賞与(ボーナス)を支給するとき、明細の「所得税」欄をいくらにすればよいか迷っていませんか。賞与の源泉所得税は、毎月の給与と計算の仕組みが異なり、「前月の給与」をもとに税率を決めるという独特のルールで計算します。
この計算を手作業やExcelで行っていると、算出率の表の当てはめ方や前月給与の扱いを間違えていないか、不安になりがちです。賞与は金額も大きく、税額のミスは従業員との信頼にも関わります。
本記事では、賞与の源泉所得税の計算手順と計算式を、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和8年分)」の現物と、実額を当てはめた計算例とともに解説します。前月に給与がない場合や賞与が前月給与の10倍を超える場合といった例外ケース、賞与から引かれるものの全体像、計算を自動化する方法まで、賞与明細の所得税を自信を持って確定できる形で整理しました。
目次
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賞与の源泉所得税の計算方法(3ステップ)
扶養控除等申告書を提出している従業員(甲欄)の賞与の源泉所得税は、次の3つのステップで求めます。
まず、前月の給与から社会保険料等を差し引いた金額を求めます。次に、その金額と扶養親族等の数を「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に当てはめ、交わる欄の税率(賞与の金額に乗ずべき率)を読み取ります。最後に、賞与から社会保険料等を差し引いた金額に、その税率を掛けた金額が、賞与から源泉徴収する所得税額です。
ここでいう「前月の給与」とは、賞与を支払う月の前月に支払った通常の給与(賞与を除く)を指します。また「社会保険料等」とは、健康保険・厚生年金・雇用保険などの社会保険料と、小規模企業共済等掛金のことです。前月の給与と賞与のどちらも、この社会保険料等を差し引いた後の金額を使う点が基本になります。
国税庁は、この手順を次のように示しています。
「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している場合は「甲欄」、提出していない場合は「乙欄」を使います。
出典:No.2523 賞与に対する源泉徴収|国税庁
(1)前月の給与から社会保険料等を差し引きます。
(2)算出率の表の甲欄の扶養親族等の数に応じた上記(1)の金額の当てはまる行と「賞与の金額に乗ずべき率」欄との交わるところに記載されている税率を求めます。
(3)(賞与から社会保険料等を差し引いた金額)×上記(2)の税率
この金額が、賞与から源泉徴収する税額になります。
ここでいう税額は、所得税と復興特別所得税を合わせたものです(令和8年分の場合)。社会保険料等を差し引いた後の金額に税率を掛ける点が、賞与計算の基本です。
賞与から所得税が引かれる仕組み(前月の給与で税率が決まる理由)
賞与も給与所得として所得税の課税対象であり、支給時に源泉徴収します。毎月の給与では「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」を使いますが、賞与では専用の「算出率の表」を使う点が異なります。
賞与で特徴的なのは、税率を賞与そのものの金額ではなく「前月の給与」で決める点です。これは、賞与にかかる所得税の負担が、その人の月々の給与水準に見合うように調整するための仕組みです。前月の社会保険料等控除後の給与が高い人ほど高い税率が、低い人ほど低い税率が割り当てられます。賞与額が同じでも、前月給与や扶養親族等の数が違えば税率が変わるのはこのためです。
ここで源泉徴収する金額はあくまで概算で、1年間の所得税は年末調整で精算します。年末の賞与は年末調整の時期と重なることが多く、その場合は年末調整で過不足が精算されます。
賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表【令和8年分】
賞与の税率は、国税庁が公表する「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」から読み取ります。甲欄(扶養控除等申告書を提出している人)の令和8年分は次のとおりです。縦軸の「前月の社会保険料等控除後の給与等の金額」と、横軸の「扶養親族等の数」が交わる欄の率が、賞与の金額に乗ずべき率です。
金額の単位は千円で、各欄は「その金額以上・次の金額未満」を表します(たとえば「82〜94」は82千円以上94千円未満)。最上段は「○千円未満」で率0%、最下段は「○千円以上」で最高率です。
| 賞与の金額に乗ずべき率 | 扶養0人 | 1人 | 2人 | 3人 | 4人 | 5人 | 6人 | 7人以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 0.000% | 82未満 | 107未満 | 143未満 | 181未満 | 218未満 | 251未満 | 284未満 | 317未満 |
| 2.042% | 82〜94 | 107〜250 | 143〜276 | 181〜300 | 218〜300 | 251〜304 | 284〜343 | 317〜383 |
| 4.084% | 94〜260 | 250〜289 | 276〜321 | 300〜354 | 300〜387 | 304〜412 | 343〜438 | 383〜463 |
| 6.126% | 260〜309 | 289〜346 | 321〜377 | 354〜405 | 387〜431 | 412〜457 | 438〜483 | 463〜508 |
| 8.168% | 309〜342 | 346〜373 | 377〜400 | 405〜424 | 431〜452 | 457〜479 | 483〜505 | 508〜529 |
| 10.210% | 342〜372 | 373〜401 | 400〜426 | 424〜452 | 452〜477 | 479〜503 | 505〜527 | 529〜552 |
| 12.252% | 372〜402 | 401〜430 | 426〜457 | 452〜484 | 477〜509 | 503〜531 | 527〜553 | 552〜578 |
| 14.294% | 402〜433 | 430〜463 | 457〜492 | 484〜517 | 509〜540 | 531〜564 | 553〜589 | 578〜614 |
| 16.336% | 433〜520 | 463〜520 | 492〜525 | 517〜550 | 540〜577 | 564〜604 | 589〜630 | 614〜657 |
| 18.378% | 520〜605 | 520〜621 | 525〜636 | 550〜651 | 577〜666 | 604〜681 | 630〜697 | 657〜708 |
| 20.420% | 605〜684 | 621〜705 | 636〜728 | 651〜751 | 666〜774 | 681〜798 | 697〜821 | 708〜845 |
| 22.462% | 684〜715 | 705〜739 | 728〜764 | 751〜788 | 774〜813 | 798〜838 | 821〜862 | 845〜887 |
| 24.504% | 715〜752 | 739〜778 | 764〜804 | 788〜830 | 813〜856 | 838〜881 | 862〜907 | 887〜933 |
| 26.546% | 752〜795 | 778〜821 | 804〜848 | 830〜876 | 856〜903 | 881〜930 | 907〜957 | 933〜985 |
| 28.588% | 795〜854 | 821〜882 | 848〜910 | 876〜938 | 903〜966 | 930〜994 | 957〜1,022 | 985〜1,051 |
| 30.630% | 854〜922 | 882〜952 | 910〜983 | 938〜1,013 | 966〜1,044 | 994〜1,074 | 1,022〜1,104 | 1,051〜1,135 |
| 32.672% | 922〜1,318 | 952〜1,342 | 983〜1,367 | 1,013〜1,391 | 1,044〜1,416 | 1,074〜1,440 | 1,104〜1,464 | 1,135〜1,489 |
| 35.735% | 1,318〜1,521 | 1,342〜1,526 | 1,367〜1,526 | 1,391〜1,538 | 1,416〜1,555 | 1,440〜1,555 | 1,464〜1,555 | 1,489〜1,583 |
| 38.798% | 1,521〜2,621 | 1,526〜2,645 | 1,526〜2,669 | 1,538〜2,693 | 1,555〜2,716 | 1,555〜2,740 | 1,555〜2,764 | 1,583〜2,788 |
| 41.861% | 2,621〜3,495 | 2,645〜3,527 | 2,669〜3,559 | 2,693〜3,590 | 2,716〜3,622 | 2,740〜3,654 | 2,764〜3,685 | 2,788〜3,717 |
| 45.945% | 3,495以上 | 3,527以上 | 3,559以上 | 3,590以上 | 3,622以上 | 3,654以上 | 3,685以上 | 3,717以上 |
金額の単位は千円。各欄は「前月の社会保険料等控除後の給与等の金額」の「以上〜未満」を表します。扶養親族等の数は、源泉控除対象配偶者と源泉控除対象親族の合計で、本人が障害者・寡婦・ひとり親・勤労学生に該当する場合などは1人加算して数えます。
扶養控除等申告書を提出していない従業員は乙欄を使います。乙欄は扶養親族等の数にかかわらず、前月の社会保険料等控除後の給与の金額だけで率を引く点が甲欄と異なります(くわしくは後述の例外ケースで触れます)。乙欄を含む表の全体は、国税庁の原典で確認できます。
出典・参考資料(1件)
2026年(令和8年)に表が変わった点と「いつ時点の表か」
算出率の表は毎年のように見直されるため、「どの年分の表か」を必ず確認する必要があります。令和8年分の算出率の表は、令和7年4月30日の財務省告示第122号による改正を反映した版で、令和8年(2026年)1月から12月までに支払う賞与に使います。令和7年度の税制改正(基礎控除や給与所得控除の見直しなど)を踏まえた改正です。
国税庁は、令和9年分以後の算出率の表や月額表は改正されていると案内しています。そのため、賞与計算のたびに「使っている表が支給年の年分のものか」を確かめることが欠かせません。古い年分の表で計算すると、税率そのものがずれてしまいます。
賞与から引かれる社会保険料と、所得税を計算する順序
賞与から引かれるのは所得税だけではありません。先に社会保険料を控除し、その社会保険料等を差し引いた後の金額に所得税の率を掛ける、という順序になります。所得税の計算で使う「社会保険料等控除後の金額」は、賞与だけでなく率を決める前月の給与についても同じで、まず社会保険料を押さえることが計算の出発点です。
賞与にかかる社会保険料は、次のように計算します(いずれも令和8年度の料率。健康保険・介護保険・厚生年金保険は労使で折半し、従業員からはその半分を本人負担分として天引きします)。
- 健康保険料:標準賞与額(賞与の総支給額から1,000円未満を切り捨てた額。健康保険は年度の累計573万円が上限)に健康保険料率を掛けます。協会けんぽの料率は都道府県ごとに異なり、令和8年度の全国平均はおよそ9.9%です。
- 介護保険料:40歳から64歳までの従業員が対象で、令和8年度は全国一律1.62%です。健康保険料に上乗せして計算します。
- 子ども・子育て支援金:令和8年4月分から全国一律0.23%が加わります。健康保険・介護保険と合わせて、労使折半で徴収します(本人負担はその半分)。
- 厚生年金保険料:標準賞与額(1,000円未満切り捨て、1か月あたり150万円が上限)に18.3%を掛けます。平成29年9月以降、料率は18.3%で固定されています。
- 雇用保険料:ほかの社会保険と異なり、標準賞与額ではなく賞与の総支給額に料率を掛けます。また労使折半ではなく、令和8年度の一般の事業では従業員の負担は1,000分の5(0.5%)です。
これらの本人負担分を賞与の総支給額から差し引いた金額が、算出率の表に当てはめる「賞与の社会保険料等控除後の金額」になります。住民税は賞与からは差し引きません(住民税は前年の所得をもとに毎月の給与から徴収します)。
賞与の所得税の計算例(実額で3ステップを通す)
ここからは、実際の金額を当てはめて、算出率の表のどこを読むのかを具体的に見ていきます。国税庁が示す令和8年分の計算例は次のとおりです。
前月の給与(社会保険料等控除後)が285,454円、賞与(社会保険料等控除後)が389,558円、扶養親族等の数が3人のケースで考えます。まず、算出率の表の甲欄で「扶養親族等の数」が3人の列を見て、前月の285,454円が含まれる「181千円以上300千円未満」の行を探します。この行と「賞与の金額に乗ずべき率」欄が交わる率が2.042%です。
最後に、賞与の社会保険料等控除後の金額にこの率を掛けます。389,558円 × 2.042% = 7,954円(1円未満の端数は切り捨て)が、この賞与から源泉徴収する所得税額です。前月給与と扶養人数で率が決まり、その率を賞与額に掛けるという流れが、実額でも確認できます。
(1)前月の給与(社会保険料等控除後) 285,454円
出典:No.2523 賞与に対する源泉徴収(令和8年分の例)|国税庁
(2)賞与の金額(社会保険料等控除後) 389,558円
(3)扶養親族等の数 3人
イ 算出率の表の「甲」欄により、「扶養親族等の数」が「3人」の欄で、上記(1)の285,454円が含まれている「181千円以上300千円未満」の行を求めます。
ロ その行と「賞与の金額に乗ずべき率」欄との交わるところに記載されている「2.042%」が、賞与の金額に乗ずる率です。
ハ 上記(2)389,558円×上記ロ2.042%=7,954円(1円未満の端数切捨て、賞与に対する税額)
この例で前提になっている「社会保険料等控除後389,558円」は、賞与の総支給額から前の章の社会保険料(健康保険・介護・厚生年金・雇用保険の本人負担分)を差し引いた金額です。実際に従業員に支払う差引支給額は、賞与の総支給額から、これらの社会保険料と、ここで求めた所得税7,954円をさらに差し引いた金額になります。
例外ケースの計算方法(前月給与がない・10倍超・乙欄)
通常は算出率の表で率を引きますが、前月に給与がない場合や賞与が特に高額な場合は、算出率の表ではなく月額表を使う計算に切り替わります。扶養控除等申告書を提出していない従業員(乙欄)の扱いも含め、代表的な例外を整理します。月額表そのものは、算出率の表と同じ国税庁「令和8年分 源泉徴収税額表」で確認できます。
出典・参考資料(1件)
前月に通常の給与の支払がない場合
前月に給与の支払がないと、率を決める基準となる「前月の給与」がありません。この場合は算出率の表を使わず、賞与の社会保険料等控除後の金額を賞与の計算期間の月数で割り、月額表に当てはめて計算します。国税庁は次のように示しています。
前月に給与の支払がない場合
出典:No.2523 賞与に対する源泉徴収|国税庁
(1)(賞与から社会保険料等を差し引いた金額)÷6(または「12」)
(2)上記(1)の金額を「月額表」に当てはめて税額を求める。
(3)上記(2)の税額×6(または「12」)
この金額が賞与から源泉徴収する税額になります。
(注)賞与の計算期間が6か月を超える場合には、上記計算式の「12」を使って計算します。
たとえば賞与(社会保険料等控除後)が769,300円・扶養0人・計算期間6か月の場合、769,300円÷6=128,216円を月額表の甲欄に当てはめると税額は1,300円です。これを6倍した7,800円が賞与の所得税額になります(国税庁の計算例)。賞与の計算期間が6か月を超える場合は「12」で割って「12」を掛けます。
賞与が前月の給与の10倍を超える場合
賞与(社会保険料等控除後)が、前月の給与(社会保険料等控除後)の10倍を超える場合も、算出率の表ではなく月額表を使います。前月給与がない場合と違い、前月給与に対する税額を差し引く工程が加わる点に注意が必要です。
前月の給与の金額(社会保険料等を差し引いた金額)の10倍を超える賞与(社会保険料等を差し引いた金額)を支払う場合
出典:No.2523 賞与に対する源泉徴収|国税庁
(1)(賞与から社会保険料等を差し引いた金額)÷6(または「12」)
(2)上記(1)+(前月の給与から社会保険料等を差し引いた金額)
(3)上記(2)の金額を「月額表」に当てはめて税額を求める。
(4)上記(3)の税額−(前月の給与に対する源泉徴収税額)
(5)上記(4)の税額×6(または「12」)
この金額が賞与から源泉徴収する税額になります。
国税庁の計算例では、前月の給与(社会保険料等控除後)166,531円・賞与(社会保険料等控除後、計算期間6か月)1,668,062円・扶養1人の場合、次のように計算します。
まず賞与1,668,062円÷6=278,010円に前月給与166,531円を足し、444,541円を月額表の甲欄に当てはめると税額は16,100円です。前月給与166,531円の月額表の税額は1,510円なので、(16,100円−1,510円)×6=87,540円が賞与の所得税額になります。前月給与分の税額を差し引いてから6倍する点が、前月給与がない場合との違いです。
「10倍を超える」とは、賞与の社会保険料等控除後の金額が、前月給与の社会保険料等控除後の金額の10倍に相当する金額を超えることを指します。賞与の計算期間が6か月を超える場合は、式の「6」を「12」に読み替えます。
乙欄(扶養控除等申告書を提出していない従業員)の場合
扶養控除等申告書を提出していない従業員は、算出率の表の乙欄を使います。乙欄では、前月の給与から社会保険料等を差し引いた金額だけで該当する行を求め、交わる率を賞与の社会保険料等控除後の金額に掛けます。甲欄のように扶養親族等の数で列を選ぶことはしません。乙欄の具体的な金額帯と率は、甲欄と同じ国税庁の算出率の表(令和8年分)の右端に掲載されています。
出典・参考資料(1件)
ここまでの通常ケースと例外ケースについて、どの税額表を使い、どのように計算するかを整理すると次のとおりです。
| 賞与の所得税 ケース別の計算方法 | 通常(扶養控除等申告書あり=甲欄) | 前月に給与がない | 賞与が前月給与の10倍超 | 扶養控除等申告書なし(乙欄) |
|---|---|---|---|---|
| 使う税額表 | 算出率の表(甲欄) | 月額表 | 月額表 | 算出率の表(乙欄) |
| 計算方法の要点 | 前月給与(社会保険料等控除後)と扶養親族等の数で率を引き、(賞与−社会保険料等)×率 | (賞与−社会保険料等)÷6(または12)を月額表に当てはめ、求めた税額×6(または12) | (賞与−社会保険料等)÷6に前月給与(社会保険料等控除後)を足して月額表に当てはめ、前月給与分の税額を差し引いて×6(または12) | 扶養人数は使わず前月給与(社会保険料等控除後)だけで率を引き、(賞与−社会保険料等)×率 |
※計算方法の要点は令和8年分の国税庁「No.2523 賞与に対する源泉徴収」に基づく要約です。賞与の計算期間が6か月を超える場合は式の「6」を「12」に読み替えます。
ここまでの手順を、賞与支給のたびに前月給与や例外ケースを確認しながら手作業で行うのは負担が大きい作業です。賞与計算に対応した給与計算ソフトなら、こうした計算を自動化できます。
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手計算で間違えやすい点と確認のコツ
賞与の源泉所得税は、毎月の給与計算と勝手が違うため、手計算では間違いが起きやすい箇所がいくつかあります。入力前に、次の点を確認するとミスを防げます。
- 率は「前月の給与」で決める:賞与額そのものを算出率の表に当てはめる誤りが起きがちです。縦軸に当てはめるのは前月の社会保険料等控除後の給与で、賞与額は求めた率を掛ける相手として使います。
- 社会保険料を先に差し引く:前月給与も賞与も、算出率の表に関わる金額は社会保険料等を控除した後の金額です。総支給額のまま率を引いたり掛けたりすると、税額が過大になります。
- 使う表が支給年の年分か確かめる:算出率の表は改正されるため、前年の表のまま計算すると率がずれます。令和8年(2026年)に支払う賞与は令和8年分の表を使います。
- 例外ケースを見落とさない:前月に給与がない従業員や、賞与が前月給与の10倍を超える高額賞与は、算出率の表ではなく月額表を使う計算に切り替わります。
賞与の所得税計算を自動化する(給与計算ソフトの活用)
賞与の源泉所得税は、前月給与の参照・算出率の表の当てはめ・例外ケースの判定・毎年の改正対応と、確認すべき点が多い計算です。給与計算ソフトを選ぶときは、こうした賞与特有の計算を自動で処理できるかを確認すると、手計算の負担と入力ミスを減らせます。
弥生給与 Next(弥生株式会社)

弥生給与 Nextは、弥生株式会社が提供するクラウド型の給与計算サービスです。給与・賞与計算、給与・賞与明細のWeb配信、年末調整、法定調書の作成などに対応しています。
賞与についても、明細を入力すると所得税が自動で計算されます。公式のサポート情報では「弥生給与 Nextでは、給与(賞与)の明細入力を行うと所得税が自動計算されます。」と案内されています。前月に給与がない場合や賞与が前月給与の10倍を超える場合に月額表を使う計算へ切り替える設定も、賞与支給の手続きごとに選べます。
年分の改正への対応もソフト側で行われます。2026年(令和8年)分の源泉徴収税額表(算出率の表・月額表)の変更に対応済みで、税率が改正された際も利用者側での特別な操作は不要と案内されています。手計算で毎回確認していた前月給与の参照や算出率の表の当てはめ、改正対応をソフトに任せられます。
弥生給与 Next のほかにも、賞与計算に対応した給与計算ソフトは複数あります。料金や対応機能、年末調整への対応などを見比べて自社に合う一台を選びたい方は、以下の記事で主要な製品の違いと選び方を確認できます。
賞与計算を含む給与計算の業務そのものを社外に任せたい場合は、給与計算アウトソーシングという選択肢もあります。委託できる業務範囲や料金体系、自社の規模に合う依頼先の選び方は、以下の記事で解説しています。
まとめ
賞与の源泉所得税は、前月の給与(社会保険料等控除後)と扶養親族等の数で算出率の表から率を引き、賞与の社会保険料等控除後の金額にその率を掛けて求めます。賞与額ではなく前月給与で率が決まる点が、毎月の給与計算との大きな違いです。
算出率の表は年分ごとに改正されるため、支給年の年分の表を使っているかを必ず確認します。前月に給与がない場合や賞与が前月給与の10倍を超える場合は、算出率の表ではなく月額表を使う計算に切り替わります。賞与から引かれるものの全体像としては、先に社会保険料を控除し、その後の金額に所得税の率を掛けることを押さえておきましょう。
これらの計算を正確に・毎回行うのは負担が大きいため、賞与計算に対応した給与計算ソフトの活用も選択肢になります。自社の賞与計算に合うサービスの資料は、以下からまとめて請求できます。
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よくある質問(FAQ)
Q. 賞与の源泉所得税(賞与にかかる所得税)とは何ですか?
A. 賞与の源泉所得税とは、賞与(ボーナス)を支給するときに会社が概算の所得税を計算して天引きし、国に納める源泉徴収のことです。賞与も給与所得として所得税の課税対象で、支給時に源泉徴収します。
毎月の給与とは別に「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使い、前月の社会保険料等控除後の給与と扶養親族等の数で率を決めて計算する点が特徴です。ここで引かれるのは概算で、1年間の正しい所得税は年末調整で精算されます。
出典・参考資料(1件)
Q. 賞与には住民税はかからないのですか?
A. 賞与から住民税は天引きしません。住民税は賞与計算には含めず、前年の所得をもとに算定された税額を毎月の給与から徴収します。住民税は前年1年間の所得に対して課税され、通常は6月から翌年5月まで12回に分けて毎月の給与から特別徴収されるため、賞与の支給月に別途引かれることはありません。ただし、賞与を含むその年の所得は翌年度の住民税額に反映されます。
Q. 賞与が高額だと所得税が高く感じるのはなぜですか?
A. 賞与の所得税が高く感じるのは、前月の給与が高い人ほど算出率の表で高い率(令和8年分では最高45.945%)が割り当てられ、その率を賞与額に掛けて計算するためです。算出率の表は、前月の社会保険料等控除後の給与が高い金額帯ほど乗ずべき率が上がる仕組みになっています。
月々の給与水準が高い人ほど賞与の税率も高くなるわけです。ここで源泉徴収する金額はあくまで概算のため、1年間を通して納めすぎていた場合は年末調整で精算(還付)されます。
出典・参考資料(1件)
Q. 賞与の所得税がゼロ(かからない)になることはありますか?
A. 前月の社会保険料等控除後の給与が一定額未満だと算出率の表の率が0.000%となり、賞与から所得税が引かれないことがあります。たとえば甲欄で扶養親族等の数が0人の場合、前月給与(社会保険料等控除後)が82千円未満のときは率が0%です(扶養親族等の数が多いほど、この基準となる金額は高くなります)。率が0%に当たるときは、賞与額の大小にかかわらず源泉徴収する所得税は0円になります。
出典・参考資料(1件)
Q. 賞与の所得税は年末調整で精算されるのですか?引かれすぎた分は戻りますか?
A. 賞与から源泉徴収する所得税は概算額のため、1年間の所得税は年末調整で精算され、源泉徴収の合計が本来の税額より多ければ差額が還付されます。賞与の源泉所得税は算出率の表を使った簡便な計算による概算で、1年間の正しい所得税額とは差が生じます。
その過不足を年末調整で調整し、納めすぎていれば還付、不足していれば追加で徴収する仕組みです。年末に支給する賞与は年末調整の時期と重なることが多く、その場合は賞与とあわせて過不足を精算します。
Q. 乙欄とは何ですか?甲欄とどう違うのですか?
A. 乙欄とは、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出していない従業員に使う区分で、扶養親族等の数に関係なく、前月の社会保険料等控除後の給与の金額だけで率を引く点が甲欄と異なります。申告書を提出している従業員は甲欄を使い、扶養親族等の数に応じた列と前月給与の金額が当てはまる行が交わる率で計算します。
多くの正社員は申告書を提出しているため甲欄で計算し、掛け持ち勤務などで申告書を提出していない従業員が乙欄の対象になります。
Q. 賞与の所得税や社会保険料の計算で、端数はどう処理しますか?
A. 賞与計算の端数は、所得税は賞与額に率を掛けた後の1円未満を切り捨て、社会保険料の計算基礎となる標準賞与額は賞与の総支給額から1,000円未満を切り捨てます。国税庁の計算例でも、賞与の社会保険料等控除後の金額に率を掛けた所得税は1円未満を切り捨てています。健康保険・厚生年金保険の標準賞与額は1,000円未満を切り捨てた額を使い、厚生年金保険は1か月あたり150万円が上限です。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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