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内部通報制度でパワハラ通報を受けたら?対応フロー7ステップと法的根拠

内部通報制度でパワハラ通報を受けたら?のサムネイル画像

社内の内部通報窓口やハラスメント相談窓口に「上司からパワーハラスメントを受けている」という通報が入ったとき、対応を担う担当者には、通報者の保護と会社の法的責任の両面で正確な初動が求められます。手順を誤ると、通報者への不利益な取り扱いや守秘義務違反として、会社自身が責任を問われることもあります。

本記事では、パワハラの内部通報を受けた後の対応を、受領から結果通知までの手順に沿って解説します。通報者の保護・やってはいけないこと・パワハラ該当性の判断軸・会社に課された法的義務・匿名や虚偽通報といった迷いどころまで、根拠となる条文や指針とともに整理しました。

目の前の1件にどう動くかを確認したうえで、自社だけで対応しきれない場合に社外窓口へ何を任せられるかも、あわせて把握できる内容です。

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パワハラ通報を受けた後の対応フロー(7ステップ)

ここでは、パワハラの内部通報を受けてから結果通知までの対応を、順を追って整理します。厚生労働省のパワーハラスメント防止指針は、相談の申出があった場合に事業主が講じるべき措置として、事実確認・被害者への配慮・行為者への措置・再発防止を定めています。次の引用は、その事後対応の柱書です。

事業主は、職場におけるパワーハラスメントに係る相談の申出があった場合において、その事案に係る事実関係の迅速かつ正確な確認及び適正な対処として、次の措置を講じなければならない。

出典:事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)4(3)|厚生労働省

この指針と、公益通報者保護法に基づく指針(令和3年内閣府告示第118号)の解説を踏まえると、通報受領後の実務は次の7ステップに整理できます。各ステップの「やること」と、つまずきやすい「注意点」をあわせて示します。

パワハラの内部通報を受けた後の対応フローを7ステップで示した図。STEP1受領を通報者へ通知、STEP2緊急性・安全の確認と暫定的な保護措置、STEP3利害関係者を外した調査体制、STEP4事実関係の確認とヒアリング、STEP5パワハラ該当性の判断、STEP6行為者への措置・被害者配慮・再発防止、STEP7通報者・被通報者へ結果通知の順に、やることと注意点を記載。
  1. 通報を受領し、受領した旨を通報者に通知する:いつ・どの窓口で受け付けたかを記録し、今後の流れを通報者に伝えます。対応にかかる期間に法律上の明確な期限はありませんが、受付の通知と初動は遅滞なく行います。注意点として、この段階で通報内容を関係者へ広く共有しないこと(共有は必要最小限の範囲にとどめます)。
  2. 緊急性と安全を確認し、必要なら暫定的な保護措置をとる:心身の不調や被害の継続が疑われる場合は、座席の変更や一時的な接触の回避など、調査結果を待たずにできる保護を検討します。注意点は、暫定措置が通報者への不利益(事実上の降格・隔離)にならないよう配慮することです。
  3. 利害関係者を外した調査体制を組む:通報された本人やその指揮命令下にある者を、調査や是正措置の担当から外します。注意点は、社内に適任者がいない場合に、外部の弁護士や専門機関を調査に関与させる選択肢を早めに検討することです。
  4. 事実関係を迅速かつ正確に確認する:相談者・行為者の双方から聴き取り、主張が食い違う場合は第三者からも聴取します。やり取りや証拠は記録として残します。注意点は、通報が誰から出たかを詮索せず、聴取の過程で通報者が特定されないよう質問の仕方を工夫することです。
  5. パワハラに該当するかを判断する:確認できた事実を、後述の3要素に当てはめて該当性を判断します。注意点は、業務上必要かつ相当な範囲の指導は該当しないため、指導とハラスメントの線引きを事実に即して行うことです。
  6. 行為者への措置・被害者への配慮・再発防止措置をとる:事実が確認できた場合は、就業規則に基づく措置と被害者へのケアを行います。注意点は、事実が確認できなかった場合でも再発防止措置は講じる必要があることです。
  7. 通報者・被通報者へ結果を通知する:調査の結果と対応を、守秘に配慮しつつ通報者に伝えます。注意点は、通報したことや調査に協力したことを理由に、いずれの当事者にも不利益な取り扱いをしないことです。

ステップ4の事実確認は、一般に相談者(通報者)→目撃者などの関係者→行為者とされる人、の順で聴き取ります。先に行為者へ当てると、通報者の特定や証拠の隠滅につながりやすいためです。

聴取では、日時・場所・具体的な言動・頻度・同席者を事実に沿って記録し、メール・チャット・勤怠記録・録音などの客観証拠は改変されないよう保全します。質問は「誰が通報したか」を推測させない形にし、複数の相談が寄せられている体裁にするなど、通報者が特定されない工夫をします。

匿名の通報であっても、正当な理由がある場合を除いて必要な調査を実施することが指針上求められています。「匿名だから調査しない」という一律の対応は認められない点に注意してください。

ステップ7の結果通知では、通報者に調査の結論と会社が講じた対応の概要を、プライバシーと守秘に配慮して伝えます。行為者とされた人にも、認定した事実と採った措置を通知します。懲戒などの措置は、就業規則の根拠と弁明の機会を踏まえたうえで行います。通報者が結果に納得しない場合に備えて、社外窓口や行政の相談窓口など再度の相談先を案内しておくと、通報者保護の実効性が高まります。

出典・参考資料(2件)

通報者を守るためにやるべきこと

ここからは、通報を受けた会社が通報者を守るために必ず押さえるべき点を解説します。通報者の保護は、担当者の心がけではなく法律上の義務として定められています。

解雇・不利益な取り扱いをしない

公益通報者保護法(平成16年法律第122号)は、公益通報をしたことを理由とする不利益な取り扱いを禁止しています。解雇は無効とされ、それ以外の不利益な取り扱いも次のとおり禁止されています。

第三条に規定するもののほか、第二条第一項第一号に定める事業者は、その使用し、又は使用していた公益通報者が第三条各号に定める公益通報をしたことを理由として、当該公益通報者に対して、降格、減給、退職金の不支給その他不利益な取扱いをしてはならない。

出典:公益通報者保護法 第5条第1項|e-Gov法令検索

「その使用し、又は使用していた」という文言のとおり、保護の対象には退職者も含まれます。また、パワハラそのものの相談については、労働施策総合推進法(正式名称は労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律。通称パワハラ防止法)も、相談したこと等を理由とする不利益な取り扱いを禁止しています。

事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

出典:労働施策総合推進法 第31条第2項|e-Gov法令検索

通報者の身元と情報を守る(守秘義務)

公益通報への対応業務に従事する者(従事者)には、通報者を特定させる情報を漏らさない守秘義務が課されています。

公益通報対応業務従事者又は公益通報対応業務従事者であった者は、正当な理由がなく、その公益通報対応業務に関して知り得た事項であって公益通報者を特定させるものを漏らしてはならない。

出典:公益通報者保護法 第12条|e-Gov法令検索

この守秘義務に違反して通報者を特定させる事項を漏らした場合、30万円以下の罰金が科されます(同法第21条)。通報内容を必要最小限の関係者を超えて共有すること(範囲外共有)を防ぐ運用と、プライバシー保護の措置を講じ、その旨を従業員に周知することが求められます。

出典・参考資料(2件)

パワハラ通報対応でやってはいけないこと

ここでは、踏むと会社がかえって責任を問われかねない対応を整理します。いずれも、通報者保護や調査の公正性を損なう行為です。

通報者を探し出そうとする

「誰が通報したのか」を詮索する行為は、原則として防ぐべきものとされています。公益通報者保護法に基づく指針の解説は、範囲外共有と通報者の探索について次のように定めています。

  • 事業者の労働者及び役員等が範囲外共有を行うことを防ぐための措置をとり、範囲外共有が行われた場合には、適切な救済・回復の措置をとる。
  • 事業者の労働者及び役員等が、公益通報者を特定した上でなければ必要性の高い調査が実施できないなどのやむを得ない場合を除いて、通報者の探索を行うことを防ぐための措置をとる。
出典:公益通報者保護法に基づく指針(令和3年内閣府告示第118号)の解説 第3.Ⅱ.2(2)|消費者庁

予断で虚偽と決めつける・弁明の機会を与えずに処分する

通報内容を調べる前に「悪意の虚偽だ」と決めつけたり、通報された側に弁明の機会を与えないまま処分したりすると、調査の公正性を欠き、処分が後に覆るおそれがあります。まず客観的に事実を確認し、双方の言い分を聴いたうえで判断します。

通報を放置する

通報を放置して被害が深刻化した場合、会社は安全配慮義務の違反を問われる可能性があります。労働契約法(平成19年法律第128号)は、使用者の配慮義務を次のように定めています。

使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

出典:労働契約法 第5条|e-Gov法令検索
出典・参考資料(2件)

パワハラに該当するかの判断軸(3要素・6類型)

通報された言動がパワハラに当たるかは、厚生労働省の指針が示す3つの要素で判断します。次の3要素をすべて満たすものがパワーハラスメントとされます。

職場におけるパワーハラスメントは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすものをいう。

なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない。

出典:令和2年厚生労働省告示第5号 2(1)|厚生労働省
パワハラ該当性の3要素を示した図。①職場で行われる優越的な関係を背景とした言動、②業務上必要かつ相当な範囲を超えている、③労働者の就業環境が害される、の3つをすべて満たすものが職場におけるパワーハラスメントに該当する。業務上必要かつ相当な範囲の適正な業務指示・指導は該当せず、叱責の有無ではなく程度・頻度・場所・目的が相当な範囲を超えているかで線を引くことを補足。

ポイントは②で、業務上必要かつ相当な範囲の指導はパワハラに当たりません。叱責や注意そのものではなく、その目的・手段・頻度・場所などが相当な範囲を超えているかを、確認できた事実に即して見ます。

たとえば、ミスをした部下に対し、業務時間内に個別で「どこで間違えたか」「次はどう防ぐか」を具体的に指摘するのは、改善を目的とした相当な範囲の指導と考えられます。一方、同じミスを理由に、ほかの社員の前で長時間にわたり人格を否定する言葉で繰り返し叱責したり、必要のない業務から外して放置したりすれば、②の範囲を超え、③の就業環境が害される状態に近づきます。

叱責の有無そのものではなく、その程度・頻度・場所・目的が業務上の必要性に見合っているかで線を引くのが、実務の考え方です。

指針は、代表的な言動を次の6類型に整理しています。ただしこれらは限定列挙ではなく、ここに当てはまらなければパワハラではない、という意味ではない点に注意が必要です。

類型内容(指針の例)
身体的な攻撃暴行・傷害
精神的な攻撃脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言
人間関係からの切り離し隔離・仲間外し・無視
過大な要求業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害
過小な要求業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
個の侵害私的なことに過度に立ち入ること
厚生労働省の指針が示す代表的な言動の類型(この6類型は限定列挙ではありません)

今回のケースがパワハラ以外のハラスメントにも関わりうる場合に備え、職場で問題となるハラスメントの種類・言動例と企業の措置義務を一覧で確認したい方は、以下の記事もご参照ください。

出典・参考資料(1件)
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会社に課された法的義務と2026年の法改正

ここでは、通報対応の前提となる会社の義務を整理します。パワハラ防止と公益通報者保護は別の法律に根拠があり、それぞれ事業主に義務を課しています。加えて、通報を放置して被害が深刻化した場合には、前述のとおり労働契約法第5条の安全配慮義務が問われる点も、会社の義務として押さえておく必要があります。

パワハラ防止法上の措置義務

労働施策総合推進法は、事業主に対し、相談体制の整備や事後の適切な対応といった雇用管理上の措置を義務づけています。この措置義務は、2026年(令和8年)10月1日施行の改正により、条文の位置が第30条の2から第31条へ繰り下げられました(2026年9月30日までは第30条の2)。

事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

出典:労働施策総合推進法 第31条第1項|e-Gov法令検索

この措置義務は企業規模にかかわらず全事業主に適用されます。違反そのものに刑事罰はありませんが、履行が不十分な場合は助言・指導・勧告の対象となり、勧告に従わないときは企業名が公表されることがあります。

公益通報者保護法上の体制整備義務と企業規模要件

公益通報者保護法は、公益通報に対応する業務の従事者を定めること(従事者指定義務)と、通報者を保護するための体制整備を事業主に求めています。この義務の重さは企業規模で変わります。

常時使用する労働者の数が三百人以下の事業者については、第一項中「定めなければ」とあるのは「定めるように努めなければ」と、前項中「とらなければ」とあるのは「とるように努めなければ」とする。

出典:公益通報者保護法 第11条第3項|e-Gov法令検索

常時使用する労働者が300人を超える事業者は従事者指定・体制整備が義務で、300人以下の事業者は努力義務です。ただし努力義務の企業でも、通報を受けた後の対応や通報者保護の必要性は変わりません。

パワハラ通報は「公益通報」に当たるか

公益通報者保護法が保護する「公益通報」は、同法の別表に掲げられた法律の刑事罰や過料の対象となる事実(通報対象事実)の通報に限られます。パワハラ防止の措置義務を定める労働施策総合推進法はこの別表に含まれず、違反に刑事罰もないため、パワハラそのものの内部通報は原則として公益通報には当たりません。この場合は、労働施策総合推進法の相談として不利益取扱いの禁止(前述の第31条第2項)が働きます。

一方で、通報されたパワハラが暴行・傷害などの刑法上の犯罪を伴う場合は、通報対象事実に当たり、公益通報者保護法の保護も及び得ます。どちらの制度で保護されるかは、通報内容の性質によって変わります。

改正公益通報者保護法(2026年12月1日施行予定)の変更点

2025年(令和7年)6月11日に公布された改正公益通報者保護法(令和7年法律第62号)が、2026年(令和8年)12月1日に施行される予定です。通報者保護を強める主な変更点は次のとおりです。

  • 公益通報者の範囲に、事業者と業務委託関係にあるフリーランス(特定受託事業者)および業務委託関係が終了して1年以内の者を追加し、公益通報を理由とする業務委託契約の解除など不利益な取り扱いを禁止する(第2条・第5条関係)
  • 正当な理由なく、公益通報をしない旨の合意を求めるなどして公益通報を妨げる行為を禁止し、これに違反してされた合意等を無効とする(第11条の2関係)
  • 正当な理由なく、公益通報者を特定することを目的とする行為を禁止する(第11条の3関係)
  • 公益通報を理由とする解雇・懲戒をした者への直罰(6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)を新設し、法人に対しては3,000万円以下の罰金とする(第21条・第23条関係)
  • 通報後1年以内の解雇・懲戒は、公益通報を理由とするものと推定する(第3条関係)

本記事の公開時点(2026年10月)では未施行のため、現在の対応は改正前の条文に沿って行い、施行に向けて社内規程や窓口運用を見直しておくのが現実的です。

出典・参考資料(3件)

迷いどころの対応(匿名・退職者・虚偽通報・保護対象外)

通報対応で判断に迷いやすい4つのケースについて、基本の扱いと根拠を一覧で整理します。

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迷いどころ匿名の通報だった退職した社員からの通報だった虚偽・悪意が疑われる通報だった公益通報の保護対象外だった
基本の扱い匿名を理由に調査を省くことは原則できない。正当な理由がある場合を除き、必要な調査を実施する退職者も保護の対象になり得る。不利益取扱いの禁止は「使用し、又は使用していた」者に及ぶまず客観的に調査して真偽を確認する。懲戒は事実無根かつ悪意を断定できる場合に限る。誤信でも相当の理由があれば保護され得るパワハラ単体など通報対象事実に当たらない場合でも、相談を理由とする不利益取扱いは禁止。社内規程に沿った対応は必要
根拠令和3年内閣府告示第118号の指針解説公益通報者保護法 第2条・第5条公益通報者保護法 第2条・第3条労働施策総合推進法 第31条

虚偽通報については、公益通報者保護法が保護の前提として「不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的でなく」通報することを求めています。私怨や嫌がらせを目的とした明らかな虚偽通報は保護の対象になりませんが、その判断は調査で事実を確認してから行います。社内(勤務先)への通報は「思料する場合」で足り、真実であると信じるに足りる相当の理由までは求められません。

出典・参考資料(3件)
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自前で回すのがきついとき——社外窓口の活用と再発防止

通報の受付・調査・該当性の判断・処分の検討を社内だけで公正に進めるのが難しい場合、その一部または全部を社外に委ねる選択肢があります。社外窓口には、受付だけを担うものから、調査の支援や法的助言まで引き受けるもの、通報対応の記録・管理に使うツールまで幅があります。

選ぶ際は、第三者性(通報された側から独立しているか)、通報者を特定させない守秘の体制、任せられる対応範囲(受付のみか、調査・法的助言まで含むか)、匿名・多言語への対応、料金、自社の規模や海外拠点の有無を照らし合わせて検討します。以下に、対応範囲と提供形態で整理した比較と、代表的なサービスを紹介します。

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サービス名内部通報サービス
(弁護士法人ZeLo)
内部通報外部窓口
(青葉法律事務所)
ディアログ
(ダイヤル・サービス)
リスクホットライン®
(エス・ピー・ネットワーク)
DQヘルプライン
(ディー・クエスト)
NHホットライン
(サザンクルー)
NAVEX One
(NAVEX Global)
Diligent
(Diligent Japan)
MetricStreamクラウドリーガル
(MOLTON)
提供形態弁護士委託弁護士委託受付代行受付代行受付代行受付代行通報ケース管理ツール通報ケース管理ツール通報ケース管理ツール法務・労務相談
対応範囲受付〜調査・
法的助言まで
受付が中心
(調査範囲は要確認)
受付〜報告
(提携弁護士の
助言コメント付き)
受付+調査・
ヒアリング代行
(別メニュー)
受付が中心
(Web匿名双方向)
受付〜報告
(調査は自社対応)
受付〜ケース管理
(ソフトウェア)
受付〜調査・
クローズまで管理
(ソフトウェア)
受付〜解決・
原因分析まで管理
(ソフトウェア)
通報の受付窓口ではない
(該当性・処分の
法務・労務相談)
匿名・多言語対応匿名:可
多言語:日英インドネシアの3言語
匿名・多言語とも
公式に記載なし
匿名:可(半匿名も)
多言語:電話7・Web15言語超
匿名:可
多言語:本体は日本語
(海外拠点向けは別サービス)
匿名:可(双方向)
多言語:Web36言語以上
匿名:可
多言語:Web・メールは
機械翻訳で対応
匿名:可
多言語:電話170言語
(通報者画面の日本語は要確認)
匿名:可(暗号化)
多言語:対応
(日本語対応は要確認)
匿名:可(参照ID)
多言語:通報者画面の
日本語は要確認
通報窓口ではないため対象外
(相談は日英対応)
料金の目安初期20万円+月額5万円
(年6件まで。7件目以降1件3万円・税別)
月額2.2万〜6.6万円+
通報1件1.1万円(税込)
初期10万円〜+
月額3.5万円〜
非公開(要問い合わせ)非公開(要問い合わせ)月額1.5万円〜(税込)
従量課金なし
非公開(要問い合わせ)非公開(要問い合わせ)非公開(要問い合わせ)初期0円+月額1.1万円〜
(税込・年間契約)
向いている企業調査・処分・法的助言まで
一体で任せたい企業
社外弁護士に窓口を任せ
費用を把握したい企業
通報とハラスメント相談を
1窓口で受けたい企業
受付後の調査まで
外部に任せたい企業
海外拠点・外国人従業員
を抱える企業
低コストで導入したい
中小企業
複数国・法域で標準化
したい大企業
ガバナンスと一体運用
したい大企業
通報をリスク管理と
統合したい大企業
法務専任がいない・
判断を相談したい企業
詳細情報公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト公式サイトサービス詳細を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見る公式資料を見る

受付から調査・法的助言まで任せる(弁護士委託型)

通報の受付から、事実確認・調査、パワハラに当たるかどうかの判断、処分の検討、そして法的な助言までを、社外の弁護士に一連で引き受けてもらう形です。社内だけでは調査や処分の判断が難しい、法的なリスクの見極めまで一体で委ねたい、という企業に向いています。

1. 内部通報サービス(弁護士法人ZeLo・外国法共同事業)

弁護士法人ZeLo・外国法共同事業の内部通報サービス公式サイト

弁護士法人ZeLo・外国法共同事業が運営する内部通報サービスです。外部窓口の設置・運営から、通報を受けた後の事実確認・調査、懲戒処分の検討、法的助言までを同じ事務所内で引き受ける点が位置づけの中心にあります。通報規程の策定支援から着手できるため、制度をこれから整える企業にも対応します。

料金はステップごとに公開されています。導入前のコンサルティングは無料で、外部窓口の初期設定フィーが初回20万円、通報対応の基本料が月額5万円(年6件まで)、7件目以降は1件あたり3万円(税別)。事実確認・調査はタイムチャージ制で1時間あたり2〜5万円です(いずれも2026年10月時点の公式サイト記載)。

外部窓口を担当するのは守秘義務を負う弁護士で、依頼企業ごとに原則3名のチームを組みます。対応言語は日本語・英語・インドネシア語の3つ。受付はメールと専用フォームが中心で、匿名での通報にも対応します。相談は月30分まで無料で、24時間受付の可否については公式サイトに明記がありません。

2. 内部通報外部窓口(弁護士法人青葉法律事務所)

弁護士法人青葉法律事務所の内部通報外部窓口担当の公式サイト

仙台を拠点とする弁護士法人青葉法律事務所が、企業・自治体・私立大学の内部通報制度の外部窓口を弁護士自身で担当するサービスです。公益通報者保護法が定める通報だけに対応するプランと、セクハラ・パワハラ・社内規程違反まで対象に含めるプランが、料金の上で分かれています。パワハラ通報を社外の窓口で受けたい場合は後者が該当します。

費用は明細が公開されています。月額は従業員数に応じて、法令違反対応のみなら22,000〜44,000円、ハラスメントや社内規程違反も含めると44,000〜66,000円(いずれも税込)。通報が発生するごとに1件11,000円が加算され、規程の新設は330,000円、既存規程の改定は165,000円です(2026年10月時点)。弁護士委託型でありながら費用感を事前につかみやすい点が特徴といえます。

窓口を担当するのは事業者と利害関係のない社外の弁護士で、通報者が特定を恐れて通報をためらう心理的な負担を下げるねらいがあります。一方、受付チャネルや匿名通報の運用方法、仙台圏以外の企業から委託を受けられるかは公式サイトに記載がなく、利用前に確認したい点として残ります。

通報受付を専門事業者に代行してもらう(受付代行型)

通報の受付・一次対応・企業への報告を、専門の事業者に代行してもらう形です。窓口の設置義務に対応しつつ、受付の中立性と通報者の保護を社外に確保したい企業に向きます。事業者によって、受付と報告までを担うものから、受付後の調査支援まで踏み込むものまで対応範囲が異なるため、どこまで任せたいかで選び分けることになります。

3. ディアログ(ダイヤル・サービス株式会社)

ダイヤル・サービス株式会社の外部通報・相談窓口サービス「ディアログ」の公式サイト

内部通報とハラスメント相談を1つの窓口で受け付けるのが、ダイヤル・サービス株式会社の「ディアログ」です。2022年5月に提供を開始し、公益通報者保護法とパワハラ防止法の両方への対応を想定しています。運営元は1969年創業の電話相談サービス事業者で、有資格の相談員が約300名在籍します。

電話(フリーダイヤル)とWeb専用フォームの2経路で、実名・匿名・半匿名を選んで通報できます。Webフォームは24時間365日、電話は平日12〜21時・土日祝9〜17時に受け付け、受付後は原則翌日までに個別の報告書を企業担当者へ渡します。月次・年次の報告書もまとめて提供する仕組みです。

追加料金なしで、提携弁護士が法的観点からの留意事項をまとめる「通報対応リファレンスコメント」を依頼から2営業日以内に受けられます。料金は初期費用10万円〜・月額35,000円〜(2026年10月時点)。多言語は電話7言語・Web15言語以上に対応し、プライバシーマークとISO/IEC 27001の取得を掲げています。

4. リスクホットライン®(株式会社エス・ピー・ネットワーク)

株式会社エス・ピー・ネットワークの内部通報窓口受託運営「リスクホットライン」の公式サイト

企業危機管理の専門会社である株式会社エス・ピー・ネットワークが2003年から運営する、内部通報の社外受付窓口が「リスクホットライン®」です。通報の受付だけでなく、社内調査やヒアリングの代行、リスクレポートの作成、再発防止の提案まで含めて支援する「伴走型」を掲げています。

契約企業は1,200社以上、累計の通報対応は17,000件以上にのぼります(2026年10月時点の公式サイト記載)。受付は電話・Web・メールで、電話の対応時間は平日9〜18時です。

運営元が危機管理のコンサルティング会社であるため、通報を受けた後の調査・ヒアリング代行や、公益通報対応業務従事者向けの研修まで別メニューとして用意しています。パワハラ通報の受領後対応まで外部に任せたい企業の課題に正面から向き合う構成です。

料金は従業員数などに応じた個別見積もりで、公式サイトに定額の掲載はありません(要お問い合わせ)。本体のリスクホットライン®は日本語での対応で、海外拠点向けには10言語に対応する別サービスが用意されています。

5. DQヘルプライン(株式会社ディー・クエスト)

株式会社ディー・クエストの内部通報窓口「DQヘルプライン」の公式サイト

株式会社ディー・クエストが2003年から提供する内部通報の社外窓口が「DQヘルプライン」です。Webを使った匿名の双方向通報システムを軸に、多言語対応を強みとしています。導入実績は3,200社(2025年5月時点)で、国内でも早い時期から提供されている内部通報窓口サービスの一つです。

Web窓口は36言語以上、電話窓口は英語・中国語・韓国語に標準対応します。2018年にドイツ・フランクフルトへ拠点を設け、現地弁護士の協力のもとでGDPRなど海外の法制にも対応している点も押さえておきたいところです。外国人従業員や海外拠点を抱える企業が選択肢に入れやすい構成といえます。

情報セキュリティマネジメントシステム(ISO/IEC 27001)の認証を取得し、通信の暗号化・二段階認証・24時間365日の有人監視を行っています。標準版のほかに機能を抑えた「Lite版」がありますが、料金はいずれも公式に非公開のため要お問い合わせとなります。

6. NHホットライン(株式会社サザンクルー)

株式会社サザンクルーの内部通報・ハラスメント相談窓口代行「NHホットライン」の公式サイト

「NHホットライン」は、株式会社サザンクルーが2022年4月に始めた内部通報・ハラスメント相談窓口の代行サービスです。通報の受付・内容整理・企業への報告までを担い、事実調査や是正対応は委託元の企業が行う役割分担になっています。コールセンター運営を母体に持つ事業者が運営しています。

料金は固定で、従業員100名未満なら月額15,000円(税込、ベーシックプラン)から利用できます。通報が何件あっても月額は変わらず、1件ごとの従量課金がありません。受付チャネルは、Webフォーム・メール・書面で受けるベーシックと、電話受付(平日10〜18時)を加えたスタンダードの2プランに分かれます(2026年10月時点)。

努力義務にとどまる中小企業でも導入しやすい価格帯で、Webフォームとメールは24時間、日本語以外の通報も機械翻訳で受け付けます。プライバシーマークとISMS認証も取得済みです。受付と報告に特化しているため、調査まで一括で委託したい場合は別の手当てが必要になる点は理解しておきたいところです。

通報対応を記録・管理する(通報ケース管理ツール)

受け付けた通報を記録し、調査の進捗やクローズまでを一元管理するためのソフトウェアです。複数の拠点・複数の法域で通報対応の標準化と記録の一貫性が求められる大企業・グローバル企業を主な対象としています。以下の3社はいずれも料金を公式に公開しておらず、個別見積もりとなる点はあらかじめ押さえておいてください。

NAVEX GlobalのGRC統合プラットフォーム「NAVEX One」の公式サイト

NAVEX Global, Inc.が提供するガバナンス・リスク・コンプライアンス(GRC)の統合プラットフォームが「NAVEX One」です。内部通報・インシデント管理の機能はEthicsPointモジュールが担い、通報の受付からケースの記録・管理までをソフトウェア上で扱います。研修やポリシー管理といった他のコンプライアンス機能も同じ基盤で運用できる設計です。

世界で13,000社超が導入し、電話オペレーターは170以上の言語で24時間365日の受付に対応するとしています(公式サイト記載)。複数の国・法域をまたいで通報対応を標準化したい大企業・グローバル企業向けの位置づけで、料金は公式に公開されておらず個別見積もりとなります(2026年10月時点、要お問い合わせ)。

8. Diligent(Diligent Japan合同会社)

DiligentのGRCプラットフォームと内部通報機能Speak Up Managerの公式サイト

取締役会管理を起点にGRC領域へ広げてきたDiligent(日本法人はDiligent Japan合同会社)の統合プラットフォームです。内部通報・ケース管理の機能は、2025年5月に買収した内部通報ソフトウェア企業Vault由来の「Speak Up Manager」が担い、通報の受付から調査、クローズまでを一元管理します。

通報はモバイルアプリ・Web・AIを使った電話窓口で受け付け、報告内容の暗号化や添付ファイルのメタデータ自動削除など、通報者の身元が特定されにくい仕組みを備えます。複数の法域をまたぐ大企業向けの統合ソリューションという位置づけで、料金はプランや価格表の公開がなく個別見積もりです(2026年10月時点、要お問い合わせ)。

9. MetricStream(MetricStream, Inc.)

MetricStreamのGRCプラットフォームとケース・インシデント管理機能の公式サイト

リスク・コンプライアンス・監査・サイバー・レジリエンスを1つの基盤で扱うMetricStream, Inc.のGRCプラットフォームには、通報・ケースを扱う「Case and Incident Management」機能があります。通報を単体で完結させず、関連するポリシーやリスクと紐付けて根本原因の分析まで行える点が、単機能の通報ツールとの違いになります。

メール・ホットライン・ポータルなど複数の経路から通報を受け付け、匿名の通報者には参照IDが発行され、身元を明かさないまま対応状況を追えます。訴求は一貫して大企業向けで、料金は公開されていません(2026年10月時点、要お問い合わせ)。通報者が使う画面が日本語に対応するかは公式サイトで確認できていません。

パワハラ該当性や処分の妥当性を相談する(法務・労務相談)

通報そのものの受付窓口ではなく、受けた通報がパワハラに当たるか、検討している処分が妥当か、進めている手続が適法かを、日常的に弁護士や社会保険労務士へ相談できる形です。社内に法務の専任者がいない、顧問弁護士には細かいことを聞きにくい、といった企業が判断の相談先として使います。

MOLTON株式会社の契約・法務アウトソーシングサービス「クラウドリーガル」の公式サイト

MOLTON株式会社が運営する契約・法務のアウトソーシングサービスが「クラウドリーガル」です。弁護士監修のAIと、弁護士・社会保険労務士・税理士といった専門士業の体制を組み合わせ、契約書の作成・レビューや法務・労務の相談をオンラインで受けられます。パワハラ通報の受付窓口そのものではなく、該当性の判断や処分の妥当性といった法務・労務の相談先として位置づけられるサービスです。

日々の法務・労務の相談にはチャット・オンライン面談・電話で対応し、同社の事例では契約書レビューや相談を1〜2日で返せるとしています。料金は初期費用0円・月額11,000円(税込、ブロンズプラン)からの年間契約で(2026年10月時点)、労務相談にも対応するため、パワハラ対応で生じる労務面の疑問もあわせて相談できます。

再発防止と、実効性のある窓口運用

1件の通報への対応を終えたら、同じ問題を繰り返さないための備えに移ります。指針も、事実が確認できなかった場合を含めて再発防止措置を講じることを求めています。

具体的には、ハラスメント防止方針と相談窓口の存在を全従業員に周知すること、管理職向けに通報対応やハラスメントの判断基準を学ぶ機会を設けること、通報しても不利益を受けない運用を根づかせることが挙げられます。研修による予防は、担当者個人の経験に頼らず、組織として対応の質を底上げする手段になります。

もっとも、研修は実施すること自体が目的になり、現場に定着しないという課題も指摘されています。コンプライアンス教育のeラーニングを提供する株式会社リスキルの山田氏は、人事担当者を対象に実施した意識調査の結果を次のように説明します。

山田氏
株式会社リスキル ビジネスプロデューサー
山田氏
独自インタビューより

そこを確かめたくて、人事担当者413名を対象に「コンプライアンス教育に関する意識調査」を実施しました。対象は当社のお客様に限らない一般の人事担当者の方々です。その結果、約3割の企業様が現状の教育手法に「十分な効果を感じていない」と回答されました。要因を深掘りすると、「受講自体が作業化して形骸化している(62.8%)」「一時的な実施に留まり、内容を忘れてしまう(44.9%)」という声が上位を占めていたのです。

この調査が示すように、研修は実施するだけでなく、受講状況の管理や継続的な学習設計まで含めて運用できるかが、再発防止の実効性を左右します。そうした運用面まで想定したコンプライアンス研修サービスの一例として、次のサービスがあります。

OneCompliance(株式会社Oyster)

OneComplianceの公式サイト

OneComplianceは、株式会社Oysterが運営するコンプライアンス研修に特化したeラーニングサービスです。各種法令・労務・ハラスメント・情報セキュリティの領域を動画と文章の両方で学べる形にしており、ハラスメント予防のコースに加えて「内部通報制度・公益通報者保護法」や「公益通報者保護法の改正点」を扱うコースも用意されています。

研修を「実施して終わり」にしないため、受講者別の進捗をダッシュボードで管理し、CSV出力や未受講者への自動リマインドにも対応します。数分単位で学べるマイクロラーニング設計で、受講はPC・スマートフォンのブラウザから可能です。

料金は受講者数に応じて変わる体系で、詳細は要お問い合わせです(2026年10月時点)。無料トライアルも用意されています。社内に専門知見がない、研修運用の工数を確保しにくいといった企業に向いています。

研修を予防につなげるという考え方について、OneComplianceを運営する株式会社Oysterの谷口氏は、サービスを立ち上げた背景を次のように語っています。

谷口氏
株式会社Oyster 代表取締役
谷口氏
独自インタビューより

当社が目指しているのは、ハラスメントのない働きやすい職場づくりや、違反・不正行為が起きにくい環境をつくることです。悪意があって違反するケースもゼロではない一方で、「知らなかった」ことで問題が起きる場面も現実にあります。だからこそ、知識と意識をしっかり学べる場を、継続的に提供したいと思ってサービスを作ってきました。

再発防止に向けた研修を実際にどのサービスで実施するか、料金や教材テーマ、タイプ別の選び方まで含めて比較検討したい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。

まとめ

パワハラの内部通報を受けたら、受領の通知から安全確保、利害関係者を外した調査体制、事実確認、該当性の判断、措置、結果通知までを順に進めます。その全体を通して、通報者の身元と情報を守り、不利益な取り扱いをせず、通報者を探し出そうとしないことが、法律上の義務として求められます。パワハラ該当性は3要素で判断し、業務上必要かつ相当な範囲の指導と切り分けます。

2026年12月には改正公益通報者保護法の施行も控えています。自社だけで公正な対応を保つのが難しい場合は、社外窓口や通報対応ツール、再発防止の研修を活用し、通報者が安心して声を上げられる体制を整えておくことが、会社自身を守ることにもつながります。

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よくある質問(FAQ)

Q. 内部通報制度とは何ですか?

A. 内部通報制度とは、企業が、社内の法令違反・不正・ハラスメントなどを従業員や役員から受け付け、調査・是正するための社内の窓口や仕組みです。

パワハラの相談も、この内部通報制度やハラスメント相談窓口を通じて寄せられます。公益通報者保護法は、常時使用する労働者が300人を超える事業者に対して、通報を受け付けて調査・是正する体制の整備を義務づけています(同法第11条)。ただし「公益通報」は同法が保護する特定の通報を指す言葉で、内部通報制度はそれを含む、より広い社内の受付の仕組みを意味します。

出典・参考資料(1件)

Q. パワハラの内部通報は、公益通報者保護法の「公益通報」に当たりますか?

A. パワハラそのものの内部通報は、原則として公益通報者保護法の「公益通報」には当たりません。同法が保護する公益通報は、別表に掲げられた法律の刑事罰や過料の対象となる事実(通報対象事実)の通報に限られ、パワハラ防止の措置義務を定める労働施策総合推進法はこの別表に含まれず、違反に刑事罰もないためです(公益通報者保護法第2条第3項)。

ただしこの場合でも、労働施策総合推進法が相談等を理由とする不利益な取り扱いを禁止しているため、通報者は保護されます(同法第31条第2項)。一方、通報されたパワハラが暴行・傷害などの刑法上の犯罪を伴う場合は通報対象事実に当たり、公益通報者保護法の保護も及び得ます。どちらの制度で保護されるかは通報内容の性質によって変わります。

出典・参考資料(2件)

Q. 内部通報に対応する担当者の守秘義務は、誰が、どこまで負いますか?

A. 公益通報への対応業務に従事する者(従事者)は、正当な理由がなく、通報者を特定させる情報を漏らしてはなりません(公益通報者保護法第12条)。守秘の対象は「公益通報者を特定させる事項」です。

この守秘義務に違反して通報者を特定させる事項を漏らした場合、30万円以下の罰金が科されます(同法第21条)。従事者に指定されていない担当者であっても、通報内容を必要最小限の関係者を超えて共有すること(範囲外共有)は指針上防ぐべきものとされ、通報者のプライバシーを保護する措置が求められます。

出典・参考資料(1件)

Q. 従業員が300人以下の会社でも、内部通報の窓口整備は義務ですか?

A. 公益通報者保護法上の従事者の指定と体制整備は、常時使用する労働者が300人を超える事業者では義務、300人以下の事業者では努力義務です(同法第11条第3項)。

ただし、パワハラの相談に応じる体制の整備は、労働施策総合推進法第31条第1項により企業規模にかかわらずすべての事業主の義務です。また、公益通報者保護法上は努力義務にとどまる企業でも、実際に通報を受けた後の対応や通報者保護の必要性は変わりません。

出典・参考資料(2件)

Q. パワハラの通報を放置すると、会社はどんな責任を問われますか?

A. パワハラの通報を放置して被害が深刻化した場合、会社は労働契約法第5条の安全配慮義務の違反を問われる可能性があり、あわせてパワハラ防止法(労働施策総合推進法第31条第1項)の措置義務の不履行にもあたります。

措置義務違反そのものに刑事罰はありませんが、履行が不十分な場合は助言・指導・勧告の対象となり、勧告に従わないときは企業名が公表されることがあります。罰則の有無にかかわらず、放置は通報者保護や制度への信頼を損なうため、受領後は速やかに初動をとる必要があります。

出典・参考資料(2件)

Q. 通報の内容や通報者の情報は、社内の誰まで共有してよいですか?

A. 通報の内容や通報者を特定させる情報は、調査や是正に必要な最小限の関係者にとどめ、それを超える共有(範囲外共有)は行ってはいけません(公益通報者保護法に基づく指針)。

「誰が通報したのか」を詮索する通報者の探索も、原則として防ぐべきものとされています。例外は、通報者を特定した上でなければ必要性の高い調査が実施できないなどのやむを得ない場合に限られます。範囲外共有や探索を行った従業員・役員には、懲戒処分などの措置をとることが求められます。

出典・参考資料(1件)

Q. 通報者には、調査の結果をどこまで伝えればよいですか?

A. 通報者には、調査の結果と会社がとった対応を、守秘に配慮しながら通知します。厚生労働省の指針は、相談の申出があった場合の事後対応として事実確認・被害者への配慮・行為者への措置・再発防止を求めており、その結果を通報者に伝えることが運用上求められます。

ただし、被通報者のプライバシーや調査で得た第三者の情報まで無制限に開示する必要はなく、通知は必要な範囲にとどめます。通報したことや調査に協力したことを理由に、通報者へ不利益な取り扱いをしてはいけません。

出典・参考資料(1件)
  • 出典:事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)|厚生労働省(https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/pdf/pawahara_soti.pdf)

Q. 社外の窓口に委託すれば、公益通報者保護法が求める体制整備は済みますか?

A. 社外窓口への委託は、受付の中立性と通報者の守秘を確保する有効な手段ですが、それだけで会社の体制整備義務がすべて完了するわけではありません。

委託先の弁護士などを公益通報対応業務の従事者に指定することはできますが、従事者の指定、範囲外共有を防ぐ社内運用、通報規程の整備などは事業者自身に求められます(公益通報者保護法第11条)。委託する範囲が受付のみか、調査・是正まで含むのかを確認し、社内の体制とあわせて整えることが必要です。

出典・参考資料(1件)

Q. パワハラ防止法の措置義務に違反すると、罰則はありますか?

A. パワハラ防止法(労働施策総合推進法)の措置義務に違反しても、その違反そのものに刑事罰(罰金・拘禁刑)はありません。

ただし、措置が不十分な場合は厚生労働大臣による助言・指導・勧告の対象となり、勧告に従わないときは企業名が公表されることがあります。罰則がないことは義務が軽いことを意味せず、通報対応を怠れば安全配慮義務違反などの民事責任を別途問われ得ます。

出典・参考資料(1件)

Q. 改正公益通報者保護法はいつ施行され、通報対応で何が変わりますか?

A. 改正公益通報者保護法(令和7年法律第62号)は2026年(令和8年)12月1日に施行される予定で、通報者保護が大きく強化されます。

通報対応の実務で特に影響が大きいのは、通報を理由とする解雇・懲戒への直罰が新設される点と、通報後1年以内の解雇・懲戒は公益通報を理由とするものと推定される点です。通報者を特定しようとする行為や通報を妨げる行為も明確に禁止されるため、窓口運用と社内規程を施行前に見直しておくと安全です(変更点の詳細は本文「会社に課された法的義務と2026年の法改正」で解説しています)。

出典・参考資料(1件)

Q. パワハラをしたとされる側(被通報者)には、どう対応すればよいですか?

A. 被通報者には、予断で虚偽と決めつけず、弁明の機会を与えたうえで、客観的に事実を確認します。

厚生労働省の指針は、事実関係を相談者・行為者の双方から迅速かつ正確に確認し、主張が食い違う場合は第三者からも聴取することを求めています。弁明の機会を与えないまま処分すると調査の公正性を欠き、処分が後に覆るおそれがあります。事実が確認できた場合に、就業規則に基づく措置をとります。

出典・参考資料(1件)
  • 出典:事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)|厚生労働省(https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/pdf/pawahara_soti.pdf)

Q. 内部通報の受付窓口は、社内と社外のどちらに置くべきですか?

A. 内部通報の受付窓口は、社内・社外のどちらに置くことも認められており、両方を併設することもできます。

社外窓口(弁護士や専門事業者への委託)は、通報された側から独立した第三者性と守秘を確保しやすく、通報者が特定を恐れて通報をためらう心理的な負担を下げられます。自社だけで公正・中立に受付や調査を保つのが難しい場合は、社外窓口の活用が選択肢になります。

Q. パワハラの通報を受けてから、どのくらいの期間で対応すべきですか?

A. 通報対応に法律上の明確な期限は定められていませんが、厚生労働省の指針は「事実関係の迅速かつ正確な確認」を求めており、遅滞なく対応を始めることが必要です。

対応が遅れて被害が深刻化すれば、安全配慮義務違反を問われる可能性があります。受領後はまず受付の事実を通報者に通知し、緊急性があれば調査結果を待たずに暫定的な保護措置をとります。調査の進め方や見込みを通報者に伝えておくと、放置されていると受け取られるのを防げます。

出典・参考資料(1件)
  • 出典:事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)|厚生労働省(https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/pdf/pawahara_soti.pdf)

Q. パワハラの相談窓口と内部通報の窓口は、分けて設けなければなりませんか?

A. パワハラの相談窓口と内部通報の窓口は、分けても、1つの窓口に統合しても構いません。

内部通報制度は不正行為全般を幅広く受け付ける仕組みで、パワハラ相談窓口はその一部機能として併設される場合もあれば、別に設けられる場合もあります。いずれの形でも、通報者保護と守秘の体制を確保することが重要です。相談の入口を1つにまとめると、従業員がどこへ相談すればよいか迷わず利用できる利点があります。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
記事内でご紹介している製品・サービスは監修者が選定したものではなく、編集部が独自に選定したものです。
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

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