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ゼロトラストとVPNの違いとは?比較表でわかる仕組み・脱VPNの判断基準と移行の進め方

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社内のリモートアクセスをVPN(仮想専用線)で運用していると、「VPN機器が狙われてランサムウェアに感染した」というニュースを目にするたびに、自社は大丈夫かという不安がよぎります。社内でも「そろそろゼロトラストに切り替えるべきでは」という声が出始め、まず知りたいのは「ゼロトラストはVPNと何がどう違うのか」という一点ではないでしょうか。

ゼロトラストとVPNは、通信を守るという目的こそ同じですが、「誰を・どこまで信頼するか」という考え方が根本から異なります。この違いを押さえないまま製品を比べても、自社に一本化すべきか、VPNと併用すべきかの判断にはたどり着けません。

本記事では、ゼロトラスト(ZTNA)とVPNの違いを比較表で整理したうえで、VPNが狙われる理由を公的機関(警察庁・IPA)のデータで確認し、脱VPNの判断基準・移行手順・製品の選び方までを順にまとめました。情報システム部門やセキュリティ担当者が、自社の方針を仮決めし、経営層に説明するための材料としてご活用ください。

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ゼロトラスト(ZTNA)とVPNの違いを比較

はじめに、両者の違いを仕組みから押さえ、観点ごとに並べた早見表で全体像をつかみます。VPNとゼロトラストは「信頼の置き方」が逆であり、そこから速度や拡張性、運用負荷の差が生まれます。

VPNとゼロトラスト(ZTNA)の仕組み:境界型と常時検証

VPNは、社外から社内ネットワークへ暗号化したトンネルを張り、入口で認証する「境界型」の仕組みです。社内を安全地帯とみなすため、一度認証を通ったユーザーや端末は、その先の社内リソースへ比較的自由にアクセスできます。守りの要はVPN機器そのものに集中します。

ゼロトラストは「何も信頼しない」を前提に、アクセスのたびに検証する考え方です。米国国立標準技術研究所(NIST)の定義では、ネットワーク上の所在だけで信頼を与えず、リソースへのアクセスはセッションごとに認可し、あるリソースへの認可が別のリソースへ自動的に引き継がれないとされています。

これを社内アクセスの制御として実装したものがZTNA(ゼロトラスト・ネットワーク・アクセス)で、ユーザー・端末・状況をアプリ単位で毎回確認してから通します。

出典・参考資料(1件)

このように、VPNは「入口を通れば中は信頼する」、ゼロトラストは「中に入っても一つひとつ確認する」という違いです。この前提の差が、次の早見表のように複数の観点に波及します。

VPNとゼロトラスト(ZTNA)の仕組みの対比図。VPNは境界型で、社外から社内へ暗号トンネルを張り入口で認証し、一度通れば社内リソースへ比較的自由にアクセスできる。ゼロトラスト/ZTNAは常時検証型で、アクセスのたびにユーザー・端末・状況をアプリ単位で検証し、許可されたリソースにだけ通す。

観点別の違い早見表

セキュリティの考え方の違いが、アクセス範囲・速度・拡張性・運用にどう表れるかを観点ごとに整理しました。自社がどちらの特性を重視するかを確かめる手がかりになります。

観点VPN(境界型)ゼロトラスト/ZTNA(常時検証)
信頼の前提境界の内側は信頼する所在では信頼せず、アクセスごとに検証する
アクセス範囲認証を通ると社内ネットワーク全体に到達しやすい許可されたアプリ・リソース単位に限定される
インターネットへの露出VPN機器を公開するため攻撃対象になりやすい社内リソースを直接公開しない構成を取りやすい
通信経路・速度拠点のVPN装置に通信が集中し遅延が起きやすいクラウド経由で最適な経路を取りやすい
拡張性利用者増加時に機器の増強・ライセンス追加が必要クラウド型は利用者の増減に追従しやすい
導入・運用既存資産を活かしやすいが機器の保守・更新が続く初期の設計・ポリシー整備に手間がかかる
コスト感機器・保守が中心。小規模なら抑えやすい月額利用が中心。規模拡大に比例しやすい

どちらが優れているかではなく、守る対象や働き方に応じて適性が分かれます。VPNが抱える課題を具体的に見たうえで、自社に当てはめて判断していきます。

VPNの課題とリスク:なぜVPN機器が狙われるのか

ここからは、脱VPNの動機となるVPNの弱点を、症状とその理由を結びつけて確認します。警察庁やIPAのデータと、実際の被害事例をもとに見ていきます。

VPN機器の脆弱性がランサムウェアの侵入経路になる

VPNが問題視される最大の理由は、ランサムウェアの侵入経路として最も多く悪用されている点にあります。警察庁の調査では、ランサムウェア被害企業・団体への感染経路アンケート(有効回答100件)のうち、VPN機器を利用されて侵入された事例が55件(55.0%)で最多でした。次いでリモートデスクトップが31件(31.0%)で、VPNとリモートデスクトップを合わせると感染経路の8割以上を占めています。

出典・参考資料(2件)

なぜVPN機器が狙われるのでしょうか。理由はシンプルで、社外からの接続を受けるためにVPN機器をインターネットに公開しているからです。公開された機器に既知の脆弱性が残っていたり、ID・パスワードが単純だったりすると、そこが侵入の入口になります。境界さえ破られれば社内全体に手が届くという境界型の性質が、被害を広げる一因にもなります。

情報処理推進機構(IPA)の「情報セキュリティ10大脅威 2026」でも、組織向けの脅威で「ランサム攻撃による被害」が4年連続の1位、「リモートワーク等の環境や仕組みを狙った攻撃」が第8位に挙げられています。リモートアクセスの守りは、いまの脅威動向の中心に位置づけられています。

出典・参考資料(1件)

速度低下・拡張性・機器管理の課題

セキュリティ以外にも、VPNには運用面の課題があります。リモートワークやクラウド利用が増えると通信が拠点のVPN装置に集中し、処理が追いつかず速度が落ちます。クラウドサービス宛ての通信まで一度社内を経由させると、経路が遠回りになり遅延が目立ちます。

利用者の増加に合わせて機器の増強やライセンス追加が必要になる点も、拡張性の制約です。拠点が複数ある企業では、各拠点のVPN装置ごとにファームウェアの更新や設定の保守が発生し、情報システム部門の負荷として積み上がります。脆弱性への対応が遅れれば、それがそのまま侵入リスクに直結します。

実際に起きたVPNの脆弱性を悪用した攻撃事例

VPN機器を起点とする侵害は、公的機関や被害組織の公表資料でも確認できます。警察庁の資料によると、令和6年7月、国内の宇宙航空分野の研究開発機関で、VPN装置の脆弱性を起点とする不正アクセスが発生し、端末・サーバーやクラウド上で管理していた情報の一部が漏洩したと公表されています。

委託先を経由した侵入も起きています。やや前の事例ですが、委託先が設置した機器が入口になる典型として参考になります。

大阪急性期・総合医療センターが公開した調査報告書では、2022年10月31日に発生したランサムウェア被害について、給食事業者の給食システムに、別の委託先(情報基盤構築事業者)がリモート保守用に設置したVPN機器の脆弱性を突かれ、漏洩していたID・パスワードも使われて侵入された可能性が示されています。

同センターは報告書で、VPN機器の管理やリモート接続の運用が適切であれば被害を免れた可能性があるとしています。

出典・参考資料(2件)

いずれの事例も、自社の機器だけでなく委託先が設置した機器まで含めて、インターネットに露出したVPNが入口になり得ることを示しています。

脱VPNが進む背景

脱VPNという言葉が広がる背景には、働き方と技術の変化があります。リモートワークの普及で、守るべき場所が社内オフィスだけでなくなり、境界を引くこと自体が難しくなりました。業務のクラウド移行が進むと、社内を経由させる前提が通信の遠回りを生みます。

こうして「社内か社外か」で守る境界型モデルの前提が崩れ、所在ではなくアクセスのたびに確かめるゼロトラストの考え方が広がっています。ただし、これはVPNを直ちに全廃すべきという話ではありません。次章で、自社にとっての判断軸を整理します。

VPNをやめてゼロトラストに移行すべきか:一本化・併用・使い分けの判断フレーム

ここからは、「自社は替えるべきか」を判断するための軸を整理します。答えは必ずしも二者択一ではなく、一本化・併用・使い分けのいずれが自社に合うかを、守る対象や規模から考えるのが現実的です。

ゼロトラスト(ZTNA)に移行するメリット

ZTNAへ移行する最大の利点は、攻撃にさらされる面を小さくできることです。社内リソースを直接インターネットに公開せず、許可されたアプリ単位でのみ通信を通すため、境界を一度破られて社内全体に被害が広がる展開を抑えられます。

認証・認可をユーザーや端末、アクセス状況に応じてきめ細かく制御できる点も強みです。クラウド型であれば利用者の増減に追従しやすく、拠点のVPN装置に通信が集中する遅延も避けやすくなります。リモートワークやクラウド中心の働き方とは相性が良い選択肢です。

ゼロトラスト(ZTNA)のデメリット・注意点

一方で、ゼロトラストは万能ではありません。アクセスのたびに検証する仕組みは、設計や運用を誤ると認証のたびに体感的な待ちが生じることがあります。誰がどのリソースにアクセスしてよいかというポリシーを整備する必要があり、初期の設計には手間と専門知識がかかります。

製品の利用料は利用者数に応じて増えやすく、規模が大きいほどコストが積み上がります。工場の制御システムや、クラウド化しにくい基幹システムなど、すべてをZTNAに一本化しきれない領域が残ることも現実的な制約です。導入効果を見込める範囲から段階的に進める前提で検討するのが無難です。

VPNが向くケース/ZTNAが向くケース

どちらを選ぶかは、守る対象と働き方で分かれます。拠点間を閉じた回線でつなぐ用途や、クラウド化が難しい基幹システム・制御系へのアクセス、利用者が限られ既存のVPN資産を活かしたい小規模な環境では、VPNが引き続き現実的です。

一方、複数のSaaSを日常的に使う、リモートワークの比率が高い、委託先や取引先など社外からの接続が多い環境では、アクセスを個別に制御できるZTNAの適性が高まります。自社の利用形態がどちらに近いかを起点に、一本化するか併用するかを見極めます。

閉域網・クラウドVPNとの併用という選択肢

脱VPNは、必ずしもVPNをゼロにすることを意味しません。基幹システムや制御系(OT)は閉域網で守りつつ、クラウドやSaaSへのアクセスはZTNAに任せるというレイヤー別の併用も有力です。守る対象ごとに適した方式を組み合わせる発想です。

また、拠点の機器に依存する従来型VPNを、クラウド経由で提供されるVPNに見直すだけでも、速度や運用の課題が和らぐ場合があります。一足飛びに全面刷新を狙うより、守る対象を分けて優先度の高いところから替えるほうが、自社の実態に合わせやすくなります。

脱VPNの進め方:移行の実務手順(棚卸し→優先順位づけ→段階移行)

方針が固まったら、移行をどの順で進めるかが次の論点です。一度にすべてを切り替えるのは現実的ではないため、棚卸し・優先順位づけ・段階移行の流れで計画に落とし込みます。

  1. 棚卸し:誰が・どの端末から・どの社内リソースへアクセスしているかを、インターネットに公開しているVPN機器やリモート保守用の接続、委託先からの接続まで含めて洗い出します。守るべき対象とアクセス経路が見えなければ、置き換えの計画は立てられません。
  2. 優先順位づけ:インターネットに露出した公開機器や管理者権限での接続、委託先からの保守経路など、侵入されたときの影響が大きいところから着手します。通信の集中が課題になっているアクセスも、早めの見直し候補です。
  3. 段階移行:優先度の高い一部のアプリ・ユーザーからZTNAを試験導入し、認証やアクセス制御が業務に支障なく機能するかを確かめてから対象を広げます。移行期間中はVPNと併用し、問題がないことを確認しながら切り替えると、業務を止めずに済みます。

全体像の中でZTNAやその周辺技術がどう位置づけられるかは、次章の用語整理と合わせて押さえると計画が立てやすくなります。

ゼロトラスト(ZTNA)/認証基盤サービスの比較と選び方

最後に、製品選びの観点を整理します。まず関連する用語の関係を押さえ、次に比較の軸を確認したうえで、代表的なサービスを横並びで見ていきます。

ゼロトラスト/ZTNA/SASE/SWG/CASB/閉域網の関係

製品を調べ始めると、似た略語が次々に出てきて混乱しがちです。それぞれの位置づけを整理しておくと、比較すべき対象を取り違えずに済みます。

  • ゼロトラスト:所在で信頼せず、アクセスごとに検証するという考え方(概念)です。
  • ZTNA(ゼロトラスト・ネットワーク・アクセス):ゼロトラストの考え方を社内アプリへのアクセス制御として実装したものです。VPNの置き換え候補になります。
  • SASE(サッシー):ZTNAやSWG、CASBといった複数の機能を、クラウドからまとめて提供する枠組みです。
  • SWG(セキュアWebゲートウェイ):社員のWebアクセスを検査し、危険な通信を止める機能です。
  • CASB(キャスビー):SaaSの利用状況を可視化し、ポリシーに沿って制御する機能です。
  • 閉域網(IP-VPN・専用線):インターネットを通さず拠点間を閉じた回線でつなぐ方式で、基幹系の保護に向きます。
ゼロトラスト関連用語の関係図。概念であるゼロトラスト(所在で信頼せず、アクセスごとに検証する考え方)を土台に、クラウドからZTNA・SWG・CASBをまとめて提供する枠組みがSASE。ZTNAは社内アプリのアクセス制御としての実装でVPNの置き換え候補、SWGは社員のWebアクセスを検査し危険な通信を止める機能、CASBはSaaSの利用状況を可視化し制御する機能。認証・アクセス制御の土台としてID基盤(IDaaS)があり、閉域網(IP-VPN・専用線)はインターネットを通さず拠点間を接続する別レイヤーで基幹系の保護に向く。

VPNの置き換えを検討するなら中心になるのはZTNAで、SWGやCASBまで含めて一体で導入したい場合にSASEが選択肢になります。認証やアクセスの土台を担うID基盤(IDaaS)と組み合わせる構成も一般的です。

ゼロトラスト製品を選ぶときの比較軸

製品ごとに守る領域や提供形態が異なるため、次の観点で比較すると自社に合うものを絞り込めます。

  • 守る対象:認証・アクセス制御を担うのか、端末のデータ保護まで含むのかで、必要な製品が変わります。自社の課題が「誰にどこまで通すか」なのか「端末に情報を残さないこと」なのかを先に決めます。
  • 認証基盤との連携:既存のID管理やシングルサインオン、多要素認証とどこまで連携できるかを確認します。認証の土台がそろっていないと、アクセス制御だけ導入しても運用が煩雑になります。
  • 提供形態:クラウド型かオンプレミス型か、既存ネットワークにどう組み込むかで、導入の手間と拡張性が変わります。
  • 国内サポート:導入設計やポリシー整備に専門知識が要るため、日本語での導入支援・運用サポートの手厚さは実運用の成否を左右します。
  • 料金体系:利用者数に応じた課金が中心のため、将来の利用規模まで見込んで総額を試算します。初期費用と月額の内訳も確認します。

以下の比較表は、脱VPN・ゼロトラストの構成に必要なサービスを、役割の異なる複数のレイヤーを横断して俯瞰できるように並べたものです。VPNの置き換えそのものを担うZTNA/SASE製品に加え、認証・アクセス制御を担うID基盤、端末のデータ保護を、守る対象ごとに見比べられます。

役割が異なるため、同じ土俵での優劣比較ではなく「どのレイヤーで何を使うか」を見るための表です。ZTNA/SASE製品を軸に、ID基盤や端末保護を組み合わせて脱VPNの構成を固める、という読み方をすると選びやすくなります。

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サービス名CloudGate UNOShadow DesktopZscaler Private Access(ZPA)NetskopePrisma Access(Palo Alto Networks)IIJ Safous
提供会社株式会社インターナショナルシステムリサーチ(国産)アップデータ株式会社(国産)Zscaler, Inc.(海外)Netskope, Inc.(海外)パロアルトネットワークス(海外)株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ、国産)
主な役割(守る対象)ID基盤(IDaaS)/認証・アクセス制御。SSO・多要素認証で「誰が・どの端末で・どこから」を制御端末のデータ保護(データレスクライアント)。PCにデータを残さず紛失・盗難時の漏洩を防ぐZTNA。社内アプリをインターネットに公開せず、アプリ単位でアクセスを制御するVPN代替SASE/SSE。SWG・CASB・ZTNAを統合し、Web・SaaS・社内アプリのアクセスを制御SASE。ZTNA・SWG・CASBなどをクラウドから統合提供ゼロトラストアクセス(ZTNA/SASE系)。社内アプリ・システムへの安全なリモートアクセスを提供
提供形態クラウド型(IDaaS)既存Windows PCにインストール(データはクラウド/オンプレのストレージへ退避)クラウド型(SASE/SSEプラットフォームの一部)クラウド型クラウド型クラウド型(SaaS)
認証基盤・ID連携ID基盤そのもの。SAML/OIDC対応、Active Directory/Entra ID連携(Enterprise Plus以上)Active Directory/Microsoft Entra ID連携(ユーザー・グループ管理)外部IdP(SAML/OIDC)と連携外部IdP(SAML/OIDC)と連携外部IdP(SAML/OIDC)と連携多要素認証・外部IdPと連携
国内サポート国産・自社開発。導入前から導入後まで日本語でサポート国産(アップデータ)。日本語での電話・メール・サポートサイト対応海外ベンダー。日本法人・国内パートナーが導入支援海外ベンダー。日本法人・国内パートナーが導入支援海外ベンダー。日本法人・国内パートナーが導入支援国産(IIJ)。日本語サポート
料金の目安月額400〜600円/ユーザー(税抜)+初期費用別途。30日間の無料トライアルあり月額950円〜/ライセンス(税抜、2024年10月版価格表)。最小5ライセンス・30日間の無料トライアルあり要問い合わせ要問い合わせ要問い合わせ要問い合わせ
詳細情報公式資料を見るオンライン相談を予約公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト

VPNの置き換えそのものを担うのはZTNA/SASE製品です。社内アプリをインターネットに公開せずアプリ単位でアクセスを制御するのがZTNA(Zscaler Private Accessなど)で、そこにWeb・SaaSの制御まで含めてクラウドから統合提供するのがSASE(Netskope、Prisma Access、国産のIIJ Safousなど)です。

これらZTNA/SASE製品は、ユーザーの認証を外部のID基盤(IdP)に任せる構成が一般的で、料金は利用者数に応じた見積もりとなるため各社とも要問い合わせです。導入時は、認証・アクセス制御の土台となるID基盤や、端末にデータを残さないデータ保護と組み合わせて脱VPNの構成を固めます。

脱VPN・ゼロトラスト移行の土台となるサービス

ここでは、ゼロトラストの構成を固める土台として、認証・アクセス制御を担うID基盤と、端末のデータ保護を担うデータレスクライアントを紹介します。VPNの置き換えを担うZTNA/SASE製品と組み合わせて使うもので、いずれもVPNの「入口を通れば中は信頼する」という前提を見直すうえで固めておきたい領域です。

1. CloudGate UNO(株式会社インターナショナルシステムリサーチ)

CloudGate UNOのウェブサイト

CloudGate UNOは、株式会社インターナショナルシステムリサーチが自社開発する国産のID基盤(IDaaS)です。シングルサインオン・多要素認証・パスキー(FIDO2)によるパスワードレス認証・アクセス制限・ID管理を一つにまとめ、公式では「ゼロトラスト時代のSSO・アクセス制限・認証強化・ID管理プラットフォーム」と位置づけています。

特徴は、端末・場所・時間の3つの軸でアクセスを細かく制御できる点にあります。私用端末からのアクセスを禁じる、特定の拠点に限る、時間帯で制限するといった設定ができ、「認証を通れば社内全体」というVPN型の前提を、誰が・どの端末で・どこから・いつ使うかを条件にした制御へ置き換えられます。

採用しているパスキーのパスワードレス認証はフィッシングに強く、SMSやワンタイムパスワードを突破する攻撃が増える中での守りを固めやすくなります。

国産の自社開発で、導入前から導入後まで日本語で支援を受けられる体制も、ポリシー整備に手間がかかるゼロトラスト導入では心強い点です。公式サイトでは導入実績として1,400社以上(2026年11月時点)を掲げています。既存のクラウド利用が広がり、SaaSごとの認証管理に限界を感じている企業に向く選択肢です。

開発・提供元である株式会社インターナショナルシステムリサーチは、パスワードレス認証への切り替えが運用面にもたらす変化について、次のように述べています。

平澤氏
株式会社インターナショナルシステムリサーチ 営業本部マーケティング部
平澤氏
独自インタビューより

導入と同時にパスワードレス認証に切り替えた企業では、IT部門の業務の約20%を占めていたパスワード関連のヘルプデスク業務が「0%」になったという事例があります。また、他社サービスからの乗り換え事例もございます。通常、設定の移行には時間がかかるものですが、当社のサポートによりわずか1週間で完了させたケースもあります。

2. Shadow Desktop(アップデータ株式会社)

Shadow Desktop(シャドウデスクトップ)のウェブサイト

アップデータ株式会社が提供するShadow Desktopは、PC本体にデータを残さない「データレスクライアント」です。PC内のユーザーデータ(デスクトップ・ドキュメント・ピクチャ・ダウンロード)をクラウドなどの外部ストレージへ自動的にアップロードし、ローカルのデータは削除することで、端末にデータが残らない状態を作ります。

ゼロトラストでは「端末を信頼しない」という発想が核にあり、万一の紛失・盗難に備えて端末にデータを残さない運用が重要になります。Shadow Desktopでは、開いたファイルはローカルの専用領域に一時的にキャッシュされます。このキャッシュは暗号化(AES256bit)され、ファイル名も変換されるため、HDDやSSDを取り出しても内容を読み取れない設計とされています。

管理コンソールからは、PC紛失時に該当端末の利用を停止することもできます。

仮想デスクトップ(VDI)と違い、OSやアプリを仮想化せず通常のPCと同じ操作感で使える点も導入しやすさにつながります。会社支給のPCに加え、個人所有のPC(BYOD)でも仕事用のデータだけを分離して扱えるため、リモートワークで持ち出すPCの情報漏洩対策として組み合わせやすい選択肢です。

ここで紹介した認証基盤やデータ保護は、社内で守るべき領域の一部です。脱VPNと並行して、メール・端末・ネットワーク・ログなど守る対象ごとにどのタイプの製品があり、どう選べばよいかを全体像から見渡したい場合は、次の比較記事が出発点になります。

まとめ

VPNとゼロトラストの違いは、「境界の内側を信頼する」か「アクセスのたびに検証する」かという前提の差にあり、そこからアクセス範囲・速度・拡張性・運用の違いが生まれます。VPN機器はランサムウェアの侵入経路として最も多く悪用されており、公開された機器の脆弱性や弱い認証が狙われている実態は、公的機関(警察庁・IPA)のデータや被害事例からも確認できます。

一方で、脱VPNは全廃を迫るものではありません。守る対象と働き方に応じて、一本化・併用・使い分けのどれが自社に合うかを見極め、リスクの高いところから棚卸し・優先順位づけ・段階移行の順で進めるのが現実的です。認証・アクセス制御や端末のデータ保護を担うサービスを比較し、自社の課題に合うものから検討してみてください。

よくある質問(FAQ)

Q. ゼロトラスト(ZTNA)とは何ですか?

ゼロトラスト(ZTNA)とは、所在では信頼せず、社内リソースへのアクセスのたびにユーザー・端末・状況を検証する「ゼロトラスト」の考え方を、社内アプリへのアクセス制御として実装した仕組みです。米国国立標準技術研究所(NIST)はゼロトラストを、ネットワーク上の所在だけで信頼を与えず、リソースへのアクセスをセッションごとに認可する考え方と定義しています。

これをVPNの代わりにリモートアクセスへ適用したのがZTNAで、アプリ単位で毎回許可を判断するため、VPNの置き換え候補になります。

Q. VPNとゼロトラスト(ZTNA)は併用できますか?

VPNとゼロトラスト(ZTNA)は併用できます。脱VPNはVPNの全廃を迫るものではなく、守る対象ごとに適した方式を組み合わせるのが現実的です。基幹システムや制御系(OT)は閉域網やVPNで守り、クラウド・SaaSへのアクセスはZTNAに任せるといったレイヤー別の使い分けができます。移行期間中もVPNと併用し、業務に支障がないことを確認しながら段階的に切り替える進め方が無理がありません。

Q. ゼロトラスト(ZTNA)に移行すれば、ランサムウェア被害を完全に防げますか?

ゼロトラスト(ZTNA)へ移行しても、ランサムウェア被害を完全にゼロにできるわけではありません。ただしVPN機器のようにインターネットへ公開する入口を減らし、万一侵入されても社内全体へ被害が広がる展開を抑えられるため、最も多い侵入経路(警察庁調査では感染経路の55.0%でVPN機器が最多)への備えとしては有効です。

多要素認証や端末のデータ保護など、ほかの対策と組み合わせて守りを重ねることが前提になります。

Q. 中小企業でもゼロトラスト(ZTNA)へ移行する必要はありますか?

ゼロトラスト(ZTNA)への移行の要否は企業規模だけでは決まらず、リモートワークやSaaSの利用が多い企業ほど、規模にかかわらず検討価値が高まります。逆に、利用者が限られ既存のVPN資産を活かしたい小規模な環境では、VPNの継続も現実的な選択です。

クラウド型のZTNAは利用者の増減に追従しやすく小規模から始めやすいため、まずはインターネットに露出した公開機器などリスクの高いアクセスから優先的に見直すとよいでしょう。

Q. ゼロトラスト(ZTNA)とSASEは何が違いますか?

ゼロトラスト(ZTNA)とSASEの違いは、ZTNAが社内アプリへのアクセス制御を担う機能であるのに対し、SASEはそのZTNAにSWG(セキュアWebゲートウェイ)やCASBなどの機能を加えて、クラウドからまとめて提供する枠組みである点にあります。

VPNの置き換えが主目的ならZTNAが中心になり、WebアクセスやSaaSの制御まで一体で導入したい場合にSASEが選択肢になります。認証・アクセスの土台を担うID基盤(IDaaS)と組み合わせる構成も一般的です。

Q. VPNからゼロトラスト(ZTNA)へはどのように移行を進めればよいですか?

VPNからゼロトラスト(ZTNA)への移行は、「棚卸し→優先順位づけ→段階移行」の順で進めるのが現実的です。まず誰が・どの端末から・どの社内リソースへアクセスしているかを、委託先やリモート保守用の接続まで含めて洗い出します。

次に、インターネットに露出した公開機器や管理者権限の接続など、侵入されたときの影響が大きいところから優先順位をつけます。そのうえで、優先度の高い一部のユーザー・アプリでZTNAを試験導入し、VPNと併用しながら支障がないことを確認して対象を広げると、業務を止めずに切り替えられます。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
記事内でご紹介している製品・サービスは監修者が選定したものではなく、編集部が独自に選定したものです。
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

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