取引先への支払いや売掛金の入金で、「振込手数料は先方負担」という取り決めを交わしている企業は少なくありません。ところが、いざ仕訳を切る段になると、差し引かれた手数料をどの勘定科目で処理するのか、自分は受け取る側なのか支払う側なのかで迷い、手が止まってしまいがちです。2023年10月のインボイス制度開始後は、売手が負担する振込手数料の消費税の扱いも論点に加わりました。
「振込手数料 先方負担 仕訳」で調べる場面は、実は大きく2つに分かれます。自分が代金を受け取る側(売手)で手数料を差し引かれて入金されたのか、自分が代金を支払う側(買手)で手数料を差し引いて送金したのかで、使う勘定科目も借方・貸方の形も変わります。まず自分がどちらの立場かを見極めることが、正しい仕訳への近道です。
本記事では、先方負担の振込手数料を、受け取る側・支払う側それぞれの立場から金額入りの仕訳例で整理します。あわせて、支払手数料・雑収入・仕入値引・売上値引をどう使い分けるかの選択基準、インボイス制度での売手負担分の消費税処理を、国税庁のQ&Aなど一次情報にもとづいて解説します。日々の記帳や入金消込を正しく・迷わず進めるための判断材料としてご活用ください。
目次
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「先方負担」の振込手数料とは?まず受け取る側か支払う側かを切り分ける
ここからは、先方負担の振込手数料を仕訳する前提として、立場の切り分けと基本の勘定科目を確認します。
「先方負担」とは、振込手数料を取引の相手方(先方)が負担するという当事者間の取り決めです。銀行振込の手数料は、法律上は原則として代金を支払う側が負担します。民法では、弁済にかかる費用は別段の取り決めがなければ債務者(=代金を支払う買手)の負担と定められています。
第四百八十五条 弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。
出典:民法 第485条(弁済の費用)|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089)
つまり、手数料を支払う側が負担するのが法律上の原則で、「先方(受け取る側)負担」はこの原則に対する当事者の合意による例外にあたります。振込手数料の勘定科目は、どちらの立場でも「支払手数料」が基本です。ただし、先方負担の取り決めがある取引では、手数料が差し引かれる・差し引くことで、支払手数料だけでは処理が完結せず、差額をどう受けるかという論点が生まれます。
そこで重要になるのが、自分がどちらの立場かの切り分けです。次の2つのうち、自分のケースに当たる方から読み進めてください。
- 受け取る側(売手):売掛金の入金時に、振込手数料が差し引かれて入金された(または満額入金された)
- 支払う側(買手):買掛金の支払時に、振込手数料を差し引いて送金した
受け取る側(売手)の仕訳例|手数料を差し引かれて入金された場合
ここからは、代金を受け取る売手の立場で、入金のされ方ごとの仕訳を見ていきます。
先方(買手)が全額負担し、満額が入金された場合は手数料の記帳は不要(消込のみ)
取り決めどおり買手が振込手数料を負担し、請求額どおりの満額が入金された場合、売手の側で手数料を記帳する必要はありません。売掛金の消込をそのまま行います。
たとえば売掛金11,000円(うち消費税1,000円)が満額入金されたケースです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 11,000円 | 売掛金 | 11,000円 |
売掛金11,000円は売上を計上した時点で消費税1,000円(10%)を認識済みのため、入金時は消込を行うだけで、新たに消費税区分を認識する必要はありません。
手数料を差し引かれて入金された場合(実質的に売手が負担)
一方、先方負担で合意していても、買手が慣行として振込手数料を差し引いて入金してくることは実務で多くあります。この場合は売手が実質的に手数料を負担する形になり、差額の処理が必要です。
ここでは売掛金11,000円(うち消費税1,000円)から振込手数料440円が差し引かれ、10,560円が入金されたケースで見ていきます(国税庁のQ&Aでは請求10,000円・手数料440円・入金9,560円の設例で同じ考え方が示されています)。この差額440円の受け方には、主に次の2通りがあります。
(1)支払手数料として処理する場合
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 10,560円 | 売掛金 | 11,000円 |
| 支払手数料 | 440円 |
支払手数料440円の消費税区分は課税仕入れ(10%・税込、うち消費税相当40円)です。これを仕入税額控除の対象にするには、後述の保存要件を満たす必要があります。
(2)売上値引(売上げに係る対価の返還等)として処理する場合
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 10,560円 | 売掛金 | 11,000円 |
| 売上値引 | 440円 |
売上値引440円の消費税区分は「売上げに係る対価の返還等」で、もとの売上と同じ税率(この例では10%)に従います。
どちらで処理するかは、インボイス制度での消費税の扱いに関わります。国税庁は、この振込手数料相当額について「売上値引き(売上げに係る対価の返還等)」「代金決済上の役務提供の対価」「買手による立替払」の3つの対応を示しています。
この3つは、売上値引が売手の売上げに係る対価の返還等、代金決済上の役務提供の対価が買手側の雑収入、立替払が支払手数料と立替金精算書での処理に対応します。詳しくはインボイス制度での処理と勘定科目の選択基準で解説します。
1 売手が振込手数料相当額を売上値引きとする場合
出典:消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)問29「売手が負担する振込手数料相当額」|国税庁(PDF)
売手は、振込手数料相当額について売上値引きとする場合、売上げに係る対価の返還等を行っていることとなりますので、原則として、買手に対して適格返還請求書を交付する必要がありますが、一般的には、こうした振込手数料相当額は1万円未満となると考えられますので、その場合は適格返還請求書の交付義務が免除されることとなります(消法 57 の4③、消令 70 の9③二)。
支払う側(買手)の仕訳例|手数料を差し引いて送金した場合
ここからは、代金を支払う買手の立場で、先方(売手)負担の取り決めにもとづき手数料を差し引いて送金した場合の仕訳を見ていきます。
買掛金11,000円に対し、振込手数料440円を差し引いて10,560円を送金したケースです。
国税庁のQ&A(問29)では、買手が差し引いた振込手数料相当額を、仕入そのものの値引きとして扱う「仕入値引(仕入れに係る対価の返還等)」、または買手が受けた「代金決済上の役務提供の対価(雑収入)」として整理する考え方が示されています。雑収入として受ける場合は、次のようになります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 買掛金 | 11,000円 | 普通預金 | 10,560円 |
| 雑収入 | 440円 |
雑収入440円の消費税区分は、代金決済上の役務提供の対価として課税売上(10%)で扱うのが一般的です。仕入値引で処理する場合は、仕入れに係る対価の返還等(10%)になります。
仕入値引として処理する場合は、貸方の「雑収入」を「仕入値引」に置き換えます。使い分けの考え方は、差し引いた手数料を「相手への代金決済上の役務提供の対価を受け取った」と捉えるなら雑収入、「仕入そのものの値引き」と捉えるなら仕入値引です。
自社が金融機関に支払う手数料を「支払手数料」で計上し、差し引いた分をそのマイナスとして相殺する実務もありますが、支払手数料がマイナスになるのを避けたい場合は雑収入で受けるのが一般的です。消費税の課税区分は取引の実態で判断が分かれるため、自社の処理方針や顧問税理士に確認してください。
なぜ差し引いた手数料が貸方に計上されるのか|買掛金と相殺する仕組み
「先方負担なのに、なぜ手数料が貸方(収益側)に来るのか」と戸惑う方は少なくありません。仕組みを順に追うと理解できます。
買手は本来11,000円の買掛金を負っています。先方(売手)負担の取り決めにより、買手は手数料440円を差し引き、10,560円だけを送金します。ここで会計上の債務(買掛金)は11,000円まるごと消える一方、実際に出ていく現金は10,560円にとどまります。
差額の440円は、買手が本来負担するはずだった手数料を売手が引き受けてくれた分であり、買手にとっては得をした(=収益または仕入の値引き)部分です。
この440円を貸方に「雑収入」または「仕入値引」として立てることで、借方の買掛金11,000円と、貸方の現金10,560円+差額440円が一致します。この貸方計上は、支払う現金と消す債務の差を埋めて仕訳の貸借を合わせるための処理であり、買掛金と相殺する形になっています。
差し引かれた手数料はどの勘定科目で処理する?選択基準の一覧
ここからは、支払手数料・雑収入・仕入値引・売上値引のどれを選ぶかを、立場とインボイス対応の観点から整理します。

差し引かれた(差し引いた)振込手数料をどの勘定科目で受けるかは、自分が受け取る側か支払う側か、そしてインボイス制度で消費税をどう扱うかで変わります。実務で使われる主な選択肢を一覧にまとめました。
| 勘定科目 | 支払手数料 | 売上値引(売上げに係る対価の返還等) | 雑収入 | 仕入値引 |
|---|---|---|---|---|
| 使う立場 | 受け取る側(売手) | 受け取る側(売手) | 支払う側(買手) | 支払う側(買手) |
| 考え方 | 差し引かれた手数料を、自社が負担した金融機関への手数料として費用計上する(買手が支払手数料を使うのは自社負担=当方負担の場面で、本記事の射程外) | 手数料相当額を売上の値引きとして処理する。インボイス制度で売手が選べる方法 | 差し引いた手数料相当額を、代金決済上の役務提供の対価として収益に受ける | 差し引いた手数料相当額を、仕入の値引きとして処理する |
| 消費税の扱い | 課税仕入れ(仕入税額控除には適格請求書+立替金精算書等の保存が必要) | 売上げに係る対価の返還等(元の売上の税率に従う) | 課税売上(代金決済上の役務提供の対価。10%) | 仕入れに係る対価の返還等 |
表の「消費税の扱い」欄のとおり、消費税区分は取引の実態によって判断が分かれる場合があります。とくに売手が差し引かれた手数料を「支払手数料」とするか「売上値引」とするかは、インボイス制度での扱いに直結します。国税庁は、支払手数料でも売上げに係る対価の返還等でも処理できるとしています。次章で詳しく見ていきます。
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インボイス制度で売手負担分はどう処理する?(2023年10月以降)
ここからは、インボイス制度の開始後に、売手が負担する振込手数料相当額をどう処理するかを、国税庁のQ&Aにもとづいて解説します。
買手が振込手数料を差し引いて支払うことで売手が手数料を負担する場合、これまで「支払手数料」として処理してきた企業も多いはずです。インボイス制度の開始後、この経理処理を「売上げに係る対価の返還等(売上値引)」に変更することは問題なく認められています。国税庁は次のように示しています。
ご質問のように、支払手数料としての経理処理を適格請求書等保存方式の開始後、売上げに係る対価の返還等としての経理処理に変更することは問題なく、当該振込手数料相当額を売上げに係る対価の返還等として処理する場合、原則として、買手に対して適格返還請求書を交付する必要がありますが、一般的には、こうした振込手数料相当額は1万円未満となると考えられますので、その場合は適格返還請求書の交付義務が免除されることとなります。
出典:消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)問30「売手が負担する振込手数料相当額に係る経理処理の変更」|国税庁(PDF)
また国税庁は、会計上は支払手数料として処理しつつ、消費税法上は売上げに係る対価の返還等とすることもできるとしています。その場合は、通常の支払手数料と判別できるよう、支払手数料のコードを別に用意します。
国税庁は「経理システム上で、ご質問に係る支払手数料のコードを売上げに係る対価の返還等と分かるように別に用意する」対応を示し、あわせて帳簿に売上げに係る対価の返還等に係る事項を記載する必要があるとしています。
会計処理は支払手数料のまま、消費税の扱いだけを売上げに係る対価の返還等に分けられる点は、実務でシステム対応を検討する際の重要な論点です。
適用税率は元の売上の税率に従う(軽減8%売上の値引きは8%)
売上げに係る対価の返還等として処理する場合の消費税の適用税率は、値引きのもとになった売上(課税資産の譲渡等)の税率に従います。したがって、軽減税率8%対象の売上を対象とした振込手数料相当額の売上値引きには、軽減税率8%が適用されます。標準税率10%の売上なら10%です。複数税率の売上がある事業者は、どの売上に対する値引きかで税率が変わる点に注意が必要です。
支払手数料として仕入税額控除するには適格請求書+立替金精算書が必要
差し引かれた手数料を売手が「支払手数料」として処理し、仕入税額控除を受けたい場合は、注意が必要です。売手は金融機関から直接インボイス(適格請求書)を受け取っているわけではないため、買手が金融機関から受け取った振込手数料の適格請求書と、買手が作成した立替金精算書等の交付を受けて保存する必要があります。
国税庁は、売手が代金決済上の役務提供の対価として処理する場合や、買手が立替払したものとする場合の保存要件を、問29で次のように示しています。
買手が売手に代わって振込手数料を立替払したものとする場合、売手は、買手が金融機関から受け取った振込手数料に係る適格請求書及び買手が作成した立替金精算書等の交付を受け、振込手数料に係る仕入税額控除を行うことになります
出典:消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)問29「売手が負担する振込手数料相当額」|国税庁(PDF)
売上値引(売上げに係る対価の返還等)として処理すれば、この立替金精算書等の保存は不要で、交付義務も1万円未満なら免除されます。事務負担が軽いことから、売上値引処理が選ばれやすくなっています。
返還インボイスの1万円未満交付義務免除と少額特例は別物
混同しやすいのが、「返還インボイス(適格返還請求書)の1万円未満交付義務免除」と「少額特例」です。この2つは、適用される場面も根拠も異なります。
- 返還インボイスの1万円未満交付義務免除:売手が売上値引(売上げに係る対価の返還等)を行う際、その税込金額が1万円未満であれば、適格返還請求書の交付義務が免除されます。振込手数料相当額は通常1万円未満のため、実務上は多くが免除の対象です。
- 少額特例:基準期間の課税売上高が1億円以下(または特定期間の課税売上高が5千万円以下)の事業者が、税込1万円未満の課税仕入れについて、一定の帳簿の保存のみで仕入税額控除を受けられる経過措置です。買手が支払手数料を仕入税額控除する場面で関わります。
前者は売手の「交付義務」の話、後者は買手の「仕入税額控除」の話です。少額特例には適用期間と規模の要件があります。
基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が5千万円以下である事業者が、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に国内において行う課税仕入れについて、当該課税仕入れに係る支払対価の額(税込み)が1万円未満である場合には、一定の事項が記載された帳簿のみの保存により、当該課税仕入れについて仕入税額控除の適用を受けることができる経過措置(少額特例)が設けられています
出典:消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)問111「一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置」|国税庁(PDF)
少額特例は令和11年(2029年)9月30日までの経過措置です。自社の課税売上高が要件に当てはまるかを確認したうえで活用を判断してください。支払手数料・売上値引のどちらで処理するか、少額特例を適用できるかは、取引の実態や自社の消費税の処理方針によって判断が分かれるため、迷う場合は顧問税理士に確認することをおすすめします。
手数料差額の消込・仕訳を自動化する|債権管理システムという次の一歩
ここからは、先方負担の振込手数料をめぐる毎月の入金消込を、仕組みで効率化する選択肢を紹介します。
先方負担の振込手数料でとくに手間がかかるのが、売掛金の入金消込です。請求額と実際の入金額が手数料分だけ食い違うため、「この差額は振込手数料か、入金ミスか」を1件ずつ目視で突き合わせる作業に追われがちです。取引先が増えるほど、この照合は重荷になります。
入金消込そのものを仕組みで効率化する手段は、照合方式・手数料差額のような例外対応・会計ソフト連携といった観点で比べられます。入金消込に絞ってサービスを検討したい場合は、以下の記事が参考になります。
債権管理システムの中には、こうした手数料差額を自動で判定し、自社負担・相手先負担の区分に応じて消込・仕訳連携まで行えるものがあります。手数料差額の自動処理という観点で、主なサービスを比較します。
| サービス名 | マネーフォワード クラウド債権管理 | 債権奉行クラウド | 楽楽債権管理 | invox発行請求書 |
|---|---|---|---|---|
| 手数料差額の自動消込 | ●差し引かれた入金も自動消込 | ●振込手数料を含めマッチングし自動消込 | ●誤差許容金額の範囲内で自動消込 | △当方負担は自動/先方負担は手動消込で差額処理 |
| 負担区分・差額許容の設定 | 得意先ごとに振込手数料を学習・登録し、自社/相手先負担を区分 | 学習機能で振込依頼人名・一括入金・振込手数料をマッチング | 顧客ごとに誤差許容金額を設定(範囲内の差額を許容) | 得意先マスタで当方/先方負担と手数料の差額条件を設定 |
| 仕訳・伝票連携 | 消込結果を仕訳データで会計ソフトへ連携 | 入金消込と同時に入金伝票を自動作成 | 消込結果から仕訳データを作成しCSV出力 | 差額を振込手数料として処理し入金消込仕訳を出力 |
| 料金 | 初期費用:要問い合わせ 月額:件数従量制(要問い合わせ) | 初期費用:0〜70,000円 月額:6,500〜24,250円(iクラウド) | 初期費用:100,000円 月額:20,000円〜(税抜) | 初期費用:0円 月額:0〜29,800円+入金消込1件55円(税込) |
| 詳細情報 | オンライン相談を予約 | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る |
1. マネーフォワード クラウド債権管理(株式会社マネーフォワード)

請求から入金消込、催促までをクラウドで一元管理する債権管理サービスです。入金消込では、得意先ごとに振込手数料を学習・登録でき、自社負担・相手先負担の区分を設定したうえで、手数料が差し引かれた入金も自動で消し込めます。消込結果は会計ソフトへの仕訳連携に対応し、先方負担の手数料で生じる請求額と入金額の差を手作業でたどる負担を軽減します。
機械学習を用いた自動照合は、精度が安定するまでに一定の期間を要します。その見通しについて、同サービスを提供する株式会社マネーフォワードの栗本氏は次のように述べています。

機械学習を使っているため、最初から100点を目指すというよりは、使い続けていくことで照合精度が上がっていく仕組みです。目安としては3ヶ月程度で精度が安定してきますが、、お客様のシチュエーションによっても異なります。継続的にお取引をされる企業が中心なのか、新規の取引先が多く入ってくるのかによっても学習のスピードは変わってきます。
2. 債権奉行クラウド(株式会社オービックビジネスコンサルタント)

奉行シリーズで知られるオービックビジネスコンサルタント(OBC)が提供する債権管理システムです。学習機能を使い、振込依頼人名や一括入金、振込手数料などを細やかにマッチングして入金消込を行えるのが特徴です。入金消込と同時に入金伝票が自動で作成されるため、消込後の起票の手入力を省けます。入金情報・回収予定・債権情報を起点にした複数の消込方法に対応しています。
3. 楽楽債権管理(株式会社ラクス)

顧客ごとに誤差許容金額を設定でき、その範囲内の差額であれば、振込手数料が差し引かれた入金でも自動で消込を完了できるのが、株式会社ラクスの「楽楽」シリーズの債権管理システムです。消込結果をもとに消込・仕訳データが自動で作成され、CSV形式で出力して会計ソフトへ取り込める点も、手数料差額の処理を効率化します。
4. invox発行請求書(株式会社invox)

請求書の発行から入金消込までをカバーするクラウドサービスです。得意先マスタで振込手数料の負担者を当方負担・先方負担から設定でき、消込時に差額を「振込手数料として処理する」ことで、入金消込仕訳を出力できます。
公式ヘルプで自動消込の対象として確認できるのは当方負担のケースで、先方負担分は手動消込で差額を処理する形になります。確認画面で生成された仕訳を修正できるため、手数料を含む入金の記帳をシステム上で完結させたい企業に向いています。
ここで紹介したサービスを含め、債権管理システムは入金消込のほか請求・与信・督促まで対応範囲が分かれます。手数料差額の消込を入り口に導入を検討するなら、タイプ別の選び方や機能を詳しく整理した以下の記事もあわせてご覧ください。
まとめ
先方負担の振込手数料の仕訳は、まず自分が受け取る側(売手)か支払う側(買手)かを切り分けることが出発点です。受け取る側で満額入金なら仕訳不要、手数料を差し引かれた場合は支払手数料または売上値引で差額を処理します。支払う側で手数料を差し引いて送金した場合は、差額を雑収入または仕入値引として買掛金と相殺します。
インボイス制度の開始後は、売手負担分を支払手数料のままにするか、売上げに係る対価の返還等(売上値引)に変更するかの選択が加わりました。売上値引なら立替金精算書等の保存が不要で、1万円未満は返還インボイスの交付義務も免除されます。
適用税率は元の売上の税率に従う点、少額特例は交付義務免除とは別物である点も押さえておきましょう。毎月の入金消込で手数料差額の突合に追われているなら、債権管理システムによる自動消込・仕訳連携も検討に値します。
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よくある質問(FAQ)
Q. 振込手数料の「先方負担」とは、誰が手数料を負担する取り決めですか?
A. 振込手数料の「先方負担」とは、振込にかかる手数料を取引の相手方(先方)が負担するという当事者間の取り決めです。たとえば代金を受け取る売手が「先方負担」という場合は、代金を支払う側である買手が手数料を負担することを指します。
銀行振込の手数料は、民法485条で別段の意思表示がなければ代金を支払う側(債務者)の負担とされており、「先方負担」はこの原則に対する当事者の合意による例外にあたります。そのため、自分が受け取る側(売手)か支払う側(買手)かによって、使う勘定科目も借方・貸方の形も変わります。
出典・参考資料(1件)
Q. 先方負担の振込手数料は、受け取る側(売手)と支払う側(買手)で仕訳がどう違いますか?
A. 先方負担の振込手数料の仕訳は、受け取る側(売手)は差し引かれた手数料を借方に、支払う側(買手)は差し引いた手数料を貸方に計上する点が異なります。
売手は売掛金の入金時に手数料を差し引かれるため「支払手数料」や「売上値引」を借方に立てます。買手は買掛金の支払時に手数料を差し引いて送金するため「雑収入」や「仕入値引」を貸方に立て、買掛金と相殺します。また、取り決めどおり買手が全額を負担し請求額どおりの満額が入金された場合は、売手側で手数料を記帳する必要はありません。
Q. 振込手数料を差し引かれて入金された場合、差額はどの勘定科目で処理しますか?
A. 受け取る側(売手)が振込手数料を差し引かれて入金された場合、差額は「支払手数料」または「売上値引(売上げに係る対価の返還等)」で処理します。
たとえば請求額11,000円(うち消費税1,000円)から手数料440円が差し引かれ10,560円が入金されたケースでは、普通預金10,560円と差額440円(支払手数料または売上値引)を借方に、売掛金11,000円を貸方に計上します。どちらを選ぶかは、インボイス制度での消費税の扱い(適格返還請求書の交付や仕入税額控除の要件)に直結します。
Q. 振込手数料を差し引いて送金した場合、差額は雑収入と支払手数料のどちらで処理しますか?
A. 支払う側(買手)が先方負担の取り決めで手数料を差し引いて送金した場合、差額は「雑収入(代金決済上の役務提供の対価)」または「仕入値引」として貸方に計上するのが一般的です。支払手数料のマイナス計上を避けたい場合に雑収入を使う実務もあります。
たとえば買掛金11,000円から手数料440円を差し引いて10,560円を送金したケースでは、借方の買掛金11,000円に対し、貸方に普通預金10,560円と雑収入(または仕入値引)440円を計上します。消費税の課税区分の扱いは取引の実態によって判断が分かれるため、自社の処理方針や顧問税理士に確認してください。
Q. 先方(売手)負担の振込手数料は、インボイス制度で売上値引と支払手数料のどちらを選べばよいですか?
A. 売手が負担する振込手数料相当額は、事務負担の軽さから「売上値引(売上げに係る対価の返還等)」で処理する方法が選びやすく、国税庁も支払手数料からの変更を認めています。
売上値引として処理すれば、税込1万円未満の場合は適格返還請求書(返還インボイス)の交付義務が免除され、立替金精算書等の保存も不要です。
一方、差し引かれた手数料を「支払手数料」として仕入税額控除を受けるには、買手が金融機関から受け取った適格請求書と、買手が作成した立替金精算書等の交付を受けて保存する必要があります。どちらを選ぶかは自社の消費税の処理方針によって判断が分かれるため、顧問税理士に確認することをおすすめします。
出典・参考資料(2件)
Q. 返還インボイスの1万円未満の交付義務免除と少額特例は何が違いますか?
A. 両者は適用される立場も目的も異なり、返還インボイスの1万円未満免除は「売手」が売上値引をする際の適格返還請求書の交付義務の話、少額特例は「買手」が課税仕入れについて帳簿の保存のみで仕入税額控除を受けられる話です。
返還インボイスの免除は、税込1万円未満の売上げに係る対価の返還等が対象で、振込手数料相当額は通常これに該当します。少額特例は、基準期間の課税売上高が1億円以下(または特定期間の課税売上高が5千万円以下)の事業者が、税込1万円未満の課税仕入れを帳簿の保存のみで控除できる経過措置で、令和11年(2029年)9月30日までの期限があります。自社が要件に当てはまるかは、顧問税理士にも確認してください。
出典・参考資料(2件)
Q. 振込手数料相当額を売上値引として処理する場合、消費税の適用税率は何%ですか?
A. 振込手数料相当額を売上値引(売上げに係る対価の返還等)として処理する場合の適用税率は、値引きのもとになった売上(課税資産の譲渡等)の税率に従います。
したがって、標準税率10%の売上を対象とする値引きには10%が、軽減税率8%対象の売上を対象とする値引きには8%が適用されます。複数税率の売上がある事業者は、どの売上に対する値引きかで税率が変わる点に注意してください。
出典・参考資料(1件)
Q. 先方負担の振込手数料で生じる入金額と請求額の差は、どうすれば効率的に消し込めますか?
A. 先方負担の手数料で生じる差額は、手数料差額を自動で判定して消込・仕訳連携まで行える債権管理システムを使うと効率的に処理できます。請求額と入金額が手数料分だけ食い違う入金を、1件ずつ目視で突き合わせる負担を減らせます。
得意先ごとに手数料を学習・登録したり、自社負担・相手先負担の区分や誤差許容金額を設定したりすることで、手数料が差し引かれた入金も自動で消し込め、消込結果を会計ソフトへ仕訳連携できるサービスがあります。取引先が多く毎月の入金消込に追われている場合は、導入を検討する価値があります。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

















