海外の消費者に自社商品を売る越境ECを始めよう・広げようとしたとき、最初に負担になるのが多言語対応のECサイト構築費や海外向けの広告費、モール出店費です。数十万円から数百万円という見積もりを前に、「補助金で一部でも戻ってくるなら使いたい」と調べ始めた方も多いはずです。
ただし補助金は、制度名も金額も要件も毎年のように変わります。数年前の記事で紹介されていた制度がすでに終了していたり、名前が変わっていたりすることも珍しくありません。実際、2026年には「ものづくり補助金」と「中小企業新事業進出補助金」が1つの補助金に統合され、IT導入補助金は名称が変わり、ECサイトの顧客側画面の構築費は原則対象外です。
この記事では、2026年度に越境ECで実際に使える国の補助金・自治体の補助金・公的な出品支援を、補助率・補助上限額・対象経費(越境ECのどの費用に使えるか)がひと目で分かる形で整理します。あわせて、自社が対象になるかの見極め方、申請の流れと後払いなどの注意点、補助金の対象経費になる越境ECサイト構築・海外展開支援の選択肢までを順に解説します。
金額や締切は公募回・年度ごとに更新されるため、申請前には必ず各制度の公式公募要領で最新の内容を確認してください。
目次
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越境ECに補助金は使える?使える補助金の一覧【2026年度】
まず押さえておきたいのは、「越境EC専用」の大きな補助金は基本的に存在しないという点です。越境ECで補助金を活用する場合は、中小企業向けの汎用的な補助金や自治体の海外展開支援制度を、越境ECの費用(サイト構築・多言語化・海外広告・モール出店など)に当てはめて使うことになります。
そのため、制度ごとに「越境ECのどの費用に使えるか」「いくらまで戻るか」が異なります。下の表に、2026年度に使える主な制度を、補助率・補助上限額・対象経費(越境ECでの使い道)・受付状況でまとめました。自社の規模や使いたい費用に近い制度から、次章以降の要点解説を読み進めてください。
| 制度名(所管) | 補助率 | 補助上限額 | 越境ECでの主な使い道・対象経費 | 2026年度の受付・締切 |
|---|---|---|---|---|
| 小規模事業者持続化補助金〈一般型・通常枠〉(中小企業庁・商工会議所/商工会) | 2/3 (賃金引上げ特例の赤字事業者は3/4) | 50万円 (インボイス特例・賃金引上げ特例の上乗せで最大250万円)。うちウェブサイト関連費は30万円(税込)が上限 | ○ サイト構築・多言語化:商品販売サイトの作成・更新を「ウェブサイト関連費」として申請。ただし30万円(税込)が上限で、単体では申請不可 | 第20回:2026年11月5日受付開始〜12月15日17時締切(事業支援計画書〈様式4〉は12月4日締切) |
| 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 グローバル枠(中小企業基盤整備機構) | 2/3 | 2,500万〜7,000万円 (賃上げ特例で最大9,000万円、補助下限750万円) | ○ サイト構築(システム構築費)・多言語化(通訳翻訳費)・海外広告(広告宣伝費):ただし海外市場開拓(輸出)の体制強化を伴う大型投資が前提 | 第1回:2026年10月30日18時締切(以降の公募は公式で要確認) |
| デジタル化・AI導入補助金2026〈通常枠〉(旧IT導入補助金。中小企業庁) | 1/2 (所定の最低賃金要件を満たす場合2/3) | 5万〜450万円 | △ 業務ツールのみ:受発注・在庫・顧客管理などの登録ITツールは対象。EC顧客側画面の新規制作(スクラッチ開発)は対象外 | 回次制(締切は公式で要確認) |
| 中小企業省力化投資補助金(中小企業庁・中小機構) | 1/2 (小規模事業者等は2/3) | 750万〜8,000万円 (従業員規模別・一般型) | × 越境ECサイトは対象外:自社の人手不足解消のための省力化設備が対象(対外向け販売を前提とする設備・システムは対象外) | 回次制(締切は公式で要確認) |
| 自治体の補助金(都道府県・市区町村) | 制度による | 制度による | ○ 海外ECモール出店費・越境ECサイト制作費・海外広告費など(自治体ごとに異なる) | 年度・予算により変動(予算消化で早期終了あり) |
表を見ると、越境ECの「サイト構築費そのもの」に直接使える制度は意外と限られていることが分かります。最も直接的に使えるのは小規模事業者持続化補助金のウェブサイト関連費ですが、上限30万円(税込)と小口です。一方、グローバル枠のように数千万円規模の制度は、サイト構築単体ではなく輸出体制の強化や設備投資が前提になります。次章から、各制度の要点を具体的に見ていきます。
越境ECに使える国の補助金(補助額・補助率・対象経費・対象外)
ここからは、国の主な補助金を制度ごとに、補助額・補助率・越境ECでの使い道・対象外まで解説します。越境ECのサイト構築費に最も近い小規模事業者持続化補助金から順に見ていきます。
小規模事業者持続化補助金(越境ECサイトの構築・更新に使える)
小規模事業者が販路開拓や業務効率化に取り組む費用を支援する制度です。越境ECとの関係では、商品販売のためのウェブサイトやECサイトの開発・構築・更新・多言語化などを「ウェブサイト関連費」として申請できる点が特徴で、国の補助金の中では越境ECサイトの構築費に最も直接使えます。
通常枠の補助上限は50万円、補助率は2/3です。インボイス特例の対象事業者は50万円、賃金引上げ特例の対象事業者は150万円が上乗せされ、両方に該当すると最大250万円まで上限が広がります。
○補助上限:50 万円 ※上記金額に、インボイス特例対象事業者は 50 万円の上乗せ、賃金引上げ特例対象事業者は 150 万円の上乗せ、両特例対象事業者は 200 万円の上乗せ ○補 助 率:2/3(賃金引上げ特例のうち赤字事業者は 3/4)
出典:小規模事業者持続化補助金〈一般型・通常枠〉第20回 公募要領(第8版)|日本商工会議所
ただし、越境ECサイトに関わるウェブサイト関連費には2つの制約があります。1つは金額の上限で、ウェブサイト関連費として申請できるのは補助金交付申請額のうち30万円(税込)までです。もう1つは、ウェブサイト関連費のみでは申請できず、ほかの経費(広報費や展示会等出展費など)と一緒に申請する必要がある点です。
③ウェブサイト関連費 販路開拓等を行うためのウェブサイトや EC サイト、システム(オフライン含む)等の開発、構築、更新、改修、運用をするために要する経費 ○ウェブサイト関連費のみによる申請はできません。必ず、ほかの経費と一緒に申請してください。 ○当経費の補助金交付申請額の上限は 30 万円(税込)です。
出典:小規模事業者持続化補助金〈一般型・通常枠〉第20回 公募要領(第8版)|日本商工会議所
第20回の申請受付は2026年11月5日に開始し、締切は12月15日17時です。申請には地域の商工会・商工会議所が発行する事業支援計画書(様式4)が必要で、その発行受付締切は12月4日と申請締切より前に設定されています。計画書の発行には日数がかかるため、早めの相談が安全です。
出典・参考資料(2件)
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(旧ものづくり補助金・新事業進出補助金が統合)
かつての「ものづくり補助金」と「中小企業新事業進出補助金」(事業再構築補助金の後継)は、2026年に「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」として統合されました。この補助金は「革新的新製品・サービス枠」「新事業進出枠」「グローバル枠」の3つの枠で構成され、越境ECや海外展開に関係するのはグローバル枠です。
グローバル枠は、海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制強化の取り組みを支援する枠です。補助上限額は従業員規模に応じて2,500万〜7,000万円(賃上げ特例で最大9,000万円、補助下限750万円)、補助率は2/3と大型です。補助対象経費には、機械装置・システム構築費のほか、海外市場開拓(輸出)に関する事業では広告宣伝・販売促進費、通訳・翻訳費、海外旅費が含まれます。
1-2-3. グローバル枠/概要:海外市場開拓(輸出)に向けた、国内の輸出体制強化の取組を支援 補助上限額:従業員数1~20 人 2,500 万円(3,000 万円)/21~50 人 4,000 万円(5,000 万円)/51~100 人 5,500 万円(7,000 万円)/101 人以上 7,000 万円(9,000 万円)(補助下限額 750 万円) 補助率:中小企業者(小規模企業・小規模事業者、再生事業者含む)2/3 (グローバル枠のうち、海外市場開拓(輸出)に関する事業のみ)海外旅費、通訳・翻訳費、広告宣伝・販売促進費
出典:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回公募)|中小企業基盤整備機構
注意したいのは、この枠は「国内の輸出体制強化」を目的とする大型の設備・システム投資が前提である点です。多言語対応のECサイトを広告宣伝・販売促進費や通訳・翻訳費として組み込むことはできますが、EC サイトの構築だけを目的とする小口の申請には向きません。海外向けの新製品開発や生産設備の増強とあわせて越境ECに取り組む場合に適した制度です。
また、前掲の補助上限額のうちカッコ内の金額は、賃上げ特例を満たした場合の上限です。第1回公募の申請受付締切は2026年10月30日18時で、この回に間に合わない場合は、次回以降の公募が実施されるかを公式サイトで確認してください。公募回ごとに締切や要件が変わるため、申請前に公式の最新情報を確認しましょう。
出典・参考資料(2件)
デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金。EC顧客側画面の新規制作は対象外)
従来の「IT導入補助金」が2026年度から名称を変えた制度です。中小企業・小規模事業者がITツールを導入する費用を支援するもので、通常枠の補助額は5万〜450万円、補助率は1/2以内(所定の最低賃金要件を満たす場合は2/3以内)です。
越境ECとの関係では注意が必要です。この補助金の対象は、事務局に登録されたITツール(ソフトウェア購入費・クラウド利用費など)で、顧客側に見せるECサイトの画面を新規に制作する費用は「スクラッチ開発」に該当するため対象外とされています。そのため、越境ECサイトそのものの構築費には原則使えません。
補助対象経費:ソフトウェア購入費、クラウド利用費(クラウド利用料最大2年分)、導入関連費 …顧客側画面を新規制作する費用は、スクラッチ開発に該当するため対象外とする。 ・交付決定前にITツールを契約、発注した場合は補助対象とならない。
出典:デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)|中小企業庁
一方で、受発注管理・在庫管理・顧客管理(CRM)・会計といった、越境EC運営を支える業務側のITツールは対象になり得ます。越境ECサイトの構築そのものではなく、バックオフィス業務のデジタル化に活用する制度として位置づけるのが実態に合っています。
出典・参考資料(2件)
中小企業省力化投資補助金(対外向け販売システムは対象外)
人手不足の解消に向けた省力化投資を支援する制度です。補助率は1/2以内(小規模事業者等は2/3以内)で、一般型の補助上限額は従業員規模に応じて750万〜8,000万円です。機械装置・システム構築費が必須で、単価50万円(税抜)以上の設備投資が求められます。
この制度は越境ECには使えない点に注意が必要です。公募要領では、将来的な対外向け販売を前提とする設備・システムの開発や、利用者に有償で提供する設備・システム・サービスの開発は補助対象外と明記されています。越境ECサイトは「対外向けに販売するためのシステム」にあたるため、構造的に対象になりません。
(補助対象外となる事業)…将来的な対外向け販売を前提とする設備・システム等の開発を含む事業/利用者に有償で提供する設備、システム、サービス等の開発・改良を含む内容の事業/汎用設備、パッケージソフト等のオーダーメイド性の無い設備・システムを単体で導入する事業
出典:中小企業省力化投資補助事業(一般型)第7回公募 公募要領|中小企業庁
越境EC向けというより、受注・検品・物流など自社の業務プロセスを自動化・省力化する設備を導入する際に検討する制度です。越境ECの文脈では対象外になる前提で見ておきましょう。
出典・参考資料(1件)
また、かつて越境EC向けに案内されていた「デジタルツール等を活用した海外需要拡大事業費補助金」や「JAPANブランド育成支援等事業」は、単独の事業としては令和4年度の公募を最後に終了し、現在はものづくり系の枠(上記の新事業進出・ものづくり商業サービス補助金のグローバル枠)に引き継がれています。古い記事でこれらを現行制度として紹介している場合があるため、最新の公募情報で確認してください。
越境ECに使える自治体の補助金・公的な出品支援
国の補助金のほかにも、都道府県や市区町村が独自に海外展開・越境ECの費用を補助していることがあります。また、補助金とは別の形で、公的機関が越境ECの出品や輸出を支援する制度もあります。ここでは、自治体の補助金の探し方と、補助金以外の公的な支援を紹介します。
自治体の補助金の探し方と代表例
都道府県・市区町村の海外展開支援制度は、海外ECモールへの出店費用や越境ECサイトの制作費、海外向けの広告費などを補助するものが中心です。補助率や上限額は自治体ごとに大きく異なり、年度ごとに内容が変わるうえ、予算がなくなり次第終了するものも多いのが特徴です。
特定の自治体の金額は毎年変わるため、探し方を押さえておくのが確実です。国・自治体の補助金を横断検索できる電子申請システム「Jグランツ(jGrants)」や、各自治体・商工会議所の公式サイトで、自社の所在地の制度と募集期間・予算状況を確認しましょう。Jグランツの利用にはGビズIDプライム(法人共通の電子申請用ID)が必要です。
自治体によっては、海外ECモール出店費・越境ECサイト制作費・海外決済口座の開設費などを対象とした独自制度が設けられることがあります。補助率や上限額、対象経費は自治体ごとに大きく異なり、過年度に募集した制度が今年度は無いこともあります。
自社に使える制度を探すときは、前述のJグランツに加えて、検索エンジンで「自治体名+越境EC 補助金」「海外展開支援 補助金」のように調べるのがおすすめです。所在地の自治体・商工会議所の公式サイトで、現在の募集状況を確かめましょう。予算がなくなり次第終了するものも多いため、早めの確認が安全です。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:Jグランツ(jGrants)|デジタル庁
補助金以外の公的な出品支援(JETRO・自治体の公社など)
補助金で費用の一部を取り戻すのとは別に、公的機関が越境ECの出品や輸出の実務そのものを支援してくれる制度もあります。費用補助ではなく伴走支援や代行という形のため、「補助金はハードルが高い」と感じる場合の選択肢になります。
日本貿易振興機構(ジェトロ)の「新規輸出1万者支援プログラム」は、はじめて輸出に取り組む中堅・中小企業を対象にした無料のカウンセリング型支援です。登録すると、ジェトロから電話やオンライン面談でカウンセリングを受け、自社の状況に合ったジェトロ事業や支援機関のサービスの提案を受けられます。越境EC向けのセミナーなども開催されており、補助金を探す前の相談窓口としても使えます。
新規輸出1万者支援プログラム:「はじめて輸出」を応援します (流れ)ご登録 → カウンセリング(ジェトロから電話もしくはオンライン面談)→ ジェトロ事業もしくは支援機関のサービスのご提案 (費用)無料です。 ※本プログラムは、中堅・中小企業を対象としています。
出典:新規輸出1万者支援プログラム|日本貿易振興機構(ジェトロ)
自治体の公社による出品支援もあります。東京都中小企業振興公社の「越境EC出品支援(TokyoMall)」は、複数の越境ECモールに特設サイトを開設し、約1年間、商品説明の翻訳・サイトページ作成・代金の入金処理・商品発送などを事務局が代行する制度です。出品料・手数料はなく、対象は都内中小企業が製造販売する消費者向け商品(雑貨・化粧品・常温保存可能な加工食品など)です。
出品料・手数料なし! 翻訳・掲載手続き・出品後対応を事務局が代行します 複数の越境ECモールに特設サイト(TokyoMall)を開設し、約1年間、サイト運営・商品発送・支払いのサポートをしながら、実際に出品する様子を体験していただきます。
出典:越境EC出品支援(TokyoMall)|東京都中小企業振興公社
ただし、国内倉庫への発送送料や掲載期間終了後の返送送料、プロモーション参加時のサンプル提供費などは企業負担です。この事業は毎年度募集される事業で、令和8年度の募集はすでに締め切られています。次年度以降の募集を検討する場合は、公社の公式サイトで最新の募集案内を確認してください。自社の所在地によっては、同様の越境EC出品支援を各地の自治体・公社が実施している場合もあります。
出典・参考資料(2件)
自社が申請できる補助金の選び方
ここまで見てきた制度から、自社が申請できるものをどう見極めればよいかを整理します。まず制度を絞り込む観点を確認し、次に「結局いくら戻るのか」の見方を説明します。
自社に合う制度を見極める観点
越境ECで補助金を使うときは、次の観点で制度を絞り込むと自社に合うものが見えてきます。
- 対象経費が越境ECの使い道に合うか:サイト構築費そのものを補助したいなら小規模事業者持続化補助金のウェブサイト関連費、輸出体制の強化や海外広告・多言語化を含む大型投資なら新事業進出・ものづくり商業サービス補助金のグローバル枠、というように、使いたい費用から制度を選ぶとよいでしょう。デジタル化・AI導入補助金と省力化投資補助金は越境ECサイトの構築費には使えない点に注意が必要です。
- 募集期間に間に合うか:補助金は回次制や期間限定で、募集回数が少ないものもあります。使いたい時期に公募があるか、締切までに準備が間に合うかを確認しましょう。
- 補助率・補助上限額で実際にいくら戻るか:補助率が高くても上限額が小さければ戻る額は限られます。逆に上限が大きい制度は要件や事業計画のハードルが高くなりがちです。
- 申請の負担に見合うか:補助金は事業計画書の作成や採択後の実績報告が必要で、採択されるとは限りません。戻る額と申請・報告の手間を見比べて判断するとよいでしょう。
越境ECの費用から制度を逆引きすると、次のように整理できます。
| 補助したい越境ECの費用 | 向いている制度 | ポイント |
|---|---|---|
| 越境ECサイトの構築・更新・多言語化(小口) | 小規模事業者持続化補助金 | ウェブサイト関連費は30万円(税込)上限・単独申請不可 |
| 輸出体制強化とあわせた大型投資(設備・システム・海外広告・多言語化) | 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(グローバル枠) | 数千万円規模。新製品開発・設備投資が前提 |
| 受発注・在庫・顧客管理などの業務側ITツール | デジタル化・AI導入補助金2026 | EC顧客側画面の新規制作は対象外 |
| 海外ECモール出店費・地域限定の支援 | 自治体の補助金 | Jグランツ・自治体公式で最新の募集を確認 |
| 費用補助ではなく出品・輸出の伴走支援 | JETRO新規輸出1万者支援・自治体の出品支援 | 無料のカウンセリング・出品代行 |
補助額と補助率の見方(上限と補助率でいくら戻るか)
実際に受け取れる額は、「対象経費×補助率」と「補助上限額」のうち低い方になります。上限額に達するまでは対象経費に補助率を掛けた額が戻り、それを超えると上限額が頭打ちになる、という関係です。
たとえば小規模事業者持続化補助金の通常枠(補助率2/3・上限50万円)で、越境ECサイトの構築に60万円、広報費に15万円の計75万円を対象経費として申請する場合を考えます。75万円に補助率2/3を掛けると50万円ですが、ウェブサイト関連費は30万円(税込)が上限のため、サイト構築60万円分から補助されるのは30万円までです。
残りの広報費15万円分は補助率2/3で約10万円が補助され、この例の受取見込みは合計およそ40万円になります(通常枠の上限50万円の範囲内)。このように、制度全体の上限と、経費区分ごとの上限(ウェブサイト関連費30万円など)の両方を見て、実際に戻る額を見積もることが大切です。
補助率・上限額は公募回ごとに変わることがあるため、申請前には必ず最新の公募要領で確認してください。
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越境EC補助金の申請の流れと注意点
ここでは、補助金申請の大まかな流れと、多くの制度に共通する注意点を押さえます。制度ごとに細部は違いますが、基本の順序とつまずきやすいポイントは共通しています。
申請の流れ(GビズID取得から後払いまで)
多くの国の補助金は、GビズIDプライムの取得から始まり、電子申請システム「Jグランツ」で申請します。GビズIDは1つのID・パスワードで法人向け行政サービスにログインできる仕組みで、取得には日数がかかるため早めに申請しておくと安全です。全体の流れは次のとおりです。

大まかな流れは、次の順に進みます。まずGビズIDプライムを取得し、補助金の目的に沿った経営計画書・事業計画書を作成します。小規模事業者持続化補助金の場合は、ここで地域の商工会・商工会議所に相談し、事業支援計画書(様式4)の発行を受ける必要があります。
次にJグランツで電子申請し、審査を経て採択・交付決定となります。交付決定の後に越境ECサイトの構築やツールの発注を行い、事業が完了したら実績報告を提出します。報告の内容が確認されると、補助額が確定して後払いで入金されます。
必要書類は、GビズIDの登録情報、経営計画書・事業計画書、見積書や契約書、実績報告時の請求書・振込明細などで、交付決定の前後で揃えるものが変わります。
出典・参考資料(2件)
- 参考資料:GビズID|デジタル庁
- 参考資料:Jグランツ(jGrants)|デジタル庁
申請時の注意点(後払い・交付決定前の発注は対象外)
補助金を使う際に特に間違えやすいのが、次の注意点です。
- 交付決定の前に契約・発注すると対象外:先に越境ECサイトの制作やツールを発注・支払いしてしまうと、その費用は補助されません。必ず交付決定を待ってから発注する必要があります。
- 補助金は後払い(立て替えが必要):費用はいったん全額を自己資金で支払い、実績報告の後に補助額が入金されます。入金まで数か月かかることもあるため、当面の資金繰りを見込んでおく必要があります。
- 審査があり、採択は保証されない:申請すれば必ず受かるわけではなく、事業計画の内容が問われます。
- 予算がなくなり次第終了することがある:予算消化型の制度や自治体補助は、締切前でも受付が終わる場合があります。
- 年度・公募回ごとに条件が変わる:補助率・上限額・対象経費は毎年見直されます。前年の情報や古い記事の内容をそのまま信じず、最新の公募要領で確認しましょう。
小規模事業者持続化補助金の公募要領でも、補助金が後払いであることと、交付決定日以降に発生・支払いした経費でなければ対象にならないことが明記されています。
○ 補助事業遂行の際には自己負担が必要となり、補助金は後払いです。 ② 交付決定日以降に発生し補助事業期間中に支払が完了した経費
出典:小規模事業者持続化補助金〈一般型・通常枠〉第20回 公募要領(第8版)|日本商工会議所
補助金の対象経費になる越境ECサイト構築・海外展開支援
補助金で軽くできるのは、主に越境ECの初期の構築・多言語化・海外展開投資です。ここまで見たとおり、サイト構築費そのものに直接使えるのは小規模事業者持続化補助金のウェブサイト関連費(30万円・税込上限)が中心で、グローバル枠は輸出体制強化を伴う大型投資に組み込む形に限られます。月々の運営費や手数料は補助の対象になりにくい点にも注意が必要です。
補助を受けるにはまず、自社の越境ECをどう構築・運営するかを具体化する必要があります。ここでは、その際の依頼先となる越境ECサイト構築・海外展開支援のサービスを紹介します。各社が補助金の申請サポートに対応するかは制度・時期で変わるため、利用時に各社へ確認してください。
その前提として、モール型・自社EC型のどのルートで、どのプラットフォームを使い、どれくらいの費用で構築するかの見通しを立てておくと、補助金の対象経費も見積もりやすくなります。越境ECサイトの構築ルートや主要プラットフォームの費用比較、作り方の手順は、以下の記事で詳しく解説しています。
越境ECサイトの構築方法|プラットフォーム比較・費用相場・作り方の5ステップ
国内EC市場の頭打ちを受け、海外への売上拡大を検討する中小企業は少なくありません。越境ECの立ち上げにあたり、モール/自社サイト/SaaS/OSSのどのルートで作るか、初期費用や月額はいくらかかるのか、構築手段と費用感の全体像が見えず判断に…
以下の比較表では、対応プラットフォーム・対象地域・提供形態・費用の目安という観点で各サービスを並べています。補助金の申請サポートに対応するかは制度や時期で変わるため、実際に使うときは各社に確認してください。
| サービス名 | Magento / Adobe Commerce 構築・リニューアル支援 | WeChatミニプログラムFor中国越境EC | Lingble Global Guide |
|---|---|---|---|
| 提供会社 | 株式会社マルウェブ | 株式会社マルウェブ | Lingble Pte. Ltd. |
| 対応プラットフォーム | Magento Open Source/Adobe Commerce | WeChat(微信)ミニプログラム | 自社ドメインのグローバルECサイト(フルマネージド型) |
| 対象地域・市場 | 国内EC〜越境EC全般 (多言語・多通貨・国別サイト構成。中国向けにも対応) | 中国 | 世界34カ国で販売・170カ国へ配送(公式発表) |
| 提供形態 | 受託でのEC構築・リニューアル・保守運用 (販売・物流の代行は行わない) | ミニプログラム型ECの構築+運営支援 (店舗構築・WeChatPay決済・国際物流・現地CS代行まで伴走。15日間トライアルあり) | 戦略立案〜構築・運営・物流・多言語サポートまで一括代行 (フルマネージド型) |
| 費用の目安 | 要お問い合わせ (個別見積もり) | 初期555,000円/月額500,000円 (決済手数料1.8%、カタログ掲載価格。公式は要問い合わせ) | 要お問い合わせ (売上に応じたレベニューシェア型) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | オンライン相談を予約 |
ここからは、比較表で取り上げた各サービスの特徴を個別に見ていきます。自社の売りたい市場(中国・欧米など)や、構築だけを頼みたいか運営まで任せたいかに合わせて確認してください。
1. Magento / Adobe Commerce 構築・リニューアル支援(株式会社マルウェブ)

株式会社マルウェブが提供する、オープンソースのECプラットフォーム「Magento(Adobe Commerce)」を用いたECサイトの新規構築・リニューアル支援サービスです。要件定義・設計・開発・デザイン調整から保守運用までを一貫して請け負い、国内ECから越境ECまで事業に合わせて構築します。
越境ECとの相性では、多言語・多通貨対応や国別サイトの構成を取れる点が特徴です。公式サイトでは「多言語・多通貨対応を活かし、海外向けECにも展開しやすい構成を取れます」と案内しており、複数ストアの一元管理や、中国向けサイトの構築にも対応します。
取引先別価格や承認フローといったBtoBの受発注機能にも対応できるため、海外の法人取引を見据えた構築にも向いています。Magento/Adobe Commerceの構築・リニューアルで15年以上の対応実績があり、Adobe Commerce認定パートナー(ブロンズ)でもあります。費用は構築内容・連携範囲・移行作業の有無によって変わるため、個別見積もりとなります。
越境ECサイトの構築費は補助金の対象経費になりうるものの、サイトを公開してからどれくらいで成果が表れるかは、補助金とは別に気になるところです。この点について、同社代表の前山氏は次のように話しています。
台湾向けや中国向けなど越境ECの場合、一律に「何カ月で成果が出る」とは言えません。既存のブランド認知や顧客基盤、広告・SNSなどの集客施策、現地での運用体制によって大きく変わるためです。システム面では、公開直後から運用効率化などの効果が出るケースもあります。一方で売上や集客については、公開後のデータを見ながら継続的に改善していくことが重要だと考えています。
2. WeChatミニプログラムFor中国越境EC(株式会社マルウェブ)

中国向けの越境ECに特化したサービスです。中国で広く使われるメッセージアプリ「WeChat(微信)」内で動く「ミニプログラム」形式でEC店舗を構築でき、消費者は別アプリをインストールせずに買い物ができます。株式会社マルウェブが、WeChat向けSaaSを提供するWeimob(微盟)との代理店契約に基づき提供しています。
管理画面での商品登録・注文管理・CRM、ライブコマースやクーポンなどの販促機能、WeChatPay決済、越境向けの国際物流パートナー連携までを備えたオールインワンのシステムです。
売上はWeChatPay経由で日本円建てで最低月1回振り込まれ、ミニプログラム申請や商品登録、現地向けの利用規約整備、現地でのカスタマーサポート代行まで伴走支援を受けられます。本契約の前に15日間のトライアルも用意されています。
3. Lingble Global Guide(Lingble Pte. Ltd.)

シンガポールに本社を置くLingble Pte. Ltd.が提供する、ブランドの海外展開をワンストップで伴走するフルマネージド型のグローバルEC支援サービスです。戦略の立案からサイト構築・運営、物流、多言語のカスタマーサポートまでを一括で任せられるため、自社に越境ECの専任チームを持たない企業でも海外販売を始めやすい点が特徴です。
現地に最適化された購買体験づくり、グローバルEC専任チームによるサポート、効率的な物流、マーケティングの戦略・実行といった複数の支援を組み合わせて提供します。導入企業にはコクヨ、デサント、ブラザー工業、ダスキンなどの名前が挙げられています。構築から運営までを委託する前提のサービスのため、まずはミーティングで自社の商材や展開したい市場を相談するところから始められます。
ここで紹介したのは越境ECサイト構築・海外展開支援の一例です。越境EC代行には、サイト構築だけを頼むものから、受注・物流・カスタマーサポートまで含めた運営代行、中国・アジアなど地域特化型まで、支援の受け方に幅があります。補助金の対象経費になる依頼先を含めて全体から比較検討したい方は、以下のまとめ記事もあわせてご覧ください。
まとめ|自社に合う制度を見極めて早めに動く
越境ECで使える補助金は、2026年度では小規模事業者持続化補助金、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(グローバル枠)、自治体の補助金が中心です。越境ECのサイト構築費そのものに直接使えるのは小規模事業者持続化補助金のウェブサイト関連費(30万円・税込上限)で、大型投資を伴う場合はグローバル枠が選択肢になります。
デジタル化・AI導入補助金と省力化投資補助金は、越境ECサイトの構築費には使えない点に注意が必要です。
いずれの制度も「交付決定前の発注は対象外」「補助金は後払い」「年度・公募回ごとに条件が変わる」という共通の注意点があります。まずは自社の越境ECの使い道に合う制度を1〜2本に絞り、公式公募要領で最新の補助率・上限・締切を確認するのが近道です。補助金とあわせて、JETROや自治体の公的な出品支援も検討すると、自社に合った進め方が見えてきます。
補助金の対象経費になる越境ECサイト構築・海外展開支援を具体的に比べたいときは、各サービスの対応範囲や費用を資料でまとめて確認してください。
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越境EC補助金に関するよくある質問(FAQ)
Q. 越境EC補助金とは何ですか?
A. 越境EC補助金とは、海外の消費者に商品を売る越境ECのサイト構築・多言語化・海外広告・モール出店などの費用の一部を、国や自治体が補助する制度の総称です。ただし「越境EC専用」という名前の補助金があるわけではなく、中小企業向けの汎用的な補助金や自治体の海外展開支援制度を、越境ECの費用に当てはめて使うのが実態です。
制度ごとに補助率・補助上限額・対象経費が異なるため、自社が使いたい費用に合う制度を選ぶことになります。
Q. 越境ECに専用の補助金はありますか?
A. 越境ECだけを対象にした大きな補助金は、基本的に存在しません。実際には、小規模事業者持続化補助金や新事業進出・ものづくり商業サービス補助金のグローバル枠といった汎用の補助金を、越境ECの費用に当てはめて活用します。
かつて越境EC向けに案内されていた「デジタルツール等を活用した海外需要拡大事業費補助金」などは単独の事業としては終了し、現在はものづくり系の枠に引き継がれています。古い記事ではこれらを現行制度として紹介している場合があるため、最新の公募情報で確認してください。
Q. 越境ECサイトの構築費に使える補助金はどれですか?
A. 越境ECサイトの構築費そのものに最も直接使えるのは、小規模事業者持続化補助金の「ウェブサイト関連費」です。商品販売のためのECサイトの開発・構築・更新・多言語化を対象にできますが、ウェブサイト関連費として申請できるのは補助金交付申請額のうち30万円(税込)までで、この費用のみでの申請はできず、ほかの経費と一緒に申請する必要があります。
多言語対応や海外広告を含む大型投資であれば、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金のグローバル枠も選択肢になります。一方、デジタル化・AI導入補助金と中小企業省力化投資補助金は、越境ECサイトの構築費には使えません。
Q. 個人事業主でも越境ECの補助金を申請できますか?
A. 小規模事業者を対象とする小規模事業者持続化補助金など、個人事業主でも申請できる制度があります。ただし対象者の要件(業種ごとの従業員数の上限など)は制度・公募回ごとに定められているため、申請前に各制度の公式公募要領で、自社が対象に含まれるかを必ず確認してください。
Q. IT導入補助金(デジタル化・AI導入補助金2026)で越境ECサイトは作れますか?
A. 越境ECサイトそのものの構築費には、原則として使えません。従来のIT導入補助金から名称が変わったデジタル化・AI導入補助金2026では、顧客側に見せるECサイトの画面を新規制作する費用は「スクラッチ開発」に該当するとして対象外とされています。
ただし、受発注管理・在庫管理・顧客管理(CRM)・会計といった、越境EC運営を支える業務側のITツールは対象になり得ます。サイト構築ではなく、バックオフィス業務のデジタル化に活用する制度と捉えるのが実態に合っています。
Q. 越境ECの補助金はいつ入金されますか?
A. 越境ECの補助金は後払いで、費用をいったん全額自己資金で支払い、事業完了後の実績報告が確認されてから入金されます。入金まで数か月かかることもあるため、当面の資金繰りを見込んでおく必要があります。小規模事業者持続化補助金の公募要領でも、補助事業の遂行には自己負担が必要で、補助金は後払いである旨が明記されています。
Q. 交付決定の前に越境ECサイトを発注するとどうなりますか?
A. 交付決定の前に契約・発注した費用は、補助の対象になりません。先に越境ECサイトの制作やツールを発注・支払いしてしまうと、その分は補助されないため、必ず交付決定を待ってから発注する必要があります。補助の対象になるのは、原則として交付決定日以降に発生し、補助事業期間中に支払いが完了した経費です。
Q. 越境ECの補助金以外に使える公的な支援はありますか?
A. 費用を補助する補助金とは別に、公的機関が越境ECの出品や輸出の実務そのものを支援する制度があります。日本貿易振興機構(ジェトロ)の「新規輸出1万者支援プログラム」は、はじめて輸出に取り組む中堅・中小企業向けの無料のカウンセリング型支援です。
また東京都中小企業振興公社の「越境EC出品支援(TokyoMall)」のように、翻訳・サイト作成・入金処理・商品発送などを事務局が代行する自治体公社の制度もあります。補助金はハードルが高いと感じる場合の選択肢になります。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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