顧客情報や商談の履歴と、受注・請求・在庫・会計のデータが別々のシステムに分かれていて、同じ内容を二度入力したり、部門ごとに数字が合わなかったりしていませんか。営業が持つ顧客・案件の情報と、基幹業務が扱う売上・採算の情報を1つの基盤でつなげれば、入力の重複や情報の分断を解消できます。顧客管理(CRM)まで一体で扱えるERP(統合基幹業務システム)への関心が高まっているのは、こうした背景があります。
一方で、ERPごとに顧客管理の扱い方は大きく異なります。CRMを標準で内蔵する製品もあれば、会計や販売を軸にモジュールやアプリを組み合わせて顧客管理まで広げる製品、特定の業種・案件に特化して顧客情報と採算を一体管理する製品もあります。顧客管理まで1つの基盤で扱えるERPを選ぶには、どのような観点で各製品を比較すればよいのでしょうか。
本記事では、顧客管理(CRM)まで一体で扱えるERP11製品を、CRM・営業支援機能の範囲、料金、提供形態、評価の見極め方という観点で比較・解説します。ERPとCRMの違いや、分けて使うか一体で扱うかの判断材料も整理しました。顧客管理まで1つの基盤で扱うERPを検討している方が、自社に合う統合基幹システムを選ぶための材料としてご活用ください。
また、どのタイプが自社に合うか迷う場合に向けて、記事の中ほどに「30秒で終わる選定診断ツール」をご用意しています。
目次
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本記事の対象範囲(顧客管理まで1つの基盤で扱えるERP)
本記事で比較するのは、受注・請求・在庫・会計といった基幹業務に加えて、顧客管理(CRM)や営業支援(SFA)を同じ基盤で扱えるERPです。具体的には、顧客情報・商談やリードの管理・営業プロセスの管理を、製品に標準搭載された機能か、同じベンダーが提供するモジュール・アプリによって一体で運用できる製品を対象としています。
会計や人事給与に特化し顧客管理を持たない製品や、顧客管理を外部サービスとの連携だけで補う製品、顧客管理のみを担う専用ツールは、顧客管理まで一体で扱うという本記事の観点には当てはまりません。顧客管理を含めた全社の情報を1つの基盤に集約したいか、まずは会計や販売を中心に導入したいかで選ぶべき製品は変わるため、各製品が顧客管理をどこまで・どのように扱えるかを軸に整理します。
顧客管理まで扱えるかどうかで絞り込まず、会計・販売・在庫・人事なども含めてERP全般を幅広く比較したい場合は、以下の記事で製品の選び方や主要な機能を解説しています。あわせてご覧ください。
ERPとCRMの違いと、顧客管理まで一体で扱うメリット
ここからは、ERPとCRMがそれぞれ何を担うのか、そして両者を1つの基盤で扱うとどのような利点があるのかを整理します。
ERPとCRMはどう違うか
ERP(統合基幹業務システム)は、会計・販売・購買・在庫・生産・人事給与など、企業の基幹業務の情報を1つの基盤に集約し、全社で一元管理するためのシステムです。部門ごとに分かれた情報をつなぎ、経営の全体像を把握しやすくすることを目的としています。
CRM(顧客関係管理)は、顧客の属性・問い合わせ履歴・商談やリードの状況・営業活動の記録など、顧客に関する情報を管理し、営業やマーケティング、カスタマーサポートに活用するためのシステムです。売上を伸ばすために顧客との関係を深めることに主眼があります。営業支援に特化した機能はSFA(営業支援システム)と呼ばれ、CRMと一体で提供されることも多くあります。
両者の違いは、扱う情報の範囲と導入の目的にあります。ERPは全社の基幹情報を扱って業務の効率化と経営の可視化をめざし、CRMは顧客情報を扱って売上の拡大をめざします。受注や請求はERPが、商談や顧客対応はCRMが得意とする領域です。
分けて使うか、一体で扱うか
ERPとCRMを別々のシステムとして導入し、連携させて使う企業は少なくありません。すでに営業部門が使い慣れたCRMがある場合は、それを残して基幹業務側にERPを入れ、両者をつなぐ選択肢があります。システム間の連携方法には、APIによるリアルタイム連携、CSVファイルを介したデータの受け渡し、同じ製品内で両機能を一体運用する統合型という大きく3つの考え方があります。
一方、顧客管理まで1つの基盤で扱えるERPを選ぶと、商談から受注・請求・入金までを同じシステム上で追えるようになります。顧客情報と売上・採算の情報が同じデータベースにあるため、同じ内容を複数のシステムに二重入力する手間が減り、営業が見込んだ案件が実際にどれだけの売上と利益になったかを一気通貫で分析しやすくなります。
システムが分かれていると起きがちな、入力の重複や数字の不一致を避けられる点が、一体で扱う大きな利点です。
どちらが適しているかは、既存システムの有無と、顧客情報をどこまで基幹業務とつなげたいかによって変わります。営業現場がすでに特定のCRMに習熟していて切り替えの負担が大きい場合は連携型が、顧客情報と基幹情報の分断を根本から解消したい場合は一体型が向きます。

顧客管理まで扱えるERPの3つのタイプ
顧客管理まで扱えるERPは、顧客管理をどのように取り込んでいるかによって、大きく3つのタイプに分けられます。自社がどのタイプを求めているかを押さえると、製品を絞り込みやすくなります。

CRMまで標準搭載した統合型ERP
販売・会計・在庫といった基幹業務と同じ基盤に、CRMや営業支援の機能を標準で備えるタイプです。追加のモジュールを別途契約しなくても、1つの製品の中で顧客情報の管理から受注・請求までを扱えます。全社の情報を1つの基盤に集約したい企業や、営業と基幹業務のデータを初めから一体で運用したい企業に向いています。
必要な機能を組み合わせて顧客管理まで広げるERP
会計や販売を軸に導入し、CRMや営業管理のモジュール・アプリを追加して顧客管理まで広げていくタイプです。オープンソースの製品や、業務アプリを組み合わせて使う統合スイートがこれにあたります。必要な機能から段階的に導入したい企業や、自社の業務に合わせて構成を柔軟に組みたい企業に向いています。
業種・案件特化で顧客・案件情報を扱うERP
プロジェクト型のビジネスや特定の業種に特化し、顧客・案件の情報と採算を一体で管理するタイプです。見込みや引き合いの段階から受注・売上・請求・原価までを案件単位でつなぎ、どの顧客のどの案件がどれだけの利益を生んだかを把握できます。受託開発やコンサルティング、専門サービスなど、案件ごとの採算管理が重要な企業に向いています。
しかし、自社がどのタイプに適しているか、といった判断が難しいケースも存在します。そのような場合でも自社の状況に合わせて最適なサービスを最短で見つけられるように、「30秒で終わる選定診断ツール」を以下にご用意しています。ぜひこちらもご活用ください。
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【比較表】顧客管理まで扱えるERPを比較
ここからは、自社の課題や要件に合わせた客観的な比較・選定ができるよう、顧客管理まで扱えるERP11製品を、CRM・営業支援の扱い方、対象企業規模、提供形態、料金の観点で比較します。各製品がどのタイプに該当するかも合わせて整理しました。
| サービス名 | Oracle NetSuite | Microsoft Dynamics 365 Business Central | SAP Business One | Odoo(マルウェブ) | SMILE V 2nd Edition | Zoho(Zoho One/CRM Plus) | ERPNext | Dolibarr ERP/CRM | クラウドERP ZAC | MA-EYES | ジョブマネ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| CRM・営業支援の扱い | 標準搭載(統合型) 営業支援(SFA)・マーケティング・カスタマーサービスまで同一基盤で対応 | 標準搭載(ライト) 販売機能で受注・見積・顧客対応の記録。本格的な営業支援は別製品Dynamics 365 Salesが必要 | 標準搭載(統合型) 会計・販売・購買・在庫・生産とCRMを1システムに統合 | モジュール・アプリ連携 80以上のアプリからCRM・販売などを選んで追加 | モジュール連携 共通モジュールのCRM(QuickCreator)・営業支援(SFA)を中核モジュールに組み合わせ | CRMを核にした統合スイート リード・商談・営業プロセス管理(上位プランで見積・受注・請求)。単一ERP DBではない | 標準搭載(モジュール型OSS) CRMでリード・商談・キャンペーン管理、販売・購買と同一基盤 | 標準搭載(モジュール型OSS) CRM・販売を標準モジュールで提供 | 業種特化(プロジェクト型) 顧客・案件情報と採算を一体管理、見込〜受注〜売上〜請求〜債権管理 | 業種特化(プロジェクト型) SFA(営業管理)・販売管理で案件単位の顧客・見積・契約を一元管理 | 業種特化(案件管理型) 商談履歴・顧客管理・見積・案件管理を標準搭載(会計は外部連携) |
| 対象企業規模 | 中堅〜大企業(海外展開・グループ経営・IPO準備層) | 小中規模企業向け(公式表記) | 中堅・中小企業(公式が対象とする規模) | 中小企業中心 | 中堅・中小企業(公式のシェア引用は年商100億円未満) | 公式に明記なし | 公式に明記なし | 中小企業〜大企業・個人事業主・団体(公式表記) | プロジェクト型業種(ベンチャー〜上場・大手企業) | プロジェクト型ビジネス(IT・SES・コンサル等。一括版は100名以上が目安) | 個人事業主〜30名程度の中小企業・部門単位 |
| 提供形態 | クラウド(SaaS) | クラウド(オンプレミス版もあり) | オンプレミス/クラウド(パートナー経由導入) | クラウド/オンプレミス/OSS | オンプレミス/クラウド(SMILE V Air) | クラウド(SaaS) | OSS(オンプレ自主運用)/クラウド(Frappe Cloud) | OSS(セルフホスト)/クラウド(DoliCloud) | クラウド(SaaS) | クラウド(SaaS/SaaS+/一括) | クラウド(SaaS) |
| 初期費用 | 要お問い合わせ(個別見積もり) | 要お問い合わせ(導入はパートナー見積もり) | 要お問い合わせ(パートナー見積もり) | 要お問い合わせ(導入支援は個別見積もり) | 要お問い合わせ(公式非公開) | 無料(Zoho CRM・公式FAQ)。Zoho Oneは要お問い合わせ | 無料(GPL-3.0のOSS・自主運用)。日本の導入支援はパートナー費用が別途 | 無料(セルフホスト・ライセンス料なし。サーバー・構築費は別) | 10万円(ZAC初期設定費用。導入支援はフリープラン0円/スタンダードは見積もり) | 要お問い合わせ(提供形態により異なる) | 無料(公式明記) |
| 月額・料金 | 要お問い合わせ(年間ライセンス+ユーザー数・データ量で個別見積もり、2026年10月時点) | Essentials 11,994円/Premium 16,491円/Team Members 1,199円(いずれも1ユーザー・年払い・税別、2026年9月時点) | 要お問い合わせ(SAP公式の定価は非公開。ユーザー数・モジュール・提供形態で変動) | Odoo本体 1ユーザー月22ドル〜(カタログ掲載値・割引後、2026年10月時点)。1アプリのみ無料プランあり。導入支援費用は別途要お問い合わせ | 要お問い合わせ(公式非公開。クラウド版は月額サブスクリプション制、2026年10月時点) | Zoho CRM 0〜7,360円/ユーザー(税抜・年間契約)、CRM Plus 8,070円/ユーザー(年間契約)。Zoho Oneは公式で要確認(2026年10月時点) | Frappe Cloud 月5米ドル〜(2026年10月時点)。ソフト本体は無償 | DoliCloud 14ユーロ/ユーザー〜(Basic、税別、2026年10月時点) | モジュール×ライセンス数の課金+保守6万円〜/月(各ライセンス単価は要お問い合わせ) | 要お問い合わせ(利用ユーザー数・利用機能により変動) | グループウェアプラン月1,000円〜(1〜100人、税別)+ビジネスプラン1人月3,000円(税別) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | サービス詳細を見る | 公式サイト | 公式資料を見る | サービス詳細を見る | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | 公式サイト |
※料金・仕様は各社公式サイトの2026年10月時点の情報をもとにしています。最新の提供状況や詳細は各社の公式情報をご確認ください。
顧客管理まで扱えるERP11製品の特徴
ここからは、各製品が顧客管理をどのように扱い、どのような強みを持つのかを、タイプ別に紹介します。CRM・営業支援機能の範囲や料金、導入の実績を中心に整理します。
CRMまで標準搭載した統合型ERP
まずは、1つの製品の中にCRMや営業支援を標準で備え、顧客情報から受注・請求までを一体で扱えるタイプの製品です。
1. Oracle NetSuite(日本オラクル株式会社)

Oracle NetSuiteは、会計・販売・購買・在庫に加え、営業支援(SFA)とCRMまでを1つのクラウド基盤に統合したERPです。原開発元は米NetSuite Inc.で、2016年に米Oracle Corporationが買収し、日本での提供とサポートは日本オラクル株式会社が担っています。
CRM・営業支援の範囲は広く、商談・見積管理から販売予測・注文管理までの営業支援(SFA)、キャンペーン管理やリード育成を担うマーケティングオートメーション、ケース管理を行うカスタマーサービス管理を公式の機能区分として備えます。顧客情報・商談から受注・請求までを同じデータベース上で追えるため、営業と基幹業務のデータを一体で運用したい企業に向きます。
公式サイトでは200か国以上・44,000社以上での利用を掲げています(2026年10月時点)。料金は金額が公開されておらず、会社規模に応じたベースライセンス・利用ユーザー数・データストレージ量で決まる年間ライセンス料と初期費用を軸に、個別見積もりとなります。
出典・参考資料(1件)
顧客情報から受注・請求までを1つの基盤で扱う設計が、どのような発想から生まれたのか。開発の背景について、日本オラクル株式会社の福宮氏は次のように話しています。
もともとは、創業者のEvan Goldberg(エバン・ゴールドバーグ)が自身の経営経験の中で感じた課題が出発点になっています。会計は会計のシステム、在庫は在庫のシステム、というように業務ごとにシステムが分かれていると、データが分断されてしまって、経営者が全体を見ようとしてもなかなか正確な数字がつかめません。実際に彼自身がその苦労をしていました。
そこで、あらゆる業務を一つの基盤で一元管理して、経営者がどこからでもリアルタイムにデータを確認できるようにしたい、という発想からクラウドERPという形にたどり着きました。「全部つながっていること」を前提に作られているので、後から統制や監査の仕組みを足すのではなく、最初から一気通貫で見られる設計になっています。
2. Microsoft Dynamics 365 Business Central(米Microsoft Corporation)

Microsoft Dynamics 365 Business Centralは、米Microsoft Corporationが小中規模企業向けに提供するクラウドERPです。財務管理・販売・購買・在庫・プロジェクト管理・製造を1つの製品で扱い、公式日本語ページでは55,000社に信頼されると記載されています(2026年9月時点)。
顧客管理の面では、販売機能のなかで受注・見積や顧客とのやり取りの追跡を扱えます。ただし商談のパイプライン管理や売上予測といった本格的な営業支援までを標準で担うわけではなく、深い営業支援を求める場合は、営業支援に特化したDynamics 365 Salesなど別製品を組み合わせる形になります。
料金は公式日本語ページで、Essentialsが1ユーザー月額11,994円、Premiumが16,491円、Team Membersが1,199円(いずれも年払い・税別、2026年9月時点)と公開されています。日本の会計・税制対応や日本語画面はパートナー提供のローカライズアプリによるため、導入はパートナー経由が前提で、導入費用は要問い合わせとなります。
3. SAP Business One(SAPジャパン株式会社)

SAP Business Oneは、ドイツのSAP SEが中堅・中小企業向けに提供する統合ERPで、日本ではSAPジャパン株式会社と認定パートナーが販売・導入を担います。公式サイトでは、会計・財務、販売、在庫、購買、生産、CRMを1つのシステムに統合すると説明されています。
会計・販売・購買・在庫・生産とCRMが同じシステムに統合されているため、顧客・営業の情報と在庫・会計が連動します。SAPのニュースリリースによると、2025年12月時点で170カ国超・8万3,000社超・120万ユーザー超が利用しているとされます。
料金はSAP公式の定価が公開されておらず、ユーザー数・利用モジュール・オンプレミスかクラウドかによって変わるため、導入パートナーへの要問い合わせが基本です。
必要な機能を組み合わせて顧客管理まで広げるERP
続いて、会計や販売を軸に、CRMや営業管理の機能を組み合わせて顧客管理まで広げられるタイプの製品です。
4. Odoo(株式会社マルウェブ)

Odooは、ベルギーのOdoo S.A.が開発するオープンソースのクラウドERPで、販売・会計・在庫・製造・購買・CRM・ECなど80以上のアプリを相互に連携させて使います。株式会社マルウェブは、このOdooの要件定義から、カスタマイズ開発・外部連携・データ移行・運用定着までを支援します。
顧客管理まわりでは、マルウェブが対応アプリとしてCRM(顧客管理)・販売・プロジェクトなどを挙げており、必要なアプリだけを選んで追加できる仕組みです。販売・在庫からスモールスタートして、使い方に慣れてからCRMや会計を段階的に加える進め方も示しています。
Odoo本体の料金は、1アプリのみなら無料で使えるプランがあり、2アプリ以上はユーザー数に応じた月額課金です。カタログ掲載値(2026年10月時点)ではスタンダードが1ユーザー月額22ドル、カスタムが33ドル(いずれも初回ユーザーへの12ヶ月割引適用後)で、アプリを何種類使っても料金はユーザー数だけで決まります。マルウェブの導入支援費用は別途、個別見積もりとなります。
Odooの導入を検討する企業は、実際にどのような課題を抱えて相談に訪れるのか。導入支援を手がけるマルウェブの若林氏は、寄せられる相談についてこう話しています。
一番多いのは、販売管理、在庫管理、会計がそれぞれの部門で分断されているので一元化したい、というご相談です。また、営業と店舗の連携に関するご相談もあります。たとえば営業担当が商品を販売して在庫が確保されたのに、実店舗側の在庫がリアルタイムで反映されていないために、実際にはない在庫を売ってしまう。そうした状態を目に見える形にしたい、というものです。人的なミスを防ぎたいというご相談もありました。
5. SMILE V 2nd Edition(株式会社大塚商会)

株式会社大塚商会が販売し、グループの株式会社OSKが開発する国産の統合型基幹業務システムです。1979年発売の「SMILE」を前身に2022年5月に現行版へリニューアルしており、販売管理・会計・人事給与を中核に、業種別テンプレート19種を用意しています。
顧客管理は、この中核モジュールに共通モジュールのCRM「QuickCreator」と営業支援(SFA)を組み合わせて広げる構成です。販売管理では見積から受注・出荷・請求・入金までを一気通貫で処理でき、顧客情報と売上のデータを同じ基盤で扱えます。
提供形態はオンプレミス版とクラウド版「SMILE V Air」から選べ、クラウド版は月額サブスクリプション制です(最大50ライセンス)。料金は初期・月額とも非公開で、問い合わせによる個別見積もりとなります(2026年10月時点)。2024年度のライセンス販売数は37,440で、中堅・中小企業での導入が中心です。
6. Zoho(ゾーホージャパン株式会社)

ゾーホージャパン株式会社が提供する統合ビジネスソフトウェアで、公式には「ERP」ではなく「ビジネスOS」と位置づけられています。CRMを核に、会計(Zoho Books)・在庫(Inventory)・人事(People)などのアプリを「Zoho One」などのバンドルで同一契約にまとめ、単一のERPデータベースではなくアプリ群を連携させて一体運用する構成です。
顧客管理の中核となるZoho CRMは、リードの管理から商談・営業プロセスの管理までを担い、プロフェッショナル以上のプランでは見積書・受注書・請求書の作成にも対応します。Zoho CRMには無料プランもあり、有料プランは1ユーザー月1,760円から(税抜、最上位のアルティメットは7,360円)です。営業・マーケティング・サポートを束ねた「CRM Plus」は1ユーザー年間契約8,070円です。
全社の業務アプリをまとめる「Zoho One」の円建て料金は公式サイトでの確認が必要です(2026年10月時点)。日本語サポートはメール窓口のみで、会計のZoho Booksは英語メール対応、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応も公式案内が2023年時点のままという点は、日本の会計実務まで1つの基盤に載せる前に確認しておきたい事項です。
7. ERPNext(Frappe Technologies Pvt Ltd)

インドのFrappe Technologies Pvt Ltdが開発するオープンソースのERPです(ライセンスはGPL-3.0)。会計・販売・購買・在庫・製造・プロジェクト・CRMまでを1つの体系でカバーし、人事・給与は分離した別アプリ「Frappe HR」を組み合わせて使います。
CRMはリード・オポチュニティ(商談)・キャンペーンの管理を標準で備え、販売・購買モジュールの見積・受注・仕入発注と同じ基盤でつながります。必要な機能だけを有効化して顧客管理まで広げられる、モジュール型のオープンソースです。
ソフトウェア本体は無償で、SaaS版「Frappe Cloud」は月額5米ドルから利用できます(2026年10月時点)。ただしFrappe社は導入作業を直接提供せず、日本での導入・保守はパートナーが担います。国内窓口のERPNext.JP(合同会社MY HATCH)はFrappe社と資本関係のない独立事業者で、PoC(試験導入)を50万円(税別)から提供しています。
社内にシステムを構築・運用できる体制がある企業や、導入パートナーと組んで日本語化・会計対応を進められる企業に向く選択肢です。
8. Dolibarr ERP/CRM(Dolibarr プロジェクト)

製品名に「CRM」を冠するとおり、顧客管理を標準モジュールとして備えるオープンソースのERP/CRMスイートです(ライセンスはGPL v3以上、Dolibarr associationが2009年から開発)。CRM・販売、財務・請求、商品・在庫、人事、プロジェクトなどのモジュールから、必要なものだけを有効化して使えます。
CRMと販売のモジュールが標準で含まれるため、追加の契約なしに顧客・商談の情報と受注・請求を同じ基盤で扱えます。モジュール同士を連携させて二重入力を減らす設計で、小規模から段階的に機能を広げていきたい組織に向きます。
セルフホストならライセンス料はかからず、公式が案内するクラウド版「DoliCloud」は月額14ユーロ(ユーザーあたり、税別)から利用できます(2026年10月時点、データセンターはフランス)。
ただし日本の公式代理店は確認できず、日本語UIや日本の会計基準・インボイス制度への対応も公式には確認できていません。日本語での商用サポート窓口もないため、導入時は日本語化やカスタマイズを自社または委託先で担う前提になります。日本語化や会計対応を自社・委託先でまかなえ、コストを抑えて小さく始めたい企業や、海外拠点中心で運用する企業に向きます。
業種・案件特化で顧客・案件情報を扱うERP
最後に、プロジェクト型の業務や特定の業種に特化し、顧客・案件の情報と採算を一体で管理するタイプの製品です。
広告業のように、案件ごとの利益や媒体費の配賦、クリエイターの工数管理が事業の中心になる業種では、案件単位の収支をどこまで細かく追えるかが製品選びの決め手になります。業種特有の選定観点を掘り下げた以下の記事も、プロジェクト型のERPを比較するうえで参考になります。
9. クラウドERP ZAC(株式会社オロ)

IT・広告・コンサルティング・士業など、案件単位で業務が進むプロジェクト型ビジネスに特化した統合型クラウドERPが、東証プライム上場の株式会社オロが提供するクラウドERP ZACです。見込・引合の段階から受注・売上・請求・債権管理までを案件単位で扱い、顧客と案件の情報を基幹業務と同じ基盤に集約します。
販売管理機能では、案件・プロジェクトごとに受注確度や受注予定日、売上予定金額を設定して引合を管理し、見積・受注・売上・請求・入金・債権管理までを一つのワークフローで処理します。得意先ごとに与信限度額を設定し、超過時に処理を止める与信管理も備えます。売上に外注費・仕入費・労務費・経費を案件へ紐付けることで、どの顧客のどの案件がどれだけの利益を生んだかを把握できます。
料金は初期設定費用10万円に、機能(モジュール)ごとのライセンス数に応じた月額と、保守費用(月6万円〜)を組み合わせる方式です。各ライセンスの単価は公開されておらず、見積もりには製品資料の請求が必要です。
10. MA-EYES(株式会社ビーブレイクシステムズ)

MA-EYESは、株式会社ビーブレイクシステムズが提供するクラウド型ERPで、プロジェクト管理・作業実績/勤怠管理・購買/経費管理・販売管理・経理・SFA(営業管理)の各モジュールを1つの基盤に統合しています。システム開発・SES・コンサルティングなどプロジェクト型ビジネスを主な対象としています。
営業管理を担うSFAモジュールと、受注から売上・請求・入金までを扱う販売管理モジュールを備え、案件ごとに見積や契約の情報、担当者、納期を一元管理します。日々の工数をマスタの基準時間単価で労務費に換算して案件原価へ反映し、月別に原価の予算と実績をグラフで比較できます。部門別・案件別・顧客別など、担当者が見たい切り口で損益レポートを出力できます。
導入形態は、利用人数と機能で料金が変わるSaaS版、人数によらず定額の一括版、一括版をSaaS形式で使うSaaS+版の3種類から選べます。料金は公式サイトで非公開のため問い合わせが必要ですが、30日間の無料トライアルが用意されています。
11. ジョブマネ(株式会社サウスエージェンシー)

株式会社サウスエージェンシーのジョブマネは、スケジュールやワークフローなどのグループウェア機能と、案件・工数・原価・請求といった基幹業務機能を1つのサービスにまとめたクラウド型の業務管理ツールです。個人事業主から従業員30名程度までの中小企業や、部門単位での利用を想定しています。
商談履歴・顧客管理・見積管理・案件管理・問い合わせ管理を標準で搭載し、案件ごとに仕入・外注費・作業工数・売上・経費を紐付けて採算を可視化します。見積書を作成すると納品書・請求書までを連続して作成でき、帳票の重複入力を抑えられます。会計機能は持たず、会計ソフトとの連携を前提とした構成です。
初期費用は無料で、グループウェアプランは1〜100人で月額1,000円(税別)、案件や原価などを扱うビジネスプランは1人あたり月額3,000円(税別)のオプションとして併用します。1ユーザーから始められ、30日間は全機能を無料で試せます。
顧客管理まで扱えるERPの選び方
ここからは、顧客管理まで扱えるERPを選ぶときに確認したい観点を整理します。自社の状況に当てはめながら読み進めてください。
CRM・営業支援機能の範囲は自社の営業プロセスに合うか
同じ「顧客管理ができるERP」でも、扱える範囲は製品によって差があります。顧客情報の登録と問い合わせ履歴の管理にとどまる製品もあれば、リードの獲得から商談の進捗管理、売上予測、マーケティングの配信、カスタマーサポートまでを広くカバーする製品もあります。
まず、自社の営業プロセスで欠かせない機能を洗い出し、それが標準機能に含まれるのか、追加のモジュール契約が必要なのかを確認しておくとよいでしょう。基幹業務のついでに顧客台帳を持てれば十分なのか、営業部門の日々の活動管理まで任せたいのかによって、求める範囲は変わります。
営業活動の管理まで求める場合は、商談のパイプライン管理や売上予測といった営業支援機能が標準で備わっているかが、重要な判断材料となります。
口コミ・評価をどう見極めるか
製品の評価や口コミは、カタログスペックだけでは分からない使い勝手や定着のしやすさを知る手がかりになります。ただし、評価を見るときは点数そのものよりも、自社と近い条件の声かどうかに注目すると判断を誤りにくくなります。
確認したいのは、投稿者の企業規模や業種が自社に近いか、どの機能についての評価かという点です。大企業の高度な要件に基づく不満が、中小企業の自社には当てはまらないこともあります。
とくにERPの顧客管理は、営業現場で実際に使われて定着するかどうかが成否を分けます。入力のしやすさやスマートフォン対応など、現場の使い勝手に関する声は、導入後の定着を見通すうえで参考になります。
良い評価と悪い評価の両方に目を通し、自社が重視する機能についての言及を拾い上げることが、失敗を避けるための現実的な方法です。
料金・提供形態・既存CRMとの連携で選ぶ
料金は、利用人数や契約するモジュールの範囲によって大きく変わります。CRM機能を使う人数分のライセンスが別途必要になる製品もあるため、営業部門まで含めた利用人数で見積もることが欠かせません。公開されている料金だけで判断せず、自社の利用規模での総額を見積もることが重要です。
提供形態も重要です。クラウド型は初期費用を抑えて短期間で始めやすく、オープンソース型はライセンス費用がかからない一方で構築や保守を自社または委託先が担う必要があります。自社にシステムを運用する体制があるかどうかで、適した形態は変わります。また、すでに使っているCRMを残したい場合は、その製品との連携のしやすさや、移行の負担も確認しておくと、導入後のつまずきを減らせます。
導入でつまずかないための注意点
顧客管理まで扱えるERPの導入では、いくつか陥りやすい落とし穴があります。あらかじめ把握しておくと、導入後の後悔を避けられます。
1つ目は、営業現場に使われず顧客管理が形骸化することです。基幹業務の担当者には便利でも、営業担当者にとって入力の手間が増えるだけだと、顧客情報が更新されなくなります。導入前に営業現場の意見を聞き、入力のしやすさや現場のメリットを設計に織り込むことが欠かせません。
2つ目は、自社の業務に合わせた過度なカスタマイズです。標準機能から離れた作り込みを重ねると、導入期間と費用がふくらみ、製品のバージョンアップにも追従しにくくなります。まずは標準機能に業務を合わせることを基本に、必要な部分だけを調整する姿勢が現実的です。
3つ目は、既存のCRMからの移行です。すでに蓄積した顧客データや商談履歴を新しいERPに移す際は、データの形式の違いや移行漏れに注意が必要です。移行の範囲と手順を事前に確認し、一度に全部を切り替えるのではなく、並行して稼働させながら検証する進め方も選択肢になります。
ここで挙げた注意点に加えて、選定の進め方を全体の手順で押さえておくと、導入でのつまずきを避けやすくなります。次の資料では、ERP導入を判断する3つの観点、会計・在庫・CRMなど必要機能の整理、クラウドとオンプレミスの違い、選定を8ステップに分けた進め方と、導入時に避けたい5つの失敗を確認できます。
まとめ
顧客管理まで一体で扱えるERPは、顧客情報と基幹業務の情報を1つの基盤に集約し、二重入力や情報の分断を解消できる点に価値があります。製品によって顧客管理の扱い方は、CRMを標準搭載する統合型、機能を組み合わせて広げる型、業種・案件に特化する型と大きく異なります。
自社がどのタイプを求めているかを見極めたうえで、CRM・営業支援機能の範囲、利用規模での料金、提供形態、既存システムとの連携を比較することが、失敗しない選定につながります。
気になる製品が見つかったら、複数の資料をまとめて取り寄せ、機能の範囲と料金を具体的に見比べることをおすすめします。MCB FinTechカタログでは、顧客管理まで扱えるERPの資料を無料で一括請求できます。
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よくある質問(FAQ)
Q. ERPとCRMの違いは何ですか?
A. ERPとCRMの違いは、ERPが会計・販売・在庫など全社の基幹業務の情報を一元管理するのに対し、CRMは顧客の属性や商談・問い合わせの情報を管理して営業やマーケティングに活用する点にあります。
ERPは業務の効率化と経営の可視化を、CRMは顧客との関係を深めて売上を伸ばすことを目的としています。受注や請求はERPが、商談や顧客対応はCRMが得意とする領域で、扱う情報の範囲と導入の目的が異なります。
Q. 顧客管理(CRM)まで一体で扱えるERPとは何ですか?
A. 顧客管理まで一体で扱えるERPとは、受注・請求・在庫・会計といった基幹業務に加えて、顧客管理(CRM)や営業支援(SFA)を同じ基盤で扱えるERPのことです。
顧客管理の取り込み方によって、CRMを標準搭載する統合型、必要な機能を組み合わせて広げる型、業種・案件に特化する型の3タイプに分かれます。顧客情報と売上・採算の情報が同じ基盤にあるため、複数のシステムへの二重入力や数字の不一致を避けられる点が、一体で扱う価値です。
Q. ERPとCRMは分けて使うべきですか、一体で扱うべきですか?
A. ERPとCRMを分けるか一体にするかは、既存システムの有無と、顧客情報をどこまで基幹業務とつなげたいかによって変わります。
営業現場がすでに特定のCRMに習熟していて切り替えの負担が大きい場合は、そのCRMを残して基幹業務側にERPを入れ、両者を連携させる形が向きます。一方、顧客情報と基幹情報が別システムに分かれて起きる二重入力や分断を根本から解消したい場合は、顧客管理まで一体で扱えるERPが向きます。
Q. ERPとCRMは連携できますか?
A. ERPとCRMは連携でき、APIによるリアルタイム連携、CSVファイルを介したデータの受け渡し、同じ製品内で両機能を一体運用する統合型という、大きく3つの方法があります。
すでに使っているCRMを残したい場合は、API連携やCSV連携でERPとつなぐ選択肢があります。連携のしやすさや既存データの移行の負担は製品によって差があるため、導入前に確認しておくと、導入後のつまずきを減らせます。
Q. 顧客管理まで扱えるERPの料金はどのくらいですか?
A. 顧客管理まで扱えるERPの料金は、製品や利用規模によって幅広く、オープンソース製品の無償プランから、1ユーザー月額数千円〜1万円台のクラウド型、個別見積もりが必要な製品まで分かれます。
とくに顧客管理は営業部門も利用するため、CRM機能を使う人数分のライセンスが別途必要になる製品もあります。公開されている料金だけで判断せず、営業部門まで含めた利用人数で総額を見積もることが重要です。料金を非公開とし、要問い合わせとしている製品も少なくありません。
Q. 顧客管理まで扱えるERPの口コミ・評価はどう見ればよいですか?
A. 口コミ・評価を見るときは、点数そのものよりも、投稿者の企業規模や業種が自社に近いか、どの機能についての評価かに注目すると判断を誤りにくくなります。
ERPの顧客管理は、営業現場で実際に使われて定着するかどうかが成否を分けます。入力のしやすさやスマートフォン対応など、現場の使い勝手に関する声は、導入後の定着を見通すうえで参考になります。良い評価と悪い評価の両方に目を通し、自社が重視する機能への言及を拾うことが、失敗を避ける現実的な方法です。
Q. 中小企業でも顧客管理まで扱えるERPを導入できますか?
A. 中小企業でも、顧客管理まで扱えるERPは導入できます。必要な機能から始められるクラウド型やオープンソース製品、少人数から使える製品が選択肢になります。
導入を成功させるうえでは、自社の業務に合わせた過度なカスタマイズを避け、まずは標準機能に業務を合わせることが基本です。販売・在庫などの身近な業務からスモールスタートし、慣れてから顧客管理や会計へ段階的に広げていく進め方なら、導入の負担を抑えられます。
Q. 顧客管理まで扱えるERPの導入にはどのくらいの期間がかかりますか?
A. 導入期間は、クラウド型で標準機能を中心に導入する場合は3カ月〜半年、大規模で広範なカスタマイズを伴う場合は1〜2年以上が目安です。
期間は、対象とする業務範囲や利用人数、既存システムからのデータ移行の量によって変わります。顧客データや商談履歴の移行は、データ形式の違いや移行漏れに注意が必要で、一度に全部を切り替えるのではなく並行稼働で検証する進め方を取ると、導入期間のリスクを抑えられます。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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