帳簿を会計ソフトで電子保存していても、一定の上乗せ要件を満たした「優良な電子帳簿」として扱われると、税務上の特典を受けられます。検索すると「青色申告特別控除が増える」「過少申告加算税が軽くなる」といった説明が並びますが、金額や対象となる帳簿、必要な手続きは特典ごとに異なり、2026年分(令和8年分)までと2027年分(令和9年分)以後で取り扱いが変わります。
この記事では、優良な電子帳簿とは何か、普通の電子帳簿との違いから、受けられる特典の具体的な金額、満たすべき要件、そして自社が対応すべきかの判断と手順までを整理します。
要件を満たすには、訂正・削除の履歴を残せる会計ソフトを使うのが現実的な出発点です。記事後半では、主要なクラウド会計ソフトが優良な電子帳簿の要件にどこまで対応しているかも整理します。
目次
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優良な電子帳簿とは?「その他の電子帳簿」との違い
優良な電子帳簿とは、会計ソフトなどで作成・保存する電子帳簿のうち、訂正・削除の履歴が残る、帳簿どうしの関連性をたどれる、必要な記録を検索できる、といった上乗せの要件を満たした帳簿のことです。
電子帳簿保存法では、法律で備付け・保存が義務づけられた帳簿を電子データのまま保存する「電子帳簿等保存」が認められていますが、優良な電子帳簿は、その中でもデータの信頼性が高いものとして位置づけられる上位区分にあたります。
この上乗せ要件は、電子帳簿保存法施行規則第5条第5項(2027年=令和9年1月1日からは第5条第4項に繰り下げ)で定められています。要件を満たさない通常の電子帳簿(その他の電子帳簿)でも電子保存自体は認められますが、後述する税務上の特典は受けられません。両者の違いを整理すると次のとおりです。
| その他の電子帳簿(通常の電子帳簿等保存) | 優良な電子帳簿 | |
|---|---|---|
| 満たす要件 | システム関係書類の備付け・画面や書面にすぐ出力できる状態の確保 | 左記に加え、訂正・削除履歴の確保/帳簿間の相互関連性/検索機能の確保 |
| 電子保存の可否 | 可能 | 可能 |
| 税務上の特典 | なし | 青色申告特別控除の上乗せ・過少申告加算税の軽減の対象になり得る |
| 根拠 | 施行規則第2条第2項 | 施行規則第5条第5項(令和9年からは第4項) |
このように、電子帳簿を優良な状態にすると、通常の電子保存にはない税務上の特典が受けられます。次章で、その特典が具体的にいくらの得になるのかを見ていきます。
出典・参考資料(2件)
- 出典:優良な電子帳簿の要件|国税庁(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/05.htm)
- 出典:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則 第5条第5項|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/410M50000040043)
優良な電子帳簿にすると何が得か(控除の上乗せと加算税の軽減)
ここからは、優良な電子帳簿にすることで受けられる2つの税務上の特典を、金額とあわせて解説します。1つは青色申告特別控除の上乗せ、もう1つは過少申告加算税の軽減です。
青色申告特別控除の上乗せ(2026年分と2027年分で取り方が変わる)
青色申告特別控除は、複式簿記での記帳や貸借対照表・損益計算書の添付、期限内申告といった条件で最大55万円が控除される制度です。この控除額は、要件を追加で満たすと上乗せされます。注意したいのは、2026年分(令和8年分)までと2027年分(令和9年分)以後で、優良な電子帳簿の位置づけが変わる点です。
2026年分までは、55万円の控除に加えて、優良な電子帳簿で保存するか、e-Tax(電子情報処理組織)で申告するかのいずれかを満たせば65万円に上乗せされます。現行制度では、優良な電子帳簿にしなくても、e-Tax申告だけで65万円控除は受けられます。
一方、2027年分(令和9年分)以後は、令和8年度税制改正により取り扱いが見直されます。改正後は、複式簿記にe-Tax申告を加えて65万円、さらに優良な電子帳簿(または特定のシステムを使った電子取引データの保存)まで満たして75万円、という段階に変わります。e-Tax申告は65万円控除の必須要件になり、優良な電子帳簿は65万円の代替手段から、75万円に上乗せするための要件へと役割が移ります。
この2027年分以後の見直しは、令和8年度税制改正として関連法が成立・公布された確定事項で、適用は令和9年分以後の所得税からです。
75万円の要件にある「特定のシステムを使った電子取引データの保存」とは、電子取引のデータを後から訂正・削除できない仕組みなど一定の要件を満たすシステムで保存する方法です。優良な電子帳簿に代えて選べる選択肢とされています。
控除額がそのまま納める税金の減少額になるわけではない点にも注意が必要です。実際の節税額は、適用される所得税・住民税の税率に応じて決まります。
出典・参考資料(2件)
- 出典:租税特別措置法 第25条の2(青色申告特別控除)|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026)
- 出典:令和8年度税制改正の大綱(令和7年12月26日閣議決定)|財務省(https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/20251226taikou.pdf)
過少申告加算税が5%軽減される(事前の届出が前提)
もう1つの特典が、過少申告加算税の軽減です。申告漏れなどで後から修正申告や更正があった場合、通常は国税通則法にもとづく過少申告加算税(原則10%、期限内申告の税額などと50万円のいずれか多い額を超える部分は15%)が課されます。
優良な電子帳簿で保存している帳簿に関する申告漏れについては、この税率が5パーセントポイント軽減されます(たとえば10%の部分は5%になります)。国税庁も次のように案内しています。
「優良な電子帳簿」に該当して、あらかじめ届出書を提出することで、後からその電子帳簿に関連する過少申告が判明しても過少申告加算税が5%軽減される制度の適用を受けることができます
出典:優良な電子帳簿の要件|国税庁
たとえば、申告漏れによる追加の納税額(増差本税)が40万円だった場合、通常は40万円×10%=4万円の過少申告加算税がかかります。優良な電子帳簿で届出をしていれば、5%軽減後の40万円×5%=2万円で済みます。申告漏れが大きいほど軽減額も大きくなります。
この軽減を受けるには、あらかじめ所轄の税務署長に届出書を提出しておくことが前提です。また、隠蔽・仮装による申告漏れ(重加算税の対象)は軽減の対象外とされています。青色申告特別控除の上乗せが確定申告のなかで適用されるのに対し、過少申告加算税の軽減は事前の届出が必要という違いがあります。この届出と対象帳簿については、後の「特典別の対象帳簿と届出」で詳しく整理します。
出典・参考資料(3件)
- 出典:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律 第8条第4項|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/410AC0000000025)
- 出典:国税通則法 第65条(過少申告加算税)|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066)
- 出典:優良な電子帳簿の要件|国税庁(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/05.htm)
年分別・目的別の早見表
2つの特典について、年分と目的ごとに「何を満たせばいくら得か」を一覧にまとめます。
| 目的 | 2026年分(令和8年分)まで | 2027年分(令和9年分)以後 |
|---|---|---|
| 青色申告特別控除で65万円 | 複式簿記・期限内申告に加え「優良な電子帳簿 または e-Tax申告」のいずれか | 複式簿記+e-Tax申告(優良な電子帳簿は不要) |
| 青色申告特別控除で75万円 | 制度なし | 複式簿記+e-Tax申告+優良な電子帳簿(または特定システムでの電子取引データ保存) |
| 過少申告加算税の軽減(税率5ポイント引き下げ) | 優良な電子帳簿+事前の届出(対象は特例国税関係帳簿) | 同左 |
租税特別措置法第25条の2、電子帳簿保存法第8条第4項、令和8年度税制改正の大綱をもとに作成。
青色申告特別控除は個人事業主向けの制度ですが、過少申告加算税の軽減は法人も対象になります。目的によって満たすべき条件と対象帳簿が変わるため、まずは優良な電子帳簿の要件そのものを確認していきます。
優良な電子帳簿の要件(国税庁の区分で整理)
ここからは、優良な電子帳簿として認められるための要件を解説します。解説記事によって「3つ」「4つ」「6つ」と数え方が分かれがちですが、これは上乗せの要件(施行規則第5条第5項)と、電子帳簿等保存すべてに共通する土台の要件(同第2条第2項)を合算するかどうかの違いです。
ここでは国税庁の区分に沿って、優良固有の上乗せ要件を3つの柱として整理します。優良固有の上乗せ要件は、施行規則第5条第5項に次のように定められています。
イ 当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理に、次に掲げる要件を満たす電子計算機処理システムを使用すること。
出典:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則 第5条第5項|e-Gov法令検索
(1)当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行つた場合には、これらの事実及び内容を確認することができること。
(2)当該国税関係帳簿に係る記録事項の入力をその業務の処理に係る通常の期間を経過した後に行つた場合には、その事実を確認することができること。
ロ 当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の記録事項と関連国税関係帳簿…の記録事項…との間において、相互にその関連性を確認することができるようにしておくこと。
ハ 当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の記録事項の検索をすることができる機能…を確保しておくこと。
上乗せの3要件と、すべての電子帳簿に共通する土台の要件の関係を整理すると次のとおりです。

訂正・削除の履歴の確保
記録した内容を後から訂正・削除した場合に、その事実と内容を確認できるようにしておく要件です。あわせて、通常の業務サイクルを過ぎてから入力した記録(いわゆる遅延入力)についても、その事実を確認できることが求められます。会計ソフトでいえば、入力・修正の履歴(ログ)が自動で残り、誰がいつ何を直したかをたどれる仕組みがこれにあたります。
帳簿間の相互関連性の確保
仕訳帳と総勘定元帳など、関連する帳簿の記録どうしを相互にたどれるようにしておく要件です。ある仕訳が、どの元帳のどの記録に反映されているかを確認できる状態を指します。一般的な会計ソフトでは、仕訳データが各帳簿へ自動で連動するため、通常の運用で満たせる要件です。
検索機能の確保
記録事項を検索できる機能を備えておく要件です。具体的には、取引年月日・取引金額・取引先を検索条件に設定できること、日付や金額は範囲を指定して検索できること、2つ以上の項目を組み合わせて検索できること、が求められます。ただし、税務調査などで電磁的記録のダウンロードの求めに応じられるようにしている場合は、範囲指定検索と組み合わせ検索は不要となり、取引年月日・金額・取引先による検索ができれば足ります。
土台となる共通要件(システム関係書類・見読可能装置)
上乗せの3要件に加えて、電子帳簿等保存に共通する土台の要件も満たす必要があります。具体的には、使用する会計ソフトのシステム概要を記載した書類などを備え付けること(施行規則第2条第2項第一号)、保存場所にパソコン・プログラム・ディスプレイ・プリンタと操作説明書を備え、記録を画面や書面に整然とした形式・明瞭な状態ですぐに出力できるようにしておくこと(同第二号)です。
これらは優良かどうかを問わず電子帳簿等保存すべてに共通する基本要件で、優良固有の上乗せは前述の3つの柱です。
出典・参考資料(2件)
- 出典:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則 第5条第5項・第2条第2項|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/410M50000040043)
- 出典:優良な電子帳簿の要件|国税庁(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/05.htm)
どの帳簿を優良にすればいい?特典別の対象帳簿と届出
優良な電子帳簿で迷いやすいのが、「どの帳簿を優良にすればよいか」です。狙う特典によって、対象となる帳簿の範囲と必要な手続きが変わります。ここで整理しておきます。
青色申告特別控除の上乗せを狙う場合は主要簿が対象
青色申告特別控除の上乗せ(65万円・75万円)を目的とする場合、優良な状態にする必要があるのは仕訳帳と総勘定元帳という主要簿です。この目的では、特別な事前届出は必要なく、確定申告のなかで要件を満たして適用を受けます。
過少申告加算税の軽減を狙う場合は特例国税関係帳簿+事前届出
過少申告加算税の軽減を目的とする場合は、対象が「特例国税関係帳簿」に広がります。これは主要簿(仕訳帳・総勘定元帳)に加え、売掛帳・買掛帳などの補助簿を含むもので、国税庁は所得税法施行規則第58条・法人税法施行規則第54条・消費税法の規定にもとづく帳簿として定義しています。
また、軽減を受けるには事前の届出が必須です。届出書の名称は「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出書」です。適用を受けようとする国税の法定申告期限(個人事業主の所得税なら、原則としてその年分の確定申告期限である翌年3月15日)までに所轄税務署長へ提出すれば、あらかじめ提出したものとして取り扱われます。
青色申告特別控除の上乗せ(主要簿・届出不要)とは、対象帳簿も手続きも異なる点に注意してください。
出典・参考資料(2件)
- 出典:優良な電子帳簿の要件(特例国税関係帳簿の範囲)|国税庁(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/05.htm)
- 出典:過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出書 記載要領|国税庁(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0026006-kisaiyoryo_h04-01.pdf)
自分は対応すべき?個人事業主・法人別の判断
ここまでの内容をふまえ、自社・自分が優良な電子帳簿に対応すべきかを、立場別に整理します。狙える特典が立場によって変わるため、まず個人事業主と法人に分けて考えます。
個人事業主の場合
個人事業主は、青色申告特別控除の上乗せと過少申告加算税の軽減の両方が関係します。2026年分までは、65万円控除はe-Tax申告でも受けられるため、控除だけが目的なら優良な電子帳簿が必須とはいえません。
ただし2027年分(令和9年分)以後は、75万円控除を狙うなら優良な電子帳簿(または特定システムでの電子取引データ保存)が要件になります。将来的に最大の控除を受けたい場合は、早めに要件対応の会計ソフトに移行しておくと、改正後もそのまま対応できます。
個人事業主・フリーランスが自分で申告まで終えられる会計ソフトを、料金や青色申告65万円控除の満たし方、e-Tax対応といった観点で横並びに比べたい場合は、以下の記事が参考になります。
法人の場合
青色申告特別控除は個人事業主向けの制度のため、法人には適用されません。法人にとっての優良な電子帳簿のメリットは、主に過少申告加算税の軽減です。修正申告や更正のリスクに備えて加算税の負担を抑えたい場合や、帳簿データの信頼性を社内外に示したい場合に、対応を検討する価値があります。軽減を受けるには、特例国税関係帳簿を要件どおりに保存し、事前に届出書を提出しておく必要があります。
導入コスト・手間のデメリットも踏まえて判断する
優良な電子帳簿は特典がある一方で、対応には手間とコストがかかります。訂正・削除履歴や検索機能を満たすには、要件に対応した会計ソフトの導入や、既存ソフトからの移行・設定変更が必要になることがあります。また、要件を満たすソフトを使っていても、日々の入力運用が伴わなければ優良とは認められません(運用の注意点は後述の手順③で解説します)。
得られる特典(控除の上乗せ額や加算税軽減の見込み)と、導入・運用にかかる負担を見比べて判断するのが現実的です。多くの市販のクラウド会計ソフトは要件に対応しているため、これから会計ソフトを選ぶ場合や乗り換えを検討している場合は、優良な電子帳簿の要件への対応を選定基準の1つに加えておくとよいでしょう。
優良な電子帳簿は、電子帳簿保存法という大きな制度の一部です。電子帳簿保存法への対応は負担が大きく感じられがちですが、得られるメリットや導入時のポイントまで含めて整理すると判断しやすくなります。制度全体の考え方は以下の記事で解説しています。
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優良な電子帳簿に対応する手順(ソフト・届出・入力運用)
最後に、優良な電子帳簿に対応するための手順を解説します。大きくは次の3ステップです。
- 要件に対応した会計ソフトで帳簿を作成する
- (過少申告加算税の軽減を狙う場合)税務署へ届出書を提出する
- 会計期間中に遅滞なく入力する
①要件に対応した会計ソフトで帳簿を作成する
優良な電子帳簿の要件(訂正・削除履歴、相互関連性、検索機能)を手作業で満たすのは現実的でないため、出発点は要件に対応した会計ソフトを使うことです。目安になるのが、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)の「優良な電子帳簿」に関する認証(電子帳簿ソフト法的要件認証)です。
ただし、この認証の有無が優良要件を満たせるかの絶対的な基準というわけではありません。認証を受けていなくても、機能面で優良要件に対応できるソフトもあります。以下では主なクラウド会計ソフトについて、優良な電子帳簿への対応状況を「認証取得で対応が明確なもの」と「認証は未取得で対応は要確認のもの」を分けて整理します。導入前には、各社の公式情報で最新の対応状況を確認してください。
| サービス名 | 弥生会計 Next | freee会計 | マネーフォワード クラウド会計 | 勘定奉行クラウド | PCAクラウド 会計 | TKC FXクラウドシリーズ | SmileWorks |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| JIIMA「優良な電子帳簿」認証 | ●(優良認証 107300-00) | ×(スキャナ保存・電子取引のみ取得) | ●(電子帳簿等保存ほか3区分で取得) | ●(JIIMA認証4種を取得) | ●(電子帳簿ソフト法的要件認証) | ●(財務会計システムで取得) | ●(会計ワークスが取得) |
| 優良要件(訂正削除履歴・相互関連性・検索機能)への対応 | 追加設定なしで対応(公式) | 要確認(電子帳簿ソフト認証は未取得) | 対応 | 対応 | 対応(公式が優良要件対応を明示) | 対応(会計事務所の月次巡回監査が前提) | 対応(会計ワークスのみ) |
| 提供形態・対象規模 | クラウド会計/法人向け(小規模法人〜中小) | クラウド会計/個人事業主〜上場企業 | クラウド会計/ひとり法人〜中小(〜50名想定) | クラウド会計/小規模〜中小(中堅・大企業は上位の奉行V ERPクラウド) | クラウド会計/中小〜中堅企業 | クラウド会計/中堅・大企業〜上場(会計事務所経由で導入) | 統合型クラウドERP/中小企業(会計は会計ワークス) |
| 料金の目安(最小プラン) | 初期0円/月2,900円〜(エントリー年契約・税抜) | 初期0円/個人 月980円〜・法人 月2,980円〜(年払い・税抜) | 初期0円/月2,480円〜(ひとり法人・年払い・税抜) | 初期0円〜/月7,750円〜(Eシステム年額換算・税抜) | 初期0円/クラウド会計 月16,200円〜・サブスク会計 月3,900円〜(税抜) | 要問い合わせ(会計事務所経由) | 初期0円〜/月5,000円〜(販売ERPプラン基本・機能費用別) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る |
※2026年10月時点の各社公式情報にもとづく。最新の対応状況・料金は各社公式サイトで確認してください。
ここで取り上げたのは主要なクラウド会計ソフトの一部で、法人・中小企業向けが中心です。個人事業主で75万円控除を狙う場合は、やよいの青色申告 オンラインなど個人向けの会計ソフトが選択肢になります(後述の「個人事業主の場合」で紹介する比較記事も参考にしてください)。規模やタイプ別の選び方・料金もふまえてクラウド会計ソフト全体から比較検討したい場合は、以下の記事で詳しく解説しています。
【2026年】クラウド会計ソフト比較15選|規模・タイプ別の選び方と料金を解説
クラウド会計ソフトの導入を検討するとき、「製品が多すぎて自社に合うものが分からない」「インボイス制度や電子帳簿保存法に対応しているか不安」「手入力やExcelでの記帳から早く脱却したい」といった悩みに突き当たる担当者は少なくありません。 選…
弥生会計 Next(弥生株式会社)

弥生会計 Nextは、弥生株式会社が提供するクラウド会計ソフトです。JIIMAの「優良な電子帳簿」認証(認証番号107300-00)を取得しており、訂正・削除履歴の確保などの優良要件を、追加の特別な設定なしで満たせる設計になっています。
会計の知識が浅い担当者でも使いやすいサポート体制を備え、小規模法人から中小企業まで対応します。個人事業主向けには、同社の「やよいの青色申告 オンライン」などの別製品が用意されています。
freee会計(フリー株式会社)

freee会計は、フリー株式会社が提供するクラウド型の会計ソフトです。銀行口座やクレジットカードなど1,000を超える金融機関・サービスと連携し、取引データの自動取得から仕訳、決算書作成までを一気通貫で行えます。個人事業主から上場企業まで幅広い規模に対応します。
優良な電子帳簿に関しては、JIIMAの電子帳簿ソフト法的要件認証(優良要件に関する認証)は取得しておらず、取得済みの認証はスキャナ保存・電子取引に関するものです。優良な電子帳簿として使えるかは、要件への対応状況を公式情報で確認することをおすすめします。
マネーフォワード クラウド会計(株式会社マネーフォワード)

株式会社マネーフォワードが提供するクラウド会計ソフトです。給与・請求・経費など同社のバックオフィス関連サービスと連携でき、データを一元管理しやすいのが強みです。電子帳簿保存法については、電子帳簿等保存・電子取引データ保存・スキャナ保存の各区分でJIIMA認証を取得しています。
勘定奉行クラウド(株式会社オービックビジネスコンサルタント)

勘定奉行クラウドは、株式会社オービックビジネスコンサルタントが提供するクラウド会計ソフトです。電子帳簿保存法については、電子帳簿ソフト・スキャナ保存ソフト・電子取引ソフト・電子書類ソフトのJIIMA認証4種を取得しており、制度対応の証跡が明確です。中堅・中小企業で、内部統制や正確な会計処理を重視する企業に向いています。
PCAクラウド 会計(ピー・シー・エー株式会社)

PCAクラウド 会計は、会計・給与などの業務ソフトを手がけるピー・シー・エー株式会社のクラウド会計ソフトです。JIIMAの電子帳簿ソフト法的要件認証を取得し、公式に「優良な電子帳簿」の要件への対応をうたっています。証憑の電子保管は関連サービスと連携して行う構成で、会計業務を中心に据えて電帳法対応を進めたい企業に向きます。
電帳法をはじめ会計に関わる制度は改正が重なるため、法改正にソフト側でどう対応するかは会計ソフト選びの論点になります。クラウド会計ソフトを提供するようになった背景について、ピー・シー・エー株式会社は次のように述べています。

「法改正のたびにソフトを買い替える負担をなくしたい」という思いから、まだクラウドという言葉が一般的でなかった2008年に、業界に先んじてPCAクラウドの提供を開始しています。
TKC FXクラウドシリーズ(株式会社TKC)

TKC FXクラウドシリーズは、税理士・公認会計士向けのシステムを提供する株式会社TKCの統合型の会計情報システムです。電子帳簿保存法の法的要件を満たすソフトとしてJIIMA認証を受けており、顧問税理士との連携を前提とした正確な記帳・月次決算の運用に強みがあります。会計事務所のサポートを受けながら帳簿を整えたい企業に向く選択肢です。
SmileWorks(株式会社スマイルワークス)

SmileWorksは、株式会社スマイルワークスが提供するクラウドERPで、販売管理・会計・給与などを一体で扱えます。会計機能にあたる会計ワークスがJIIMAの電子帳簿ソフト法的要件認証を取得しており、電子帳簿保存法に対応しています。販売から会計までを1つのシステムでまとめたい中小企業に向いています。
②過少申告加算税の軽減を狙うなら税務署へ届出書を提出する
過少申告加算税の軽減を受けたい場合は、前述のとおり事前の届出が必要です。届出書を、適用を受けようとする国税の法定申告期限までに所轄税務署長へ提出します(届出書の正式名称や対象帳簿は「特典別の対象帳簿と届出」を参照してください)。青色申告特別控除の上乗せだけが目的なら、この届出は不要です。
③会計期間中に遅滞なく入力する
要件に対応したソフトを使っていても、運用が伴わなければ優良とは認められません。優良な電子帳簿の要件には、通常の業務サイクルを過ぎてから入力した場合にその事実を確認できることが含まれており、記帳をため込まず適切なサイクルで入力することが前提になります。確定申告の時期に1年分をまとめて入力するような運用は、要件を満たさないおそれがあります。
入力作業を会計事務所などに外注する場合でも、帳簿データが要件(訂正・削除履歴や検索機能)を満たすソフトで作成・保存され、適切なサイクルで記帳されていれば問題ありません。誰が入力するかではなく、帳簿データが要件を満たしているかが判断の基準になります。
出典・参考資料(2件)
- 出典:過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出書 記載要領|国税庁(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0026006-kisaiyoryo_h04-01.pdf)
- 出典:優良な電子帳簿の要件|国税庁(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/05.htm)
まとめ
優良な電子帳簿は、訂正・削除履歴の確保、帳簿間の相互関連性、検索機能という上乗せ要件を満たした電子帳簿で、青色申告特別控除の上乗せと過少申告加算税の軽減という税務上の特典があります。狙う特典によって対象帳簿や届出の要否が変わり、青色申告特別控除は2026年分と2027年分(令和9年分)以後で取り扱いが見直される点に注意が必要です。
要件を満たすには、訂正・削除履歴や検索機能に対応した会計ソフトを使うのが近道です。これから会計ソフトを選ぶ場合や乗り換えを検討している場合は、優良な電子帳簿の要件への対応を選定基準に加えておくと、将来の改正にもそのまま備えられます。各サービスの詳しい機能や料金は、資料を取り寄せて比較してみてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 優良な電子帳簿とは何ですか?
A. 優良な電子帳簿とは、通常の電子帳簿等保存の要件に加えて、訂正・削除の履歴の確保、帳簿間の相互関連性、検索機能という上乗せ要件を満たした信頼性の高い電子帳簿のことです。電子帳簿保存法施行規則で定められており、要件を満たすと、青色申告特別控除の上乗せや過少申告加算税の軽減といった税務上の特典の対象になります。
要件を満たさない「その他の電子帳簿」でも電子保存自体はできますが、これらの特典は受けられません。
Q. 優良な電子帳簿にすると青色申告特別控除はいくらになりますか?
A. 優良な電子帳簿による青色申告特別控除は、2026年分(令和8年分)までは最大65万円、2027年分(令和9年分)以後は最大75万円です。ただし年分で位置づけが変わります。
2026年分までは、複式簿記などの条件に加えて「優良な電子帳簿 または e-Tax申告」のいずれかを満たせば65万円になるため、優良な電子帳簿は必須ではありません。
2027年分以後は、複式簿記+e-Tax申告で65万円、さらに優良な電子帳簿(または特定システムを使った電子取引データの保存)まで満たして75万円、という段階に変わります。
Q. 優良な電子帳簿で65万円(75万円)控除を受ければ、過少申告加算税の軽減も受けられますか?
A. いいえ、青色申告特別控除の上乗せと過少申告加算税の軽減は別々の特典で、対象となる帳簿も必要な手続きも異なります。控除の上乗せは主要簿(仕訳帳・総勘定元帳)が対象で、事前の届出は不要です。
一方、過少申告加算税の軽減は、売掛帳・買掛帳などの補助簿を含む「特例国税関係帳簿」が対象で、あらかじめ税務署へ届出書を提出しておく必要があります。控除を受けていても、別途この届出をしていなければ加算税の軽減は受けられません。
Q. 過少申告加算税の軽減を受けるための届出書は、いつまでに提出すればよいですか?
A. 過少申告加算税軽減の届出書は、適用を受けようとする国税の法定申告期限までに所轄税務署長へ提出すれば、あらかじめ提出したものとして取り扱われます。届出書の正式名称は「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出書」です。青色申告特別控除の上乗せだけが目的であれば、この届出は不要で、確定申告のなかで要件を満たせば適用を受けられます。
Q. 優良な電子帳簿はどんな会計ソフトでも作成できますか?
A. 優良な電子帳簿は、訂正・削除履歴の記録や検索機能といった要件に対応した会計ソフトであれば作成できます。多くの市販のクラウド会計ソフトはこれらの要件に対応していますが、すべてのソフトが対応しているとは限りません。対応状況の目安として、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)の「優良な電子帳簿」認証を取得しているかを確認するとよいでしょう。
Q. JIIMA認証があれば、優良な電子帳簿の要件を満たせますか?
A. JIIMA認証とは、日本文書情報マネジメント協会が電子帳簿保存法の要件を満たすソフトを公的に認証する制度で、「優良な電子帳簿」認証のあるソフトを使えば、要件(訂正・削除履歴、相互関連性、検索機能)を満たしやすくなります。ただし、ソフトが対応していても、記帳をため込まず適切なサイクルで入力するなどの運用が伴わなければ優良とは認められません。ソフトの選定と日々の運用の両方が必要です。
Q. 表計算ソフト(エクセルなど)で作った帳簿でも優良な電子帳簿になりますか?
A. 一般的な表計算ソフトだけで優良な電子帳簿の要件を満たすのは、現実的には困難です。優良な電子帳簿には、訂正・削除の履歴が自動で残ることや、取引年月日・金額・取引先での検索ができることが求められますが、これらを表計算ソフトの手作業で確保・維持するのは容易ではありません。要件に対応した会計ソフトを使うのが現実的な方法です。
Q. 入力作業を会計事務所などに外注しても優良な電子帳簿になりますか?
A. はい、帳簿データが要件を満たすソフトで作成・保存され、適切なサイクルで記帳されていれば、入力を外注しても優良な電子帳簿として認められます。優良かどうかの判断基準は「誰が入力するか」ではなく「帳簿データが要件(訂正・削除履歴や検索機能)を満たしているか」です。外注する場合も、帳簿の保存場所や入力のサイクルが要件に沿っているかを確認しておきましょう。
Q. 確定申告の時期に1年分をまとめて入力しても優良な電子帳簿になりますか?
A. いいえ、確定申告期に前年の1年分の帳簿をまとめて入力する運用は、優良な電子帳簿として認められないおそれがあります。優良な電子帳簿の要件には、通常の業務サイクルを過ぎてから入力した場合にその事実を確認できることが含まれており、記帳をため込まず適切なサイクルで入力することが前提とされているためです。日常的に取引を入力する運用を心がけてください。
Q. 法人も優良な電子帳簿のメリットを受けられますか?
A. 法人は青色申告特別控除の対象外ですが、過少申告加算税の軽減は法人も受けられます。青色申告特別控除は個人事業主向けの制度のため法人には適用されませんが、修正申告や更正があった際の加算税の負担を抑えたい法人は、特例国税関係帳簿を要件どおりに保存し、あらかじめ届出書を提出しておくことで軽減の適用を受けられます。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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