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経費精算ルールの作り方|規程に盛り込む項目・科目別の決め方と電子帳簿保存法対応

経費精算ルールの作り方のサムネイル画像

経費精算の申請内容が人によってバラつく、領収書が後から出てくる、上限や期限が曖昧で現場と揉める。こうした困りごとの多くは、経費精算のルール(規程)が整っていないこと、あるいは決めたルールが現場に浸透していないことに原因があります。

経費精算のルールとは、どの支出を経費として認め、いくらまで・いつまでに・どう申請し、誰が承認するのかを社内で定めた取り決めです。ルールを明文化すると、申請者も承認者も判断に迷わなくなり、不正や計上ミスを防ぎながら経理の確認作業を軽くできます。

この記事では、経費精算の規程に盛り込む項目と自社での決め方を、項目ごとの判断材料とあわせて整理します。交通費・出張費・交際費など科目別の決めどころ、作成の手順、電子帳簿保存法・インボイス制度への対応、そして作ったルールを形骸化させないための運用まで、自社の規程づくりに着手できる形で解説します。

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経費精算の規程に盛り込む項目と自社での決め方

経費精算の規程は、次の項目をそろえると、申請者・承認者・経理の誰が読んでも判断できる土台になります。まずは自社の規程の目次として、以下の項目を押さえてください。

  • 経費として認める範囲(私的利用との線引き)
  • 経費の種類ごとの上限金額
  • 申請期限と締め日
  • 領収書・証憑の添付ルール(ない場合の対応を含む)
  • 自己決裁の禁止と承認経路
  • 例外的な支出の扱い

ここからは、それぞれの項目を「何を・なぜ・どう決めるか」まで掘り下げます。項目を並べるだけでなく、自社の実情に合わせて数値や線引きを埋められる状態を目指します。

経費と認める範囲(私的利用との線引き)

最初に決めるのは、どの支出を会社の経費として認めるかです。業務上必要な支出かどうかが基準になりますが、「業務に必要」の解釈は人によって揺れます。そこで、認める支出と認めない支出を具体例で示しておくと、申請者が迷わず、承認者も判断を統一できます。

たとえば交通費・出張旅費・消耗品費・接待交際費は認める一方、業務と関係のない私的な飲食や、資格取得費用のうち個人に帰属する部分は対象外とする、といった形です。判断に迷いやすい支出(自宅から直行直帰した場合の交通費、残業時の食事代など)は、個別に扱いを明記しておくと後の運用が楽になります。

あわせて、この規程を誰に適用するのか(適用対象者の範囲)も冒頭で定めておきます。正社員だけか、契約社員・パート・アルバイトを含むか、役員の経費も同じ規程で扱うかを明記しておくと、「自分はこのルールの対象なのか」で迷う人が出ません。雇用形態によって認める経費や上限を変える場合は、その区分もあわせて書いておきます。

上限金額の決め方(相場でなく自社の基準で設定する)

出張の日当や宿泊費、交際費などには、1回あたりや1人あたりの上限金額を定めておきます。上限があると、申請者は事前に見通しを立てられ、承認者は金額の妥当性をその場で判断できます。

上限額には、すべての会社に当てはまる相場や法律上の決まった基準があるわけではありません。自社の業種・職位・利用頻度を踏まえ、過去の実績額を集計して無理のない水準を設定するのが現実的です。役職や出張先のエリアによって金額を変える場合は、その区分も規程に書き込みます。金額を一度決めたら、物価や実態に合わせて定期的に見直す前提で運用します。

申請期限と締め日

いつまでに申請するかを決めておかないと、月をまたいだ申請や期末の駆け込み申請が増え、経理の処理が滞ります。「支出が発生した月の翌月◯営業日まで」のように、締め日と期限を具体的な日付ルールで定めます。

期限を設ける目的は、月次決算を予定どおり締めること、支出を正しい期間に計上すること、そして古い申請がまとめて出てくる状況を防ぐことにあります。期限を過ぎた申請をどう扱うか(原則受け付けないのか、理由を添えて例外申請とするのか)も、あわせて決めておくと運用がぶれません。

領収書・証憑の扱い(ない場合の対応も含む)

領収書やレシートは、支出が実際にあったことを裏づける証憑です。何を添付してもらうか、電子データでの提出を認めるか、原本をどう保管するかを規程で定めます。領収書は法人税法上の保存対象書類であり、保存義務がある点も押さえておきましょう。

国税庁は、法人の帳簿書類等の保存について次のように示しています。

法人は、帳簿(注1)を備え付けてその取引を記録するとともに、その帳簿と取引等に関して作成または受領した書類(注2)を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間(注3)保存しなければなりません。
(注2)「書類」には、例えば棚卸表、貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書などがあります。

出典:No.5930 帳簿書類等の保存期間|国税庁

保存期間は原則7年間で、欠損金の繰越控除を受ける事業年度などは10年間に延びます(法人税法第126条・施行規則第59条ほか)。規程では、精算が終わった領収書を誰がどこに・何年保存するかまで定めておくと、保存漏れを防げます。

領収書を紛失した、そもそも発行されない支出がある、といった場合の対応も決めておきます。公共交通機関の運賃や慶弔費など領収書が出にくい支出は、出金伝票や支払先・金額・目的を記録した書類で代替する運用が一般的です。代替を認める支出の範囲と、必要な記録項目を規程に明記しておくと、申請者ごとの対応のばらつきがなくなります。

出典・参考資料(1件)

領収書が出ない支出を出金伝票で代替するルールを設ける場合は、出金伝票に書くべき項目や記入例、インボイス制度との関係を次の記事で確認できます。

自己決裁の禁止と承認経路

自分で申請した経費を自分で承認する「自己決裁」は、不正や公私混同の温床になります。申請者と承認者を必ず分け、役職や金額に応じた承認経路を規程で定めます。

承認経路は、金額が一定額を超えたら上位者の承認を加える、といった段階設計にすると、現場の裁量と統制のバランスが取りやすくなります。役員や管理職自身の経費を誰が承認するかも、あらかじめ決めておきましょう。承認者が不在のときの代理承認の扱いも書いておくと、申請が止まりません。

例外的な支出の扱い方(例外を乱立させない設計)

規程をどれだけ細かく作っても、想定外の支出は必ず出てきます。例外をその都度認めていると、やがて「あの人は認められた」という前例が積み重なり、ルールが形骸化します。

例外を扱うときは、申請理由を書面で残す、通常より上位の承認を必須にする、といった手続きを定め、安易に通らない設計にします。例外が繰り返し発生する支出は、例外のままにせず、規程本体に取り込んで通常ルール化するかを定期的に検討します。

規程に盛り込む項目チェックリスト

ここまでの項目を、自社の規程づくりで埋めていくチェックリストとして整理しました。各項目に自社の数値・線引きを当てはめれば、規程のひな形になります。

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規程に盛り込む項目経費として認める範囲上限金額申請期限・締め日領収書・証憑自己決裁の禁止・承認経路例外対応仮払金・立替金
規程で定めること対象となる支出の種類と、私的利用との線引き(判断に迷う支出の具体例)経費の種類ごとの1回・1人あたりの上限と、役職・エリア別の区分いつまでに申請するか(日付ルール)と、期限超過時の扱い添付する証憑の種類、電子提出の可否、保存方法・保存年数、ない場合の代替手続き申請者と承認者の分離、金額別の承認段階、役員経費の承認者、代理承認例外を認める手続き(理由の記録・上位承認)と、例外の通常ルール化の見直し仮払いの申請・精算・残金返還の手続きと、従業員の立替払いを精算する方法・タイミング

※上記は規程に盛り込む代表的な項目です。業種・組織規模により必要な項目は追加してください。

条文に落とすときのイメージとして、たとえば次のように書き起こします(金額や日数は自社の基準に置き換えてください)。

  • 申請期限:経費が発生した月の翌月〇営業日までに申請する。期限を過ぎた申請は、所属長の承認を得たうえで例外申請として扱う。
  • 上限金額:出張の宿泊費は1泊あたり〇〇円、日当は1日あたり〇〇円を上限とする。これを超える場合は、事前に部門長の承認を得る。
  • 領収書:原則として領収書またはレシートを添付する。やむを得ず入手できない場合は、出金伝票に支払先・金額・目的を記載して代替する。
  • 承認経路:経費の申請は申請者の直属の上長が承認する。1件〇〇円を超える経費は、上長に加えて部門長の承認を必須とする。役員が申請する経費は、他の役員または管理部門の責任者が承認する。

基本の項目に加えて、仮払金・立替金の扱いと、精算した経費の支払方法・タイミングも決めておきます。従業員が立て替えた経費を精算する立替払いでは、精算額をいつ・どの方法で支払うかを規程で定めます。

支払方法はたとえば、毎月の締め日までに承認された分を翌月の給与と合わせて支払う、給与とは別に指定口座へ振り込む、といった形です。支払日を決めておくと、申請者は入金の見通しを持て、経理も支払業務をまとめて処理できます。

出張旅費のように金額が大きく、事前に概算で現金を渡す場合は仮払金として扱います。仮払いの申請・概算額の算定・出張後の精算と残金返還(不足分は追加支給)の手続きと期限を決めておくと、仮払金が精算されずに残る事態を防げます。

あわせて、各経費をどの勘定科目で処理するかの割り当て基準も、規程や申請フォームで示しておきます。旅費交通費・接待交際費・消耗品費・会議費などの費目をそろえておくと、申請者の費目選択と経理の仕訳が一致し、集計や税務上の判定もしやすくなります。

なぜ経費精算のルール(規程)が必要か

ここまで項目ごとの決め方を見てきました。どの項目をどこまで厳密にするか優先順位に迷ったときは、ルールが何のために要るのかに立ち返ると判断しやすくなります。経費精算のルールには、主に次の役割があります。

第一に、申請・承認・経理の判断基準をそろえ、業務を効率化する役割です。基準が明文化されていれば、申請者は何をどう出せばよいか迷わず、承認者は毎回の確認に悩まず、経理の差し戻しも減ります。第二に、私的利用や水増し請求といった不正を防ぎ、内部統制を効かせる役割があります。上限・自己決裁の禁止・証憑の添付といったルールが、不正の余地を狭めます。

第三に、領収書の保存や税務上の取り扱いを守り、税務調査に備える役割です。保存義務のある証憑を確実に残し、経費と認められる範囲を明確にしておくことで、申告内容を説明できる状態を保てます。そして第四に、同じ立場の社員が同じ基準で精算できる公平性を保つ役割があります。人によって認められたり認められなかったりする状態は、不満や形骸化につながります。

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科目別の決めどころ(交通費・出張費・交際費・会議費)

経費の種類(科目)ごとに、決めておくべきポイントは異なります。ここでは、申請と承認で迷いやすい交通費・出張費・交際費・会議費について、規程で押さえるべき点を整理します。

交通費の決めどころ(経路・実費と定期代の二重払い防止)

交通費は、どの経路・運賃を認めるかを決めておきます。最も合理的な経路の運賃を基準とし、特急料金やグリーン車の扱い、タクシーを認める条件(深夜・荷物が多い場合など)を明記します。

通勤定期券を支給している区間の交通費を、別途実費で精算すると二重払いになります。定期区間は精算対象から除くというルールを定め、申請時に確認できる仕組みにしておくことが重要です。自宅から客先へ直行直帰した場合など、通勤経路と重なるケースの扱いも決めておきます。

出張費の決めどころ(日当・宿泊費の上限の定め方)

出張費では、交通費・宿泊費・日当の扱いを分けて定めます。宿泊費は1泊あたりの上限、日当は出張1日あたりの定額、というように基準を決めておくと、申請と精算がスムーズになります。

日当や宿泊費には一律の公的な基準額がないため、上限金額の決め方と同じく、自社の過去の実績や出張先の物価を踏まえて水準を定めます。国内と海外、役職や出張先エリアで金額を変える場合は、その区分も明記します。

出張の規定が多い場合は、出張旅費規程として別建てにするか、経費精算規程の一部として定めるかも決めておきます。日当を支給する場合は、実費精算との関係(日当とは別に食事代を精算できるかなど)も整理しておきましょう。

交際費・会議費の決めどころ(1人あたり基準と両者の区分)

交際費と会議費は、税務上の扱いが異なるため、規程でも区分して定めます。まず、交際費等がどのような支出を指すのかを押さえます。

交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出するものをいいます。

出典:No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算|国税庁

得意先などの接待のための飲食費については、1人あたりの金額が一定額以下であれば、交際費等から除いて損金に算入できる特例があります。国税庁によれば、この基準額は飲食等に参加した人数で割った金額が10,000円以下の費用とされています(令和6年4月1日以後に支出する飲食費が対象。令和6年3月31日以前の支出は5,000円以下が基準でした)。

1人あたりの金額を記録・判定できるよう、規程では飲食費の精算時に参加人数と総額を記録するルールにしておきます。

一方、会議費は「1人あたりいくらまで」という金額基準で決まるものではありません。会議に関連して供される茶菓・弁当などのうち、通常要する費用は交際費等から除かれます。

(2)会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用

出典:No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算|国税庁

社外の相手を接待する飲食は交際費等(うち1人10,000円以下の飲食費は損金算入の特例あり)、会議に伴う通常の茶菓・弁当代は会議費、という切り分けになります。1人あたり10,000円の基準は交際費等の飲食費特例の話であって、会議費の金額上限ではありません。

交際費等と会議費の区分を示す図。交際費等は得意先など社外の相手を接待する飲食などで、1人あたり10,000円以下の飲食費は損金算入の特例がある。会議費は会議に伴って供する茶菓・弁当など通常要する費用で、金額上限はなく通常必要な範囲かで判定する。1人あたり10,000円以下は交際費等の飲食費特例の基準であり、会議費の金額上限ではない。

規程では、交際費・会議費それぞれで記録すべき情報(日付・参加者とその関係・人数・金額・店舗など)を定めておくと、税務上の判定にも対応できます。

出典・参考資料(1件)

在宅勤務・リモートワーク経費の線引き(在宅勤務手当と実費精算の境界)

交通費・出張費・交際費に加えて、近年は科目をまたぐ新しい論点として在宅勤務の経費があります。通信費・電気代・備品代は業務利用と私的利用が混ざるため、扱いを曖昧なままにすると申請ごとに判断が揺れます。

扱い方は大きく2つあります。1つは、毎月定額の在宅勤務手当を支給する方法で、計算と運用がシンプルです。もう1つは、業務で使った分を実費で精算する方法で、通信費や電気代のうち業務利用分の算定方法(利用時間や日数による按分など)をあらかじめ定めておく必要があります。

実費を精算する場合の按分の目安として、国税庁は在宅勤務の費用負担に関するFAQで、業務使用部分を次の算式で計算する方法を示しています。

  • 通信費(基本使用料・通信料)=従業員が負担した1か月の料金 × その従業員の1か月の在宅勤務日数 ÷ 該当月の日数 × 1/2
  • 電気料金(基本料金・電気使用料)=従業員が負担した1か月の料金 × 業務に使った部屋の床面積 ÷ 自宅の床面積 × 在宅勤務日数 ÷ 該当月の日数 × 1/2

たとえば1か月の通信料が10,000円で、在宅勤務日数が20日・当月が30日の場合、業務使用分は「10,000円 × 20日 ÷ 30日 × 1/2=3,334円(1円未満切上げ)」となります。これは合理的な計算方法の一例で、より精緻な方法で実際の業務使用額を算出して支給することも認められています。規程では、どの算定方法を使うか、対象となる費目・上限・必要な申請書類を明記しておきます。

出典・参考資料(1件)

消耗品や備品は、事前承認を条件に経費として認める、といったルールにすると、私的利用との線引きがはっきりします。どちらを採るかと、対象となる費目・上限・必要な申請手続きを規程に明記します。

経費精算ルールの作り方(手順)

盛り込む項目と科目別の決めどころが見えたら、実際に規程をつくる・見直す手順に進みます。次の流れで進めると、現場の実態に合ったルールを無理なく整備できます。

  1. 現在の運用フローを棚卸しする:申請から承認・精算・支払いまでの流れと、どこで手戻りや遅延が起きているかを洗い出し、ルール化すべき論点を明確にします。
  2. 精算の対象・上限・申請期限を明文化する:この記事の前半で整理した項目を、自社の数値と線引きに置き換えて書き起こします。
  3. 科目別のルールと例外を整理する:交通費・出張費・交際費など科目ごとの決めどころと、例外を認める手続きを定めます。
  4. 電子帳簿保存法・インボイス制度への対応を反映する:電子取引データの保存や、適格請求書の確認・保存のルールを規程に織り込みます(詳細は次章)。
  5. 社内に周知し、運用に落とし込む:研修やマニュアルで浸透させ、定期的に実態と照らして見直します。

作って終わりにせず、定期的に実態と照らして見直す前提で運用することが、形骸化を防ぐうえで欠かせません。各ステップで誰を巻き込み、どの項目を決めるかを決めておくと、着手から運用までが滞りなく進みます。

電子帳簿保存法・インボイス制度への対応

経費精算のルールづくりでは、電子帳簿保存法とインボイス制度への対応を避けて通れません。いずれも領収書・請求書の受け取りと保存に関わるため、規程に反映しておく必要があります。

電子帳簿保存法で対応が必要なのは「電子取引データの保存」

電子帳簿保存法(電子帳簿等保存制度)は、帳簿や領収書・請求書などを電子データで保存することに関する制度で、3つの区分に分かれています。このうち対応が必要なのはどれかを正確に押さえることが、過不足のない規程づくりの出発点です。国税庁は制度の全体像を次のように整理しています。

電子帳簿等保存制度とは、税法上保存等が必要な「帳簿」や「領収書・請求書・決算書など(国税関係書類)」を、紙ではなく電子データで保存することに関する制度をいい、3つの制度に区分されています。
③ 電子取引データ保存【法人・個人事業者は対応が必要です】 申告所得税・法人税に関して帳簿・書類の保存義務が課されている者は、注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書などに相当する電子データをやりとりした場合には、その電子データ(電子取引データ)を保存しなければなりません。

出典:電子帳簿保存法の内容が改正されました(令和5年4月)|国税庁

3つの区分のうち、①電子帳簿等保存(会計ソフト等で作成した帳簿の電子保存)と②スキャナ保存(紙の領収書を読み取って電子保存)は、希望する企業が選べる任意の制度です。これに対し、③電子取引データ保存は法人・個人事業者とも対応が必要です。

電子帳簿保存法の3区分を示す図。区分①電子帳簿等保存(会計ソフト等で作成した帳簿を電子保存)は任意、区分②スキャナ保存(紙の領収書を読み取って電子保存)は任意、区分③電子取引データ保存(メール添付PDFなど電子でやり取りしたデータを電子のまま保存)は法人・個人事業者とも対応が必要。

メール添付のPDFやWebサイトからダウンロードした領収書・請求書など、電子でやり取りした取引データは、電子のまま保存しなければなりません。経費精算の規程では、従業員が電子で受け取った領収書を紙に印刷して提出するのではなく、電子データのまま提出・保存する運用を定めておきます。

この電子取引データの保存については、紙に出力して保存する宥恕(ゆうじょ)措置が令和5年(2023年)12月31日で廃止され、令和6年(2024年)1月以降にやり取りするデータから新しいルールが適用されています。国税庁は、改正の内容を次のように説明しています。

⑵ 令和4年度税制改正で措置された「宥恕措置」は、適用期限(令和5年12月31日)をもって廃止されます。
⑶ 新たな猶予措置が整備されました。 次のイ・ロの要件をいずれも満たしている場合には、改ざん防止や検索機能など保存時に満たすべき要件に沿った対応は不要となり、電子取引データを単に保存しておくことができることとされました。

出典:電子帳簿保存法の内容が改正されました(令和5年4月)|国税庁

令和6年以降は、原則として改ざん防止(真実性の確保)と検索できる状態(可視性の確保)の要件を満たして電子データを保存します。ただし、要件どおりに対応できないことに相当の理由があると所轄税務署長が認める場合には、猶予措置が設けられています。この場合、税務調査の際にデータのダウンロードの求めと書面の提示に応じられるようにしておけば、保存時の要件を満たさなくてもデータを保存しておけます。

自社がどの方法で保存するかを確認し、規程と運用に落とし込んでおきます。

紙で受け取った領収書をスキャナ保存して原本を廃棄したい場合は、②スキャナ保存の要件(解像度200dpi以上・原則カラーでの読み取りなど)を満たす必要があります。スキャナ保存は任意の制度のため、採用するかどうかと、採用する場合の要件を規程で定めます。要件の詳細は国税庁の特設サイトで確認できます。

出典・参考資料(2件)

紙と電子それぞれで領収書を具体的にどう保存し、保存期間や電子帳簿保存法・インボイス制度の要件をどう満たすかは、以下の記事でまとめて整理しています。規程に保存ルールを書き込む際の参考にしてください。

インボイス制度への対応(適格請求書の確認と保存)

インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、令和5年(2023年)10月1日に開始しました。消費税の仕入税額控除を受けるには、一定の事項を記載した帳簿と、適格請求書などの保存が要件になります。

一定の事項を記載した帳簿及び適格請求書などの請求書等の保存が仕入税額控除の要件となります。

出典:適格請求書等保存方式の概要-インボイス制度の理解のために-|国税庁

経費精算では、従業員が受け取る領収書やレシートが適格請求書に該当するか(登録番号などの必要事項が記載されているか)を精算時に確認し、保存する運用が求められます。規程では、適格請求書に該当する証憑とそうでない証憑の扱い、確認の担当と手順を定めておきます。

免税事業者など適格請求書発行事業者以外からの課税仕入れは原則として仕入税額控除の対象外ですが、一定割合を控除できる経過措置が設けられているため、取引先の区分も含めて整理しておくと実務が回ります。

出典・参考資料(1件)

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作ったルールを形骸化させない運用と周知

規程は、作っただけでは機能しません。現場に周知され、守られ、実態に合わせて更新され続けて初めて効果を発揮します。ここでは、ルールを形骸化させないための運用のポイントを整理します。

よくある失敗と対策

経費精算ルールが形骸化するときには、いくつかの典型的なパターンがあります。原因と対策をセットで押さえておきましょう。

1つ目は、周知の不足です。規程を作っても、申請者や承認者が内容を知らなければ守られません。全社への共有に加え、申請時に参照できる要点マニュアルやFAQを用意します。2つ目は、例外対応の積み重ねでルールが曖昧になることです。前述のとおり、例外は手続きを定めて安易に通らないようにし、繰り返すものは本体ルールに取り込みます。

3つ目は、古いルールが更新されないことです。制度改正や実態の変化に合わせて、定期的な見直しの時期をあらかじめ決めておきます。4つ目は、申請・承認の仕組みが紙や表計算のままで、ルールの運用が追いつかないことです。件数が増えるほど手作業の確認には限界があり、次章で触れるシステムの活用が選択肢になります。

承認者が「判断に迷わない」基準づくり

ルールが現場で守られるかどうかは、承認者が迷わず判断できるかに大きく左右されます。承認者ごとに判断がぶれると、申請者は「人によって通る・通らない」と感じ、ルールへの信頼が失われます。

そのためには、承認者が何をどこまで確認するのかを明確にします。金額の上限、領収書の添付、申請期限といったチェック項目を一覧にし、どこを見れば承認してよいかを示しておきます。判断に迷う申請の相談先や、差し戻しの際の理由の伝え方も決めておくと、承認者の負担と申請者の不満の両方を減らせます。

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規程を仕組みで守らせる経費精算システムの活用

ルールを決めても、人手の確認だけでは守らせきれない、というのが現場の実態です。上限超過や領収書の不備を承認者が毎回目視で見つけるのは負担が大きく、件数が増えるほど見落としも起こります。経費精算システムを使うと、規程違反や上限超過を申請の時点で自動で検知し、承認フローをルールどおりに回すことで、ルールを「人手」ではなく「仕組み」で守らせることができます。

法令への対応でも同じことがいえます。電子帳簿保存法に合わせて事務処理規程を整えても、申請や保存の業務フローが紙のまま残ると、紙と電子の二重運用を抱え込みがちです。申請の時点で保存形式や要件を自動でチェックできれば、こうした運用の負担を抑えられます。

ここでは、規程違反・上限超過の自動チェックや多段承認に強みを持つサービスを紹介します。まずは主なサービスの特徴を比較表で整理します。

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サービス名Bill One経費弥生経費 Nextマネーフォワード クラウド経費
規程違反・上限超過のチェック●検知ルールをカスタマイズして自動チェック△領収書形式・重複を自動チェック(上限超過は要問い合わせ)●金額上限・過去日数をアラート/エラー設定
承認ワークフロー(多段・条件分岐)△承認機能あり(多段・条件分岐は要問い合わせ)△承認機能あり(多段・条件分岐は要問い合わせ)●条件分岐は上位プランで対応
電子帳簿保存法対応●電帳法に対応(訂正・削除できない仕様で保存)△保存・検索等の要件対応は弥生証憑 Nextと連携●スキャナ保存は上位プラン(JIIMA認証取得)
インボイス対応●適格請求書を自動判定△登録番号の確認は弥生証憑 Next側●登録番号を国税庁APIで自動判定
領収書のデータ化●データ化精度99.9%(規定条件下)●AIが読み取り・重複を検知●AI-OCRで自動入力
料金の目安要問い合わせ(初期費用+年額費用、件数に応じ個別設定)月4,200円〜(弥生会計 Nextセット版、経費3名含む・税抜)/単体は年額252,000円〜(30名・税抜)月2,480円〜(単体プラン・年払い)/初期費用0円
詳細情報公式資料を見る公式資料を見るオンライン相談を予約

※2026年10月時点の各社公式情報による。プラン・提供形態により異なる場合があります。

1. Bill One経費(Sansan株式会社)

Bill One経費のウェブサイト

名刺管理や請求書受領でデータ化の技術を培ったSansan株式会社が、その技術を経費精算に応用したのがBill One経費です。申請内容を自動でチェックし、企業ごとにカスタマイズした検知ルールで経理の確認作業を軽減できる点が特徴です。

専用のビジネスカードを従業員に配布し、事前申請に基づいてカードの利用限度額や利用期間を自動で制御する仕組みも備えます。カードで決済すれば利用明細がそのままデータとして取り込まれるため、立替払いそのものを減らし、規程から外れた支出が生まれにくくなります。領収書のデータ化や電子帳簿保存法への対応とあわせて、ルールを仕組みで守らせたい企業に向いています。

2. 弥生経費 Next(弥生株式会社)

弥生経費 Nextのウェブサイト

会計ソフトで広く使われる弥生シリーズの一つが、弥生経費 Nextです。申請・承認・精算をスマートフォンで完結でき、弥生会計 Nextと仕訳を自動連携できます。

従業員が領収書をアップロードした際に、電子帳簿保存法に対応した形式かどうかを自動でチェックする機能を備え、申請者に法令の知識を求めずにルールを守らせられます。領収書はAIが読み取って取引先名や科目を提案し、重複した領収書を検知します。交通費では定期区間(電車区間)を自動で控除し、二重支給を防ぎます。電子帳簿保存法の保存・検索などの要件対応は、証憑管理を担う連携先の弥生証憑 Nextが受け持ちます。

3. マネーフォワード クラウド経費(株式会社マネーフォワード)

マネーフォワード クラウド経費のウェブサイト

マネーフォワード クラウド経費は、領収書のスマホ撮影による読み取りから交通費入力、コーポレートカード連携、承認ワークフローまでを一つの画面で扱えるクラウド型の経費精算システムです。規程を仕組みで守らせる機能を具体的に備えている点が特徴です。

経費科目ごとに「アラート・エラー設定」を設けられ、金額の上限を超えた申請や、申請できる過去日数を超えた申請などを検知できます。アラートは注意喚起にとどめて申請を認め、エラーは申請自体をブロックする、といった使い分けが可能です。承認経路は条件に応じて分岐させる多段承認(上位プラン)にも対応します。

電子帳簿保存法ではスキャナ保存・電子取引ソフトの認証(JIIMA認証)を取得し、インボイス制度では適格請求書発行事業者の登録番号を国税庁のデータベースと照合して自動判定します。入力の自動化と会計連携まで含めて効率化したい企業に適しています。

こうした仕組みを使った運用について、同社の栗本氏は、紙ベースの精算を続けていた企業の導入事例を次のように話しています。

栗本氏
株式会社マネーフォワード SMB本部 パートナービジネス部 部長 兼 パートナーアライアンス室 事業開発担当
栗本氏
独自インタビューより

紙ベースの煩雑な経費精算フローが店舗と本社双方の業務時間を圧迫していて、毎月60店舗中50店舗で申請の差し戻しが発生している企業がいらっしゃいました。しかし、クラウドの導入後は、月初の作業時間が最大60時間から約6時間へ削減されたとのお声をいただいています。

ここで取り上げた以外にも経費精算システムは数多くあります。規程を仕組みで守らせるために導入を検討する場合は、料金・機能・使いやすさといった選び方の全体像を、主要サービスを横断的に比較した以下の記事で確認できます。

まとめ

経費精算のルール(規程)づくりは、経費と認める範囲・上限金額・申請期限・領収書の扱い・自己決裁の禁止・例外対応という項目を、自社の数値と線引きに落とし込むことから始まります。交通費の二重払い防止、出張の日当・宿泊費の上限、交際費と会議費の区分など、科目ごとの決めどころも押さえておきましょう。

作成にあたっては、現行フローの棚卸しから周知・研修までを手順立てて進め、電子帳簿保存法の電子取引データ保存やインボイス制度への対応も規程に反映します。そして、作ったルールを形骸化させないためには、周知と定期的な見直しが欠かせません。人手の確認に限界を感じる場合は、規程違反や上限超過を申請時に自動で検知し、承認フローをルールどおりに回せる経費精算システムの活用が有効です。

本記事のチェックリストや記載例を手がかりに、自社に合った経費精算ルールの整備を進めてみてください。

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よくある質問(FAQ)

Q. 経費精算のルール(規程)とは何ですか?

A. 経費精算のルール(規程)とは、どの支出を経費として認め、いくらまで・いつまでに・どう申請し、誰が承認するのかを社内で定めた取り決めです。明文化しておくと、申請者・承認者・経理の誰が読んでも判断に迷わず、不正や計上ミスを防ぎながら確認作業を軽くできます。一般には、経費として認める範囲・上限金額・申請期限・領収書の扱い・自己決裁の禁止・例外対応といった項目で構成します。

Q. 経費精算のルール(規程)はなぜ必要なのですか?

A. 経費精算のルールは、申請・承認・経理の判断基準をそろえて業務を効率化し、不正を防いで内部統制を効かせ、税務調査に備え、社員間の公平性を保つために必要です。基準が曖昧なまま運用すると、人によって申請内容がばらつき、承認者ごとに判断がぶれ、領収書の後出しや過剰請求を止められません。ルールを明文化することで、これらの問題が起きる余地を狭められます。

Q. 経費精算の規程にはどんな項目を盛り込めばよいですか?

A. 経費として認める範囲・経費の種類ごとの上限金額・申請期限と締め日・領収書や証憑の扱い・自己決裁の禁止と承認経路・例外的な支出の扱いが、規程に盛り込む基本の項目です。これらをそのまま目次として、各項目に自社の数値や線引きを当てはめると規程のひな形になります。業種や組織規模に応じて、仮払金・立替金の扱いなど必要な項目を追加します。

Q. 経費精算で自己決裁を禁止するのはなぜですか?

A. 自分で申請した経費を自分で承認する自己決裁を認めると、不正や公私混同の温床になるためです。申請者と承認者を必ず分け、金額に応じて上位者の承認を加える承認経路を定めることで、チェックが働きます。役員や管理職自身の経費を誰が承認するかも、あらかじめ決めておきます。

Q. 領収書は経費精算が終わった後、何年保存する必要がありますか?

A. 領収書などの書類は、原則としてその事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存する必要があります。青色申告書を提出した事業年度で欠損金が生じた事業年度などは、保存期間が10年間に延びます。規程では、精算が終わった領収書を誰がどこに・何年保存するかまで定めておくと、保存漏れを防げます。

出典・参考資料(1件)

Q. 電子帳簿保存法では、紙の領収書もすべて電子データ化しなければいけませんか?

A. いいえ。電子帳簿保存法で対応が必須なのは「電子取引データ保存」だけで、紙で受け取った領収書を無理に電子化する義務はありません。メール添付のPDFやWebサイトからダウンロードした領収書・請求書など、電子でやり取りしたデータは電子のまま保存する必要があります(令和6年1月以降にやり取りするデータが対象)。

一方、紙の領収書を読み取って保存するスキャナ保存や、会計ソフトで作成した帳簿の電子保存は、企業が選べる任意の制度です。規程では、電子で受け取った領収書は印刷せず電子のまま提出・保存する運用を定めておきます。

出典・参考資料(1件)

Q. 経費精算における交際費と会議費はどう違うのですか?

A. 社外の相手を接待する飲食などは交際費等、会議に伴って供される茶菓・弁当などの通常要する費用は会議費として区分します。交際費等のうち、飲食等に参加した人数で割った金額が1人あたり10,000円以下の飲食費は、交際費等から除いて損金に算入できる特例があります(令和6年4月1日以後に支出する飲食費が対象。令和6年3月31日以前の支出は5,000円が基準でした)。

会議費には「1人あたりいくらまで」という金額上限はなく、会議に通常必要な範囲かどうかで判定する点に注意が必要です。規程では、それぞれで記録すべき情報(日付・参加者とその関係・人数・金額・店舗など)を定めておきます。

出典・参考資料(1件)

Q. 出張の日当や宿泊費の上限は、いくらに設定すればよいですか?

A. 日当や宿泊費には、民間企業に共通して当てはまる公的な基準額はなく、自社の実態に合わせて定めます。過去の出張実績や出張先の物価を踏まえ、無理のない水準を設定するのが現実的です。国内と海外、役職や出張先エリアで金額を変える場合は、その区分を出張旅費規程に明記し、物価や実態に合わせて定期的に見直します。

Q. 作った経費精算ルールを形骸化させないためにはどうすればよいですか?

A. ルールを現場に周知し、定期的に実態と照らして見直し続けることが、形骸化を防ぐ基本です。規程を作っても申請者や承認者が内容を知らなければ守られないため、要点をまとめたマニュアルやFAQを用意し、承認者が何をどこまで確認すればよいかを明確にします。

例外対応の積み重ねや古いルールの放置も形骸化の原因になります。件数が増えて人手の確認が追いつかない場合は、規程違反や上限超過を申請時に自動で検知し、承認フローをルールどおりに回せる経費精算システムの活用も有効です。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

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