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契約不適合責任の契約書条項|条文例・立場別の書き方と自社契約書のチェックポイント

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契約書レビュー比較表(2026年版)のプレビュー

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契約書レビュー比較表(2026年版)

取引先から届いた売買契約書や業務委託契約書に目を通していて、「契約不適合責任」の条項が自社にとって不利ではないか、必要な取り決めが抜けていないか、判断に迷う場面は少なくありません。自社で契約書を作成するときも、この条項をどう書けばよいのか、ひな形のどこを直すべきかは悩みどころです。

この記事では、契約不適合責任条項の条文例を、基本形・売主に有利な形・買主に有利な形・免責の4パターンで対比して示します。あわせて、追完請求など買主の救済手段、通知期間や消滅時効、免責特約が無効になるケース、立場別のチェック観点までを民法・商法の条文に紐づけて整理し、目の前の契約書の該当条項が不利・不足でないかを自分で判断できる状態を目指します。

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契約不適合責任の契約書条項の条文例(立場別の対比)

まず、契約書に書く契約不適合責任条項の条文例を、立場ごとに対比して示します。いずれも売買・業務委託などのBtoB契約を想定した一例で、自社の契約書の該当条項と見比べる土台として読んでください。実際に使うときは、取引の性質や交渉上の立場に合わせて調整します。

基本形(民法の原則どおりの条項)

民法の原則をそのまま契約書に落とし込むと、次のような条項になります。追完請求・代金減額・損害賠償・解除という買主の権利と、通知期間をひととおり盛り込んだ形です。

第○条(契約不適合責任)

  1. 本契約に基づき引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して本契約の内容に適合しない場合、買主は売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。
  2. 買主が相当の期間を定めて前項の履行の追完を催告し、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
  3. 前2項は、買主が売主に対し損害賠償を請求し、又は本契約を解除することを妨げない。
  4. 買主は、第1項の不適合(種類又は品質に関するものに限る。)を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しなければ、当該不適合を理由として前3項の権利を行使することができない。

この基本形は、民法第562条から第566条の規定に沿った内容です。ここを出発点に、「売主側が自社に有利にしたい」「買主側が保護を厚くしたい」という方向で条文を動かしていくことになります。各条文が法律上どう効くかは、次章以降で条番号とともに確認します。

売主に有利な条項(責任範囲・方法・期間を限定)

自社が売主(納品する側)の立場では、責任を負う範囲・方法・期間を限定する方向で条項を設計します。追完の方法を売主が選べるようにし、損害賠償に上限を設け、通知期間を短縮する形です。

第○条(契約不適合責任)

  1. 引き渡された目的物が種類又は品質に関して本契約の内容に適合しない場合、買主は売主に対し履行の追完を請求できる。追完の方法(修補又は代替物の引渡し)は、売主がこれを選択する。
  2. 本条に基づく売主の責任は、買主が目的物の引渡しを受けた日から6か月以内に書面により通知した不適合に限る。
  3. 売主が本契約に関し買主に対して負う損害賠償の額は、本契約の代金額を上限とし、特別損害・逸失利益・間接損害を含まないものとする。

追完方法の選択権を売主側に置けるのは、民法第562条第1項ただし書が「買主に不相当な負担を課するものでないときは、売主は買主が請求した方法と異なる方法で追完できる」と定めているためです。この例は種類・品質の不適合に絞っています(数量不足は後述のとおり1年通知の対象外のため)。

通知期間の短縮や損害賠償の上限は、民法が任意規定であることを利用した設計で、BtoBの物品売買では基本的に有効です。無効になるのは不動産(宅建業者が売主)・相手が消費者・新築住宅など特定の類型に限られます(詳しくは後述)。

買主に有利な条項(追完方法の指定・損害賠償範囲の明確化)

自社が買主(受け取る側)の立場では、追完の方法を自社で指定できるようにし、損害賠償の範囲を広げ、通知期間を長めに確保する方向で設計します。

第○条(契約不適合責任)

  1. 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して本契約の内容に適合しない場合、買主は売主に対し、買主が指定する方法(修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡し)による履行の追完を請求することができる。
  2. 買主は、前項の追完の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
  3. 売主は、本契約の不適合により買主に生じた損害(逸失利益その他の間接損害を含む。)を賠償する。
  4. 本条の不適合に関する通知期間は、買主が目的物の引渡しを受けた日から1年とする。

第2項のように催告なしの代金減額を一般的に認める条項は、民法の原則(代金減額は原則として催告が前提)より買主に有利に動かした条項です。損害賠償範囲に間接損害を含める、通知期間を引渡しから起算して明確にするといった手当ても、買主の保護を厚くする設計になります。

さらに踏み込んだ設計として、損害賠償の要件そのものを動かす方法もあります。民法では損害賠償(第564条→第415条)は売主に帰責事由があることが要件で、不適合が「債務者の責めに帰することができない事由」によるときは請求できません(第415条第1項ただし書)。

買主をより厚く保護したい場合は、「売主は、その責めに帰すべき事由の有無にかかわらず、契約不適合によって買主に生じた損害を賠償する」と定め、売主の損害賠償責任を無過失責任に加重する特約も可能です。契約不適合責任の規定はいずれも任意規定のため、こうした要件の加重も当事者の合意で設計できます。

免責(売主の責任を軽減・免除する条項)

売主の契約不適合責任を全部または一部免除する条項も設計できます。ただし、免責には民法上の限界があり、どこまで有効かは後述します。

第○条(契約不適合責任の免除)

  1. 売主は、目的物の種類、品質又は数量に関する契約不適合について、一切の担保責任を負わない。
  2. 前項にかかわらず、売主がその不適合を知りながら買主に告げなかった事実については、この限りでない。

第2項のただし書は、民法第572条で定められた免責の限界を条項に反映したものです。全部免責の条項を結んでも、売主が知りながら告げなかった不適合については責任を免れられません。免責条項を置くときは、この例外を踏まえておく必要があります。

4パターンの違いを観点別に比較

基本形から売主有利・買主有利へと、民法の原則をどちらに動かしているかを観点別にまとめると、違いが一目で分かります。自社の条項がどの列に近いかを突き合わせてみてください。

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観点基本形(民法の原則)売主に有利買主に有利
追完方法の選択売主は不相当な負担でなければ別方法を選べる売主が選択買主が指定
代金減額の催告原則として催告が必要催告を要する催告なしで直ちに請求可
損害賠償の範囲民法の原則(帰責事由が要件)代金額を上限・間接損害を除外逸失利益・間接損害を含む
通知・責任期間知った時から1年(種類・品質)引渡しから6か月などに短縮引渡しから1年〜2年などに延長

買主の4つの救済手段と条文の対応(追完・減額・損害賠償・解除)

ここからは、条文例に出てきた買主の権利が、民法のどの条文に対応するかを確認します。契約不適合があったとき、買主には4つの救済手段が認められています。各手段は買主の権利として整理しますが、自社が売主の立場なら「どこを限定したいか」の裏返しとして読め、自社の条項がこれらをどう扱っているかを読み解く土台になります。

契約不適合があったとき買主がとれる4つの救済手段と対応する民法の条文を示した図解。追完請求(民法562条)、代金減額(563条)、損害賠償(564条→415条)、契約解除(564条→541・542条)の4つを並べている。

追完請求(修補・代替物・不足分の引渡し/民法562条)

目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しないとき、買主はまず「履行の追完」を請求できます。追完とは、修補(直す)・代替物の引渡し(代わりの物を渡す)・不足分の引渡しのことです。

民法 第562条(買主の追完請求権) 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。

出典:民法|e-Gov法令検索

注目したいのはただし書です。追完の方法は買主が選べるのが原則ですが、売主は「買主に不相当な負担を課すものでなければ」別の方法で追完できます。条文例で見た「追完方法の選択権を売主に置く/買主が指定する」という売主有利・買主有利の分かれ目は、このただし書の取り合いにあたります。

代金減額請求(催告の要否/民法563条)

追完を求めても応じてもらえない場合、買主は不適合の程度に応じて代金の減額を請求できます。原則は、相当の期間を定めて追完を催告し、その期間内に追完がないことが前提です。

民法 第563条(買主の代金減額請求権) 前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。

2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
一 履行の追完が不能であるとき。
二 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
四 前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。

出典:民法|e-Gov法令検索

ただし、追完が不能なとき、売主が追完を明確に拒絶したときなど、同条第2項に挙げられた場合には、催告なしで直ちに代金減額を請求できます。買主有利の条項例で見た「催告不要の減額」は、この第2項の範囲を契約で広げたものと理解すると、民法の原則からどれだけ動かした条項かが見えてきます。

損害賠償(民法564条→415条・帰責事由が要件)

買主は、追完や減額とあわせて損害賠償も請求できます。民法第564条が、損害賠償については第415条の規定によると定めています。

民法 第415条第1項(債務不履行による損害賠償) 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

出典:民法|e-Gov法令検索

追完請求と代金減額は売主の帰責事由(落ち度)を問わないのに対し、損害賠償は第415条第1項ただし書により、売主の責めに帰することができない事由があれば免れられます。「売主有利=無過失責任の回避」「買主有利=損害賠償範囲の明確化」という条項設計は、この帰責事由と賠償範囲をめぐる調整です。

契約解除(催告解除・無催告解除/民法564条→541条・542条)

不適合が重大で契約の目的を達せられない場合などには、買主は契約を解除できます。解除は、催告してから行う催告解除(第541条)と、催告なしで直ちに行う無催告解除(第542条)に分かれます。

民法 第541条(催告による解除) 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

出典:民法|e-Gov法令検索

第541条ただし書は、不履行が「軽微」なときは解除できないと定めています。軽微な契約不適合で解除まで認めるかどうかは、このただし書をどう扱うかの問題です。全部の履行が不能なときや、売主が履行を明確に拒絶したときなどは、第542条により催告なしで直ちに解除できます。

通知期間・権利行使期間と契約書での期間設計

契約不適合責任で見落としやすいのが、期間の取り決めです。いつまでに通知すれば権利を保てるのか、いつまで請求できるのかを、条文と契約書の両面から整理します。

契約不適合責任に関わる期間を3つの制度で整理した図解。民法566条は種類・品質の不適合を知った時から1年以内の通知、民法166条は消滅時効(知った時から5年/行使できる時から10年)、商法526条は商人間売買の検査・通知義務(受領後遅滞なく検査し直ちに通知、直ちに発見できない不適合も6か月以内)を示す。

不適合を知った時から1年以内の通知(民法566条)

種類または品質に関する契約不適合については、買主がその不適合を知った時から1年以内に売主へ通知しないと、原則として追完請求・代金減額・損害賠償・解除のいずれもできなくなります。

民法 第566条(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限) 売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。

出典:民法|e-Gov法令検索

この1年の通知期間は「種類又は品質」の不適合に限られる点に注意が必要です。数量の不足については第566条の制限は適用されず、通常の消滅時効だけが問題になります。ただし、売主が引渡しの時に不適合を知っていた、または重大な過失で知らなかったときは、1年の制限はかかりません。

消滅時効との関係(権利を行使できる時から10年/知った時から5年)

第566条の1年通知は「権利を保存するための期限」で、消滅時効とは別の制度です。1年以内に通知して権利を保っても、その権利自体は民法第166条の消滅時効にかかります。

第166条は、債権は「権利を行使することができることを知った時から5年」または「権利を行使することができる時から10年」で時効消滅すると定めています。契約不適合の場合、「権利を行使することができる時」は引渡し時と解釈されるのが一般的です。条文の文言は「引渡しから10年」と直接書いているわけではなく、引渡し時を起算点とするのは解釈である点を押さえておくと、自社条項の期間設定を読み違えずに済みます。

民法 第166条第1項(債権等の消滅時効) 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

出典:民法|e-Gov法令検索

商人間売買の検査・通知義務(商法526条)

双方が商人(会社など)である売買では、民法とは別に商法第526条の検査・通知義務が優先して適用されます。多くのBtoB売買がこれに該当します。

商法 第526条(買主による目的物の検査及び通知) 商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければならない。

2 前項に規定する場合において、買主は、同項の規定による検査により売買の目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないことを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その不適合を理由とする履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。売買の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないことを直ちに発見することができない場合において、買主が六箇月以内にその不適合を発見したときも、同様とする。

出典:商法 第526条|e-Gov法令検索

民法第566条が「知った時から1年」であるのに対し、商法第526条は「受領後、遅滞なく検査」「発見したら直ちに通知」と、買主にとって格段に厳しい内容です。直ちに発見できない不適合でも、引渡しから6か月以内に発見して通知しなければなりません。自社が買主としてBtoB売買を行う場合、検査・通知の体制が追いつくかを踏まえて、契約書で検査方法や通知期間を具体的に取り決めておく意味があります。

契約書で通知期間をどう設計するか(短縮・延長の可否と注意)

民法の通知期間・消滅時効はいずれも任意規定なので、契約書で短縮も延長もできます。売主は責任を負う期間を短くしたい(例:引渡しから6か月)一方、買主は長く確保したい(例:引渡しから1年〜2年)という利害が対立します。

設計時の注意として、商人間売買では商法第526条が優先するため、契約書で何も書かなければ買主は受領後すぐの検査・通知を求められます。買主の立場では、検査期間や通知方法を契約書に明記して、商法の原則より緩やかに取り決めておくと安全です。売主の立場では、通知期間を短縮しすぎると、相手が消費者や宅建業の不動産売買などの場合に無効になることがある点に注意が必要です(次章参照)。

免責特約はどこまで有効か(無効になるケース)

契約不適合責任の規定は任意規定なので、売主の責任を軽減・免除する免責特約は基本的に有効です。ただし、いくつかの例外では免責が認められません。BtoB契約一般に当てはまる原則から、特定の取引にだけ関わる特別法まで、適用場面を分けて整理します。

任意規定ゆえ基本的に有効(全部免責・一部免責の設計)

契約不適合責任を全部免除する、損害賠償に上限を設ける、通知期間を短縮するといった免責・限定の条項は、当事者が合意すれば原則として有効です。BtoB契約では、当事者が対等に交渉できる前提があるため、この自由度は広く認められます。

例外的に無効になる場合(民法572条ほか)

BtoB契約一般にそのまま当てはまる免責の限界は、民法第572条です。全部免責の特約を結んでも、売主が知りながら告げなかった事実などについては責任を免れられません。

民法 第572条(担保責任を負わない旨の特約) 売主は、第五百六十二条第一項本文又は第五百六十五条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。

出典:民法 第572条|e-Gov法令検索

これに加え、特定の取引類型では、より強い制限が特別法で定められています。自社の取引がこれらに当たるかを確認してください。

  • 不動産取引で宅建業者が売主の場合(宅地建物取引業法第40条):宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地・建物の売買では、通知期間を「引渡しの日から2年以上」とする特約以外で、民法より買主に不利な特約は無効になります。
  • 相手が消費者の場合(消費者契約法第8条・第10条):事業者と消費者の契約では、事業者の損害賠償責任の全部を免除する条項などが無効とされます。事業者間(BtoB)の契約には適用されませんが、自社が消費者向けの取引も行う場合は押さえておく論点です。
  • 新築住宅の売買・請負の場合(住宅の品質確保の促進等に関する法律第94条・第95条):新築住宅の構造耐力上主要な部分などについては、引渡しから10年間の担保責任が定められ、これに反して注文者・買主に不利な特約は無効です。

このうち、不動産取引で宅建業者が売主になる場合の制限は、条文で次のように定められています。「無効になる」と言い切れる根拠はこの明文にあります。

宅地建物取引業法 第40条(担保責任についての特約の制限) 宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任に関し、民法(明治二十九年法律第八十九号)第五百六十六条に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から二年以上となる特約をする場合を除き、同条に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。
2 前項の規定に反する特約は、無効とする。

出典:宅地建物取引業法|e-Gov法令検索
出典・参考資料(3件)

このように、BtoBの物品売買・業務委託では免責の自由度が広い一方、不動産・消費者向け・新築住宅といった場面では特別法の制限がかかります。自社の免責条項が有効かは、取引の相手と目的物がどの場面に当たるかで見極めることになります。

契約類型別の注意(売買・業務委託・請負/システム開発)

契約不適合責任は売買契約だけでなく、業務委託・請負・システム開発など幅広い契約に関わります。類型ごとに論点が変わるため、自社のケースに近い類型を確認してください。

売買契約での注意

売買では、不適合が種類・品質・数量のどれに当たるかで、適用される期間制限が変わる点が実務上の要です。種類・品質なら1年の通知期間(民法第566条)や商人間売買の検査義務(商法第526条)がかかりますが、数量不足はこれらの対象外になります。自社のケースがどの不適合に当たるかをまず切り分けることが、売買契約での出発点です。

業務委託・請負契約での注意(仕事の完成・検収)

請負型の業務委託では、「仕事の完成」が契約の目的です。成果物が仕様書や発注内容に適合しているかが不適合の判断基準になるため、求める仕様・品質基準を契約書や仕様書に具体的に書き込んでおくことが重要です。口頭での合意だけだと、後から「契約の内容に適合しているか」の判断が難しくなります。

検収の基準・期間・方法を定め、いつの時点で仕事が完成したと扱うかを明確にしておくことが重要です。売買型の条文例を請負・業務委託向けに読み替えると、次のように「仕様適合」と「検収」を起点にした形になります。

第○条(契約不適合責任)=請負・業務委託型

  1. 乙が納入した成果物が本契約及び仕様書の内容に適合しない場合、甲は乙に対し、相当の期間を定めて成果物の修補その他の履行の追完を請求することができる。
  2. 甲は、成果物の検収完了日から○か月以内に前項の不適合を通知した場合に限り、本条の請求をすることができる。
  3. 前2項は、甲が乙に対し損害賠償を請求し、又は本契約を解除することを妨げない。

システム開発契約(IT受託)での注意(検収・不適合の起算点)

システム開発では、要件定義書・仕様書との適合がバグ(不適合)の判断基準になります。検収の基準と、検収後に発見された不具合をいつまで契約不適合として扱うか(通知期間の起算点)を契約書で定めておくと、「仕様どおりか」「追加開発か」の線引きがしやすくなります。

開発工程が長いほど、通知期間の起算点を引渡し(検収)時とするか稼働開始時とするかで、責任を負う期間が大きく変わります。

契約不適合責任とは(旧瑕疵担保責任との違い・2020年民法改正)

ここまで条文例と各制度を見てきましたが、そもそも契約不適合責任とは何か、以前の「瑕疵担保責任」と何が変わったのかを、背景として整理しておきます。

契約不適合責任とは(契約の内容に適合しないこと=種類・品質・数量)

契約不適合責任とは、引き渡された目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しない場合に、売主が負う責任です。判断の基準は「隠れた欠陥があるか」ではなく、「契約でどう合意したか(契約の内容に適合しているか)」に置かれます。したがって、契約書や仕様書で品質・仕様をどう定めたかが、不適合かどうかを分ける決め手になります。

旧瑕疵担保責任との違い(2020年民法改正の要点)

2020年4月1日に施行された改正民法で、従来の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に改められました。主な変更点は次のとおりです。

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観点旧・瑕疵担保責任(2020年3月まで)契約不適合責任(2020年4月〜)
判断基準「隠れた瑕疵」があるか契約の内容に適合しているか
買主の権利損害賠償・契約解除が中心追完請求・代金減額・損害賠償・解除の4つ
対象特定物の売買が中心種類・品質・数量の不適合(請負にも準用)
期間事実を知った時から1年以内に権利行使不適合を知った時から1年以内に通知(種類・品質)

特に実務への影響が大きいのは、買主に追完請求権・代金減額請求権が明文で認められたこと、そして期間制限が「権利行使」から「通知」へと緩やかになったことです。既存のひな形に「瑕疵」という旧来の文言が残っている場合は、現行の契約不適合の枠組みに合わせて見直すとよいでしょう。

出典・参考資料(2件)

自社の契約書をチェックするときの観点(売主・買主の立場別)

条文と条文例を踏まえて、実際に目の前の契約書を点検するときの観点を、立場別に整理します。いずれも「民法の原則から、どちらに有利に動かした条項か」という視点で読むのがポイントです。

売主の立場での確認点(追完方法の選択権・無過失責任の回避・期間)

自社が納品する側のときの確認ポイントは次のとおりです。追完の方法を買主が一方的に指定する条項になっていないか(民法第562条ただし書の選択権を失っていないか)、損害賠償が無過失でも発生する書き方になっていないか、通知期間が不当に長く設定されていないか、といった観点です。

責任を限定する方向に動かした条項が、免責の有効範囲(民法第572条や特別法)を超えていないかも、あわせて見ておきましょう。

買主の立場での確認点(追完方法の指定・減額・損害賠償範囲)

自社が受け取る側のときは、追完の方法を自社で選べるか、代金減額や損害賠償の範囲が不当に狭められていないか、通知期間が短すぎて責任追及ができなくなっていないかを確認しましょう。

特に商人間売買では、契約書に何も書かなければ商法第526条の厳しい検査・通知義務がかかります。自社の検査体制で対応できる期間・方法を明記しておくと安全です。

条項が「記載なし」の場合はどうなるか(民法の原則が適用される)

契約書に契約不適合責任の条項が書かれていない場合は、民法の原則(第562条〜第566条)がそのまま適用されます。条項がなくても買主には追完請求・代金減額・損害賠償・解除が認められ、種類・品質の不適合には1年の通知期間がかかります。

条項がないこと自体で不利になるとは限りませんが、追完方法・通知期間・損害賠償の範囲などを自社に合わせて取り決める機会を逃していることになります。重要な取引では、記載なしのまま締結せず、立場に応じた条項を加えることを検討します。

自社の契約書を体系的に確かめる手段(契約書レビュー=AIリーガルチェック)

ここまでの観点を1条ずつ目視で確かめるのは、契約書の本数が増えるほど負担が大きくなります。立場ごとの判断や、類型ごとに変わる論点、条項の抜け漏れを漏れなく拾うには、人手だけでは限界があります。そこで活用できるのが、契約書レビュー(AIリーガルチェック)です。

契約書レビュー(AIリーガルチェック)でできること

契約書レビューサービスは、締結前の契約書をアップロードすると、AIが自社に不利な条項・欠落している条項を検出し、修正案や代替となる条文例を提示します。多くは弁護士監修のひな形や自社の過去の契約書(ナレッジ)を基準に審査します。

契約不適合責任のように立場で有利・不利が分かれる条項の確認に向いており、「追完方法の選択権」「通知期間」「免責の有効範囲」といった観点を、人が1件ずつ照らし合わせる代わりに契約書全体にわたって拾えるのが利点です。

主要な契約書レビューサービスの比較

契約不適合責任条項のチェックに活用できる、代表的な契約書レビューサービスを横並びで比較します。より多くのサービスを網羅的に比較したい場合は、後述の比較記事もあわせてご覧ください。

← 横にスクロールできます →
サービス名CLOUD LEGAL(クラウドリーガル)LAWGUE(ローグ)法務オートメーション「OLGA」
提供形態クラウド(法務BPaaS)クラウドクラウド
レビューの基準・監修弁護士監修AI+弁護士審査自社ナレッジ基準(人が判断)弁護士監修ひな型が基準
(自社ひな型・運用基準も設定可)
Word連携Word完結(AIエディター)Wordアドイン対応Word/PDFアップロード対応(OCR)
対応契約類型NDA・業務委託・売買など各種
(弁護士監修ひな型ベース)
契約書・社内規程・
開示文書など各種文書
数百種類超の
契約書テンプレート搭載
料金(初期/月額)初期0円/月額11,000円〜(税込)要問い合わせ(個別見積もり)標準は要問い合わせ
中小企業向けは初期10万円・月額1万円〜(税別)
詳細情報公式資料を見るオンライン相談を予約オンライン相談を予約

主要な契約書レビューサービスの個別紹介

1. CLOUD LEGAL(クラウドリーガル/MOLTON株式会社)

CLOUD LEGAL(クラウドリーガル)のウェブサイト

CLOUD LEGALは、弁護士監修のAIと弁護士・士業の体制を組み合わせた法務BPaaS(アウトソーシング型の法務サービス)です。契約書の作成・レビュー、法務相談などをオンラインで提供し、法務専任者や顧問弁護士を置きにくい企業が社内法務の役割を補う用途で使われています。

契約書レビューの面では、Microsoft Word上でAIと対話しながら不利な条文や欠落条項を検出し、修正案を提示する「CloudLegal AIエディター」が特徴です。普段使うWord上で完結でき、別ツールに移す手間が少なく済みます。料金は初期費用0円・月額11,000円(税込)からで、弁護士審査による契約書レビューに特化したプランもあります。

契約不適合責任のように立場で有利・不利が変わる条項を、法務の専任者を置かずに確かめ続けるのは難しいのが実情です。提供元のMOLTON株式会社・金沢氏は、法務体制の現状について次のように話しています。

金沢由樹氏
MOLTON株式会社(旧:a23s株式会社) CSMO(Chief Sales & Marketing Officer, 最高営業・マーケティング責任者)
金沢由樹氏
独自インタビューより

日本の産業を下支えし多くを占める個人事業主や中小企業だと「法務部がない」「法務専任担当者がいない」さらにはコスト面で「顧問弁護士もいない」という状況がまだまだ多いです。では顧問弁護士に全部お願いすればいいかというと、正直コスト面の壁もあって、なかなか現実的に難しいです。さらに人材不足の影響で、専門人材である法務人材の採用も難しくなっています。結果として、現状維持でリスクは無い前提としてなんとなく運用してしまっている企業も少なくないと思っています。

2. LAWGUE(ローグ/FRAIM株式会社)

LAWGUE(ローグ)のウェブサイト

LAWGUEは、契約書や社内規程などの文書を「作成・検索・レビュー」するクラウド型のサービスです。FRAIM株式会社が提供し、企業の法務・総務・人事部門のほか、法律事務所や自治体まで幅広く導入されています。

契約不適合責任条項のチェックで役立つのは、自社の過去の契約書(ナレッジ)を基準にしたAIレビューと、頻出する条項の漏れ・欠落を検出する「不足条項の提案」機能です。自社ひな型を登録しておけば、そこからの逸脱を見つけやすくなります。

類似条文の検索や、表記ゆれ・条番号ズレの自動補正、Wordアドインでの編集にも対応します。料金は利用人数や利用シーンに応じた個別見積もり方式で、具体的な金額は問い合わせが必要です。

3. 法務オートメーション「OLGA」(GVA TECH株式会社)

法務オートメーション「OLGA」のウェブサイト

OLGAは、法務案件の受付から契約書のレビュー・管理までを一元化するクラウド型の法務プラットフォームです。弁護士が代表を務めるGVA TECH株式会社が提供し、AI法務アシスタント・法務データ基盤・AI契約レビュー・契約管理の各機能で構成されています。

契約書レビューの面では、弁護士監修のひな型を基準に、契約書のリスク箇所を自動で検出し、修正案を提示するAI契約レビュー機能を備えます。事業部門からメールやチャットのまま法務へ依頼でき、受け付けた契約書は履歴とともに蓄積されます。

レビューの依頼・回答の流れを一本化できる点が強みです。2026年には初期費用10万円・月額1万円(いずれも税別)からの中小企業向けプランも新設され、小規模からの導入もしやすくなっています。

ここで取り上げた3サービスを含め、契約書レビュー(AIリーガルチェック)サービスをより多く横並びで比較したい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。AIによるレビューと弁護士によるレビューの違いや使い分け、対応する契約類型・費用・選び方まで整理しています。

まとめ

契約不適合責任の条項は、立場によって有利・不利が大きく変わります。自社の契約書を確かめるときは、次の点を押さえておくとよいでしょう。

  • 条文例は立場で読む:基本形(民法の原則)から、追完方法の選択権・損害賠償の範囲・通知期間を、どちらに有利に動かした条項かを確認する。
  • 買主の権利は4つ:追完請求(562条)・代金減額(563条)・損害賠償(564条→415条)・解除(564条→541・542条)が、条文のどこに対応するかを押さえる。
  • 期間に注意:種類・品質の不適合は知った時から1年以内の通知(566条)、商人間売買はさらに厳しい検査・通知義務(商法526条)。消滅時効は別制度。
  • 免責は基本有効だが例外あり:民法572条の限界に加え、不動産(宅建業法)・消費者(消費者契約法)・新築住宅(品確法)では特別法の制限がかかる。

これらを1件ずつ確認する負担を抑えるには、契約書レビュー(AIリーガルチェック)で不利な条項・欠落条項を体系的に拾う方法もあります。自社の契約書の状況に合わせて、手段を選んでください。

よくある質問(FAQ)

Q. 契約不適合責任とは何ですか?

A. 契約不適合責任とは、引き渡された目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しない場合に売主(請負型では請負人)が負う責任です。判断基準は「隠れた欠陥があるか」ではなく「契約でどう合意したか」に置かれ、2020年4月の民法改正で「瑕疵担保責任」から改められました。買主には追完請求・代金減額・損害賠償・解除の4つの救済手段が認められています。

Q. 契約不適合責任の通知期間は、契約書で短縮・延長できますか?

A. 民法第566条は任意規定のため、通知期間は契約書で短縮も延長もできます。売主は「引渡しから6か月」などと短くしたい一方、買主は「1年〜2年」と長く確保したい利害が対立します。ただし、宅建業者が自ら売主となる不動産売買(宅建業法第40条=引渡しから2年以上とする特約以外は無効)や新築住宅(品確法)など、短縮が無効になる取引類型がある点に注意が必要です。

出典・参考資料(2件)

Q. 契約書に契約不適合責任の条項が記載されていない場合はどうなりますか?

A. 条項の記載がない場合でも、民法の原則(第562条〜第566条)がそのまま適用され、買主は追完請求・代金減額・損害賠償・解除を行えます。条項がないこと自体で直ちに不利になるとは限りませんが、追完方法・通知期間・損害賠償の範囲を自社の立場に合わせて取り決める機会は逃します。重要な取引では、記載なしのまま締結せず、立場に応じた条項を加えることを検討してください。

Q. 契約不適合責任は請負契約やシステム開発契約にも適用されますか?

A. 契約不適合責任は、売買契約だけでなく請負契約やシステム開発契約(IT受託)にも準用されます。これらでは「仕事の完成」や「仕様書との適合」が判断基準になるため、求める仕様・品質基準と検収の基準・期間・方法を契約書や仕様書に具体的に書き込むことが重要です。特にシステム開発では、通知期間の起算点を検収時とするか稼働開始時とするかで、責任を負う期間が大きく変わります。

Q. 契約不適合責任を全部免除する特約(全部免責)は有効ですか?

A. 契約不適合責任の規定は任意規定のため、全部免責の特約も事業者間(BtoB)の契約では基本的に有効です。ただし、売主が知りながら告げなかった事実などは、民法第572条により責任を免れられません。加えて、宅建業者が自ら売主となる不動産売買(宅建業法第40条)・消費者との契約(消費者契約法)・新築住宅(品確法)では、特別法の制限で免責が無効になる場合があります。

出典・参考資料(1件)

Q. 「瑕疵担保責任」という旧法の文言が残った既存の契約書は、そのまま使えますか?

A. 「瑕疵担保責任」の文言が残っていても、契約そのものが直ちに無効になるわけではありませんが、2020年4月施行の改正民法に合わせて見直すことをおすすめします。改正で買主に追完請求権・代金減額請求権が明文で認められ、期間制限も「権利行使」から「通知」へと変わっています。旧来の文言のままだと現行制度と食い違い、どの権利をいつまで行使できるのかの解釈をめぐってトラブルになるおそれがあります。

Q. 数量が不足している場合も、1年以内の通知制限(民法566条)がかかりますか?

A. 数量不足には、民法第566条の「不適合を知った時から1年以内の通知」制限は適用されません。1年の通知期間は種類・品質の不適合に限られ、数量不足は通常の消滅時効(知った時から5年/行使できる時から10年)だけが問題になります。そのため1年の期間を気にせず消滅時効の範囲で請求できます(商人間売買では別途、商法第526条の検査・通知義務がかかります)。

出典・参考資料(2件)

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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