自動で付帯し、賠償損害は1億円、費用損害は3,000万円まで(免責金額なし)を補償します。
料金は1台あたり月額1,250円から(2026年10月時点)で、ネットワークに接続する端末が100台以下の場合は年額90万〜150万円が目安とされています。事前の対策から事故後の復旧・補償までをまとめて備えたい企業に向く構成です。
ランサムウェア対策としてバックアップが重要とされる一方で、そのバックアップ自体が被害に巻き込まれる実態について、提供元の株式会社SYNCHROはインタビューのなかで次のように述べています。

現状、ランサムウェア攻撃を受けた企業のうち、約8割近くでバックアップデータも潰されていると、警察からも発表されています。バックアップ経路は通常のネットワーク上にあるため、ランサムウェアを仕掛けてきた攻撃者にもたどり着けてしまうものがほとんどだからです。
備えのサービスを比較する
ここまで紹介した3つのサービスを、備えの方向性と費用の目安で比較します。自社がどの備えを優先したいかに合わせて、検討の起点にしてください。
| サービス名 | CoWorker 端末侵害診断サービス | Network Blackbox | KATABAMI サイバーセキュリティ対策パッケージ |
|---|---|---|---|
| 備えの方向性 | 侵害の有無を調べる (端末フォレンジック診断) | 通信を記録して調査範囲を減らす (NDR・フルパケット保存) | 復旧バックアップ+保険補償 (予防・復旧・補償の統合) |
| 主な機能 | 端末のログをAIと専門家が解析し、感染や情報持ち出しの痕跡を点検 速報は1週間以内・最終レポートは1か月以内 | ネットワークの全パケットを保存するNDR 事故後に通信をさかのぼり、原因や被害範囲を記録から追える | 月次(年12回)の脆弱性診断、隔離経路での自動バックアップ、サイバー保険(賠償1億円・費用3,000万円)の自動付帯 |
| 費用の目安 | 初期費用20万円+診断1台50万円〜(税別) トライアルは1台20万円(税別) | 要問い合わせ | 1台月1,250円〜 (100台以下で年90万〜150万円が目安) |
| 向いている企業 | 退職者PCの点検や侵害が疑われたときに、被害の有無を手早く確かめたい企業 | 運用を続けながら、事故が起きたときの調査の手間を減らしたい企業 | 予防から復旧・補償までを、まとめて備えたい中小企業 |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | オンライン相談を予約 |
ここで取り上げたのは、備えの一部を担うサービスです。端末・ネットワーク・ID・データ・監視運用まで、社内セキュリティ全体を守る対象ごとに見渡して検討したい場合は、以下の比較記事がタイプ別の整理と選び方の起点になります。
社内セキュリティソリューション比較|守る対象別のタイプ・代表サービスと選び方
社内のセキュリティを強化したいものの、端末の保護から不正アクセス対策、情報漏えいの防止まで課題が広く、何から手をつければよいか判断がつかないという声は少なくありません。テレワークやクラウド利用が定着し、社外に持ち出される端末やIDが増えたこ…
まとめ
インシデント対応の費用は、調査・復旧・賠償・事業中断などの費目が積み重なり、中小企業でも数千万円単位、被害によっては億単位にのぼります。とくに調査費用は調べる端末の台数で、損害賠償は漏えいした人数で変わり、事故のタイプによってどの費目が中心になるかも異なります。自社でどの事故が起きうるかを想定し、費目別の目安を当てはめてみることが、現実的な予算化の第一歩になります。
そして、費用は事前の備えで抑えられます。侵害の有無を早く確かめる、通信を記録して調査の手間を減らす、バックアップで復旧を速める、サイバー保険で損害を移転する——こうした備えを組み合わせておけば、事故が起きたときの費用と時間を小さくできます。自社の課題に合う備えから、具体的な検討を始めてみてください。
一括ダウンロードする
よくある質問(FAQ)
Q. インシデント対応費用とは何ですか?
A. インシデント対応費用とは、情報漏えいやランサムウェア感染などの事故が起きたあとに、原因調査・被害者対応・システム復旧・損害賠償・事業中断などで発生する費用の総称です。1つの支払いで完結せず、対応の各段階で費目が積み上がるのが特徴で、日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)や総務省の資料では、中小企業でも数千万円単位、被害の内容によっては億単位にのぼるとされています。
Q. インシデント対応費用はサイバー保険で全額カバーできますか?
A. インシデント対応費用をサイバー保険で全額まかなえるとは限りません。補償は調査・復旧・通知・広報・法律相談といった区分ごとに支払限度(サブリミット)が設定され、区分をまたいだ流用は原則できないためです。
さらに、外部への発注に保険会社の事前承認や指定事業者の利用が条件になっていることがあり、承認を得ずに発注すると補償の対象から外れる場合があります。事業が止まることによる損失も調査・復旧とは別の枠で扱われることが多いため、どの費用がどこまでカバーされるかは、自社の保険証券と約款で確認してください。
Q. フォレンジック調査の費用相場はいくらですか?
A. フォレンジック調査の費用は、小規模(PC1〜2台・簡易な調査)で50万〜200万円程度、複数端末を調べる中規模で200万〜400万円程度、ランサムウェアなど全社対応の大規模では500万〜1,000万円超が目安です(TMIプライバシー&セキュリティコンサルティングの公表情報)。
費用は「規模にかかわらずかかる基本費用」に「調査する端末の台数×1台あたりの単価」を加えて決まることが多く、総務省資料の単価例(サーバー1台10万円・クライアントPC1台5万円・スマートフォン1台3万円)で計算すると、サーバー5台・PC100台・スマホ10台を調査する場合は端末だけでも580万円ほどになります。調査対象の台数が多いほど費用はふくらみます。
Q. 中小企業でもインシデント対応に数千万円かかりますか?
A. 中小企業でも数千万円単位になることがあり、被害の内容によっては億単位にのぼります。これはJNSAの「インシデント損害額調査レポート」や、同調査をもとにした総務省の資料で示されている水準です。
金額が大きくなるのは、調査・復旧・賠償・事業中断といった費目が1件の事故で立て続けに積み上がるためです。専任のセキュリティ担当を置きにくい規模の企業ほど、費目別の目安を自社に当てはめて予算化しておくことが現実的な備えになります。
Q. 情報漏えいの損害賠償はいくらになりますか?
A. 個人情報の漏えいでは、1人あたりの平均想定損害賠償額が過去3か年の平均で2万8,308円とされ、漏えいした人数が多いほど総額が膨らみます(JNSA)。たとえばクレジットカード情報1,000件が漏えいし、その30%が不正利用されたJNSAのモデルケースでは、不正利用額3,000万円+カード再発行手数料110万円で、損害賠償金は合計3,110万円にのぼる計算です。
訴訟に発展すれば弁護士費用も加わりますが、金額は依頼内容や契約によって異なるため、あくまで目安として捉えてください。
Q. インシデント対応費用で金額が大きくなりやすい費目はどれですか?
A. 金額が大きくなりやすいのは、原因・被害範囲を調べる調査(フォレンジック)費用、被害者への損害賠償、そして事業が止まることによる損失の3つです。調査費用は調べる端末の台数で、損害賠償は漏えいした人数で変動し、いずれも被害が広がるほど膨らみます。
事業中断による損失は復旧費用とは別物で、JNSAも、売上高の減少額そのものではなく、本来得られた利益が得られなくなった分として捉えるべきだと整理しています。復旧の見積もりが出ても、止まっていた間の損失は別に積み上がる点に注意が必要です。
Q. インシデント対応費用を抑えるにはどうすればよいですか?
A. 費用を抑える鍵は、被害の規模を広げないことと、初動を早めることです。調査費用は調べる端末の台数で、事業中断の損失は停止期間の長さで増えるため、事故の覚知から対応着手までが遅れるほど費用はふくらみます。
事前の備えとしては、侵害の有無を定期的に点検して被害が小さいうちに気づく、通信やログを記録して調査範囲を絞り込めるようにする、改ざんされにくいバックアップで復旧を速める、サイバー保険で損害を移転する、といった方法が有効です。
Q. ランサムウェアの身代金は支払うべきですか?
A. 身代金の支払いは推奨されるものではなく、支払ってもデータが復旧する保証はありません。セキュリティ企業Covewareの集計では、2021年第1四半期に支払われた身代金の平均額は約22万ドル(当時の為替で約2,400万円)でしたが、これは支払いが行われたケースの平均であり、どの企業にも一律に生じる確定額ではありません。
ランサムウェアは調査・復旧・事業中断の費用が同時に発生しやすいため、支払いの是非を考える以前に、感染を前提とした復旧の備えを整えておくことが重要です。
社内セキュリティ対策の料金・資料を一括チェック
MCB FinTechカタログでは、インシデントの調査・復旧・備えに役立つ法人向けセキュリティサービスの最新資料を無料で一括請求できます。機能・料金・対応範囲を比べて、自社に合う備えを効率的に検討できます。
一括ダウンロードする
MCB FinTechカタログに掲載しませんか?
MCB FinTechカタログでは、掲載企業様を募集しています。マネックスグループの金融実務ノウハウを活かした独自の評価軸と検索設計により、導入検討者が最適なサービスを効率的に発見できる法人向け比較プラットフォームです。掲載後は管理画面から料金表や導入事例を随時更新でき、常に最新の情報を訴求可能。まずは下記フォームより、お気軽にお問い合わせください。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















