経理の作業に経営者や担当者の時間が取られてしまう、経理が一人に集中していて退職されたら業務が止まる、インボイス制度や電子帳簿保存法への対応に追いつかない。こうした悩みを抱えて「経理代行に任せると、実際のところ何が良くなるのか」を確かめたい方に向けて、経理代行サービスのメリットを整理します。
経理代行は、記帳や請求・支払、給与計算、月次決算といった日々の経理業務を外部の専門会社に委託するサービスです。本記事では、経理代行で得られるメリットを漏れなく示したうえで、デメリットと対策、任せられる業務の範囲、費用の目安までを順番に解説し、「自社は経理代行に頼む価値があるのか」「頼むなら何を・いくらで任せるのか」を自分で判断できるようにします。
目次
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経理代行サービスのメリット一覧
はじめに、経理代行を導入することで得られるおもなメリットを6つにまとめます。いずれも「経理担当者の時間」「人件費」「業務の安定性」のいずれかに効くもので、自社のどの課題に刺さるかという視点で読み進めてください。
- 本業・コア業務に集中できる:日々の定型作業を手放し、経営者・担当者の時間が社内に戻る
- 人件費・採用・教育・システムの費用を抑えられる:人を抱える固定費を、委託量に応じた費用に置き換えられる
- 属人化・退職で業務が止まるリスクを解消できる:チーム体制で、担当者が交代しても業務が継続する
- 制度改正に対応してもらえる:インボイス制度や電子帳簿保存法への対応を社内で追わなくても済む
- 正確性が上がり、ミス・不正を防げる:複数人のチェックと権限分離で、誤りと不正を抑えられる
- 繁忙期・決算期の業務負荷を平準化できる:繁忙期でも処理が滞りにくく、月次試算表も早く受け取れる
経営者・担当者が本業やコア業務に集中できる
記帳・仕訳入力、請求書の発行、振込、経費精算といった日々の定型作業を委託すれば、その分の時間が社内に戻ります。経営者が経理作業に追われて事業の意思決定や営業に手が回らない、担当者が入力作業で月末に残業するといった状態から抜け出し、本来注力すべき業務に時間を振り向けられます。
委託後に社内に残るのは、データを決まった場所に渡すことと、仕上がった成果物を確認することが中心になります。手を動かす作業そのものを手放せる点が、経理代行の最も直接的なメリットです。
人件費・採用・教育・システムの費用を抑えられる
経理担当者を1人雇うと、給与に加えて社会保険料の会社負担分、採用や教育にかかる費用、会計ソフトや周辺システムの維持費が継続的に発生します。経理代行は委託した業務量に応じた費用で済むため、固定費として人を抱えるより支出を変動費に近づけられます。
繁忙期だけ業務量が増えるような場合でも、必要な範囲を切り出して委託できるため、閑散期にも人件費を払い続ける無駄を避けやすくなります。費用の具体的な比較は、後述の費用相場と損得比較で詳しく扱います。
経理の属人化・退職で業務が止まるリスクを解消できる
経理を社内の一人に任せていると、その担当者にしか処理の手順がわからない状態になりがちです。急な退職や休職が起きると業務が止まり、引き継ぎもできないという事態に陥ります。
経理代行の多くはチームで業務を担当し、手順もマニュアル化されています。担当者が交代しても業務が継続する体制になるため、属人化と退職リスクを同時に軽減できます。
退職や属人化にまつわる悩みは、実際に経理代行の導入理由として多く挙がります。こうした相談の実態と、自社で経理人材を採用した場合のコスト負担について、経理アウトソーシングを提供する株式会社Wheatの佃誠吾氏は次のように話します。

最近特に多いご相談は、「急な退職で経理が止まってしまった」「担当者にしかやり方がわからない」といった、退職と属人化にまつわる切実な課題です。自走できる経理人材を新たに採用する場合、年収600万〜700万円程度の費用負担が生じるだけでなく、採用後の教育や管理負担も決して軽くはありません。中小企業にとって、これほどの人件費を「固定費」として抱え続けることは、経営上の大きなリスクになりかねません。
インボイス制度・電子帳簿保存法などの制度改正に対応してもらえる
税制や会計関連の制度は頻繁に変わります。インボイス制度(適格請求書等保存方式)や電子帳簿保存法への対応を社内だけで追い続けるのは負担が大きく、対応漏れは税務上のリスクにもつながります。
経理の実務を専門とする委託先は、こうした制度変更を前提に業務フローを組み替えて対応します。社内で改正内容を逐一調べ直さなくても、最新のルールに沿った処理を維持しやすくなる点はメリットの一つです。
専門チームによるチェックで正確性が上がり、ミスや不正を防げる
一人で経理を回していると、入力ミスや処理の誤りに気づきにくく、第三者の目も入りません。経理代行では複数人のチェック体制で処理を進める委託先が多く、数字の誤りを早い段階で発見しやすくなります。
担当者と承認者を分ける運用により、社内の一人に現金や振込の権限が集中することも避けられます。結果として、記帳の正確性が高まるとともに、不正が起きにくい仕組みを外部の力で整えられます。
繁忙期・決算期の業務負荷を平準化できる
月末の支払処理や決算期の作業は、特定の時期に負荷が集中します。社内の人員だけで対応しようとすると残業や処理の遅れが発生しがちです。
経理代行に定型業務を任せておけば、繁忙期でも処理が滞りにくくなります。月次試算表を早いタイミングで受け取れる委託先を選べば、経営や資金繰りの状況を早く把握できるようになり、意思決定のスピードにもつながります。
経理代行のデメリット・注意点と対策
メリットの裏には注意点もあります。良い面だけで判断せず、デメリットと対策をあわせて確認しておくことで、導入後の後悔を避けられます。ここでは、社内運用と比べて押さえておきたい5つの注意点を、それぞれの対策とともに整理します。
社内に経理のノウハウが蓄積されにくい
業務を外部に任せきりにすると、経理の処理手順や判断の勘所が社内に残りにくくなります。将来的に内製へ戻したいと考えたときに、ゼロから体制を作り直す必要が出てきます。
対策としては、委託先と定期的な報告会を設けて処理内容を共有してもらう、業務フローや判断基準をマニュアルとして社内にも残してもらうといった運用が有効です。数字の意味を社内で把握できる状態を保てば、ノウハウの空洞化を抑えられます。
情報漏洩のリスクがある
経理代行では、売上や取引先の情報、口座情報、従業員の給与といった機密情報を外部と共有します。委託先の管理体制が不十分だと、情報漏洩のリスクはゼロにはなりません。
対策として、契約前に秘密保持契約(NDA)を結ぶこと、プライバシーマークやISMS(情報セキュリティマネジメントシステム、国際規格はISO/IEC 27001)といった第三者認証の取得状況を確認することが挙げられます。データの受け渡し方法やアクセス権限の管理方針も、あわせて確かめておきます。
委託コストが発生し、業務量によっては割高になる
当然ながら、経理代行には委託費用がかかります。取引件数が少ない、あるいは経理をすでに社内で効率よく回せている場合は、自社で処理したほうが安く済むこともあります。
対策は、すべてを丸ごと任せるのではなく、負担の大きい業務だけを切り出して委託する範囲を調整することです。自社で経理担当者を雇う場合の費用と見比べたうえで、委託範囲を決めると無駄が出にくくなります。
緊急・即時の対応が遅れる場合がある
社内の担当者であればその場で確認できることも、外部委託では連絡を介するため、急な依頼や突発的な対応には時間差が生じることがあります。
対策として、緊急時の連絡手段や対応範囲、処理のスケジュールを契約時に明文化しておきます。判断が必要な業務は社内に残し、定型業務を委託するという役割分担にしておくと、スピードが必要な場面でも支障が出にくくなります。
委託範囲が曖昧だと対応漏れが起きる
「経理をまとめて任せたつもりが、年末調整や決算は範囲外だった」というように、委託範囲の認識がずれていると、対応漏れや追加費用の原因になります。
対策は、契約前にどの業務をどこまで任せるかを一覧で明文化し、社内に残る作業を事前に棚卸ししておくことです。とくに後述する税務申告のように、委託先では対応できない業務があるため、線引きを最初に確認しておくことが重要になります。
これらのデメリットが実際のトラブルにつながった事例や、委託先選びでつまずきやすいポイントを先に知っておくと、導入後の「思っていたのと違った」を避けやすくなります。よくある失敗とその回避策は、以下の記事で具体的に解説しています。
経理アウトソーシング「やめとけ」の真相。よくある失敗事例3選と業者の選び方
「経理のアウトソーシングに興味はあるけれど、失敗したらどうしよう…」そんな不安を抱えていませんか? 人手不足や担当者の退職などを背景に、経理業務の外部委託は魅力的な選択肢ですが、「やめた方がいい」という声を耳にして迷う方も多いでしょう。 本…
そもそも経理代行とは?記帳代行・税理士との違い
メリットとデメリットを押さえたところで、経理代行の輪郭と、混同しやすい近接サービスとの違いを整理します。「記帳代行」「税理士」とは対応できる範囲が異なり、ここを理解しておくと委託先選びがぶれません。
経理代行は、記帳から請求・支払、給与計算、月次決算まで、日々の経理業務を幅広く代行するサービスです。これに対し記帳代行は仕訳入力や帳簿作成に範囲を絞ったサービスで、税理士(税理士法人・会計事務所)は税務申告や税務相談を専門とします。それぞれの役割の違いを一覧にすると次のとおりです。
経理代行・記帳代行・税理士の役割の違い
| 区分 | おもな対応範囲 | 税務申告の可否 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 経理代行 | 記帳・請求・支払・経費精算・給与計算・月次決算など日常の経理実務を幅広く代行 | 不可(提携する税理士と連携して対応) | 日々の経理業務全体を外に出したい |
| 記帳代行 | 仕訳入力・帳簿作成が中心 | 不可 | 記帳だけを切り出して任せたい |
| 税理士・会計事務所 | 税務申告・税務相談・税務書類の作成(記帳代行を兼ねる事務所もある) | 可(独占業務) | 決算・申告や節税の相談をしたい |
経理代行と税理士は競合する関係ではなく、役割を分担して併用できます。日々のオペレーションを経理代行が内側から支え、決算・税務申告を税理士が担うという組み合わせが一般的です。
経理代行に任せられる業務の範囲と、税理士にしか頼めない業務
ここからは、経理代行に「任せられる業務」と「頼めない業務」を具体的に整理します。この線引きを最初に押さえておかないと、委託後に「その業務は別料金・別業者」と気づく事態になりかねません。

経理代行に任せられる業務の範囲(記帳から決算まで)
経理代行で任せられるおもな業務は、日々の記帳・仕訳入力から月次の処理までの幅広い範囲に及びます。委託先によって対応範囲は異なりますが、一般的に依頼できる業務は次のとおりです。
- 記帳・仕訳入力、帳簿作成
- 売掛金・買掛金の管理
- 請求書の発行・送付、入金消込
- 支払・振込の代行(作成まで。承認・実行は自社に残す運用が一般的)
- 経費精算の処理
- 給与計算・賞与計算
- 月次決算・試算表の作成
- 決算・申告の資料作成サポート(申告そのものは税理士が実施)
記帳や財務書類の作成、給与計算の計算事務は、税理士の資格がない会社でも代行できます。日々の経理業務の大半は経理代行に任せられると考えてよいでしょう。
税理士にしか頼めない業務(独占業務の線引き)
一方で、税務にかかわる業務は税理士の独占業務とされ、税理士資格を持たない経理代行業者には依頼できません。税理士法では、税理士の業務を「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」の3つと定めています。
(税理士の業務)第二条 税理士は、他人の求めに応じ、租税(略)に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする。
出典:税理士法 第二条第一項|e-Gov法令検索
一 税務代理(略)
二 税務書類の作成(略)
三 税務相談(略)
また、税理士法第52条は、税理士または税理士法人でない者が税理士業務を行うことを禁じています。法人税や消費税などの税務申告、税務相談、年末調整のうち税務書類の作成にあたる部分は、税理士でなければ代行できません。
(税理士業務の制限)第五十二条 税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない。
出典:税理士法 第五十二条|e-Gov法令検索
この制限に違反した場合、税理士法第59条により2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が定められています。そのため、決算・税務申告まで一括で任せたい場合は、税理士が在籍する、あるいは税理士と連携している経理代行を選ぶ必要があります。多くの経理代行は、提携する税理士と連携することで決算・申告まで対応できる体制を整えています。
出典・参考資料(1件)
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経理代行の費用相場と、自社で雇う場合との損得比較
経理代行を検討するうえで欠かせないのが「いくらかかるのか」と「自社で雇うのと比べて得なのか」という視点です。費用という一つの判断軸を、業務別の相場と、自社雇用との損得比較の2つの角度から見ていきます。
業務別の費用相場(目安)
経理代行の料金は、月額基本料に加えて、仕訳数や従業員数に応じた従量部分で決まるのが一般的です。業務別のおおよその相場(2026年10月時点の目安)は次のとおりです。金額は仕訳数・従業員数・契約内容によって変わるため、実際の費用は見積もりで確認してください。
| 業務 | 費用相場の目安 | 料金の決まり方 |
|---|---|---|
| 記帳代行 | 月額1万円〜3万円程度 | 月間仕訳数(100件〜400件超)に応じて増加 |
| 給与計算代行 | 基本料月額1万円〜3万円+従業員1人あたり月1,000円〜2,000円程度 | 従業員数に応じて加算 |
| 年末調整 | 基本料2万円前後+従業員1人あたり3,000円〜5,000円程度 | 年1回・従業員数に応じて加算 |
| 決算・税務申告 | 経理代行会社で10万円〜20万円程度、税理士事務所で15万円〜25万円程度 | 年1回。税務申告は税理士が実施 |
| 経理業務の一括委託 | 月額5万円〜20万円程度 | 委託する業務範囲・業務量に応じる |
各社が公開する料金・相場情報を横断した目安です。実際の金額は委託範囲・業務量・契約条件により変動します。
記帳だけを切り出せば月1万円台から始められますが、記帳・請求・支払・給与計算までまとめて任せると月額数万円から十数万円が目安になります。各サービスの具体的な料金は、後述のおすすめの委託先で確認できます。
記帳だけを安く切り出して任せたい場合は、記帳代行という選択肢もあります。1仕訳あたりの料金相場や、税理士に頼む場合との違いは、以下の記事で詳しく比較しています。
記帳代行サービス比較23選|1仕訳あたりの料金相場と、税理士に頼む場合との違い
領収書と通帳の束を前に、仕訳入力だけが毎月あとに回っていませんか。簿記の分かる人を採用するほどの業務量ではない一方、自分で入力していると月次が締まらない。この「記帳だけ」の負担を外に出す手段が記帳代行サービスです。 ただ、各社の料金は1仕訳…
自社で経理を雇う場合との損得比較
経理代行が得かどうかは、自社で経理担当者を雇う場合の総コストと比べると判断しやすくなります。経理担当者の年収は400万〜600万円程度が目安で、即戦力となる自走できる人材では600万〜700万円程度になることもあります。これに社会保険料の会社負担分(給与の約15%が目安)や、採用・教育の費用、会計ソフトの維持費が継続的に加わります。
| 項目 | 自社で経理担当者を雇う場合 | 経理代行に委託する場合 |
|---|---|---|
| おもな費用 | 給与(年収の目安400万〜600万円)+社会保険料の会社負担(給与の約15%)+採用・教育費+システム維持費 | 委託した業務量に応じた月額費用 |
| 費用の性質 | 固定費(業務量が減っても発生) | 変動費に近い(範囲を調整できる) |
| 退職・休職リスク | 担当者の退職で業務が止まる | チーム体制で業務が継続しやすい |
| 繁閑への対応 | 閑散期も人件費が発生 | 必要な範囲だけ委託できる |
取引件数が多く経理の業務量が大きい企業では、専任者を雇ったほうが割安になることもあります。一方、経理をフルタイムで必要としない規模の企業では、委託のほうが総コストを抑えやすい傾向があります。どちらが得かは自社の取引量と委託範囲次第で逆転するため、自社の業務量を前提に見積もりを取って比較することをおすすめします。
自社採用と委託では、費用の性質以外にも違いがあります。オンラインアシスタント・BPO(業務プロセスの外部委託)を提供する株式会社ロコタビの浅井聖一氏は、自社で採用する場合との違いを立ち上げの速さとコストの観点から次のように述べています。

まず立ち上げ速度です。私たちにはノウハウやロールモデルの蓄積がありますので、契約から平均1週間程度で稼働開始できます。自社採用の場合は、人を採用して、構築して、検証してというプロセスが必要ですので、そこに大きな差があります。
次にコスト面です。ロコアシは変動費として利用できます。自社採用の場合は給与だけでなく社会保険料や各種税金など固定費がかかりますし、繁閑に応じた増減もできません。
ここまでの内容を踏まえると、経理代行が向いているのは次のような会社です。
- 経理の専任者を置きにくい小規模〜中小企業や、設立まもない会社
- 経理が一人に集中し、退職・休職で業務が止まるリスクを抱えている
- 経営者や担当者が経理作業に時間を取られ、本業に手が回っていない
- インボイス制度や電子帳簿保存法などの制度対応を社内で追うのが負担になっている
一方、取引件数が多くフルタイムの経理体制がすでに効率よく回っている会社や、ごく少額の記帳だけで足りる場合は、社内で続けたほうが割安なこともあります。自社がどちらに近いかを見極めたうえで、次の委託先選びに進んでください。
失敗しない経理代行の選び方と委託の進め方
ここからは、自社に合う委託先を見極めるためのポイントと、委託を始めるまでの進め方を解説します。
依頼先のタイプと選び分け
経理代行の依頼先は大きく3つのタイプに分かれ、得意な領域が異なります。自社が何を重視するかで選び分けます。
- 税理士事務所・会計事務所型:記帳から決算・税務申告まで一括で任せたい場合に向きます。税務の相談もあわせてしたい企業に適しています。
- 経理代行会社型:日々の経理実務を効率よく大量に処理したい場合に向きます。クラウド会計の導入支援や業務フローの設計まで担う会社もあります。
- オンラインアシスタント・BPO型:経理に限らずバックオフィス業務を小口から柔軟に委託したい場合に向きます。経理は対応業務の一部という位置づけが多く、対応範囲は個別の確認が必要です。
選定時には、次の点を自社の状況に当てはめて確認します。
- 委託したい業務に対応しているか:記帳だけなのか、給与計算や決算まで含むのかを明確にし、対応範囲が一致する委託先を選びます。
- 料金体系が明確で、業務量に見合うか:基本料と従量部分の内訳、オプションの料金を確認し、自社の業務量での総額を見積もります。
- セキュリティ・情報管理の体制が整っているか:秘密保持契約の締結可否と、プライバシーマークやISMS(ISO/IEC 27001)などの第三者認証の有無を確かめます。
- サポート・コミュニケーションが取りやすいか:連絡手段や対応時間、月次の報告の頻度を確認し、やりとりがスムーズに回るかを見ます。
委託開始までの進め方(導入ステップ)
委託開始までの流れは、委託先によって多少異なりますが、おおむね次のステップで進みます。
- 問い合わせ・無料相談:現状の経理体制・業務内容・課題を伝えます。
- ヒアリング・見積もり:委託する業務範囲と業務量をもとに料金の見積もりを受け取ります。
- 契約・業務設計:委託範囲を明文化して契約し、業務フローやデータの受け渡し方法を設計します。
- 運用開始:新しい業務フローで経理業務を開始します。立ち上げには数週間から1か月程度を見込む委託先が多く、初期は手順のすり合わせに時間をかけます。
経理代行を任せられるおすすめの委託先
ここからは、経理代行を任せられる具体的なサービスを紹介します。記帳から決算まで幅広く代行する経理代行会社のほか、経理まわりを含むバックオフィス全般を小口から任せられるオンラインアシスタント型も含むため、対応業務の範囲はサービスごとに異なります。まずは一覧で比較し、表の「対応業務の範囲」列もあわせて確認しながら、自社の委託したい業務と照らし合わせて検討してください。
| サービス名 | Tenbook(テンブック) | ロコアシ | Wheat Accounting | マネーフォワード おまかせ経理 |
|---|---|---|---|---|
| 提供タイプ | 会計・経理代行 (会計事務所系) | オンライン秘書・AI BPO | 経理アウトソーシング (経理代行会社) | 経理BPO (クラウド会計ベンダー系) |
| 月額料金(目安) | 29,500円〜(免税事業者) 43,500円〜(課税事業者) ※税別 | 45,000円〜(月10時間) ※税別 | 30,000円〜 (スモール・初年度キャンペーン価格) | 個別見積もり (例: 従業員5名で月10万円・税抜) |
| 初期費用 | 公式サイトに記載なし | 0円 | 初月のみ発生 (金額は見積時に提示) | 要問い合わせ |
| 対応業務の範囲 | 記帳・月次処理・決算書作成・税務申告書の作成 (給与計算・年末調整はオプション) | 請求書管理・経理データ処理など (記帳・決算の対応可否は要確認) | 記帳・請求書作成・経費精算・振込・給与計算・月次決算 (賞与計算・年末調整はオプション) | 記帳・請求・支払・給与計算・月次試算表の作成 (クラウド会計の導入支援も対応) |
| 税務申告の可否 | ●会計事務所(サン共同会計事務所)が実施(月額に申告書作成を含む) | ×税務は対象外 | △連携する税理士が対応 | △マネーフォワード公認メンバーの税理士を紹介 |
| 向くケース | 記帳から決算・申告まで一つの窓口でまとめたい中小企業・スタートアップ | 経理に限らずバックオフィス業務を小口から柔軟に任せたい | クラウド会計の導入と業務フロー設計から運用まで任せたい | マネーフォワード クラウドの導入から実務代行までワンストップで任せたい |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | オンライン相談を予約 |
1. Tenbook(テンブック)(シンアカウンティングサービス株式会社)

Tenbookは、公認会計士・税理士が代表を務めるシンアカウンティングサービス株式会社が、自社開発のクラウド会計ソフト「10book」を使って記帳から決算・税務申告までをオンライン完結で代行するサービスです。経理専任者を置かない中小企業・スタートアップ向けに、原則3名体制で全工程をダブルチェックしながら対応します。
月額料金に記帳・月次処理・決算書作成・法人税などの申告書作成まで含まれ、決算料は別途かからないと案内されています。料金は免税事業者で月額29,500円〜、課税事業者で月額43,500円〜(いずれも税別)が目安です。給与計算・賞与計算・年末調整はオプション扱いで、税理士法上の税務業務は会計事務所(サン共同会計事務所)が担当する建付けです。記帳から申告まで一つの窓口でまとめたい企業に向いています。
2. ロコアシ(株式会社ロコタビ)

「小さく始める幅広AI BPO」を掲げるロコアシは、株式会社ロコタビが運営するオンライン秘書・AI BPOサービスです。専任の生成AIディレクターが窓口となり、生成AIと専門人材を組み合わせて、経理をはじめ人事・総務・Web運用・リサーチなどのノンコア業務を幅広く代行します。
初期費用0円、月10時間45,000円(税別)のスモールプランから小さく始められ、未消化の時間は翌月へ繰り越せます。契約から平均1週間程度で稼働を開始できる立ち上げの速さも特徴です。
経理は対応業務の一つという位置づけで、請求書管理や経理データ処理などに対応します。記帳・決算など具体的な経理工程の対応可否は個別の確認が必要です。経理に限らずバックオフィス業務を小口から柔軟に任せたい企業に向いています。
3. Wheat Accounting(株式会社Wheat)

会計とITの両面に強みを持つ株式会社Wheatが手がけるWheat Accountingは、スタートアップ・中小企業向けの経理アウトソーシングサービスです。記帳・仕訳作成、請求書発行、売掛金管理、経費精算、振込対応、給与計算、月次決算までを月次の継続業務として代行します。クラウド会計の導入と業務フローの再設計を初期に行ったうえで運用まで担う点も特徴です。
料金は月額30,000円〜の定額プランで、依頼する業務量に応じて見積もりを受けます。税務申告は連携する税理士、社会保険・労働保険の手続きは連携する社労士と対応する体制です。顧客側に求められるのは「データを決まった場所に渡す」ことと「成果物を確認する」ことが中心で、経理の手を動かす作業を幅広く手放したい企業に向いています。45分の無料相談も用意されています。
4. マネーフォワード おまかせ経理(株式会社マネーフォワード)

マネーフォワード おまかせ経理は、株式会社マネーフォワードが提供する経理BPOサービスで、実務はグループ会社の株式会社キャシュモが担います。マネーフォワード クラウドの導入支援から、記帳・請求・支払・給与計算、月次試算表の作成までを一括で委託できます。
料金は業務内容に応じた個別見積もりで、公式の料金例として従業員5名規模で月額10万円(税抜)が示されています。月次試算表を最短5営業日で提供し、無料相談から運用開始まで最短2か月を目安に導入できると案内されています。決算申告などの税務業務は対象外で、必要な場合はマネーフォワード公認メンバーの税理士を紹介する形です。クラウド会計の導入から実務代行までをワンストップで任せたい企業に向いています。
ここでは代表的な委託先を取り上げましたが、対応業務の範囲や料金はサービスごとに幅があります。より多くの委託先を見比べて自社に合う1社を選びたい方に向けて、以下の記事では経理アウトソーシングの選び方とあわせて主要サービスを一覧で比較しています。
経理アウトソーシングおすすめ19選を比較|委託できる業務範囲・料金・タイプ別の選び方
経理担当者が一人に偏り、退職や産休で業務が止まってしまう。記帳や支払、経費精算といった定型作業に追われ、決算や資金繰りの分析に手が回らない。そんな悩みを抱える経営者や管理部門の方は少なくありません。 経理業務を外部の専門事業者に委託する「経…
まとめ
経理代行の最大のメリットは、経営者や担当者が経理作業から解放されて本業に集中できることです。あわせて、人件費や採用・教育コストの削減、属人化と退職リスクの解消、制度改正への対応、チェック体制による正確性の向上といった効果が期待できます。
一方で、社内にノウハウが残りにくい、情報漏洩のリスクがある、委託範囲が曖昧だと対応漏れが起きるといった注意点もあります。対策とあわせて確認し、税務申告は税理士の独占業務で代行業者には頼めないという線引きも押さえておけば、導入後のミスマッチを避けられます。費用は自社で経理担当者を雇う場合の総コストと比べ、自社の業務量に合うかを見積もりで確かめて判断するとよいでしょう。
自社に合う委託先を比較したい場合は、複数のサービスの資料をまとめて取り寄せ、対応範囲と料金を見比べることから始めてみてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 経理代行とは何ですか?
A. 経理代行とは、記帳・請求・支払・給与計算・月次決算といった日々の経理業務を、外部の専門会社に委託するサービスです。
自社で経理担当者を雇う代わりに、必要な業務を必要な範囲だけ外部に任せられるため、本業への集中や人件費の抑制、属人化の解消につながります。日常の経理実務を幅広く扱う点で、仕訳入力などに範囲を絞った記帳代行や、税務を専門とする税理士とは役割が異なります。
Q. 経理代行に決算・申告までまとめて頼めますか?
A. 経理代行に決算・申告までまとめて頼めるかは委託先によって異なり、税理士が在籍する、または税理士と提携している経理代行であれば、記帳から決算・税務申告まで一括で任せられます。
税務申告は税理士の独占業務のため、税理士資格を持たない経理代行業者だけでは申告まで完結できません。多くの経理代行は提携する税理士と連携して決算・申告まで対応できる体制を整えているので、一括で任せたい場合は税務申告までカバーできるかを契約前に確認しておきましょう。
Q. 経理代行に頼めない業務は何ですか?
A. 経理代行に頼めないのは、税務申告・税務相談・税務書類の作成といった税理士の独占業務です。
税理士法第2条・第52条により、これらの業務は税理士または税理士法人でなければ行えず、税理士資格を持たない経理代行業者に依頼することはできません。一方で、記帳・給与計算・月次決算といった日々の経理実務は資格がなくても代行できるため、税務部分だけは税理士(または税理士と提携した経理代行)に任せる形になります。
Q. 経理代行は最低いくらから頼めますか?
A. 経理代行は、記帳代行だけを切り出せば月額1万円台から始められます。
料金は月額基本料に、仕訳数や従業員数に応じた従量部分を加えて決まるのが一般的です。記帳・請求・支払・給与計算までまとめて任せると月額数万円から十数万円程度が目安になります。業務範囲を絞るほど費用は抑えられるため、まずは負担の大きい業務だけを委託して始める方法もあります。
Q. 経理代行は記帳代行とどう違いますか?
A. 経理代行と記帳代行の違いは対応範囲の広さにあり、経理代行は記帳から請求・支払・給与計算・月次決算まで日常の経理業務を幅広く代行するのに対し、記帳代行は仕訳入力や帳簿作成に範囲を絞ったサービスです。
記帳だけを安く任せたい場合は記帳代行、経理業務全体を外に出して担当者の手を空けたい場合は経理代行が向いています。どちらも税務申告そのものは扱えないため、決算・申告まで必要なら税理士との連携があるかを確認しておくと安心です。
Q. 小さな会社や個人事業主でも経理代行に頼めますか?
A. 小さな会社や個人事業主でも経理代行に頼めます。むしろ経理の専任者を置きにくい小規模な事業者ほど、経理代行の費用対効果が出やすいといえます。
記帳だけなど小口から委託できるサービスが多く、取引件数が少なければ月額1万円台から利用できます。ただし、委託先によっては法人のみを契約対象としている場合や、最低料金・最低契約期間が設定されている場合があるため、個人事業主で検討する際は対応可否と最低条件を確認しておきましょう。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















