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SaaS型ERPとは?オンプレミス型・PaaS型との違いを費用・導入期間・カスタマイズで比較

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ERP(統合基幹業務システム)比較表(2026年版)

基幹システムの刷新を任されたとき、「クラウドにするならSaaS型がよい」という話は耳にしても、オンプレミス型やPaaS型、あるいは単に「クラウドERP」と呼ばれるものと何がどう違うのかは、意外と整理しにくいものです。提供形態を取り違えたまま製品選びを進めると、後戻りのコストが大きくなります。

本記事では、SaaS型ERPとは何かを結論から定義したうえで、SaaS型・PaaS型・IaaS型・オンプレミス型を、費用のかかり方・導入期間・カスタマイズできる範囲・保守運用を誰が担うか・セキュリティの責任範囲という同じ軸で横並びに比較します。メリットとデメリットの両面を示し、自社にどの形態が向くかを判断できるように整理しました。

提供形態の違いを理解したうえで具体的な検討に進めるよう、代表的なSaaS型ERP製品と料金相場も紹介します。料金を公表している製品は実額を、非公開の製品は要お問い合わせと明示して示します。社内での検討・説明の材料としてご活用ください。

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SaaS型ERPとは

SaaS型ERPとは、会計・販売・在庫・人事などの基幹業務を統合するERP(統合基幹業務システム)を、クラウド経由で使う提供形態です。アプリケーションからサーバー・ネットワークといった基盤までをベンダーが運用し、利用者は月額料金を払ってインターネット経由で使えます。自社でサーバーを用意したりソフトを保守したりする必要がなく、申し込めばすぐに使い始められる点が、従来の自社構築型と大きく異なります。

混同されやすいのが「クラウドERP」との関係です。クラウドERPはクラウド上で動くERPの総称で、SaaS型はそのうちの一つの提供形態にあたります。

クラウドの提供形態は、総務省やアメリカの標準化機関NISTの定義で、SaaS(ソフトウェアの機能を提供)・PaaS(開発や実行の環境を提供)・IaaS(サーバーやネットワークなどの基盤を提供)の3つに分類されます。SaaS型ERPは、このうちソフトウェアの機能までをベンダーが提供するSaaSの形でERPを使うもの、と位置づけられます。

出典・参考資料(2件)

SaaS型ERPの種類(パブリッククラウド型・プライベートクラウド型)

アプリから基盤までをベンダーが運用・提供するSaaS型ERPは、そのクラウド環境を誰と共有するかによって、さらにパブリッククラウド型とプライベートクラウド型に分かれます。総務省の定義では、パブリッククラウドは「クラウドの標準的なサービスを不特定多数が共同で利用する形態」、プライベートクラウドは「利用企業に専用のクラウド環境」とされています。

パブリッククラウド型は共通基盤を多くの企業で分け合う形で、NISTがクラウドの本質的な特性(リソースの共有)を説明する際に用いるマルチテナント方式にあたります。共有のため低コストで早く導入できます。プライベートクラウド型は利用企業ごとの専用環境(シングルテナント寄り)で、独自要件やセキュリティ要件に合わせやすい点が違いです。

どちらもベンダーが運用・提供するSaaS型ERPの下位区分であり、オンプレミス型のように自社でシステムを所有・運用する形態とは異なります。

出典・参考資料(1件)

SaaS型ERPと他の提供形態の違い

ここからは、SaaS型・PaaS型・IaaS型・オンプレミス型の4つを同じ軸で並べ、違いを一目で把握できるように整理します。費用のかかり方・導入期間・カスタマイズできる範囲・保守運用を誰が担うか・セキュリティの責任範囲・拡張や連携のしやすさの6つの観点で比較しました。

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提供形態SaaS型ERPPaaS型ERPIaaS型ERPオンプレミス型ERP
料金体系初期費用は小さく、月額の利用料が中心初期費用は中程度、利用料が中心初期費用は中〜大、従量や利用料初期費用が大きく、保守費が継続
導入期間短い(標準機能をそのまま使う)中程度中〜長長い(構築・開発を伴い、数ヶ月〜1年以上に及ぶことも)
カスタマイズできる範囲限定的(標準機能と設定の範囲内)アプリは自社開発で自由度があるOSやアプリまで自社で自由自由(自社資産として改変できる)
保守運用の担い手ベンダーが大半を担う基盤はベンダー、アプリは自社物理基盤はベンダー、OS以上は自社すべて自社
セキュリティの責任範囲ベンダーが担う範囲が最も広く、利用者はデータや権限設定を担う基盤はベンダー、アプリ層は利用者物理基盤はベンダー、OS・アプリ・データは利用者すべて自社の責任
拡張・連携APIなどで連携、拡張は提供範囲内開発環境の上で柔軟に拡張できる自由度は高いが自社での構築が必要自社開発で自由だが運用負担が大きい

一般的な傾向であり、個社・製品により異なります。詳細は各社の公式情報をご確認ください。

SaaS型・PaaS型・IaaS型は「どこまでベンダーが提供するか」で分かれる

SaaS・PaaS・IaaSの違いは、システムをハードウェア・OSやミドルウェア・アプリケーションの3層に分けたとき、どこまでをベンダーが提供・運用するかで整理できます。IPA(情報処理推進機構)の資料でも、オンプレミスからIaaS・PaaS・SaaSへと移るほど、自社が調達・運用・保守する範囲が減り、クラウド事業者が担う範囲が増える形で図示されています。

IaaSはハードウェアまで、PaaSはOSやミドルウェアまで、SaaSはアプリケーションまでをベンダーが担います。SaaS型ERPはこのうちベンダーの提供範囲が最も広く、利用者はサーバーの調達も保守も意識せずに業務機能だけを使えます。NISTの定義でも、SaaSの利用者はネットワーク・サーバー・OS・ストレージといった基盤を管理しないとされています。

システムをアプリケーション・OS/ミドルウェア・ハードウェアの3層に分け、オンプレミス型・IaaS型・PaaS型・SaaS型のそれぞれでどの層までをベンダーが提供・運用し、どこからを自社が担うかを示した図。オンプレミス型は全層を自社が担い、IaaS型はハードウェアまで、PaaS型はOS・ミドルウェアまで、SaaS型はアプリケーションまでをベンダーが担う。
出典・参考資料(2件)

セキュリティの責任範囲はどう変わるか

クラウドのセキュリティは、事業者と利用者が役割を分担する「責任共有」の考え方で成り立ちます。IPAは、クラウドサービスのセキュリティについて「サービス事業者と利用者が、役割・責任を分担し、対策を実施することで維持・向上」すると説明しています。SaaS型のように事業者の提供範囲が広いほど、利用者が担う範囲は狭くなりますが、ゼロにはなりません。

クラウド事業者もこの考え方を公表しています。たとえばAWS(アマゾン ウェブ サービス)は、インフラ側の保護は事業者が、その上での設定やデータの扱いは利用者が担うという責任の分かれ方を、次のように示しています。

AWS には、AWS クラウドで提供されるすべてのサービスを実行するインフラストラクチャを保護する責任があります。お客様の責任は、選択した AWS クラウドのサービスに応じて異なります。

出典:責任共有モデル|アマゾン ウェブ サービス(AWS)

SaaS型ERPでは、サーバーやOSの保守、バックアップといった基盤側の対策は事業者が担います。一方で利用者側には、利用者アカウントや権限の設定、システムに入力・保管するデータの取り扱いといった運用面の管理が残ります。どこまでが自社の責任かを導入前に確認しておくことが、安全に使ううえで欠かせません。

出典・参考資料(1件)

SaaS型ERPを導入するメリット

ここでは、SaaS型ERPの導入が中堅・中小企業で進む背景を、主なメリットから整理します。SaaS型の利点の多くは、IPAがクラウドサービス全般の利点として挙げる内容と重なります。

第一に、初期費用を抑えて短期間で導入できます。サーバーの調達やソフトの構築が不要なため、IPAも「ITの調達に関わる負担からの解放または負担の軽減」を利点に挙げています。標準機能をそのまま使えば、オンプレミス型のような長い構築期間を待たずに業務を始められます。

第二に、運用・保守の負担が軽くなります。バージョンアップやサーバーの保守は事業者が担うため、社内のIT担当が少なくても運用を続けられます。これはIPAが「ITの運用・保守の負荷からの解放または負荷の軽減」と表現する利点にあたります。機能の改善や法改正への対応が自動で反映される点も、担当者の手間を減らします。

第三に、利用規模の増減に合わせて柔軟に使えます。利用人数やモジュールを必要に応じて増減でき、事業の成長や組織変更にあわせて構成を見直せます。IPAはこれを「IT資源利用の柔軟性・拡張性の獲得」と説明しています。インターネット環境があれば拠点や在宅からも同じ基盤にアクセスできます。

出典・参考資料(1件)

SaaS型ERPのデメリット・導入時の注意点

SaaS型ERPには弱点もあります。導入してから「思っていた使い方ができない」と気づかないよう、注意点を事実として押さえておきましょう。ここで挙げる制約の多くも、IPAがクラウド利用上の留意事項として示しているものです。

一つ目は、カスタマイズの制約です。標準機能を共通基盤で提供する仕組み上、自社独自の業務プロセスに合わせた改変には限界があります。IPAも「利用できるアプリケーションのカスタマイズの制約」を留意点に数えています。独自の帳票や承認フローが必須の場合は、標準機能でどこまで吸収できるかを事前に確認する必要があります。

二つ目は、利用者が増えると月額が積み上がり、長期の総コストが膨らむ点です。この点についてIPAは「利用量・処理量の異常な増加や意図せぬ増大に伴う使用料の急増のリスク」として注意を促しています。初期費用の安さだけで判断せず、数年単位の利用料で総額を見積もることが大切です。

三つ目は、ベンダーへの依存です。システムの運用も機能の方向性も事業者に委ねるため、サービスの仕様変更や料金改定、万一のサービス終了の影響を受けます。IPAが留意点に挙げる「データを自らの管理範囲外に置く、あるいは社外に預ける不安や制約」も、データを社外に預けるこの形態ならではの論点です。

四つ目は、インターネット接続が前提になる点です。通信環境が不安定な場所では業務が止まるおそれがあります。他システムとはAPIや標準連携でつなげられますが、拡張や連携は提供範囲内が基本で、範囲を超える独自連携には制約やコストが生じる場合があります。自社の利用環境と連携要件を踏まえて検討しましょう。

出典・参考資料(1件)

カスタマイズ制約とどう向き合うか

カスタマイズの制約は、見方を変えれば「標準機能に業務を合わせる」という前提で設計されていることの裏返しです。システムを業務に合わせて作り込むのではなく、業務の進め方のほうを標準機能に寄せていく考え方は、Fit to Standard(フィット・トゥ・スタンダード)と呼ばれます。

この考え方は多くのERPベンダーが導入方法として説いていますが、公的に統一された定義があるわけではありません。自社の業務のうち、どこが本当に独自性を保つべき部分で、どこは標準のやり方に合わせてよい部分かを見極めることが、SaaS型ERPを無理なく使いこなす鍵になります。

パブリッククラウド型とプライベートクラウド型の区分が効いてくるのも、主にこのカスタマイズの自由度の場面です。独自要件がどうしても外せない場合は、同じSaaS型の中でも専用環境で自由度が高いプライベートクラウド型や、所有して自由に作り込めるオンプレミス型も選択肢に入ります。

SaaS型ERPが向いている企業・向かない企業

ここまでの違いを踏まえ、自社がSaaS型で進めやすいか、別の形態を検討したほうがよいかを見分けるための目安を整理します。形態ごとの特性から、向き・不向きは次のように分かれます。

比較した4形態のうちPaaS型・IaaS型は、アプリケーション側を自社で開発・運用することが前提になります。そのため一般的な基幹システムの刷新ではまず選択肢になりにくく、独自開発や運用体制を持つ企業が主な対象です。多くの企業では、実際の検討対象はSaaS型とオンプレミス型が中心になります。

SaaS型ERPが向いている企業

  • 初期費用を抑え、短期間で基幹システムを立ち上げたい企業
  • 社内のIT担当が少なく、運用・保守の負担を減らしたい企業
  • 標準的な業務の進め方に合わせられ、過度な作り込みを必要としない企業
  • 拠点や在宅など、場所を問わず同じ基盤を使いたい企業

オンプレミス型・2層ERPも検討したい企業

  • 独自の業務プロセスに合わせた大規模なカスタマイズが欠かせない企業
  • 機密データを自社の管理下に置くことを最優先する企業
  • 利用者が非常に多く、月額の積み上げで長期コストが割高になりやすい企業

本社には従来型のERPを残しつつ、子会社や海外拠点には導入しやすいSaaS型を組み合わせる「2層ERP」という考え方もあります。すべてを一つの形態に寄せる必要はなく、拠点や業務の性格に応じて使い分ける選択肢も検討に値します。

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代表的なSaaS型ERP製品と料金相場

「うちはSaaS型で進められそうだ」と見当がついたら、次は規模や予算に合う具体的な製品を見ていきましょう。ここでは、大企業・グローバル向けから中小企業向けまで、代表的なSaaS型ERP製品を紹介します。料金は公表されている範囲で実額を示し、公式で非公開のものは「要お問い合わせ」としています。

料金相場は製品の対象規模で大きく分かれます。中小企業向けは初期費用0〜十数万円程度・月額数千円〜数十万円程度が目安で、中堅〜グローバル向けの製品は個別見積もりが中心です。次の比較表で、各製品の対象規模・費用・無料トライアルの有無を見比べられます。

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サービス名Oracle NetSuiteマネーフォワード クラウドERPfreee 統合型ERPSAP S/4HANA CloudSmileWorksキャムマックス
提供会社日本オラクル株式会社株式会社マネーフォワードfreee株式会社SAPジャパン株式会社株式会社スマイルワークス株式会社キャム
対象規模中堅・成長〜グローバル企業IPO準備・中堅〜上場企業受託・請負型のスモールビジネス〜中堅〜大企業中小〜中堅企業中小企業(製造・卸・小売など有形商材)
初期費用要お問い合わせ要お問い合わせ要お問い合わせ要お問い合わせ0円〜(税抜)100,000円(税抜)
月額費用要お問い合わせ要お問い合わせ要お問い合わせ要お問い合わせ5,000円〜(税抜)90,000円〜(税抜)
無料トライアル公式に記載なし共通版に1ヶ月(ERP専用ページは記載なし)あり(期間・条件は記載なし)30日間(+14日延長可)申込月の翌月末まで(最大2ヶ月)60日間
特徴世界初のクラウドERP。会計・販売・在庫・CRMを単一基盤に統合し、多言語・多通貨でグローバル対応会計・人事労務などを必要なモジュールから導入できるコンポーネント型。利用人数・プランに応じた料金で、最短1ヶ月で導入会計・販売・人事を連携し、案件別の収支を可視化。1名から使え、受託・請負型のビジネス向け大手ERPベンダーSAPのクラウド版。パブリック型とプライベート型を選べる販売・会計・給与を統合し、プロジェクト別収支管理が主軸。料金を実額で公表有形商材向けに販売・在庫・生産・会計を一元管理。EC・卸・店舗の受注を集約
詳細情報公式資料を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見る

1. Oracle NetSuite(日本オラクル)

Oracle NetSuiteのウェブサイト

世界で初めてクラウドERPを提供した製品とされ、現在は日本オラクル株式会社が国内で提供しています。財務会計・販売・購買・在庫管理・顧客管理までを単一のクラウド基盤に統合するマルチテナント型のSaaSです。

公式サイトによると、導入実績は200か国以上・44,000社超(2026年時点)にのぼり、27言語・190以上の通貨に対応します。海外拠点を含めて一つの基盤で会計や在庫を一元管理できるため、中堅・成長企業からグローバルに事業を展開する企業まで幅広く使われています。料金は会社規模・利用モジュール・ユーザー数に応じた個別見積もりで、具体額は公式では非公開(要お問い合わせ)です。

業務を一つの基盤に統合するという発想がどこから生まれたのかについて、提供元である日本オラクルの福宮氏は、開発の背景を次のように説明しています。

福宮氏
日本オラクル株式会社 理事 NetSuite事業統括 営業統括本部長
福宮氏
独自インタビューより

もともとは、創業者のEvan Goldberg(エバン・ゴールドバーグ)が自身の経営経験の中で感じた課題が出発点になっています。会計は会計のシステム、在庫は在庫のシステム、というように業務ごとにシステムが分かれていると、データが分断されてしまって、経営者が全体を見ようとしてもなかなか正確な数字がつかめません。そこで、あらゆる業務を一つの基盤で一元管理して、経営者がどこからでもリアルタイムにデータを確認できるようにしたい、という発想からクラウドERPという形にたどり着きました。

2. マネーフォワード クラウドERP(マネーフォワード)

マネーフォワード クラウドERPのウェブサイト

会計・請求・経費・債権債務・人事労務・勤怠・給与といったモジュールを連携させて使う、コンポーネント型のクラウドERPです。株式会社マネーフォワードが提供し、公式ページでは対象をIPO準備・中堅〜上場企業向けと位置づけています。

必要なモジュールを1つから導入でき、事業の成長に合わせて構成を広げられる点が特徴です。公式は最短1ヶ月で導入可能としており、電子帳簿保存法・インボイス制度にも対応しています。ERPとしての料金は利用人数やプランで変わるため要お問い合わせですが、導入前に専任担当がつく支援体制が用意されています。

3. freee 統合型ERP(freee)

freee 統合型ERPのウェブサイト

クラウド会計で知られるfreee株式会社が、2023年に提供を始めた統合型ERPです。freee会計・freee販売・freee人事を連携させ、一度入力した情報がそれぞれに自動反映される設計で、カスタマイズ不要で業務の流れを構築できるとされています。

とくに受託型・請負型のビジネスを主な対象とし、工数管理で集計した人件費を案件に自動で紐づけて、案件別の粗利や収支を可視化できる点が強みです。1名からでも利用できるクラウド型とされ、小規模から始めやすい構成になっています。統合ERPのプラン料金は公式ページに記載がなく、資料請求や問い合わせでの確認が前提です。

4. SAP S/4HANA Cloud(SAP)

SAP S/4HANA Cloudのウェブサイト

ドイツのSAP SEが開発し、日本ではSAPジャパン株式会社が提供する、大手ERPのクラウド版です。財務・調達・在庫・生産・販売・人事などを単一のデータ基盤で統合し、クラウド版は「SAP Cloud ERP」とも呼ばれます。

マルチテナントのPublic Editionと、専用環境でカスタマイズできるPrivate Editionがあり、パブリッククラウド型(共有型)とプライベートクラウド型(専用環境型)という提供形態の違いを、一製品の中で見比べられる例でもあります。

クラウド移行の背景として、いわゆる「2027年問題」があります。SAPは公式リリースで、SAP ERP 6.0(通称ECC)を含むSAP Business Suite 7の中核アプリケーションについて、標準保守を2027年末まで、延長保守を2030年末まで提供するとしています。S/4HANAについては、2040年末までの保守を表明しています。

既存システムの保守期限を見据えてクラウドへの移行を検討する企業の受け皿になっています。料金は個別見積もりが基本で、公式では非公開(要お問い合わせ)です。

出典・参考資料(1件)

5. SmileWorks(スマイルワークス)

SmileWorks(スマイルワークス)のウェブサイト

株式会社スマイルワークスが提供する、中小企業を中心に使われている統合型クラウドERPです。販売・仕入・在庫・給与・経費・勤怠・ワークフローを一つのシステムにまとめ、各業務の入力から自動で会計仕訳までを生成する設計が特徴で、売上・仕入・経費・社内工数を案件単位で集計するプロジェクト別収支管理を主軸に据えています。

料金を実額で公表している点も、検討しやすいところです。販売管理に特化した販売ERPプランは初期費用0円・月額5,000円から、販売・会計・給与を機能単位で選べる標準プランは初期費用30,000円・月額10,000円から利用できます(いずれも税抜、オプションは別途)。小さく始めて必要な機能を追加していける構成で、サービス型・案件型のビジネスに向いています。

6. キャムマックス(キャム)

キャムマックスのウェブサイト

株式会社キャムが提供するキャムマックスは、公式が「中小企業の、中小企業による、中小企業のためのクラウドERP」と掲げる製品です。製造業・卸売業・小売業など有形商材を扱う事業者を対象に、販売管理・購買管理・在庫/倉庫管理・生産管理・財務会計を一つのシステムで一元管理します。

ECや卸、実店舗など複数チャネルの受注を集約し、見積から入金までを一気通貫で扱える点が強みで、主要なECカートや外部システムとの連携オプションも用意されています。料金は実額で公表されており、初期費用100,000円、月額基本料金70,000円に1ライセンスあたり20,000円を加えた構成で、最小構成の月額は90,000円です(いずれも税抜)。契約前に60日間の無料トライアルで標準機能を試せます。

ここで取り上げたのはSaaS型の代表的な製品です。オンプレミス型なども含めてERP全体を企業規模・提供形態・費用で広く見比べたい場合は、以下の記事で20製品を横断的に比較しています。

まとめ

SaaS型ERPは、クラウドERPのうちアプリケーションから基盤までをベンダーが運用し、月額料金で使う提供形態です。初期費用を抑えて短期間で導入でき、運用・保守の負担が軽い一方で、カスタマイズの制約や利用者増に伴う長期コスト、ベンダー依存といった弱点もあります。

自社が標準的な業務の進め方に合わせられ、運用負担を減らしたいならSaaS型が有力です。逆に大規模なカスタマイズや機密データの自社管理が外せない場合は、プライベートクラウド型・オンプレミス型・2層ERPも含めて検討するとよいでしょう。費用・導入期間・カスタマイズ・保守運用・セキュリティの責任範囲を同じ軸で見比べ、自社の規模と要件に合う形態と製品を選んでください。

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よくある質問(FAQ)

Q. SaaS型ERPとは何ですか?

A. SaaS型ERPとは、会計・販売・在庫・人事などの基幹業務を統合するERPを、アプリケーションから基盤までベンダーがクラウド上で運用し、利用者が月額料金を払ってインターネット経由で使う提供形態です。

自社でサーバーを用意したりソフトを保守したりする必要がなく、申し込めばすぐに使い始められます。クラウド上で動くERPの総称である「クラウドERP」のうち、ソフトウェアの機能までをベンダーが提供するSaaSの形でERPを利用するもの、と位置づけられます。

Q. SaaS型ERPとオンプレミス型ERPの違いは何ですか?

A. SaaS型ERPとオンプレミス型ERPの違いは、システムを「利用」するか「所有」するかにあります。SaaS型はベンダーがクラウド上で運用するシステムを月額料金で利用する形で、初期費用を抑えて短期間で導入でき、保守運用もベンダーが大半を担います。

一方オンプレミス型は自社でサーバーを構築してシステムを所有・運用する形で、初期費用と運用負担は大きいものの、自社の業務に合わせて自由にカスタマイズでき、データも自社の管理下に置けます。

Q. SaaS型ERPとPaaS型・IaaS型ERPの違いは何ですか?

A. SaaS型・PaaS型・IaaS型ERPの違いは、システムをハードウェア・OSやミドルウェア・アプリケーションの3層に分けたとき、どこまでをベンダーが提供・運用するかにあります。SaaS型はアプリケーションまでをベンダーが担うため提供範囲が最も広く、利用者はサーバーの調達も保守も意識せず業務機能だけを使えます。

PaaS型はOSやミドルウェアまでをベンダーが提供し、その上で動くアプリは自社で開発します。IaaS型はサーバーなどの基盤のみをベンダーが提供し、OSからアプリまでは自社で構築・運用します。SaaS型からIaaS型へ向かうほど自由度は上がりますが、自社が担う運用の範囲も広がります。

Q. SaaS型ERPとクラウドERPは何が違いますか?

A. クラウドERPはクラウド上で動くERPの総称で、SaaS型ERPはそのうちの一つの提供形態です。クラウドERPには、アプリから基盤までをベンダーが運用するSaaS型のほか、開発環境までを借りてアプリを自社で用意するPaaS型、基盤だけを借りるIaaS型が含まれます。

「クラウドERP」と呼ばれるものの多くはSaaS型を指しますが、厳密には両者は総称と一形態の関係にあるため、資料や見積もりを見るときはどの形態なのかを確認すると取り違えを防げます。

Q. SaaS型ERPの料金相場はどのくらいですか?

A. SaaS型ERPの料金は製品や企業規模で大きく幅があり、中小企業向けは初期費用0〜十数万円・月額数千円〜数十万円、中堅〜グローバル企業向けの大手製品は個別見積もりで公式非公開(要お問い合わせ)が中心です。

たとえば本記事で紹介したSmileWorksは初期費用0円・月額5,000円から、キャムマックスは初期費用10万円・月額9万円からと実額を公表する一方、Oracle NetSuiteやSAP S/4HANA Cloudは利用モジュールやユーザー数に応じた個別見積もりです。利用人数が増えると月額が積み上がるため、初期費用の安さだけでなく数年単位の総額で比較することをおすすめします。

Q. SaaS型ERPの導入期間はどのくらいですか?

A. SaaS型ERPの導入期間は、サーバーの構築が不要なぶんオンプレミス型より短く済み、標準機能をそのまま使う場合は比較的早く立ち上げられます。たとえばマネーフォワード クラウドERPは公式で最短1ヶ月での導入可能としています。

ただし、要件の整理やデータ移行、業務フローの見直しにかける時間によって実際の期間は変わります。独自の作り込みを増やすほど期間は延びるため、標準機能にどこまで業務を合わせられるかが導入スピードを左右します。

Q. SaaS型ERPは自社の業務に合わせてカスタマイズできますか?

A. SaaS型ERPのカスタマイズは、標準機能と設定の範囲内に限られ、オンプレミス型のような自由な作り込みはできないのが一般的です。これは、共通の基盤を多くの企業で分け合う仕組み上の制約によるものです。

そのため、システムを業務に合わせて改変するのではなく、業務の進め方を標準機能に寄せていくFit to Standardの考え方が前提になります。独自の帳票や承認フローがどうしても外せない場合は、同じSaaS型でも専用環境で自由度が高いプライベートクラウド型や、オンプレミス型も選択肢に入れて検討しましょう。

Q. 既存システムからSaaS型ERPへのデータ移行は難しいですか?

A. SaaS型ERPへのデータ移行は、多くの製品がCSVなどでの取り込み機能やベンダーの移行支援を用意しているものの、移行対象の整理と準備に相応の手間がかかります。

取引先や商品などのマスタデータの重複・表記ゆれを整え、既存システムとのコード体系の違いを吸収する作業が必要になるためです。移行するデータの範囲と期間、どこまでをベンダーが支援してくれるかを導入前に確認し、計画的に進めることが失敗を防ぐポイントです。

Q. SaaS型ERPが向かない企業はどのような企業ですか?

A. SaaS型ERPが向かないのは、独自の業務プロセスへの大規模なカスタマイズが欠かせない企業、機密データを自社の管理下に置くことを最優先する企業、利用者が非常に多く月額の積み上げで長期コストが割高になりやすい企業です。

これらの企業は、カスタマイズの自由度が高くデータを自社で保持できるオンプレミス型や、本社は従来型・拠点はSaaS型と使い分ける2層ERPも含めて検討すると、要件に合う形態を選びやすくなります。

Q. ERPと基幹システムは何が違いますか?

A. ERPと基幹システムの違いは、ERPが会計・販売・在庫・人事などの基幹業務を一つの仕組みに統合して全体最適をめざすのに対し、基幹システムは販売管理や会計などの業務ごとに個別に導入されることが多い点にあります。

基幹システムを業務単位で別々に使うとデータが分断されがちですが、ERPはそれらを一元管理してデータを横断的に見通せるようにします。SaaS型ERPは、こうしたERPの統合管理をクラウドで手軽に始められる提供形態といえます。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
記事内でご紹介している製品・サービスは監修者が選定したものではなく、編集部が独自に選定したものです。
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

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