社内でクラウドやSaaSの利用が広がるなかで、「CASB(キャスビー)」という言葉を資料や会議で見かけ、その意味を正確に押さえておきたいと考えていませんか。従業員がどのクラウドサービスをどう使っているか把握しきれない、クラウド上の機密データの持ち出しや誤共有が不安、といった課題の解決策として名前が挙がる一方で、SWGやSASEなど似た用語との違いが分かりにくいという声も少なくありません。
CASBは、クラウド・SaaSの利用を可視化し、制御するためのセキュリティの仕組みです。本記事では、その定義と読み方から、主な4つの機能、SWG・SASE・SSEとの違いと関係、導入方式の種類、選び方までを整理します。
定義・機能・類似用語との違いを一度に押さえ、自社にCASBが必要かどうかを判断する材料としてご活用ください。クラウド利用のセキュリティ対策の全体像を把握するための判断材料として整理しました。
目次
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CASB(キャスビー)とは
CASB(キャスビー)とは、クラウドサービスの利用者と提供者の間に立って、企業のクラウド・SaaS利用を可視化し、セキュリティポリシーを適用する仕組みです。正式名称は「Cloud Access Security Broker(クラウド・アクセス・セキュリティ・ブローカー)」で、その頭文字を取ってCASBと呼びます。読み方は英語では「キャズビー」に近く、日本語では「キャスビー」の表記が一般的です。
米国国立標準技術研究所(NIST)の文書でも、CASBは「クラウドサービスの利用者(CSC)と提供者(CSP)の間のネットワーク上に位置する」ソフトウェアと説明されています。利用者とクラウドの通信経路に立つ「仲介役(ブローカー)」として、誰がどのクラウドサービスをどう使っているかを把握し、必要に応じて制御するのがCASBの基本的な役割です。
one of the most important pieces of software is the cloud access security broker (CASB). It sits on the network between the cloud service customers (CSC) and the cloud service providers (CSP).
出典:NIST Special Publication 800-215「Guide to a Secure Enterprise Network Landscape」|米国国立標準技術研究所(2022年11月)p.8
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:NIST Special Publication 800-215「Guide to a Secure Enterprise Network Landscape」|米国国立標準技術研究所(https://nvlpubs.nist.gov/nistpubs/SpecialPublications/NIST.SP.800-215.pdf)

CASBが生まれた背景
CASBという概念は、クラウドサービスの業務利用が広がり始めた2012年ごろに、米国の調査会社ガートナー(Gartner)が提唱したとされています。個別のクラウドサービスごとに対策するのではなく、利用者とクラウドの間に立って横断的にセキュリティポリシーを適用する、という発想で登場した考え方です。
クラウド利用が前提となった現在では、CASBは後述するSASE・SSEといった、より広いセキュリティの枠組みのなかに組み込まれる形で位置づけられるようになっています。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:Cloud Security Alliance「What’s a CASB? Gartner Report Outlines Use Cases, Architecture, and Evaluation Criteria」(https://cloudsecurityalliance.org/articles/whats-a-casb-gartner-report-outlines-use-cases-architecture-and-evaluation-criteria)
なぜCASBが必要なのか
CASBが必要とされる最大の理由は、業務で使うクラウド・SaaSが急速に増え、従来の社内ネットワーク中心の防御では守りきれない領域が広がったことにあります。
メールやファイル共有、グループウェア、業務アプリケーションがクラウドへ移り、機密情報がクラウド上に保存されるようになりました。従業員は社内外のさまざまな場所から、会社が管理する端末だけでなく個人の端末でもクラウドにアクセスします。社内と社外の境界で通信を守る従来型の対策だけでは、こうしたクラウド利用の実態を把握し、適切に制御することが難しくなっています。
加えて、情報漏えいや不正利用を防ぐためのガバナンス・コンプライアンスへの要請も高まっています。どの部署が何のサービスを使い、どんなデータがやり取りされているかを把握できなければ、リスクの評価も監査への対応も難しくなります。CASBは、こうしたクラウド利用の「見えにくさ」を解消する手段として位置づけられます。
シャドーITと認可されたIT(Sanctioned IT)
CASBの必要性を理解するうえで欠かせないのが「シャドーIT」という考え方です。シャドーIT(Shadow IT)とは、IT管理部門が認可していないクラウドサービスやアプリケーションを、従業員が業務で使っている状態を指します。NISTは、ファイル共有やSNS、コラボレーション、Web会議などで未承認のSaaSが使われる例を挙げています。
これに対し、企業が利用を認めて管理下に置いているサービスを「認可されたIT(Sanctioned IT)」と呼びます。従来の境界型防御では、認可外のクラウドを社外や自宅から使われると、その存在すら把握できないことがあります。CASBは、まず「どんなクラウドが使われているか」を可視化してシャドーITを洗い出し、認可済みのサービスについてはデータ保護や利用制御を強める、という形で両者に対応します。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:NIST Special Publication 800-215「Guide to a Secure Enterprise Network Landscape」p.8|米国国立標準技術研究所(https://nvlpubs.nist.gov/nistpubs/SpecialPublications/NIST.SP.800-215.pdf)
CASBの主な4つの機能
続いて、CASBが備える機能を見ていきます。CASBの機能は、ガートナーが示した「4つの柱」として整理されるのが一般的です。可視化・データセキュリティ・脅威防御・コンプライアンスの4つで、まず全体像を表で押さえておきましょう。
| 機能の柱 | 可視化 | データセキュリティ(データ保護) | 脅威防御 | コンプライアンス |
|---|---|---|---|---|
| 目的 | 利用実態を把握する | 情報漏えいを防ぐ | 不正を検知・遮断する | 法令・社内規程を守る |
| 主な働き | 利用中のクラウド・シャドーITの検出、誰がどの端末でどのアプリを使っているかの把握 | 機密データの識別、暗号化、共有・持ち出しの制御(DLP的な役割) | マルウェアの検知、アカウント乗っ取りや異常な利用の検知(UEBAによる挙動分析) | 規制対象データの監視、統一ポリシーの適用、監査ログの取得 |
クラウド利用状況の可視化(シャドーIT対策)
可視化は、CASBの出発点となる機能です。社内で利用されているクラウドサービスを洗い出し、誰が・どの端末から・どのアプリにアクセスし、どんなデータをやり取りしているかを把握します。
NISTも、CASBは企業の利用者がアクセスするクラウドリソースを可視化し、シャドーITの発生を防ぐ、あるいは最小化すると説明しています。管理部門が把握していなかった未承認サービスを見つけ出すことで、リスク対策の土台をつくります。
データセキュリティ(データ保護・DLP)
データセキュリティは、クラウド上の機密情報を守る機能です。クレジットカード番号や個人情報などの機密データを識別し、暗号化や共有範囲の制限、ダウンロード・アップロードの制御によって、情報の持ち出しや誤共有を防ぎます。これはDLP(Data Loss Prevention、データ損失防止)と呼ばれる考え方に相当し、クラウド上に保存されたデータと、そこへ出入りするデータの双方を保護対象とします。
脅威防御(マルウェア・不正利用の検知)
脅威防御は、脅威対策とも呼ばれる機能で、クラウド経由の攻撃や不正利用を検知・遮断します。マルウェアの検知や、不審なファイル共有の制御に加えて、利用者のアクセス挙動を分析して異常を見つけるUEBA(User and Entity Behavior Analytics、ユーザーとエンティティの行動分析)によって、アカウントの乗っ取りや内部不正の兆候を捉えます。
通常とは異なるログインや大量のダウンロードといった動きから、被害が広がる前にリスクを察知します。
コンプライアンス(法令・ポリシー遵守)
コンプライアンスは、法令遵守を支える機能です。規制の対象となるデータがクラウド上にないかを監視し、利用してよいサービスと禁止するサービスのルールを統一的に適用します。あわせて、誰がいつ何にアクセスしたかの監査ログを残すことで、社内規程の遵守状況の確認や、外部監査への対応を容易にします。業種や取り扱うデータによって求められる基準は異なるため、自社の規程に合わせてポリシーを設計できる点が重要です。
出典・参考資料(2件)
- 参考資料:Cloud Security Alliance「What’s a CASB? Gartner Report Outlines Use Cases, Architecture, and Evaluation Criteria」(https://cloudsecurityalliance.org/articles/whats-a-casb-gartner-report-outlines-use-cases-architecture-and-evaluation-criteria)
- 参考資料:NIST Special Publication 800-215 p.8|米国国立標準技術研究所(https://nvlpubs.nist.gov/nistpubs/SpecialPublications/NIST.SP.800-215.pdf)
CASBとSWG・SASE・SSEの違いと関係
次に、CASBと混同されやすいSWG・SASE・SSEとの違いと関係を整理します。これらはいずれもクラウド時代のセキュリティに関わる用語ですが、守る範囲や位置づけが異なります。まず、4つの関係を表で俯瞰します。
| 用語 | CASB | SWG(Secure Web Gateway) | SASE(Secure Access Service Edge) | SSE(Security Service Edge) |
|---|---|---|---|---|
| 主な守備範囲 | クラウド・SaaSの利用の可視化と制御 | 利用者の外向きWeb通信のフィルタリングと脅威対策 | ネットワーク機能とセキュリティ機能を統合したクラウド型の枠組み | SASEのうちセキュリティ機能の部分(SWG・CASB・ZTNA等) |
| CASBとの関係 | — | 守備範囲が異なり、互いを補完する関係 | CASBはSASEを構成する要素の一つ | CASBはSSEの中核サービスの一つとされる |
CASBとSWGの違い
SWG(Secure Web Gateway、セキュアWebゲートウェイ)は、利用者の外向きのWeb通信をHTTP/HTTPSの検査によってフィルタリングし、Web経由の脅威から守る仕組みです。NISTは、SWGを「Webフィルタであり、利用者の外向き通信を保護し、Web由来の脅威から端末を守るもの」と説明しています。
これに対しCASBは、クラウド・SaaSの利用そのものを可視化し、データ保護やアクセス制御を行う点に主眼があります。SWGがWeb通信全般を対象とするのに対し、CASBはクラウドサービスの利用動態に焦点を当てるという違いがあり、両者はどちらか一方で足りるものではなく、補完し合う関係にあります。
CASBとSASE・SSEの違い
SASE(Secure Access Service Edge、サシー)は、ネットワーク機能とセキュリティ機能を統合し、クラウドサービスとして提供するアーキテクチャです。NISTによれば、ガートナーは2019年にこの用語を提唱しました。
SASEに含まれる代表的なセキュリティサービスとして、ファイアウォール、SWG、アンチマルウェア、IPS、そしてCASBやDLPが挙げられています。CASBは、SASEという大きな枠組みを構成する一要素と位置づけられます。
In 2019, Gartner coined the term “secure access service edge” (SASE) to denote an architecture that converges networking and security functions and delivers them at a global scale as a cloud service
出典:NIST Special Publication 800-215 p.24|米国国立標準技術研究所
SSE(Security Service Edge、セキュリティサービスエッジ)は、SASEのうちセキュリティ機能の部分を指す考え方です。ガートナーが2021年に示した区分とされ、SWG・CASB・ZTNA(Zero Trust Network Access)などをクラウドで統合して提供するものとされています。
整理すると、SASEという全体の枠組みのなかにセキュリティ部分であるSSEがあり、そのSSEを構成する中核サービスの一つがCASB、という入れ子の関係になります。

出典・参考資料(1件)
- 参考資料:NIST Special Publication 800-215 pp.10, 24-27|米国国立標準技術研究所(https://nvlpubs.nist.gov/nistpubs/SpecialPublications/NIST.SP.800-215.pdf)
SWG・SASE・SSEと並んで名前が挙がりやすい隣接領域には「SSPM」もあります。
CASBがクラウド・SaaSの利用そのものを可視化・制御するのに対し、SSPM(SaaS Security Posture Management)はSaaS側の設定状態(公開設定の誤りや過剰な権限など)を継続的に点検する仕組みで、守る対象が異なります。
CSPM(Cloud Security Posture Management、クラウド基盤の設定を点検する仕組み)やCASBとの違い、製品の選び方は、以下の記事で整理しています。
SSPMとは?SaaSの設定不備を見つける製品18選を比較|CSPM・CASBとの違いと選び方を解説
Microsoft 365 の共有設定、Salesforce の権限、Slack の外部連携アプリ。SaaS が増えるたびに管理画面がひとつ増え、設定が今どうなっているかを確かめるには、そのすべてを順番に開いていくしかありません。退職者のア…
CASBの3つの導入方式(API型/プロキシ型/ログ分析型)
CASBをどう組み込むかは、導入方式によって変わります。CASBは大きくAPI型・プロキシ型・ログ分析型の3つに分けられるのが一般的で、それぞれ仕組みと向き・不向きが異なります。まず違いを表で確認しましょう。
| 導入方式 | API型 | プロキシ型(インライン型) | ログ分析型 |
|---|---|---|---|
| 仕組み | クラウド事業者のAPIと連携し、保存済みデータを点検する | 通信経路上に立ち、やり取りをリアルタイムに監視・制御する | 既存のファイアウォールやWebプロキシのログを分析する |
| 向いている用途 | 認可済みSaaSのデータ保護、導入の手軽さ | アップロード前の遮断、リアルタイム制御 | シャドーITの可視化、導入影響の小ささ |
| 主な制約 | 事業者APIに依存。未承認サービス(シャドーIT)の検知やリアルタイムの遮断には制約がある | エージェントの配布やSSL通信の検査(SSL Inspection)が必要になることが多い | 可視化が中心で、通信の遮断・制御はできない |
API型(連携して可視化・制御)
API型は、クラウド事業者が公開しているAPIと直接連携する方式です。Microsoft 365やSalesforce、Google Workspaceなど、すでに利用を認めているサービスに接続し、保存されたデータのDLPスキャンやマルウェアスキャンを行います。
通信経路に機器を挟まないため導入の負荷が比較的小さい一方、事業者のAPIに依存するため、一般にリアルタイムの遮断や、そもそもAPI連携していない未承認サービスの検知には制約があります。
プロキシ型(インライン。フォワード/リバースでリアルタイム制御)
プロキシ型は、インライン型とも呼ばれ、利用者とクラウドの通信経路上に立って、やり取りをリアルタイムに監視・制御する方式です。端末にエージェントを入れて会社管理の端末を守る「フォワードプロキシ」と、クラウド側で中継してエージェントなしでも適用できる「リバースプロキシ」があります。BYOD(私物端末の業務利用)への対応では、後者が選ばれることもあります。
アップロード前の遮断などリアルタイムの制御ができる反面、エージェントの配布やSSL通信の検査が必要になる場合がある点に注意が必要です。
ログ分析型(既存ログからシャドーITを可視化)
ログ分析型は、既存のファイアウォールやWebプロキシが出力するログを取り込んで、クラウドの利用状況を可視化する方式です。新たに通信経路へ機器を挟まないため導入の影響が小さく、シャドーITの発見に向いています。ただし、できるのは可視化が中心で、通信そのものを遮断・制御する用途には使えません。まず利用実態を把握したい段階で選ばれることが多い方式です。
CASBのアーキテクチャは、もともとプロキシ型とAPI型の2つが基本とされ、ログ分析型はそこに業界で広く加えられるようになった整理です。実際の製品は、これらの方式を組み合わせて提供されることも少なくありません。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:Cloud Security Alliance「What’s a CASB? Gartner Report Outlines Use Cases, Architecture, and Evaluation Criteria」(https://cloudsecurityalliance.org/articles/whats-a-casb-gartner-report-outlines-use-cases-architecture-and-evaluation-criteria)
CASBの選び方と導入時の注意点
最後に、CASBを選ぶ際の観点と、導入で見落としがちな注意点を整理します。製品ごとに得意分野や対応方式が異なるため、自社の状況に当てはめて判断することが大切です。
CASBの選び方(チェックポイント)
選定では、次の観点を自社の状況に照らして確認すると、必要な方式や製品像が絞り込めます。
- 守る対象の端末は会社管理かBYODか:会社支給の端末が中心ならエージェントを使うフォワードプロキシ型が選びやすく、私物端末も対象にするならエージェント不要のリバースプロキシ型やAPI型が候補になります。
- リアルタイムの制御が必要か:アップロード前の遮断など即時の制御が要るならプロキシ型、まず利用実態の可視化から始めたいならログ分析型やAPI型が適します。
- 自社で運用するかアウトソースするか:専任の担当を置けるかどうかで、運用の手離れのよさや、ベンダー・SIerの支援の手厚さを見る必要があります。
これらは独立した条件ではなく、組み合わせて考えるものです。たとえば「BYODが多く、まずシャドーITを把握したい」のであればエージェント不要で可視化に強い方式から、「機密データを扱う認可済みSaaSを厳密に守りたい」のであればリアルタイム制御やデータ保護に強い方式から検討する、といった形で優先順位がつきます。
導入時の注意点
導入を成功させるには、製品選び以外にも押さえておきたい点があります。
- 先にセキュリティポリシーを定める:何を機密データとみなし、未承認サービスをどう扱うかの方針が曖昧なままでは、CASBを入れても十分に活かせません。運用ルールを先に固めることが前提になります。
- CASBが守るのはクラウドの範囲:CASBはクラウド・SaaSの利用を対象とする仕組みで、オンプレミスの社内システムやUSBメモリ経由の持ち出しなどは守備範囲の外です。端末対策など別の仕組みと組み合わせて考える必要があります。
- IPアドレスによる制御への影響:インライン型のCASBを通すと通信の送信元IPアドレスが変わることがあり、IPアドレスでアクセスを制限しているクラウドサービスでは影響が出る場合があります。既存の設定との整合を事前に確認しておくと安心です。
自社にCASBは必要か(導入を検討すべきケース)
ここまでを踏まえて、自社にCASBが必要かどうかの判断材料を整理します。次のような状況に当てはまる場合は、CASBの導入を検討する価値があります。
- 従業員がどのクラウド・SaaSを使っているかを把握できておらず、シャドーITが広がっている懸念がある
- クラウド上に保存した機密データの持ち出しや、誤った共有設定による漏えいが不安である
- テレワークやBYODが広がり、社外からのクラウド利用を制御する必要が出てきた
- 利用するSaaSが増え、サービスごとに個別対応するのが難しくなっている
一方で、CASBはあくまでクラウド利用を対象とする仕組みであり、すべてのセキュリティ対策を単独でまかなうものではありません。
Web通信全般を守るSWG、端末を守るEDR(Endpoint Detection and Response、端末での検知・対応)、データ保護を担うDLPなど、既存の対策と役割を分担し、補い合う形で組み合わせるのが現実的です。自社で何が手薄になっているかを確認したうえで、CASBがその空白を埋めるかどうかで判断するとよいでしょう。
CASBを含め、社内のセキュリティ対策を「何を守るか」というタイプ別に見渡したうえで、自社に足りていない領域から比較検討したい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。ファイアウォールやEDR、ログ管理など主要なソリューションのタイプと選び方を整理しています。
社内セキュリティソリューション比較|守る対象別のタイプ・代表サービスと選び方
社内のセキュリティを強化したいものの、端末の保護から不正アクセス対策、情報漏えいの防止まで課題が広く、何から手をつければよいか判断がつかないという声は少なくありません。テレワークやクラウド利用が定着し、社外に持ち出される端末やIDが増えたこ…
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クラウド利用の可視化・保護を担うサービス
ここでは、クラウド・SaaS利用の可視化や保護を担う代表的なサービスを紹介します。SASE・SSEに統合されたフル機能のCASB製品から、まず可視化・シャドーIT対策から着手したい場合に向くSaaS管理ツールまで、守備範囲の異なるサービスを並べました。下の比較表では、各サービスがどの機能をどこまでカバーするかを見比べられます。
| サービス名 | マネーフォワード Admina | Netskope | Skyhigh Security | Microsoft Defender for Cloud Apps | Forcepoint ONE CASB |
|---|---|---|---|---|---|
| 提供形態 | SaaS・IT資産管理 (可視化が中心) | SASE/SSE (CASB・SWG・ZTNA等を統合) | SSE (CASB・SWG・ZTNA等) | SaaSセキュリティ (CASB+SSPM+XDR連携) | SSE (Forcepoint ONEのCASB・SWG・ZTNA) |
| 導入・連携方式 | IdP連携・ブラウザ拡張 (エージェント・プロキシ不要) | プロキシ型・API型 | プロキシ型・API型 | API型・ログ分析型 | API型・プロキシ型・ログ分析型 |
| シャドーIT可視化 | ● | ● | ● | ● | ● |
| データ保護(DLP) | △外部公開ファイルの検知・共有停止 | ● | ● | ● | ● |
| 脅威防御 | × | ● | ● | ● | ● |
| 料金 | 50ID以下は無料 51ID以上は月額300円/ID | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
| 特徴 | 従業員軸でSaaSアカウントを可視化・棚卸し。入退社時のアカウント発行・停止に双方向対応するSaaSは200超 | 独自指標CCIで多数のクラウドアプリ・生成AIツールをリスク評価 | CASBにシャドーIT検出とSaaS設定監査を内包。ISO27001・SOC2 Type II・FedRAMP Highを取得 | Microsoft 365・Entra IDとネイティブ連携。SSPM・アプリガバナンスを統合し単体購入も可 | CASB・SWG・ZTNAを単一コンソールで運用。FedRAMP認証を取得 |
| 詳細情報 | オンライン相談を予約 | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
料金は、可視化から始められるツールでは無料枠や低コストのプランがある一方、SASE・SSEに統合されたCASB製品は個別見積もりが基本で、守る範囲や利用規模に応じて変わります。正確な費用は各サービスの資料請求や問い合わせで確認してください(本記事の料金は2026年10月時点の各社公式情報にもとづきます)。
1. マネーフォワード Admina(マネーフォワードi株式会社)

マネーフォワード Adminaは、従業員を軸にSaaSアカウントの可視化・棚卸しや、入退社時のアカウント発行・停止、シャドーIT検知、コスト管理までを一元化するSaaS・IT資産管理プラットフォームです。「情シス向け業務OS」を掲げ、どの従業員がどのSaaSを使っているかを把握できる点が特徴で、CASBの4機能のうち主に「可視化」の領域で、クラウド利用の棚卸しやシャドーIT対策を支えます。
アカウントの発行・削除に双方向で対応するSaaSは200種類を超え、退職者アカウントのアラート表示や自動削除など、ID管理のライフサイクルに沿った運用ができます。50ID以下であれば無償で全機能を利用でき(クレジットカード登録が必要)、まずはクラウド利用の実態把握から始めたい企業にも取り入れやすいサービスです。
2. Netskope(Netskope One)

Netskopeは、ゼロトラストを基盤に、SSEの機能であるCASB・SWG・ZTNAと、SD-WANなどのネットワーク機能を1つのプラットフォームに統合したSASE製品です。CASBを単体の製品としてではなく、クラウド時代のセキュリティ基盤の一部として位置づけているのが特徴といえます。
クラウドアプリの危険度を評価する独自の指標を備え、多数のクラウドアプリや生成AIツールを評価対象としています。利用中のクラウドサービスをリスクの観点から可視化し、ポリシーに基づいて制御したい企業に向いた製品です。
3. Skyhigh Security

McAfee Enterpriseのクラウドセキュリティ事業が2022年に独立して発足したのが、Skyhigh Securityです。SSEのポートフォリオとして、SWG・CASB・ZTNA・クラウドDLPなどを展開しています。CASBは「未承認クラウドサービスの検出(シャドーIT)」と「承認済みSaaSの監視・保護」の2つのモジュールで構成されています。
承認済みSaaSの設定を点検する機能をCASB製品内に備え、一部のサービスでは設定違反の自動是正にも対応するなど、検出から是正までを一体で扱える点が特徴です。ISO/IEC 27001やSOC 2 Type II、FedRAMP Highなど、第三者認証の取得状況を公式に公表しており、コンプライアンス面を重視する企業にとって検討しやすい製品といえます。
4. Microsoft Defender for Cloud Apps

Microsoft Defender for Cloud Appsは、SaaS利用に伴うセキュリティリスクを可視化・評価・保護する製品で、CASBの基本機能に加え、SaaSの設定不備を点検するSSPM機能や、XDR(Extended Detection and Response、複数領域を横断する検知・対応)と連携した高度な脅威保護までを備えます。
クラウドアプリの評価データベースを持ち、利用中のSaaSのリスクを把握できる点が強みです。
Microsoft 365やEntra IDといった同社の製品群とネイティブに連携し、XDR基盤上で横断的な脅威の相関分析ができます。単体での購入にも対応しているため、すでにMicrosoft製品を使っている企業はもちろん、そうでない企業でも導入の選択肢になります。
名称のよく似た「Microsoft Defender for Cloud」は、自社のクラウド基盤を守る別製品のため混同しないよう注意が必要です。
5. Forcepoint ONE CASB

米Forcepoint社の統合プラットフォーム「Forcepoint ONE」を構成するCASB・SWG・ZTNAの3本柱のうちの一つが、Forcepoint ONE CASBです。承認済みSaaSへのゼロトラストなアクセス制御と、DLP・マルウェア対策によるデータ保護を主な機能としています。
保存データを点検するAPI型と、リアルタイムに制御するインライン型(フォワード/リバースプロキシ)を組み合わせて提供し、ログベースでエージェント不要のシャドーIT可視化にも対応します。CASB・SWG・ZTNAを1つのコンソールで運用できるため、複数ベンダーの製品を統合して管理したい企業に向いています。米国連邦政府向けのFedRAMP認証を取得している点も特徴です。
まとめ
CASB(キャスビー)は、クラウドサービスの利用者と提供者の間に立ち、クラウド・SaaSの利用を可視化し、データ保護や脅威防御、コンプライアンスを一体で担う仕組みです。可視化・データセキュリティ・脅威防御・コンプライアンスの4つの機能で、シャドーITの把握からクラウド上の機密データ保護までをカバーします。
SWGがWeb通信を、EDRが端末を守るのに対し、CASBはクラウド利用を守る役割を担い、SASEやSSEといった枠組みの中核的な構成要素としても位置づけられます。
導入方式はAPI型・プロキシ型・ログ分析型があり、守る対象の端末やリアルタイム制御の要否によって適した方式が変わります。自社でクラウド利用の可視化や機密データの保護が手薄になっていないかを確認し、必要に応じて製品の比較・検討を進めましょう。気になるサービスがあれば、まずは資料を取り寄せて、自社の課題に合うかを確かめてみてください。
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よくあるご質問(FAQ)
Q. CASB(キャスビー)とは何ですか?
A. CASB(キャスビー)とは、クラウドサービスの利用者と提供者の間に立ち、企業のクラウド・SaaS利用を可視化して制御する仕組みです。
正式名称はCloud Access Security Broker(クラウド・アクセス・セキュリティ・ブローカー)で、2012年に米国の調査会社ガートナーが提唱した概念とされています。可視化・データセキュリティ・脅威防御・コンプライアンスの4つの機能を備え、シャドーITの把握からクラウド上の機密データ保護までを一体で担います。
Q. CASBの読み方は「キャスビー」と「キャズビー」のどちらですか?
A. CASBは、日本語では「キャスビー」と表記・発音されるのが一般的です。英語の発音は「キャズビー」に近いものの、国内の資料や記事では「キャスビー」が広く使われています。いずれもCloud Access Security Brokerの頭文字を取った同じ用語を指し、意味に違いはありません。
Q. CASBとDLPの違いは何ですか?
A. CASBとDLPの違いは、守る対象の広さにあります。DLPが情報漏えいの防止(データの持ち出し・誤共有の制御)に特化するのに対し、CASBはクラウド・SaaS利用全体の可視化・制御を担い、そのなかの一機能としてDLP的なデータ保護を含みます。
DLP(Data Loss Prevention、データ損失防止)は端末やメールなどクラウド以外の経路のデータも対象にできる一方、CASBはクラウド上のデータと、そこへ出入りするデータの保護に主眼を置きます。両者は競合するものではなく、役割を分担して組み合わせる関係です。
Q. CASBとEDRの違いは何ですか?
A. CASBとEDRの違いは、CASBがクラウド・SaaSの利用を守るのに対し、EDRはパソコンやサーバーなどの端末を守る点です。EDR(Endpoint Detection and Response)は端末上の不審な挙動を検知して対応する仕組みで、守備範囲が端末にあります。
クラウド利用はCASB、端末はEDR、外向きのWeb通信全般はSWGというように守る領域がそれぞれ異なるため、どれか一つで足りるものではなく、自社で手薄になっている領域を補い合う形で組み合わせます。
Q. CASBは無料で使えますか?
A. CASBは、本格的な導入では有料の製品が中心ですが、クラウド利用の可視化から始められる無償の枠を持つサービスもあります。
たとえば、SaaS利用の可視化・棚卸しから始められるツールには、一定の利用規模まで無償で使えるものもあります。まずはシャドーITの把握など可視化から着手し、必要に応じてデータ保護やリアルタイム制御まで対象を広げていくと、費用と効果のバランスを取りやすくなります。
Q. CASBは単体製品とSASE・SSEに統合された製品のどちらを選ぶべきですか?
A. CASBを単体製品と統合製品のどちらで選ぶかは、既存のセキュリティ環境と、守りたい範囲の広さに応じて判断します。
クラウド利用の可視化やデータ保護だけを補いたい場合は単体のCASBで十分なことが多く、SWGやZTNAなど複数の対策をまとめて見直したい場合は、CASBを含むSSE・SASEとして統合的に導入すると運用を一元化できます。近年はCASBを単体ではなくSASE・SSEの構成要素として提供する製品が増えているため、将来的な統合も見据えて検討するとよいでしょう。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















