取引先を装うメール、ある日突然ファイルが開けなくなるランサムウェア、Webサイトからの情報の抜き取り。ひとくちにサイバー攻撃といっても、その種類と手口は年々増え、企業の規模を問わず被害が報告されています。「自社は何から狙われ、どこを守ればよいのか」を整理できないまま、対策が後回しになっている企業は少なくありません。
サイバー攻撃とは、ネットワークやコンピュータを通じて、情報の窃取・改ざん・破壊や、システムの停止・金銭の詐取などを狙う行為の総称です。攻撃の目的や侵入の入口によっていくつかの型に分けられ、型ごとに効く対策も変わります。
本記事では、主なサイバー攻撃の種類を一覧で整理したうえで、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表する優先順位、攻撃ごとの手口・想定される被害・対策、国内で実際に起きた被害事例までを解説します。さらに「メール・端末・Web/ネットワーク・認証・内部」といった守る対象(入口)ごとに、どこから手を打てばよいかの見取り図も示します。自社のセキュリティ対策を見直す出発点としてご活用ください。
目次
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サイバー攻撃の主な種類一覧
はじめに、企業が受ける主なサイバー攻撃を一覧で整理します。それぞれ「何をされる攻撃なのか」と「主な侵入口・狙い」、効く対策を並べたので、まずは全体像をつかんでください。各攻撃の詳しい手口と対策は後半で個別に解説します。
| 攻撃の種類 | ランサムウェア | 標的型攻撃 | ビジネスメール詐欺(BEC) | フィッシング | サプライチェーン攻撃 | DoS・DDoS攻撃 | SQLインジェクション・XSS | ブルートフォース・パスワードリスト攻撃 | ゼロデイ攻撃 | 内部不正 | AIを悪用した攻撃 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 何をされるか | データを暗号化して使えなくし、復旧やデータ非公開と引き換えに金銭を要求する | 特定の組織を狙い、時間をかけて侵入し機密情報を盗む | 取引先や経営者になりすました偽メールで、攻撃者の口座へ送金させる | 実在する組織を装い、ID・パスワードやカード情報を入力させて詐取する | 取引先や委託先を踏み台にして、本来の標的に侵入する | 大量の通信を送りつけ、サイトやサービスを停止させる | Webアプリの脆弱性を突いて、データベースの情報を抜き取ったり不正スクリプトを実行させたりする | パスワードを総当たりしたり、流出した認証情報を使い回したりして不正ログインする | 修正プログラムが提供される前の未知の脆弱性を突いて侵入する | 従業員・元従業員などが機密情報を持ち出す・改ざんする | 生成AIで巧妙な攻撃メールを作るなど、攻撃を容易化・高度化する |
| 主な侵入口・狙い | VPN機器・リモート接続の脆弱性、メール | 業務を装ったメール・添付ファイル | メール・なりすまし | メール・偽サイト | 委託先・取引先経由 | ネットワーク・公開サーバー | Webサイト・アプリの脆弱性 | 認証・ログイン | ソフトウェア・機器の脆弱性 | 内部の権限・持ち出し | メール・各種手口の高度化 |
| 主な対策 | 認証強化・パッチ適用・バックアップの分離保管 | メールフィルタ・従業員教育・端末の挙動監視 | 送金・振込先変更のメール以外での確認、メールフィルタ | 多要素認証・フィッシング対策・従業員教育 | 委託先の管理体制の確認・アクセス経路の点検 | DDoS対策サービス・CDN・通信量の監視 | 入力値の適切な処理・脆弱性診断・WAF | 多要素認証・パスキー・ログイン試行回数の制限 | 脆弱性情報の収集と迅速なパッチ適用・挙動検知による多層防御 | 最小権限の付与・操作ログの監視・退職者アカウントの停止 | 人の目に頼らない技術的な検知の強化・従来対策の徹底 |
攻撃の種類は数十に及ぶこともありますが、企業が優先して押さえるべきものはおおむね上記に集約されます。次に、このなかでも「いま特に警戒すべき攻撃」を公的な優先順位で確認します。
いま特に警戒すべきサイバー攻撃(IPA 情報セキュリティ10大脅威 2026)
すべての攻撃を均等に警戒するのは現実的ではありません。優先順位の拠りどころになるのが、IPAが毎年公表する「情報セキュリティ10大脅威」です。社会的に影響が大きかった脅威を、約250名からなる選考会の審議・投票で順位づけしたもので、2026年版の組織向けランキングは次のとおりです。
- ランサム攻撃による被害
- サプライチェーンや委託先を狙った攻撃
- AIの利用をめぐるサイバーリスク(2026年版で初選出)
- システムの脆弱性を悪用した攻撃
- 機密情報を狙った標的型攻撃
- 地政学的リスクに起因するサイバー攻撃(情報戦を含む)
- 内部不正による情報漏えい等
- リモートワーク等の環境や仕組みを狙った攻撃
- DDoS攻撃(分散型サービス妨害攻撃)
- ビジネスメール詐欺
出典・参考資料(1件)
- 出典:情報セキュリティ10大脅威 2026|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)(公開日:2026年1月29日/最終更新日:2026年5月21日)
ランサム攻撃は11年連続で選出されて2026年版も1位、サプライチェーン攻撃が2位と、上位の顔ぶれは近年固定化しつつあります。一方、2026年版では「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めてランクインし、3位に入りました。生成AIの普及により、攻撃がより容易に・巧妙になりつつあることを公的機関が明確に警告した形です。これらの上位脅威から優先的に対策を検討するのが現実的です。
6位の「地政学的リスクに起因するサイバー攻撃」は国家間の対立などを背景に重要インフラや関連企業を狙う攻撃、8位の「リモートワーク等の環境や仕組みを狙った攻撃」はVPNやクラウドなど社外からの接続点の弱点を突く攻撃を指します。IPAのランキングは複数の手口を束ねた脅威の区分で示されるため、個別の攻撃手口で並べた本記事の種類一覧とは粒度が一部異なります。
主要なサイバー攻撃の手口・被害・対策
ここからは、一覧で挙げた主要な攻撃について、手口・想定される被害・対策を一つずつ掘り下げます。どれを優先して警戒すべきかは、前章のIPAランキングを参照してください。
ランサムウェア(身代金要求型ウイルス)
ランサムウェアは、感染した端末やサーバー上のデータを暗号化して使えなくし、復旧と引き換えに金銭(身代金)を要求する攻撃です。近年は、暗号化に加えてデータを盗み出し「支払わなければ公開する」と脅す二重の手口が主流になっています。警察庁の白書は、この手口を次のように説明しています。
暗号化したデータを復元する対価として企業等に金銭等を要求する手口のほか、データを企業等から窃取した上で「対価を支払わなければ当該データを公開する」などと対価を要求する手口であるダブルエクストーション(二重恐喝)が認められる。対価を要求する手口を警察として確認したランサムウェアによる被害の報告件数134件のうち、ダブルエクストーション(二重恐喝)の手口によるものは111件であり、82.8%を占めている。
出典:令和7年版 警察白書|警察庁
同白書によれば、令和6年(2024年)中のランサムウェア被害の報告件数は222件で、高い水準が続いています。被害企業の内訳は大企業が61件、中小企業が140件(ほかに団体等を含む)と、規模を問わず発生している点が特徴です。侵入経路は、有効回答100件のうちVPN機器を悪用されたものが55件、リモートデスクトップが31件と、リモート接続の弱点を突かれるケースが大半を占めています。
対策の基本は、VPN機器やリモート接続の認証強化(多要素認証の導入など)と、OS・ソフトウェアを最新に保つことです。あわせて、定期的なバックアップを取得し、バックアップ自体が暗号化されないよう保管経路を分けておくと、被害を受けても復旧しやすくなります。
出典・参考資料(1件)
ランサムウェアは組織向け脅威の第1位で、予防・バックアップ・感染時の対応まで備えを一通り固めておきたい攻撃です。限られた予算・人員でどこから着手すればよいかの全体像は、次の記事で詳しく解説しています。
標的型攻撃・ビジネスメール詐欺(BEC)
一覧表では分けて示した標的型攻撃とビジネスメール詐欺(BEC)は、どちらもメールを起点とする点が共通するため、あわせて解説します。まず標的型攻撃は、特定の組織を狙って行われる攻撃で、業務に関係があるように見せかけたメールや添付ファイルを足がかりに、時間をかけて侵入し機密情報を盗み出します。IPAは次のように定義しています。
標的型攻撃とは、特定の組織(民間企業、官公庁、団体等)に対して行われるサイバーエスピオナージ(サイバー諜報活動)であり、主に機密情報の窃取を目的としている。
出典:情報セキュリティ10大脅威 2026 解説書[組織編]|IPA
同じくメールを悪用する攻撃に、ビジネスメール詐欺(BEC)があります。IPAは「巧妙な騙しの手口を駆使した、偽の電子メールを組織・企業に送り付け、従業員を騙して攻撃者の用意した口座へ送金させる詐欺の手口」と説明しています。取引先の請求書を偽装する型と、経営者になりすます型が代表的で、送金という直接的な金銭被害につながります。IPAの10大脅威2026でも10位に挙げられています。
対策としては、添付ファイルやリンクを安易に開かない運用ルールの徹底と、不審メールを検知・隔離するメールセキュリティの導入が有効です。送金・振込先変更などの重要な依頼は、メール以外の手段で事実確認する業務フローを設けておくと、なりすましによる誤送金を防げます。
出典・参考資料(1件)
フィッシング・ソーシャルエンジニアリング
フィッシングは、実在する企業や金融機関を装ったメール・SMSから偽サイトへ誘導し、IDやパスワード、クレジットカード情報などを入力させて盗み取る攻撃です。フィッシング対策協議会は次のように定義しています。
フィッシングとは実在する組織を騙って、ユーザネーム、パスワード、アカウントID、ATMの暗証番号、クレジットカード番号といった個人情報を詐取する行為です
出典:2026/09 フィッシング報告状況|フィッシング対策協議会
フィッシングの報告件数は高止まりが続いており、同協議会には2026年9月だけで94,661件の報告が寄せられました。人の心理的な隙や思い込みを突く手口は「ソーシャルエンジニアリング」とも呼ばれ、技術的な防御だけでは完全に防ぎきれません。盗まれた認証情報は、後述する不正ログインの足がかりにもなります。
対策は、メールの送信元や偽サイトを見破る従業員教育と、フィッシングサイトを自動ブロックするメール・Web側の対策の両輪です。あわせて、パスワードだけに頼らない多要素認証やパスキー(FIDO2)を導入しておくと、仮に認証情報が盗まれても不正ログインを防ぎやすくなります。
出典・参考資料(1件)
サプライチェーン攻撃
サプライチェーン攻撃は、本来の標的を直接狙う代わりに、セキュリティが手薄になりがちな取引先・委託先・利用しているソフトウェアを踏み台にして侵入する攻撃です。IPAの10大脅威2026でも2位に位置づけられており、委託先を含めた対策が課題になっています。
後述する大阪急性期・総合医療センターの事例のように、委託事業者のVPN機器の脆弱性を起点に、本体の基幹システムまで被害が波及するケースが実際に起きています。自社のセキュリティを固めても、取引先経由で侵入されれば被害を受けるため、委託先の管理体制やアクセス経路の確認が対策の鍵になります。
サプライチェーン攻撃は自社の対策だけでは防ぎきれず、取引先・委託先を含めた備えが欠かせません。3つの手口や、自社と取引先の双方で取るべき対策は、次の記事で掘り下げています。
サプライチェーン攻撃とは?3つの手口・被害事例・取引先を含めた対策を解説
取引先の一社が攻撃を受けたことで、自社の生産や情報まで止まってしまう。そんなニュースを見て、あるいは取引先から「セキュリティ体制についてのアンケートに答えてほしい」と依頼が届き、「サプライチェーン攻撃」という言葉をあらためて確かめたくなった…
DoS・DDoS攻撃
DoS攻撃・DDoS攻撃は、Webサイトやサーバーに大量の通信を送りつけて処理能力を超えさせ、サービスを停止・遅延させる攻撃です。多数の端末から一斉に攻撃する分散型(DDoS)は、IPAの10大脅威2026でも9位に挙げられています。情報の窃取というより、サービス停止による販売機会の損失や信用低下が主な被害です。
対策としては、異常な通信を検知・遮断するDDoS対策サービスやCDN(コンテンツ配信網)の利用、通信量の監視が有効です。公開サーバーやネットワーク機器の設定を見直し、攻撃の踏み台にされないようにすることも重要です。
SQLインジェクション・クロスサイトスクリプティング(XSS)
SQLインジェクションとクロスサイトスクリプティング(XSS)は、いずれもWebアプリケーションの脆弱性を突く攻撃です。SQLインジェクションはデータベースを不正に操作して情報を抜き取ったり改ざんしたりし、XSSは利用者のブラウザ上で不正なスクリプトを実行させて情報を盗みます。IPAはこれらを、Webサイトで特に注意すべき代表的な脆弱性として取り上げています。
対策は、入力値の適切な処理(エスケープやプレースホルダの利用)など、アプリケーション側で脆弱性の原因そのものをなくすことが基本です。運用面では、WAF(Webアプリケーションファイアウォール)による攻撃通信の遮断も、影響の低減に役立ちます。
出典・参考資料(1件)
ブルートフォース攻撃・パスワードリスト攻撃
ブルートフォース攻撃は、パスワードを総当たりで試して突破を狙う攻撃です。パスワードリスト攻撃は、他サービスから流出したIDとパスワードの組み合わせを使い回して不正ログインを試みるもので、同じパスワードを複数サービスで使い回している場合に被害が広がります。前述のとおり、盗まれた認証情報やリモート接続の弱いパスワードは、ランサムウェアなどのより深刻な侵入の入口にもなります。
対策は、推測されにくいパスワードの設定とログイン試行回数の制限に加え、多要素認証やパスキーの導入が効果的です。パスワード単体に頼らない認証にしておくことが、不正ログイン対策の要になります。
ゼロデイ攻撃
ゼロデイ攻撃は、ソフトウェアや機器に脆弱性が見つかってから修正プログラムが提供されるまでの「無防備な期間」を突く攻撃です。修正が存在しない未知の脆弱性を悪用されるため、パッチ適用だけでは防ぎきれない点が厄介です。IPAの10大脅威2026でも「システムの脆弱性を悪用した攻撃」が4位に挙げられています。
修正プログラムがない以上、単一の対策で完全に防ぐことは困難です。脆弱性情報を日頃から収集して迅速にパッチを適用する体制づくりと、不審な挙動を検知して早期に対応する仕組み(端末やネットワークの監視)を組み合わせた多層防御が、現実的な備えになります。
内部不正による情報漏えい
内部不正は、従業員や元従業員、委託先の担当者など、正規のアクセス権を持つ人による情報の持ち出しや改ざんです。IPAは次のように定義しています。
内部不正とは、組織が保有する技術情報や顧客情報といった秘密情報の持ち出し、第三者への提供、不特定多数が閲覧できる場所への公開、情報の改ざんや削除等の不正行為を指す。
出典:情報セキュリティ10大脅威 2026 解説書[組織編]|IPA
外部からの攻撃と異なり、正規の権限で行われるため検知が難しいのが特徴です。対策は、アクセス権限を業務に必要な範囲に絞る(最小権限の原則)、重要データの操作ログを記録・監視する、退職者のアカウントを速やかに停止する、といった運用と仕組みの両面が必要です。
技術的な対策の穴を見つけるには、「内部不正がなぜ起こるのか」を人的・組織的な両面から押さえておくと役立ちます。原因の整理と、不正アクセスとの関係は次の記事で解説しています。
AIを悪用した攻撃
2026年版のIPA 10大脅威で初めてランクインしたのが、AIの悪用です。生成AIの普及により、攻撃のハードルが下がり、手口が巧妙になっていると公的機関も警告しています。
AIによる翻訳機能・能力の向上により、攻撃者がWebページの翻訳やフィッシングの文面を標的の母国語で違和感なく表現することを可能にし、言語の壁を実質的に乗り越えた多言語での攻撃を格段に容易にする。また、生成AIをサイバー攻撃のアシスタントとして利用することで、様々な攻撃が容易に展開できるようになり、対処しなければならないインシデントの頻度・数量が増えたり、平均的な攻撃の技術水準が高まったりしている。
出典:情報セキュリティ10大脅威 2026 解説書[組織編]|IPA
これまで「日本語の不自然さ」で見破れていたフィッシングメールも、AIによって自然な文面になりつつあります。AIは新種の攻撃を生むというより、既存の攻撃(フィッシング・BEC・マルウェア作成など)を容易化・高度化させる点が脅威です。従来の対策を徹底しつつ、人の目だけに頼らない技術的な検知を強化する必要があります。
国内で実際に起きたサイバー攻撃の被害事例
サイバー攻撃は海外や大企業だけの話ではありません。国内の企業・組織でも、事業停止や大規模な情報漏えいにつながった事例が公表されています。
出版・IT企業へのランサムウェア攻撃(2024年)
KADOKAWAは2024年、ランサムウェア攻撃を受け、グループの複数サービスが長期間停止するとともに、大規模な情報漏えいが発生したと公表しました。同社の公式発表によれば、外部への漏えいが確認された個人情報は合計254,241人分にのぼります。
出典・参考資料(1件)
医療機関へのサプライチェーン経由の攻撃(2022年)
大阪急性期・総合医療センターは2022年10月31日、ランサムウェアによる大規模システム障害に見舞われ、電子カルテが暗号化された影響で長期間の診療制限を余儀なくされました。公式の調査報告書によれば、侵入の起点は病院本体ではなく、委託先である給食事業者のシステムに設置されていたVPN機器の脆弱性でした。サプライチェーン経由で基幹システムまで被害が及んだ代表的な事例です。
同報告書は、被害額について調査・復旧費用で数億円以上、診療制限に伴う逸失利益として十数億円以上を見込んでいるとしています。金銭面だけでなく、医療という社会インフラの停止という形で被害が現れた点で、影響の大きさを示す事例といえます。
出典・参考資料(1件)
仕組み・狙いで分かる攻撃グループ(守る対象との対応)
ここまで見てきた攻撃は数が多く、個別に覚えるのは大変です。そこで、攻撃を「仕組み・狙い」でグループに分け、それぞれが自社の「どの守る対象(入口)」を脅かすのかを整理します。この対応関係が、次の章の対策の見取り図につながります。

- 人を騙す型(メールを守る): フィッシング、ビジネスメール詐欺(BEC)、標的型攻撃メール。実在組織や取引先になりすまし、人の判断を突く
- 端末に感染する型(端末を守る): ランサムウェア、各種マルウェア。PCやサーバーに侵入してデータを暗号化・窃取する
- Web・通信を狙う型(Web・ネットワークを守る): SQLインジェクション、XSS、DoS・DDoS攻撃。公開サーバーやWebアプリの脆弱性、通信の過負荷を突く
- 認証を突破する型(認証を守る): ブルートフォース攻撃、パスワードリスト攻撃、不正ログイン。盗んだ・推測した認証情報でなりすます
- 内部・取引先を経由する型(内部・組織を守る): 内部不正、サプライチェーン攻撃。正規の権限や委託先を足がかりにする
攻撃の種類は多くても、守るべき対象(入口)は「メール・端末・Web/ネットワーク・認証・内部」に集約できます。次章では、この入口ごとに効く対策を整理します。
何から守る?入口別のサイバー攻撃対策の見取り図
自社が「何から・どこから守ればいいか」を、攻撃の入口ごとに整理します。すべてを一度にそろえる必要はなく、自社の弱点や優先度の高い脅威に合わせて、入口ごとに手を打っていくのが現実的です。
メール経由を守る
フィッシング・BEC・標的型攻撃メールは、多くがメールから始まります。不審なメールや危険な添付ファイルを、従業員に届く前に検知・隔離するメールセキュリティ(メールフィルタ)が入口対策の第一歩です。あわせて、標的型メール訓練などの従業員教育で「人の目」を鍛えることも欠かせません。
端末(PC・サーバー)を守る
すり抜けた脅威が端末に到達したときの備えが、エンドポイントの保護です。既知・未知のマルウェアを検知・隔離するEPPに加え、侵入後の不審な挙動を検知して調査・対応するEDRを組み合わせると、ランサムウェアの被害を早期に食い止めやすくなります。OS・ソフトウェアを最新に保つパッチ管理も、端末対策の基本です。
Web・社内ネットワークを守る
公開しているWebサイトやアプリは、SQLインジェクション・XSSの標的になります。WAFによる攻撃通信の遮断と、脆弱性診断による弱点の把握が有効です。
社内ネットワークは、通信を監視して侵入や不審な内部通信を検知する仕組み(NDRなど)を備えると、侵入後の横移動や情報の持ち出しを早期に察知できます。前述の警察白書のとおり、VPN機器など外部との接続点は特に狙われやすいため、重点的に守る必要があります。
認証(なりすまし・不正ログイン)を防ぐ
盗まれた・推測された認証情報による不正ログインを防ぐには、パスワード単体に頼らない認証が有効です。多要素認証(MFA)やパスキー(FIDO2)を導入すれば、パスワードが漏れても、もう一つの要素がなければログインできません。
ランサムウェアの主な侵入経路であるVPN・リモート接続にこそ、認証強化を優先的に適用すべきです。シングルサインオン(SSO)と組み合わせれば、利便性を保ちながら認証を一元管理できます。
内部・組織面を守る(教育・運用・バックアップ)
内部不正やサプライチェーン攻撃への備えは、技術だけでなく運用と組織の仕組みが要になります。アクセス権限を業務に必要な範囲に絞り、重要データの操作ログを監視し、委託先のセキュリティ体制を確認することが有効です。また、どの入口の攻撃を受けても事業を止めないために、定期的なバックアップと復旧手順の整備は全社共通の備えになります。
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サイバー攻撃対策に役立つセキュリティサービス
ここからは、前章で整理した守る対象のうち、メール・端末・認証・社内ネットワークの対策に役立つセキュリティサービスを紹介します(Web・内部面の対策は前章の見取り図を参照してください)。順番に読む必要はないので、自社の弱点や優先度に合わせて、気になる守る対象の行から見てください。
ここで紹介するのは入口ごとの代表的なサービスです。守る対象別にどんなタイプの製品があるか、選び方まで含めて社内セキュリティ対策全体を見渡したい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。
社内セキュリティソリューション比較|守る対象別のタイプ・代表サービスと選び方
社内のセキュリティを強化したいものの、端末の保護から不正アクセス対策、情報漏えいの防止まで課題が広く、何から手をつければよいか判断がつかないという声は少なくありません。テレワークやクラウド利用が定着し、社外に持ち出される端末やIDが増えたこ…
以下は、ご紹介するサービスの比較表です。
| サービス名 | CloudGate UNO | Network Blackbox | Eye"247" Safety Zone | Eye"247" Spam Shield |
|---|---|---|---|---|
| 守る入口 | 認証 | 社内ネットワーク | 端末(PC・サーバー) | メール |
| 主な対応攻撃 | 不正ログイン・なりすまし フィッシング パスワードリスト攻撃 | ネットワークへの侵入 内部不正・情報持ち出し 侵入後の横移動 | ランサムウェア 各種マルウェア 端末への侵入・不審な挙動 | 標的型攻撃メール フィッシング ウイルス・迷惑メール |
| 提供形態・仕組み | クラウド型ID基盤(IDaaS) SSO・多要素認証・パスキー | NDR(ネットワーク検知・対応) ミラーリング方式で全パケットを収集・保存 | エンドポイント保護ソフト(EPP+EDR) Bitdefenderエンジン搭載 | クラウド型メールセキュリティ(ゲートウェイ方式) MXレコード変更のみで導入 |
| 料金の目安 | 月額440円〜/ユーザー(税込、2026年11月時点) 30日間の無料体験あり | 要問い合わせ デモ申請あり | 要問い合わせ (導入台数・契約期間に応じた個別見積もり) | 要問い合わせ 1か月の無料トライアルあり |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る |
1. CloudGate UNO(株式会社インターナショナルシステムリサーチ)

CloudGate UNOは、株式会社インターナショナルシステムリサーチが自社開発するクラウド型のID基盤(IDaaS)です。シングルサインオン(SSO)、多要素認証(MFA)、パスキー(FIDO2)によるパスワードレス認証、アクセス制限、ID管理を一つにまとめ、認証の入口を強化します。
一度の認証で複数のクラウドサービスへアクセスできる利便性と、場所・デバイス・時間によるアクセス制限を両立できる点が特長です。パスキーによるパスワードレス認証は全プランで無制限に利用でき、ランサムウェアの侵入経路になりやすいリモート接続の認証強化にも役立ちます。料金はStandard Plusが1ユーザー月額440円(税込、2026年11月時点)からで、30日間の無料体験も用意されています。
同じ多要素認証でも、認証方式によって攻撃への強さは異なります。この違いについて、同社の平澤氏は次のように説明します。

当社が採用しているパスキーのパスワードレス認証は、フィッシング攻撃に対して非常に強い耐性を持ちます。SMS認証やワンタイムパスワードなどの一般的な多要素認証を突破する攻撃手法が顕在化する中、より安全な認証環境を提供します。
2. Network Blackbox(株式会社クワッドマイナージャパン)

株式会社クワッドマイナージャパンが提供するNetwork Blackboxは、社内ネットワークを流れる全パケットを収集・保存して脅威を可視化するNDR(Network Detection and Response)製品です。侵入や内部の不審な通信、情報の持ち出し、横移動といったネットワーク上の動きを検知します。
ログだけでなく通信そのものを保存するため、攻撃を検知した後に「いつ・どこから・何が起きたか」をパケット単位でさかのぼって調査できる(フォレンジック)点が強みです。ミラーリング方式で導入するためネットワークへの影響を抑えやすく、EDRやSIEM(各種ログを集約して分析する仕組み)など他のセキュリティ製品とも連携できます。料金は要問い合わせで、デモの申請が可能です。
3. Eye”247″ Safety Zone(株式会社フーバーブレイン)

Eye”247″ Safety Zoneは、EPP(マルウェアの検知・防御)とEDR(侵入後の挙動検知・調査・対応)を組み合わせたエンドポイントセキュリティソフトです。Bitdefenderと共同開発したエンジンを採用し、端末(PC・サーバー)の守りを固めます。
アプリケーションの不審な動きを常時監視する振る舞い検知や、ランサムウェアの動作を監視してファイルを自動バックアップ・リストアする機能を備えます。各PCの状況をブラウザベースの管理コンソールで一元管理できるため、専任のセキュリティ担当者を置きにくい中堅・中小企業でも運用しやすい設計です。料金は導入台数や契約期間に応じた個別見積もりとなります。
4. Eye”247″ Spam Shield(株式会社フーバーブレイン)

メール経由の攻撃を入口でブロックしたい企業に向くのが、クラウド型メールセキュリティのEye”247″ Spam Shieldです。自社のメールサーバーの手前でメールをフィルタリングし、標的型攻撃メール・迷惑メール・ウイルスメールがサーバーに届く前にブロックします。
MXレコードを変更するだけで導入でき、専用機器の購入やソフトのインストールが不要な点が特長です。学習型AIによるフィルタリングで、受信側の対策に加えて自社からの迷惑メール送信を防ぐアウトバウンド対策や、DMARC(送信元のなりすましを見破る送信ドメイン認証の仕組み)によるなりすまし対策も備えます。1か月の無料トライアルが用意されており、料金は問い合わせでの確認となります。
まとめ
サイバー攻撃は種類が多く見えますが、仕組み・狙いで分類すれば数は限られ、守る対象も「メール・端末・Web/ネットワーク・認証・内部」の5つに集約できます。どの入口を脅かす攻撃なのかという視点で捉えると、対策の全体像がつかみやすくなります。
IPAの優先順位ではランサムウェア・サプライチェーン攻撃・AIの悪用が上位に並び、国内でも事業停止や大規模漏えいにつながる被害が現実に起きています。現実的な第一歩として、まずは自社の弱点が大きい入口から、メールフィルタ・エンドポイント保護・多要素認証・ネットワーク監視といった対策を段階的に進めてみてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. サイバー攻撃とは何ですか?
A. サイバー攻撃とは、ネットワークやコンピュータを通じて、情報の窃取・改ざん・破壊や、システムの停止・金銭の詐取などを狙う行為の総称です。攻撃の目的や侵入の入口によってランサムウェア・標的型攻撃・フィッシング・DDoS攻撃などいくつかの型に分けられ、型ごとに効く対策も変わります。本記事では、企業が優先して押さえるべき主な種類を一覧と個別解説で整理しています。
Q. サイバー脅威とサイバー攻撃は何が違いますか?
A. サイバー脅威とサイバー攻撃の違いは、「脅威」が害をもたらしうる潜在的なリスクを指すのに対し、「攻撃」はその脅威が実際に実行され、被害が生じうる行為になった状態を指す点にあります。
たとえば未修正の脆弱性やフィッシングの可能性は「脅威」で、それを突いて実際にシステムへ侵入したり偽サイトへ誘導したりする行為が「攻撃」です。IPAの「情報セキュリティ10大脅威」は、この「脅威」を社会的影響の大きさで順位づけしたものにあたります。
Q. いま企業が最も警戒すべきサイバー攻撃は何ですか?
A. IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026(組織向け)」によれば、いま企業が特に警戒すべきサイバー攻撃は1位のランサム攻撃、2位のサプライチェーンや委託先を狙った攻撃、3位のAIの利用をめぐるサイバーリスクです。
ランサム攻撃は11年連続で選出されて2026年版も1位、サプライチェーン攻撃も上位が固定化しつつあり、2026年版ではAIの悪用が初めてランクインしました。すべてを均等に警戒するのは難しいため、こうした上位の脅威から優先的に対策を検討するのが現実的です。
出典・参考資料(1件)
Q. 中小企業もサイバー攻撃の標的になりますか?
A. 中小企業も、大企業と同様にサイバー攻撃の標的になります。警察庁の令和7年版警察白書によれば、令和6年(2024年)中のランサムウェア被害222件のうち、中小企業が140件と大企業の61件を上回っています。
専任のセキュリティ担当者を置きにくい中小企業は、むしろ侵入しやすい相手として狙われたり、取引先を攻撃するための踏み台(サプライチェーン攻撃の入口)にされたりするため、規模にかかわらず対策が必要です。
出典・参考資料(1件)
Q. サイバー攻撃で狙われやすい業界はどこですか?
A. サイバー攻撃は業種を問わず発生しますが、個人情報や機密情報を大量に扱う業種と、事業停止の影響が大きい業種(医療・製造・インフラ・金融など)が特に狙われやすい傾向があります。実際に国内でも、医療機関がランサムウェアで電子カルテを暗号化され長期の診療制限に追い込まれた事例が公表されています。
ただし「自社の業界は関係ない」という油断は禁物です。取引先を狙うための踏み台にされるケースもあるため、どの業種でも守りの入口を点検しておくことが大切です。
Q. サイバー攻撃を受けている予兆やサインには、どうやって気づけますか?
A. サイバー攻撃の予兆は、ふだんと違うログインや通信、端末の挙動として表れます。見慣れないログイン試行や深夜の不審なアクセス、身に覚えのない権限の変更、端末やネットワークの急な遅延、外部の不審なサーバーとの通信、インストールした覚えのないプログラムの出現などが代表的なサインです。
ただし、こうした兆候を人の目だけで常時見張るのは困難です。端末の不審な挙動を検知するEDRや、社内ネットワークの通信を監視して侵入・内部の不審通信を検知するNDRといった仕組みを備えると、被害が広がる前に早期に気づける確率が高まります。
Q. サイバー攻撃を受けたら、まず何をすればよいですか?
A. サイバー攻撃を受けた疑いがあるときは、封じ込めを最優先に動きます。まず被害を受けた端末やネットワークを隔離(LANケーブルを抜く・無線を切る)して被害の拡大を止め、攻撃の種類と影響範囲を特定したうえで、認証情報(パスワード)を変更します。証拠保全のため安易な再起動や初期化は避け、記録を残しながら対応します。
自社だけで判断が難しい場合は、IPAの「情報セキュリティ安心相談窓口」やJPCERT/CC、契約しているセキュリティベンダーに早めに相談します。個人情報の漏えいが疑われる場合は、個人情報保護委員会への報告も検討します。
Q. 生成AIの悪用で、サイバー攻撃はどう変わりますか?
A. 生成AIの悪用は、まったく新しい攻撃を生むというより、フィッシング・ビジネスメール詐欺・マルウェア作成といった既存の攻撃を「容易化・高度化」させる点が脅威です。IPAも、AIの翻訳能力によって攻撃者が標的の母国語で違和感のない文面を作れるようになり、多言語での攻撃が格段に容易になったと警告しています。
これまで「日本語の不自然さ」で見破れていたフィッシングメールも自然な文面になりつつあるため、人の目だけに頼らず、メールやエンドポイントでの技術的な検知を強化しておくことが重要になります。
出典・参考資料(1件)
Q. サイバー保険に入れば、サイバー攻撃対策は十分ですか?
A. サイバー保険は被害後の損害を補う備えであり、攻撃そのものを防ぐ対策の代わりにはなりません。保険は復旧費用や調査費、損害賠償、事業中断による損失などの財務的な影響を軽減する役割を担いますが、情報漏えいや事業停止そのものを止めるものではなく、失った信用はお金では戻りません。
メールフィルタ・エンドポイント保護(EPP/EDR)・多要素認証・ネットワーク監視といった「攻撃を防ぐ・早期に検知する」技術的な対策を土台に据えたうえで、万一に備えて保険を組み合わせる、という順序で考えるのが現実的です。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

















