社内システムのクラウド移行やテレワークが定着し、「社内は安全、社外は危険」という前提で本社にUTMを置き、社外からはVPNでつなぐ従来の守り方が、現在の働き方に合わなくなってきました。こうした背景から、ネットワークとセキュリティをまとめて見直す枠組みとしてSASE(サシー)を検討する企業が増えています。
ところがSASEを調べ始めると、SD-WAN・SSE・UTM・ゼロトラストといった近い言葉が次々に出てきて、「SASEは結局どれと何が違うのか」「自社は乗り換えるべきなのか」が掴みにくいという声をよく聞きます。
本記事では、SASEとSD-WAN・SSE・UTM・ゼロトラストの違いを1枚の表で横断的に整理し、そのうえで自社はSASEに進むべきか、主なSASE製品をどう選ぶかまでを解説します。各方式の定義は、提唱元のGartnerや標準文書であるNISTの資料にもとづいて示します。ネットワークとセキュリティの見直しを検討している方が、自社に合う方式と進め方を見極めるための材料としてご活用ください。
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目次
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SASEとは|ネットワークとセキュリティをクラウドで束ねる枠組み
SASE(Secure Access Service Edge、サシー)とは、これまで別々に用意していたネットワーク機能とセキュリティ機能を、クラウド上で1つのサービスとしてまとめて提供する枠組みです。
調査会社のGartner(ガートナー)が2019年に提唱した比較的新しい概念で、利用者や拠点がどこにあっても、同じ基盤を経由して安全にインターネットやクラウドへ接続できるようにすることを狙いとしています。
Gartnerの提唱によれば、SASEはおおむね次の機能を束ねたものとして整理されます。SASEという1つの製品があるわけではなく、これらを組み合わせてクラウドから届ける考え方だと捉えると分かりやすくなります。
- SD-WAN:拠点やデータセンター、クラウドへの通信を効率よく振り分ける、ネットワーク(WAN)側の機能
- SWG(セキュアWebゲートウェイ):Webアクセスを検査し、危険なサイトや通信を遮断する機能
- CASB(キャスビー):クラウドサービスの利用状況を可視化し、設定や操作を制御する機能
- ZTNA(ゼロトラスト・ネットワーク・アクセス):利用者とアプリを1対1でつなぎ、認証したアプリにだけアクセスを許可する、VPNに代わる接続の仕組み
- FWaaS(ファイアウォール・アズ・ア・サービス):ファイアウォールをクラウドから提供する機能
このうちSD-WANがネットワーク側を、残りのSWG・CASB・ZTNA・FWaaSがセキュリティ側を担います。SASEはこの両方をひとまとめにしてクラウドから届ける点に特徴があります。次章では、ここで出てきたSD-WANや、混同しやすいSSE・UTM・ゼロトラストと、SASEが具体的にどう違うのかを整理します。

SASEとSD-WAN・SSE・UTM・ゼロトラストの違い
SASEの検討でまずつまずきやすいのが、よく一緒に出てくる4つの言葉との線引きです。これらは「どれかに置き換える競合」ではなく、担う範囲や、考え方と実現手段という関係にあります。はじめに全体像を1枚の表で押さえ、そのあと各方式を個別に補足します。
| 方式 | SASE | SD-WAN | SSE | UTM | ゼロトラスト |
|---|---|---|---|---|---|
| 何を担うか | ネットワーク(SD-WAN)+セキュリティ(SWG・CASB・ZTNA・FWaaS)をクラウドで統合 | 拠点間・クラウドへの通信を最適に振り分けるネットワーク(WAN)の技術 | SWG・CASB・ZTNA・FWaaSなどのセキュリティ機能をクラウドで提供 | ファイアウォール・IPS・アンチウイルスなど複数のセキュリティ機能を1台に統合 | すべてのアクセスを無条件に信用せず、その都度検証するという考え方・原則 |
| SASEとの関係 | ネットワークとセキュリティを1つの基盤で提供 | SASEのネットワーク側の構成要素。SD-WAN単体はセキュリティ機能ではない | SASEのセキュリティ側。SASE = SSE + SD-WAN の関係 | 拠点の出入口を守る境界型の手段。SASEはこれをクラウド側へ移す発想 | SASEが実装しようとする考え方。製品ではなく設計方針 |
| 主に対象とする範囲 | 拠点・リモート・クラウド利用を横断した接続とセキュリティ全体 | 拠点間・インターネット・クラウドへの通信経路と品質 | Webアクセス・クラウド利用・社外からの接続のセキュリティ | 拠点(オフィス)の出入口を通る通信 | 利用者・端末・通信すべて(特定の機器や範囲に限らない) |
※各方式の一般的な位置づけを整理したものです。製品ごとに対応範囲は異なるため、個別の仕様は各社情報をご確認ください。
SASEとSD-WANの違い
SD-WAN(Software-Defined WAN)は、複数の回線を使い分けて拠点間やクラウドへの通信を効率よく振り分ける、ネットワーク側の技術です。拠点同士を安定して接続し、通信の管理や可視化を一元化することを主な目的とし、それ自体はセキュリティ製品ではありません。
SASEは、このSD-WANにセキュリティ機能を組み合わせ、クラウドから一体で提供する枠組みです。したがってSD-WANはSASEの一部を担う技術であり、「SASEかSD-WANか」という二者択一ではなく、SD-WANを含む形でセキュリティまで束ねたものがSASEだと整理できます。
通信経路の最適化だけが課題で、セキュリティは別の仕組みで足りているならSD-WAN単体の導入でも対応できます。一方、拠点・リモート・クラウドをまたいでセキュリティも含めて見直したい場合は、SASEの検討対象になります。
出典・参考資料は以下のとおりです。
出典・参考資料(1件)
SASEとSSEの違い(SASE=SSE+SD-WAN)
SSE(Security Service Edge)は、Gartnerが2021年に提唱した概念で、SWG・CASB・ZTNA・FWaaSといったセキュリティ機能をクラウドから提供するものです。SASEからネットワーク機能(SD-WAN)を除いた、セキュリティ側だけを取り出したものと考えると整理しやすくなります。
関係を式のように表すと、SASE = SSE(セキュリティ)+ SD-WAN(ネットワーク)となります。すでにSD-WANや既存のネットワーク構成が整っていて、セキュリティ側だけをクラウドで刷新したい場合は、SSEから着手するという選択肢があります。ネットワークとセキュリティを一体で見直したい場合は、両方を含むSASEが対象になります。
SASEとUTMの違い
UTM(Unified Threat Management、統合脅威管理)は、ファイアウォール・IPS(不正侵入防御)・アンチウイルス・Webフィルタリングなど複数のセキュリティ機能を1台の機器に統合した仕組みです。オフィスの出入口に機器を置き、そこを通る通信をまとめて検査する「境界型」の守り方が基本になります。
両者の最も大きな違いは、守る場所の考え方です。UTMは拠点の出入口という「境界」で通信を守るのに対し、SASEは利用者や端末がどこにいても、クラウド上の基盤を経由させて同じセキュリティを適用します。社員が社外から直接クラウドへアクセスするような使い方では、拠点の出入口を通らない通信が増えるため、境界型のUTMだけでは守りきれない場面が出てきます。
ただし、UTMが不要になるわけではありません。オフィスに人と機器が集まる環境では、境界で束ねて守るUTMは今も有効です。自社の働き方に照らしてどちらが合うか、費用の考え方の違いも含めて、後の「自社はSASEに進むべきか」で詳しく整理します。
参考資料は以下のとおりです。
SASEとゼロトラストの違い
SASEとゼロトラストは、しばしば同じ意味で語られますが、位置づけが異なります。ゼロトラストは「考え方・原則」であり、SASEはその考え方を実現する「手段」の一つです。米国国立標準技術研究所(NIST)の文書「SP 800-207 Zero Trust Architecture」は、ゼロトラストを次のように説明しています。
ゼロトラスト(ZT)は、単一のアーキテクチャではなく、ワークフロー・システム設計・運用のための一連の指針であり、あらゆる分類・機密レベルのセキュリティ水準を高めるために用いられる。
(原文:ZT is not a single architecture but a set of guiding principles for workflow, system design and operations…)
出典:NIST Special Publication 800-207「Zero Trust Architecture」(米国国立標準技術研究所、2020年8月)§2 Zero Trust Basics
この文書が示すように、ゼロトラストは特定の製品を導入すれば実現できるものではなく、社内外を問わずすべてのアクセスを無条件に信用せず、その都度検証するという設計の方針です。SASEは、ZTNAなどを通じてこの考え方をネットワークとセキュリティの基盤に実装する手段と位置づけられることが多い枠組みです。
したがって「SASEかゼロトラストか」という比較は成り立ちません。目指す方針がゼロトラストで、それをクラウド基盤でまとめて実現する具体策の一つがSASE、と捉えると関係が整理できます。
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自社はSASEに進むべきか|UTMのままでよいケースと見極め
方式の違いを押さえたうえで、次に気になるのが「自社はSASEに乗り換えるべきか、今のUTMのままでよいか」という判断です。ここは製品名ではなく、拠点数・働き方・運用体制・費用の考え方で見極めるのが現実的です。NISTも、多くの組織は境界型とゼロトラストが混在した状態で運用されると述べており、一気に全面移行するより、自社の状況に合わせて段階的に進める前提で検討するのが無理のない進め方です。
UTMのままでよいケース
拠点が1〜2か所で、社員が基本的に出社して働き、業務システムも社内やオフィス経由で使う環境では、拠点の出入口を守るUTMで必要な範囲をカバーできることが多くあります。費用の面でも、UTMは機器を購入して数年使う形が中心で、台数が限られていれば初期費用を見込んで導入・運用できます。クラウド利用やリモートワークがまだ限定的なうちは、無理にSASEへ移行する必要性は高くありません。
SASEが効くケース
一方で、リモートワークが日常的になり、拠点が複数に分かれ、Microsoft 365などのクラウドサービスが業務の中心になっている環境では、SASEの利点が出やすくなります。社員が社外から直接クラウドへアクセスする通信は、本社のUTMを経由しないため、境界型のままでは可視化も制御も届きにくくなるためです。
費用の考え方もUTMと異なります。SASEは利用者数などに応じたサブスクリプション型が中心で、機器を拠点ごとに買い足す必要がない反面、利用規模が大きいほど月額が積み上がります。
拠点やリモート利用者が多く、各拠点に機器を置いて運用する負担が重い企業ほど、クラウドでまとめて運用できるSASEの効果を実感しやすい傾向があります。ネットワークの専任担当を置きにくく、運用をできるだけ集約したい場合にも向きます。
現実解としてのハイブリッド運用・段階的な進め方
多くの企業にとって現実的なのは、UTMかSASEかの二者択一ではなく、両者を併用しながら少しずつ移していく進め方です。たとえば、オフィスの社内ネットワークは既存のUTMで守りつつ、社外からのアクセスやクラウド利用の通信からSASE・SSEへ切り替える、といった形です。
SASEは複数の機能の集合体なので、すべてを一度に入れ替える必要はありません。自社で最も課題になっている領域——社外接続をVPNからZTNAへ替えたい、クラウド利用を可視化したい、拠点の出入口を強化したい——から着手し、効果を確かめながら範囲を広げていくと、投資と運用の負担を抑えやすくなります。
どの領域から手を付けるかを決めるうえでは、次章の製品の選び方と、その後の個別機能ごとの選択肢が判断材料になります。
主なSASE・SSE製品の選択肢と選び方
SASEへ進むと決めた場合に、どんな製品があり、何を基準に選べばよいかを整理します。SASE・SSE製品は海外ベンダーを中心に複数あり、いずれもネットワークとセキュリティの機能をクラウドで提供する点は共通しますが、得意領域や提供形態に差があります。以下は代表的な製品の比較です。
| サービス名 | Cato SASE Cloud | Netskope One | Zscaler Zero Trust Exchange | Cloudflare One | Forcepoint ONE |
|---|---|---|---|---|---|
| 提供元 | Cato Networks (国内は販売代理店が提供) | Netskope (日本法人: Netskope Japan) | Zscaler (日本法人: ゼットスケーラー) | Cloudflare (日本法人: Cloudflare Japan) | Forcepoint (日本法人: フォースポイント・ジャパン) |
| 種別 | SASE(SD-WAN統合) | SASE(SD-WAN統合) | SASE(SD-WAN統合) | SASE(SD-WAN統合) | SSE(SD-WANは別製品) |
| 主な構成要素 | SD-WAN/SWG/CASB/ZTNA/FWaaS/DLP | CASB/SWG/ZTNA/SD-WAN/FWaaS/DLP | ZIA(SWG・CASB・DLP・FW)/ZPA(ZTNA)/ZDX | ZTNA/SWG/RBI/CASB/DLP/メール/Cloudflare WAN/ネットワークFW | CASB/SWG/ZTNA/DLP/Cloud Firewall(CSPM・SSPMはアドオン) |
| 料金の目安 | 要問い合わせ (販売代理店の見積もり) | 要問い合わせ (サブスク、代理店経由が中心) | 要問い合わせ (モジュール別サブスク) | Freeプランあり/Enterpriseはシート単位課金 (要問い合わせ) | 要問い合わせ (サブスク、最低利用者数あり) |
| 詳細情報 | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
※各製品の対応範囲・料金は変更される場合があります。導入検討時は各社の最新情報をご確認ください。
各製品の位置づけを簡単に補足します。自社がまず重視する領域に照らして、候補を絞る手がかりにしてください。
- Cato SASE Cloud:自社で構築したグローバルな接続基盤(PoP)の上で、SD-WANからセキュリティまでを単一ベンダーで完結させる構成です。ネットワークとセキュリティをまとめて1社に任せたい企業に向きます。
- Netskope One:クラウド利用を可視化・制御するCASBに強みがあり、SaaSの利用が多くデータ保護(DLP)を重視する企業に向きます。
- Zscaler Zero Trust Exchange:Webセキュリティ(ZIA)とVPNに代わるアクセス(ZPA)をクラウドで統合する構成で、拠点やリモート利用者が多い大規模・グローバル展開を想定した製品です。
- Cloudflare One:小規模向けの無料プランが用意されており、まずZTNA(VPNに代わるアクセス制御)を小規模で試したい企業にも入りやすい選択肢です(無料枠の上限は公式のプランページでご確認ください)。
- Forcepoint ONE:CASB・SWG・ZTNA・DLPをセキュリティ側(SSE)として1基盤でまとめる構成で、SD-WANは別製品です。セキュリティ機能から先に統合したい企業に向きます。
料金はいずれも利用者数や選ぶ機能に応じたサブスクリプションで、公式には「要問い合わせ」が中心です。Cloudflare Oneのように無料プランを用意する製品もある一方、最低利用者数が設定される製品もあり、見積もりは利用者数・機能・契約期間で変わります。
これらのSASE・SSE製品の詳しい資料は、各社の公式サイトで確認できます。次章では、SASEが束ねる機能を個別のサービスで手当てするという、もう一つの進め方を紹介します。
製品選定で見るべき5つの観点
SASE・SSE製品を比べるときは、次の5つの観点で自社の要件と照らし合わせると、候補を絞り込みやすくなります。
- 機能の包括性:ZTNA・SWG・CASB・FWaaSなど、自社が必要とする機能がどこまで1つの基盤で揃うか。すべてを1社でまとめたいのか、強化したい領域に絞るのかで見るべき範囲が変わります。
- 性能と拠点網(PoP):SASEはクラウド上の接続拠点(PoP)を経由するため、国内や利用地域に接続拠点が十分にあるかが通信の速さに影響します。海外拠点を持つ場合は、その地域での接続性も見ておきたい点です。
- 管理の一元化:ネットワークとセキュリティを1つの画面でまとめて設定・監視できるかは、運用負担に直結します。ポリシーを一括で管理でき、利用状況を可視化できるかが要点です。
- 運用・サポート体制:日本語での問い合わせ対応や導入支援があるか、障害時のエスカレーション体制が整っているか。専任担当を置きにくい場合は、運用を任せられる支援の有無が選定の決め手になります。
- コスト:多くの製品が利用者数などに応じたサブスクリプション型です。必要な機能だけを選べるか、利用規模が増えたときに費用がどう変わるかは、見積もりで把握できます。
5つすべてを満たす製品を探すより、自社でまず解決したい課題に照らして優先順位を付けると判断が進みます。SASE製品を一式で入れるのが難しい場合は、SASEが束ねている機能を個別に手当てするという進め方もあります。次章では、その具体的な選択肢を機能ごとに紹介します。
SASE・ゼロトラストを支える機能を個別に手当てする選択肢
前章までで見たとおり、SASEはZTNA・SWG・CASB・FWaaSといったセキュリティ機能をSD-WANと束ねたものです。これらSASEが束ねる機能や、その土台となる認証・ID統制、通信の監視、拠点の出入口の防御は、必ずしもSASE製品を一式で導入しなくても、機能ごとに個別のサービスで手当てできます。
たとえば、ZTNAに相当するアクセス制御とその土台の認証・ID統制はIDaaSや多要素認証で、通信の監視はNDRで、SWG・FWaaSに近い出入口の検査はクラウド型UTMやファイアウォールで手当てする、といった形です。
「全面的なSASE移行はまだ難しいが、できるところから強化したい」という場合の現実的な一歩になります。ここで紹介するのはSASE製品そのものではなく、SASE・ゼロトラストを支える個別の機能を担うサービスです。
こうした個別の機能は、社内セキュリティ全体のなかで「どこを・何から守るか」という視点で捉えると、自社に必要な範囲を見極めやすくなります。守る対象ごとにどんなソリューションがあり、代表的なサービスをどう選ぶかをまとめて俯瞰したい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。
社内セキュリティソリューション比較|守る対象別のタイプ・代表サービスと選び方
社内のセキュリティを強化したいものの、端末の保護から不正アクセス対策、情報漏えいの防止まで課題が広く、何から手をつければよいか判断がつかないという声は少なくありません。テレワークやクラウド利用が定着し、社外に持ち出される端末やIDが増えたこ…
以下は、機能領域ごとに代表的なサービスを比較した表です。自社でまず強化したい領域から見ていくと、候補を絞りやすくなります。
| サービス名 | CloudGate UNO | YubiKey as a Service | DZ Pass | Network Blackbox | SmartConnect Network & Security クラウド型UTM | Check Point Quantum |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 担う領域 | ID統制・ゼロトラスト型アクセス | 多要素認証(物理セキュリティキー) | 継続認証・多要素認証 | ネットワーク監視・NDR | クラウド型UTM(出入口の防御) | UTM/NGFW(出入口の防御) |
| 主な機能 | SSO/多要素認証(FIDO2・パスキー)/アクセス制限/ID管理 | YubiKey(FIDO2/WebAuthn・PIV・OTP等)+導入・運用代行 | バックグラウンド認証®による継続認証(顔認証+スマホ)/離席・覗き見・なりすまし検知 | フルパケットキャプチャ/シグネチャ検知+ユーザー行為ベース検出(BAD)+コンテンツ分析/MITRE ATT&CKハンティング | FW/IPS/アンチウイルス/アンチスパム/Webフィルタ/アプリ制御(FortiGate採用) | 次世代ファイアウォール+IPSソフトウェアブレード(シグネチャ+振る舞い+プロトコル検証)/アンチウイルス・URLフィルタ等 |
| 提供形態 | クラウド(IDaaS) | ハードウェアトークン+サブスク | Windows PCインストール型(スマホアプリ併用) | ネットワーク型(ミラーリングで導入) | クラウド型(DC集約、拠点に機器設置不要) | アプライアンス(Quantum Force/Spark)/仮想/クラウド |
| 費用感 | 月額400円〜600円/ユーザー(税抜) 別途初期費用・無料トライアル30日 | 要問い合わせ (サブスク、200ライセンスから) | 要問い合わせ (年間ライセンス制) | 要問い合わせ | 初期110,000円〜/月額38,500円〜(税抜) 最低利用期間1年 | 要問い合わせ (販売代理店の見積もり) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | オンライン相談を予約 | 公式資料を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る |
※料金・機能は2026年10月時点の各社公開情報にもとづく目安です。導入時は各社の最新情報をご確認ください。
1. CloudGate UNO(株式会社インターナショナルシステムリサーチ)

ゼロトラスト型のアクセス制御(ZTNA)に近い役割を、ID統制の面から担うIDaaS(クラウドでIDと認証を一元管理する仕組み)です。シングルサインオン(SSO)・多要素認証・アクセス制限・ID管理を1つに統合し、誰がどのクラウドサービスにアクセスできるかを一元的に管理します。アクセスのたびに本人確認を行う発想は、SASEが前提とするゼロトラストの考え方と重なります。
Google WorkspaceやMicrosoft 365とのSSO連携に対応し、FIDO2パスキーによるパスワードレス認証も利用できます。SASEの全面導入に踏み切る前に、まず「誰が何にアクセスできるか」の統制から着手したい企業に向く選択肢です。
ゼロトラストの考え方にもとづくアクセス制御について、提供元のインターナショナルシステムリサーチは、制限のかけ方を次のように説明しています。

「端末、場所、時間」の3つの軸で細かく制限できます。私用端末からのアクセス禁止、現場や訪問先といった特定の拠点限定はもちろん、残業時間帯にはアクセスできないように設定も可能です。
2. YubiKey as a Service(株式会社インターナショナルシステムリサーチ)

認証の強化を物理セキュリティキーで実現するサービスです。FIDO2に対応したセキュリティキー「YubiKey」を、導入・運用代行を含むサブスクリプション型で利用できます。パスワードやスマートフォンのアプリに頼らず、鍵そのものを使って本人確認を行うため、フィッシングに強い認証を構築できます。
スマートフォンを支給しにくい現場や、より確実な多要素認証を求める部門で、SASE・ゼロトラストの土台となる認証を底上げしたい場合に適しています。前述のCloudGate UNOと組み合わせてSSOの認証手段として使うこともできます。
物理キー以外も含め、認証方式や料金を製品ごとに見比べて自社に合う多要素認証の仕組みを選びたい場合は、以下の比較記事が参考になります。
多要素認証(MFA)システムおすすめ17選を徹底比較|認証方式・料金・タイプ別の選び方
ID とパスワードだけのログインは、もはや「鍵をかけていない」のと同じ状態に近づいています。攻撃者は流出したパスワードのリストを使い回し、本物そっくりの偽サイトで認証情報を抜き取り、正規利用者になりすまして社内システムやクラウドサービスへ侵…
SASE・ゼロトラストの前提となる認証の強化について、提供元のインターナショナルシステムリサーチは、その位置づけを次のように述べています。

認証というのは家でいう玄関のようなところです。ここのセキュリティをがっちり強化することで、被害を大幅に低減できると考えています。今はパスワードが漏れているのが当たり前という世界ですので、パスワードを使わないパスワードレス認証への移行は極めて有効な対策となります。
3. DZ Pass(株式会社AnchorZ)

ログインした後も本人であり続けているかを確かめ続ける、継続認証の仕組みです。顔認証とスマートフォンを組み合わせたバックグラウンド認証により、PCの離席・のぞき見・なりすましを検知します。アクセスの入口だけでなく、利用中も本人性を検証し続ける点が、ゼロトラストの「その都度検証する」考え方と親和します。
既存のWindowsログインに監視機能を追加する形で導入でき、なりすましや端末の不正利用のリスクを下げたい中小〜中堅企業にとって導入しやすい仕組みです。
利用中も本人性を検証し続ける継続認証が、実際の現場でどう働くのか。提供元のAnchorZは、在宅勤務での情報漏洩対策の例を次のように挙げています。
当社の常時認証では、ご本人がパソコンに向かってスマートフォンのカメラを構えた瞬間にロックすることができます。すぐに画面ロックがかかるので画面を撮影されることはありませんし、同時に「在宅勤務中のAさんがスマートフォンでパソコンの画面を撮ろうとしたので、画面をロックしました」という通知が、システム管理者へ即座に届くようにすることができます。こうして、在宅勤務時の不正行為を水際で未然に防ぐことができます。
4. Network Blackbox(株式会社クワッドマイナージャパン)

ネットワークの通信を記録し、不審な挙動を検知するNDR(ネットワーク検知・対応)の製品です。フルパケットキャプチャを基盤に、やり取りされた通信をさかのぼって確認できます。SASEの構成要素そのものではありませんが、通信の可視化・監視という、ゼロトラストやSASEを支える土台の一部を補う位置づけです。
端末にソフトを入れにくい機器も含め、ネットワーク側から異常を見つけたい場合や、万一の際に通信を追跡できる状態にしておきたい場合の備えになります。
ネットワーク側から通信を監視して脅威を検知するNDR製品を、検知方式や国内サポート・費用の観点で比較検討したい場合は、以下の記事もご覧ください。
NDR(ネットワーク検知・対応)おすすめ15選を徹底比較|検知方式・国内サポート・費用で選ぶ
EDR(エンドポイント検知・対応)を導入しても、境界を越えて侵入した攻撃者が社内ネットワークを横移動する動きや、エージェントを入れられないサーバ・IoT・OT機器の不審な通信までは捉えきれません。警察庁の統計でも、VPNやリモートデスクトッ…
5. SmartConnect Network & Security クラウド型UTM(NTTスマートコネクト株式会社)

拠点のインターネット接続をデータセンターに集約し、UTM機能をクラウドから提供するサービスです。顧客拠点にUTM機器を設置せず、ファイアウォール・IPS・アンチウイルス・Webフィルタリングなどの出入口のセキュリティをまとめて適用します。通信の出入口を守る機能を、拠点ごとの機器購入ではなくクラウドで束ねる点が特徴です。
全面的なSASEにはまだ早いものの、複数拠点のセキュリティと運用をクラウド側へ寄せていきたい、という段階の企業に向く選択肢です。
6. Check Point Quantum(チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ株式会社)

ファイアウォールを中核に、IPS・アンチウイルス・アプリケーション制御などを1台に統合した次世代ファイアウォール(NGFW)の製品群です。データセンター・大企業向けから中小企業向けまでモデルが分かれており、通信の出入口を多層で守ります。SASEへ移行する場合も、拠点の出入口を担うファイアウォールは引き続き必要になることが多く、その役割を担う選択肢です。
オフィスや拠点の出入口の防御を、広く使われているファイアウォールで固めたい場合の選択肢です。
まとめ
SASEは、ネットワーク(SD-WAN)とセキュリティ(SWG・CASB・ZTNA・FWaaS)をクラウドで束ねる枠組みです。SD-WANはそのネットワーク側の構成要素、SSEはセキュリティ側(SASE=SSE+SD-WAN)、UTMは拠点の出入口を守る境界型の手段、ゼロトラストはSASEが実装しようとする考え方——という関係を押さえると、各方式の違いが整理できます。
自社がSASEに進むべきかは、拠点数・リモートワークの比率・クラウド利用・運用体制・費用の考え方で見極めます。出社中心で拠点が少なければUTMのままでも対応でき、リモートとクラウドが中心なら、既存資産を活かしながら段階的にSASE・SSEへ移していくのが現実的な進め方です。
SASEを一式で導入するのが難しい場合は、ゼロトラスト型のアクセス制御・多要素認証・ネットワーク監視・UTMといった機能を個別に手当てするところから始められます。
各機能を担うサービスは、資料で機能や料金を比べながら検討できます。自社の課題に合う一歩を見つけるための材料としてご活用ください。
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よくある質問(FAQ)
Q. SASE(サシー)とは何ですか?
A. SASEとは、ネットワーク機能(SD-WAN)とセキュリティ機能(SWG・CASB・ZTNA・FWaaS)を、クラウド上で1つのサービスとしてまとめて提供する枠組みです(読み方は「サシー」)。調査会社のGartnerが2019年に提唱した比較的新しい概念で、利用者や拠点がどこにあっても、同じ基盤を経由して安全にインターネットやクラウドへ接続できるようにすることを狙いとしています。
SASEという1つの製品があるわけではなく、複数の機能を組み合わせてクラウドから届ける考え方だと捉えると分かりやすくなります。
Q. SASEとSD-WANは同じものですか?
A. SASEとSD-WANは同じではなく、SD-WANはSASEを構成するネットワーク側の要素の一つです。SD-WANは複数の回線を使い分けて拠点間やクラウドへの通信を効率よく振り分ける技術で、それ自体はセキュリティ機能を持ちません。SASEはこのSD-WANに、SWG・CASB・ZTNA・FWaaSといったセキュリティ機能を組み合わせ、クラウドから一体で提供するものです。
そのため「SASEかSD-WANか」という二者択一ではなく、SD-WANを含めてセキュリティまで束ねたものがSASEだと整理できます。通信経路の最適化だけが課題であれば、SD-WAN単体の導入でも対応できます。
Q. SASEとSSEの違いは何ですか?
A. SSEはSASEからネットワーク機能(SD-WAN)を除いてセキュリティ側だけを取り出したもので、両者の関係は「SASE=SSE+SD-WAN」と表せます。SSE(Security Service Edge)はGartnerが2021年に提唱した概念で、SWG・CASB・ZTNA・FWaaSなどのセキュリティ機能をクラウドから提供します。
すでにSD-WANや既存のネットワーク構成が整っていて、セキュリティ側だけをクラウドで刷新したい場合はSSEから着手するという選択肢があり、ネットワークとセキュリティを一体で見直したい場合は両方を含むSASEが対象になります。
Q. SASEとVPNの違いは何ですか?
A. SASEはVPNに代わるZTNA(ゼロトラスト・ネットワーク・アクセス)を含み、利用者とアプリを1対1でつないで、認証したアプリにだけアクセスを許可します。従来のVPNは社外から社内ネットワークにつなぐと、その先の広い範囲にアクセスできてしまう点が課題でした。
SASEが備えるZTNAは、すべてのアクセスを無条件に信用せずその都度検証するゼロトラストの考え方にもとづき、許可したアプリ単位でのみ接続を認めます。社外接続をVPNからZTNAへ切り替えることは、SASEへ段階的に進む際の着手しやすい一歩になります。
Q. SASEとUTMはどちらが優れていますか?
A. SASEとUTMに一律の優劣はなく、自社の拠点数・働き方・クラウド利用の状況によって適した方式が変わります。拠点が1〜2か所で社員が基本的に出社し、業務システムも社内経由で使う環境では、拠点の出入口を守るUTMで必要な範囲をカバーできることが多くあります。
一方、リモートワークが日常的でMicrosoft 365などのクラウド利用が中心の環境では、本社のUTMを経由しない通信が増えるため、どこからでも同じセキュリティを適用できるSASEの利点が出やすくなります。働き方とシステム構成に照らして選ぶのが現実的です。
Q. 中小企業でもSASEは導入できますか?
A. SASEは中小企業でも導入でき、むしろ専任担当を置きにくい企業ほど、クラウドで運用を集約できる利点があります。SASEは利用者数などに応じたサブスクリプション型が中心で、拠点ごとに機器を買い足す必要がないため、小規模からでも始めやすい方式です。
ただしすべてを一度に入れ替える必要はなく、社外接続やクラウド利用の可視化など、自社で最も課題になっている領域から着手して範囲を広げていくと、投資と運用の負担を抑えやすくなります。
Q. UTMからSASEへの移行はどのように進めればよいですか?
A. UTMからSASEへは一気に全面移行するのではなく、両者を併用しながら段階的に移していくのが現実的です。たとえば、オフィスの社内ネットワークは既存のUTMで守りつつ、社外からのアクセスやクラウド利用の通信からSASE・SSEへ切り替える、といった形です。
SASEは複数の機能の集合体なので、社外接続をVPNからZTNAへ替えたい、クラウド利用を可視化したい、といった優先度の高い領域から始め、効果を確かめながら広げていくと無理がありません。NISTも、多くの組織は境界型とゼロトラストが混在した状態で運用されるとしています。
Q. SASE導入時に注意すべきポイントはありますか?
A. SASE導入時は、必要な機能が1つの基盤で揃うか・国内や利用地域に接続拠点(PoP)が十分あるか・管理を一元化できるか・日本語のサポート体制があるか・コストが利用規模に見合うか、の5つを確認することが大切です。SASE・SSE製品は海外ベンダーが中心で、得意領域や提供形態に差があります。
5つすべてを満たす製品を探すより、自社でまず解決したい課題に照らして優先順位を付けると、候補を絞り込みやすくなります。
Q. SASEの費用はどのくらいかかりますか?
A. SASEの費用は、利用者数などに応じたサブスクリプション型(月額・年額)が中心で、拠点ごとに機器を購入するUTMとは費用の考え方が異なります。機器を拠点ごとに買い足す必要がない反面、利用規模が大きいほど月額が積み上がる構造です。多くのSASE・SSE製品は料金が「要問い合わせ」で、必要な機能や利用者数に応じた見積もりになるため、導入検討時は複数製品の見積もりを取り寄せて比較するのが確実です。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















