会計システムを動かしているサーバーの保守期限が近づいたり、バックアップやWindows Serverの更新が負担になってきたりすると、「このまま物理サーバーを買い替えるべきか、クラウドへ移すべきか」という判断が必要になります。
会計システムの置き場所には、自社サーバー(オンプレミス)だけでなく、クラウド(SaaS)、IaaS、専用サーバー、ハイブリッドといった複数の選択肢があり、費用や運用の手間、データの持ち方はそれぞれ大きく異なります。
本記事では、会計システムを動かす5つのサーバー形態を、費用・運用の手間・セキュリティ・カスタマイズ・BCP(事業継続)の観点で横並びに整理し、自社がどれを選ぶべきかの判断基準をまとめます。オンプレミス継続に必要なサーバースペックの目安や、クラウドへ移行する場合の進め方・注意点まで解説しますので、置き場所を決めるための検討材料としてご活用ください。
目次
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会計システムを動かすサーバーの5つの形態
会計システムをどこで動かすかには、大きく5つの形態があります。まずは、それぞれが何を指すのかを押さえておきましょう。
- オンプレミス(自社サーバー):自社で物理サーバーなどの機器を保有・設置し、社内で運用する形態です。従来の会計システムの多くがこの形で動いています。
- クラウド(SaaS型):インターネット経由で、提供事業者が用意したサービスをそのまま利用する形態です。クラウド会計ソフトが代表例で、自社でサーバーを持つ必要がありません。
- IaaS:クラウド事業者が提供するサーバーやストレージなどの基盤を借り、その上に自社で会計システムを構築・運用する形態です。
- 専用サーバー・ホスティング:データセンター事業者の物理サーバーを専有で借りて運用する形態です。機器や回線はデータセンターが管理します。
- ハイブリッド:オンプレミスとクラウドを組み合わせ、基幹はオンプレミス、周辺業務はクラウドというように使い分ける形態です。
このうちクラウドに関わる区分(SaaS・IaaS、およびクラウドの提供形態)は、総務省が用語を次のように整理しています。
クラウドが提供するサービスは、その構成要素から大きく(1)IaaS(Infrastructure as a Service)、(2)PaaS(Platform as a Service)、(3)SaaS(Software as a Service)の3種類がある。
出典:平成30年版 情報通信白書「クラウドサービスの概要」|総務省
IaaSは、コンピューターやストレージ、ネットワークなどのハードウェアが提供する機能を提供するサービスである。
PaaSは、アプリケーションプログラムを開発・実行するためのツールや環境(=プラットフォーム)を提供するサービスである。
SaaSは、アプリケーションプログラムが持つ機能を提供するサービスである。
パブリッククラウドは、クラウドの標準的なサービスを不特定多数が共同で利用する形態である。
プライベートクラウドは、利用企業に専用のクラウド環境を指す。
クラウド会計ソフトはSaaSにあたり、ソフトの機能そのものをインターネット経由で使います。一方でIaaSは、クラウド上に自社でサーバーを立てて既存の会計システムを載せるイメージで、オンプレミスに近い自由度を保ちながら物理機器の保守を手放せる点が異なります。専用サーバー・ホスティングは、データセンターの物理サーバーを専有で借りる形で、共用のパブリッククラウドとは別の考え方です。
5つの形態の違いは、「物理サーバー機器の保守」と「OS・会計ソフトの管理」を、自社と事業者のどちらが担うかで整理すると見通しが良くなります。

【比較表】5つのサーバー形態を費用・運用・セキュリティ・カスタマイズ・BCPで比較
5つの形態は、費用のかかり方や運用の手間、データの持ち方などで性格が分かれます。以下は、5つのサーバー形態の比較表です。
| オンプレミス(自社サーバー) | クラウド(SaaS型会計) | IaaS(クラウド上に自社で構築) | 専用サーバー・ホスティング | ハイブリッド | |
|---|---|---|---|---|---|
| 費用のかかり方 | 機器・OS・DBライセンスの購入で初期費用が大きい(小規模構成でも数十万円規模)。以降は電気代・保守・更新が中心 | 初期費用が小さく、月額・年額のサブスクリプション型(クラウド会計ソフトで月2,900円〜が目安)。サーバー機器の購入が不要 | 機器購入は不要だが利用量に応じた従量課金。月額は構成次第 | 初期費用は小〜中。月額で物理サーバーを専有 | オンプレミスの機器費用とクラウドの月額が併存する(両方の費用がかかる) |
| 運用・保守の手間 | 更新・バックアップ・障害対応を自社で担う。運用できる人材が必要 | 保守・更新・バックアップは提供事業者が担う | 物理機器の保守は不要。OS・会計ソフトの管理は自社 | 機器・回線はデータセンターが管理。OS以上は契約内容次第 | 基幹はオンプレミス、周辺はクラウドなど役割を分担 |
| データの持ち方・セキュリティ | データを自社内に保有。社外に出さない設計がしやすい | 事業者のデータセンターに保管。社外保管が前提 | クラウド上の自社専有環境に保管 | 専有サーバーに保管し、他社と共有しない | 重要データは自社、一部をクラウドに置く |
| カスタマイズ性 | 高い。既存の作り込みや他システム連携を維持しやすい | 標準機能の範囲内。独自の作り込みには制約がある | オンプレミスに近い自由度。既存ソフトを載せやすい | 専有のため高い自由度 | 基幹は作り込みを維持し、周辺業務はクラウドの手軽さを使い分け |
| 操作レスポンス(速度) | 社内ネットワークで完結するため安定しやすい | インターネット回線の品質に左右される | 回線とインスタンス性能に依存。構成の増強で調整できる | 専有環境で安定。回線品質はデータセンターに依存 | オンプレミス側は安定、クラウド側は回線に依存 |
| BCP・可用性 | 冗長化や遠隔バックアップを自社で用意する必要がある | 事業者の設備・冗長化を利用。インターネット経由でリモートアクセス可 | クラウド基盤の可用性を活用。冗長構成は自社で設計 | データセンターの電源・回線・設備を活用 | クラウド側をバックアップや災害対策に活用 |
| 主に向いている企業 | 既存の作り込みが多い/データを社内で保持したい/運用人材がいる企業 | サーバー運用を手放したい/テレワーク・多拠点/小〜中規模の企業 | 既存の会計システム・ERP(基幹業務システム)を活かしつつ機器保守を手放したい企業 | 基幹を専有環境で安定運用したい/共有環境の制約を避けたい企業 | 段階的に移行したい/一部の業務だけクラウド化したい企業 |
※上記は各形態の一般的な傾向です。実際の費用や運用範囲は、利用する会計ソフト・契約内容・構成によって異なります。
比較表の「操作レスポンス(速度)」の行にあるとおり、日々の操作の速さも形態で差が出ます。社内ネットワークで完結するオンプレミスは速度が安定しやすく、クラウドやIaaSはインターネット回線の品質に左右されます。多拠点から同時に使う場合やデータ量が大きい場合は、回線の帯域やインスタンスの性能も含めて判断材料にすると安心です。
オンプレミス継続とクラウド移行、それぞれで解決すること・失うこと
多くの企業が現実に迷うのは、「物理サーバーを買い替えてオンプレミスで続けるか」「クラウドへ移すか」の二択です。ここからは、それぞれの選択で得られるものと手放すものを両面から整理します。
オンプレミス継続の損得(守れる強み/残り続ける負担)
オンプレミスを続ける強みは、データを自社内に保持できること、既存の作り込みや他システムとの連携をそのまま維持しやすいこと、社内ネットワークで完結するためレスポンスが安定しやすいことにあります。会計データを社外に置きたくない方針の企業や、長年の運用で独自のカスタマイズを積み重ねてきた企業にとっては、これらは簡単には手放せない価値です。
一方で、オンプレミスを続ける限り残り続ける負担もあります。サーバー機器には保守期限があり、数年ごとの買い替えが避けられません。日々のバックアップや、OS・データベースの更新、障害時の復旧といった運用も自社で担う必要があります。
ネットワーク版の会計ソフトでは、クライアントとは別にデータベース用のサーバーやサーバーOSのライセンスも必要になり、これらの更新・管理も継続します。災害や機器故障に備えた冗長化・遠隔バックアップも、自社で設計・維持しなければなりません。
とくにサーバーOSやクライアントのOSには、それぞれサポート終了の時期があり、その都度、OSの更新や入れ替えが必要になります。会計ソフトの新しいバージョンが古いOSに対応しなくなることもあるため、オンプレミスを続ける場合でもOSの更新は避けられない論点です。
クラウド移行の損得(解決すること/手放す自由度)
クラウド(SaaS型)へ移すと、サーバー機器の購入・保守・更新・バックアップといった運用の多くを提供事業者に任せられます。インターネット経由でアクセスできるため、テレワークや複数拠点からの利用、災害時の事業継続にも対応しやすくなります。サーバーの保守期限やOSの更新に追われる作業から解放される点は、オンプレミス継続の負担をそのまま裏返した解決です。
手放すことになるのは、主にカスタマイズの自由度です。SaaSは標準機能の範囲内で使う前提のため、オンプレミスで積み重ねた独自の作り込みや、特定の基幹システムとの密な連携をそのまま持ち込めない場合があります。月額または年額のランニングコストが継続的に発生する点、データが事業者のデータセンターに保管される点も、移行前に確認しておきたい論点です。
既存のカスタマイズや連携が多い場合は、SaaSではなくIaaSや専用サーバーで既存システムを載せ替える選択肢も検討の余地があります。
こうしたソフトやOSの更新に追われる負担は、クラウド型の会計システムが広がってきた背景の一つでもあります。PCAクラウド会計を提供するピー・シー・エーの田崎氏は、クラウドの提供を始めた経緯を次のように説明しています。

1994年には他社に先駆けてWindows対応の「PCA会計」を発売しました。その後、「法改正のたびにソフトを買い替える負担をなくしたい」という思いから、まだクラウドという言葉が一般的でなかった2008年に、業界に先んじてPCAクラウドの提供を開始しています。
自社はどのサーバー形態を選ぶべきか
どの形態が適しているかは、会社の規模や使っている会計ソフト、社内の体制によって変わります。ここでは、条件ごとに考え方を整理します。自社の状況に当てはめて、当たりを付ける材料にしてください。

- 既存の作り込み・他システム連携が多い場合:SaaSでは再現しきれないことがあります。作り込みを活かすなら、オンプレミス継続か、既存システムをそのまま載せられるIaaS・専用サーバーが候補になります。
- 社内にサーバーを運用できる人材が少ない場合:更新・バックアップ・障害対応を事業者に任せられるクラウド(SaaS)が、運用負担の面で向いています。
- テレワークや多拠点からの利用が必要な場合:インターネット経由でアクセスできるクラウド(SaaS)が適しています。
- 会計データを社内で保持したい方針が強い場合:データを自社内に置けるオンプレミスや、専有環境の専用サーバーが選択肢になります。
- 使っている会計ソフトがクラウド版を提供しているか:弥生会計のようにデスクトップ版からクラウド版への移行が用意されている製品なら、SaaSへの乗り換えがスムーズです。クラウド版が無い基幹システムを使い続けたい場合は、IaaS・専用サーバーで載せ替える形が現実的です。
判断の起点になるのは、自社が使っている会計ソフトがどの形態に対応しているか、既存のカスタマイズや連携をどこまで残したいか、そして社内でサーバーを管理できる体制があるかの3点です。段階的に進めたい場合は、まず一部の業務からクラウド化するハイブリッドという進め方もあります。
既存の会計システムをそのまま使い続けつつ置き場所だけを変えたい場合は、IaaS(クラウド上のサーバー基盤)やデータセンターの専用サーバーを提供する事業者に見積もりを依頼する形になります。その際は、会計システムの稼働要件(OS・データベース・必要なライセンス・想定の利用台数)を伝えます。
IaaS・専用サーバーの事業者を選ぶときは、次の観点を横並びで確認すると比較しやすくなります。
- サーバーOS・データベースの要件への対応:使っている会計ソフトが求めるOS・データベースを事業者側で動かせるか。
- 固定か従量課金か:月額が固定か、利用量に応じた従量課金か(従量なら想定利用での月額を試算する)。
- バックアップ・冗長化・復旧の担当範囲:障害時の復旧やバックアップ・冗長化を、どこまで事業者が担うか。
- ライセンスの用意:Windows ServerやSQL Serverのライセンスを事業者側で用意できるか、自社調達が必要か。
これらを見積もり時に同じ条件で各社に提示すると、オンプレミス継続との費用・運用負荷の差が具体的に見えてきます。
この方法なら会計ソフト自体を乗り換えずに済むため、独自の作り込みや他システムとの連携を保ちやすく、物理サーバーの保守だけを手放せます。一方で、OSやソフトの管理は引き続き自社側に残る点は確認しておきましょう。
オンプレミス継続に必要なサーバースペックと買い替え費用の目安
オンプレミスで会計システムを動かし続ける場合、どの程度のサーバーが必要になるのかを押さえておきましょう。ここでは弥生製品を例にしますが、公式の動作要件を確かめて同時利用の人数ぶん余裕を見るという考え方は、勘定奉行やERPなど他の会計システムでも共通です。
まず前提として、公式に示される動作要件は「ソフトが動くための最低条件」であって、「推奨されるサーバー構成」ではありません。複数人で使う場合の同時アクセスや余裕を見た構成は、実際の利用台数・業務量に応じた別の判断になります。弥生製品の例では、デスクトップソフトの動作要件は以下のように示されています(2026年10月1日時点)。
- CPU:1GHz以上で2コア以上のインテルプロセッサまたは互換プロセッサ(サーバー環境で動作させる場合はインテル Core 2 Duo以上または同等のプロセッサ)
- メモリ:4GB以上
- ストレージ:弥生会計で400MB以上の必須空き容量(データ領域・データベースをインストールする場合は別途必要)
出典・参考資料(1件)
- 出典:弥生製品 システム要件(デスクトップソフト)|弥生株式会社(2026年10月1日確認)
複数人で使うネットワーク版では、必要なものがさらに増えます。弥生のネットワーク製品では、クライアント/サーバー型の構成で3〜20台のパソコンで利用でき、パソコンとは別に、データベースとしてSQL Serverをインストールするサーバーが必要と示されています。
そのデータベースサーバーには、Windows Server 2025/2022/2019/2016と、リモートデスクトップサービスのクライアントアクセスライセンス(RDS CAL)が求められます。
出典・参考資料(1件)
- 出典:必要なシステム構成/システム要件(弥生ネットワーク製品)|弥生株式会社(2026年10月1日確認)
複数人で使うサーバー側の構成は、最低動作要件そのままではなく、同時に使う人数やデータ量に応じて余裕を持たせます。メモリやCPUコアは利用人数が増えるほど多めに、ストレージは会計データの蓄積を見込んで確保しておくと安心です。
具体的な推奨構成は利用台数や業務量で変わるため、利用予定の台数を伝えて、メーカーや販売店に推奨サーバー構成の見積もりを依頼するのが確実です。
買い替え費用を考えるときは、サーバー本体の価格だけでなく、これらの構成要素を足し合わせる必要があります。おおまかには、サーバー機器本体に加えて、サーバーOS(Windows Server)のライセンス、データベース(SQL Server)、利用人数分のアクセスライセンス、障害に備えたディスクの冗長化(RAID)用の機器、設定・移行の作業費などが積み上がります。
勘定奉行やERPの会計モジュールなど弥生以外のネットワーク型会計システムでも、データベース用のサーバーとOS・接続ライセンスが必要になる点は共通です。必要なスペックや対応ライセンスは各製品の動作要件を確認し、同様に構成要素を積み上げて見積もる形になります。
金額の目安を、公開されている希望小売価格や標準的な価格帯から見てみましょう(いずれも2026年10月1日時点)。エントリー級のタワー型サーバーは本体でおおよそ20万円台〜(税込・OSやディスクは別)、Windows Server 2022 Standardは希望小売価格でおよそ16万円(16コア・税別、実売は販売店で変動)です。
複数人で使うネットワーク版では、利用者ごとのアクセスライセンス(CAL)が、通常の基本CALとリモートデスクトップ用のRDS CALの二重で必要です。希望小売価格の目安では、5ユーザー分で基本CALが約4万5千円、RDS CALが約15万円(1人あたり約3万円)です。
データベースのSQL Serverは、無償のExpress版で足りる場合もあります。ただし1データベース10GBの容量上限があり、扱うデータ量がこれを超える規模では有償版のライセンス費用が加わります。
有償版はエディションに応じた費用がかかり、Standardではサーバーライセンスとクライアント接続ごとのライセンス(Server+CAL)で構成する形態などがあります(国内の販売価格は販売店により要見積もり)。
これらを小規模な5ユーザー構成で希望小売価格ベースに積み上げると、本体・Windows Server・各CALだけでおおよそ55万〜60万円前後になり、さらにメモリやディスクの増設、SQL Serverの有償版、構築・移行の作業費が加わります。
総額は構成や台数で大きく変わるため、単一の目安額ではなく、利用規模に応じた見積もりで確認するのが確実です。クラウド会計ソフトの月額(弥生会計 Nextなら月2,900円〜)と、これらオンプレミスの初期費用・更新費用を並べて比べると、自社にとっての損得が見えやすくなります。
出典・参考資料(3件)
- 出典:Microsoft 製品 希望小売価格(Windows Server 2022・CAL・RDS CAL)|日本ヒューレット・パッカード(2026年10月1日確認・税別)
- 出典:SQL Server 2022 の価格|日本マイクロソフト(2026年10月1日確認)
- 参考資料:PRIMERGY タワー型サーバー|富士通(2026年10月1日確認)
RAIDによる冗長化や定期的な遠隔バックアップは、会計ソフトの動作要件そのものではなく、データを失わないための一般的な備えです。要件に含まれていないからと省くと、機器故障時にデータを失うリスクが残るため、可用性の観点から別途検討しておきたい項目です。
クラウドへ移行する場合の進め方と注意点
オンプレミスからクラウドへ移す場合は、いくつか事前に確認しておきたい点があります。進め方と注意点を整理します。移行にかかる期間や手間は、引き継ぐデータ量・既存のカスタマイズや連携の多さ・移行作業を自社で行うか支援を受けるかで大きく変わります。会計の締めや決算と重ならない時期を選び、データの移行確認やテスト運用の期間も見込んでスケジュールを組むと、業務を止めずに切り替えやすくなります。
第一に、既存データの移行です。これまでの仕訳データや残高を新しい環境へ引き継げるかを確認しておきましょう。弥生会計のように、デスクトップ版やオンライン版からクラウド版へデータを移行する手順を公式に用意している製品もあれば、他社ソフトからの乗り換え支援を提供している製品もあります。移行の可否と手順は製品ごとに異なるため、自社が使っているソフトの移行経路を最初に確かめておくと安全です。
第二に、既存のカスタマイズや他システムとの連携です。SaaSは標準機能の範囲での利用が前提のため、独自の帳票や基幹システムとの連携が、移行後も同じ形で使えるとは限りません。連携が業務に組み込まれている場合は、代替手段があるか、あるいはIaaS・専用サーバーで既存システムを載せ替える方が適しているかを検討しておきましょう。
第三に、保存要件への対応です。会計帳簿や電子取引データの保存は、置き場所が自社サーバーかクラウドかにかかわらず、電子帳簿保存法で定められた「真実性の確保」「可視性の確保」といった要件を満たす必要があります。電子取引データについては、紙ではなくデータのまま保存することが義務づけられています。クラウドに移せば自動的に法令対応になるわけではなく、どの形態でも保存要件を満たせるかを確認する姿勢が必要です。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:電子帳簿保存法の概要|国税庁
クラウド・オンプレミスのどちらを選ぶ場合でも関わってくる電子帳簿保存法について、満たすべき要件や対応のポイントを以下の記事で詳しく解説しています。
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サーバー運用の負担をなくすクラウド型会計システム
オンプレミスで続く保守・更新・バックアップの負担を手放したい場合、サーバーを持たずに使えるクラウド型の会計システムが選択肢になります。ここでは、自社の規模や体制に応じて候補になる代表的なサービスを紹介します。オンプレミスや専用サーバーにもそれぞれの利点があるため、クラウドが合う場合の選択肢として参考にしてください。
ここで取り上げるのはクラウド会計ソフトの一例です。規模やタイプ別にクラウド会計ソフトを幅広く見比べて選びたい場合は、以下の記事で料金や選び方を解説しています。
| サービス名 | 弥生会計 Next | Tenbook | マネーフォワード クラウド会計Plus |
|---|---|---|---|
| 提供形態・対象規模 | クラウド会計ソフト(SaaS) 小規模〜中小企業・法人向け | クラウド会計ソフト+記帳・決算・申告の代行 創業期〜中小企業(売上5億円以下が目安) | クラウド会計ソフト(SaaS) IPO準備・中堅〜上場企業向け |
| 月額料金 | 月2,900〜7,000円 (年契約・税抜) | 月29,500円(免税事業者)〜 43,500円(課税事業者) ※記帳・決算・申告の代行込み | 要問い合わせ (無料見積もり) |
| 移行・特徴 | デスクトップ版・弥生会計 オンラインからの移行に公式対応。他社ソフトからのインポートも可能 | サーバー運用に加え経理業務そのものもワンストップで外部委託できる | 仕訳承認・権限管理・操作ログなど内部統制に対応。他社ソフトからの移行は個別見積もり |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | オンライン相談を予約 |
1. 弥生会計 Next(弥生株式会社)

弥生会計 Nextは、法人向けに提供されているクラウド型の会計ソフトです。長年使われてきたデスクトップ版「弥生会計」や「弥生会計 オンライン」からのデータ移行が公式に用意されており、自社サーバーで弥生会計を運用してきた企業が、サーバーを持たずに使う形へ乗り換える際の直接の移行先になります。
料金はプランごとに公開されています。2026年10月1日時点の税抜価格では、年間契約の場合、エントリープランが月あたり2,900円、ベーシックプランが月あたり4,200円、ベーシックプラスプランが月あたり7,000円です。決算書の作成・出力を除く機能を試せる無料体験も用意されており、サーバーの運用を手放しつつ、慣れた弥生の操作感を引き継ぎたい小規模〜中小企業に向いています。
出典・参考資料(1件)
- 出典:弥生会計 Next 料金|弥生株式会社(2026年10月1日確認・税抜)
2. Tenbook(シンアカウンティングサービス株式会社)

Tenbookは、クラウド会計ソフト「10book」を軸に、会計・経理・給与を1つのシステムに集約できるサービスです。サーバーを持たずに使えるクラウド型で、簿記の知識がなくても決算書の作成まで進められる点が特徴です。さらに、経理代行をワンストップで組み合わせられるため、「社内にサーバーも経理を回せる人も足りない」という企業にも対応できます。
Tenbookの会計サービスの料金は、初期費用0円で、月額は免税事業者が29,500円、課税事業者が43,500円です(2026年9月19日時点)。サーバー運用だけでなく経理業務そのものの負担も軽くしたい小規模企業にとって、クラウド化と運用の外部委託を同時に進められる選択肢といえます。
出典・参考資料(1件)
- 出典:Tenbook(テンブック)公式サイト|シンアカウンティングサービス株式会社(2026年9月19日確認)
3. マネーフォワード クラウド会計Plus(株式会社マネーフォワード)

マネーフォワード クラウド会計Plusは、IPO準備企業や中堅〜上場企業に向けたクラウド型の会計システムです。仕訳の承認、権限管理、操作ログといった内部統制に対応する機能を備え、導入社数は2,000社以上とされています。ERPの会計モジュールなどを自社サーバーで動かしてきた中堅企業が、内部統制の要件を満たしながらサーバーを手放したい場合の候補になります。
料金は利用人数や要件に応じた個別見積もりとなっており、公式には具体的な月額が公開されていません。導入を検討する際は、無料見積もりや問い合わせで自社の規模に応じた金額を確認する形になります。小規模向けの「マネーフォワード クラウド会計」とは別の上位製品である点に注意してください。
出典・参考資料(1件)
- 出典:マネーフォワード クラウド会計Plus|株式会社マネーフォワード(2026年10月1日確認)
クラウドへの移行は、既存のシステムをすべて一度に入れ替える形だけとは限りません。導入の進め方について、株式会社マネーフォワードの栗本賢人氏は次のように述べています。

『マネーフォワードクラウド』は、すべてを一度に入れ替えるのではなく、課題感の強い領域から段階的・部分的に導入していただくことができます。従業員数50名を超えるような企業では、既存の基幹システムを活かしつつ、不足している機能を補完する形で採用いただくケースが多いです。
会計システムに限らず、資金管理や予算なども含めた財務管理システム全体で選択肢を比較検討したい場合は、以下の記事で機能・料金・タイプ別の選び方を解説しています。導入を検討される方はあわせてご覧ください。
まとめ
会計システムを動かすサーバーには、オンプレミス(自社サーバー)、クラウド(SaaS)、IaaS、専用サーバー、ハイブリッドという選択肢があり、費用・運用の手間・データの持ち方・カスタマイズの自由度・BCPの観点でそれぞれ性格が異なります。「クラウド化が常に正解」というわけではなく、既存の作り込みを活かしたい企業にはオンプレミスやIaaS・専用サーバーが向く場合もあります。
判断の起点は、自社が使っている会計ソフトがどの形態に対応しているか、既存のカスタマイズや連携をどこまで残したいか、社内にサーバーを運用できる体制があるかの3点です。サーバーの保守や更新の負担を手放したい場合は、サーバー不要で使えるクラウド型の会計システムが有力な選択肢になります。自社の規模や体制に当てはめて、資料請求や見積もりで具体的に比較してみてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 会計システムのオンプレミスとクラウドは何が違いますか?
A. 会計システムのオンプレミスとクラウドの違いは、サーバー機器を自社で保有して運用するか、提供事業者の設備をインターネット経由で利用するかにあります。オンプレミスは自社に物理サーバーを置き、保守・更新・バックアップを自社で担う代わりに、データを社内に保持でき既存の作り込みを維持しやすい形態です。
クラウド(SaaS型)はサーバーを持たずに済み、保守や更新を提供事業者に任せられますが、カスタマイズは標準機能の範囲内に制約されます。
Q. 会計システムはオンプレミスとクラウドのどちらが安いですか?
A. 会計システムの費用は、初期費用はクラウドが小さく、長期のランニングを含めた総額は利用条件によって変わるため、一概にどちらが安いとは言えません。オンプレミスはサーバー本体に加え、サーバーOS(Windows Server)やデータベース(SQL Server)のライセンス、利用人数分のアクセスライセンス、冗長化用の機器、設定・移行の作業費がかかり、数年ごとの買い替えも発生します。
クラウドは初期費用が小さく月額・年額のサブスクリプション型ですが、利用が続く限りランニングコストがかかります。本体価格だけでなく、これらを含めた総額で比較することが大切です。
Q. 会計システムをクラウドに移すと、既存のデータやカスタマイズはどうなりますか?
A. 会計システムをクラウドに移す際は、データは製品が用意する手順で引き継げる一方、独自のカスタマイズや他システム連携はそのまま持ち込めない場合がある点に注意が必要です。弥生会計のように、デスクトップ版やオンライン版からクラウド版へのデータ移行手順を公式に用意している製品もあります。
ただしSaaSは標準機能の範囲での利用が前提のため、独自の帳票や基幹システムとの密な連携が、移行後も同じ形で使えるとは限りません。連携が業務に組み込まれている場合は、IaaSや専用サーバーで既存システムを載せ替える選択肢も検討します。
Q. 会計システムのSaaSとIaaSは何が違いますか?
A. 会計システムのSaaSとIaaSの違いは、SaaSはソフトの機能をそのまま使うのに対し、IaaSはクラウド上に借りたサーバー基盤へ自社で会計システムを構築する点にあります。SaaS(クラウド会計ソフト)は、サーバーもソフトも提供事業者が用意し、標準機能をインターネット経由で利用します。
IaaSはサーバーやストレージなどの基盤だけを借り、その上に既存の会計システムを載せる形のため、オンプレミスに近い自由度を保ちながら物理機器の保守を手放せます。既存の作り込みを活かしたい場合は、IaaSや専用サーバーが候補になります。
Q. 会計システムをサーバーを持たずに使う方法はありますか?
A. 会計システムは、クラウド(SaaS型)の会計ソフトを使えば、自社でサーバーを持たずに運用できます。インターネット経由で提供事業者のサービスをそのまま利用するため、サーバー機器の購入・保守・更新・バックアップを自社で抱える必要がありません。
弥生会計 Next、Tenbook、マネーフォワード クラウド会計Plusなどが代表例で、テレワークや多拠点からの利用、災害時の事業継続にも対応しやすくなります。
Q. クラウド会計システムの料金はどのくらいかかりますか?
A. クラウド会計システムの料金は、小規模向けで月額数千円から、中堅・上場企業向けで個別見積もりまで、対応規模によって幅があります。たとえば弥生会計 Nextは、年間契約で月あたり2,900円〜7,000円(2026年10月1日時点・税抜)です。IPO準備〜上場企業向けのマネーフォワード クラウド会計Plusは、利用人数や要件に応じた個別見積もりとなっています。
初期費用は小さいものの、利用が続く限り月額・年額のランニングコストが発生するため、自社の規模や必要な機能に応じて資料請求や見積もりで確認するのが確実です。
Q. クラウドに移せば電子帳簿保存法に自動で対応できますか?
A. クラウドに移しても、電子帳簿保存法に自動で対応できるわけではありません。会計帳簿や電子取引データの保存は、置き場所が自社サーバーかクラウドかにかかわらず、「真実性の確保」「可視性の確保」といった要件を満たす必要があります。
とくに電子取引データは、紙ではなくデータのまま保存することが義務づけられています。クラウド・オンプレミスのどちらを選ぶ場合でも、その製品や運用が保存要件を満たせるかを確認する姿勢が必要です。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















