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サイバーセキュリティ対策とは?企業が取るべき対策の全体像と進め方・選び方を解説

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ランサムウェアによる業務停止や、取引先を踏み台にした攻撃のニュースが絶えません。IPA(情報処理推進機構)が公表した「情報セキュリティ10大脅威 2026」でも、組織向けの脅威はランサム攻撃が11年連続の1位、サプライチェーンや委託先を狙った攻撃が2位と、企業が標的になる構図が続いています。専任のセキュリティ担当を置きにくい中小企業でも、対策は避けて通れないテーマになりました。

サイバーセキュリティ対策は、技術・人・組織・物理と範囲が広く、何から手をつければよいか、全体像と優先順位が見えないまま検討が止まってしまいがちです。「結局、自社は具体的に何をやればいいのか」を知りたい、という段階の担当者は少なくありません。

この記事では、企業が取るべきサイバーセキュリティ対策の全体像を、技術的・人的・組織的・物理的に整理し、具体策まで落とし込んで解説します。あわせて「何から・どの順で」始めるかの優先順位、対策にかかる費用と国の支援制度、自社だけで手が回らない領域を外部サービスで補う際の選び方まで整理しました。自社の守りを整えるための検討材料としてご活用ください。

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サイバーセキュリティ対策とは?企業を狙う攻撃の最新動向

具体的な対策に入る前に、まず「何から守るのか」を短く押さえておきます。守るべき対象と、いま企業が直面している攻撃の傾向がわかると、このあとの対策の必要性が腹落ちしやすくなります。

サイバーセキュリティとは何か(情報セキュリティとの違い)

サイバーセキュリティは、法律上も定義されています。2014年に制定されたサイバーセキュリティ基本法は、第2条で次のように定めています。

電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式(中略)により記録され、又は発信され、伝送され、若しくは受信される情報の漏えい、滅失又は毀損の防止その他の当該情報の安全管理のために必要な措置並びに情報システム及び情報通信ネットワークの安全性及び信頼性の確保のために必要な措置(中略)が講じられ、その状態が適切に維持管理されていること

出典:サイバーセキュリティ基本法(平成二十六年法律第百四号)第二条|e-Gov法令

かみ砕くと、デジタルの情報が漏れたり・消えたり・壊れたりしないように守り、情報システムやネットワークを安全に使い続けられる状態を保つこと、を指します。似た言葉の「情報セキュリティ」は紙の書類なども含めた情報全般の保護を指すのに対し、サイバーセキュリティはそのうちデジタル・ネットワーク領域に焦点を当てた考え方だと整理すると、両者の関係がつかみやすくなります。

企業を狙う主なサイバー攻撃と最新動向

どんな攻撃に備えるのかを知ると、対策の優先順位を考えやすくなります。IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」から、組織向けの脅威の上位5つを抜粋すると次のとおりです(全10位は出典で確認できます)。

  1. ランサム攻撃による被害(11年連続11回目)
  2. サプライチェーンや委託先を狙った攻撃(8年連続8回目)
  3. AIの利用をめぐるサイバーリスク(初選出)
  4. システムの脆弱性を悪用した攻撃
  5. 機密情報を狙った標的型攻撃

上位には、データを暗号化して身代金を要求するランサムウェアや、セキュリティの弱い取引先・委託先を踏み台にするサプライチェーン攻撃が並びます。2026年版で初めて選出された「AIの利用をめぐるサイバーリスク」は、生成AIを悪用した巧妙な攻撃メールの作成などが背景にあり、最新の警戒点です。

このほか、OSやソフトの弱点(脆弱性)を突く攻撃、特定の企業を狙い撃つ標的型攻撃も、企業がまず押さえておきたい攻撃類型といえます。

出典・参考資料(1件)

なかでも被害が深刻になりやすいランサムウェアは、予防・バックアップ・感染時の初動を分けて備えることが要になります。具体的な進め方は、次の記事で詳しく解説しています。

企業が取るべきサイバーセキュリティ対策の全体像

ここからが本題です。企業が取るべき対策は、「技術的対策」「人的・組織的対策」「物理的対策」の3つに整理すると全体像をつかみやすくなります。この3分類は、公的機関やセキュリティベンダーの解説で広く使われている枠組みです。まず各分類の具体策を一覧で示し、そのあとで各分類の要点に加え、対策を組み立てる土台となる考え方(多層防御・ゼロトラストなど)と、被害に遭ったときの備えも整理します。

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サイバーセキュリティ対策の3分類と主な具体策技術的対策人的・組織的対策物理的対策
ねらいシステムや通信を技術で守る人の行動とルールで守る機器や場所を物理的に守る
主な具体策OS・ソフトウェアの更新(脆弱性の解消)
多要素認証
端末保護(EDR・ウイルス対策)
通信の制御(UTM〔統合脅威管理〕・ファイアウォール)
バックアップ(3-2-1)
セキュリティポリシーの策定・周知
従業員への教育・標的型メール訓練
アクセス権限の最小化
退職者アカウントの確実な停止
サーバールーム等の入退室管理
機器・記録媒体の施錠管理
端末の持ち出し・盗難対策

※IPA・東京都などの公的資料にもとづく整理です。自社の規模・業種に応じて優先度は変わります。

技術的対策(更新・多要素認証・端末保護・バックアップ)

技術的対策の土台は、OSやソフトウェアを常に最新の状態に保つことです。攻撃の多くは既知の脆弱性を突いて侵入するため、提供元が配布する修正プログラム(パッチ)を速やかに適用するだけで、入口の多くを塞げます。IPAが中小企業向けに示す「情報セキュリティ6か条」でも、第1項に「OSやソフトウェアは常に最新の状態にしよう!」が掲げられています。

認証の強化も欠かせません。パスワードだけに頼らず、スマートフォンアプリやセキュリティキーなど別の要素を組み合わせる多要素認証を導入すると、万一パスワードが漏れても不正ログインを防ぎやすくなります。端末側では、不審な挙動を検知・隔離するEDR(Endpoint Detection and Response)やウイルス対策ソフトで、マルウェアの侵入と被害拡大を抑えます。

ランサムウェアからの復旧の要になるのが、バックアップです。米国CISA(US-CERT)の資料は、バックアップの基本として「3-2-1ルール」を挙げています。要点は次の3つです。

  • 重要なファイルは3つのコピーを保つ(本番1つとバックアップ2つ)
  • 異なる2種類の媒体に保存し、異なる障害に備える
  • うち1つは遠隔地(オフサイト)に保管する

同じ場所の1つの媒体だけにバックアップを置くと、ランサムウェア感染時にバックアップごと暗号化される恐れがあります。コピーを分散し、少なくとも1つはネットワークから切り離して遠隔地に保つことで、感染時にも事業を復旧できる確率が高まります。

出典・参考資料(2件)

人的・組織的対策(ポリシー・教育・権限管理)

どれだけ技術で固めても、使う人の行動やルールに穴があれば攻撃は成立します。まずは、情報の取り扱いや守るべきルールを定めたセキュリティポリシーを策定し、全従業員に周知することが出発点です。IPAはポリシーの基本方針サンプルを公開しており、ゼロから作らなくても自社向けに調整して使えます。

従業員への教育・訓練も効果が高い対策です。標的型メールを模した訓練や、不審なメール・サイトへの注意喚起を定期的に行うことで、人を起点にした被害の多くを防げます。あわせて、アクセス権限は業務に必要な範囲に絞る「最小権限」の考え方で付与し、退職者のアカウントは確実に停止する運用を徹底します。権限の広すぎるアカウントや放置された退職者アカウントは、内部不正や不正アクセスの入口になりやすいためです。

物理的対策(入退室・機器管理)

見落とされがちですが、物理的な守りも対策の一部です。サーバーや重要な情報を扱う区画には入退室管理を設け、誰がいつ入室したかを記録します。ノートパソコンやUSBメモリなどの持ち出しルールを定め、施錠管理や盗難・紛失時の対策(遠隔ロック・暗号化)まで備えておくと、端末の紛失が情報漏えいに直結するリスクを下げられます。

対策の考え方(多層防御・ゼロトラスト・CIA)

個別の対策を組み立てるうえで、土台になる3つの考え方があります。1つ目は「多層防御」で、入口・内部・出口と複数の層で守りを重ね、1つの対策を突破されても次の層で食い止める発想です。2つ目は「ゼロトラスト」で、社内ネットワークの内側だからと無条件に信用せず、アクセスのたびに利用者や端末を検証する考え方です。働く場所やクラウド利用が広がった今、重要性が増しています。

3つ目は、情報セキュリティの目的を表す「CIA」です。機密性(Confidentiality:許可された人だけが見られる)・完全性(Integrity:情報が改ざんされない)・可用性(Availability:必要なときに使える)の3要素を指します。

自社の対策がこのどれを守っているかを意識すると、抜け漏れに気づきやすくなります。国際的な指針であるNISTのサイバーセキュリティフレームワーク(CSF 2.0)も、統治・識別・防御・検知・対応・復旧という観点で対策を体系化しており、考え方の参照先として役立ちます。

出典・参考資料(1件)

ここで触れたCIA(機密性・完全性・可用性)をはじめ、情報セキュリティの基本的な考え方と企業が取り組むべき対策を基礎から押さえたい場合は、次の記事が参考になります。

被害発生に備えた対応・復旧の備え

対策を尽くしても、被害をゼロにはできません。だからこそ「起きたとき、どう動くか」を事前に決めておくことが、被害を最小限に抑える鍵になります。まずは、誰が何を判断し、どこへ連絡するかを定めたインシデント対応体制を整えます。社内の報告ルート、外部の相談窓口や専門業者の連絡先を一覧にしておくと、混乱のなかでも初動が早まります。

対応は、攻撃や異常を見つける「検知」、被害を広げないための「対応(封じ込め)」、事業を元に戻す「復旧」という段階で進みます。復旧の要になるのが、前述のバックアップです。

技術的対策で触れた3-2-1ルールで分散保管したバックアップがあれば、業務データが暗号化されても身代金を払わずに復旧できる可能性が高まります。事業継続計画(BCP)にサイバー被害時の復旧手順を組み込んでおくと、いざというときに機能します。

実際に被害が疑われたときの初動(やってはいけないことや報告義務を含む)を、具体的な手順で確認しておきたい場合は、次の記事が参考になります。

何から始める?対策の優先順位と進め方

対策の全体像がわかっても、すべてを一度に実施できる企業は多くありません。限られた人員・予算では、現状把握から始めて、費用対効果の高い基本対策から段階的に進めるのが現実的です。ここでは、無理のない進め方を順を追って示します。

サイバーセキュリティ対策の進め方を4つのステップで示した図。STEP1は現状を点検(IPAの無料セルフ診断25項目で弱点を把握)、STEP2は基本対策を固める(IPAの6か条を低コストで)、STEP3は体制づくり・教育(ポリシー策定・従業員教育・標的型メール訓練)、STEP4は規模に応じて拡張(ログ監視・脆弱性診断・監視運用の外部委託へ段階的に)。

まず自社の現状を点検する(公的な無料セルフ診断)

最初の一歩は、自社の現状を知ることです。IPAは「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」という無料のセルフ診断を公開しており、25項目の問いに答えるだけで、自社の対策状況と弱点を把握できます。何ができていて何が足りないのかが見えると、やみくもに製品を導入する前に、優先して埋めるべき穴がわかります。

出典・参考資料(1件)

まず無料〜低コストでできる基本対策から固める

現状を把握したら、先に挙げた全体像の具体策のうち、被害の起点になりやすく、かつ安価に導入できるものから着手します。何を最優先にすべきか迷う場合は、IPAの「情報セキュリティ6か条」が指針になります。中小企業がまず取り組むべき基本対策を6項目にまとめたもので、内容は次のとおりです。

  1. OSやソフトウェアは常に最新の状態にしよう!
  2. ウイルス対策ソフトを導入しよう!
  3. パスワードを強化しよう!
  4. 共有設定を見直そう!
  5. バックアップを取ろう!
  6. 脅威や攻撃の手口を知ろう!

これらは多くが追加費用をかけずに始められます。たとえば多要素認証は、すでに契約しているMicrosoft 365やGoogle Workspaceの標準機能として無料で有効化できる場合があります。新しいサービスを契約する前に、契約済みのプランで使える機能を棚卸しし、使い切ることが、費用を抑える第一歩です。

出典・参考資料(1件)

体制づくり・従業員教育を進める

基本対策が整ったら、組織としての守りを固めます。セキュリティポリシーを策定し、従業員教育や標的型メール訓練を定期的に実施します。前段の基本対策(技術)と、この体制づくり(人・組織)は車の両輪で、どちらか一方だけでは守り切れません。対外的に取り組みを示したい場合は、次章で触れるSECURITY ACTIONの宣言が、取引先や経営層への説明材料にもなります。

企業規模に応じた進め方の目安

進め方は企業規模によっても変わります。専任担当を置きにくい小規模〜中小企業は、6か条の基本対策と、後述するお助け隊サービスのような外部のパッケージ活用で土台を固めるのが現実的です。

従業員が増え、扱う情報が重要になる中堅企業では、ログ監視や脆弱性診断、監視・運用の外部委託など、被害を早期に検知・対応する仕組みへ段階的に広げていきます。自社の規模とリスクに見合った水準を見極め、背伸びしすぎず、かつ必要な守りは落とさないバランスで進めることが大切です。

とくに専任担当を置きにくい中小企業向けに、何から始めるかを優先順位と費用感つきで整理した記事もあります。自社の規模に近い進め方を具体的に知りたい場合の参考にしてください。

対策にかかる費用と国の支援制度

対策を進めるうえで気になるのが費用です。幸い、国は中小企業のサイバーセキュリティ対策を後押しする制度を複数用意しており、無料で始められる枠組みや、費用の一部を補助する制度を活用すれば、負担を抑えながら対策を進められます。

対策費用の考え方(自前と外部委託)

費用は、自前で取り組む部分と、外部に委託する部分に分けて考えると見通しが立ちます。基本対策の多くは、契約済みのクラウドサービスの機能活用や社内運用で、追加費用を抑えられます。

一方、24時間の監視や専門的な脆弱性診断などは自社だけで担うのが難しく、外部サービスへの委託費が中心になります。監視・運用の委託は費用に占める割合が大きくなりやすいため、どこまでを自前で行い、どこから外部に任せるかの線引きが、総額を左右します。

主な対策カテゴリごとの費用のおおよその目安は、次のとおりです。幅が広いのは、既存で契約しているクラウドの機能をどこまで使えるか、運用を自社で担うか外部に委託するかで総額が変わるためです。自社の予算の当たりを付ける手がかりとしてご覧ください。

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対策カテゴリ別の費用の目安ID・認証(多要素認証・アクセス管理)端末保護(EDR・ウイルス対策)ネットワーク(UTM・ファイアウォール)バックアップ従業員教育・訓練脆弱性診断監視・運用(外部委託)サイバー保険
費用の目安1人あたり月額0〜1,500円程度1台あたり年額3,000〜12,000円程度導入30万〜100万円+月額2万〜5万円程度1人あたり月額数百〜数千円程度1人あたり年額1,000〜3,000円+訓練都度ツール型は月額数万円〜/手動のスポット診断は数十万円〜月額10万〜50万円程度年額10万〜80万円程度(補償上限による)
位置づけ既存ライセンスで0円の範囲もあるマルウェア・不正プログラム対策通信の出入口を守るランサムウェアからの復旧の要標的型メール訓練など攻撃される前に弱点を洗い出す総額を左右しやすい万一の損害に備える

※各種調査・ベンダー公表資料にもとづく2026年時点の目安です。対象範囲・契約条件・企業規模により変動します。

SECURITY ACTION(無料で始める自己宣言制度)

SECURITY ACTIONは、中小企業が情報セキュリティ対策に取り組むことを自ら宣言する、IPAの無料制度です。取り組みの段階に応じて「一つ星」と「二つ星」があります。

  • 一つ星:「情報セキュリティ6か条」に取り組むことを宣言する(対策の実施前でも申し込める)
  • 二つ星:「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」で現状を把握し、「情報セキュリティ基本方針」を策定・外部公開したうえで宣言する

宣言するとロゴマークを使えるようになり、取引先や顧客に対策姿勢を示せます。費用をかけずに「何から始めるか」の指針としても機能するため、対策の出発点に位置づけやすい制度です。後述する補助金の申請要件になっている場合もあります。

出典・参考資料(1件)

サイバーセキュリティお助け隊サービス

サイバーセキュリティお助け隊サービスは、中小企業に必要なサイバー攻撃対策を、民間の事業者がワンパッケージで提供する制度です。異常の監視、事案発生時の初動対応(駆け付け)、簡易なサイバー保険などがまとめて提供されるため、製品を個別に揃えるより導入のハードルが低いのが特長です。

監視タイプは、社内ネットワークの境界で守る「ネットワーク監視」、各端末に導入する「端末監視」、両者を組み合わせる「併用」の3種類から選べます。

後述する個別のサービス(ネットワーク監視や端末防御など)を自社で選んで組み合わせる方法もありますが、何から手をつけるか迷う段階では、必要な対策がまとまったお助け隊サービスが入口として分かりやすい選択肢になります。専任のセキュリティ担当を置きにくい企業が最初の一歩を外部の力で踏み出すのに向いており、後述の補助金の対象にもなっています。

出典・参考資料(1件)

補助金の活用(デジタル化・AI導入補助金)

国の補助金を使えば、対策の実質負担を下げられます。従来のIT導入補助金は、2026年の制度で「デジタル化・AI導入補助金」に名称が変わりました。その中の「セキュリティ対策推進枠」では、IPAが公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されたサービスの利用料が補助の対象になります。

  • 補助対象経費:お助け隊サービスの利用料(最大2年分)
  • 補助額:5万円〜150万円
  • 補助率:中小企業は2分の1、小規模事業者は3分の2

補助の対象は「お助け隊サービスリスト」掲載サービスの利用料に限られる点に注意が必要です。また、補助金は年度や公募回ごとに金額・要件が変わるため、申請前に最新の公募要領を必ず確認してください。

出典・参考資料(1件)

自社だけで手が回らない領域を補う外部サービスと選び方

基本対策を固めても、専門性や24時間体制が求められる領域は、自社だけで担うのが難しいものです。そうした領域は外部のサービスで補うのが現実的で、ここでは検討すべき領域と、中立的な選び方の基準を整理します。

外部サービスを検討すべき領域

自社で手が回りにくく、外部サービスの活用が効果的な領域は、主に次の4つです。

  • ネットワーク監視(NDR):社内ネットワークを流れる通信を監視し、侵入や内部の不審な動きを検知する。侵入後の横移動を見つけるのに有効
  • 認証強化・ID管理(IDaaS・多要素認証):シングルサインオンや多要素認証でログインを守り、ID・パスワードの窃取を入口にする攻撃に備える
  • 端末防御(EDR・XDR):各端末の不審な挙動を検知・隔離し、マルウェア感染時の被害拡大を抑える
  • 脆弱性診断:自社のシステムやネットワークに弱点がないかを専門家が調べ、攻撃される前に穴を塞ぐ

ここで挙げた4領域を含め、社内セキュリティのソリューションを「何を守るか」の対象別に整理し、タイプごとの代表的なサービスと選び方をまとめた比較記事もあります。全体像から検討したい場合は、次の記事が参考になります。

中立的なサービスの選び方(課題から打ち手を選ぶ)

サービスは、製品の知名度ではなく「自社のどの課題を解決したいか」から選ぶのが失敗を避けるコツです。次の観点で、自社の課題と打ち手を対応させて検討します。

まず、守りたい対象を明確にします。社内ネットワーク全体の不審な通信を把握したいならネットワーク監視(NDR)、クラウドサービスへのログインを固めたいなら認証強化(IDaaS)、従業員の端末を守りたいなら端末防御(EDR/XDR)、自社の弱点を洗い出したいなら脆弱性診断、というように、課題と領域を結びつけます。

次に、自社で運用できるか、運用まで任せたいかを見極めます。製品を導入しても、アラートを監視し対応する人手がなければ効果は限定的です。専任担当が少ない場合は、監視・運用まで代行するマネージドサービスや、前述のお助け隊サービスのようなパッケージを選ぶと、導入後に機能しやすくなります。

最低契約数(最低ID数・最低ライセンス数)や初期費用の有無、既存環境との連携可否も、見積もり時に確認しておきたい基準です。

以下は、ここで取り上げる主なサービスを領域・提供形態・特徴で比較した表です。

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主なサイバーセキュリティ対策サービスの比較(対応領域・提供形態・料金の目安)Network BlackboxDarktraceCloudGate UNOYubiKey as a ServiceCrowdStrike FalconTrend Vision OneGMOサイバーセキュリティ byイエラエセキュリティ診断(NRIセキュア)
提供会社株式会社クワッドマイナージャパンダークトレース・ジャパン株式会社株式会社インターナショナルシステムリサーチ株式会社インターナショナルシステムリサーチクラウドストライク合同会社トレンドマイクロ株式会社GMOサイバーセキュリティ byイエラエ株式会社NRIセキュアテクノロジーズ株式会社
対応領域ネットワーク監視(NDR)ネットワーク監視(NDR・AI異常検知)認証強化・ID管理(IDaaS)認証強化(物理セキュリティキー)端末防御(EDR・XDR)端末防御(EDR・XDR)脆弱性診断・ペネトレーションテスト脆弱性診断・ペネトレーションテスト
提供形態ミラーリング方式で導入(提供形態は非公開)アプライアンス/クラウドクラウド(SaaS)物理キー+サブスクリプションクラウド(SaaS・単一エージェント)クラウド(SaaS)受託(手動診断)+SaaS(ツール型ASM)受託(専門家による手動主体の診断)
主な特徴全パケットを保存するNDR。
侵入・内部の不審通信・データ持ち出しの検知と事後調査に対応
自己学習型AIが組織ごとの平常の挙動を学習し、
その逸脱から未知の脅威を検知
SSO・多要素認証・パスキーを統合。
端末・場所・時間の3軸でアクセスを制限
物理キーでフィッシング耐性の高い認証を実現。
スマホ不要、毎年25%の予備キーが付帯
次世代アンチウイルスとEDR/XDRを単一エージェントで提供。
24時間365日のMDR〔検知・対応の運用代行〕も選択可
端末を中心にネットワーク・クラウド・メール等のデータを
統合して相関分析するXDR
ホワイトハッカーによる手動主体の診断と、
継続監視できるツール型ASMを併せ持つ
国際資格保有の専門家による手動主体の診断。
金融など高いセキュリティ要件の領域で実績
料金の目安要問い合わせ要問い合わせ月額440円〜/ユーザー(税込)要問い合わせ(200ライセンス〜)要問い合わせ(国内価格は非公開)要問い合わせ(クレジット型ライセンス)要問い合わせ(ツール型ASMは月額4万円〜)要問い合わせ(ペネトレーションテストは800万円〜)
詳細情報公式資料を見るサービス詳細を見る公式資料を見る公式資料を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見る

ここからは、前述の4領域に取り組める代表的なサービスを紹介します。社内ネットワークの監視、認証の強化、端末の防御、脆弱性診断の順に、提供形態や特徴の異なるものを取り上げます。

1. Network Blackbox(株式会社クワッドマイナージャパン)

Network Blackboxのウェブサイト

Network Blackboxは、社内ネットワークを流れる通信をフルパケットキャプチャ方式で余さず保存し、検知・分析・対応を行うNDR(Network Detection and Response)ソリューションです。

通信を丸ごと記録するため、外部からの侵入や内部の不審な通信、侵入後の横移動(ラテラルムーブメント)、データ持ち出しといった、ネットワーク上に痕跡が残る不正アクセスの検知や、事後調査(フォレンジック)に強みを持ちます。端末を守るEDRとは置き換えではなく補完の関係で、連携して多層防御を構成します。

2. Darktrace(ダークトレース・ジャパン株式会社)

Darktraceのウェブサイト

Darktraceは、AIが組織内の機器や利用者ごとの平常の振る舞いを学習し、そこからの逸脱を手がかりに脅威を検知するAIセキュリティです。シグネチャ(既知の攻撃パターン)に依存しないため、未知の攻撃や内部に潜む異常も挙動から捉えられるのが特徴で、ネットワークを起点にクラウドや端末まで検知対象を広げられます。

英国ケンブリッジで2013年に設立され、全世界で約10,000社に導入されていると公表しています(ベンダー公称値)。自社に合わせて平常を学習する方式のため、明確なルールを定義しきれない環境でも導入しやすい選択肢といえます。

3. CloudGate UNO(株式会社インターナショナルシステムリサーチ)

CloudGate UNOのウェブサイト

株式会社インターナショナルシステムリサーチが提供するCloudGate UNOは、ゼロトラストの考え方にもとづくシングルサインオンに、多要素認証・アクセス制限・ID管理を統合したクラウド型のサービス(IDaaS)です。一度の認証でGoogle WorkspaceやMicrosoft 365など複数のクラウドサービスを利用でき、ID・パスワードの窃取を入口にする攻撃への備えになります。

特徴は、端末・場所・時間の3つの軸で細かくアクセスを制限できる点と、フィッシングに強いパスキー(FIDO2)によるパスワードレス認証に対応する点です。料金は1ユーザーあたり月額440円(税込)からで、新規は100IDからの提供が目安です。

パスワードレス認証への移行は、セキュリティの強化だけでなく、導入後の運用にも変化をもたらします。提供元の株式会社インターナショナルシステムリサーチは、独自インタビューで導入現場での変化を次のように話しています。

平澤氏
株式会社インターナショナルシステムリサーチ 営業本部マーケティング部
平澤氏
独自インタビューより

導入と同時にパスワードレス認証に切り替えた企業では、IT部門の業務の約20%を占めていたパスワード関連のヘルプデスク業務が「0%」になったという事例があります。

4. YubiKey as a Service(株式会社インターナショナルシステムリサーチ)

YubiKey as a Serviceのウェブサイト

認証をさらに強固にしたい場合の選択肢が、物理セキュリティキー「YubiKey」をサブスクリプション型で導入できるYubiKey as a Serviceです。キーを買い切るのではなく、導入支援から故障・紛失時の交換、初期設定の代行までを含めて運用できるのが、買い切りとの違いです。

秘密鍵がキー内部に留まりネットワーク上に流れないため、パスワードやSMS認証より不正ログインに強く、スマートフォンを業務で使えない現場でも利用できます。契約期間中は毎年、契約数の25%分の予備キーが無償提供され、増員や紛失にも対応しやすい設計です。提供は200ライセンスからとなっています。

認証強化が求められる背景には、自社だけでなく、取引先を含めたサプライチェーン全体での対策という観点もあります。提供元の株式会社インターナショナルシステムリサーチは、独自インタビューで相談が増えている背景を次のように話しています。

内田氏
株式会社インターナショナルシステムリサーチ 営業本部 セールスアライアンス部 部長
内田氏
独自インタビューより

近年はサプライチェーン対策としての需要も高まっています。経済産業省による新たなセキュリティ対策評価制度の開始を見据え、委託先の認証強化を急ぐ企業が増えています。

ここで触れられている制度は、取引先を含めたサプライチェーン全体のセキュリティ対策の水準を評価・可視化しようとする国の動きを指します。大企業だけでなく、その委託先となる中小企業にも対応が求められる場面が広がりつつあります。

5. CrowdStrike Falcon(クラウドストライク合同会社)

CrowdStrike Falconのウェブサイト

CrowdStrike Falconは、クラウドを基盤にした端末防御のプラットフォームです。次世代アンチウイルス(Falcon Prevent)と、端末の不審な挙動を検知・対応するEDR/XDR(Falcon Insight)を単一の軽量エージェントで提供し、マルウェア感染時の被害拡大を抑えます。

自社に監視・対応の人手が足りない場合は、専門家が24時間365日体制で検知・対応を代行するマネージドサービス(Falcon Complete)も用意されています。端末の守りを固めつつ、運用まで含めて任せたい企業に向く選択肢です。

6. Trend Vision One(トレンドマイクロ株式会社)

Trend Vision Oneのウェブサイト

トレンドマイクロが提供するTrend Vision Oneは、端末(EDR)を中心に、ネットワークやクラウド、メールなど複数のレイヤーのデータを統合して分析するXDRプラットフォームです。個別の製品では見逃しやすい、複数の経路にまたがる攻撃の兆候を相関的に捉えられるのが強みといえます。

すでにトレンドマイクロのウイルス対策を使っている企業が、検知・対応の範囲を段階的に広げたい場合にも導入しやすく、攻撃の全体像を一つの画面で把握したいニーズに応えます。

7. GMOサイバーセキュリティ byイエラエ(GMOサイバーセキュリティ byイエラエ株式会社)

GMOサイバーセキュリティ byイエラエのウェブサイト

自社システムの弱点を攻撃される前に把握したいなら、脆弱性診断が有効です。GMOサイバーセキュリティ byイエラエは、ホワイトハッカー(高度な技術を持つ技術者)による手動主体の脆弱性診断・ペネトレーションテスト(擬似攻撃による侵入テスト)を提供しています。

専門家による個別の診断に加えて、ツール型で継続的に外部公開資産の弱点を洗い出す「GMOサイバー攻撃ネットde診断 ASM(攻撃対象領域の管理)」も展開しており、スポットの精密な診断と、日常的な継続監視を使い分けられます。診断の深さや範囲に応じて個別見積もりとなるため、自社の目的に合わせた相談から始めるとよいでしょう。

8. セキュリティ診断(NRIセキュアテクノロジーズ株式会社)

NRIセキュアのセキュリティ診断のウェブサイト

NRIセキュアテクノロジーズは、野村総合研究所(NRI)グループのセキュリティ専門会社として2000年に設立され、脆弱性診断・ペネトレーションテストを提供しています。Webアプリケーションやネットワーク、スマートフォンアプリなど幅広い対象に対応し、診断後の報告書で具体的な改善策まで示します。

金融機関をはじめ高いセキュリティ要件が求められる領域での実績があり、厳格な基準で自社の弱点を洗い出したい企業に向いた選択肢です。

まとめ

サイバーセキュリティ対策は、技術的対策・人的・組織的対策・物理的対策の3つを、多層防御の考え方で組み合わせることが基本です。まずはIPAの無料セルフ診断で自社の現状を把握し、OS・ソフトの更新や多要素認証、バックアップといった、費用をかけずに始められる基本対策から優先的に固めていくのが、無理のない進め方です。

自社だけで手が回らない監視・認証・端末防御・脆弱性診断の領域は、外部サービスで補えます。SECURITY ACTIONやお助け隊サービス、補助金といった国の支援制度も活用しながら、自社の規模とリスクに合った対策を一歩ずつ整えていきましょう。気になるサービスがあれば、資料を取り寄せて具体的な機能と費用を比べることから始めてみてください。

よくある質問(FAQ)

Q. サイバーセキュリティ対策とは何ですか?

A. サイバーセキュリティ対策とは、デジタルの情報やシステムを漏えい・滅失・毀損などの脅威から守り、安全に使い続けられる状態を保つための取り組みです。守り方は、システムや通信を技術で守る「技術的対策」、人の行動やルールで守る「人的・組織的対策」、機器や場所を守る「物理的対策」の3つに整理でき、これらを多層防御の考え方で組み合わせるのが基本になります。

紙の書類も含む情報全般を守る「情報セキュリティ」のうち、デジタル・ネットワーク領域に焦点を当てた考え方が「サイバーセキュリティ」です。

Q. サイバーセキュリティ対策は何から始めればよいですか?

A. サイバーセキュリティ対策は、まず自社の現状を無料のセルフ診断で把握し、OS・ソフトの更新や多要素認証、バックアップといった低コストの基本対策から着手するのが現実的です。いきなり製品を導入するのではなく、IPAの「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」(25項目)で弱点を知ると、優先して埋めるべき穴が見えます。

そのうえでIPAの「情報セキュリティ6か条」に沿って基本対策を固め、次に体制づくり・従業員教育、必要に応じて外部サービスの活用へと段階的に進めると、限られた人員・予算でも無理なく整えられます。

Q. 中小企業に必要なサイバーセキュリティ対策は何ですか?

A. 専任担当を置きにくい中小企業は、IPAの「情報セキュリティ6か条」の基本対策を自社で固めつつ、お助け隊サービスのような外部のパッケージで監視・初動対応を補うのが現実的です。ランサム攻撃やサプライチェーン攻撃は企業規模を問わず標的になり、取引先から対応を求められる場面も増えています。

背伸びして高度な仕組みを揃えるより、基本対策と外部の力で土台を作り、事業の成長や扱う情報の重要度に応じてログ監視や脆弱性診断へ広げていくのが、過不足のない進め方です。

Q. サイバーセキュリティ対策は無料・低コストでもできますか?

A. サイバーセキュリティ対策は、基本対策の多くを追加費用をかけずに始められます。OSやソフトの更新、パスワードの強化、共有設定の見直しは費用がかからず、多要素認証もすでに契約しているMicrosoft 365やGoogle Workspaceの標準機能として無料で有効化できる場合があります。

新しいサービスを契約する前に、契約済みのプランで使える機能を棚卸しして使い切ることが、費用を抑える第一歩です。対外的な姿勢を示すIPAの「SECURITY ACTION」の自己宣言も無料で利用できます。

Q. サイバーセキュリティ対策の費用を抑えられる補助金はありますか?

A. 中小企業向けには、「デジタル化・AI導入補助金(旧・IT導入補助金)」のセキュリティ対策推進枠があり、補助額5万円〜150万円・補助率は中小企業2分の1/小規模事業者3分の2で利用できます。補助の対象は、IPAが公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」掲載サービスの利用料(最大2年分)に限られる点に注意が必要です。

補助金は年度や公募回ごとに金額・要件が変わるため、申請前に必ず最新の公募要領を確認してください。

出典・参考資料(1件)

Q. サイバーセキュリティ対策を外部サービスに委託するときは、どう選べばよいですか?

A. 外部サービスは、製品の知名度ではなく「自社のどの課題を解決したいか」から選ぶのが失敗を避けるコツです。社内ネットワークの不審な通信を把握したいならネットワーク監視(NDR)、クラウドへのログインを固めたいなら認証強化(IDaaS)、従業員の端末を守りたいなら端末防御(EDR/XDR)、弱点を洗い出したいなら脆弱性診断、というように課題と領域を結びつけます。

あわせて、導入後にアラートへ対応する人手があるかを見極め、足りなければ監視・運用まで代行するマネージドサービスを選ぶと、導入後に機能しやすくなります。最低契約数や初期費用、既存環境との連携可否も見積もり時の確認ポイントです。

Q. サイバー攻撃の被害に遭ってしまったら、どう対応すればよいですか?

A. サイバー攻撃の被害は、「検知→対応(封じ込め)→復旧」の段階で動けるよう、連絡先と対応体制を事前に決めておくことが被害を最小限に抑える鍵です。誰が何を判断し、どこへ連絡するか(社内の報告ルート、外部の相談窓口や専門業者)を一覧にしておくと、混乱のなかでも初動が早まります。

復旧の要になるのがバックアップで、3-2-1ルールで分散保管したデータがあれば、ランサムウェアで業務データが暗号化されても身代金を払わずに復旧できる可能性が高まります。事業継続計画(BCP)にサイバー被害時の復旧手順を組み込んでおくと、いざというときに機能します。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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