人件費は多くの企業で支出の大きな部分を占めますが、「売上原価と販管費のどちらに入れるのか」「部門や案件ごとにどう割り振れば採算が見えるのか」で迷う場面は少なくありません。
財務会計では人件費を会社全体でまとめて把握すれば足ります。一方、管理会計では、人件費を職種や部門・製品・案件といった社内の切り口で捉え直し、採算の判断に使える数字へ組み替えることが求められます。
本記事では、人件費を原価と販管費にどう分けるか、人件費率・労働分配率をどう計算して読むか、部門・製品・案件別に人件費を配賦して採算を見る実務までを順を追って整理します。Excelでの部門別管理が限界に近づいたときの仕組み化の選択肢まで解説します。
目次
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人件費は売上原価(製造原価)か販管費か|職種別の区分
人件費が売上原価になるか販管費になるかは、一律には決まりません。その人が何の業務に従事しているかによって、計上される区分が変わります。まずは職種・業務ごとの区分を一覧で押さえましょう。
| 職種・業務の例 | 計上される区分 | 補足 |
|---|---|---|
| 製造ラインの作業員、受託開発のエンジニアなど、製造・サービス提供に直接たずさわる人 | 売上原価(製造原価=労務費) | 売上に直接結びつく労働 |
| 営業、総務・経理、経営企画など、販売・一般管理の業務にあたる人 | 販売費及び一般管理費(販管費) | 役員報酬・管理部門の給料手当など |
| 研究開発にたずさわる人 | 原則は販管費(研究開発費) | 特定製品の製造に直接結びつく場合は製造原価 |
| 複数の業務を兼務する人 | 原価側と販管費側へ按分 | 作業時間など従事割合を基準に振り分け |
以下では、それぞれの区分の考え方を順に見ていきます。
製造・サービス提供に直接関わる人件費は原価(労務費)
製品の製造やサービスの提供に直接たずさわる従業員の人件費は、売上原価のもとになる製造原価(労務費)として扱います。原価計算では、原価を発生の形態によって材料費・労務費・経費に分類するのが基本的な枠組みで(企業会計審議会「原価計算基準」の形態別分類)、このうち労働の消費によって生じる原価が労務費にあたります。
ここでいう労務費には、製造現場の作業員の賃金のほか、製造にたずさわる人の給料・従業員賞与手当・退職給付の繰入額・健康保険料の会社負担(福利費)などが含まれます。製造業の工場で働く人、受託開発でプロジェクトに参加するエンジニアなど、売上に直接結びつく仕事をしている人の人件費は、この労務費として売上原価に積み上がっていくと理解すると整理しやすくなります。
営業・管理・経営企画などの人件費は販管費
一方、営業や総務・経理・経営企画など、製造やサービス提供に直接たずさわらない部門の人件費は、販売費及び一般管理費(販管費)に計上します。財務諸表等規則は、販管費の範囲を次のように定めています。
会社の販売及び一般管理業務に関して発生したすべての費用は、販売費及び一般管理費に属するものとする。
出典:財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則 第84条(e-Gov法令検索)
この規定に沿えば、販売・一般管理の業務で発生した人件費は販管費に含まれます。役員報酬や管理部門の給料手当がその代表例です。ただし、販管費の具体的な費目の分け方は会計実務上の慣行であり、条文が品目を限定列挙しているわけではありません。原則(条文)と実務の費目分けは分けて捉えておくと、自社の勘定科目を整理するときに迷いにくくなります。
兼務者の按分・研究開発部門の人件費の扱い
実務でつまずきやすいのが、複数の業務を兼務している人の扱いです。たとえば現場作業と事務管理を兼ねる従業員の場合、その人件費をすべて原価に入れるか、すべて販管費に入れるかで、部門別の損益が変わってしまいます。
考え方としては、従事している業務の割合(作業時間など)を基準に、原価側と販管費側へ合理的に振り分けるのが基本です。工数の記録がなければ按分の根拠を示しにくいため、兼務が多い職場ほど、後述する工数の把握が重要になります。
研究開発にたずさわる人の人件費は、研究開発費として販管費に含めるのが一般的です。ただし、特定の製品の製造に直接結びつく開発であれば製造原価に含める場合もあり、どの業務活動のための費用かという視点で判断します。判断に迷う場合は、自社の会計方針や顧問税理士の確認を前提にしてください。
人件費に含まれる費目と勘定科目の内訳
人件費は給与だけを指すわけではありません。従業員や役員に関わる費用を幅広く含みます。決算書で人件費の全体像をつかむには、次のような勘定科目を合計して捉えます。
- 給料手当:正社員・契約社員などへの基本給と各種手当
- 賞与:従業員へのボーナス(引当金の繰入を含む場合があります)
- 役員報酬:取締役など役員への報酬
- 雑給:アルバイト・パートへの給与
- 法定福利費:社会保険料・労働保険料のうち会社負担分
- 福利厚生費:健康診断・慶弔費・社内行事など法定外の福利厚生
- 退職金・退職給付費用:退職一時金や退職給付引当金の繰入額
人件費の管理では「どこまでを人件費に含めるか」をあらかじめそろえておくことが大切です。たとえば派遣社員への支払いは、自社の従業員への人件費ではなく外注費(支払手数料など)として処理するのが一般的で、人件費には含めません。含める範囲が年度や部門でぶれると、人件費率などの指標を比べても意味を読み取りにくくなります。
人件費と労務費の違い
人件費と似た言葉に「労務費」があります。労務費は、前章で触れたとおり製造原価の構成要素のうち、労働に対して支払われる部分を指す原価計算上の用語です。労務費は、人件費のうち製造に関わる部分を原価の文脈で呼んだものと捉えると区別しやすくなります。
人件費は会社全体で従業員・役員に関わる費用全般を指す広い言葉、労務費は製造原価の中の労働に関する費用という狭い言葉、という関係です。どちらの言葉で集計しているのかを意識すると、原価と販管費の切り分けもぶれにくくなります。
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人件費率・労働分配率の計算と業種別・規模別の目安
人件費の水準が適切かどうかを見るには、金額そのものより割合で捉えると判断しやすくなります。ここでは代表的な指標である人件費率と労働分配率の計算方法と、公的統計にもとづく目安を確認します。
人件費率の計算式と計算例
人件費率は、人件費が売上に対してどのくらいの割合かを示す指標です。分母に何を置くかで、主に2種類が使われます。
- 売上高人件費率=人件費 ÷ 売上高 × 100
- 売上総利益人件費率=人件費 ÷ 売上総利益(粗利) × 100
たとえば、売上高1億円・人件費3,000万円の企業であれば、売上高人件費率は30%です。同じ企業の売上総利益が5,000万円であれば、売上総利益人件費率は60%になります。売上原価に変動費を多く含む業種では、売上高ではなく売上総利益を分母に取るほうが、人件費の負担感を実態に近く捉えられます。
業種別の売上高人件費率については、公的統計として業種別の数値を直接公表した表が確認できません。人件費率は分母を売上高と売上総利益のどちらに取るかで水準が変わり、統計として一律の業種別平均を示しにくいためです。
業種ごとの水準感をつかみたい場合は、分母に付加価値を取り業種間の比較に向く労働分配率(次に説明します)を目安にするのが確実です。自社の売上高人件費率は、算出して時系列で追い、必要に応じて財務省「法人企業統計調査」などの業種別の売上高・人件費から試算して同業の傾向と照らすとよいでしょう。
労働分配率の計算式と計算例
労働分配率は、企業が生み出した付加価値のうち、どれだけを人件費として分配したかを示す指標です。付加価値を分母に取るため、業種をまたいだ比較や規模による傾向の把握に使われます。
- 労働分配率=人件費 ÷ 付加価値額 × 100
付加価値額の算出方法は統計や計算方式によって異なります。たとえば財務省「法人企業統計調査」をもとにした分析では、付加価値額を営業利益・人件費・減価償却費などの合計として捉えています。労働分配率を比べるときは、どの定義・どの年次の数値かをそろえておかないと、水準の違いを読み誤るおそれがあります。
自社で簡易に求めるなら、損益計算書の営業利益に人件費と減価償却費を足す方法(加算法)で付加価値を近似できます。あとで紹介する目安の表と比べるときは、その表と同じ定義・年次に近い形でそろえると、水準を読み違えにくくなります。
業種別・規模別の目安(出所・年次つき)
労働分配率の水準は、業種の労働集約度や企業規模によって大きく変わります。まず業種別の目安を見てみましょう。次の数値は、厚生労働省「令和6年版 労働経済の分析」が財務省「法人企業統計調査」をもとに示した産業別の労働分配率(2023年第4四半期時点、後方4四半期移動平均)です。
| 産業(金融業・保険業を除く) | 労働分配率(2023年第4四半期) |
|---|---|
| 全産業 | 61.5% |
| 製造業 | 60.8% |
| 情報通信業 | 57.3% |
| 建設業 | 68.3% |
| 運輸業、郵便業 | 67.5% |
| 卸売業・小売業 | 66.4% |
| サービス業 | 70.1% |
| 医療、福祉業 | 90.0% |
ここでの労働分配率は「人件費 ÷ 付加価値額」で、人件費は役員給与・役員賞与・従業員給与・従業員賞与・福利厚生費の合計、付加価値額は営業利益・人件費・減価償却費の合計として算出されています。医療・福祉業のように人手に支えられる業種ほど分配率は高く、情報通信業のように設備や知的財産の比重が大きい業種ほど低く出る傾向が読み取れます。
次に、企業規模(資本金規模)別の目安です。次の数値は、厚生労働省の最低賃金に関する小委員会の参考資料が、財務省「法人企業統計」をもとに示した資本金規模別の労働分配率(令和4年度)です。
| 資本金規模(金融業・保険業を除く全産業) | 労働分配率(令和4年度) |
|---|---|
| 規模計 | 67.5% |
| 資本金1,000万円以上 | 65.0% |
| うち 10億円以上 | 51.2% |
| うち 1億円~10億円 | 65.1% |
| うち 1,000万円~1億円 | 77.3% |
| 資本金1,000万円未満 | 84.6% |
規模が小さい企業ほど労働分配率が高く、大企業ほど低い傾向が見て取れます。これは、大企業ほど設備や自動化で付加価値を高めやすいことなどが背景にあります。
この規模別の表は年度値、先ほどの業種別の表は四半期の移動平均で、付加価値の定義も厳密には異なります。両者を直接足し引きするのではなく、それぞれ出所・年次・定義を確認したうえで、自社と同じ業種・規模の水準感をつかむ目安として使ってください。
労働分配率は、低ければよいというものではありません。低すぎれば従業員への還元が不足している可能性があり、高すぎれば利益を圧迫している可能性があります。業種・規模の目安と照らしながら、自社として適切な水準を判断することが大切です。出典は以下のとおりです。
出典・参考資料(2件)
管理会計として人件費を部門・製品・案件別に管理する|財務会計との違いと配賦の実務
ここまでの分類や指標は、会社全体の人件費を捉える話が中心でした。管理会計で問われるのは、その人件費を部門・製品・案件といった社内の切り口に割り振り、どこで利益が出ているかを見える化することです。進め方を具体的に見ていきます。
財務会計との違い(社内の意思決定のために部門・案件単位で見る)
財務会計は、法令にもとづいて株主や金融機関など社外の利害関係者へ報告するための会計で、様式や集計の範囲が定められています。会社全体の損益を正しく示すことが目的です。
管理会計は、社内の意思決定のために自由な切り口で数字を組み立てる会計です。どの部門・製品・案件が稼いでいるかを把握し、予算や投資の判断に使います。人件費についても、会社全体の金額を把握するだけでなく、「この事業部の損益は黒字か」「この案件は人件費を回収できているか」を見るために、部門・案件単位へ割り振って捉える必要があります。
同じ人件費のデータでも、外部報告のために使うのが財務会計、社内の採算管理のために組み替えて使うのが管理会計、という関係です。
財務会計と管理会計は、目的・報告先・義務の有無・集計の範囲など複数の点で性格が異なります。両者の違いを軸ごとに整理して押さえておきたい場合は、以下の記事で詳しく解説しています。
直接労務費と間接労務費
部門・製品・案件別に人件費を見るには、まず人件費を「どこに割り当てられるか」で2つに分けて考えます。原価計算では、原価要素を製品との関連によって直接費と間接費に分けて捉え、労務費も直接労務費と間接労務費に分かれます。
- 直接労務費:特定の製品・案件に直接ひもづけられる人件費。たとえば、ある案件だけに従事したエンジニアの人件費
- 間接労務費:複数の製品・部門に共通してかかり、特定の対象に直接ひもづけられない人件費。たとえば、全社の生産管理や複数案件を横断して支える人の人件費
直接労務費は、その製品・案件の原価にそのまま計上できます。問題になるのは、特定の対象にひもづけられない間接労務費をどう各部門・製品へ割り振るかです。ここで必要になるのが配賦という考え方です。
間接労務費の配賦基準の考え方
配賦とは、複数の部門や製品に共通してかかる間接的な費用を、一定のルール(配賦基準)にしたがって各対象へ割り振ることです。間接労務費であれば、各部門・案件の作業時間や従事人数など、費用の発生と関係の深い基準を使って配分します。
たとえば、複数案件を横断して支える管理者の間接労務費が月30万円で、その月に案件Aへ60時間・案件Bへ40時間を費やしたとします。作業時間の比(6対4)で配賦すると、案件Aに18万円、案件Bに12万円を割り当てる、という具合です。
こうして配賦した間接労務費を、各案件の直接労務費やその他の原価と合わせて売上から差し引くと、案件ごとの損益が並びます。たとえば案件Aは売上200万円・直接費150万円なら配賦後の利益は200−150−18=32万円、案件Bは売上120万円・直接費95万円なら120−95−12=13万円、と算出できます。
各案件を同じ土俵の損益で並べると、どこで利益が出ているかが見えます。間接労務費を配賦せず一括で扱うと、この案件別・部門別の採算が見えなくなるため、配賦は部門別損益を「完成」させる最後の一手になります。
配賦基準は「どの基準を使えば実態に近い配分になるか」という観点で選びます。原価計算の枠組みでも部門別計算や間接費の配賦が想定されていますが、特定の配賦基準が一律に決められているわけではないため、自社の業務実態に合った基準を選ぶことになります。
間接労務費が大きい、あるいは兼務者が多い組織ほど、配賦の設計が部門別損益の正確さを左右します。配賦基準が恣意的だと「赤字に見える部門」が配賦のせいなのか実態なのか判別できなくなるため、根拠のある基準をそろえておくことが重要です。
工数の把握
兼務者の按分にも、間接労務費の配賦にも、土台として必要になるのが工数(作業時間)の把握です。誰がどの業務・案件にどれだけ時間を使ったかが分からなければ、人件費を根拠をもって割り振ることができません。
工数の記録は、勤怠打刻や作業日報、プロジェクト管理ツールなど、現場が無理なく続けられる方法で集めるのが現実的です。最初から精緻にしすぎると記録が形骸化しやすいため、まずは部門・案件の大きな区分から始め、必要に応じて細かくしていくとよいでしょう。工数というデータがそろって初めて、人件費の配賦と部門別損益の分析が動き出します。
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Excelでの部門別人件費管理の限界
人件費の配賦と部門別損益は、多くの企業が最初はExcelで運用します。ただ、管理する部門・案件が増え、配賦のルールが複雑になるにつれて、表計算での管理はいくつかの壁にぶつかります。
- 配賦・按分の属人化:按分や配賦の計算式が特定の担当者のシートに依存し、作成者以外が触れにくくなる
- 財管一致のずれ:決算(財務会計)の数字と社内で見ている管理用の数字がそろわず、突き合わせに手間がかかる
これに加えて、会計データの取り込みと配賦の再計算を毎月手作業で繰り返す更新負担も重なります。こうした手作業の限界が見え始めたときに検討したいのが、配賦と部門別損益を仕組みで回す選択肢です。次の章では、Excelでの管理と管理会計システムでの管理を比べながら具体的に見ていきます。
人件費の配賦・部門別損益に役立つ管理会計システム
管理会計システム(予実管理・経営管理クラウド)には、会計システムからデータを自動で取り込み、あらかじめ設定したルールで間接費を配賦し、部門・製品・案件別の損益を自動で組み立てる機能を備えたものがあります。Excelでの属人的な配賦・集計を仕組みに置き換えることで、月次の更新負担と財管一致のずれを抑えられます。
同じ部門別人件費の管理でも、Excelでの運用と管理会計システムでは進め方が変わります。主な違いを整理します。
| 間接労務費(共通費)の配賦 | 会計実績の取り込み | 配賦ルールの変更・比較 | 財務会計との整合(財管一致) | 運用の属人化 | |
|---|---|---|---|---|---|
| Excelでの部門別管理 | 手作業の計算式で按分し、式が担当者に依存しやすい | 会計データを毎月コピー・貼り付けで取り込む | 複数シートを手直しし、変更前後の比較がしにくい | 決算の数字との突き合わせを手作業で確認する | 作成者以外が触れなくなりやすい |
| 管理会計システムでの管理 | 配賦元・配賦先・配賦基準をルール化し自動で計算 | 会計システムと連携して自動で取り込む | ルールの切り替えと反映後の数値の比較がしやすい | 同じ会計データをもとに管理用数字を組み立て、ずれを抑えやすい | 権限やルールを設定して複数人で運用しやすい |
※ 一般的な運用の違いを整理したものです。具体的な機能はサービスにより異なります。
配賦に対応する管理会計システムは複数あり、機能や料金はサービスによって異なります。カテゴリ全体の比較は、管理会計システムのまとめ記事もあわせてご覧ください。ここでは、その一例としてDIGGLEを紹介します。
管理会計システムおすすめ16選を比較|目的・規模別の選び方とタイプ別の違い
月次の予実管理がExcelに集約され、各部門からファイルを回収して集計し終えた頃には数字が古くなっている。部門別・事業別の損益が見えず、原価の配賦や分析軸ごとの集計は手作業に頼っている。こうした状態は、事業の多角化や拠点の増加とともに限界を…
DIGGLE(ディグル株式会社)

DIGGLEは、予算・実績・見込をクラウド上で一元管理する予実管理特化のサービスです。会計システムとのAPI連携で実績データを自動で取り込み、勘定科目より細かい粒度で損益を管理・分析できる点を特徴としています。freee会計やマネーフォワード クラウド会計、勘定奉行クラウド、弥生などと連携し、Excel中心の予実管理で起こりがちな集計の手間や属人化の解消を狙うサービスです。
人件費の配賦の観点では、DIGGLEは多段階配賦機能を備えています。配賦元・配賦先・配賦基準を設定して多段階のロジックを組め、配賦ルールをワンクリックで切り替えたり、配賦を反映した後の数値をスナップショットとして保存して損益を比較したりできます。
公式のプレスリリースでは、配賦を「複数の部門や製品に共通してかかる人件費や光熱費などの共有コスト(間接費)を一定のルールで割り振ること」と説明しており、本記事で扱ってきた間接労務費の配賦に対応する機能だと分かります。
第三者評価としては、調査会社である株式会社富士キメラ総研の予実管理ソフトウェア(SaaS/PaaS区分)のベンダーシェア調査で、2024年度実績の1位とされています(提供元の発表による)。
料金はStandard・Enterpriseの2プラン構成で、いずれも見積制のため、具体的な費用は資料請求や問い合わせで確認する形です。
ただし、直接原価計算・全部原価計算といった原価計算そのものの機能は公式に明記されていないため、原価計算まで行いたい場合は対応範囲を問い合わせるとよいでしょう。
出典は以下のとおりです。
出典・参考資料(3件)
- 出典:DIGGLE 配賦機能アップデート|ディグル株式会社 公式プレスリリース
- 出典:富士キメラ総研 予実管理ソフトウェアのシェアに関する発表(2026年1月21日)|ディグル株式会社 公式プレスリリース
- 参考資料:DIGGLE 機能・料金|ディグル株式会社 公式サイト
まとめ
管理会計における人件費は、まず「製造・サービス提供に直接関わる人は原価(労務費)、営業・管理部門は販管費」という職種別の区分が出発点になります。そのうえで、人件費率や労働分配率で水準を把握し、業種別・規模別の目安と照らして自社の位置を確認します。
管理会計の本領は、人件費を部門・製品・案件別に配賦して、どこで利益が出ているかを見える化する点にあります。兼務者の按分や間接労務費の配賦には工数の把握が欠かせず、部門・案件が増えるほどExcelでの運用は属人化しやすくなります。手作業の限界が見えてきたら、配賦と部門別損益を仕組みで回せる管理会計システムの導入を検討するとよいでしょう。
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管理会計と人件費に関するよくある質問(FAQ)
Q. 管理会計における人件費とは何ですか?
A. 管理会計における人件費とは、従業員や役員に関わる費用を、部門・製品・案件といった社内の切り口で捉え直し、採算の判断に使える数字へ組み替えたものです。会社全体でまとめて把握すれば足りる財務会計と違い、管理会計では人件費を職種や部門・案件別に割り振り、どこで利益が出ているかを見える化して経営判断に使います。
Q. 人件費は売上原価と販管費のどちらに計上しますか?
A. 人件費を売上原価と販管費のどちらに計上するかは、その人が従事している業務の内容によって変わります。製造やサービス提供に直接たずさわる人の人件費は原価(労務費)として売上原価に積み上げ、営業・総務・経理・経営企画など販売・一般管理の業務にあたる人の人件費は販管費に計上するのが原則です。
Q. 複数の業務を兼務している従業員の人件費はどう分けますか?
A. 兼務している従業員の人件費は、従事している業務の割合(作業時間など)を基準に、原価側と販管費側へ合理的に按分するのが基本です。すべてを一方に寄せると部門別の損益がゆがんでしまうため、工数を記録して按分の根拠を示せるようにしておくことが重要になります。
Q. 人件費と労務費はどう違いますか?
A. 人件費と労務費の違いは、人件費が会社全体で従業員・役員に関わる費用全般を指す広い言葉であるのに対し、労務費は製造原価の構成要素のうち労働に対して支払われる部分を指す狭い原価計算上の用語である点です。労務費は、人件費のうち製造に関わる部分を原価の文脈で呼んだものと捉えると区別しやすくなります。
Q. 人件費率と労働分配率はどう使い分けますか?
A. 人件費率と労働分配率は、人件費率が売上(または売上総利益)に占める割合、労働分配率が企業の生み出した付加価値に占める割合を示す指標で、業種をまたいだ比較や規模別の傾向把握には付加価値を分母に取る労働分配率が適しています。業種別の売上高人件費率は公的統計で直接公表された表が確認しにくいため、水準感をつかむなら労働分配率を目安にするのが確実です。
Q. 労働分配率はどのくらいが適正ですか?
A. 労働分配率の適正水準は業種・企業規模によって大きく異なり、全産業では6割程度、サービス業や医療・福祉業など労働集約度の高い業種、そして資本金の小さい企業ほど高く出る傾向があります(厚生労働省が財務省「法人企業統計」をもとに示した数値)。低すぎれば従業員への還元不足、高すぎれば利益の圧迫が疑われるため、同業・同規模の目安と照らして自社に適した水準を判断します。
Q. 間接労務費はどのように各部門・案件へ割り振りますか?
A. 特定の製品・案件にひもづけられない間接労務費は、作業時間や従事人数など、費用の発生と関係の深い配賦基準にしたがって各対象へ割り振ります(配賦)。原価計算基準は特定の配賦基準を一律に義務づけていないため、どの基準なら実態に近い配分になるかという観点で、自社の業務実態に合った基準を選ぶことになります。
Q. Excelでの部門別人件費管理が限界になったら何を検討すべきですか?
A. Excelでの部門別人件費管理が按分・配賦の属人化や月次更新の負担、財管一致(決算と管理用数字の整合)のずれで回らなくなってきたら、配賦と部門別損益を自動で組み立てる管理会計システムへの移行を検討するのが有効です。会計データの自動取り込みと設定したルールでの間接費配賦により、手作業の突き合わせや更新の負担を抑えられます。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















