不動産会社の経営から退きたい、あるいは多くの不動産を抱えた会社をどう次の世代へ引き継ぐか——後継者不在やリタイアを前に、会社や保有不動産の売却を考え始めたとき、多くのオーナーが「誰に相談すればよいのか」で立ち止まります。不動産業のM&Aは、通常の不動産売買とも、一般的な会社の売買とも勝手が違い、不動産の価値を正しく評価できるか、買い手を見つけられるかで結果が大きく変わるためです。
不動産の適正な評価、買い手の探索、条件交渉までを安心して任せられる相手を選ぶには、どのような観点で依頼先を見比べればよいのでしょうか。相手によって得意なスキーム、不動産評価の深さ、手数料の仕組みは大きく異なります。
本記事では、不動産業のM&A(会社の売却・事業承継)に対応する依頼先6社を比較・解説します。不動産の評価力・買い手探索・手数料体系・対応できるスキーム・中小企業庁の支援機関登録といった、不動産M&Aならではの選定観点を整理しました。自社の状況に合う相談先を見つけるための検討材料としてご活用ください。
また、自社の状況に合わせて最適な相談先を最短で見つけられるよう、「30秒で終わる選定診断ツール」をご用意しています。ぜひこちらもご活用ください。
目次
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本記事の対象範囲
本記事では、不動産会社や不動産賃貸管理会社、不動産を多く保有する資産管理会社の売却・事業承継に対応する依頼先6社を比較します。いずれも、不動産業そのもののM&Aや、不動産を抱えた会社の承継を扱える相談先です。
本記事は依頼先を不動産業に絞って紹介しています。業種を問わずM&Aアドバイザリー会社を横並びで比べたい方、仲介型・FA(売り手または買い手の一方につく専門家)・大手監査法人系といった相談先のタイプや案件規模から探したい方は、以下の記事で全体像を解説しています。
M&Aアドバイザリー会社おすすめ比較|仲介型・FA・Big4系まで案件規模別に紹介
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不動産M&Aとは|通常の不動産売買との違い
そもそも不動産M&Aとは何でしょうか。依頼先を選ぶ前提として、通常の不動産売買との違いから整理します。
不動産M&A(エムアンドエー)とは、不動産そのものを売買するのではなく、不動産を保有する会社や不動産事業を、会社の株式や事業ごと移転する取引を指します。通常の不動産売買が「土地・建物」という物件を売り買いするのに対し、不動産M&Aでは「不動産を持った会社」や「不動産にまつわる事業」が取引の対象になります。
進め方は大きく2つに分かれます。1つは、会社の株式を買い手へ譲る「株式譲渡」で、不動産を含む会社をまるごと引き継いでもらう方法です。もう1つは、会社分割や事業譲渡によって、特定の不動産や不動産事業だけを切り出して売る方法です。どちらを選ぶかで、税金の負担や必要な手続きが変わるため、スキームの選び分けは依頼先の提案の幅が分かれる部分でもあります。
この「会社ごと売るか、不動産だけ切り出すか」の判断と税務の要点は、記事後半のスキームの選び分けと税務で詳しく解説します。
不動産M&Aのメリット・デメリット|会社清算・廃業との比較
会社を清算・廃業する場合と比べて、不動産M&Aにはどのような意義があるのでしょうか。両者を見比べながら整理します。
メリット
最大のメリットは、会社や事業を存続させたまま次の経営者へ引き継げる点です。従業員の雇用や取引先との関係、積み上げてきた物件管理のノウハウを残せるため、後継者が見つからないまま廃業するよりも、事業が持つ価値を次につなげられます。
手取りの面でも違いが出ます。会社を清算・廃業する場合は、保有する不動産などの資産をいったん売却して現金化し、負債を返済したうえで残った財産を株主へ分配する流れになり、その過程で資産の売却益や残余財産の分配に税金がかかります。
一方、株式譲渡による不動産M&Aでは、株主が受け取る株式の売却益に対する課税で完結しやすく、課税される場面の数が変わります。どちらが有利かは資産の状況や含み益によって変わるため、具体的な試算は依頼先と相談しながら進めるのが確実です。
清算の場合は、会社が資産を売却した際の売却益に法人税が課され、さらに残った財産を株主へ分配する際にも課税されるため、課税の場面が重なりがちです。
株式譲渡では、株主の株式売却益への課税で完結しやすく、手取りが残りやすいケースがあります。
デメリット・注意点
一方で、不動産M&Aは買い手が見つかって初めて成立するため、相手探しや条件交渉に時間がかかります。会社をまるごと引き継ぐ株式譲渡では、買い手は簿外債務や過去の契約関係といったリスクも引き受けるため、買収前の調査(デューデリジェンス)が入念に行われ、売り手にも資料の準備や説明が求められます。こうした手間を見越して、早めに相談先を決めて動き出すことが、納得できる条件で売却するための近道になります。
なお、会社の引き継ぎには、第三者へ売却する不動産M&Aのほかに、親族内承継や従業員承継といった方法もあります。どの承継方法が自社に合うかを含めて検討したい場合は、以下の記事で3つの方法の違いと進め方を解説しています。
不動産業のM&Aを任せる依頼先の種類と向き・不向き
ここからは、不動産業のM&Aをどこに相談できるのか、依頼先の種類ごとの特徴と向き・不向きを整理します。自社がどのタイプに相談すべきかを見極める手がかりにしてください。
1つめは、不動産の評価・鑑定を本業にしてきた会社が手がけるタイプです。不動産鑑定士が在籍し、物件の価値を精緻に評価できる点が強みで、資産の大半が不動産で、株価に不動産の価値が正しく反映されるかを重視する会社に向きます。
2つめは、幅広い業種を扱う総合的なM&A仲介・アドバイザリー会社のうち、不動産業界の専門チームを置いているタイプです。豊富な買い手基盤と成約実績を持ち、ある程度の規模の案件を数多くの候補と比較しながら進めたい場合に適しています。
3つめは、売り手だけの立場に立つ専属アドバイザー(FA)型です。買い手から手数料を受け取らないため利益相反が起きにくく、売り手の利益を最優先に交渉してほしい場合に向きます。不動産評価に特化しているわけではない場合もあるため、評価力は別途確認するとよいでしょう。
4つめは、不動産会社のM&Aに特化した専門サイト・仲介型です。不動産業界に絞って多くの相談を扱ってきた経験があり、同業種ならではの事情を踏まえて進めたい場合の選択肢になります。
5つめは、資産管理会社や富裕層の財産コンサルティングを手がけるタイプで、会社分割などで不動産を切り出すスキームに強みを持ちます。不動産を多く保有する資産管理会社の承継や資産の組み替えを考える場合に適しています。このほか、売り手と買い手が自ら相手を探すマッチングプラットフォームもありますが、専門家に一任して進めたい場合は、上記のような伴走型の依頼先が向きます。
不動産M&Aの依頼先の選び方
依頼先のタイプがわかったところで、実際に見比べるときに確認したい5つの観点を解説します。いずれも、不動産M&Aの結果と安心感を左右する軸です。
不動産の評価力は十分か
不動産M&Aでは、保有する不動産の価値が売却価格を大きく左右します。不動産鑑定士が在籍しているか、物件の収益性や立地をどこまで踏み込んで評価できるかは、依頼先選びの要になります。資産の大半が不動産で、帳簿上の価額と実際の時価に差(含み益・含み損)がある会社ほど、評価力の差が手取りに直結するため、過去の不動産案件での評価の実績を確認するとよいでしょう。
買い手を探すネットワークはあるか
不動産業のM&Aでは、不動産の活用や賃貸管理を引き継げる買い手を見つけられるかが成否を分けます。依頼先が独自の買い手候補のネットワークを持っているか、金融機関や同業他社とのつながりを通じて相手を探せるかを確認します。買い手候補が多いほど、条件の良い相手と出会える可能性が高まります。
手数料体系をどう見極めるか
手数料は、着手金・中間金・成功報酬のどこで、いくら発生するかを確認します。成功報酬は譲渡額などに応じて料率が段階的に下がる「レーマン方式」が一般的ですが、料率を掛ける算定基準が「譲渡額」なのか「移動総資産額(負債も含めた総額)」なのかで総額が大きく変わります。
中小企業庁の中小M&Aガイドラインは、算定基準・最低手数料・報酬の発生時期などを契約前に書面で説明するよう求めており、これらが明確に示されるかは信頼できる依頼先を見分ける手がかりになります。実際の料率や最低報酬は各社で異なるため、記事後半の手数料体系の横並び比較も参考にしてください。
対応できるスキームの範囲はどこまでか
会社ごと売る株式譲渡だけでなく、不動産だけを切り出す会社分割・事業譲渡まで提案できるかは、依頼先によって差が出ます。スキームの選び方で税負担や手続きが変わるため、複数の選択肢を比較して最適な形を設計してくれる相手が望ましいといえます。自社が「会社全体を手放したいのか」「一部の不動産だけ整理したいのか」を踏まえて、対応範囲を確認しましょう。
中小企業庁の支援機関登録・ガイドライン遵守を確かめているか
中小企業庁は、中小企業向けにM&Aの仲介・FA業務を行う事業者を対象とした「M&A支援機関登録制度」を設けています。登録の中心的な要件は、中小企業庁が定める中小M&Aガイドラインの遵守を宣言することです。
登録されているかどうかは、相手が公的な行動指針に沿って業務を行う姿勢を示す1つの目安になります。また、事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)で仲介・FAの手数料を補助の対象にできるのは、登録された支援機関による支援に限られる点も、実務上の確認ポイントです。
出典・参考資料(2件)
しかし、自社がどのタイプの依頼先に適しているかといった判断が難しいケースも存在します。そのような場合でも自社の状況に合わせて最適なサービスを最短で見つけられるように、「30秒で終わる選定診断ツール」を以下にご用意しています。ぜひこちらもご活用ください。
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不動産M&Aに対応する依頼先6社の比較
ここまでの観点を踏まえ、不動産業のM&Aに対応する主要な依頼先6社を、不動産評価力・買い手探索・手数料体系・対応スキーム・支援機関登録などの観点で横並びに整理します。自社の課題や要件に合わせて客観的に比較・選定する手がかりにしてください。
| サービス名 | M&A Lead | M&Aキャピタルパートナーズ | mecyes(三菱地所リアルエステートサービス) | 大和不動産鑑定 | 青山財産ネットワークス | ブリッジオーシャン |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 依頼先のタイプ・特徴 | 売主専属のFA型 買主から手数料を受け取らない | 総合M&A仲介(東証プライム上場) 不動産業の専門アドバイザー4名を公開 | 三菱地所グループの事業用不動産会社 不動産評価を軸に会社売却を支援 | 不動産鑑定を本業とする会社 鑑定の専門性が強み | 財産コンサルティング会社 不動産を多く保有する法人(資産保有法人)の承継にも対応 | 不動産業に特化したM&A仲介 小規模な事業承継が中心 |
| 不動産の評価力 | 公式に明示なし (不動産専門チーム・鑑定体制の公表なし) | 不動産専門チームを設置 鑑定士の在籍は公式に明示なし | 多角的な不動産の時価評価を強みに訴求 評価体制の詳細は要確認 | 不動産鑑定士・一級建築士・公認会計士・土壌環境管理士が在籍 国土交通大臣登録の鑑定業 | 公式に明示なし (不動産評価の方法論の記載なし) | 企業価値評価は代表が公認会計士として行う 宅建業免許を保有 |
| 対応スキーム | 株式譲渡 一部の事業譲渡も可 | 株式譲渡(公開事例) 事業譲渡・会社分割の対応可否は明示なし | 株式譲渡(会社売却)が中心 事業譲渡等も手数料区分を規定 | 株式譲渡 事業譲渡・会社分割の対応可否は明示なし | 株式譲渡 会社分割+株式譲渡で不動産の切り出しも提示 | 株式譲渡+不動産売買を一体で設計 部分売却・事業の切り出し(カーブアウト)も対応 |
| 手数料体系 | 完全成功報酬(着手金・中間金・月額0円) 譲渡対価×レーマン方式5%〜1% 最低手数料2,000万円 | 着手金・月額報酬無料 株価レーマン方式5%〜1%(中間報酬 約10%+成功報酬 約90%) 最低手数料は公式に明示なし | 完全成功報酬(着手金・中間金・月額0円) 移動総資産額×レーマン方式5%〜1% 最低手数料2,000万円 | 公式に明示なし(要お問い合わせ) | 不動産M&A単体の料金は公式に明示なし(要お問い合わせ) 初回面談・現状分析は無料 | 成功報酬型が基本(着手金・中間金は原則ゼロ) 料率・最低報酬は公式に明示なし |
| 中小企業庁 M&A支援機関登録 | 登録あり (ガイドライン第3版の遵守を宣言) | 登録あり (ガイドライン第3版の遵守を宣言) | 登録あり (公式ページに登録の記載) | 登録あり (2021年9月登録) | 要確認 (ガイドライン遵守の宣誓ページあり/登録は未確認) | 登録あり (登録M&A業者) |
| 対象・対応エリア | 全国対応 成約事例の譲渡企業は売上約5,000万円〜約10億円 | 中小企業オーナーの事業承継・会社売却が中心 案件規模は売上1億円未満〜50億円以上 | 不動産を多く保有する会社の経営者 対応エリアは要確認 | 事業承継と不動産の課題が重なる保有会社 東京・大阪・九州・シンガポールに拠点 | 不動産を多く保有する法人(資産保有法人)の承継にも対応 東京・大阪・静岡に拠点 | 売上数千万円〜数億円規模の不動産会社 本社は東京 |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
※上記は2026年10月時点の各社公式情報等に基づく一般的な傾向です。実際の対応範囲・料金・条件は各社へご確認ください。
不動産M&Aに対応する依頼先の個別紹介
ここからは、比較表で取り上げた各依頼先について、不動産評価力・買い手探索・手数料・対応範囲・実績を個別に紹介します。
1. M&A Lead(M&A Lead株式会社)

M&A Lead株式会社が運営する、売主(譲渡企業)だけの立場に立つM&Aアドバイザリーです。買主からは手数料を受け取らず売主側からのみ報酬を受け取る体系で、譲渡価格や従業員の雇用条件など、売り手の希望の実現に向けて交渉する立場を明確にしています。
費用は、着手金・中間金・月額報酬がいずれも0円の完全成功報酬制で、報酬が発生するのは譲渡完了時のみです。成功報酬はレーマン方式(5億円以下の部分5%〜100億円超の部分1%)で、料率を掛ける基準は負債を含む移動総資産ではなく譲渡対価です。ただし最低手数料として2,000万円が設定されています。
買い手探しは、他社のアドバイザーや買い手側のFA、地方銀行を中心とする20行超の金融機関と連携し、複数の候補から条件提示を受ける進め方をとります。一方で、不動産鑑定を専門とする体制や不動産業の専門チームは公式には示されておらず、手数料の算定も不動産評価ではなく譲渡対価を基準とします。
そのため、買い手との利益相反が起きにくい売主専属の立場で、売り手の利益を最優先に交渉してほしい経営者に向きます。中小企業庁のM&A支援機関に登録しており、全国対応・相談無料で、譲渡の意思が固まる前の段階から相談を受け付けています。
2. M&Aキャピタルパートナーズ(M&Aキャピタルパートナーズ株式会社)

2005年設立、東京証券取引所プライム市場に上場するM&A仲介会社です(証券コード6080、資本金29億円、従業員は連結406名)。中小企業オーナーの事業承継・会社売却を主な対象とし、マッチングから交渉、クロージングまでを専任アドバイザーが一貫して担当します。累計の成約は1,000組以上(基準日の記載なし)としています。
不動産業については、企業情報部に専門のアドバイザー4名(部長1名・課長3名、うち公認会計士1名)を公式に公開しています(チーム総数は非公表)。公式サイトには、中古マンション流通・賃貸管理会社(譲渡時売上高約100億円)が2021年10月にトーセイ株式会社へ株式を100%譲渡した案件などが、不動産会社のM&A事例として掲載されています。
料金は着手金・月額報酬・企業価値評価がいずれも無料で、譲渡先候補の決定時に手数料総額の約10%、最終契約締結時に残りの約90%が発生します。成功報酬は負債を含まない譲渡対価を基準とする株価レーマン方式(5億円以下5%〜100億円超1%)で、最低手数料は公式に明示されていません。多くの買い手候補と比べながら、ある程度の規模の不動産会社のM&Aを進めたい場合の選択肢となります。
3. mecyes(三菱地所リアルエステートサービス株式会社)

mecyes は、三菱地所グループで事業用不動産の仲介・査定などを手がける三菱地所リアルエステートサービス株式会社が運営する、不動産M&A(会社売却支援)のサービスです。不動産を多く保有する会社の事業承継や相続の解決を支援するとしています。
公式ページによれば、多角的な視点から不動産を時価評価して適正な企業価値を導くことを強みに掲げ、買い手のストックの豊富さを訴求しています。大手の事業用不動産会社として、不動産の評価を軸に会社売却を支援する位置づけです。
費用は公式ページによれば、着手金・中間金・月額報酬がいずれもかからない完全成功報酬制で、報酬が発生するのは最終契約の締結以降です。成功報酬は負債を含む移動総資産額を基準とするレーマン方式(5億円以下の部分5%〜100億円超の部分1%)で、最低手数料は2,000万円です。
算定基準が譲渡対価ではなく移動総資産額のため、負債の大きい会社ほど総額が膨らみやすい点は、見積もり時に確認しておきたい点です。中小企業庁のM&A支援機関にも登録しています。三菱地所グループの大手企業に、不動産の評価を軸とした会社売却を相談したい場合の候補となります。
4. 大和不動産鑑定(大和不動産鑑定株式会社)

不動産鑑定を本業としてきた大和不動産鑑定株式会社が提供する、不動産M&A(会社譲渡)のサービスです。同社は1966年設立で、不動産鑑定業として国土交通大臣の登録((15)第30号)を受け、鑑定評価の知見を会社売却の支援に生かしています。
強みは不動産評価の専門性で、公式サイトには不動産鑑定士のほか、一級建築士・公認会計士・土壌環境管理士が在籍すると記載されています。不動産調査・建物診断から価格評価、M&Aのスキーム設計、買主探索、実行までを一つの法人の中でワンストップに手がけ、建物の老朽化や耐震・大規模修繕といった不動産の課題と事業承継が重なる会社を主な対象としています。
公式サービスページで説明されているスキームは会社(株式)譲渡で、事業譲渡や会社分割による切り出しへの対応可否は公式に明示されていません。着手金・成功報酬・最低報酬や算定基準も公式サービスページに明示がなく、問い合わせでの確認が必要です。中小企業庁のM&A支援機関には2021年9月に登録しています。保有する不動産の価値を鑑定の専門性で精緻に評価してほしい会社に向く依頼先です。
5. 青山財産ネットワークス(株式会社青山財産ネットワークス)

1991年設立の株式会社青山財産ネットワークスが手がける、財産コンサルティングの一環としての不動産M&A・事業承継サービスです。宅地建物取引業や不動産特定共同事業、金融商品取引業(第二種)などの許認可を持ち、資産家や資産管理会社の財産承継を支援してきた会社です。
不動産M&Aでは、不動産を保有する法人の株式を譲渡して株式と不動産をまとめて移転する方法に加え、会社分割と株式譲渡を組み合わせ、不動産または不動産中心の事業だけを切り出して譲渡するスキームを公式に示しています。事業承継を「入口・実行支援・出口」の3段階で捉え、出口では現物不動産や不動産賃貸業を会社から切り離して財産を保全・運用する考え方を提案しています。
事業計画書の策定支援(200万円〜)や自社株式の株価シミュレーション(50万円〜)などメニュー別の料金を公開していますが、不動産M&Aそのものの料金や成功報酬は公式に明示がなく、問い合わせでの確認が必要です(初回面談・現状分析は無料)。不動産を多く保有する法人(資産保有法人)の承継や、資産の組み替えを含めて相談したい場合に適した依頼先です。
6. ブリッジオーシャン(ブリッジオーシャン株式会社)

不動産業に特化したM&A仲介を手がける、ブリッジオーシャン株式会社のアドバイザリーサービスです。2019年設立で2022年に宅地建物取引業の免許(東京都知事(1)第107902号)を取得し、登録M&A業者として、売上高数千万円〜数億円規模の不動産会社の承継を多く手がけるとしています。
株式譲渡と不動産売買を一本のストーリーとして設計する点を特徴とし、第三者への承継だけでなく、親族承継やMBO、負担の大きい物件だけを整理する部分売却、事業の切り出し(カーブアウト)まで提案するとしています。初回相談・見積りは無料で、専任契約を求めず他社との並行相談も可能です。
一方で同社は、M&A仲介に加えて、事業承継を検討する不動産業者を自社グループに迎える「事業承継型投資」や、収益不動産を自社で取得・保有する事業も営んでいます。これらは自社グループが買い手・保有者となる立場で、第三者の仲介とは性格が異なるため、利益相反の扱いや中立性は事前に確認しておくとよいでしょう(公式サイトに利益相反の取扱いの記載は確認できていません)。
手数料は成功報酬型が基本で、着手金・中間金は原則ゼロとされますが、料率や最低報酬は公開されていないため、問い合わせでの確認が必要です。不動産業に絞った小規模な事業承継を相談したい場合の選択肢となります。
会社ごと売る(株式譲渡)/不動産だけ切り出す(事業譲渡・会社分割)の選び分けと税務
会社ごと売るか、不動産だけ切り出すか——この選択は税負担を大きく左右します。2つの進め方と、それぞれにかかる税金の違いを整理します。依頼先と相談しながら決める重要な論点です。
会社ごと売る(株式譲渡)
株式譲渡は、会社の株式を買い手へ譲り、不動産を含む会社をまるごと引き継いでもらう方法です。不動産の所有者は会社のまま変わらないため、不動産そのものの名義を動かす手続きが発生しません。そのため、後述する不動産取得税や所有権移転登記の登録免許税といった、不動産の移転に伴う税金は生じないのが特徴です。一方で、株主には株式の売却益に対する課税が生じます。
不動産だけ切り出す(事業譲渡・会社分割)
会社の一部の不動産や不動産事業だけを売りたい場合は、事業譲渡や会社分割を使って対象を切り出します。この場合は不動産の所有権が移転するため、不動産の移転に伴う税金が関わってきます。ここで、不動産取得税と登録免許税で扱いが異なる点に注意が必要です。
まず不動産取得税は、不動産を取得した人に課税される地方税です。ただし地方税法は、一定の形式的な移転については非課税と定めています。
第七十三条の七 道府県は、次に掲げる不動産の取得に対しては、不動産取得税を課することができない。
出典:地方税法 第73条の7(形式的な所有権の移転等に対する不動産取得税の非課税)|e-Gov法令検索
一 相続(包括遺贈及び被相続人から相続人に対してなされた遺贈を含む。)による不動産の取得
二 法人の合併又は政令で定める分割による不動産の取得
つまり、一定の要件を満たす会社分割(政令で定める分割)による不動産の取得は不動産取得税が非課税になりますが、事業譲渡はこの非課税の対象に含まれないため、取得した側に不動産取得税が課されます。会社分割が非課税になる要件は政令で細かく定められているため、「会社分割なら必ず非課税」とは限らず、自社の分割が要件を満たすかは依頼先や税理士に確認する必要があります。
次に、不動産の所有権移転登記にかかる登録免許税です。こちらは会社分割の扱いが不動産取得税とは異なります。
(二)所有権の移転の登記
出典:登録免許税法 別表第一 第一号(二)|e-Gov法令検索
イ 相続又は法人の合併による移転の登記 … 千分の四
ロ 共有物の分割による移転の登記 … 千分の四
ハ その他の原因による移転の登記 … 千分の二十
合併や相続による移転登記は0.4%(千分の四)ですが、会社分割や事業譲渡、通常の売買は「その他の原因」に当たり2.0%(千分の二十)が課されます。なお、引用中の「共有物の分割」(0.4%)は、複数人で共有する不動産を分け合う場面に適用される区分で、本記事で扱う株式譲渡・会社分割・事業譲渡とは別の場面です。
会社分割は、不動産取得税では非課税になりうる一方、登録免許税では合併と別枠で2.0%がかかる——この2つの税の扱いの違いを混同しないことが、スキーム設計では重要です。株式譲渡・会社分割・事業譲渡のどれを選ぶかで税負担が変わるため、複数のスキームを比較して提案できる依頼先を選ぶことが、手取りに直接影響します。

出典・参考資料(2件)
不動産に限らず、事業譲渡そのものの仕組みや株式譲渡との違い、従業員・契約の引き継ぎや手続きの流れまで詳しく知りたい場合は、以下の記事で解説しています。
不動産M&Aの手数料体系を横並びで見る
ここからは、依頼先に支払う手数料の仕組みを整理します。金額の多寡だけでなく、どのタイミングで何が発生するか、何を基準に計算するかを理解しておくと、依頼先ごとの負担を比べやすくなります。
手数料は主に、相談開始時の「着手金」、基本合意時などの「中間金」、成約時の「成功報酬」で構成されます。近年は着手金・中間金を取らず、成約時の成功報酬のみとする依頼先も増えています。成功報酬は、譲渡額などが大きいほど料率が段階的に下がる「レーマン方式」が一般的です。
注意したいのは、料率を掛ける「算定基準」です。中小M&Aガイドラインは、報酬基準額として「譲渡額」「純資産」「移動総資産」などがあると整理しています。たとえば同じ料率でも、負債を含む「移動総資産額」を基準にすると、株式の譲渡額を基準にする場合より総額が大きくなります。
算定基準の違いは総額に直結します。たとえば譲渡対価が1億円、負債が2億円の会社では、譲渡対価を基準にすると1億円に料率がかかりますが、負債を含む移動総資産額を基準にすると3億円に料率がかかり、同じ料率でも手数料が数倍になります。
不動産を多く保有し借入も大きい会社では、この算定基準の違いが手数料に大きく響きます。見積もりの段階では、「算定基準が譲渡対価か移動総資産額か」「最低手数料はいくらか」「着手金・中間金・成功報酬のどこで費用が発生するか」を必ず確認しましょう。
各社の料率・最低報酬は前掲の比較表に整理していますが、「要確認」「非公表」の欄も少なくありません。手数料を公表していない依頼先には、これらの項目を見積もり時に直接たずねて埋めていくのが確実です。
相談から成約までの流れと準備するもの
ここからは、依頼先に相談してから成約に至るまでの一般的な流れと、売り手が準備しておくとよいものを解説します。
一般的には、次のような流れで進みます。
- 相談・秘密保持契約
- 会社・不動産の評価と売却方針
- 買い手候補の探索・打診
- 条件交渉・基本合意
- 買い手による買収前調査(デューデリジェンス)
- 最終契約・成約
不動産M&Aは買い手探索や交渉に時間を要するため、相談から成約まで半年から1年以上かかることも珍しくありません。
費用の発生タイミングは依頼先の手数料体系によって異なり、着手金があれば相談初期に、中間金があれば基本合意時に、成功報酬は成約時に発生します。相談の際には、直近の決算書、保有不動産の一覧(登記簿・賃貸借契約の状況)、株主構成がわかる資料などを用意しておくと、評価や方針の検討がスムーズに進みます。
依頼先を選ぶときに確かめる契約・法規制の注意
ここからは、依頼先と契約する前に確かめておきたい、許認可や契約条項に関する注意点を整理します。不動産M&Aならではの論点を押さえておくと、安心して相談先を選べます。
アドバイザーに不動産の免許は必要か
「不動産を扱うのだから、相談先には宅地建物取引業(宅建業)の免許が必要では」と考える方もいますが、不動産M&Aの助言・仲介そのものには、原則として宅建業免許は不要です。宅地建物取引業法は、宅建業を次のように定義しています。
二 宅地建物取引業 宅地若しくは建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うものをいう。
出典:宅地建物取引業法 第2条第2号|e-Gov法令検索
免許が必要になるのは、宅地・建物そのものの売買・交換や、その売買・交換・貸借の代理・媒介を業として行う場合です。不動産M&Aは、不動産そのものではなく会社の株式を譲渡する取引の仲介・助言であるため、この定義には当たらず、M&Aアドバイザリー自体に宅建業免許は原則として求められません。
なお、株式譲渡の仲介が金融商品取引法の登録を要するかは解釈が分かれる論点ですが、非上場株式の相対取引の仲介は登録の対象外と整理されるのが一般的です。厳密な取り扱いは個別に専門家へ確認するとよいでしょう。
不動産業の免許は引き継げるか
売り手が不動産会社の場合、会社が持つ宅建業免許をどう扱うかはスキームによって変わります。株式譲渡で会社ごと引き継ぐ場合は、会社の法人格が変わらないため、会社が持つ宅建業免許はそのまま存続します(役員変更の届出など別途の手続きは生じます)。一方、事業譲渡や会社分割で不動産事業だけを切り出す場合は注意が必要です。
宅地建物取引業法には、事業譲渡や会社分割によって免許を引き継がせる規定が設けられていないため、切り出した事業を受け取る側が宅建業を営むには、自ら新たに免許を取得し直す必要があります。この「切り出すと免許は引き継げない」点は、スキーム設計上の重要な確認点です。
出典・参考資料(1件)
利益相反・専任条項は確認したか
売り手と買い手の双方から依頼を受ける「仲介」の形態では、構造上、双方の利益が対立しうる場面があります。中小M&Aガイドラインは、仲介者に対し、双方から依頼を受けている旨や利益相反が想定される事項を事前に説明し、中立・公平に対応することを求めています。売り手の利益を最優先にしたい場合は、売り手だけの立場に立つFA型を選ぶ、あるいは仲介であれば利益相反への対応方針を確認する、といった見極めが有効です。
契約時には「専任条項」にも目を通しましょう。専任条項とは、契約期間中は他の依頼先に相談・依頼できないとする取り決めです。
中小M&Aガイドラインは、専任条項を設ける場合にもいくつかの配慮を求めています。合理的な理由がなければ他の支援機関へのセカンドオピニオンを認めること、契約期間は最長でも6か月から1年以内を目安とすること、依頼者がいつでも中途解約できる旨を明記することの3点です。契約前に、セカンドオピニオンの可否・契約期間・中途解約の条件を確認しておくと安心です。
出典・参考資料(1件)
まとめ
不動産業のM&Aは、不動産の評価力・買い手探索・対応できるスキーム・手数料の仕組みによって、依頼先ごとに得意分野が分かれます。資産の大半が不動産なら評価力を、幅広い候補と比べたいなら買い手ネットワークを、売り手の利益を最優先にしたいなら利益相反の起きにくいFA型を選ぶというように、自社が最も重視する軸から相談先を絞り込むのが近道です。
なお、最低手数料の水準は依頼先によって差があるため、譲渡額が小さくなりがちな小規模な会社は早めに最低手数料を確認しておくとよく、評価力を最も重視するなら不動産鑑定を本業とする依頼先が有力な候補になります。
株式譲渡で会社ごと売るか、会社分割・事業譲渡で不動産だけを切り出すかによって税負担や手続きも変わります。複数のスキームを比較して提案でき、中小M&Aガイドラインに沿って手数料や契約条件を明確に示す依頼先を選ぶことが、納得できる売却への第一歩です。まずは気になる相談先の資料を取り寄せ、自社の状況を相談してみることをおすすめします。
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よくある質問(FAQ)
Q. 不動産M&Aとは何ですか?
不動産M&Aとは、不動産そのものを売買するのではなく、不動産を保有する会社や不動産事業を、株式や事業ごと買い手へ移転する取引です。通常の不動産売買が「土地・建物」という物件を売り買いするのに対し、不動産M&Aでは「不動産を持った会社」や「不動産にまつわる事業」が取引の対象になります。
進め方は、会社の株式を譲る「株式譲渡」で会社ごと引き継いでもらう方法と、会社分割・事業譲渡で特定の不動産や不動産事業だけを切り出して売る方法の大きく2つに分かれます。
Q. 不動産M&Aはどこに相談すればよいですか?
不動産M&Aの相談先は、不動産の評価・鑑定に強い専門型、不動産専門チームを持つ総合M&A仲介・FA型、売り手だけの立場に立つ売主専属FA型、不動産会社に特化した専門サイト型などに分かれます。
資産の大半が不動産で株価への反映を重視するなら評価力に強い相手、幅広い候補と比べたいなら買い手ネットワークを持つ総合仲介、売り手の利益を最優先にしたいなら利益相反の起きにくいFA型、というように、自社が最も重視する軸から絞り込むのが近道です。顧問税理士・顧問弁護士に相談しながら、複数の依頼先の資料を取り寄せて見比べるとよいでしょう。
Q. 不動産M&Aのアドバイザーに宅地建物取引業(宅建業)の免許は必要ですか?
不動産M&Aの助言・仲介そのものには、原則として宅地建物取引業(宅建業)の免許は不要です。宅建業免許が必要になるのは、宅地・建物そのものの売買・交換や、その代理・媒介を業として行う場合です。
不動産M&Aは、不動産そのものではなく会社の株式を譲渡する取引の仲介・助言であるため、宅建業の定義には当たりません。そのため、依頼先が宅建業免許を持っているかどうかは、不動産M&Aに対応できるかの必須条件ではなく、不動産の評価力や実績で見極めるのが実態に合います。
Q. 不動産M&Aでは、会社ごと売るのと不動産だけを切り出すのではどちらがよいですか?
不動産M&Aで会社ごと売るか不動産だけ切り出すかは、税負担や手続きが変わるため、自社の目的(会社全体を手放したいか、一部の不動産だけ整理したいか)に応じて選び分けます。会社の株式をまるごと譲る株式譲渡では、不動産の名義を動かさないため不動産取得税や所有権移転登記の登録免許税がかからず、株主の株式売却益への課税で完結しやすいのが特徴です。
一方、事業譲渡や会社分割で不動産だけを切り出す場合は不動産の所有権が移転するため、移転に伴う税金が関わります。どちらが有利かは資産状況や含み益によって変わるので、複数のスキームを比較して提案できる依頼先と相談しながら決めるのが確実です。
Q. 不動産だけを会社分割で切り出すと、税金はかからないのですか?
会社分割で不動産を切り出す場合、一定の要件を満たせば不動産取得税は非課税になりますが、所有権移転登記の登録免許税は2.0%(千分の二十)がかかります。地方税法は、政令で定める一定の会社分割による不動産の取得を不動産取得税の非課税としていますが、要件は政令で細かく定められており「会社分割なら必ず非課税」とは限りません。
また、登録免許税は合併や相続による移転登記が0.4%であるのに対し、会社分割や事業譲渡は「その他の原因」として2.0%が課されます。この2つの税の扱いの違いを混同せず、自社の分割が非課税要件を満たすかは依頼先や税理士に確認する必要があります。
Q. 不動産M&Aの手数料の相場や算定基準はどうなっていますか?
不動産M&Aの手数料は、相談開始時の「着手金」、基本合意時などの「中間金」、成約時の「成功報酬」で構成され、成功報酬は譲渡額などが大きいほど料率が段階的に下がるレーマン方式が一般的です。近年は着手金・中間金を取らず成功報酬のみとする依頼先も増えています。特に注意したいのは、料率を掛ける「算定基準」です。
同じ料率でも、負債を含む「移動総資産額」を基準にすると、株式の「譲渡額」を基準にする場合より総額が大きくなります。不動産を多く保有し借入も大きい会社ほどこの差が手数料に響くため、見積もりの際は「何を基準にした料率か」「最低報酬はいくらか」を必ず確認しましょう。各社の具体的な料率は本記事の比較表を参照してください。
Q. 不動産M&Aでは、保有する不動産の価値はどう評価されますか?
不動産M&Aでは、保有する不動産の時価評価が会社の企業価値(株価)に反映され、売却価格を大きく左右します。帳簿上の価額と実際の時価に差(含み益・含み損)がある会社ほど、評価の精度が手取りに直結します。
そのため、不動産鑑定士が在籍しているか、物件の収益性や立地をどこまで踏み込んで評価できるかは、依頼先選びの要になります。資産の大半が不動産の会社は、過去の不動産案件での評価実績を確認し、価値を適正に評価してくれる依頼先を選ぶことが、安く買い叩かれないための備えになります。
Q. 地方の不動産会社でも相談できますか?
地方の不動産会社でも、全国対応をうたう依頼先であれば相談できます。不動産M&Aの依頼先には、全国を対象に取引実績を持つ会社や、複数の拠点・金融機関のネットワークを通じて地域を問わず買い手を探せる会社があります。一方で、対応エリアや得意な地域は依頼先によって差があるため、自社の所在地や物件の立地に対応できるか、その地域で買い手を探せるネットワークがあるかを、相談時に確認しておくとよいでしょう。
Q. 不動産M&Aは相談から成約までどのくらいかかりますか?
不動産M&Aは、相談から成約まで半年から1年以上かかることも珍しくありません。一般的には、相談・秘密保持契約、会社と不動産の評価・方針整理、買い手候補の探索・打診、条件交渉・基本合意、買い手による買収前調査(デューデリジェンス)、最終契約・成約という流れで進み、買い手探索や交渉に時間を要するためです。
早めに相談先を決めて動き出すほど、納得できる条件で売却しやすくなります。相談の際には、直近の決算書、保有不動産の一覧(登記簿・賃貸借契約の状況)、株主構成がわかる資料などを用意しておくと、評価や方針の検討がスムーズに進みます。
Q. 不動産M&Aを行うと、従業員の雇用はどうなりますか?
不動産M&Aでの従業員の雇用は、株式譲渡なら会社が変わらないため原則そのまま継続し、会社分割では労働契約承継法に基づき対象事業に主として従事する労働者が原則として個別の同意なく承継され、事業譲渡では従業員を移すのに本人の同意が必要です。株式譲渡は会社の株主が代わるだけで雇用契約はそのまま残るため、労働条件を維持したまま引き継ぎやすいのが特徴です。
会社分割では、承継対象事業に主として従事する労働者は原則として個別の同意なく引き継がれますが、会社には事前の通知・協議などの手続きが求められます。一方、事業譲渡で不動産事業だけを別会社へ移す場合は、従業員ごとに本人の同意が必要です。雇用の維持を重視するなら、早い段階でその方針を依頼先に伝えておくとよいでしょう。
Q. 赤字や債務超過の不動産会社でも売却できますか?
赤字や債務超過の不動産会社でも、保有する不動産に含み益や安定した収益性があれば、買い手がつく可能性は十分にあります。不動産M&Aでは会計上の損益だけでなく、保有不動産の時価が企業価値を大きく左右するためです。
帳簿上は赤字でも、土地・建物に含み益があったり賃料収入が安定していれば、買い手にとって魅力的な対象になり得ます。逆に含み損を抱える場合は評価が下がりやすいため、まずは不動産の評価に強い依頼先に相談し、自社の実態に即した価値を把握することが、売却できるかどうかの見極めにつながります。
Q. 不動産M&Aの相談内容や会社の情報の秘密は守られますか?
不動産M&Aの相談では、依頼先と秘密保持契約(NDA)を結んだうえで情報を扱うのが一般的で、相談段階の情報が外部に漏れない仕組みがとられます。会社売却の検討が取引先や従業員に知られると事業に影響が出かねないため、情報管理は依頼先選びでも重要なポイントになります。
買い手候補に打診する際も、まずは社名を伏せた匿名の概要から始め、相手が関心を示し秘密保持契約を結んだ段階で詳しい情報を開示していくのが通例です。情報管理の体制や、どの段階で何を開示するかは依頼先によって運用が異なるため、相談時に確認しておくと安心して検討を進められます。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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