毎年1月末が期限の償却資産の申告で、市区町村から届いた「償却資産申告書」と「種類別明細書」を前に、どの欄に何を書けばよいか手が止まっていないでしょうか。資産の種類や増減事由、取得価額の欄など、年に一度しか触らない書類だけに、毎回迷いやすい箇所です。
しかも令和8年1月1日からは、申告書・種類別明細書の様式が全国共通の「全国標準様式」に切り替わりました。増減事由や異動区分の記入ルールが変わっているため、これまでの控えをそのまま写すと食い違うことがあります。
本記事では、全国標準様式の種類別明細書と申告書について、欄ごとの書き方を記入例とあわせて整理します。あわせて、提出先・期限や免税点、一般方式と電算処理方式の違い、評価額から税額までの計算、eLTAXでの電子申告、やりがちなミスまで、申告書を書き上げて提出するまでに必要な情報をまとめました。
申告書を書き上げて提出するまでの全体の流れは、次の3ステップです。

目次
種類別明細書の書き方(欄ごとの記入例)
償却資産の申告では、まず「種類別明細書」に資産を1行ずつ書き出すところから始めます。令和8年1月1日以降に提出する申告書は、年度にかかわらずすべて全国標準様式で提出します。ここでは、増加資産・全資産用の種類別明細書を例に、1つの資産を書くときの各欄を上から順に見ていきます。
様式は全国で共通ですが、記入の細かな運用や提出方法は自治体ごとに案内が異なる場合があるため、手元の申告書に同封された手引きもあわせて確認してください。
出典・参考資料(1件)
- 出典:償却資産申告書等の記入方法(Q&A)|横浜市(リンク)
増加資産・全資産用の各欄(資産の種類・取得価額・増減事由・異動区分ほか)
種類別明細書には、資産ごとに次の項目を記入します。それぞれの欄に何を書くかを押さえておくと、1行の記入で迷う場面が減ります。
- 資産の種類:構築物、機械及び装置、工具器具及び備品などの区分を記入します。パソコンや応接セットなどは「工具器具及び備品」に当たります。
- 資産の名称等:資産を特定できる名称を記入します。全国標準様式では名称欄の区切り線がなくなり、登録できる文字数の範囲で自由に記入できます。
- 取得年月:その資産を取得した年月を記入します。
- 取得価額:購入にかかった価額を記入します。会計の経理方式(税抜経理か税込経理か)に合わせて記入するため、自社の経理方式を確認してから記入します。
- 耐用年数:その資産の法定耐用年数を記入します。
- 増減事由:資産が増えた・減った理由を番号で記入します。新品を取得した場合は「1」、中古品を取得した場合は「2」、資産を売却した場合は「3」、資産を廃棄(滅失)した場合は「4」、事業所間の移動などで資産を移動した場合は「5」、これら以外の事由で増減した場合は「6」です。
- 異動区分:全国標準様式で新しく設けられた欄です。新たに取得した資産は「1」、印字されている資産のうち除却等(一部除却を含む)で減少した資産は「2」、印字されている資産のうち取得価額や耐用年数などに変更(計上誤りなど)があった資産は「3」を記入します。
- 元日取得:申告する年の1月1日に取得した資産の場合に「1」を記入します。令和8年度の申告であれば、令和8年1月1日に取得した資産が対象です。
- 数量:把握している場合に記入します。不明の場合は空欄で差し支えありません。
- 課税標準額:電算処理方式で申告する方が記入する欄です。原則として、電算処理で算出した価額(評価額)をそのまま記入します。一般方式(自治体が評価額を計算する紙の申告。詳しくは後述)で申告する場合は記入しません。
欄の意味を踏まえて、実際に記入するとどうなるかを見てみましょう。令和7年5月に新品で購入した事業用のノートパソコン(取得価額300,000円、耐用年数4年)を一般方式で申告する場合の記入例は次のとおりです。評価額や課税標準額の計算は市区町村が行うため、一般方式では課税標準額欄は空欄のままにします。
| 欄 | 資産の種類 | 資産の名称等 | 取得年月 | 取得価額 | 耐用年数 | 増減事由 | 異動区分 | 元日取得 | 数量 | 課税標準額 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 記入例 | 工具器具及び備品 | ノートパソコン | 令和7年5月 | 300,000 | 4 | 1(新品取得) | 1(新規取得) | 空欄(1月1日取得ではないため) | 1 | 空欄(一般方式は自治体が計算) |
すでに申告済みの資産を減らす場合の記入例もあわせて示します。たとえば前年に売却したコピー機を減らすときは、印字されている行に対して異動区分「2」、増減事由「3(売却)」を記入し、物件番号は二重線で消さずに残します。
出典・参考資料(1件)
- 出典:償却資産申告書等の記入方法(Q&A)3 種類別明細書|横浜市(リンク)
減少・一部減少・訂正の書き方(異動区分・二重線での抹消)
すでに申告済みの資産(種類別明細書にあらかじめ印字されている資産)を減らしたり訂正したりする場合は、記入のルールが決まっています。
資産を売却・廃棄などで減少させる場合は、異動区分に「2」を記入し、増減事由に売却なら「3」、廃棄(滅失)なら「4」を記入します。このとき、印字されている物件番号は二重線で消さないよう注意します。
資産の一部だけを除却した一部減少の場合も異動区分は「2」で、減少した分の数量・取得価額を記入し、摘要欄に一部除却である旨を書き添えます。数量や取得価額の具体的な書き方は自治体によって案内が異なることがあるため、手元の申告書の手引きもあわせて確認してください。
耐用年数・取得年月・取得価額などに誤りがあり訂正したい場合は、横浜市のQ&Aでは次の手順が示されています。異動区分に「3」を記入し、訂正が必要な項目を二重線で消したうえで正しい内容を記入し、増減事由に「6」を記入します。さらに摘要欄に訂正する事由と、いつから誤っていたかを明記します。
出典・参考資料(1件)
- 出典:償却資産申告書等の記入方法(Q&A)3 種類別明細書 Q7・Q8|横浜市(リンク)
償却資産申告書(表紙)の書き方と記入例
種類別明細書に資産を書き出したら、申告書(表紙)に申告者の情報などを記入します。全国標準様式では表紙の欄にもいくつか変更があり、従来の複写式(提出用と控え)から単票(提出用のみ)に変わりました。ここでは主な欄の書き方を見ていきます。
住所・氏名・個人番号/法人番号・事業種目など申告者情報欄
申告者の住所・氏名(名称)、個人番号または法人番号、事業の種目を記入します。個人事業主はマイナンバー(個人番号)、法人は法人番号を記入します。
このほか表紙には、事業の開始年月、従業者数、資産を借りている場合の借用資産の有無、事業所として使う家屋が自己所有か借家かの区分、税理士などが関与している場合の氏名といった欄もあります。該当しない欄は空欄で構いませんが、どの欄に何を書くか迷ったときは、申告書に同封された手引き(記入要領)で確認してください。
申告書等送付番号・公簿上の住所又は所在地(新様式で新設)
全国標準様式では、従来の所有者コード(区コード2桁+所有者コード6桁)が「申告書等送付番号」に変更されました。市区町村から届いた申告書に印字されている番号をそのまま使います。
あわせて「公簿上の住所又は所在地」を記入する欄が新設されました。個人の場合は住民登録されている住所、法人の場合は本店所在地または登記上の住所を記入します。
出典・参考資料(1件)
- 出典:償却資産申告書等の記入方法(Q&A)1 共通・2 申告書|横浜市(リンク)
「資産に増減なし」「該当資産なし」チェックボックスの使い分け
申告書には「資産に増減なし」と「該当資産なし」の2つのチェックボックスがあり、意味が異なるため使い分けます。
「資産に増減なし」は、昨年度までに申告している方で、所有している資産に前年中の変更(資産の増減、取得価額や耐用年数の変更など)がなかった場合にチェックします。「該当資産なし」は、申告すべき事業用の減価償却資産がない場合を指します。少額であっても事業用の減価償却資産を持っている場合は、「該当資産なし」にはチェックせず、通常どおり申告します。
出典・参考資料(1件)
- 出典:償却資産申告書等の記入方法(Q&A)2 申告書|横浜市(リンク)
電算処理方式で記入する評価額・決定価格・課税標準額の欄
市販の会計ソフトや自社のシステムで申告書を作成(調製)している場合は、「評価額(ホ)」「決定価格(ヘ)」「課税標準額(ト)」の欄も記入します。これは電算処理方式で申告する場合の欄で、一般方式(紙の申告書で、評価額などを計算せずに申告する方式)ではこれらの欄は記入しません。一般方式と電算処理方式の違いは後の章で解説します。
一般方式で新規に申告する個人事業主を例にすると、表紙の記入例は次のようになります。
| 欄 | 住所・氏名 | 個人番号/法人番号 | 事業種目 | 申告書等送付番号 | 公簿上の住所又は所在地 | 資産に増減なし/該当資産なし | 評価額(ホ)・決定価格(ヘ)・課税標準額(ト) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 記入例 | 東京都〇〇区〇〇1-2-3/〇〇 〇〇 | 個人番号(マイナンバー)12桁 | 飲食業 | 届いた申告書に印字された番号をそのまま記入 | 住民登録されている住所 | いずれもチェックしない(申告する資産があるため) | 空欄(一般方式のため記入しない) |
出典・参考資料(1件)
- 出典:償却資産申告書等の記入方法(Q&A)1 共通・2 申告書|横浜市(リンク)
迷いやすい記入ポイント(ゼロ申告・数量・元日取得など)
記入作業の途中で毎年手が止まりやすい欄を、どう書けばよいかとあわせて一覧にまとめました。
| 迷いやすい欄・ケース | 前年中に資産の増減がなかった | 申告すべき事業用の資産がない(ゼロ申告) | 取得価額は税抜か税込か | 1月1日に取得した資産 | 数量がわからない |
|---|---|---|---|---|---|
| どう書くか | 申告は必要。申告書の「資産に増減なし」にチェックを入れて提出する(昨年度までに申告している方が対象) | 「該当資産なし」にチェックして提出する。ただし少額でも事業用の減価償却資産を持つ場合はチェックせず通常どおり申告する | 自社の会計の経理方式(税抜経理か税込経理か)に合わせる。社内で方式を統一しておく | 種類別明細書の「元日取得」欄に「1」を記入する(令和8年度申告なら令和8年1月1日取得が対象) | 把握している場合に記入する。不明の場合は空欄で差し支えない |
出典・参考資料(1件)
- 出典:償却資産申告書等の記入方法(Q&A)|横浜市(リンク)
手書きやExcelでの転記は、資産が増えるほど手間とミスが起きやすくなります。固定資産の台帳から申告書や種類別明細書を自動で作成できる仕組みを使えば、記入や転記の負担を減らせます(記事後半で解説します)。
そもそも償却資産申告とは(申告義務・対象資産・免税点)
記入の手順を押さえたところで、「自分に申告義務があるのか」「何が対象で、いくらから課税されるのか」を確認しておきます。償却資産とは、土地・家屋以外で事業に使える資産のことで、これにかかる固定資産税を「償却資産税」と呼ぶことがあります。
償却資産の所有者には、地方税法で申告義務が定められています。
固定資産税の納税義務がある償却資産の所有者(…)は、総務省令の定めるところによつて、毎年一月一日現在における当該償却資産について、その所在、種類、数量、取得時期、取得価額、耐用年数、見積価額その他償却資産課税台帳の登録及び当該償却資産の価格の決定に必要な事項を一月三十一日までに当該償却資産の所在地の市町村長に申告しなければならない。
出典:地方税法第383条|e-Gov法令検索
この条文のとおり、毎年1月1日時点で所有している償却資産について、1月31日までに、資産が所在する市区町村へ申告する義務があります。
申告対象になる資産・ならない資産
償却資産は、土地・家屋以外の事業用資産のうち、減価償却費が法人税・所得税の計算上、損金または必要経費に算入されるものが対象です。構築物、機械及び装置、工具器具及び備品などが該当します。特許権や漁業権などの無形固定資産、自動車税・軽自動車税の対象となる自動車などは対象外です。
取得価額が10万円未満で損金に算入した資産や、20万円未満で3年一括償却を選んだ資産は対象外です。ただし、10万円未満でも通常の減価償却をしている資産は申告対象になります。また、租税特別措置法の中小企業者等の少額資産の特例(取得価額30万円未満、令和8年4月1日以後の取得分は40万円未満の即時償却など)を使って損金算入した資産は、償却資産としては申告対象になる点に注意が必要です。
出典・参考資料(3件)
免税点はいくらから課税されるか
同じ市区町村の中で所有する償却資産の課税標準額の合計が一定額未満の場合は、固定資産税は課されません。これを免税点といいます。
本記事執筆時点(令和8年度)の償却資産の免税点は150万円です。地方税法第351条でも、償却資産は「百五十万円に満たない場合においては、固定資産税を課することができない」と定められており、東京都主税局も「課税標準額が150万円未満の場合は、課税されません」と案内しています。
令和8年度の税制改正では、償却資産の免税点を150万円から180万円へ引き上げる改正が成立しています。適用は令和9年度分の固定資産税からで、施行日は令和9年4月1日です。令和8年度の申告では現行の150万円で判断し、令和9年度分から180万円になると理解しておくと混乱を避けられます。
注意点として、課税標準額が免税点未満で税額が生じない場合でも、申告自体は必要です。課税標準額を算定するために、市区町村が申告内容を把握する必要があるためです。
提出先・提出期限と未申告・虚偽申告のペナルティ
記入を終えたら、どこへ・いつまでに出すか、出し忘れた場合に何が起こるかを確認しておきます。
提出先と提出期限(毎年1月1日基準・1月31日まで)
提出先は、償却資産が所在する市区町村です。複数の市区町村に資産がある場合は、資産が所在する市区町村ごとに申告します。東京都の23区内は特例で、資産が所在する区にある都税事務所が課税を担当します。
提出期限は、賦課期日である毎年1月1日時点で所有する資産について、その年の1月31日までです。期限が土曜・日曜・祝日に当たる場合は、翌開庁日が期限になります。たとえば令和8年度分は1月31日が土曜日のため、実際の期限は令和8年2月2日(月)です。年度によって期限日が動くため、提出前に各市区町村の案内を確認してください。
未申告・虚偽申告のペナルティと遡及課税
申告を怠ったり、事実と異なる申告をしたりすると、ペナルティの対象になります。正当な理由なく申告しなかった場合は、市区町村の条例により10万円以下の過料が科されることがあります(地方税法第386条が、条例でその旨の規定を設けることができると定めています)。
また、虚偽の申告をした場合は、地方税法第385条により「1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」の対象になります。
申告漏れが後から判明した場合は、遡って課税されます。固定資産税の賦課決定は、原則として法定納期限の翌日から5年を経過する日まで行えます。偽りその他不正の行為によって税額を免れていた場合は、7年まで遡って課税できる点にも注意が必要です。
出典・参考資料(3件)
一般方式と電算処理方式の違いとどちらで書くか
償却資産の申告には「一般方式」と「電算処理方式」の2つがあり、評価額や課税標準額を自分で計算して記入するかどうかが違います。
一般方式は、紙の申告書で申告する方式で、評価額・課税標準額などを計算・記入しない申告方法です。資産の内容(種類・取得年月・取得価額・耐用年数など)だけを記入し、評価額や課税標準額は市区町村が計算します。はじめて申告する方や資産件数が少ない方は、こちらで申告するのが一般的です。
電算処理方式は、市販の会計ソフトや自社のシステムで申告書を作成する方式です。この場合は、評価額(ホ)・決定価格(ヘ)・課税標準額(ト)の欄も自分で計算して記入します。申告書の欄外には「※印欄は企業の電算処理による申告をする方のみ記入してください」といった案内があり、この※印欄が電算処理方式で記入する欄に当たります。
出典・参考資料(1件)
- 出典:償却資産申告書等の記入方法(Q&A)|横浜市(リンク)
評価額・課税標準額・税額(標準税率1.4%)の計算の流れ
一般方式では市区町村が計算しますが、電算処理方式で申告する場合や、税額の見込みを立てたい場合は、評価額から税額までの計算の流れを知っておくと役立ちます。全体の流れは「取得価額 → 評価額 → 課税標準額 → 税額」です。

評価額は、取得年に応じて次のように計算します。前年中に取得した資産は、取得月にかかわらず半年分を償却するため「取得価額 ×(1 − 減価率r ÷ 2)」で求めます。前年より前に取得した資産は「前年度評価額 ×(1 − 減価率r)」で求め、毎年少しずつ減っていきます。
減価率rは耐用年数に応じて定められており、耐用年数ごとの率は固定資産評価基準(総務省告示)で定められています。実際の率は申告書に同封された手引きや、東京都主税局など各自治体が公開する減価率表で確認できます。ただし、計算した評価額が取得価額の5%を下回る場合は、取得価額の5%が評価額の下限になります。
東京都主税局は、減価率r=0.142の資産(取得価額2,700,000円)を例に、前年中取得分の評価額を「2,700,000円 ×(1 − 0.142 × 1/2)= 2,508,300円」と示しています。各資産の評価額を合計した額が決定価格となり、課税標準の特例が適用される資産がなければ、これがそのまま課税標準額になります。
税額は、課税標準額に税率を掛けて求めます。固定資産税の標準税率は1.4%です(標準税率のため、市区町村の条例で異なる場合があります)。このとき端数処理のルールがあり、課税標準額は1,000円未満を切り捨て、税額は100円未満を切り捨てます。
税額の計算例も見てみましょう(先ほどの評価額の例とは別の資産を用いた金額です)。東京都主税局の例では、課税標準額3,398,000円に1.4%を掛けて「3,398,000円 × 0.014 = 47,572円」となり、100円未満を切り捨てて47,500円が税額になります。
取得価額から税額までを1つの資産で通して見ると、前年中に取得した減価率0.142・取得価額270万円の資産では、評価額は上記の2,508,300円です。ほかに資産がなければ、決定価格・課税標準額もこの額となります(1,000円未満を切り捨てて2,508,000円)。税額は「2,508,000円 × 0.014 = 35,112円」となり、100円未満を切り捨てて35,100円です。
減価率は耐用年数ごとに定められており、たとえば耐用年数5年なら0.369、4年なら0.438が用いられます。実際の率は申告書の手引きや各自治体の減価率表で確認してください。
出典・参考資料(2件)
eLTAXで電子申告する手順
償却資産の申告は、紙のほかにeLTAX(地方税ポータルシステム)を使った電子申告もできます。eLTAXは、地方税の手続きをインターネットで行えるよう地方公共団体が共同で運営するシステムで、電子的な一つの窓口からそれぞれの地方公共団体への手続きができます。資産が複数の市区町村にある事業者は、1回の操作で各自治体へ申告データを送れるため、紙で1通ずつ提出する手間を減らせます。
eLTAXで申告するときの大まかな流れは次のとおりです。
- eLTAXの利用届出(新規)を行い、利用者IDを取得する。
- 本人確認に使う電子証明書を準備し、申告用のソフト(eLTAX対応ソフトや無料の「PCdesk」)を用意する。
- 申告先の市区町村を選び、償却資産の申告データを作成する(会計ソフトや固定資産管理システムが出力するeLTAX用データ(CSVなど)を取り込むこともできる)。
- 電子署名を付けて送信し、受付結果(受付通知)を確認する。
資産が複数の市区町村にある場合でも、一つの窓口から各自治体へまとめて送信できます。会計ソフトや固定資産管理システムで台帳からeLTAX用データを作れば、入力の手間とミスをさらに減らせます。利用開始の手続きや操作の詳細は、eLTAX公式サイトで最新の案内を確認してください。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:eLTAXの概要・利用を開始する|地方税共同機構 eLTAX(リンク)
償却資産申告でやりがちなミスと回避策
記入そのものの迷いどころは前半で解説しました。ここでは、提出や日々の管理の面で起こりやすいミスを整理します。資産が増えるほど、手作業では見落としや転記のずれが起きやすくなります。
システムを使わず、手書きやExcelで数件を申告する場合でも、今すぐできる対策があります。申告前に前年の申告書の控えと固定資産台帳を突き合わせ、取得した資産の計上漏れと、売却・廃棄した資産の除却漏れをチェックすることです。取得価額の税抜・税込は台帳と申告書で統一し、複数の市区町村に資産がある場合は提出先ごとに提出済みかを一覧で管理すると、出し忘れを防げます。
資産件数が多く手作業での管理が負担になる場合は、固定資産管理システムで同じ作業を自動化できます。次の表に、やりがちなミスと、システムを使った場合の防ぎ方をまとめました。
| やりがちなミス | 取得した資産の計上漏れ・除却した資産の除却漏れ | 複数の市区町村への提出漏れ | 台帳と申告書で取得価額の税抜・税込が揃わない | eLTAX用データを手作業で作り直す際の入力ミス | 増減事由・異動区分の付け間違い |
|---|---|---|---|---|---|
| 固定資産管理システムでの防ぎ方 | 資産台帳で取得・移動・除却の履歴を管理し、申告データに自動で反映する | 資産の所在地ごとに申告データを振り分けて出力し、eLTAXで一括送信する | 会計システムと連携し、経理方式を統一したデータから申告書を作成する | 台帳からeLTAX用のCSVを自動出力する | 資産の異動履歴から該当区分を自動で判定・設定する |
ゼロ申告(該当資産なし)の判断や取得価額の税抜・税込の扱いといった「記入そのもの」の注意点は、前半の「迷いやすい記入ポイント」を参照してください。資産件数が多い場合は、これらの判断も台帳から申告データを作ることで統一・自動化できます。
記入の手間とミスを減らす固定資産管理システム
ここからは、償却資産申告の記入や計算の手間・ミスを減らせる固定資産管理システムを紹介します。いずれも資産台帳の管理から償却資産税(地方税)の電子申告までを扱えるクラウド型のサービスです。
以下はご紹介する固定資産管理システムの比較表です。
| サービス名 | マネーフォワード クラウド固定資産 | 固定資産奉行クラウド | PCAクラウド 固定資産 |
|---|---|---|---|
| 償却資産申告書・種類別明細書の作成 | ●申告書・種類別明細書・別表16を出力 | ●申告書・種類別明細書を作成 | ●償却資産税申告に対応 |
| eLTAX電子申告 | ●CSV出力→PCdeskで申告 | ●各市町村へ直接データ送信 | ●電子申告に対応 |
| 会計システムとの仕訳連携 | ●クラウド会計PlusとAPI連携/他社はCSV | ●勘定奉行iクラウドと自動連携/他社はCSV連携予定 | ●PCA会計と連携/他社はテキスト出力 |
| 提供形態 | クラウド | クラウド | クラウド (オンプレミス型の提供形態もあり) |
| 料金 | 要問い合わせ (公式に金額の記載なし) | 月額4,750円〜30,400円 (初期費用0〜70,000円・資産件数で4プラン) | 月額16,200円〜(税抜) (通常版・単体利用時) |
| 詳細情報 | オンライン相談を予約 | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る |
※2026年10月時点の各社公式情報による。最新の機能・料金は各社公式サイトをご確認ください。
1. マネーフォワード クラウド固定資産(株式会社マネーフォワード)

マネーフォワード クラウド固定資産は、会計・税務の複数台帳の管理から償却資産の申告対応までを一元管理できるクラウド型の固定資産管理システムです。Excelでの管理にありがちな、資産の新規登録や移動登録の煩雑さ、履歴を追えないといった課題を解消できます。
資産に関わる情報(写真・設置場所・購入時の電子領収書やURL・添付ファイルなど)を1画面に集約できるUIが特徴で、年に数回しか触らない登録業務でもマニュアルを見ずに操作しやすい設計です。会計ソフトとの連携を含め、固定資産業務全体をカバーします。
こうした効率化が導入現場でどのような変化につながるのか、提供元の株式会社マネーフォワードは、MCB FinTechカタログの取材で次のように述べています。

SmartHR様は、固定資産関連の業務が1〜2営業日かかっていたものが半日以下に短縮されました。また、エス・エム・エス様では償却資産申告の作業時間が3分の1になったという成果が出ています。
画面がわかりやすく操作もシンプルなので、資産の登録や移動登録といった業務が効率化されるだけでなく、属人化の解消にもつながります。これまで特定の担当者しかできなかった業務が、チームの誰もが対応できるようになるのは大きなメリットです。
2. 固定資産奉行クラウド(株式会社オービックビジネスコンサルタント)

奉行シリーズで知られる株式会社オービックビジネスコンサルタント(OBC)が提供する固定資産奉行クラウドは、固定資産の取得・移動・除却・減損といったライフサイクル管理から、減価償却費の自動計算、償却資産税(地方税)の電子申告までをクラウド上で扱えるシステムです。
勘定奉行iクラウドとの仕訳の自動連携に対応し、会計との二重入力を避けられます。料金は管理する資産件数に応じた複数プランが公式に公開されており、小規模向けから中堅・グループ企業向けまで選べます。30日間の無料トライアルも用意されています。
3. PCAクラウド 固定資産(ピー・シー・エー株式会社)

ピー・シー・エー株式会社が開発するPCAクラウド 固定資産は、減価償却計算やリース資産管理、資産棚卸に加え、償却資産税の電子申告にも対応するクラウド型の固定資産管理ソフトです。減損処理や資産除去債務といった会計基準にも対応します。
PCA会計シリーズとのデータ連携に加え、出力パターン機能によってPCA以外の会計システムともテキストファイル形式で仕訳データを連携できる点が特徴です。クラウド版のほか、オンプレミスで利用できる提供形態も用意されており、2ヶ月の無料体験から試せます。
ここで取り上げた3つのほかにも、固定資産管理システムは対応する業務範囲や料金体系、会計システムとの連携方式がサービスごとに異なります。以下の記事では、固定資産管理システムの選び方のポイントと主要な機能を、より多くのサービスで比較しながら解説しています。自社の資産件数や会計システムに合うものを広く見比べたい場合は、あわせてご覧ください。
【新リース会計対応】固定資産管理システムおすすめ19選を徹底比較|大企業・中小企業・個人事業主向け
Excel管理の属人化・計算ミスに加え、2027年4月1日以後に開始する事業年度から新リース会計基準(IFRS16号相当)が強制適用され、オフバランスだったリース取引の大半がオンバランス化されます。 強制適用の対象は、金融商品取引法の開示対…
まとめ
償却資産申告書と種類別明細書は、令和8年1月1日から全国標準様式に変わり、増減事由・異動区分・元日取得・公簿上の住所などの欄が整理されました。まずは種類別明細書に資産を1行ずつ正しく書き出し、その集計を申告書(表紙)に反映する流れを押さえれば、記入自体は難しくありません。
あわせて、提出先・1月31日の期限・免税点(令和8年度は150万円)・一般方式と電算処理方式の違いを確認しておくと、迷わず提出まで進められます。
資産が増えて手書きやExcelでの管理が負担になってきたら、台帳から申告書・種類別明細書を自動作成し、eLTAX用のデータまで出力できる固定資産管理システムの導入も検討の価値があります。自社の資産件数や会計システムとの連携を踏まえて、資料を比較してみてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 償却資産申告書とは何ですか?
A. 償却資産申告書とは、土地・家屋以外の事業用資産(償却資産)について、その所在・取得価額・耐用年数などを毎年市区町村へ申告するための書類です。地方税法第383条により、償却資産の所有者は毎年1月1日時点で所有する資産を1月31日までに申告する義務があり、この申告に償却資産申告書と種類別明細書を使います。
出典・参考資料(1件)
- 出典:地方税法第383条(固定資産の申告)|e-Gov法令検索(リンク)
Q. 令和8年1月からの全国標準様式で、償却資産申告書は何が変わりましたか?
A. 令和8年1月1日以降に提出する償却資産申告書は、全国で共通の「全国標準様式」に統一され、申告書・種類別明細書の様式が変わりました。これまでの控えをそのまま書き写すと食い違う場合があるため注意します。
主な変更点は、従来の所有者コードが「申告書等送付番号」に変わったこと、「公簿上の住所又は所在地」欄が新設されたこと、種類別明細書に「異動区分」欄が設けられ、増減事由の番号や複写式(控え)の扱いが整理されたことです。
出典・参考資料(1件)
- 出典:償却資産申告書等の記入方法(Q&A)|横浜市(リンク)
Q. 償却資産申告書は毎年提出する必要がありますか?
A. 償却資産申告書は、事業用の償却資産を所有している限り、原則として毎年提出する必要があります。前年中に資産の増減がなかった場合でも申告は必要で、その場合は申告書の「資産に増減なし」にチェックして提出します。
出典・参考資料(1件)
- 出典:償却資産申告書等の記入方法(Q&A)2 申告書|横浜市(リンク)
Q. 事業用の償却資産が何もない場合でも、償却資産申告書の提出は必要ですか?
A. 申告すべき事業用の償却資産が何もない場合でも、市区町村から申告書が届いているときは「該当資産なし」にチェックして提出します。ただし、少額であっても事業用の減価償却資産を持っている場合は「該当資産なし」にはチェックせず、通常どおり申告します。
出典・参考資料(1件)
- 出典:償却資産申告書等の記入方法(Q&A)2 申告書|横浜市(リンク)
Q. 償却資産申告書の提出先はどこですか?複数の市区町村に資産がある場合はどうしますか?
A. 償却資産申告書の提出先は、資産が所在する市区町村(東京23区内は資産がある区を担当する都税事務所)です。複数の市区町村に資産がある場合は、資産が所在する市区町村ごとにそれぞれ申告します。
Q. 償却資産申告書の提出期限はいつですか?
A. 償却資産申告書の提出期限は、賦課期日である毎年1月1日時点で所有する資産について、その年の1月31日までです。期限が土曜・日曜・祝日に当たる場合は翌開庁日が期限となり、たとえば令和8年度分は1月31日が土曜日のため、実際の期限は令和8年2月2日(月)です。年度によって期限日が動くため、提出前に各市区町村の案内を確認してください。
出典・参考資料(1件)
- 出典:地方税法第383条(固定資産の申告)|e-Gov法令検索(リンク)
Q. 償却資産の免税点はいくらですか?
A. 償却資産の免税点は、同じ市区町村内で所有する課税標準額の合計で、令和8年度は150万円、令和9年度分からは180万円です(この額未満であれば固定資産税は課されません)。令和8年度税制改正で150万円から180万円への引き上げが成立し、適用は令和9年度分の固定資産税(施行日は令和9年4月1日)からです。免税点未満で税額が生じない場合でも、申告自体は必要です。
Q. 償却資産申告書を期限までに提出しなかったり、虚偽の申告をしたりするとどうなりますか?
A. 正当な理由なく申告しなかった場合は市区町村の条例により10万円以下の過料が、虚偽の申告をした場合は地方税法第385条により1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の対象になります。さらに申告漏れが後から判明した場合は、原則として5年(偽りその他不正の行為があれば7年)遡って課税されます。
出典・参考資料(1件)
- 出典:地方税法第385条(虚偽の申告等に関する罪)・第386条(不申告に関する過料)・第17条の5(期間制限)|e-Gov法令検索(リンク)
Q. 償却資産申告書の取得価額は税抜・税込のどちらで記入しますか?
A. 取得価額を税抜・税込のどちらで記入するかは、自社の会計の経理方式(税抜経理か税込経理か)に合わせます。社内で経理方式を統一し、固定資産台帳と申告書で金額がずれないようにしておくと、申告のたびに迷わずに済みます。
Q. パソコンやソフトウェアは償却資産の申告対象になりますか?
A. パソコンは「工具器具及び備品」として償却資産の申告対象になりますが、ソフトウェアや特許権などの無形固定資産は申告対象外です。パソコンでも取得価額10万円未満で損金算入した資産や、20万円未満で3年一括償却を選んだ資産は対象外になります。
一方、中小企業者等の少額資産の特例(取得価額30万円未満、令和8年4月1日以後の取得分は40万円未満の即時償却)で損金算入した資産は、償却資産としては申告対象になる点に注意が必要です。
出典・参考資料(1件)
- 出典:地方税法第341条第4号(償却資産の意義)・地方税法施行令第49条(少額の償却資産)|e-Gov法令検索(リンク)
Q. 償却資産申告は一般方式と電算処理方式のどちらで申告すればよいですか?
A. はじめて申告する方や資産件数が少ない方は、評価額の計算が不要な一般方式を選ぶのが一般的です。一般方式では資産の内容(種類・取得年月・取得価額・耐用年数など)だけを記入し、評価額や課税標準額は市区町村が計算します。会計ソフトや固定資産管理システムで申告書を作成する場合は、評価額・決定価格・課税標準額まで自分で計算して記入する電算処理方式になります。
Q. 償却資産申告書はeLTAXで電子申告できますか?
A. 償却資産申告書は、紙のほかeLTAX(地方税ポータルシステム)を使って電子申告できます。eLTAXの利用届出で利用者IDを取得し、本人確認に使う電子証明書を準備すれば、資産が複数の市区町村にある場合でも1回の操作で各自治体へ申告データを送れます。
会計ソフトや固定資産管理システムが出力するeLTAX用のデータ(CSVなど)を利用できる場合もあり、台帳のデータから申告データを作れば入力の手間とミスを減らせます。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:eLTAXの概要・利用を開始する|地方税共同機構 eLTAX(リンク)
Q. 償却資産申告書を提出した後に記入内容の誤りに気づいた場合、訂正できますか?
A. 提出済みの償却資産申告書に誤りが見つかった場合は、速やかに資産が所在する市区町村へ連絡し、訂正(修正)の申告を行います。種類別明細書で訂正する際は、異動区分に「3」を記入し、誤った項目を二重線で消して正しい内容を記入したうえで、増減事由に「6」を記入し、摘要欄に訂正する事由といつから誤っていたかを明記します。
出典・参考資料(1件)
- 出典:償却資産申告書等の記入方法(Q&A)3 種類別明細書|横浜市(リンク)
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。
















