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サイバー攻撃対策|企業がまずやるべきことを技術・組織の両面から解説

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サイバー攻撃の被害は、大企業だけの問題ではなくなっています。ランサムウェアによる事業停止や情報漏えいの報告は中小企業にも広がり、自社の損失だけでなく、取引先や顧客への影響まで含めて対応を迫られる場面が増えています。

一方で、「何から手をつければよいのか」「限られた人員と予算でどこまでやれば十分なのか」という全体像と優先順位が見えず、対策が後回しになっている企業も少なくありません。

本記事では、サイバー攻撃から自社を守るために実施すべき対策を、技術面と組織面に分けて整理します。そのうえで、限られた予算・人員で何から着手すべきかの優先順位、主な攻撃の手口とそれぞれに効く対策、専任者がいなくても始められる進め方と公的な支援・相談窓口までを順に解説します。自社の対策状況を点検し、次の一手を決めるための出発点として活用いただけます。

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サイバー攻撃対策としてまずやるべきこと——技術面・組織面の打ち手

サイバー攻撃への対策は、攻撃の種類を細かく覚えることから始める必要はありません。まずは、どの企業にも共通して効く基本的な打ち手を押さえることが出発点になります。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、中小企業がまず実施すべき基本対策として「情報セキュリティ6か条」を示しています。

  1. OSやソフトウェアは常に最新の状態にしよう!(脆弱性対策)
  2. ウイルス対策ソフトを導入しよう!(ウイルス対策)
  3. パスワードを強化しよう!(パスワード管理)
  4. 共有設定を見直そう!(機器の設定)
  5. バックアップを取ろう!(バックアップ)
  6. 脅威や攻撃の手口を知ろう!(情報収集)
出典:情報セキュリティ6か条 解説編(2026年9月)|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

この6項目は、攻撃の入り口をふさぐ基本であり、以降で解説する個別の手口への対策もこの延長線上にあります。ここからは、これらの打ち手を「技術的対策」と「組織的対策」の2つの面に分けて整理します。公的機関も、企業のセキュリティ対策を利用者向け・管理者向けの技術的な対策と、経営層向けの組織的な対策に分けて体系化しています。

出典・参考資料(2件)

技術的対策(端末・認証・ネットワーク・データを守る)

技術的対策は、攻撃が成立しにくい状態を仕組みで作る打ち手です。守る対象ごとに、次のように整理できます。

基盤として欠かせないのが、OS・ソフトウェアを最新に保つことです。攻撃の多くは既知の脆弱性を突くため、修正プログラム(セキュリティパッチ)を適用し続けるだけで防げる被害があります。社外からの接続に使うVPN機器やネットワーク機器も、本体のソフトウェア(ファームウェア)を含めて更新対象に含めます。

端末の防御には、ウイルス対策ソフト(EPP)に加え、侵入後の不審な挙動を検知して対応するEDR(Endpoint Detection and Response)を組み合わせる考え方が広がっています。入り口で防ぎきれなかった攻撃を、端末側で早期に見つけて封じ込める狙いです。

認証の強化も効果が高い領域です。パスワードを強固にするだけでなく、パスワードに加えてもう一つの要素で本人を確認する多要素認証を導入すると、パスワードが漏れても不正ログインを防ぎやすくなります。クラウドサービスの利用が増えた企業では、IDとアクセスをまとめて管理する仕組みが有効です。

このほか、ファイルやフォルダの共有設定・アクセス権を必要な範囲に絞り、データを定期的にバックアップして復旧できる状態を保つことも、技術的対策の柱です。メールやWebの通信を検査して不正なサイト・添付をブロックする仕組みも、入り口での防御に有効です。

社内ネットワークを流れる通信を監視して侵入後の不審な動きを検知する仕組み(NDR=ネットワーク検出・応答)や、システムの弱点を点検する脆弱性診断は、基本を固めたうえで取り入れる打ち手です。

組織的対策(人とルールで守る)

技術だけでは防ぎきれない攻撃もあります。フィッシングメールを開いてしまう、設定を誤る、といった人の行動が起点になる被害を減らすには、組織面の対策が欠かせません。

基本は、従業員へのセキュリティ教育です。不審なメールやリンクの見分け方、情報の持ち出しルール、被害に気づいたときの連絡先を周知し、定期的に繰り返すことで、組織全体の守りの水準が上がります。あわせて、情報の取り扱いルールやパスワードの運用方針を文書として定めておくと、判断のばらつきを防げます。

もう一つ重要なのが、被害に遭ったときの備えです。誰が・どこに連絡し・どう対応するかをあらかじめ決めておくと、被害の拡大を抑え、復旧までの時間を短くできます。攻撃を完全に防ぐことは難しいため、「防ぐ」対策と「起きた後に備える」対策の両方をそろえることが、組織面の対策の要点です。

ここまでの打ち手を、守る対象・主に防げる攻撃・着手の目安とあわせて一覧にすると、自社に足りない対策を確認しやすくなります。

← 横にスクロールできます →
対策項目OS・ソフトウェアの更新ウイルス対策ソフト(EPP)/EDRの導入パスワード強化と多要素認証共有設定・アクセス権の見直しデータのバックアップメール・Webの検査(フィルタリング)社内ネットワークの監視(NDR等)脆弱性診断従業員へのセキュリティ教育ルール・体制の整備(基本方針)インシデント対応の準備(連絡先・手順)
区分技術的対策技術的対策技術的対策技術的対策技術的対策技術的対策技術的対策技術的対策組織的対策組織的対策組織的対策
主に守る対象・防げる攻撃脆弱性を突く攻撃・ランサムウェアの侵入マルウェア・ランサムウェア・標的型攻撃不正アクセス・フィッシング情報漏えい・不正アクセスの拡大ランサムウェアによるデータ暗号化フィッシング・ビジネスメール詐欺・マルウェア侵入・内部の不審通信・水平移動・情報の持ち出しシステム・機器の弱点を突く攻撃フィッシング・標的型攻撃・ビジネスメール詐欺全般(判断のばらつき・設定ミスの防止)全般(被害発生後の拡大防止・早期復旧)
着手の目安まず着手する基本EPPは基本、EDRは次の段階まず着手する基本まず着手する基本まず着手する基本基本基本を固めた次の段階基本を固めた次の段階まず着手する基本基本基本

※上記は対策の全体像を整理したものです。対策項目はIPA「情報セキュリティ6か条」を基本線として、守る対象別に具体化しています。

何から着手すべきか——限られた予算・人員での優先順位

対策の全体像が見えても、人員や予算が限られていると、すべてを一度に実施するのは現実的ではありません。ここでは、無理なく進めるための着手の順番を整理します。

IPAも、基本対策を一度にそろえられなくても段階的に進めてよいとしています。

情報セキュリティ6か条は、大切な情報や日々の業務を守るために、必ず実施していただきたい基本的な対策です。一度に全てを実施することが難しい場合でも、できることから着実に進め、情報セキュリティ6か条の実践を目指しましょう。

出典:情報セキュリティ6か条 解説編(2026年9月)|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

着手の順番は、前掲の対策一覧表の「着手の目安」の列が目安になります。まず取り組みたいのは、追加の費用をかけずに始められて効果の大きい基本(OS・ソフトウェアの更新、パスワードの強化、データのバックアップ、従業員への注意喚起など)で、これらは「情報セキュリティ6か条」とほぼ重なります。

基本が固まったら、パスワードだけに頼らない多要素認証や端末の挙動を監視するEDR、その先に社内ネットワークの監視・脆弱性診断へと広げます。基本の多くは既存の環境のまま運用の工夫で始められますが、専門性の高い領域は製品・サービスの費用がかかるため、守りたい対象と予算を踏まえて必要な領域から投資するのが無理のない進め方です。

この着手の順番を3つの段階に整理すると、次のようになります。

サイバー攻撃対策に着手する順番を3段階で示した図。STEP1はまず着手する基本として、OS・ソフトウェアの更新、パスワードの強化、データのバックアップ、従業員への注意喚起を挙げ、追加費用をかけずに始められる情報セキュリティ6か条とほぼ重なる対策とする。STEP2は基本が固まったら多要素認証と端末の挙動を監視するEDRに広げる。STEP3はさらにその先として社内ネットワークの監視(NDR)と脆弱性診断に取り組む。

かかる費用の目安まで含めてさらに具体的に知りたい方は、以下の記事が参考になります。中小企業がまず着手すべき対策を、優先度と費用感をあわせて整理しています。

基本から始めて体制の整備へ広げるこの順序は、公的な制度とも整合します。IPAの「SECURITY ACTION」が示す取り組みの段階(後述)も、まず基本に取り組み、次に自社診断と基本方針の整備へ進むという同じ考え方に沿っています。

主な攻撃の手口と、それぞれに効く対策

ここからは、代表的な攻撃の手口を、それぞれに効く対策とあわせて確認します。どの対策がなぜ必要なのかは、攻撃の手口を知ると腑に落ちます。IPAは、2025年に社会的影響の大きかった事案から「情報セキュリティ10大脅威 2026」を選定し、組織向けの脅威を次のように順位づけています。

  1. ランサム攻撃による被害(11年連続11回目)
  2. サプライチェーンや委託先を狙った攻撃(8年連続8回目)
  3. AIの利用をめぐるサイバーリスク(初選出)
  4. システムの脆弱性を悪用した攻撃
  5. 機密情報を狙った標的型攻撃
  6. 地政学的リスクに起因するサイバー攻撃(情報戦を含む)
  7. 内部不正による情報漏えい等
  8. リモートワーク等の環境や仕組みを狙った攻撃
  9. DDoS攻撃(分散型サービス妨害攻撃)
  10. ビジネスメール詐欺
出典:情報セキュリティ10大脅威 2026(組織向け)|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

ここからは、このうち中小企業が特に被害に遭いやすく、自社の対策で備えやすい手口を、関連するものごとに取り上げます。ここで示す基本の打ち手——更新・認証・バックアップ・監視・教育——は、AIの悪用や地政学的リスク、内部不正といった脅威への備えとも重なります。

ランサムウェア

ランサムウェアは、端末やサーバーのデータを暗号化して使えなくし、復旧と引き換えに金銭を要求する攻撃です。近年は、データを暗号化するだけでなく「支払わなければ盗んだ情報を公開する」と脅す二重の手口も増えています。組織向けの脅威で11年連続の1位となっており、中小企業にとっても最大の脅威です。

被害の規模感は、警察庁の統計から確認できます。

  • 令和8年上半期におけるランサムウェアの被害報告件数は 123 件であり、半期の件数としては、統計を取り始めた令和2年下半期以降、最多となっている。
  • 被害組織へのアンケート結果によると、侵入経路は VPN 機器が約5割を占める状況である。
  • ランサムウェア攻撃の被害企業について、組織の規模別で見ると、前年と同様に中小企業が約6割を占めている。
  • 復旧に総額 1,000 万円以上を要した組織の割合は全体の6割を占める。
出典:令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について|警察庁サイバー警察局

侵入経路の約5割がVPN機器であることから、VPN機器を含むソフトウェアの更新と多要素認証が有効です。被害企業の約6割が中小企業である点も、規模にかかわらず対策が必要なことを示しています。備えの軸は、暗号化に備えたデータのバックアップ、侵入口をふさぐ脆弱性の管理と多要素認証、そして侵入後の挙動を検知するEDRや社内ネットワークの監視の組み合わせです。

もっとも、バックアップを取っていればそれで安心とは限りません。被害の実態について、次のような指摘もあります。

北口氏
株式会社SYNCHRO 取締役CMO
北口氏
独自インタビューより

現状、ランサムウェア攻撃を受けた企業のうち、約8割近くでバックアップデータも潰されていると、警察からも発表されています。バックアップ経路は通常のネットワーク上にあるため、ランサムウェアを仕掛けてきた攻撃者にもたどり着けてしまうものがほとんどだからです。

そのため、バックアップは本番環境のネットワークから切り離し、容易に書き換えられない形で保管することが重要です。バックアップを取るだけでなく、攻撃者の手が届かない保管方法まで設計しておくと、万一暗号化されても事業を立て直しやすくなります。

最大の脅威であるランサムウェアについて、予防・バックアップの取り方・感染してしまったときの対応までをひと通り押さえたい方は、以下の記事で基本と進め方を解説しています。

サプライチェーン・委託先を狙った攻撃

自社を直接狙わず、取引先や委託先、利用しているソフトウェアを経由して侵入する手口です。セキュリティ対策が比較的手薄な関係先が踏み台にされるため、自社だけを固めても防ぎきれません。組織向けの脅威で2位に挙げられています。

対策の軸は、委託先・取引先のセキュリティ状況を契約や確認を通じて把握し、外部と接続する箇所のアクセス権を必要最小限に絞ることです。関係先を経由した不審な通信は、社内ネットワークの監視で早期に捉えます。

取引先や委託先を経由した攻撃の具体的な手口や、取引先を含めた対策の進め方をより詳しく知りたい場合は、『サプライチェーン攻撃とは?3つの手口・被害事例・取引先を含めた対策を解説』をご覧ください。

標的型攻撃

特定の企業を狙い、業務に関係するふりをしたメールの添付ファイルやリンクから侵入する攻撃です。機密情報の窃取を目的とすることが多く、組織向けの脅威で5位に位置づけられています。巧妙に作り込まれるため、受け取った従業員が見破るのは簡単ではありません。

防ぐには、メールの検査やフィルタリングで不審なメールを減らし、従業員教育で開封・クリックのリスクを下げることが基本です。そのうえで、万一侵入された場合に備えて端末の挙動を監視するEDRを置けば、入り口・人・侵入後の三段構えになります。

フィッシング・ビジネスメール詐欺(BEC)

フィッシングは、実在する企業やサービスを装ったメール・サイトで、IDやパスワード、クレジットカード情報などを入力させて盗む手口です。ビジネスメール詐欺(BEC)は、取引先や経営層になりすまして偽の振込を指示し、金銭をだまし取ります。BECは組織向けの脅威で10位に挙げられています。フィッシングは、インシデント報告でも報告件数の多いカテゴリとして高止まりが続いています。

鍵になるのは、パスワードが盗まれても不正ログインを防ぐ多要素認証です。とくにフィッシングに強い認証方式(パスキーなど)は、偽サイトに認証情報を入力させる手口に対して有効とされています。あわせて、不審なサイトへのアクセスを遮断するメール・Webの検査と、送金手続きのダブルチェックなど業務ルールの整備も効果的です。

出典・参考資料(1件)

不正アクセス

盗んだIDとパスワードや、設定の不備を突いて、本来権限のないシステムへ侵入する攻撃です。使い回されたパスワードを複数のサービスで試す手口(パスワードリスト攻撃)もあり、一つのサービスからの漏えいが別のサービスへの不正ログインにつながります。

守りの中心は、多要素認証によるログインの保護と、アクセス権を必要な範囲に限定することです。不審なログインや内部の異常な通信は監視で捉えます。IDとアクセスをまとめて管理する仕組みを使えば、退職者のアカウント停止や権限の棚卸しも確実に行えます。

不正アクセスの手口や原因、被害に遭ったときの対応まで掘り下げて確認したい場合は、『不正アクセスとは?手口・原因・被害事例から対策・被害時の対応までわかりやすく解説』が参考になります。

システム・Webの脆弱性を突く攻撃

OS・ソフトウェアや、公開しているWebサイト・システムの弱点(脆弱性)を突いて侵入・改ざん・情報窃取を行う攻撃です。入力フォームを悪用してデータベースの情報を盗むSQLインジェクションなどが代表例で、組織向けの脅威では「システムの脆弱性を悪用した攻撃」として4位に挙げられています。修正プログラムが公開される前の弱点を突くゼロデイ攻撃もあります。

まず効くのは、OS・ソフトウェアを最新に保つことです。加えて、公開システムを守るWAF(Webアプリケーションを保護する仕組み)を導入し、自社の弱点を洗い出す脆弱性診断で見つかった弱点を修正につなげれば、攻撃の入り口を減らせます。

サービス妨害(DDoS)攻撃

大量の通信を一斉に送りつけ、Webサイトやサービスを処理できない状態にして停止させる攻撃です。組織向けの脅威で9位に挙げられており、ECサイトやオンラインサービスを提供する企業では、事業の停止に直結します。

備えとしては、大量通信を検知・遮断するDDoS対策サービスの利用や、通信の監視で異常な急増を早期に捉えることが挙げられます。自社で対処しきれない規模の攻撃には、通信事業者やクラウド事業者が提供する防御の仕組みを活用する手もあります。

専任者がいなくても始められる進め方と、公的な支援・相談窓口

ここまでの対策を、専門の担当者がいない中で進めるのは不安に感じるかもしれません。ここでは、専任者がいなくても始められる進め方と、困ったときに頼れる公的な窓口を紹介します。

専任者がいなくても始められる進め方(公的な無料支援・外部委託の活用)

まず、前述の「情報セキュリティ6か条」から取り組み、IPAの「SECURITY ACTION」で自己宣言する方法があります。自己宣言はIPAが対策状況を認定するものではなく、自社で取り組みを宣言する仕組みのため、専任者がいなくても始められます。取引先や顧客に対して、対策に取り組んでいることを示す目印としても使えます。

進め方に迷ったときは、無料で相談できる公的な窓口があります。経済産業省・中小企業庁は、中小企業・小規模事業者向けに「サイバーセキュリティ特別相談窓口」を設けています。相談は各都道府県の「よろず支援拠点」と中小企業基盤整備機構の「IT経営サポートセンター」で受け付けています。

出典・参考資料(2件)

社内のリソースだけで運用まで担うのが難しい場合は、外部に委ねる選択肢もあります。IPAと経済産業省は、中小企業向けに相談・監視・駆けつけ支援などをまとめて提供する「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の制度を設けています。自社でどこまでやり、どこから外部に任せるかは、次の章で整理します。

出典・参考資料(1件)

被害に遭ったときの相談窓口(国家サイバー統括室・警察庁)

万一、被害に遭った、あるいは被害が疑われる場合に備えて、公的な相談先を把握しておくと安心です。内閣官房の国家サイバー統括室は、個人向け・事業者向けの相談窓口をまとめた「サイバー対応特設サイト」を公開しています。どこに相談すればよいか迷ったときの入り口として使えます。

事業者向けには、警察庁の「サイバー事案に関する相談窓口」や、IPAの「企業組織向けサイバーセキュリティ相談窓口」があります。不正アクセスやウイルス感染、標的型攻撃に関する相談・届出を受け付けています。被害の拡大を抑えるには、早い段階で専門の窓口に相談することが重要です。

出典・参考資料(3件)

自社で対応するか、製品・診断・運用に任せるか——判断の考え方

対策には、自社で対応できるものと、専門性や運用の手間がかかるものがあります。限られた人員で続けるには、両者を切り分けて考えると判断しやすくなります。

自社で取り組みやすいのは、OS・ソフトウェアの更新、パスワードの強化、共有設定の見直し、バックアップ、従業員への注意喚起といった基本です。これらは費用をあまりかけずに始められ、日々の運用の中で続けられます。

一方で、専門性や継続的な運用が必要な領域は、製品や外部サービスの力を借りるのが現実的です。対策の領域ごとに、それを実現する手段を整理すると、次のようになります。

  • 認証の強化:多要素認証やシングルサインオン、IDとアクセスの一元管理を担うID基盤(IDaaS)で、不正ログインを防ぎます。
  • 社内通信の監視:ネットワークを流れる通信を検査するNDRで、侵入後の不審な動きや情報の持ち出しを検知し、事後の調査にも使います。
  • 端末の防御:ウイルス対策(EPP)と、侵入後の挙動を検知するEDRを組み合わせたエンドポイントセキュリティで、端末をまとめて守ります。
  • 弱点の点検:脆弱性診断で、システムや機器の弱点を定期的に洗い出し、修正につなげます。

運用まで含めて外部に任せたい場合は、監視や対応を代行するサービスや、前述の公的な「お助け隊サービス」も選択肢になります。自社の人員・予算と、守りたい対象を踏まえ、基本は自社で、専門領域は製品・サービスで、という組み合わせを検討するとよいでしょう。

専門領域を製品・サービスで補う際は、守る対象ごとにどんなタイプのソリューションがあり、どう選べばよいかを押さえておくと検討しやすくなります。以下の記事では、社内セキュリティソリューションを守る対象別のタイプに整理し、代表的なサービスと選び方をまとめて比較しています。

サイバー攻撃対策に役立つサービス

ここでは、前章で整理した対策の領域ごとに、それを実現する代表的なサービスを、認証の強化・社内通信の監視・端末の防御・脆弱性診断の順に紹介します。メール対策やWAF、DDoS対策など他の領域を含む全体像は、前掲の社内セキュリティソリューション比較もあわせてご覧ください。以下は各サービスの位置づけを比較した表です。

← 横にスクロールできます →
サービス名CloudGate UNONetwork BlackboxEye"247" Safety ZoneKATABAMI サイバーセキュリティ対策パッケージ
タイプID基盤(IDaaS)ネットワーク監視(NDR)エンドポイントセキュリティ(EPP+EDR)脆弱性診断+復旧・補償パッケージ
認証の強化●×××
社内通信の監視×●××
端末の防御××●×
脆弱性診断×××●
主な機能SSO・多要素認証・パスキー(FIDO2)・アクセス制限・ID管理全パケットの収集・保存/不審通信の検知・事後調査(フォレンジック)ウイルス対策(EPP)・EDR・振る舞い検知・ランサムウェア時の自動バックアップ月次の脆弱性診断(VDP)・隔離バックアップ(CRA)・サイバー保険
導入方式クラウド型(IDaaS)ミラーリング方式でネットワークに接続各端末にソフトを導入(ブラウザで一元管理)専用機器を設置(設置10分)
初期費用要問い合わせ要問い合わせ要問い合わせ要問い合わせ
月額費用400円〜600円/ユーザー(税抜)要問い合わせ要問い合わせ1台1,250円/月〜
詳細情報公式資料を見る公式資料を見る公式資料を見るオンライン相談を予約

※料金・機能は2026年11月時点の各社公式情報に基づきます。最新の内容や提供形態は各社の資料・公式サイトでご確認ください。

CloudGate UNO(株式会社インターナショナルシステムリサーチ)

CloudGate UNOのウェブサイト

シングルサインオン(SSO)・多要素認証(MFA)・アクセス制限・ID管理を1つにまとめた、ID管理をクラウドで提供する仕組み(IDaaS)です。株式会社インターナショナルシステムリサーチ(ISR)が自社開発しており、公式では「ゼロトラスト時代のSSO・アクセス制限・認証強化・ID管理プラットフォーム」と位置づけられています。

すべてのアクセスを無条件に信頼しないという考え方に基づき、端末・場所・時間などの条件に応じてアクセスを制御できます。FIDO2準拠のパスキー認証にも対応し、Google WorkspaceやMicrosoft 365など多数のクラウドサービスと連携します。認証の強化によって不正アクセスやフィッシングによる被害を防ぎたい企業に適したサービスです。

ひと口に多要素認証といっても、方式によって攻撃への耐性は異なります。この違いについて、平澤氏は次のように説明します。

平澤氏
株式会社インターナショナルシステムリサーチ 営業本部マーケティング部
平澤氏
独自インタビューより

当社が採用しているパスキーのパスワードレス認証は、フィッシング攻撃に対して非常に強い耐性を持ちます。SMS認証やワンタイムパスワードなどの一般的な多要素認証を突破する攻撃手法が顕在化する中、より安全な認証環境を提供します。

Network Blackbox(株式会社クワッドマイナージャパン)

Network Blackboxのウェブサイト

社内ネットワークを流れる通信を収集・検査し、脅威を検知・分析するNDR(ネットワーク検出および応答)のプラットフォームです。提供元の株式会社クワッドマイナージャパンは、ネットワークを流れるパケットを損失なく保存して分析する点を特徴として挙げています。

保存した通信をさかのぼって調べられるため、外部からの侵入、内部の不審な通信、感染端末から他端末へ広がる動き(水平移動)、データの外部持ち出しといった、ネットワーク上に痕跡が残る事象の検知と事後調査(フォレンジック)に対応します。端末側のEDRやログ管理とは置き換えではなく補完の関係で、社内通信の監視を強化したい企業に向いています。

Eye“247” Safety Zone(株式会社フーバーブレイン)

Eye"247" Safety Zoneのウェブサイト

ウイルス対策(EPP)と、侵入後の挙動を検知して対応するEDRを組み合わせた、端末向けのセキュリティソフトです。株式会社フーバーブレインが提供し、Bitdefenderと共同開発した検知エンジンを採用しています。アプリケーションの動作を常時監視する振る舞い検知で、未知の不審な動きも捉えます。

ランサムウェア対策として、不審な動作を監視しながらファイルを自動でバックアップし、被害時には直近のバックアップから復元できる機能を備えます。Webアクセスの制御やフィッシングサイトの自動ブロックも行い、端末を起点とする被害を防ぎます。端末の防御をEPPとEDRの両面で固めたい企業に適しています。

KATABAMI サイバーセキュリティ対策パッケージ(株式会社SYNCHRO)

KATABAMI サイバーセキュリティ対策パッケージのウェブサイト

株式会社SYNCHROが提供する、脆弱性診断とバックアップを組み合わせたパッケージです。独自の「KATABAMI」技術を使い、脆弱性診断サービス「KATABAMI VDP」や、改ざんできない形で保存するイミュータブルなバックアップ「KATABAMI CRA」をシリーズとして用意しています。

従来、社内ネットワークの内側の脆弱性診断は専門家の訪問が必要で、年に1回程度にとどまりがちでした。KATABAMIは、独自の通信経路を使ってリモートからネットワーク内部の機器まで診断できるため、立ち会いの工数をかけずに継続的に実施できる点を特徴としています。弱点の点検と、被害時に備えたバックアップをあわせて確保したい企業に向いています。

まとめ

サイバー攻撃への対策は、攻撃の種類を網羅的に覚えることではなく、基本的な打ち手を着実に積み上げることから始まります。OS・ソフトウェアの更新、多要素認証、バックアップ、従業員教育といった基本は、費用をかけずに始められ、効果も大きい対策です。

基本を固めたうえで、端末の監視(EDR)、社内ネットワークの監視(NDR)、脆弱性診断といった専門性の高い対策へ段階的に広げ、自社で担う部分と製品・外部サービスに任せる部分を切り分けると、限られた人員でも無理なく続けられます。公的な無料相談や、被害時の相談窓口も活用できます。

自社に足りない対策が見えてきたら、それを実現するサービスの資料を取り寄せ、機能や費用を比べながら、自社に合う形を見つけてください。

よくある質問(FAQ)

Q. サイバー攻撃対策とは何ですか?

A. サイバー攻撃対策とは、不正アクセスやウイルス感染などの攻撃から、企業の情報資産や業務を守るための技術的・組織的な取り組みの総称です。OS・ソフトウェアの更新やウイルス対策ソフト、多要素認証といった仕組みで守る「技術的対策」と、従業員教育やルール・体制の整備で守る「組織的対策」の両面で構成されます。

攻撃を完全に防ぐことは難しいため、被害を防ぐ対策と、被害が起きた後に備える対策の両方をそろえることが基本です。

Q. サイバー攻撃対策は中小企業にも必要ですか?

A. サイバー攻撃対策は、中小企業にも必要です。警察庁の統計では、ランサムウェア被害を受けた企業の約6割を中小企業が占めており、規模の小さい企業も標的になっています。とくに取引先や委託先を経由して侵入するサプライチェーン攻撃では、対策が手薄な企業が踏み台にされやすく、自社の被害にとどまらず取引先や顧客にも影響が及びます。

出典・参考資料(1件)

Q. サイバー攻撃対策は何から始めればいいですか?

A. サイバー攻撃対策は、費用をかけずに始められて効果の大きい基本から着手するのが現実的です。具体的には、OS・ソフトウェアの更新、ウイルス対策ソフトの導入、パスワードの強化、共有設定の見直し、データのバックアップ、従業員への注意喚起で、IPAが示す「情報セキュリティ6か条」とほぼ重なります。

基本が固まったら、多要素認証や端末の挙動を監視するEDR、さらに社内ネットワークの監視・脆弱性診断へと段階的に広げます。一度にすべてをそろえる必要はなく、できることから着実に積み上げる順番が効果的です。

Q. サイバー攻撃対策にはどれくらい費用がかかりますか?

A. サイバー攻撃対策の費用は取り組む範囲によって変わり、基本的な対策の多くは追加費用をほとんどかけずに始められます。OS・ソフトウェアの更新やパスワードの強化、共有設定の見直し、従業員教育などは、既存の環境のまま運用の工夫で実施できます。

一方、EDRや社内ネットワークの監視、脆弱性診断といった専門性の高い対策は製品・サービスの導入費用がかかるため、守りたい対象と自社のリソースを踏まえ、必要な領域を見極めて段階的に投資する考え方が無理のない進め方です。

Q. 専任のセキュリティ担当者がいなくてもサイバー攻撃対策はできますか?

A. 専任の担当者がいなくても、サイバー攻撃対策は始められます。IPAの「情報セキュリティ6か条」のような基本は特別な専門知識がなくても実施でき、取り組みを宣言する「SECURITY ACTION」も自社の自己宣言で利用できます。進め方に迷ったときは中小企業向けの無料相談窓口を使え、監視や対応といった運用まで自社で担うのが難しい場合は、外部のサービスに委託する選択肢もあります。

出典・参考資料(1件)

Q. ウイルス対策ソフトを入れていればサイバー攻撃対策は十分ですか?

A. ウイルス対策ソフトだけでは、サイバー攻撃対策として十分とはいえません。ウイルス対策ソフト(EPP)は入り口で既知のウイルスを防ぎますが、すり抜けた攻撃や侵入後の不審な動きには、端末の挙動を検知するEDRや社内ネットワークの監視が必要です。

さらに、フィッシングや設定ミスなど人の行動が起点になる被害は技術だけでは防ぎきれないため、多要素認証や従業員教育、ルールの整備といった組織面の対策を組み合わせることが欠かせません。

Q. サイバー攻撃対策について無料で相談できる窓口はありますか?

A. サイバー攻撃対策については、中小企業・小規模事業者が無料で相談できる公的な窓口があります。経済産業省・中小企業庁の「サイバーセキュリティ特別相談窓口」が、各都道府県の「よろず支援拠点」と中小企業基盤整備機構の「IT経営サポートセンター」で相談を受け付けています。何から手をつけるか迷ったときの入り口として活用できます。

出典・参考資料(1件)

Q. サイバー攻撃の被害に遭ったらどこに相談すればいいですか?

A. サイバー攻撃の被害に遭った、または被害が疑われる場合は、事業者向けの公的な相談窓口に早い段階で相談することが重要です。内閣官房の国家サイバー統括室が相談先をまとめた「サイバー対応特設サイト」を公開しているほか、警察庁の「サイバー事案に関する相談窓口」やIPAの企業組織向け相談窓口が、不正アクセスやウイルス感染などの相談・届出を受け付けています。

対応が早いほど被害の拡大を抑え、復旧までの時間を短くできます。

出典・参考資料(3件)

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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