従業員を雇うと、労働基準法で「賃金台帳」の備え付けが義務づけられます。労働基準監督署の調査や助成金の申請で提示を求められ、「自社の台帳に書くべき項目がそろっているのか」「給与明細で代わりにならないのか」と不安になった担当者も多いはずです。
賃金台帳は、何を書き・何年保存し・どう作るかが法律と省令で細かく決まっています。記載事項が1つでも欠けていれば是正勧告や罰則の対象になり、給与明細をそのまま綴じただけでは要件を満たさない場合もあります。
本記事では、賃金台帳の必須記載事項を「項目・書く内容・書き方の注意」の一覧で示します。あわせて、保存期間(原則5年・経過措置で当分の間3年)と起算日、給与明細との違い、公式様式と作成方法、対象者の例外、罰則までを、労働基準法と労働基準法施行規則の該当条文を引きながら解説します。自社の台帳に過不足がないかを、この記事で確認してください。
目次
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賃金台帳とは(法定三帳簿のひとつ)
賃金台帳とは、労働者ごとに賃金の計算の基礎となる事項や賃金額を記録する帳簿で、労働基準法第108条がすべての使用者に作成・記入を義務づけています。労働者名簿(第107条)・出勤簿とあわせて「法定三帳簿」と呼ばれ、事業場ごとに備え付けておく必要があります。

(賃金台帳)
出典:労働基準法 第108条|e-Gov法令検索
第百八条 使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。
条文のポイントは、「各事業場ごとに」作成し、「賃金支払の都度遅滞なく」記入するという2点です。本社でまとめて管理するのではなく、支店や工場など事業場単位で備え付けます。厚生労働省令で定める事項の中身が、次の節で見る施行規則第54条の記載事項です。賃金台帳は賃金の金額と計算根拠を記録する帳簿で、労働日数や出退勤を記録する出勤簿、氏名・雇入年月日などを記録する労働者名簿とは役割が分かれています。
出典・参考資料(1件)
- 出典:労働基準法 第108条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049)
賃金台帳に必須の記載事項
賃金台帳に記入しなければならない事項は、労働基準法施行規則第54条第1項で第一号から第八号まで定められています。第六号が時間外・休日・深夜の3種類の労働時間数をまとめているため、項目に分解すると実質10項目です。この一覧は限定列挙で、1つでも欠けると記載義務を満たしません。自社の台帳と照らし合わせて、過不足を確認してください。
| 記載事項(施行規則54条1項) | 書く内容 | 書き方の注意 |
|---|---|---|
| ①氏名(一号) | 労働者本人の氏名 | 労働者各人別に作成する |
| ②性別(二号) | 男性・女性の別 | — |
| ③賃金計算期間(三号) | 締日から締日までの賃金計算の対象期間 | 日々雇い入れられる者(1か月を超えて継続使用する場合を除く)は記入不要 |
| ④労働日数(四号) | その計算期間に実際に労働した日数 | 所定労働日数ではなく、実際に労働した日数で記入するのが一般的な取り扱い |
| ⑤労働時間数(五号) | その計算期間の実労働時間数 | 就業規則で法と異なる所定労働時間・休日を定めた場合は、その所定労働時間数で算定してよい(施行規則54条2項) |
| ⑥時間外労働時間数(六号) | 法第33条・第36条により延長した労働時間数 | ⑤とは別に、延長した時間を記録する |
| ⑦休日労働時間数(六号) | 休日に労働させた時間数 | — |
| ⑧深夜労働時間数(六号) | 午後10時から午前5時までに労働させた時間数 | 厚生労働大臣が認めた地域・期間は午後11時〜午前6時 |
| ⑨賃金の種類ごとの額(七号) | 基本給・各種手当など、賃金の種類ごとの額 | 現物給与がある場合はその評価総額を記入する(施行規則54条3項) |
| ⑩控除額(八号) | 法第24条第1項により賃金の一部を控除した額 | 社会保険料・源泉所得税などの控除項目と金額 |
条文の原文は次のとおりです。各号が記載事項の根拠で、「など」で省略できるものではありません。
第五十四条 使用者は、法第百八条の規定によつて、次に掲げる事項を労働者各人別に賃金台帳に記入しなければならない。
出典:労働基準法施行規則 第54条第1項|e-Gov法令検索
一 氏名
二 性別
三 賃金計算期間
四 労働日数
五 労働時間数
六 法第三十三条若しくは法第三十六条第一項の規定によつて労働時間を延長し、若しくは休日に労働させた場合又は午後十時から午前五時……までの間に労働させた場合には、その延長時間数、休日労働時間数及び深夜労働時間数
七 基本給、手当その他賃金の種類毎にその額
八 法第二十四条第一項の規定によつて賃金の一部を控除した場合には、その額
④の労働日数と⑤の労働時間数は、所定の日数・時間ではなく、その計算期間に実際に労働した実績を記入するのが一般的な取り扱いです。ただし、就業規則で法律と異なる所定労働時間や休日を定めている場合は、施行規則第54条第2項により、その就業規則にもとづいて算定した労働時間数で記入することが認められています。⑨の賃金に通勤定期券の現物支給などが含まれる場合は、同条第3項によりその評価総額を記入します。
出典・参考資料(1件)
- 出典:労働基準法施行規則 第54条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023)
賃金台帳の保存期間と保存方法
賃金台帳の保存期間は、法律上は原則5年ですが、経過措置により当分の間は3年とされています。起算日は、原則としてその賃金台帳に最後の記入をした日です。労働基準法第109条が保存義務を定め、附則第143条第1項がその読み替えを規定しています。
(記録の保存)
出典:労働基準法 第109条|e-Gov法令検索
第百九条 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。
第百四十三条 第百九条の規定の適用については、当分の間、同条中「五年間」とあるのは、「三年間」とする。
出典:労働基準法 附則 第143条第1項|e-Gov法令検索
この「当分の間3年」は、2020年4月の労働基準法改正(賃金請求権の消滅時効の延長にあわせた改正)で導入された経過措置です。条文の本則は5年ですが、実務上は当分の間3年として運用します。
起算日は施行規則第56条第2号で「最後の記入をした日」と定められており、さらに同条第2項により、賃金の支払期日が最後の記入日より遅い場合はその支払期日が起算日になります。月末締め・翌月25日払いのように支払日が後にずれる場合は、支払日を起点に数えてください。
たとえば、ある月分の賃金を2026年4月25日に支払い、それがその労働者の台帳の最後の記入となった場合、起算日は2026年4月25日で、当分の間は3年後の2029年4月24日まで保存します。
出典・参考資料(2件)
- 出典:労働基準法 第109条・附則第143条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049)
- 出典:労働基準法施行規則 第56条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023)
他の帳簿・税務書類との保存期間の違い
賃金台帳の保存期間は、前述のとおり原則5年(当分の間3年)です。同じ労働基準法上の労働者名簿・出勤簿も同じ年数で、ここは変わりません。一方、税務に関係する書類は根拠法が異なるため保存年数も別で、賃金台帳にそろえて3年で廃棄すると保存義務を満たさない書類が出てくる場合があります。
たとえば、源泉徴収に関係する扶養控除等申告書などは、所得税法上、提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年間の保存が必要です。これはあくまで税務関係書類の保存期間で、賃金台帳そのものが7年になるわけではありません。賃金台帳は原則5年(当分の間3年)のままですが、源泉徴収関係の書類を一緒に3年で廃棄しないよう、書類の種類ごとに保存年数を分けて管理してください。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:No.2503 給与所得者の扶養控除等申告書等の保存期間|国税庁(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2503.htm)
賃金台帳を電子データで保存する要件
賃金台帳は、紙だけでなく電子データでの保存も認められています。実務上は、作成した台帳を必要なときにディスプレイや書面へ明瞭に出力できる状態にしておけば足りると押さえておけば十分です。以下はその法令上の根拠です。
賃金台帳は労働基準法上の記録であり、電子保存を規律する一次法令は、いわゆるe-文書法(民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律)と、その厚生労働省令(平成17年厚生労働省令第44号)です。
パソコンで作成した電子台帳の場合、省令第4条第3項により、必要に応じてディスプレイや書面に直ちに明瞭かつ整然とした形式で出力できる状態(見読性)を保つことが求められます。
紙の台帳をスキャナで取り込んで保存する場合は、同条第4項により、改変・消去の有無を確認できる措置と作成の責任の所在の明確化(完全性)、保存期間中に復元できる状態での保存(復元可能性)も必要になります。
一方、「検索性」の要件は、国税関係帳簿書類を対象とする電子帳簿保存法の概念であり、賃金台帳に直接求められる要件ではありません。賃金台帳の電子保存は、電子帳簿保存法ではなくe-文書法とその厚生労働省令が根拠になる点に注意してください。
出典・参考資料(1件)
- 出典:民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律施行規則(厚生労働省関係。平成17年厚生労働省令第44号)第4条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000100044)
賃金台帳と給与明細の違い
賃金台帳と給与明細(給与支払明細書)は記載内容が重なるため混同されがちですが、根拠法も目的も別の書類です。給与明細をそのまま綴じただけでは、原則として賃金台帳の代わりにはなりません。
| 比較項目 | 賃金台帳 | 給与明細(支払明細書) |
|---|---|---|
| 根拠法 | 労働基準法 第108条 | 所得税法 第231条 |
| 主な目的 | 事業場での賃金記録の備え付け | 従業員への賃金内訳の通知・交付 |
| 交付・備付 | 事業場ごとに備え付ける(本人への交付義務はない) | 賃金の支払を受ける者に交付する |
| 保存義務 | あり(原則5年・当分の間3年) | 交付が義務(賃金台帳のような保存年数の定めは所得税法231条にはない) |
| 記載単位 | 労働者各人別に継続して記録 | 支払いの都度、個別に発行 |
(給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書)
出典:所得税法 第231条|e-Gov法令検索
第二百三十一条 居住者に対し国内において給与等……の支払をする者は、財務省令で定めるところにより、その給与等……の金額その他必要な事項を記載した支払明細書を、その支払を受ける者に交付しなければならない。
給与明細に、施行規則第54条の記載事項(性別・労働日数・労働時間数・時間外労働時間数など)がすべて含まれ、労働者各人別に継続して保存されている場合は、実質的に賃金台帳を兼ねられる余地があります。
ただし、一般的な給与明細には性別や労働日数の記載がないことが多く、そのままでは記載事項が不足します。給与明細で代用する場合は、賃金台帳の記載事項を完全に満たしているかを確認してください。
給与明細そのものには保存年数の定めはありませんが、同じ賃金の記録は賃金台帳として原則5年(当分の間3年)保存されます。
出典・参考資料(1件)
- 出典:所得税法 第231条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033)
賃金台帳の作成方法と公式様式
賃金台帳の作成方法は、厚生労働省の公式様式を使う、表計算ソフトで自作する、給与計算ソフトで自動作成する、の3つに大きく分かれます。様式の書式自体に決まりはなく、施行規則第54条の記載事項を満たしていれば、どの方法でも問題ありません。
厚生労働省の公式様式をダウンロードする(様式第20号・第21号)
厚生労働省は、賃金台帳の公式様式を用意しています。施行規則第55条により、常時使用される労働者には様式第20号、日々雇い入れられる者には様式第21号を用いて調製すると定められています。
第五十五条 法第百八条の規定による賃金台帳は、常時使用される労働者(一箇月を超えて引続き使用される日々雇い入れられる者を含む。)については様式第二十号、日々雇い入れられる者(一箇月を超えて引続き使用される者を除く。)については様式第二十一号によつて、これを調製しなければならない。
出典:労働基準法施行規則 第55条|e-Gov法令検索
様式は、厚生労働省の「主要様式ダウンロードコーナー」からPDFで入手できます。常用労働者向けと日々雇い入れられる者向けの2種類が配布されています。
出典・参考資料(2件)
- 出典:労働基準法施行規則 第55条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023)
- 参考資料:主要様式ダウンロードコーナー(労働基準法等関係主要様式)|厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudoukijunkankei.html)
表計算ソフトで自作する(満たすべき要件)
ExcelやGoogleスプレッドシートで自作しても差し支えありません。特定のソフトを使う義務はなく、次の要件を満たしていれば自作フォーマットでも認められます。
- 施行規則第54条の記載事項(氏名・性別・賃金計算期間・労働日数・労働時間数・時間外/休日/深夜労働時間数・賃金の種類ごとの額・控除額)をすべて備えている
- 労働者各人別に作成し、賃金支払の都度、継続して記入できる
- 必要に応じて、ディスプレイや書面に明瞭な形式で出力・印刷できる
自作する場合は、記載事項の抜け漏れが起きやすい点に注意が必要です。特に、時間外・休日・深夜の労働時間数の列や、賃金の種類ごとの内訳欄が不足しやすいため、公式様式の項目と照らし合わせて作成してください。
給与計算ソフトで作成する
給与計算ソフトを使うと、毎月の給与計算のデータから賃金台帳を帳票として自動で出力できます。記載事項の抜け漏れや転記ミスを防ぎやすく、法改正への対応もしやすい方法です。具体的なサービスと選び方は、本記事後半の給与計算ソフトで賃金台帳を自動作成するで紹介します。
賃金台帳の作成対象者と例外
賃金台帳は、雇用する労働者について労働者各人別に作成します。正社員だけでなく、パート・アルバイト・契約社員も対象で、短期間の勤務でも作成・保存の義務があります。一方で、対象者の範囲には取り違えやすい境界がいくつかあります。

管理監督者も対象(ただし労働時間の欄は記入免除)
労働基準法第41条は、管理監督者について労働時間・休憩・休日に関する規定を適用しないと定めています。ただし、これは賃金台帳そのものの作成を免除するものではありません。管理監督者も賃金台帳の作成対象であり、施行規則第54条第4項により、労働時間数(第五号)と時間外・休日・深夜労働時間数(第六号)の記入が不要になるにとどまります。
(労働時間等に関する規定の適用除外)
出典:労働基準法 第41条|e-Gov法令検索
第四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
「役職手当を払っているから管理監督者で、賃金台帳はいらない」という扱いは誤りです。役員であっても、実態として労働者性がある場合は賃金台帳の対象になります。個人事業主の家族従業員も、使用従属関係の実態があれば労働者として対象になります。
派遣労働者は派遣元が作成する
派遣労働者の賃金台帳は、賃金を支払う派遣元が作成します。賃金台帳の作成義務は労働基準法第108条で「使用者」に課されますが、労働者派遣法第44条第2項が派遣先を使用者とみなして適用する労働基準法の規定の中に、第108条(賃金台帳)は含まれていません。そのため、賃金台帳の作成義務は派遣元に残ります。派遣先が作成するのは、派遣法第42条の「派遣先管理台帳」であり、賃金台帳とは別の書類です。
日雇い・短期アルバイトも対象
日々雇い入れられる労働者や短期のアルバイトも、賃金台帳の作成対象です。ただし、1か月を超えて引き続き使用する場合を除き、日々雇い入れられる者については賃金計算期間(第三号)の記入が不要になります。雇用期間の長短にかかわらず、賃金を支払った実績がある以上は台帳を整える必要があります。
出典・参考資料(2件)
- 出典:労働基準法 第41条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049)
- 出典:労働者派遣法 第44条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088)
賃金台帳の記載・作成・保存に関する違反と罰則
賃金台帳を作成しなかったり、保存義務を守らなかったりした場合、労働基準法第120条により30万円以下の罰金が科される可能性があります。同条第1号の「第百六条から第百九条まで」の規定に、作成義務の第108条と保存義務の第109条がいずれも含まれています。
第百二十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
出典:労働基準法 第120条|e-Gov法令検索
一 ……第百六条から第百九条までの規定に違反した者
罰則の対象になるのは、未作成や未保存だけではありません。実際に、賃金台帳に虚偽や過少の記載をした事例でも送検されています。
2025年11月26日、奈良・大淀労働基準監督署は、毎月の労働時間を1人につき数十時間少なく記載していたとして、木材加工業の法人と同社取締役を労働基準法第108条違反などの疑いで書類送検しました。記入すべき事項を正確に記載していない場合も、労働基準法第108条違反として書類送検の対象になります。
「給与計算ソフトが自動で作っているから大丈夫」という思い込みは、罰則を免れる理由にはなりません。記載事項の過不足や設定の誤りがないかは、担当者が定期的に確認する必要があります。
出典・参考資料(2件)
- 出典:労働基準法 第120条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049)
- 参考資料:賃金台帳の虚偽記載で送検 労働時間を過少に 大淀労基署|労働新聞社(https://www.rodo.co.jp/news/210193/)
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給与計算ソフトで賃金台帳を自動作成する
ここまで見てきた記載事項の記入や保存を手作業で続けると、記載漏れ・転記ミス・法改正への対応漏れが起きやすくなります。給与計算ソフトを使えば、毎月の給与計算のデータから賃金台帳を帳票として自動で出力でき、記載事項の整合も取りやすくなります。ここでは、賃金台帳を帳票として出力できる代表的な給与計算ソフトを紹介します。以下はご紹介するサービスの比較表です。
対象規模・料金プラン・年末調整への対応範囲まで含めて給与計算ソフトを幅広く比較したい場合は、給与計算ソフト全体のまとめ記事で選び方を整理しています。
1. 弥生給与 Next(弥生株式会社)

弥生株式会社が提供するクラウド型の給与計算ソフトです。給与・賞与計算、Web給与明細の配信、年末調整、法定調書作成に対応し、公式の機能一覧では出力できる帳票のひとつに「賃金台帳」が挙げられています。公式サイトでは、20名以上・20名未満で導入の導線(資料請求・無料お試し)を分けて案内しています。
給与計算で入力・計算したデータをもとに賃金台帳を出力できるため、台帳を別途手作業で作り直す必要がありません。
社会保険料率や所得税の改正への対応はクラウド型のため自動で反映される仕組みで、法改正のたびに設定を入れ替える手間を抑えられます。料金は年契約のプラン制で、給与計算のみの下位プランから、年末調整・労務管理まで含む上位プランまで複数の構成があります。20名未満の事業者向けには最大2か月間の無料お試しが用意されています。
プランによって対応できる機能や出力できる帳票が異なるため、賃金台帳の出力可否は申し込み前にプラン内容を確認してください。
2. マネーフォワード クラウド給与(株式会社マネーフォワード)

株式会社マネーフォワードが提供する給与計算サービスで、「マネーフォワード クラウド」シリーズの一部として会計・勤怠などと連携して使えます。出力できる帳票に労働者名簿・賃金台帳といった法定三帳簿が含まれており、給与計算の結果から賃金台帳を作成できます。控除金額の変更や計算変更についても自動で対応すると案内されています。
料金は、ひとり法人向けの小規模プランから、従業員数に応じたビジネスプランまで用意されています(いずれも税抜・初期費用0円)。ビジネスプラン相当の機能を1か月無料で試せるため、賃金台帳の出力を含めて操作感を確認してから導入を判断できます。小規模から始めて事業の拡大にあわせてプランを上げたい企業に向いたサービスです。
3. 給与奉行クラウド(株式会社オービックビジネスコンサルタント)

「奉行クラウド」シリーズの給与計算ソフトで、株式会社オービックビジネスコンサルタント(OBC)が提供しています。月次業務機能ページの管理帳票一覧に賃金台帳が含まれており、給与計算の結果から賃金台帳を作成できます。クラウド型でサーバーの設置・運用が不要で、制度改正へはプログラムの自動更新で対応し、更新費用は利用料に含まれると案内されています。
料金は従業員規模に応じたプラン制で、20名までの小規模向けから300名規模・1,000名規模まで段階が分かれています。初期費用はプランにより異なり、30日間の無料お試しが用意されています。販売はOBCの取扱パートナー経由で案内されており、中堅規模まで見据えて拡張性を重視したい企業に向いています。
まとめ
賃金台帳は、労働基準法第108条がすべての使用者に義務づける法定帳簿です。記載事項は施行規則第54条で第一号から第八号まで定められ、項目に分解すると実質10項目になります。1つでも欠けると記載義務を満たさないため、自社の台帳を一覧と照らし合わせて確認してください。
保存期間は原則5年ですが、経過措置により当分の間は3年で、起算日は最後の記入日(支払期日が遅ければ支払期日)です。給与明細とは根拠法も目的も異なり、記載事項を完全に満たさない限り代用できません。手作業での記入・保存がミスや対応漏れの温床になる場合は、給与計算のデータから賃金台帳を自動で出力できる給与計算ソフトの活用が、実務負担と法令対応の両面で有効な選択肢になります。
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よくある質問(FAQ)
Q. 賃金台帳とは何ですか?
A. 賃金台帳とは、労働者ごとに賃金の計算の基礎や賃金額を記録する、労働基準法第108条がすべての使用者に義務づけた法定帳簿です。労働者名簿・出勤簿とあわせて「法定三帳簿」と呼ばれ、事業場ごとに備え付けます。
出典・参考資料(1件)
- 出典:労働基準法 第108条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049)
Q. 賃金台帳は給与明細で代用できますか?
A. 賃金台帳は、一般的な給与明細ではそのまま代用できません。賃金台帳(労働基準法第108条)と給与明細(所得税法第231条)は根拠法も目的も別の書類だからです。
給与明細に施行規則第54条の記載事項(性別・労働日数など)がすべて含まれ、各人別に継続保存されていれば兼ねられる余地はありますが、一般的な給与明細は性別や労働日数の欄がなく項目が不足します。
出典・参考資料(2件)
- 出典:労働基準法施行規則 第54条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023)
- 出典:所得税法 第231条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033)
Q. 賃金台帳の保存期間は何年ですか?
A. 賃金台帳の保存期間は、法律上は原則5年ですが、経過措置により当分の間は3年です。起算日は、原則としてその台帳に最後の記入をした日で、賃金の支払期日が最後の記入日より遅い場合はその支払期日が起算日になります。
労働基準法第109条が保存義務を定め、附則第143条第1項が「当分の間、五年間を三年間とする」と読み替えを規定しています。月末締め・翌月25日払いのように支払日が後にずれる場合は、支払日を起点に数えてください。
出典・参考資料(2件)
- 出典:労働基準法 第109条・附則第143条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049)
- 出典:労働基準法施行規則 第56条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023)
Q. 短期アルバイトやパートにも賃金台帳は必要ですか?
A. 短期アルバイトやパートも、雇用期間の長短にかかわらず賃金台帳の作成・保存が必要です。正社員・契約社員だけでなく、日々雇い入れられる労働者も対象で、賃金を支払った実績がある以上は労働者各人別に台帳を整える義務があります。ただし、1か月を超えて引き続き使用する場合を除き、日々雇い入れられる者については賃金計算期間(施行規則第54条第1項第三号)の記入が不要になります。
出典・参考資料(1件)
- 出典:労働基準法施行規則 第54条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023)
Q. 賃金台帳はExcelで自作してもよいですか?
A. 賃金台帳は、ExcelやGoogleスプレッドシートで自作しても認められます。特定のソフトや様式を使う義務はありません。施行規則第54条の記載事項をすべて備え、労働者各人別に継続して記入でき、必要に応じて書面やディスプレイに明瞭な形式で出力できれば問題ありません。
ただし、時間外・休日・深夜の労働時間数の列や賃金の種類ごとの内訳欄が抜けやすいため、厚生労働省の公式様式(様式第20号・第21号)と項目を照らし合わせて作成してください。
出典・参考資料(1件)
- 出典:労働基準法施行規則 第54条・第55条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023)
Q. 賃金台帳を作成していなかった場合、どうなりますか?
A. 賃金台帳を作成・保存していなかった場合、労働基準法第120条により30万円以下の罰金が科される可能性があります。作成義務の第108条と保存義務の第109条のいずれも罰則の対象で、未作成・未保存だけでなく、賃金台帳に虚偽や過少の記載をした事例でも書類送検されています。
あわせて、労働基準監督署の是正勧告や、助成金の申請で必要書類を提示できないといった実務上の不利益にもつながるため、記載事項に過不足がないかを定期的に確認してください。
出典・参考資料(1件)
- 出典:労働基準法 第120条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049)
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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