サービス比較の記事一覧

AIで顧客対応・サポート業務を自動化したい

サービス比較の記事一覧

AIで顧客対応・サポート業務を自動化したい

資産・データを安全に管理したい

社内セキュリティソリューション
の関連情報


関連サービス資料を
無料で一括ダウンロード

多層防御の費用はいくら?各層の相場と中小企業の規模別・合計費用の目安を解説

多層防御の費用はいくら?各層の相場と規模別の合計目安のサムネイル画像

ウイルス対策ソフト1本では守り切れないと聞き、ファイアウォールやEDR、WAFといった複数の対策を重ねる「多層防御」の導入を考え始めた企業は少なくありません。しかし、「一式そろえると自社の規模で結局いくらかかるのか」が分からず、具体的な費用の見当がつかないまま検討が止まってしまうことがよくあります。

UTMやEDR、WAFといった対策は、それぞれの費用相場なら調べれば見つかります。しかし多層防御は複数の層を組み合わせて初めて成り立つため、知りたいのは「各層がいくらで、足すと合計いくらになるか」です。この記事では、多層防御を構成する各層の費用を各社が公開している料金の実額で整理し、企業規模別に合計費用の目安を示します。

あわせて、費用を抑える3つの方法、初期費用だけでは見えないランニングコストの全体像、そして全部を一度にそろえられない場合の着手順までを解説します。読み終えるころには、自社の規模で「何を・どの順で・いくらで」そろえればよいかの見取り図が持て、見積もり取得などの次の一歩に進める状態になります。

社内セキュリティソリューションの関連サービス資料
PR
本セクションにはプロモーションが含まれており、表示順は当社独自の基準や提携状況に基づいています。

多層防御とは?費用を知る前に押さえる必要な層と役割

多層防御とは、1つの対策に頼らず、性質の異なる複数の対策を層状に重ねて守る考え方です。入口で防ぐ対策をすり抜けた攻撃を次の層で検知し、万一侵入されても被害を最小限に抑えて復旧できるようにします。攻撃の経路が「ネットワークの境界→端末→データ」と段階を踏むため、守る側も各段階に対策を置くという発想です。

費用を把握するには、まず多層防御がどの層で構成されるかを押さえる必要があります。IPA(情報処理推進機構)の「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」は、技術的な対策例として、外部ネットワークの境界からエンドポイント機器までを守る各技術を次のように定義しています。

● UTM(Unified Threat Management:統合脅威管理) ファイアウォールや IDS・IPS、メールフィルタリング、URL フィルタリングなど複数の異なるセキュリティ機能を一つのハードウェアに統合して、社内ネットワークとインターネットの脅威であるウイルスの侵入や不正アクセス、サイバー攻撃などを検知し、防御するツールです。
● EDR(Endpoint Detection and Response) ネットワークに接続されたパソコンやサーバー、スマートフォンなどの端末機器に侵入したウイルスやランサムウェアなどのサイバー攻撃を検出し、管理者に通知する技術です。
● WAF(Web Application Firewall) ウェブアプリケーションの脆弱性を悪用した攻撃からウェブアプリケーションを保護する技術。

出典:中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版(技術的対策例と活用)|IPA

このガイドラインは、技術的対策を「ネットワークの脅威・端末への対策」「コンテンツのセキュリティ対策」「アクセスの管理」の3つに分類しています。そのうえで、境界からエンドポイントまでを重ねて守る層の配置を示しています。

これに、攻撃でデータが暗号化された後に頼る復旧手段としてのデータのバックアップを加えると、多層防御の主な構成要素は次のように整理できます。

  • ネットワーク境界(ファイアウォール・UTM):インターネットと社内ネットワークの境目で、不正な通信の侵入を防ぎます。UTMは複数の機能を1台に統合した機器・サービスです。
  • エンドポイント(ウイルス対策・EDR):パソコンやサーバーなど端末そのものを守り、侵入後の不審な挙動を検知・対応します。
  • Webアプリケーション(WAF・DDoS対策):自社でWebサイトや公開サーバーを運用する場合に加える層です。WAFはアプリの脆弱性を突く攻撃を、DDoS対策は大量通信でサービスを止める攻撃を防ぎます。公開資産がない企業では優先度が下がります。
  • メール:攻撃の多くはメールが入口になるため、不審なメール・添付ファイル・リンクをフィルタリングします。
  • 認証・アクセス制御(多要素認証・ゼロトラスト型の接続制御):ID・パスワードが漏れても、正規の利用者だけがアクセスできるようにします。
  • データのバックアップ・復旧:すべての層をすり抜けられても、バックアップから復旧できれば身代金の支払いを避けられます。ランサムウェア対策の最後の砦です。

各層の位置づけを、攻撃の入口から守りたいデータまでの重なりで示すと次のとおりです。

多層防御の層構成を外側(攻撃の入口)から内側(守りたいデータ)へ縦に並べた図。ネットワーク境界(ファイアウォール・UTM)とメール対策が入口の層、エンドポイント(ウイルス対策・EDR)と認証・アクセス制御が中間の層、データのバックアップ・復旧が最後の砦として最も内側に位置する。Webアプリ対策(WAF・DDoS)はWeb公開資産がある場合に追加する任意の層。

すべての層を一度にそろえる必要はありません。自社の守りたい対象や予算に応じて、必要な層から重ねていくのが現実的です。次章からは、この各層が実際にいくらかかるのかを、公式に公開された料金で見ていきます。

出典・参考資料(1件)

多層防御を構成する各層の費用相場【一覧表】

ここからは、多層防御を構成する各層の費用を、公式に公開された実額の代表例で整理します。セキュリティ対策の料金は、製品や提供形態(クラウド型・アプライアンス型・従量課金など)によって幅が大きく、同じ層でも課金の単位(1ユーザーごと・1台ごと・1契約ごと・従量)が異なります。そのため、下表は「各層の目安をつかむための代表例」として読み、実際の金額は各製品の公式情報や見積もりで確認してください。

← 横にスクロールできます →
層(対策)ネットワーク境界・UTMエンドポイント・EDRWAFメール対策認証・アクセス制御DDoS対策(ネットワーク境界)バックアップ・復旧
役割境界で不正通信を防ぐ(FW・IPS/IDS・アンチウイルス等を統合)端末を守り、侵入後の不審な挙動を検知・対応Webアプリの脆弱性を突く攻撃を防ぐ(自社サイト運用時)メール経由の攻撃(なりすまし・添付・リンク)を防ぐ多要素認証・ゼロトラスト型の接続制御で不正ログインを防ぐ大量通信でサービスを停止させる攻撃を防ぐ(公開サービス運用時)暗号化・破壊された後にデータを復旧する最終手段
公式実額の代表例クラウド型UTM:初期121,000円〜/月額42,350円〜(税込・帯域別)EDR:1ユーザー月額449円〜(税別・年払い)月額定額型:初期100,000円・月額25,000円〜(税別)/従量型(AWS WAF等):数USD〜+リクエスト量に応じて変動1ユーザー月額299円〜(税別・年払い)IDaaS:1ユーザー月額440円〜(税込)IP保護:1IPあたり月額199USD〜直販版 年額9,500円〜/台(ワークロード単位)。クラウド型はプロバイダー依存
課金単位1契約(帯域別)1ユーザー/月月額定額/従量1ユーザー/月1ユーザー/月保護対象IP単位1台(ワークロード)/年

※上記は各層の代表的な公式実額(2026年10月時点)で、製品・提供形態・契約規模により変動します。最新の料金は各社の公式情報をご確認ください。

各層の代表例は、いずれも各社・公的機関が公開している料金ページを出典としています(この章末の出典一覧を参照)。

数字を見ると、1ユーザーあたり数百円で始められる層(EDR・メール対策・認証)と、1契約で数万円かかる層(クラウド型UTM)が混在しており、層ごとに課金の単位が違うことが分かります。この違いが、次章の「合計いくらか」を考えるうえで重要になります。

出典・参考資料(8件)

【企業規模別】多層防御の合計費用の目安(早見表)

各層の費用が分かったところで、本題の「一式そろえると合計いくらになるか」を企業規模別に見ていきます。下表は、前章の各層の公式実額を各規模の標準的な構成で積み上げた概算の目安です。読者が自分で検算できるよう、次の積み上げルールで計算しています。

  • 表の金額は月額のランニングコストです。UTMなどの初期費用は含めず、別行(初期費用)に分けています。
  • 前章の実額は税込・税別が混在するため、すべて税込に換算してそろえ、年額のバックアップは12で割って月額に直しています(端数は切り上げ)。たとえばメール対策の「1ユーザー月額299円(税別)」は税込約330円、認証の「IDaaS 440円」は税込表示そのままを用いています。
  • 想定構成は、〜30名規模=30ユーザー・重要端末10台、30〜100名規模=60ユーザー・重要端末20台、100名〜規模=150ユーザー・重要端末50台。UTMは規模が大きいほど必要な帯域・拠点数も増えるものとして幅を置いています。
← 横にスクロールできます →
層(対策)ネットワーク境界・UTMエンドポイント・EDRメール対策認証・アクセス制御バックアップ・復旧合計の目安(月額ランニング)初期費用(一時・別途)(参考)年間ランニング
〜30名規模約4.2万円〜(クラウド型・帯域別)約1.5万円(税込約500円×30名)約1万円(税込約330円×30名)約1.3万円(税込440円×30名)約0.9万円(税込約870円×重要端末10台)約9万〜12万円約12万円〜約105万〜145万円
30〜100名規模約4.2万〜8万円約3万円(×60名)約2万円(×60名)約2.6万円(×60名)約1.7万円(×20台)約14万〜18万円約12万円〜約170万〜220万円
100名〜規模約8万円〜約7.4万円(×150名)約5万円(×150名)約6.6万円(×150名)約4.4万円(×50台)約31万〜46万円約12万円〜約370万〜550万円

※各層の公式実額を税込に換算し各規模の標準構成で積み上げた概算です。合計の上限は、UTMの帯域・拠点増や上位構成による幅を見込んでいます。初年度は年間ランニングに初期費用(一時)が加わります。WAF・DDoS対策は含めていません(Web公開資産がある場合に別途/下記参照)。構成・提供形態・契約規模で変動するため、正確な金額は各社の見積もりでご確認ください。

たとえば〜30名規模なら、UTM約4.2万円+EDR約1.5万円+メール対策約1万円+認証約1.3万円+バックアップ約0.9万円で、月額のランニングは約9万円が目安です。これに初年度はUTMなどの初期費用(約12万円〜)が一時費用として加わります。年間では、ランニング約105万〜145万円に、初年度のみ初期費用が上乗せされる計算です。

上表には、すべての企業が必要とするわけではないWAFとDDoS対策は含めていません。自社でWebサイトやWebアプリ、公開サーバーを運用している場合は、これらを追加で見込みます。WAFは月額定額型で月額25,000円〜(税別)、または従量型、DDoS対策はクラウドサービスの保護機能で1IPあたり月額199USD〜が目安です。

合計を見て「思ったより高い」と感じるかもしれません。しかし、この金額は被害に遭ったときのコストと比べて判断する必要があります。警察庁の報告によると、ランサムウェア被害からの復旧費用は次のような水準です。

令和6年に引き続き、ランサムウェア被害に関する調査費用、復旧費用が高額化しており、復旧に総額 1,000 万円以上を要した組織の割合は全体の5割を超えている。また、復旧に要した期間については、1か月未満で復旧した組織の割合は全体の5割強に留まる

出典:令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について|警察庁

復旧に1,000万円以上かかった組織が半数を超え、同じ報告ではランサムウェア被害の約6割を中小企業が占めています。多層防御の年間費用と、一度の被害で生じる復旧費用・事業停止による損失を並べると、どちらのコストを選ぶかという視点で予算を検討できます。次章では、この合計費用そのものを抑える方法を見ていきます。

この被害を生むランサムウェアに的を絞って、予防・検知・復旧の各層をどんな製品で固めればよいかを知りたい場合は、対策ソリューションを層別に比較した次の記事が参考になります。

出典・参考資料(1件)

多層防御の費用を抑える3つの方法

多層防御は層を重ねるほど費用がかさみますが、総額を抑える方法があります。ここでは、効果の大きい3つの方法を、どのように負担を抑えられるか、目安の金額とあわせて解説します。

1. UTMで複数機能を1台に集約する

1つ目は、ネットワーク境界の対策をUTMに集約する方法です。UTMは、ファイアウォール・IPS/IDS・アンチウイルス・メールフィルタリング・URLフィルタリングといった複数の機能を1つに統合した仕組みです。これらを個別の製品でそろえると、製品ごとに契約・導入・運用の手間と費用が発生しますが、UTM1契約にまとめれば、機能ごとの重複した基本料金を払わずに済みます。

たとえばクラウド型UTMは、月額42,350円(税込)からの1契約で境界の主要機能をまとめられます。ファイアウォール・アンチウイルス・メールフィルタリングなどを別々の製品で契約すると、製品ごとに基本料金が積み上がりますが、UTMに集約すればその重複を避けられます。

とくにクラウド型UTMは、拠点ごとに機器を購入・設置する必要がなく、複数拠点のセキュリティ設定を一元管理できます。専任の担当者を置けない中小企業や多拠点企業では、運用の人件費まで含めた総費用を抑えやすい選択肢です。

2. デジタル化・AI導入補助金2026のセキュリティ対策推進枠を活用する

2つ目は、国の補助金を使って自己負担を減らす方法です。かつての「IT導入補助金」は、2026年の公募から「デジタル化・AI導入補助金2026」へと名称が変わりました。この中の「セキュリティ対策推進枠」では、セキュリティ対策にかかる費用の一部が補助されます。補助の条件は次のとおりです。

補助額:5万円〜150万円
補助率:小規模事業者 2/3以内/中小企業 1/2以内
対象経費:ITツールの導入費用およびサービス(最大2年分)

出典:セキュリティ対策推進枠|デジタル化・AI導入補助金2026|中小企業庁・中小企業基盤整備機構

対象になるのは、IPAの「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載され、事務局に登録されたサービスの利用料(最大2年分)です。補助率が2分の1であれば、自己負担は実質半分になります。たとえば150万円のサービス導入なら、中小企業で最大75万円が補助され、自己負担は75万円に抑えられる計算です。

補助の対象はこのリストに登録されたサービスに限られるため、多層防御のすべての層が対象になるとは限りません。先ほどの早見表でいえば、30〜100名規模の年間ランニング(約170万〜220万円)のうち、対象サービス分について最大2年分・上限150万円の範囲で自己負担を軽減できる、という使い方になります。

ただし、交付決定前に発注・契約・支払いをした費用は原則として対象外になるため、申請のタイミングには注意が必要です。年度ごとに公募スケジュールや要件が変わるので、利用を検討する際は事務局の公式サイトで最新の条件を確認してください。

出典・参考資料(1件)

3. 各層をまとめた一括提供サービスで総額を圧縮する

3つ目は、各層を別々に契約するのではなく、複数の対策をまとめて提供するサービスを使う方法です。エンドポイント保護とバックアップを統合したサービスや、脆弱性診断・バックアップ・サイバー保険をパッケージにしたサービスなど、複数の層を1つの契約でまとめられるものがあります。

一括提供サービスは、層ごとに別々のベンダーと契約・支払い・問い合わせをする手間が省けるうえ、まとめることで単体契約の積み上げより総額を抑えられる場合があります。たとえば次章で紹介する脆弱性診断・バックアップ・サイバー保険をまとめたパッケージは、月額1,250円/台からと案内されており、各層を個別に契約するより始めやすい価格帯です。

専任のセキュリティ人材がいない企業にとっては、費用面だけでなく、運用の窓口が一本化される点もメリットです。

初期・月額・年次更新・運用まで|多層防御のランニングコスト全体像と隠れコスト

多層防御の費用は、導入時に一度払って終わりではありません。前章までの各層の金額は「月額」や「年額」が中心ですが、実際に運用を続けると、月額表示だけでは見えてこない費用が積み上がります。予算を立てるときに見落としやすい、時間とともにかかる費用を整理します。

第1に、年間ライセンスの更新費用です。EDRやウイルス対策、UTMの多くは、最新の脅威情報を取得し続けるために、毎年ライセンスを更新し続ける必要があります。更新を止めると新しい攻撃を検知できなくなるため、これは継続して発生する固定費と考えるべきです。初期費用の安さだけで選ぶと、翌年以降の更新費用で想定が狂います。

第2に、運用・監視の費用です。EDRのように端末の不審な挙動を検知する仕組みは、導入しただけでは効果が出ず、検知された警告を確認し、対応する人手が必要です。専任の担当者を置けない場合は、監視・対応を外部に任せるMDR(Managed Detection and Response)やSOC(セキュリティ監視の専門チーム)の利用料が月額で加わります。

脆弱性診断やバックアップ、改善の伴走までを外部に委ねるパッケージ型サービスでは、前章で触れたように月額1,250円/台から運用の一部をまとめて任せられる例もあります。一方、EDRの警告確認やインシデント対応まで本格的に外部委託する場合は、MDR・SOCの費用が別途かかります。自社で人手を確保できないほど、この運用費用はランニングの中で大きな比重を占めやすく、多層防御の「隠れコスト」になりがちです。

第3に、初期費用・設定費用です。UTMのように機器やサービスの初期設定が必要なものは、導入時にまとまった初期費用がかかります。月額が同じでも初期費用の有無で総額は変わるため、見積もりでは初期費用・月額・年次更新・運用費用の4つを分けて確認してください。月額の数字だけを足し合わせると、実際にかかる総額を低く見積もることになります。

全部そろえるのが難しい場合の着手順(優先順位の付け方)

ここまでの費用を見て、「一式すべてをいきなりそろえるのは難しい」と感じた場合も、着手する順番を押さえれば無理なく進められます。どこから手を付けるかは、自社の資産の重要度・既存の対策・組織の規模によって変わるため、ここでは公的な指針をもとにした判断材料を示します。

IPAは、企業の規模に関わらず必ず実行すべき対策として「情報セキュリティ6か条」を挙げ、これを最低限の出発点と位置づけています。

情報セキュリティ6か条
1.OS やソフトウェアは常に最新の状態にしよう!
2.ウイルス対策ソフトを導入しよう!
3.パスワードを強化しよう!
4.共有設定を見直そう!
5.バックアップを取ろう!
6.脅威や攻撃の手口を知ろう!

出典:中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版(情報セキュリティ6か条)|IPA

この6か条のうち、OSの更新・パスワードの強化・共有設定の見直しは費用をかけずに着手でき、ウイルス対策とバックアップが最初に費用の発生する対策になります。多層防御の層に置き換えると、まずは基本のウイルス対策(EPP)とデータのバックアップが、規模を問わず優先度の高い出発点です。より高度なEDRは、端末の守りをさらに厚くする次の段階の対策と位置づけられます。

被害に遭っても復旧できる状態と、端末そのものを守る状態を先につくる考え方です。

次に押さえたいのが、ネットワーク境界と認証です。警察庁の報告では、ランサムウェアの侵入経路はVPN機器が6割以上を占めています。外部からの入口にあたるネットワーク境界(UTM・ファイアウォール)と、ID・パスワードの漏えいに備える多要素認証は、侵入そのものを防ぐ層として早い段階で検討する価値があります。WAFやDDoS対策は、自社でWebサイトや公開サービスを運用している場合に加えます。

多層防御の各層に限らず、中小企業がセキュリティ対策全般を「何から・どの順で」進めるべきかを、優先順位と費用感をつけて一覧で確認したい場合は、次の記事で整理しています。

ただし、最適な順番は資産の重要度や既存の対策状況によって変わります。ひとり情シスで手が回らない場合は、着手順を自社だけで決めず、各層を担うサービスの提供元に相談して、自社に合う構成と優先順位を一緒に組み立てるのが現実的です。次章では、各層を担うサービスと費用の相談先を紹介します。

出典・参考資料(2件)

多層防御の各層を担うサービスと費用相談先

ここからは、多層防御の各層を担う具体的なサービスを紹介します。認証・エンドポイント・一括提供・バックアップ・ネットワーク境界と、守る対象の異なるサービスを取り上げました。メール対策の層は、Microsoft 365 などの付帯機能や専用サービスで補えるほか、UTMのメールフィルタリング機能でもカバーできます。

自社に足りない層を補う視点で見て、合計費用の実際の見積もりは各サービスの資料請求・相談から進めてください。

ここで取り上げるのは各層の代表例です。守る対象ごとにどんなタイプのサービスがあり、どう選べばよいかを広く見渡したい場合は、次の比較記事で社内セキュリティソリューション全体を整理しています。

1. CloudGate UNO(株式会社インターナショナルシステムリサーチ)

CloudGate UNOの公式サイト。多要素認証・シングルサインオンでクラウドの認証セキュリティを高めるサービスの紹介ページ。

認証・アクセス制御の層を担うのが、株式会社インターナショナルシステムリサーチの「CloudGate UNO(クラウドゲートウノ)」です。1つのIDで複数のクラウドサービスにログインできるシングルサインオンに、多要素認証・アクセス制限・ID管理を組み合わせた、ゼロトラストの考え方にもとづくクラウド型の認証基盤(IDaaS)です。

ID・パスワードが漏れても不正ログインを防ぐため、パスワードに頼らないパスキー(FIDO2)認証に対応し、これを上位プラン限定にせず全プランで利用できる点が特徴です。「端末・場所・時間」の3つの軸でアクセスを細かく制限でき、私用端末からのアクセス禁止や業務時間外の制限も設定できます。

料金は、基本のSSO・多要素認証・アクセス制限・ID管理を含むStandard Plusが1ユーザーあたり月額440円(税込)からで、30日間の無料トライアルも用意されています。認証の層を、社内の複数のサービスにまとめて効かせたい場合の選択肢になります。

認証の層を整えることが、運用の手間にどう影響するか。同社の平澤氏は、導入による変化を次のように話しています。

平澤氏
株式会社インターナショナルシステムリサーチ 営業本部マーケティング部
平澤氏
独自インタビューより

導入と同時にパスワードレス認証に切り替えた企業では、IT部門の業務の約20%を占めていたパスワード関連のヘルプデスク業務が「0%」になったという事例があります。

2. Eye”247″ Safety Zone(株式会社フーバーブレイン)

Eye“247” Safety Zoneの公式サイト。EPPとEDRを組み合わせたエンドポイントセキュリティ製品の紹介ページ。

端末そのものを守るエンドポイントの層には、株式会社フーバーブレインの「Eye”247″ Safety Zone」があります。ウイルスの侵入を防ぐEPP(エンドポイント保護)と、侵入後の不審な挙動を検知・対応するEDRを1つの製品に組み合わせたエンドポイントセキュリティソフトです。EDR機能を別オプションとして追加契約する必要がありません。

検知エンジンにはセキュリティベンダーBitdefenderと共同開発したものを採用し、機械学習ベースでアプリケーションの挙動を常時監視することで、未知の脅威にも対応します。ランサムウェア対策として、不審な挙動を検知するとファイルを自動でバックアップし、感染時はクライアント側で直近のバックアップから復元できる機能を標準で備えています。

料金は公開されておらず、要問い合わせです。エンドポイントの防御と侵入後の検知・対応を1本化し、端末を守る層を厚くしたい企業に適しています。

3. KATABAMI サイバーセキュリティ対策パッケージ(株式会社SYNCHRO)

KATABAMI サイバーセキュリティ対策パッケージの公式サイト。中小企業向けにサイバーセキュリティ対策をまとめて提供するサービスの紹介ページ。

複数の層をまとめて任せたい企業に向くのが、株式会社SYNCHROの「KATABAMI サイバーセキュリティ対策パッケージ」です。サイバー攻撃対策を「予防・復旧・補償」の3本柱で提供する一括提供型のサービスで、費用を抑える方法で触れた一括提供をそのまま体現しています。

予防は、ネットワーク内部から毎月(年12回)脆弱性を診断し、改善策を提示する定期検診です。復旧は、隔離した通信経路を通じて前日時点のデータを自動でバックアップし、有事に復旧できるようにします。補償は、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社のサイバー保険を自動付帯します。診断で見つかった脆弱性への対策案は提示しますが、対策の実装そのものは標準サービスの範囲外で、希望する場合は別料金で依頼できます。

料金は1台あたり月額1,250円からで、公式サイトでは最短2週間での利用開始・設置10分と案内されています。専任のセキュリティ人材がいなくても、予防から復旧・補償までをまとめて導入したい中小企業の入口として検討できます。

この予防にあたる脆弱性診断が、従来はなぜ費用の負担になりやすかったのか。同社の北口氏は、これまでの診断方法を次のように説明しています。

北口氏
株式会社SYNCHRO 取締役CMO
北口氏
独自インタビューより

このようなオフィス内の脆弱性を調べるために、従来はお客様先まで足を運び、中に入って席を借りて調査する必要がありました。専門家が2人で出向いて期間中拘束されるため、どうしてもコストが高くなり、頻繁にはお願いしづらいのが実情です。結果として、年に1回程度の実施が一般的でした。一方で、新しい脆弱性は日々生まれており、生成AIの登場でそのスピードもさらに上がっています。

4. Acronis Cyber Protect Cloud(Acronis)

Acronis Cyber Protect Cloudの公式サイト。バックアップとサイバーセキュリティを統合したデータ保護プラットフォームの紹介ページ。

バックアップ・復旧の層では、Acronisの「Acronis Cyber Protect Cloud」が選択肢になります。バックアップと復元、マルウェア対策、エンドポイント管理を1つのコンソールで提供する点が特徴で、バックアップした対象データにもランサムウェア・マルウェア対策を組み込んでいます。

エンドポイントでのランサムウェアの挙動検知(Active Protection)と、バックアップ自体を書き換えから守る機能を併せ持ち、万一の際にデータを安全な状態から復旧できる復旧層の厚みが強みです。物理サーバー・仮想マシン・クラウド・SaaS(Microsoft 365など)と幅広い対象をカバーします。

クラウド版はサービスプロバイダー経由で提供されるため、実際の料金は提供元によって異なります(参考として、あるプロバイダーでは容量100GBで月額8,350円から案内されています)。直販版のAcronis Cyber Protectは、ワークロード(保護対象マシン)単位でStandardが年額9,500円からです。バックアップを起点に、復旧までを一貫してそろえたい企業に適しています。

5. SmartConnect Network & Security クラウド型UTM(NTTスマートコネクト株式会社)

NTTスマートコネクトのクラウド型UTMの公式サイト。データセンター集約型で複数拠点のセキュリティ対策を提供するサービスの紹介ページ。

ネットワーク境界の層を機器の設置なしで固めたい企業には、NTTスマートコネクト株式会社の「SmartConnect Network & Security クラウド型UTM」があります。UTM機器を自社の拠点に設置せず、同社のデータセンターに集約したUTM基盤に、各拠点のインターネット接続を集約する形で提供します。

拠点ごとにUTM機器を購入・設置・運用する代わりに、セキュリティ対策と回線の運用をまとめて任せられる点が特徴です。採用製品はFortinet社の「FortiGate」「FortiAnalyzer」で、不正侵入の検知・遮断を行うIPS機能を基本契約に標準搭載し、ログ分析などはオプションで追加できます。

複数拠点のセキュリティ設定を一元管理できるため、拠点ごとに担当者を置けない企業の運用負担を軽くします。

料金は初期費用110,000円(税込121,000円)から、月額38,500円(税込42,350円)からで、いずれも帯域別のプランにより変動します。最低利用期間は1年です。ネットワーク境界の対策を機器の購入なしで導入したい企業に適しています。

ここで紹介したサービスの料金や対応する層を横並びで確認できるよう、比較表にまとめました。自社に足りない層から、資料請求や相談を進める材料にしてください。

← 横にスクロールできます →
サービス名CloudGate UNOEye"247" Safety ZoneKATABAMI サイバーセキュリティ対策パッケージAcronis Cyber Protect CloudSmartConnect クラウド型UTM
担う層(守る対象)認証・アクセス制御エンドポイント(端末)脆弱性診断・バックアップ・補償バックアップ・復旧ネットワーク境界(UTM)
料金の目安月額440円〜/ユーザー(税込)
初期費用は要お問い合わせ
30日間無料トライアルあり
要お問い合わせ(料金非公開)月額1,250円〜/台
(100ノード以下で年額90万〜150万円)
初期費用は要お問い合わせ
要お問い合わせ(提供元により変動)
参考:100GBで月額8,350円〜/直販版は年額9,500円〜/台
初期121,000円〜/月額42,350円〜(税込)
最低利用期間1年
提供形態クラウド型(IDaaS)ソフトウェア(EPP+EDR一体型)統合パッケージ(診断+バックアップ+保険)クラウド型(MSP・提供元経由)クラウド型UTM(データセンター集約)
詳細情報公式資料を見る公式資料を見るオンライン相談を予約サービス詳細を見るサービス詳細を見る

まとめ

多層防御の費用は、ネットワーク境界・エンドポイント・メール・認証・バックアップといった各層を積み上げて決まります。1ユーザーあたり数百円で始められる層と、1契約で数万円かかる層が混在するため、自社の規模と守りたい対象に合わせて、合計の目安を見積もることが大切です。本記事の早見表では、〜30名規模で月額約9万〜12万円、100名〜規模で月額約31万〜46万円が一つの目安になります。

総額を抑えるには、UTMで機能を集約する、デジタル化・AI導入補助金2026を活用する、各層を一括提供するサービスを使う、という3つの方法があります。すべてを一度にそろえるのが難しい場合は、まずエンドポイントとバックアップから着手し、ネットワーク境界と認証へと広げていくのが現実的な進め方です。

復旧に1,000万円以上かかることも珍しくない被害のコストと比べれば、多層防御への投資は先送りしにくい経営課題といえます。

自社に必要な層と費用をより具体的に詰めるには、各層を担うサービスの資料を取り寄せ、対応範囲や料金を比べながら見積もりを取るのが近道です。

多層防御の費用に関するよくある質問(FAQ)

Q. 多層防御とは何ですか?

A. 多層防御とは、1つの対策に頼らず、性質の異なる複数の対策を層状に重ねて守るセキュリティの考え方です。入口で防ぐ対策をすり抜けた攻撃を次の層で検知し、万一侵入されても被害を最小限に抑えて復旧できるようにします。

具体的には、ネットワーク境界(UTM・ファイアウォール)、エンドポイント(ウイルス対策・EDR)、メール対策、認証・アクセス制御、データのバックアップといった層があります。これらを自社が守りたい対象に応じて重ねていきます。

Q. 多層防御を一式そろえると費用は合計いくらになりますか?

A. 多層防御の合計費用は、〜30名規模で月額約9万〜12万円(年間約105万〜145万円)、100名〜規模で月額約31万〜46万円(年間約370万〜550万円)が一つの目安です。

ネットワーク境界(UTM)・エンドポイント(EDR)・メール対策・認証・バックアップの各層を標準的な構成で積み上げた概算です。自社でWebサイトやWebアプリを運用する場合は、WAF(月額25,000円〜)やDDoS対策が加わります。1ユーザー数百円の層と1契約で数万円かかる層が混在するため、自社の規模と守りたい対象に合わせて見積もることが大切です。

Q. UTMで対策を集約すると多層防御の費用は安くなりますか?

A. ネットワーク境界の対策をUTMに集約すると、各機能を個別の製品でそろえるより総額を抑えやすくなります。 UTMはファイアウォール・IPS/IDS・アンチウイルス・メールフィルタリング・URLフィルタリングといった複数の機能を1台に統合します。そのため、機能ごとに重複する基本料金や、製品ごとの契約・導入・運用の手間を省けます。

とくにクラウド型UTMは拠点ごとに機器を購入・設置する必要がなく、複数拠点の設定を一元管理できるため、専任担当を置けない中小企業では運用の人件費まで含めた総費用を抑えやすい選択肢です。

Q. 多層防御の費用に補助金は使えますか?

A. 「デジタル化・AI導入補助金2026」のセキュリティ対策推進枠を使えば、多層防御の導入費用の一部(補助額5万円〜150万円)が補助されます。 補助率は小規模事業者が2/3以内、中小企業が1/2以内で、対象になるのはIPAの「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に登録されたサービスの利用料(最大2年分)です。

ただし、交付決定前に発注・契約・支払いをした費用は原則として対象外のため、申請のタイミングに注意し、年度ごとに変わる最新の要件を事務局の公式サイトで確認してください。

出典・参考資料(1件)

Q. 多層防御は月額費用のほかにどんな費用がかかりますか?

A. 多層防御は月額費用だけでなく、年間ライセンスの更新費用・運用や監視の費用・初期設定費用が継続的に、または別途かかります。EDRやウイルス対策、UTMの多くは、最新の脅威情報を取得し続けるために毎年のライセンス更新が必要です。さらにEDRのような検知の仕組みでは、検知された警告を確認・対応する人手(専任担当を置けない場合はMDRやSOCへの外部委託料)が月額で加わります。

月額の数字だけを足し合わせると総額を低く見積もることになるため、見積もりでは初期費用・月額・年次更新・運用費用の4つを分けて確認してください。

Q. 多層防御を全部そろえるのが難しい場合、何から始めるべきですか?

A. 多層防御を一度にそろえられない場合は、まずエンドポイント(ウイルス対策・EDR)とデータのバックアップから着手し、次にネットワーク境界(UTM)と多要素認証へ広げるのが現実的です。IPAの「情報セキュリティ6か条」でも、OSの更新・パスワードの強化・共有設定の見直し(費用をかけずに着手可能)に続き、ウイルス対策とバックアップが最初に費用の発生する対策とされています。

被害に遭っても復旧できる状態と端末そのものを守る状態を先につくり、侵入経路の6割以上を占めるVPN機器などの入口にあたる境界と認証を固める考え方です。最適な順番は資産の重要度や既存の対策状況で変わるため、各層を担うサービスの提供元に相談して構成を組み立てるのも有効です。

出典・参考資料(2件)

Q. 多層防御にWAFやDDoS対策は必ず必要ですか?

A. WAFとDDoS対策は、自社でWebサイト・Webアプリ・公開サーバーを運用している場合に必要になる層で、すべての企業に必須というわけではありません。 WAFはWebアプリの脆弱性を突く攻撃を、DDoS対策は大量通信でサービスを停止させる攻撃を防ぐもので、外部に公開するサービスを持たない企業では優先度が下がります。

費用の目安は、WAFが月額定額型で月額25,000円〜(税別)または従量型、DDoS対策が保護対象1IPあたり月額199USD〜です。自社が守るべき対象にWebの公開資産が含まれるかどうかで要否を判断してください。

Q. UTMを1台導入すれば多層防御は完成しますか?

A. UTMは多層防御のネットワーク境界の層を1台で厚くできますが、UTMだけで多層防御が完成するわけではありません。 UTMはファイアウォール・IPS/IDS・アンチウイルスなどを統合して境界を守ります。しかし、端末そのものを守るEDR、侵入後にデータを復旧するバックアップ、不正ログインを防ぐ多要素認証といった別の層はカバーしません。

攻撃は「ネットワークの境界→端末→データ」と段階を踏むため、境界・エンドポイント・バックアップ・認証など性質の異なる層を重ねて初めて多層防御になります。

多層防御の各層を担うサービスの料金・資料を一括チェック

MCB FinTechカタログでは、多層防御を構成する各層(UTM・エンドポイント・認証・バックアップなど)のサービスの最新資料を無料で一括請求できます。対応する層や料金を比べながら、自社に足りない部分を補う一社を検討できます。

MCB FinTechカタログに掲載しませんか?

MCB FinTechカタログでは、掲載企業様を募集しています。マネックスグループの金融実務ノウハウを活かした独自の評価軸と検索設計により、導入検討者が最適なサービスを効率的に発見できる法人向け比較プラットフォームです。掲載後は管理画面から料金表や導入事例を随時更新でき、常に最新の情報を訴求可能。まずは下記フォームより、お気軽にお問い合わせください。

監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
記事内でご紹介している製品・サービスは監修者が選定したものではなく、編集部が独自に選定したものです。
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

関連記事

新着記事

社内セキュリティソリューション
おすすめの診断サービス