インボイス制度への登録をきっかけに、これまで消費税を納めていなかった事業者が課税事業者となり、初めて消費税の申告に向き合うケースが増えています。所得税の確定申告は経験があっても、消費税は対象者の判定から計算方法、提出する書類まで仕組みが異なり、「自分は申告が必要なのか」「いつまでに何をすればよいのか」が分かりにくいという声が多く聞かれます。
この記事では、消費税の申告が必要になる対象者の判定から、申告期限、3つの計算方法(一般課税・簡易課税・2割特例)、計算方法ごとに提出する申告書と付表、e-Taxなどの申告方法までを、国税庁の情報にもとづいて順を追って解説します。自社のケースに当てはめて、申告の全体像と進め方を把握できる状態を目指します。
目次
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消費税申告とは?申告までの全体の流れ
消費税申告とは、事業者が売上とともに消費者から預かった消費税から、仕入れなどで支払った消費税を差し引いた金額を計算し、国に申告・納付する手続きです。事業者は商品やサービスの提供時に受け取った消費税をいったん預かり、申告によって最終的な納税額を確定させます。
所得税の確定申告が「もうけ(所得)」に対する税金であるのに対し、消費税の申告は「預かった消費税と支払った消費税の差額」を計算する別の手続きです。個人事業主の場合、所得税と消費税は申告書も提出期限も異なるため、両方を別々に行う必要があります。
消費税の申告は、おおむね次の流れで進みます。全体像を押さえておくと、自分の現在地とゴールが掴みやすくなります。

- 申告が必要かを判定する:課税事業者か免税事業者かを確認します。
- 計算方法を決める:一般課税・簡易課税・2割特例のどれを使えるか・使うかを確認します。
- 納税額を計算する:日々の帳簿から売上・仕入れの消費税を集計し、納める税額を算出します。
- 申告書を作成する:計算方法に応じた申告書・付表を作成します。
- 申告書を提出し、納税する:e-Tax・窓口・郵送のいずれかで提出し、期限までに納付します。
あなたは消費税の申告が必要?対象者の判定
ここからは、消費税の申告が必要な「課税事業者」に自分が当てはまるかを確認しましょう。まず結論として、次のいずれかに当てはまる課税期間は、消費税の申告が必要です。
- 適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)として登録している(売上規模に関わらず対象)
- 基準期間の課税売上高が1,000万円を超える
- 特定期間の課税売上高(または給与等支払額)が1,000万円を超える
- 新設法人で、事業年度開始時の資本金が1,000万円以上
- 「消費税課税事業者選択届出書」を提出して自ら課税事業者になっている
インボイス登録を機に課税事業者になった方は、1つ目に当てはまるため申告が必要です。以下では、それぞれの判定基準を順に確認します。基本となるのは、基準期間または特定期間の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかです。
基準期間とは、個人事業主はその年の前々年、法人は原則として前々事業年度を指します。この基準期間の課税売上高が1,000万円以下であれば、原則として納税義務が免除され、免税事業者となります。
ただし、特定期間(個人は前年の1月1日〜6月30日、法人は原則として前事業年度開始後6か月)の課税売上高が1,000万円を超える場合は、基準期間が1,000万円以下でも課税事業者になります。なお特定期間の判定は、課税売上高に代えて給与等支払額で行うこともでき、どちらで判定するかは事業者の任意です。
事業者は、国内において行った課税資産の譲渡等について消費税を納める義務がありますが、その課税期間の基準期間(個人事業者の場合はその年の前々年、事業年度が1年である法人の場合はその事業年度の前々事業年度)における課税売上高が1,000万円以下である場合には、原則として、納税義務が免除されます。
出典:No.6501 納税義務の免除|国税庁(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6501.htm)
設立したばかりで基準期間がない新設法人でも、事業年度開始の日における資本金の額または出資の金額が1,000万円以上であるときは、納税義務が免除されず課税事業者となります。
インボイス発行事業者(登録事業者)は売上に関わらず申告が必要
基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも、適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)の登録を受けている場合は、納税義務は免除されません。インボイス登録をした事業者は売上規模に関わらず課税事業者となり、消費税の申告が必要です。
課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、適格請求書発行事業者の登録を受けている場合には、納税義務は免除されません。
出典:No.6501 納税義務の免除|国税庁(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6501.htm)
免税事業者が課税期間の途中でインボイス発行事業者の登録を受けた場合は、その登録日以後に行った取引が申告の対象になる経過措置が設けられています。「売上1,000万円以下だから申告は不要」と考えがちですが、インボイス登録をしているかどうかが申告要否を分ける大きなポイントです。
消費税の申告期限はいつまで?(法人・個人・所得税との違い)
続いて、申告と納税の期限を確認します。消費税の確定申告・納税の期限は、法人と個人で異なります。
- 法人:課税期間の終了の日の翌日から2か月以内
- 個人事業主:課税期間(1月1日〜12月31日)の翌年3月31日まで
課税事業者は、課税期間…ごとにその課税期間の終了の日の翌日から2か月以内に、納税地を所轄する税務署長に消費税の確定申告書を提出するとともに、その税金を納付しなければなりません。ただし、個人事業者の12月31日の属する課税期間の消費税の確定申告と納税の期限は2月末日ではなく、3月31日までに延長されています。
出典:No.6601 消費税の申告と納税|国税庁(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6601.htm)
個人事業主が特に注意したいのは、所得税の確定申告期限(翌年2月16日〜3月15日)と消費税の申告期限(翌年3月31日)がずれる点です。所得税を3月15日までに済ませても、消費税の申告・納税は3月31日が期限となります。期限を過ぎると延滞税などの対象になるため、スケジュールを分けて管理しておくと安心です。
出典・参考資料(1件)
- 出典:No.6601 消費税の申告と納税|国税庁(リンク)
消費税額の計算方法(一般課税・簡易課税・2割特例)
ここからは、納める消費税額の計算方法を解説します。消費税の計算には、原則の「一般課税」、届出により選べる「簡易課税」、インボイスを機に課税事業者になった小規模事業者向けの「2割特例」の3つがあります。それぞれ使える条件と計算のしかたが異なります。
一般課税(原則課税)の計算
一般課税は、売上にかかる消費税額(売上税額)から、仕入れや経費にかかった消費税額(仕入税額)を差し引いて納税額を計算する原則的な方法です。実際に支払った消費税を控除するため、設備投資などで仕入税額が大きい年は、納税額が少なくなったり還付が生じたりする場合があります。
売上税額は、税率ごとに区分した税込価額の合計に110分の100(軽減税率は108分の100)を掛けて課税標準額を算出します。これにそれぞれの税率(標準税率7.8%、軽減税率6.24%。いずれも地方消費税を合わせると10%・8%)を掛けて計算するのが原則です(割戻し計算)。適格請求書の写しを保存している場合は、記載した消費税額等を積み上げて計算する方法(積上げ計算)も選べます。
出典・参考資料(1件)
- 出典:No.6351 納付税額の計算のしかた|国税庁(リンク)
簡易課税の計算とみなし仕入率(事業区分別)
簡易課税は、実際の仕入税額を計算せず、売上にかかる消費税額に業種ごとの「みなし仕入率」を掛けた金額を仕入税額とみなして控除する方法です。仕入れの消費税を1件ずつ集計する必要がないため、経理の負担を抑えられます。
簡易課税を使うには、基準期間の課税売上高が5,000万円以下であることに加え、適用を受けたい課税期間の開始前までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を所轄税務署へ提出しておく必要があります。一度選択すると原則2年間は一般課税に戻せない点にも注意が必要です。
みなし仕入率は、事業区分に応じて次のように定められています。
| 事業区分 | 第1種事業 | 第2種事業 | 第3種事業 | 第4種事業 | 第5種事業 | 第6種事業 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| みなし仕入率 | 90% | 80% | 70% | 60% | 50% | 40% |
| 主な該当事業 | 卸売業 | 小売業、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業) | 鉱業、建設業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業、農林漁業(飲食料品の譲渡を除く)など | 飲食店業など(他の区分に該当しない事業) | 運輸通信業、金融・保険業、サービス業(飲食店業を除く) | 不動産業 |
2割特例(適用期間・要件・計算)
2割特例は、インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者になった小規模事業者の負担を軽くする経過措置です。納める消費税額を「売上にかかる消費税額の2割」とできるため、計算が簡単で、多くの小規模事業者にとって納税額を抑えやすい方法です。事前の届出は不要で、申告時に確定申告書へ2割特例の適用を受ける旨を付記すれば適用できます。
計算は「売上・収入にかかる消費税額(売上税額)× 2割 = 納税額」で求められます。ただし、インボイス登録とは関係なく課税事業者になる事業者は対象外です。具体的には、基準期間または特定期間の課税売上高(特定期間は給与等支払額でも可)が1,000万円を超える場合や、資本金1,000万円以上の新設法人などが該当します。一般課税・簡易課税のどちらを選んでいても適用できます。
2割特例を適用できる期間は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間となります。
出典:2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要|国税庁(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/202304/01.htm)
注意したいのは、2割特例が期間限定の措置である点です。個人事業主は令和8年分の申告が2割特例を使える最後の年で、令和9年・令和10年分の申告については、後継の負担軽減措置である「3割特例」(納税額を売上税額の3割とする経過措置)が設けられています。適用できる年や要件は改正で変わるため、申告前に国税庁の最新情報を確認してください。
出典・参考資料(3件)
【ケース別】自分はどの計算方法を選ぶべき・どれが有利か
3つの計算方法のうち、どれを使えるか・どれが有利かは、課税売上高や事業の状況によって変わります。使える条件と向いているケースを整理すると、次のとおりです。
| 計算方法 | 2割特例 | 簡易課税 | 一般課税 |
|---|---|---|---|
| 使える条件 | インボイスを機に課税事業者になった小規模事業者(基準期間の課税売上高1,000万円以下など)。令和8年9月30日を含む課税期間まで(個人は令和8年分まで) | 基準期間の課税売上高5,000万円以下+事前に選択届出 | すべての課税事業者(原則) |
| 計算の考え方 | 売上の消費税額 × 2割 | 売上の消費税額 ×(1−みなし仕入率) | 売上の消費税額 − 仕入れ等の消費税額 |
| 向いているケース | 事前届出が不要で計算も簡単。仕入れの少ない事業では納税額を抑えやすい | 仕入れが少なく、みなし仕入率が実際の仕入率より高い業種。事務負担を抑えたい場合 | 設備投資などで仕入税額が大きく、還付が見込まれる場合 |
具体的な数字で見てみましょう。サービス業(簡易課税では第5種・みなし仕入率50%)で、課税売上が1,100万円(うち消費税100万円)、仕入れ・経費にかかった消費税が30万円のケースでは、計算方法ごとの納税額の目安は次のようになります(軽減税率対象外・標準税率10%で試算)。
| 計算方法 | 一般課税 | 簡易課税(第5種・みなし仕入率50%) | 2割特例 |
|---|---|---|---|
| 計算 | 100万円 − 30万円 | 100万円 ×(1−50%) | 100万円 × 20% |
| 納税額の目安 | 70万円 | 50万円 | 20万円 |
このケースでは2割特例の納税額が最も小さくなります。仕入れが少ない事業では簡易課税や2割特例が有利になりやすい一方、設備投資などで仕入れの消費税が大きい年は、実際の仕入税額を控除できる一般課税のほうが有利(場合によっては還付)になることもあります。
選ぶ際の目安は、まずインボイスを機に課税事業者になった小規模事業者なら、届出不要で計算が簡単な2割特例が使えるかを確認します。2割特例が使えない、または期間が終わった場合は、仕入れの状況に応じて簡易課税(仕入れが少ない事業に有利なことが多い)か一般課税(仕入税額が大きく還付が見込める場合に有利)を比べます。どちらが有利かは実際の売上・仕入れで変わるため、両方の納税額を試算して判断すると確実です。

消費税申告に必要な書類(計算方法別の申告書・付表)
次に、申告の際に提出する書類を確認します。消費税の確定申告では、申告書(第一表・第二表)に加えて、計算方法に応じた付表を添付します。
申告書(第一表・第二表)と付表の構成
消費税及び地方消費税の確定申告書は、最終的な納税額を記載する第一表と、その内訳(課税標準額など)を示す第二表で構成され、両方を提出します。実務上は、付表で税率ごとの消費税額を計算し、その結果を第二表で課税標準額・税額として整理したうえで、第一表に集約して納税額を確定する流れになります。
第一表は、簡易課税制度を選択していない場合に使う「一般用」と、選択している場合に使う「簡易課税用」に分かれています。付表は、税額計算の過程を示す添付書類で、計算方法ごとに使う様式が決まっています。
出典・参考資料(1件)
- 出典:消費税及び地方消費税の申告等(Q28)|国税庁(リンク)
計算方法別の付表対応
計算方法ごとに提出する申告書と付表の対応は、次のとおりです。どの様式を使うかは適用する税率(軽減税率の有無)によっても変わるため、詳細は国税庁の様式ページで確認してください。
| 計算方法 | 一般課税 | 簡易課税 | 2割特例 |
|---|---|---|---|
| 使う申告書(第一表) | 一般用 | 簡易課税用 | 一般用/簡易課税用 |
| 主な付表 | 付表1-3(税率別消費税額計算表)/付表2-3(課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表) | 付表4-3(税率別消費税額計算表)/付表5-3(控除対象仕入税額等の計算表) | 付表6(税率別消費税額計算表〔小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置を適用する課税期間用〕) |
帳簿や請求書の保存についても、計算方法によって扱いが異なります。一般課税で仕入税額控除を受ける場合は、仕入れに関する帳簿と適格請求書(インボイス)の保存が必要です。一方、2割特例や簡易課税を適用する場合は、消費税の計算上はインボイスの保存は求められません。ただし、所得税法上の帳簿書類としての保存義務はいずれの場合も残ります。
また、メールやクラウドで電子データとして受け取った請求書・領収書は、2024年1月から電子帳簿保存法に沿った電子保存が義務づけられています。消費税の帳簿・書類をどの形式で・どの要件で保存すればよいかは、次の記事で保存区分ごとに確認できます。
消費税の申告方法(e-Tax・窓口・郵送)と納税のしかた
作成した申告書は、e-Tax(電子申告)・税務署の窓口・郵送のいずれかで、納税地を所轄する税務署へ提出します。それぞれの特徴は次のとおりです。
- e-Tax(電子申告):自宅やオフィスから提出でき、添付書類の一部を省略できます。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」では、画面の案内に沿って金額を入力すると税額が自動計算され、そのままe-Taxで申告できます。会計ソフトから直接e-Taxで送信することも可能です。
- 税務署の窓口:所轄の税務署へ申告書を持参して提出します。その場で収受印を受け取れます。
- 郵送:所轄の税務署へ申告書を郵送します。控えに収受日付の確認を希望する場合は、返信用封筒を同封します。
国税庁ホームページ「確定申告書等作成コーナー」では、画面の案内に沿って金額等を入力することにより、税額などが自動計算され、消費税及び地方消費税の確定申告書等を作成し、e-Taxによる申告ができます。
出典:消費税及び地方消費税の申告等(Q23)|国税庁(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/qa/08.htm)
納税の方法も複数あります。振替納税やダイレクト納付、インターネットバンキング、クレジットカード納付、スマホアプリ納付のほか、コンビニ納付(QRコード・バーコード)、金融機関や税務署の窓口での納付が選べます。納税の期限は申告期限と同じため、申告と合わせて期限内に納めるようにします。
期限後のペナルティと中間申告
ここでは、申告・納税に関して見落としやすい2つの注意点を確認します。1つは期限に遅れた場合のペナルティ、もう1つは一定の事業者に求められる中間申告です。性質の異なる論点なので、分けて押さえておきましょう。
期限後・無申告のペナルティ(無申告加算税・延滞税)
申告期限までに申告しなかった場合は、本来の税額に加えて無申告加算税がかかります。税務署の調査通知より前に自主的に期限後申告をすれば割合は軽減され(おおむね5%)、一定の要件(法定申告期限から1か月以内の自主申告など)を満たせば課されないこともあります。
調査の通知後に期限後申告をした場合は、無申告加算税の割合が高くなります。令和6年1月以降に申告期限が到来する分では、納付税額のうち50万円までが10%、50万円超300万円までが15%、300万円超が25%が目安です(調査による決定後はさらに高くなります)。無申告加算税は国税に共通するルール(国税通則法)にもとづき、消費税の申告にも適用されます。
また、納付が期限に遅れると、法定納期限の翌日から納付日までの日数に応じて延滞税が課されます。延滞税の割合は年ごとに変わり、2026年(令和8年)は納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、それ以降が年9.1%が目安です。これらの割合は年や状況によって変わるため、実際の金額は国税庁の最新情報で確認してください。
中間申告が必要になる場合(前課税期間の消費税額48万円超)
直前の課税期間(個人は前年、法人は前事業年度)の消費税の年税額が48万円を超える事業者は、確定申告とは別に中間申告が必要です。この48万円は地方消費税を含まない国税分の消費税額で判定します。年税額に応じて中間申告の回数は年1回・3回・11回と変わります。
中間申告は期限に遅れたことへのペナルティではなく、前期の納税額が一定以上の場合に税額を分けて前払いする仕組みです。該当する場合は、確定申告とは別のスケジュールで納付が発生する点を押さえておきましょう。
出典・参考資料(1件)
- 出典:No.6609 中間申告の方法|国税庁(リンク)
消費税申告でつまずきやすいポイントと対策
実務で消費税の申告につまずく原因の多くは、日々の記帳の段階にあります。申告書の作成時にまとめて処理しようとすると、負担が大きくなり誤りも生じやすくなります。
特に多いのが、取引ごとの税区分(標準税率・軽減税率・課税対象外・非課税など)の判断が曖昧なまま帳簿が積み上がり、申告書の数字と合わなくなるケースです。インボイス制度の開始後は、受け取った請求書が適格請求書かどうかの確認も日次業務に組み込む必要があります。日々の記帳で税区分を正しく入力し、売上・仕入れの消費税が自動で集計される状態をつくっておくと、申告書作成時の手戻りを減らせます。
こうした日々の集計と申告書作成の負担を軽くする方法として、次の章では会計ソフトの活用を紹介します。
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消費税の申告をスムーズに進めるには(会計ソフトの活用)
消費税の申告をスムーズに進めるうえで有効なのが、クラウド会計ソフトの活用です。日々の記帳で取引ごとの税区分を記録すれば、売上・仕入れの消費税が自動で集計され、消費税集計表や申告に必要なデータを作成できます。ソフトによっては、消費税の申告書や付表の作成、e-Taxでの電子申告まで対応するものや、専用の申告ソフトと連携してデータを引き継げるものもあります。
ここでは、消費税の集計から申告書作成・電子申告までを支える会計ソフトと、記帳から申告まで任せられる代行サービスを紹介します。対応範囲はソフトやプランによって異なるため、消費税申告書の作成や電子申告が必要な場合は、対象プランを確認してください。自力で進めるか専門家に任せるかの選び分けは、最後の項で整理します。
| サービス名 | Tenbook(テンブック) | 弥生会計 Next | freee会計 | マネーフォワード クラウド会計 | 勘定奉行クラウド |
|---|---|---|---|---|---|
| 提供形態 | 記帳・決算・申告の代行(ソフト付き) | 自分で使うクラウド会計ソフト | 自分で使うクラウド会計ソフト | 自分で使うクラウド会計ソフト | 自分で使うクラウド会計ソフト |
| 対象事業形態 | 法人中心 | 法人のみ(個人は別製品) | 法人・個人事業主 | 法人(個人は別サービス) | 法人(中小企業向け) |
| 消費税集計・税区分表 | ●専門家が対応 | ● | ● | ● | ● |
| 消費税申告書の作成 | ●専門家が代行 | △「消費税の達人」連携で作成(全プラン) | ●個人はスタンダード以上で作成 | ●ビジネスプランで作成 | ●製品内で作成 |
| 電子申告(e-Tax) | △申告は専門家が代行 | △連携ソフト(消費税の達人)経由で申告 | ●対象プランでe-Taxに対応 | △e-Tax用ファイルを出力して申告 | ●電子申告・電子納税に対応 |
| 料金の目安 | 月額29,500円〜(免税事業者)/44,500円〜(課税事業者) | 月額2,900円〜(エントリー年契約・税抜) | 月額980円〜(個人)/2,980円〜(法人・年払い税抜) | 月額2,480円〜(ひとり法人・年払い税抜) | 月額7,750円〜(Eシステム・年額換算税抜) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る |
※ 2026年10月時点の各社公式情報にもとづきます。最新の料金・対応機能は各社公式サイトでご確認ください。
それぞれのサービスの特徴を紹介します。
1. Tenbook(シンアカウンティングサービス株式会社)

記帳から決算書・申告書の作成までをまとめて任せられるのが、シンアカウンティングサービス株式会社のTenbook(テンブック)です。会計ソフトの導入だけでなく、専門家チームが日々の記帳・決算・消費税を含む申告まで一気通貫で対応するため、経理の担当者がいない創業期や小規模の法人に向いています。
原則3名のチーム制で品質と安定性を確保し、数字が正しく積み上がる状態をつくったうえで決算・申告まで責任を持つ点が特徴です。料金は、免税事業者で月額29,500円、課税事業者で月額44,500円が目安で(2026年10月時点)、取引量が多い場合は内容に応じた個別見積もりになります。「消費税の申告まで含めて任せたい」というニーズに応えるサービスです。
2. 弥生会計 Next(弥生株式会社)

弥生会計 Nextは、弥生株式会社が提供する法人向けのクラウド会計ソフトです。銀行口座やクレジットカードの明細を取り込んで自動で仕訳を作成し、取引に税区分を設定することで消費税の集計まで行えます。科目別の税区分表を出力でき、申告に向けたデータ整理がしやすい点が強みです。
消費税の申告書そのものは、連携する税務申告ソフト「消費税の達人」などへデータをエクスポートして作成する流れが基本です。達人シリーズとの連携は全プランで利用できます。また、弥生会計 Nextは法人向けで、個人事業主は弥生の確定申告ソフトなど別製品が案内されています。まずは資料で、自社の運用に合うかを確認するとよいでしょう。
3. freee会計(フリー株式会社)

簿記の知識が少なくても、質問に答える形式で取引を登録できるのがfreee会計です。提供元のフリー株式会社は法人向けと個人事業主向けのそれぞれにプランを用意しており、消費税の集計から申告までを自己完結しやすいのが特徴です。インボイスを機に課税事業者になった個人事業主にとって、申告のハードルを下げやすいサービスといえます。
個人事業主向けでは、対象プラン(スタンダード以上)で消費税申告書を作成でき、電子申告の機能を使ってe-Taxで提出まで進められます。消費税申告書の作成や電子申告の対応はプランによって異なるため、申込み前に対象プランを確認するのがおすすめです。
4. マネーフォワード クラウド会計(株式会社マネーフォワード)

明細の自動取得と仕訳の自動化を強みとするのが、株式会社マネーフォワードのマネーフォワード クラウド会計です。ひとり法人・中小企業向けで、決算書や残高試算表に加えて消費税集計表も自動で作成できます。請求書・経費・給与など複数のバックオフィス機能と連携して使える点も特徴です。
消費税の申告書作成機能は上位の「ビジネス」プランで利用できます。日々の仕訳で税区分を正しく積み上げておけば、集計から申告書作成までをソフト内で進めやすくなります。利用できる機能はプランによって差があるため、消費税申告書の作成が必要な場合は対象プランを確認してください。
5. 勘定奉行クラウド(株式会社オービックビジネスコンサルタント)

中堅・中小企業の経理実務に対応するクラウド会計ソフトが、勘定奉行クラウドです。提供元は奉行シリーズを手がける株式会社オービックビジネスコンサルタント(OBC)で、勘定科目や部門ごとに消費税の区分をあらかじめ設定しておくことで、税額計算を自動化できます。
消費税申告書の作成に加え、電子申告・電子納税の機能を製品内に備えており、集計から申告・納税までを一つのソフトで完結させやすいのが特徴です。インボイス制度や電子帳簿保存法への対応も進めており、法対応を重視する企業に向いています。
自力で申告するか税理士に依頼するか
消費税の申告は、会計ソフトを使って自力で行うことも、税理士に依頼することもできます。取引量が少なく、2割特例や簡易課税で計算がシンプルな場合は、会計ソフトで自己完結しやすく、費用を抑えられます。
一方、取引が多く税区分の判断が複雑な場合や、一般課税で正確な仕入税額控除を行いたい場合、記帳から申告まで手が回らない場合は、税理士や記帳代行サービスへの依頼が選択肢になります。自社の取引量・経理体制・コストを踏まえて、会計ソフトでの自力申告と専門家への依頼を比べて選ぶとよいでしょう。
ここで取り上げたのは消費税申告に対応する会計ソフトの一部です。個人事業主向けから中堅企業向けまで、事業規模やタイプから会計ソフトを広く比較して選びたい場合は、料金や選び方の基準をまとめた次の記事が参考になります。
まとめ
消費税の申告は、まず自分が課税事業者かを判定し、申告期限(個人は翌年3月31日、法人は課税期間終了翌日から2か月以内)を押さえることから始まります。計算方法は一般課税・簡易課税・2割特例の3つがあり、使える条件と有利不利を踏まえて選びます。計算方法に応じた申告書・付表を作成し、e-Taxや窓口・郵送で提出して納税します。
インボイス制度の影響で初めて消費税を納める場合は、早めに使える計算方法を確認し、日々の記帳を整えておくと申告がスムーズです。会計ソフトの活用も含めて、自社に合った進め方を選びましょう。ただし、税率や特例の適用要件は改正で変わることがあるため、申告の前に国税庁の最新情報を確認してください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 消費税申告とは何ですか?
A. 消費税申告とは、事業者が売上とともに預かった消費税から、仕入れや経費で支払った消費税を差し引いた金額を計算し、国に申告・納付する手続きです。「もうけ(所得)」にかかる所得税の確定申告とは別の手続きで、個人事業主は所得税とは申告書も提出期限も分けて行う必要があります。課税事業者になった人が、1年分の取引をもとに最終的な納税額を確定させる手続きだと考えるとわかりやすいでしょう。
Q. 消費税の申告は赤字でも必要ですか?
A. 消費税の申告は、事業が赤字であっても、課税事業者であれば必要です。消費税は利益(もうけ)にかかる税金ではなく、預かった消費税と支払った消費税の差額に対して課される税金だからです。所得税は赤字なら納税が生じないことがありますが、消費税は赤字でも預かった消費税が支払った消費税を上回れば納税額が発生します。損益にかかわらず、課税事業者である限り申告義務がある点に注意してください。
Q. 売上が1,000万円を超えたら、いつから消費税の申告が必要になりますか?
A. 課税事業者になるかどうかは、原則としてその年(事業年度)の前々年・前々事業年度にあたる「基準期間」の課税売上高で判定するため、売上が1,000万円を超えた年のおおむね2年後の申告から消費税の納税義務が生じます。たとえば個人事業主が2024年に初めて1,000万円を超えた場合、基準期間の判定では2026年分から課税事業者になるのが原則です。
ただし、特定期間(個人は前年1〜6月)の課税売上高などが1,000万円を超える場合は翌年から課税事業者になることもあります。また、インボイス発行事業者として登録している場合は、売上規模にかかわらず登録期間中は課税事業者です。
Q. 消費税の申告期限を過ぎてしまったらどうなりますか?
A. 消費税の申告が期限に遅れると、本来の税額に加えて無申告加算税がかかり、納付が遅れた場合はさらに延滞税が課されます。税務署の調査通知より前に自主的に期限後申告をすれば割合は軽減され、法定申告期限から1か月以内の自主申告など一定の要件を満たせば無申告加算税が課されないこともあります。加算税・延滞税の具体的な割合は年や状況によって変わるため、実際の金額や要件は国税庁の最新情報で確認してください。
Q. 消費税の申告書は会計ソフトだけで作成・提出できますか?
A. 対応している会計ソフトを使えば、消費税の集計から申告書の作成、e-Taxでの提出まで会計ソフトだけで完結できる場合があります。ただし対応範囲はソフトやプランによって異なり、消費税集計までは全プランで可能でも、申告書の作成や電子申告は上位プランや連携する申告ソフトが必要なケースもあります。
取引量が少なく2割特例や簡易課税で計算がシンプルな場合は自力申告しやすい一方、取引が多く税区分の判断が複雑な場合は税理士への依頼も選択肢です。申込み前に、消費税申告書の作成・電子申告に対応するプランかを確認するとよいでしょう。
Q. 消費税の申告書の数字が合わないときは、どこを確認すればよいですか?
A. 消費税の申告書の数字が合わない原因の多くは、日々の記帳での税区分(標準税率・軽減税率・非課税・課税対象外など)の入力のばらつきにあるため、まずは取引ごとの税区分が正しく設定されているかを確認します。同じ種類の取引で税区分が揺れていないか、インボイス制度の開始後は受け取った請求書が適格請求書かどうかの判定が帳簿に反映されているかも確認ポイントです。
それでも差異が残る場合は、会計ソフトの消費税集計表と申告書の数字を突き合わせ、税率区分ごとにどこでずれているかを確認します。課税売上割合の計算や、売上・仕入れの計上時期のずれも、数字が合わない原因になりやすいポイントです。
Q. 納めるための消費税は、どのように準備しておけばよいですか?
A. 売上とともに受け取った消費税は一時的に預かっているお金であり、申告時に納める原資として手元に残しておく必要があります。預かった消費税を事業の運転資金として使い込んでしまうと、申告期限に納税資金が不足しがちです。
売上の消費税分を別口座に取り分けておく、会計ソフトの消費税集計表で納税見込み額を期中からこまめに把握しておくといった備えが有効です。前課税期間の年税額が48万円を超える事業者は中間申告による前払いも生じるため、資金繰りに織り込んでおくと安心です。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















