在宅勤務や拠点間をつなぐVPN(仮想プライベートネットワーク)の機器が攻撃の侵入口となり、ランサムウェアの被害につながる事例が相次いでいます。接続が集中して速度が落ちる、脆弱性の修正が追いつかないといった運用面の負担も重なり、「脱VPN」という言葉を上長やベンダーから聞く機会が増えました。
一方で、脱VPNがVPNを単にやめることなのか、ゼロトラストやZTNAといった別の仕組みへ移ることまで含むのか、言葉の意味があいまいなまま使われている場面も少なくありません。
本記事では、脱VPNとは何かという定義と射程から、注目される背景、VPNの課題、代わりとなるゼロトラスト・ZTNAとの違い、そして自社が今移行すべきかの判断の軸までを整理して解説します。言葉と全体像を押さえ、次の一歩を検討するための材料としてご活用ください。
目次
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脱VPNとは?結論とどこまでを指すかを一言で
脱VPNとは、社外から社内システムへの接続をVPN(仮想プライベートネットワーク)だけに頼る従来のやり方を見直し、ゼロトラストの考え方にもとづく接続・認証の仕組みへ移行・再設計していく取り組みを指します。
ここで押さえておきたいのが、どこまでを「脱VPN」と呼ぶかという範囲です。脱VPNは、VPNをすべて撤廃することだけを意味するわけではありません。利用シーンを限って段階的にVPNの比率を下げる、重要な業務だけ別の仕組みに移して一部はVPNを残す、といった併用・部分移行も含めて脱VPNと呼ばれます。文字どおり「VPNをゼロにする」話だと受け取ると、自社に合った選択肢を狭めてしまいます。
もう一つの誤解しやすい点が、「脱VPN=ゼロトラストの導入」とイコールではないことです。ゼロトラストはあくまで考え方(概念)であり、特定の製品を導入すれば完成するものではありません。デジタル庁「ゼロトラストアーキテクチャ適用方針」は、ゼロトラストとその実装の関係を次のように整理しています。
ゼロトラスト:境界の内部が侵害されることも想定したうえで、情報システムおよびサービスの要求ごとに適切かつ必要最小の権限でのアクセス制御を行う際に、不確実性を最小限に抑えるように設計された概念。
したがってゼロトラストアーキテクチャは特定の実装やソリューションを指すものではない。
出典:ゼロトラストアーキテクチャ適用方針(DS-210)|デジタル庁
このように脱VPNは、「VPNという接続手段を見直し、ゼロトラストの考え方で接続・認証を組み直す方向への移行」と捉えると実態に近くなります。何をどこまで移すかは自社の環境しだいで、その判断材料をこの先で順に見ていきます。
出典・参考資料(1件)
なぜ今「脱VPN」が注目されるのか
ここからは、脱VPNが語られるようになった背景を見ていきます。大きな要因は二つあります。一つはリモートワークや複数拠点・クラウド利用の広がりで社外からの接続が増え、VPN装置に負荷が集中するようになったこと。もう一つが、VPN機器そのものの脆弱性を突いた侵入が、実際の被害として数多く起きていることです。
後者は、公的な統計にもはっきり表れています。警察庁がランサムウェアの被害組織に対して行ったアンケートでは、侵入経路としてVPN機器が大きな割合を占めると報告されています。
被害組織へのアンケート結果によると、侵入経路はVPN(Virtual Private Network)機器が6割以上を占める状況である。
出典:令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について|警察庁
同じ報告書によると、令和7年(2025年)におけるランサムウェアの被害報告件数は226件にのぼります。VPN機器が主要な侵入経路になっているため、警察庁も「主要な侵入経路であるVPN機器等は速やかな対応が必要」と注意を促しています。
前年の令和6年(2024年)の報告でも、VPNとリモートデスクトップ用の機器を合わせた侵入が感染経路の8割以上を占めると記されています(令和7年の「VPN機器6割以上」はVPN単独の割合で、合算した令和6年とは集計の範囲が異なります)。いずれの年もリモートアクセスの入口が主要な侵入経路になっています。
VPN機器を狙った攻撃・ランサム被害の実例
統計だけでなく、具体的な被害も公表されています。警察庁の令和6年の報告では、VPN装置の脆弱性を起点とした不正アクセスの事例が記載されています。
令和6年7月、国内の宇宙航空分野の研究開発機関は、VPN装置のぜい弱性を起点とする不正アクセスにより、侵害を受けた端末、サーバ及びクラウド上で管理していた情報の一部が漏洩したことを発表した。
出典:令和6年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について|警察庁
同報告書は、令和6年にVPN製品やファイアウォール製品などのネットワーク機器で、悪用されると機器への侵入を許すおそれのある重大な脆弱性が複数公表されたことにも触れています。公表された脆弱性は攻撃者にも知られるため、修正プログラムの適用が遅れると、その期間がそのまま侵入のすきになります。
こうした状況は、IPA(情報処理推進機構)の「情報セキュリティ10大脅威 2026」にも映っています。組織向けのランキングでは「ランサム攻撃による被害」が1位、「リモートワーク等の環境や仕組みを狙った攻撃」が8位に挙げられており、社外からの接続を守る仕組みの見直しが課題として認識されています。
出典・参考資料(1件)
侵入口となるVPNだけでなく、ランサムウェアそのものへの備えを予防・バックアップ・感染時の対応まで含めて確認しておきたい方は、次の記事で全体像を整理しています。
VPNの何が問題なのか
ここからは、脱VPNが語られる理由を仕組みの面から整理します。VPNは、社外の端末と社内ネットワークの間に暗号化された専用の通路をつくり、いったん通路を通せば社内にいるのと同じように扱う方式です。これは「境界の内側は信頼し、外側を遮断する」という境界型セキュリティの考え方にもとづいています。
境界型セキュリティ:従来のセキュリティの基本的な考え方であり、境界で内側と外側を遮断して外部からの攻撃や内部からの情報流出の防止を試みる。境界型セキュリティは「信頼できないもの」が内部に入り込まない、また内部には「信頼できるもの」のみが存在することが前提となる。
出典:ゼロトラストアーキテクチャ適用方針(DS-210)|デジタル庁
この前提が崩れると、VPNは次の3つの弱点を抱えます。それぞれ見ていきます。
境界型防御の限界(入られると内部で広がりやすい)
境界型は「内部は信頼できる」ことを前提にしているため、VPN経由で一度内部に入られると、攻撃者は信頼された利用者として社内を動き回りやすくなります。ファイルサーバーや別の端末へ横に移動され、被害が一気に広がる構図です。
デジタル庁の適用方針も、ネットワークベースの境界型セキュリティだけでは備えとして不十分となる恐れがあると指摘しています。VPN装置の認証情報が盗まれたり脆弱性を突かれたりすると、この「内部は信頼」の前提がそのまま弱点になります。
通信の遅延・帯域の逼迫(接続が集中すると遅くなる)
VPNは、社外からの通信を一度社内のVPN装置に集めてから目的地へ振り分けます。在宅勤務や拠点が増えて同時接続が集中すると、VPN装置やその回線がボトルネックになり、速度低下や接続の不安定さにつながります。クラウドサービスを使う場合も、いったん社内を経由してから外部へ出る経路になりやすく、通信が遠回りになって体感速度が落ちる要因になります。
機器の脆弱性と運用・パッチ負荷(修正の遅れが侵入口になる)
VPN装置はインターネットから直接見える位置に置かれるため、脆弱性が公表されると攻撃の標的になりやすい機器です。前の章で見たとおり、VPN機器は実際にランサムウェアの主要な侵入経路になっています。
修正プログラムの適用やバージョン管理を常に最新に保つ運用が欠かせませんが、24時間動かし続ける装置を止めて更新する調整は負担が大きく、対応が遅れがちです。その遅れがそのまま侵入のすきになる点が、運用面の難しさです。
ゼロトラスト・ZTNAとは何か
脱VPNとセットで語られるのが、ゼロトラストとZTNAです。ここでは、この2つの言葉の意味を押さえます。
ゼロトラストは、前の章で引用したとおり「境界の内部が侵害されることも想定」し、要求ごとに必要最小の権限でアクセス制御を行う考え方です。
国際的な標準であるNIST(米国国立標準技術研究所)のSP 800-207「Zero Trust Architecture」は、ネットワーク上の場所(社内LANかインターネットか)だけを根拠に信頼を与えない、という原則を基本に据えています。要点は次の3つに集約できます。
- 暗黙の信頼を置かない:社内ネットワークに接続していること自体を、信頼してよい理由にしません。
- 最小権限:アクセスはリソース単位・セッション単位で、その作業に必要な最小限の権限だけを許可します。
- 常に検証する:認証・認可は動的に、アクセスを許可する前に毎回厳格に行います。利用者やデバイスの状態も継続的に確認します。
この考え方をリモートアクセスに適用した製品カテゴリが、ZTNA(ゼロトラストネットワークアクセス)です。ZTNAは調査会社のGartnerが提唱した用語で、VPNのように「ネットワーク全体への通路」を開くのではなく、利用者の本人確認とデバイスの状態を確認したうえで、許可されたアプリケーション単位でアクセスを仲介します。
アプリをインターネットから直接見えないように隠し、認証を通った通信だけをアプリにつなぐため、入られても内部を広く動き回られにくくなります。NISTはこの仕組みを、利用者とアプリの間に立つ「リソースポータル」のモデルとして記述しています。
VPNとゼロトラスト・ZTNAの違い(比較表)
ここまでの内容を、VPN(境界型)とゼロトラスト・ZTNAで対比して整理します。以下は、両者の考え方の違いをまとめた比較表です。
| 観点 | 信頼の前提 | アクセスできる範囲 | 侵入されたときの被害範囲 | 通信経路・速度 | 拠点・ユーザーの追加 |
|---|---|---|---|---|---|
| VPN(境界型) | 境界の内側は信頼する。通路を通れば社内にいる扱いになる | 接続するとネットワーク全体に届きやすい | 内部で横移動され、広がりやすい | 社内のVPN装置に集約。集中すると遅くなりやすい | 装置の性能・ライセンスの制約を受けやすい |
| ゼロトラスト・ZTNA | 場所やネットワークだけでは信頼しない。要求ごとに検証する | 許可されたアプリ単位。必要な範囲だけに限定する | アプリ単位で遮断され、横移動を抑えやすい | アプリへ直接仲介。装置への集中を避けやすい | クラウド型が多く、拡張しやすい |
※上記はVPN(境界型)とゼロトラスト・ZTNAの一般的な考え方の違いを整理したものです。実際の挙動や対応範囲は製品・構成によって異なります。
大きな違いは、「どこまでを信頼するか」です。VPNは通路を通した相手を社内として信頼しますが、ゼロトラスト・ZTNAはアクセスのたびに利用者とデバイスを確認し、許可した範囲だけにつなぎます。この差が、侵入されたときの被害の広がりやすさや、接続が集中したときの速度に表れます。
脱VPNに関わる用語とソリューション類型の整理
脱VPNを調べると、ゼロトラスト・ZTNAのほかにもSASE・SDP・IAPといった似た言葉が次々に出てきます。どれがどれの一部なのか、何をするものなのかを整理しておくと、製品を比べるときに迷いにくくなります。以下に主な用語を整理します。
まずは中心となる用語が「何を含むか」の関係を、入れ子で押さえておきましょう。

| 用語 | ゼロトラスト | ZTNA | SASE | SDP | IAP | データレスクライアント | クラウドVPN |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 位置づけ | 考え方(概念) | 製品カテゴリ(Gartner提唱) | 製品カテゴリ(Gartner提唱) | 技術方式(CSAが規格化) | 実装名(ベンダー由来) | 端末側の方式 | VPNの提供形態 |
| 何を指すか | 場所やネットワークだけで信頼せず、要求ごとに検証する設計思想。特定の製品を指さない | ゼロトラストの考え方をリモートアクセスに適用し、アプリ単位でアクセスを仲介する仕組み | ネットワーク機能とセキュリティ機能をクラウドで統合して提供する枠組み。ZTNAを含むことが多い | アプリを外部から見えないように隠し、認証された相手だけに接続を許す方式。ZTNAの基盤の一つ | 利用者とアプリの間に認証を挟んでアクセスを仲介する実装の呼び方。Google(BeyondCorp)由来 | 手元の端末にデータを残さず、画面転送などで業務を行う方式。端末紛失時の情報漏えいを抑える | VPNの仕組みをクラウドで提供する形態。VPNの一種で、ゼロトラストとは前提が異なる |
※用語の位置づけは一般的な整理です。製品によっては複数の機能を組み合わせて提供される場合があります。
関係を大づかみにすると、ゼロトラストという考え方があり、それをリモートアクセスに適用した製品群がZTNA、ネットワークとセキュリティをクラウドでまとめた枠組みがSASE、ZTNAを支える技術方式の一つがSDP、という位置づけになります。脱VPNは、これらのいずれか、あるいは組み合わせで実現していくことになります。
自社は今VPNをやめるべきか?進め方と判断の軸
ここまでを踏まえ、「では自社は今やめるべきか」を考えます。結論から言えば、すべての企業がただちにVPNを全廃すべきというわけではありません。VPNには拠点間接続や既存の運用資産を生かせる利点もあり、やめることが目的化すると、かえって使い勝手やコストを悪化させることがあります。大切なのは、守りたい対象とリスク・運用体制を見て、自社に合った移行の形と速度を選ぶことです。
全面移行・段階移行・VPN併用の現実解
移行の形は大きく3通りあります。VPNを全面的に置き換える、重要な業務から順に移して一部はVPNを残す段階移行、そして用途を分けてVPNとゼロトラスト型を併用するハイブリッド構成です。
たとえば、クラウドサービスへのアクセスはゼロトラスト型にして社内を経由しない、拠点間の安定した通信は引き続きVPN(閉域網)を使う、といった使い分けが考えられます。多くの企業では、いきなり全廃するより、リスクの高い入口から段階的に移す進め方が現実的です。
どれが向くかは、守りたい対象や運用体制から見当がつきます。
- クラウドサービスへのアクセスが中心で、社内に残すシステムが少ない場合は、全面的にゼロトラスト型へ寄せやすくなります。
- 社内のレガシーシステムや拠点間の専用通信が多い場合は、重要資産は閉域のVPNを残し、一般業務をゼロトラスト型に移すハイブリッド・段階移行が収まりやすい選択です。
- 運用の人員が限られる場合は、リスクの高い入口であるVPN装置から小さく移すところから始めると、負担を抑えられます。
進め方(スモールスタート)と実務の落とし穴
進め方は、まず現状の接続経路とアクセス対象を棚卸しし、守る優先度の高いものから小さく始めるのが基本です。その際、実務では次のような点でつまずきやすいため、先に想定しておくと安全です。
- Active Directory(社内の利用者・端末を管理する仕組み)との連携が必要で、認証の設計を見直すことになります。
- 外部サービス側でVPNの固定IPアドレスを許可条件にしている場合、接続元の設計を変える必要があります。
- これまでVPN前提でつながっていた社内システムや業務アプリが、移行後に通らなくなることがあります。
- Webアクセスの経路や制御も合わせて見直すことになり、想定より範囲が広がります。
これらは事前の棚卸しと検証環境での確認で多くを避けられます。一度に全部を移さず、対象を区切って動作を確かめながら広げていくと、業務を止めるリスクを抑えられます。
VPNを使い続ける場合の現実的な対策
すぐに移行できない、あるいは一部でVPNを残すと決めた場合も、入口のリスクは下げられます。次のような対策が現実的です。
- 多要素認証(MFA)を必須にして、認証情報の盗用だけでは入れないようにします。
- 公表された脆弱性の修正プログラムを素早く適用します。
- 使っていない機能や公開範囲を減らし、攻撃対象を小さくします。
- ログを監視し、不審なアクセスに早く気づける体制をつくります。
VPNを残すこと自体が問題なのではなく、境界型の弱点を補う運用があるかどうかが分かれ目になります。
ここで入口対策の要になる多要素認証(MFA)について、二段階認証との違いや認証の3要素から詳しく知りたい方は、次の記事で仕組みを解説しています。
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脱VPN・ゼロトラストを実現するサービス
言葉と判断の軸を押さえたら、次は実際の手段です。ここからは、VPNに代わる接続・認証を実現するサービスを紹介します。脱VPNは一つの製品で完結するものではなく、本人確認と権限管理(SSO・多要素認証)、デバイスの状態確認、アプリ単位のアクセス制御などを組み合わせて実現します。
本記事で紹介する2つのサービスは、いずれも脱VPNの土台となる本人確認・アクセス制御を担うものです。社内システムへの接続そのものをVPNから丸ごと置き換えたい場合は、アプリ単位で社内に中継するZTNA・SASE型の製品も併せて検討するとよいでしょう。
選ぶときは目的から整理すると迷いません。クラウドのログイン集約と認証強化が主目的ならIDaaS(クラウド型のID管理サービス)型、社内アクセスの置き換えまで踏み込むならZTNA・SASE型、という対応で考えると、次に調べるべき製品の類型を絞り込めます。
脱VPNで用いる認証・アクセス制御は、社内セキュリティ対策全体の一部でもあります。端末・ネットワーク・ID・データなど守る対象ごとに、どんなソリューションがあるかを俯瞰してから検討したい場合は、次のまとめ記事で全体像を確認できます。
脱VPN・ゼロトラストの手段を選ぶときの観点
製品を比べるときは、次の観点を自社の状況に当てはめて確認すると選びやすくなります。
- 本人確認の強度:多要素認証やシングルサインオン(SSO)に対応し、認証情報の盗用だけでは入れない仕組みがあるか。
- デバイスの状態確認:接続してくる端末のセキュリティ状態(OS更新・暗号化・対策ソフトなど)を条件にできるか。
- 既存環境との連携:いま使っているID管理(Active Directoryなど)やクラウドサービスとつなげられるか。
- 対象業務との適合:Webアプリ中心か、社内システムや画面転送まで必要かなど、守りたい対象に合うか。
以下はご紹介するサービスの比較表です。
| 比較項目 | CloudGate UNO | Cisco Secure Access by Duo |
|---|---|---|
| 提供形態 | クラウド型IDaaS(SSO・MFA・アクセス制限を統合) | クラウド型(MFA・デバイストラスト・アクセス制御) |
| 多要素認証(MFA) | ●FIDO2/パスキー・生体認証・OTP等 | ●Duo Push・FIDO2/パスキー・生体・OTP等 |
| シングルサインオン(SSO) | ●SAML 2.0・OpenID Connect対応 | ●Duo SSO(SAML 2.0/OIDC、Essentials以上) |
| パスワードレス対応 | ●全プラン・全ユーザーで無制限 | ●FIDO2/パスキー・Duo Mobileで対応 |
| デバイスの状態確認 | △証明書・IP・場所・時間で端末を制御(OSの健全性チェックは公表情報では確認できず) | ●デバイストラストでOS・暗号化等を確認(Advantage以上) |
| VPNレスの社内アクセス | △クラウドサービスのSSO・アクセス制御が中心 | ●Duo Network Gatewayで社内Webアプリ等へ(Premierのみ) |
| 既存ID基盤との連携 | ●Active Directory連携(Enterprise Plus以上) | ●Active Directory・Entra ID・Okta等 |
| 料金の目安(月額) | 400〜600円/ユーザー(税抜) 初期費用は別途・要問い合わせ | Essentials $3・Advantage $6・Premier $9/ユーザー Freeプラン $0(10名まで) |
| 無料トライアル | ●30日間 | ●30日間(Freeプランは10名まで恒久無料) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | サービス詳細を見る |
※料金・機能は2026年10月時点の各社公式情報にもとづきます。最新の内容は各社の公式サイトでご確認ください。
1. CloudGate UNO(クラウドゲートウノ)

CloudGate UNOは、国内で長く提供されているIDaaSで、シングルサインオン(SSO)・多要素認証・アクセス制限を一つにまとめてゼロトラストの考え方で運用できる点が特徴です。社内外のクラウドサービスへのログインを一元化し、利用する場所・端末・時間などの条件に応じてアクセスを許可・制限できます。
認証を入口で強化し、誰がどのサービスにアクセスできるかを集中管理できるため、VPNに頼らずに社外からの接続を守りたい場面で選択肢になります。生体認証やICカードなど複数の認証方式に対応し、パスワードだけに依存しないログインを実現できる点も、認証情報の盗用対策として有効です。
パスワードに頼らない認証への切り替えは、入口の安全性だけでなく日々の運用にも影響します。CloudGate UNOを提供するインターナショナルシステムリサーチの担当者は、導入現場での変化について次のように述べています。

導入と同時にパスワードレス認証に切り替えた企業では、IT部門の業務の約20%を占めていたパスワード関連のヘルプデスク業務が「0%」になったという事例があります。
2. Cisco Secure Access by Duo(シスコ)

Cisco Secure Access by Duoは、多要素認証(MFA)とデバイスの状態確認(デバイストラスト)を軸に、ゼロトラストの考え方でアクセスを制御するサービスです。接続してくる端末のセキュリティ状態を確認したうえで、利用者の場所や役割などの条件に応じて、アクセスの可否を動的に判断するアクセスポリシーを備えています。
上位プランで提供されるDuo Network Gateway(DNG)を使うと、VPNを張らずにブラウザ経由で社内のWebアプリへ安全につなぐ構成が取れます。まず本人確認と端末の確認を固めたうえで、段階的にVPNレスのアクセスへ広げていきたい企業に向いた選択肢です。
ただし、DNGの利用には自社環境にゲートウェイを用意する設計・運用が必要になるため、対象の業務や構成に合うかを確認して進めるとよいでしょう。
まとめ
脱VPNとは、社外から社内への接続をVPNだけに頼るやり方を見直し、ゼロトラストの考え方で接続・認証を組み直していく取り組みです。VPNをすべてやめることだけを指すわけではなく、段階的な移行やVPNとの併用も含みます。背景には、VPN機器が実際にランサムウェアの主要な侵入経路になっている現実と、リモートワークでの接続集中があります。
VPN(境界型)とゼロトラスト・ZTNAの違いは、「どこまでを信頼するか」にあります。自社が今やめるべきかは、守りたい対象とリスク・運用体制を見て、全面移行・段階移行・併用のどれが合うかで判断します。
実現の手段としては、本人確認と権限管理、デバイスの状態確認、アプリ単位のアクセス制御を組み合わせたサービスがあり、自社の環境に合うものを選ぶことが第一歩になります。まずは複数のサービスの資料を取り寄せ、機能や対応範囲を具体的に比べてみてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 脱VPNとは、VPNを完全になくすことですか?
A. 脱VPNは、必ずしもVPNを完全になくすことを指すわけではなく、VPNだけに頼る接続のやり方を見直し、ゼロトラストの考え方にもとづく仕組みへ移していく取り組みです。
利用シーンを限って段階的にVPNの比率を下げる、重要な業務だけ別の仕組みに移して一部はVPNを残す、といった部分移行・併用も「脱VPN」に含まれます。「VPNをゼロにする」という字面どおりに受け取ると、自社に合った選択肢をかえって狭めてしまう点に注意が必要です。
Q. ゼロトラストとZTNAは同じものですか?
A. ゼロトラストとZTNAは同じではなく、ゼロトラストは「場所やネットワークだけでは信頼しない」という考え方(概念)、ZTNAはその考え方をリモートアクセスに適用した製品カテゴリです。
ゼロトラストは特定の製品を導入すれば完成するものではなく、設計の指針にあたります。その指針をもとに、VPNのようにネットワーク全体への通路を開くのではなく、本人確認とデバイスの状態を確認したうえで許可されたアプリ単位でアクセスを仲介する仕組みとして実装したものがZTNAです。
したがって「脱VPN=ゼロトラストの導入」とも一対一ではなく、ZTNAはゼロトラストを実現する手段の一つという関係になります。
Q. ZTNAとSASE・SDPは何が違いますか?
A. 三つは脱VPNで併せて語られる言葉ですが位置づけが異なり、ZTNAはアプリ単位でアクセスを仲介する製品カテゴリ、SASEはネットワーク機能とセキュリティ機能をクラウドで統合する枠組み、SDPはアプリを外部から隠して認証された相手だけに接続を許す技術方式です。
大づかみには、SASEはZTNAを含むことが多い広い枠組みで、SDPはZTNAを支える基盤技術の一つ、という入れ子の関係で捉えると整理しやすくなります。製品によっては複数の機能を組み合わせて提供されるため、名称だけで比べず、自社が必要とする機能が含まれるかで確認するのが実務的です。
Q. 脱VPNをしても、VPNは残して併用できますか?
A. 脱VPNをしてもVPNを残して併用することは可能で、用途ごとにVPNとゼロトラスト型を使い分けるハイブリッド構成は現実的な選択肢です。
たとえば、クラウドサービスへのアクセスはゼロトラスト型にして社内を経由しない一方、拠点間の安定した通信は引き続き閉域のVPNを使う、といった使い分けが考えられます。VPNを残す場合も、多要素認証(MFA)の必須化・脆弱性の修正プログラムの迅速な適用・ログ監視といった運用で、境界型の弱点を補えるかどうかが安全性の分かれ目になります。
Q. 中小企業でも脱VPNは必要ですか?
A. 脱VPNは大企業だけの課題ではなく、社外からの接続にVPN機器を使っている中小企業にとっても検討する価値があります。
VPN機器はランサムウェアの主要な侵入経路になっており、この傾向は企業規模を問いません。一方で、すべての中小企業がただちに全面移行すべきというわけでもありません。守りたい対象とリスク・運用体制を見て、リスクの高い入口から段階的に移す、あるいはVPNを残したうえで前述の運用対策で補う、といった自社に合った形と速度を選ぶのが現実的です。
Q. 脱VPNの導入にはどのくらいの費用がかかりますか?
A. 脱VPNの費用は一律ではなく、選ぶ方式(ZTNA・IDaaSなど)・利用する人数・既存環境との連携範囲によって変わります。
認証やアクセス制御を担うクラウド型のサービスは、利用人数に応じた月額課金が一般的で、本記事で紹介したサービスではユーザーあたり月額数百円程度からの料金設定が見られます。ただし初期費用やプランごとの機能差、既存のID管理との連携にかかる設計・検証の手間も含めて考える必要があるため、正確な費用は複数社の資料を取り寄せて、自社の人数・構成に当てはめて見積もるのが確実です。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















