経理の担当者が1人しかいなかったり、総務や経営者が片手間で経理も担っていたりして、日々の記帳や月次の締めに追われている企業は少なくありません。経理代行への委託を考え始めても、いざ調べると代行会社の数が多く、「どこを見て選べば失敗しないのか」で手が止まってしまいます。
経理代行とは、記帳・仕訳や請求・支払の管理、給与計算、月次・年次の決算補助といった経理業務を、企業に代わって外部が引き受けるサービスです。依頼先には税理士事務所・アウトソーシング会社(経理BPO)・オンラインアシスタントといったタイプがあり、料金も依頼する業務の範囲によって大きく変わります。
本記事では、委託先を見極めるための選定基準を「確認すべきこと」と「見落としがちな危ない兆候」つきで整理します。あわせて、委託する業務の範囲別の料金の目安、依頼先タイプの違いと自社への向き・不向き、税務申告をめぐる法的な注意点までをまとめました。そのまま相見積もりの質問票として使えるチェック項目としてご活用ください。
目次
一括ダウンロードする
経理代行の選び方|失敗しないための選定基準チェックリスト
ここからは、委託先を見極めるための選定基準を項目ごとに解説します。どの代行会社も実績や信頼性を掲げますが、肝心なのは何をもって見極めるかです。まずは8つの基準を「確認すること」と「危ない会社の兆候」で一覧にまとめました。そのまま相見積もりの質問票として使え、各項目の詳しい解説は表の下に続きます。
| 選定基準 | 対応業務の範囲 | 料金の内訳と追加費用 | 情報セキュリティ | 会計ソフトへの対応 | 税務申告の可否 | 担当体制とレスポンス | 実績 | 業務量への柔軟性 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 確認すること | 任せたい業務を標準の契約範囲で引き受けるか | 月額に含まれる範囲、仕訳数など従量部分の単価と条件 | ISMS・プライバシーマークの取得、NDA、アクセス権限の管理 | 自社が使うソフト(freee・マネーフォワード クラウド等)のまま引き継げるか | 申告まで任せたいかを決め、税理士が関与するか確認 | チーム対応か、担当交代時に引き継げるか、返信の目安 | 自社と近い規模・業種の対応実績、具体的な導入事例 | 繁忙期・成長時に体制を広げられるか、賞与・年末調整の扱い |
| 危ない会社の兆候 | どこまでが標準でどこからが追加料金か曖昧なまま「一通り対応できます」で済ます | 「一式」の見積りだけで、追加費用の発生条件の基準が示されない | 認証も管理ルールの説明もなく、担当者個人のメールで証憑をやり取りする | 対応ソフトが限られ、乗り換えや二重入力が前提になる | 税理士が関与しないのに「申告までまるごと任せられる」と説明する | 担当者1人依存、問い合わせの初動が遅い、窓口が一本化されていない | 「実績豊富」だけで中身がない、匿名事例や出どころ不明の数値 | 特定月だけ増える業務の扱いが見積りで示されない |
対応できる業務の範囲は自社の課題に合っているか
経理代行と一口に言っても、記帳だけを請け負う会社から、請求・支払・給与計算・月次決算まで幅広く引き受ける会社まで対応範囲はさまざまです。まず自社が「何を任せたいのか」を書き出し、その業務を標準の契約範囲で引き受けてもらえるかを確かめましょう。
任せたい業務を書き出したら、その一つひとつが標準の契約範囲に含まれるのか、どこからが追加料金なのかを、見積書や契約書の明細のレベルで線引きしてもらいます。範囲が書面に落ちていないまま運用を始めると、開始後に「それは範囲外です」と追加費用を求められやすく、当初の見積りとの差が開きます。
料金の内訳は明確で、追加費用の条件が示されているか
月額に何が含まれ、どこからがオプションなのかは、見積書で必ず押さえておきたいポイントです。経理代行の料金は委託する業務の範囲と処理件数で変わるため、「仕訳が月何件まで」「それを超えると1件いくら」といった従量部分の条件まで示されているかが判断材料になります。
月額だけが安く見えても、決算料や給与計算が別立てで、年間の合計では割高になることがあります。見積りは月額の数字だけで比べず、決算・年末調整まで含めた年間の総額で各社をそろえて並べると、どこに費用が乗っているか、追加費用がどの条件で発生するかが分かります。
情報セキュリティの体制は整っているか
経理代行では、取引先情報・口座情報・給与データなど機微な情報を外部に預けます。情報セキュリティマネジメントの国際規格であるISMS(ISO/IEC 27001)やプライバシーマークの取得状況、秘密保持契約(NDA)の締結、アクセス権限の管理方法を確かめておきたいところです。
認証はあくまで体制の目安で、実際に情報を守るのは日々の運用ルールです。認証の有無だけで安心せず、委託先が機微な情報をどう扱うかを次の観点まで踏み込んで確かめると、表面的な説明では見えない実態をつかめます。
- 再委託の有無:業務の一部を外部に再委託するか、する場合に委託元と同じ管理水準が再委託先まで及ぶか
- 作業端末・作業場所の管理:私物端末での作業を認めているか、在宅で作業する際の覗き見・持ち出し対策があるか
- データの持ち出し制限:USBメモリや私用クラウドへの保存・ダウンロードの権限をどう制御しているか
- 従業員への教育:担当者に情報セキュリティの教育を定期的に実施しているか
- インシデント発生時の対応:情報漏えいや誤送信が起きたときの報告フローと連絡先が定められているか
自社が使う会計ソフトに対応しているか
すでにクラウド会計ソフト(freee・マネーフォワード クラウドなど)を使っている場合は、そのソフトのまま引き継いで運用できるかを確認しましょう。対応ソフトが限られる会社に依頼すると、ソフトの乗り換えや二重入力が発生し、かえって手間が増えることがあります。
「対応しているか」だけでなく、どこまで使いこなせるかも確認しておきましょう。委託先がfreee認定アドバイザーやマネーフォワード クラウド公認メンバーといった提供元の認定を受けているかは、そのソフトの習熟度を測る目安になります(会計ソフトの習熟度を示す指標で、税務の専門性とは別です)。
あわせて、自動仕訳ルールの設定やAI-OCRによる証憑の自動読み取りにどこまで対応するかも確かめましょう。手入力が中心か、自動化の機能を活かすかで、月々の作業量と入力ミスの起きやすさが変わります。弥生会計など freee・マネーフォワード以外のソフトを使っている場合は、そのソフトのまま対応できるか、対応ソフトが限られないかも尋ねておきましょう。
紙の請求書や領収書が多い場合は、郵送・スキャン代行などデータ化の手段を用意しているかも見ておきます。自社の現状の運用をそのまま受け止める柔軟性があるかどうかが、移行時の負担を左右します。
税務申告まで任せたいのか、記帳までで十分か
委託したい業務に税務申告が含まれるかどうかは、依頼先選びを大きく左右します。税務申告や税務相談は税理士でなければ引き受けられないため、税理士が関与しない経理代行会社では申告まで一本化できません。この点は法律上の制約なので、後ほど「税務申告まで任せられる?」の章で詳しく整理します。
記帳や月次決算までを任せ、申告は既存の顧問税理士に依頼する分担でも問題ありません。自社がどちらを求めているかをはっきりさせておくと、依頼先タイプを絞り込みやすくなります。
担当体制とレスポンスは安定しているか
担当者が1人だけの体制だと、その人が休んだり退職したりしたときに業務が止まるリスクがあります。チームで対応し、担当者が替わっても引き継げる体制か、問い合わせへの返信の目安はどのくらいかが確認ポイントです。
チェック内容を二重で確認する体制(ダブルチェック)や、月次でのレポート・報告の仕組みがあるかも、品質の安定につながる要素です。問い合わせへの初動が遅い、窓口が一本化されていないといった兆候は、運用後のやり取りの負担を示唆します。
実績は自社と近い規模・業種で確認できるか
「実績豊富」という表現だけでは判断できません。自社と近い企業規模・業種での対応実績があるか、導入事例として具体的な業務内容や成果が示されているかを見ておきます。同業・同規模の事例があれば、自社の業務をイメージしてもらいやすくなります。
公開されている導入社数が全社合計なのか、そのサービス単独なのかも確認しておくと、実態を正しく捉えられます。匿名の事例や数値の出どころが示されない実績訴求は、鵜呑みにせず問い合わせで裏を取ります。
業務量の増減に柔軟に対応できるか
事業の成長や繁忙期で取引件数が増えたとき、決算期だけ業務量が跳ね上がるときに、体制を柔軟に広げられるかも見ておきましょう。賞与計算や年末調整のように特定の月だけ発生する業務を、どう扱うか(標準かオプションか)も見積り段階で聞いておきます。
これらの基準を同じ条件で各社に尋ねれば、料金だけでなく対応範囲や体制の違いが横並びで見えてきます。続いて、その判断に欠かせない料金の目安を見ていきましょう。
経理代行の料金相場|業務別の費用の目安
選定基準の中でも気になるのが料金です。経理代行の費用は「どこまで任せるか」で大きく変わるため、依頼する業務の範囲ごとに公開されている料金の例を整理します。相見積もりで提示された金額が高いか安いかを判断する、基準値として使ってください。
| 依頼する業務の範囲 | 記帳代行が中心(仕訳入力・帳簿作成) | 経理全般を丸投げ(記帳〜月次決算) | 税務申告まで含む(税理士が関与) |
|---|---|---|---|
| 月額費用の目安 | 月3,980円〜(公認会計士が管理する記帳代行の公開料金の例) | 月30,000円〜(中小企業向け定額プランの例)。従業員5名規模の経理BPOでは月10万円前後の料金例も | 月29,500円〜(免税事業者)・月43,500円〜(課税事業者)など、申告まで含む定額の例(税別) |
| 主な内容 | 日々の取引の記帳・仕訳、通帳データの入力。業務量(仕訳数)に応じて加算される料金体系が一般的 | 記帳・請求書発行・経費精算・支払/振込・月次決算まで。給与計算は含む場合とオプションの場合がある | 記帳〜決算書・税務申告書の作成まで。税理士資格を持つ事業者が提供 |
※上記は各社が公開している料金の一例(2026年10月時点)です。実際の料金は業務範囲・処理件数により変動するため、見積りで確認してください。
出典・参考資料(4件)
記帳だけを切り出して任せたい場合は、会社によって1仕訳あたりの単価だったり月額定額だったりと料金の数え方が異なり、そのままでは見積りを並べても比べにくいところがあります。記帳代行に絞った料金相場と各社の対応範囲の比較は、次の記事で詳しく整理しています。
記帳代行サービス比較23選|1仕訳あたりの料金相場と、税理士に頼む場合との違い
領収書と通帳の束を前に、仕訳入力だけが毎月あとに回っていませんか。簿記の分かる人を採用するほどの業務量ではない一方、自分で入力していると月次が締まらない。この「記帳だけ」の負担を外に出す手段が記帳代行サービスです。 ただ、各社の料金は1仕訳…
料金は何で決まるのか
同じ「経理代行」でも金額に幅が出るのは、料金が次の要素で決まるためです。見積りを比べるときは、金額そのものだけでなく、どの前提で算出された金額かを揃えて見ることが欠かせません。
- 委託する業務の範囲:記帳だけか、請求・支払・給与・月次決算まで含むかで基本料金が変わります
- 処理件数・従業員数:仕訳の件数、給与計算の対象人数などの業務量が多いほど費用は上がります
- 対応頻度・納期:月次試算表を翌月内に作ればよいのか、より早い締めが必要なのかで必要な体制が変わります
- 業務改善・フロー構築の支援:クラウド会計の導入や業務フローの設計まで依頼すると、その分の初期費用や月額が加わります
給与計算や年末調整、賞与計算は、基本料金に含む会社とオプション扱いの会社に分かれます。特定の月だけ業務量が増える部分をどう見積もるかは、会社によって考え方が異なるため、相見積もりの際に同じ条件で提示してもらうと比較しやすくなります。
一括ダウンロードする
経理代行の依頼先タイプの違いと自社への向き・不向き
経理代行の依頼先は、大きく税理士事務所・税理士法人、アウトソーシング会社(経理BPO)、オンラインアシスタントの3つに分かれます。それぞれ得意とする範囲と料金の考え方が違うため、自社が任せたい業務に照らしてタイプから絞り込むと選びやすくなります。
| 依頼先のタイプ | 税理士事務所・税理士法人 | アウトソーシング会社(経理BPO) | オンラインアシスタント |
|---|---|---|---|
| 得意な範囲 | 記帳〜決算・税務申告を一本化。税務相談も可能 | 記帳・請求・支払・給与・月次決算など日常の経理実務。業務フロー構築まで対応する会社もある | 記帳・データ入力・経費精算など、必要な業務を時間単位で柔軟に依頼 |
| 料金の傾向 | 顧問料+記帳・決算料。日常業務は範囲外か追加料金になる場合がある | 業務範囲に応じた月額定額が中心 | 稼働時間ベースの月額制が多い |
| 向いている企業 | 税務申告まで1社に任せたい、税務の相談もしたい企業 | 日常の経理実務をまとめて外に出したい、業務の仕組みから整えたい企業 | 経理の一部だけを切り出したい、繁閑に合わせて柔軟に使いたい企業 |
※上記はタイプごとの一般的な傾向です。実際の対応範囲・料金は各社により異なります。
税理士事務所・税理士法人に向くケース
記帳から決算、税務申告までを1社で完結させたい企業に向きます。税務の専門家が関与するため、節税や税務調査への備えも相談できます。一方で、日々の振込作業や請求書の発行といった細かな実務は範囲外とされることがあり、その部分は別途対応になる場合があります。
アウトソーシング会社(経理BPO)に向くケース
日常の経理実務をまとめて外に出したい企業に向きます。記帳だけでなく、請求・支払・給与計算・月次決算までを引き受け、クラウド会計の導入や業務フローの構築から支援する会社もあります。税務申告は連携する税理士が担う体制が一般的です。担当者の退職で経理が止まった、属人化を解消したいといった課題に合います。
オンラインアシスタントに向くケース
経理業務の一部だけを切り出して任せたい、業務量の増減に合わせて柔軟に使いたい企業に向きます。記帳やデータ入力など定型業務を時間単位で依頼でき、比較的低コストで始めやすいのが特徴です。経理に加えて総務や秘書など他のバックオフィス業務もまとめて依頼できる会社もあります。
自社の状況からどのタイプを選ぶか
ここまで見たタイプは、実際には境界が重なり合います。たとえば経理BPOが連携する税理士と組んで申告までカバーするように、1社で複数のタイプの役割を担うこともあります。まずは任せたい業務範囲を固め、複数のタイプを横断して相見積もりを取ると、自社に合う形が見えてきます。
税務申告まで任せられる?税理士の独占業務という落とし穴
委託先選びで見落とされがちなのが、税務申告をめぐる法律上の制約です。税務申告書の作成や税務相談は、税理士でなければ報酬を得て引き受けることができません。これを知らずに「経理をまるごと任せられる」と考えて契約すると、申告は別の税理士に依頼し直すことになりかねません。
根拠となるのは税理士法です。税理士法第52条は、税理士業務を行える者を次のように制限しています。
税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない。
出典:税理士法 第五十二条(税理士業務の制限)|e-Gov法令検索
ここでいう「税理士業務」の中身は、同法第2条第1項で次の3つと定められています。
税理士は、他人の求めに応じ、租税(…)に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする。
出典:税理士法 第二条(税理士の業務)第1項|e-Gov法令検索
一 税務代理(…代理し、又は代行すること(…)をいう。)
二 税務書類の作成(…租税に関する法令の規定に基づき、作成し、かつ、税務官公署に提出する書類…を作成することをいう。)
三 税務相談(…租税の課税標準等…の計算に関する事項について相談に応ずることをいう。)
税務署へ提出する申告書の作成(税務書類の作成)、申告の代理・代行(税務代理)、税額計算に関わる相談(税務相談)は、税理士でない経理代行会社が報酬を得て行うことはできません。これらを無資格で行えば税理士法違反となり、違反した者は罰則の対象になります。
一方で、記帳(会計帳簿の作成)や財務書類の作成は、いま挙げた3つ(税務代理・税務書類の作成・税務相談)に含まれないため、税理士の独占業務ではありません。資格がなくても業として引き受けられます。税理士法第2条第2項も、記帳の代行や財務書類の作成を、税理士が「税理士業務に付随して」行える業務として挙げており、これらが独占業務の枠外にあることと整合します。
この線引きを踏まえると、経理代行の委託範囲は次のように整理できます。記帳・請求・支払・給与計算・月次決算までは資格がなくても任せられますが、税務申告・税務相談まで一本化したい場合は、税理士が関与するサービスを選ぶ必要があります。多くの経理BPOは連携する税理士と組んでこの部分を補っているため、申告まで任せたい場合は「税理士がどう関与するか」を確認しておくと安心です。

失敗しないための契約・運用の注意点
委託先を選んだあとも、契約の結び方と運用の設計で失敗を防げます。契約前・導入時・運用中・解約時のそれぞれで押さえておきたい点を、時系列で整理します。

業務委託契約書で確認すべき項目(契約前)
口頭での合意だけで運用を始めると、「頼んだはずの業務が範囲外だった」といった行き違いが起きやすくなります。業務委託契約書で、少なくとも次の点を確認します。
- 委託する業務の内容と範囲:どの業務を標準で引き受けるか、どこからが追加料金か
- 報酬と支払い条件:月額に含まれる範囲、従量部分の単価、支払いサイクル
- 契約期間と中途解約の条件:最低契約期間、解約の申し出から終了までの期間
- 秘密保持と情報の取り扱い:NDAの締結、預けたデータの管理・返却方法
- 再委託の可否と責任の範囲:業務を他社に再委託するか、ミスが生じたときの責任分担
依頼から運用開始までの流れ(導入)
一般的には、無料相談・見積りから始まり、業務のヒアリング、業務フローの設計、データ連携・権限設定を経て運用開始へと進みます。経理には月に1回しか発生しない業務もあるため、業務が安定して回り始めるまで数か月を見込む会社が多い点を押さえておきます。
安定稼働までにどのくらいの期間を見込み、その間に何を進めるのか。経理代行を手がける株式会社ニットの劉氏は、引き継ぎから自走までの流れを次のように説明しています。

なるべく早く引継ぎを行い、お客様の業務に支障が出ないような体制を整えますが、安定して回り始めるまでは、大体3〜4ヶ月です。経理には1ヶ月に1回しか発生しない業務がありますので、それを踏まえたスケジュールにしています。最初の1ヶ月目は、お客様が今やっている業務をそのままインストールさせていただき、どういうことをやっているのかをキャッチアップする期間です。2ヶ月目は当社側で実際に実務を回してみて、不明点や分からないところをすり合わせていきます。3〜4ヶ月目には当社側で自走できる状態になり、たまにしか出てこない仕訳などがあれば、その都度やり取りさせていただく、という流れが多いです。
導入初期は、自社の現状の業務を代行会社に正しく理解してもらう期間です。この段階で業務の棚卸しや運用ルールのすり合わせを丁寧に行っておくと、その後のやり取りがスムーズになります。
担当者の交代・引き継ぎのリスク(運用中)
運用が始まってからよくあるのが、担当者の交代による品質のぶれです。担当が1人に依存していると、交代時に業務の勘所が引き継がれず、ミスや遅延につながります。チームで対応し業務をマニュアル化している会社であれば担当交代でも業務が止まりにくく、契約前に体制を確かめておけばこの不安を避けられます。
解約時のデータ移行(解約時)
委託先を変える、あるいは内製に戻すときに問題になりやすいのが、会計データや証憑の引き渡しです。預けたデータをどの形式で返却してもらえるか、会計ソフトのアカウントや入力済みデータを引き継げるかを、契約時に確認しておきます。解約条件とあわせてデータの扱いを決めておけば、乗り換え時の手戻りを抑えられます。
経理代行サービスを比較して選ぶ
ここまでの選定基準を踏まえ、主な経理代行サービスを紹介します。対応業務の範囲や料金の体系、税理士の関与の有無はサービスごとに異なります。以下の比較表と各サービスの紹介を、自社に合う委託先を絞り込む手がかりにしてください。
ここで取り上げるのは代表的な5サービスです。より多くの選択肢を横並びで見比べたい場合は、委託できる業務範囲・料金・依頼先タイプ別の選び方まで含めて19サービスを比較した次の記事もあわせてご覧ください。
| 比較項目 | Tenbook(テンブック) | Wheat Accounting | マネーフォワード おまかせ経理 | HELP YOU経理 | ゼロ経理 |
|---|---|---|---|---|---|
| 依頼先タイプ | 税理士事務所・税理士法人 | アウトソーシング会社(経理BPO) | アウトソーシング会社(経理BPO・クラウド一体型) | オンラインアシスタント | アウトソーシング会社(記帳代行中心) |
| 月額費用 | 免税29,500円〜/課税43,500円〜 (税別・初期費用0円) | 30,000円〜 (スモール・初期費用は初月のみ) | 個別見積もり (従業員5名で月10万円の例) | 月15万〜30万円(日常経理の代表例) 経理部門まるごと代行は月30〜60万円(税抜・1年契約時の目安)・初期費用なし | 月3,980円〜 (業務内容により追加費用) |
| 対応業務の範囲 | 記帳・月次・決算書作成・税務申告 (給与計算・年末調整はオプション) | 記帳・請求書・経費精算・振込・給与計算・月次決算 (賞与計算・年末調整はオプション) | 記帳・請求書発行・入金消込・支払/振込・給与/賞与計算・月次試算表 | 記帳・経費精算・請求書発行・月次/年次決算・管理会計・経営判断まで(業務量に応じた段階対応) | 記帳代行を中心に請求書・給与計算・月次処理 (決算・申告の標準提供可否は要問い合わせ) |
| 税務申告への対応 | ●月額に内包(自社の税理士) | △連携税理士が対応 | ×範囲外(税理士が対応) | ×範囲外(税理士資格が必要な業務は対象外) | 要確認 記帳代行が中心(申告は要問い合わせ) |
| 会計ソフト対応 | 自社「10book」を無料提供 | freee/マネーフォワード クラウド | マネーフォワード クラウド (切り替えが前提) | freee/マネーフォワード/弥生 等 | クラウド会計+チャット運用 (対応ソフトの具体名は要確認) |
| 特徴 | 公認会計士・税理士が代表 原則3名のチーム体制 | 業務フロー設計から運用まで一気通貫 法人のみ・全国オンライン対応 | 実務はグループ会社キャシュモ 月次試算表を最短5営業日・導入200社超 | 日商簿記2級以上・チーム制 初期費用なしの月額定額・紙書類もスキャン対応 | 公認会計士が監修・管理 中小企業・個人事業主向けの低価格帯 |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | オンライン相談を予約 | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る |
●=対応/△=連携先・条件付きで対応/×=サービスの範囲外/要確認=公式情報で確認できず。料金・対応業務の範囲は変動するため、契約前に各社の最新情報と見積もりをご確認ください(2026年10月時点)。
1. Tenbook(テンブック)(シンアカウンティングサービス株式会社)

公認会計士・税理士が代表を務めるシンアカウンティングサービスが提供する、記帳から決算・税務申告までをオンラインで完結できる経理代行サービスです。税理士が関与するため、月額定額の中に決算書・税務申告書の作成まで含まれる点が特徴です。
料金は免税事業者で月29,500円〜、課税事業者で月43,500円〜(いずれも税別)で、初期費用はかかりません。契約者には自社開発のクラウド会計ソフト「10book」が無料で提供され、原則3名のチーム体制で担当者の属人化を抑えます。給与計算や年末調整はオプションで対応します。
2. Wheat Accounting(株式会社Wheat)

スタートアップ・スモールビジネス向けに、記帳・請求書作成・経費精算・振込対応・給与計算・月次決算までを代行する経理アウトソーシングです。クラウド会計の導入と業務フローの再設計を最初に行い、その後の運用まで一気通貫で担う点を強みにしています。
料金は月30,000円〜の定額プランで、法人を対象に全国オンラインで対応します。freeeやマネーフォワード クラウドに対応し、税務申告は連携する税理士、社会保険・労働保険の手続きは連携する社労士と組んで対応する体制です。担当者の退職で経理が止まった、属人化を解消したいといった相談に適しています。
担当者の退職や属人化は、経理代行への委託を検討する大きなきっかけになります。寄せられる相談の傾向について、株式会社Wheatの佃誠吾氏は次のように述べています。

最近特に多いご相談は、「急な退職で経理が止まってしまった」「担当者にしかやり方がわからない」といった、退職と属人化にまつわる切実な課題です。自走できる経理人材を新たに採用する場合、年収600万〜700万円程度の費用負担が生じるだけでなく、採用後の教育や管理負担も決して軽くはありません。中小企業にとって、これほどの人件費を「固定費」として抱え続けることは、経営上の大きなリスクになりかねません。
3. マネーフォワード おまかせ経理(株式会社マネーフォワード)

「マネーフォワード クラウド」の導入支援から記帳代行、請求書発行、支払・振込代行、入金消込、給与・賞与計算、月次試算表の作成までを一括で引き受ける中小企業向けの経理BPOです。実務はグループ会社の株式会社キャシュモが担い、経理BPOの運用ノウハウとクラウドサービスを組み合わせて提供しています。
料金は業務内容に応じた個別見積りで、従業員5名程度の企業の場合で月額10万円という料金例が公式サイトに示されています。月次試算表を最短5営業日で作成するスピードを掲げ、導入実績は200社を超えます。税務申告は税理士法上サービス範囲外のため、申告は別途税理士に依頼する前提です。
4. HELP YOU経理(株式会社ニット)

オンラインアウトソーシング「HELP YOU」の経理特化メニューです。日商簿記2級以上の資格を持つスタッフや経理実務の経験者が在籍し、記帳・経費精算といった日常経理から、月次決算・管理会計、会計ツールの導入支援・業務フロー構築までを段階的にカバーします。
チーム制のため担当者が替わっても業務が止まりにくく、初期費用はかからず、合意した業務範囲を月額定額でサポートする料金体系です。福岡のBPOセンターで紙の請求書・領収書をスキャンしてデータ化するため、アナログな運用のままでも依頼でき、従業員100名以下の中小企業を中心に対応しています。
公式サイトには、日常経理の代行で月15〜30万円、経理部門をまるごと代行する場合で月30〜60万円といった業務量別の代表料金が示されています(いずれも税抜・1年契約時の目安)。
5. ゼロ経理(ゼロ株式会社)

公認会計士が管理する記帳代行を中心とした、低価格帯の経理代行サービスです。月3,980円からの料金を掲げ、中小企業・個人事業主を主な対象に、オンラインで全国の事業者に対応します。
記帳代行を入り口に、請求書処理や給与計算、月次処理などをクラウド会計ソフトとチャットを使って進める運用です。会計士・税理士が監修・管理する体制を訴求の中心に据えており、まず記帳から低コストで外部委託を試したい事業者に向いています。対応業務の詳細や料金プランは、公式サイトで確認してください。
まとめ
経理代行の委託先は、対応業務の範囲・料金の透明性・情報セキュリティ・会計ソフト対応・税務申告の可否・担当体制・実績・業務量への柔軟性という基準で見極めます。これらを同じ条件で複数社に質問すれば、料金だけでなく対応範囲や体制の違いが横並びで見えてきます。
まずは自社が任せたい業務の範囲を整理し、税務申告まで一本化したいのか記帳までで十分なのかを決めたうえで、候補を2〜3社に絞って同条件で相見積もりを取るのが、失敗しない進め方です。
一括ダウンロードする
経理代行の選び方に関するよくある質問
Q. 経理代行に経理業務を委託するのは法律上問題ありませんか?
A. 経理代行に記帳・請求・支払・給与計算・月次決算などを委託すること自体は法律上問題ありません。ただし、税務申告書の作成・申告の代理・税額計算に関わる税務相談は税理士法により税理士の独占業務とされており、税理士でない経理代行会社が報酬を得て行うことはできません。申告まで一本化したい場合は、税理士が関与するサービスを選ぶ必要があります。
出典・参考資料(1件)
Q. 経理代行の費用はどのくらいかかりますか?
A. 経理代行の費用は委託する業務の範囲と処理件数で決まります。記帳代行中心なら月数千円台から、記帳〜月次決算の丸投げで月3万円前後からが公開料金の目安で、税務申告まで含めると月3万〜4万円台から、従業員数名規模の経理BPOでは月10万円前後の料金例もあります。委託する業務の範囲別の詳しい目安は本記事の「料金相場」の章で整理しています。
Q. 個人事業主や小規模な会社でも経理代行を依頼できますか?
A. 個人事業主や従業員が少ない小規模な会社でも経理代行を依頼できます。低価格の記帳代行や、稼働時間ベースで必要な分だけ頼めるオンラインアシスタントなど、小規模でも使いやすい料金体系のサービスが複数あり、オンライン完結で全国どこからでも利用できる会社も増えています。まず記帳だけを切り出して委託し、必要に応じて範囲を広げる進め方もできます。
Q. 顧問税理士がいても経理代行を併用できますか?
A. 顧問税理士がいる場合でも経理代行を併用できます。日々の記帳や請求・支払・月次決算までを経理代行に任せ、税務申告は既存の顧問税理士に依頼する分担は一般的で、法的にも問題ありません。この形であれば、顧問税理士との関係を保ったまま、日常の経理負担だけを外部に移せます。
Q. 初めて経理代行を依頼する場合、何を準備すればよいですか?
A. まず「どの業務を任せたいか」を書き出し、現在使っている会計ソフトや過去の帳簿・証憑、日々の業務の進め方を整理しておくことが準備の中心です。これらが揃っていると、ヒアリングや見積りがスムーズに進み、複数社へ同じ条件で相見積もりを依頼できます。業務が安定して回り始めるまで数か月かかるため、余裕をもって相談を始めると安心です。
Q. 経理代行の委託先を途中で変更するのは難しいですか?
A. 経理代行の委託先は変更できますが、会計データや証憑の引き継ぎでつまずくと手戻りが大きくなるため、契約時にデータの返却方法を決めておくことが重要です。預けたデータをどの形式で返してもらえるか、会計ソフトのアカウントや入力済みデータを引き継げるかを契約書で確認しておけば、乗り換え時の負担を抑えられます。
Q. 経理代行の導入から業務が安定するまでどのくらいかかりますか?
A. 経理代行は、無料相談・見積りから業務のヒアリング、業務フローの設計、データ連携・権限設定を経て運用を開始し、業務が安定して回り始めるまで数か月を見込むのが一般的です。経理には月に1回しか発生しない業務もあるため、導入初期に業務の棚卸しや運用ルールのすり合わせを丁寧に行っておくと、その後のやり取りがスムーズになります。
経理代行サービスの料金・資料を一括チェック
MCB FinTechカタログでは、経理代行・経理アウトソーシングの最新資料を無料で一括請求できます。対応業務の範囲や料金体系を見比べて、自社に合う委託先を効率的に探せます。
一括ダウンロードする
MCB FinTechカタログに掲載しませんか?
MCB FinTechカタログでは、掲載企業様を募集しています。マネックスグループの金融実務ノウハウを活かした独自の評価軸と検索設計により、導入検討者が最適なサービスを効率的に発見できる法人向け比較プラットフォームです。掲載後は管理画面から料金表や導入事例を随時更新でき、常に最新の情報を訴求可能。まずは下記フォームより、お気軽にお問い合わせください。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















