取引先に商品やサービスを納品したのに、売掛金が支払期日を過ぎても入金されない。電話やメールで催促しても「来月には払う」と繰り返されるだけで、いっこうに支払われない。そんなとき、次の一手として検討されるのが、証拠が残る内容証明郵便で正式に支払いを請求する方法です。
ただ、内容証明を自分で書いた経験がなく、何を・どう書けばよいのか分からず手が止まってしまうことも少なくありません。金額や支払期限の書き方を誤ると、せっかく送っても法的な効果が薄れてしまう場合もあります。
本記事では、そのままコピーして使える内容証明の文例(初回の督促用と最終通告用)から、必ず入れる記載事項、郵便局での送り方と費用、内容証明と他の手段の違い、送ることで得られる法的効果(時効の完成猶予)、そして送っても支払われなかったときの次の手段までを、一つずつ具体的に解説します。自社のケースに合わせて内容証明を作成し、実際に送れる状態になることを目指します。
目次
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そのまま使える内容証明の文例(売掛金の請求)
まずは、実際に使える内容証明の文例を2つ掲載します。口頭やメールでの催促後にまず送る「初回の督促」と、支払われないまま最終的に送る「最終通告」です。以下をコピーし、日付・取引先名・金額・支払期日を自社のケースに置き換えれば、内容証明の原案として利用できます。各項目がなぜ必要かは、次の章で解説します。
文例①:初回の督促(口頭・メール催促のあとに送る)
電話やメールで支払いを求めても応じてもらえないとき、書面で正式に請求する段階の文例です。支払いを求める意思と、応じない場合に法的手続きへ進む姿勢を、威圧的になりすぎない範囲で明確にします。
この文例は、支払いを求める事実を明確にした基本形です。支払期限は、短すぎると相手が応じにくいため、到達後1〜2週間程度を目安に設定します。内容証明郵便で送るときは後述する字数・行数のルールに文面を合わせますが、窓口では局員が書式を確認してくれ、e内容証明なら所定の様式で整えられるので、まずは文面を作ることに集中して問題ありません。
文例②:最終通告(法的手続きへ進む直前に送る)
初回の督促を送っても支払われないとき、法的手続きへ移行する前の最終通告として送る文例です。期限内に支払われなければ法的手続きを取る旨を明記し、遅延損害金もあわせて請求します。
いくつか補足します。遅延損害金は、当事者間の取り決めがあればその利率、なければ民法の法定利率(2026年10月時点で年3%)で計算します。「令和〇年〇月〇日から」の起算日は、通常は支払期日の翌日です。
押印は必須ではありませんが、差出人を明確にするため会社印や代表者印を押すのが一般的です。書面の表題は「催告書」「ご通知」などとすることもありますが、名称にかかわらず、支払いを求める内容であれば法律上の「催告」に当たり得ます。
差出人や受取人が法人ではなく個人事業主の場合は、「株式会社〇〇 代表取締役」の部分を屋号と氏名(または氏名のみ)に置き換えます。押印も認印で差し支えありません。
内容証明に必ず入れる記載事項と避ける表現
ここからは、文例を自社のケースに書き換えるときに、効力を落とさないための記載事項と注意点を解説します。それぞれの項目が「なぜ必要か」を押さえておくと、状況に合わせて安心して調整できます。
必ず記載すべき事項
売掛金を請求する内容証明には、少なくとも次の項目を明確に記載します。
- 債権の特定:いつの・どの契約に基づく・何の代金かを特定します。契約日、商品やサービスの内容、売掛金額を具体的に書くことで、「どの支払いを求めているのか」があいまいにならず、後に証拠として使うときにも意味を持ちます。
- 請求金額:請求する売掛金額を正確に記載します。遅延損害金を求める場合は、その旨と利率・起算日も示します。
- 支払期限:「本書面到達後2週間以内」など、明確な期限を設けます。期限を区切ることで、応じない場合に次の手続きへ進む区切りがはっきりします。
- 支払方法:振込先の口座情報など、相手がすぐ支払える情報を添えます。
- 法的措置の予告:期限内に支払われない場合は法的手続きを取る旨を記します。これにより、その書面が「最終通告」であることが相手に伝わります。
- 差出人・受取人の情報と日付:誰が誰に対して、いつ請求したのかを明確にします。内容証明では、この情報が証拠としての価値を支えます。
避けるべき表現・書き方の誤り
支払いを強く求めたいあまり、相手を威圧しすぎる表現は避けます。「支払わなければ自宅や会社に乗り込む」「取引先に言いふらす」といった、相手の生命・身体・名誉・信用に危害を加えると受け取られかねない文言は、かえって脅迫や恐喝と評価されるおそれがあります。求めるのはあくまで正当な売掛金の支払いであり、応じない場合に「法的手続きを取る」と述べる範囲にとどめます。
また、金額や支払期日があいまいだと、請求書面としての効力が弱まります。事実と異なる金額を書いたり、根拠のない遅延損害金を上乗せしたりすると、相手に反論の余地を与えるため、確認できる事実だけを正確に記載します。
内容証明郵便の送り方と費用
作成した書面は、普通郵便でも送れますが、後の証拠として残すために内容証明郵便で送るのが一般的です。ここでは、内容証明とはどんな制度かを確認したうえで、書式ルールと実際にかかる費用を具体的に見ていきます。
内容証明郵便とは
内容証明郵便は、いつ・どんな内容の文書を・誰から誰あてに差し出したかを、差出人が作成した謄本によって郵便局が証明する制度です。日本郵便は次のように定めています。
一般書留郵便物の内容文書について証明するサービスです。いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたかということを、差出人が作成した謄本によって当社が証明する制度です。
出典:内容証明|日本郵便株式会社
当社が証明するものは内容文書の存在であり、文書の内容が真実であるかどうかを証明するものではありません。
証明されるのは「その文書を送った事実」であって、書かれた内容が正しいかどうかや、相手に支払義務があるかどうかを証明するものではありません。この点が、後述する「内容証明だけではできないこと」につながります。
書式ルールと窓口・e内容証明の選び方
内容証明を差し出すときは、次の点に注意します。
- 同じ文書を3通用意する:受取人へ送る内容文書1通と、その謄本2通(差出人の控えと郵便局の保管用)を用意します。
- 一般書留にする:内容証明郵便は一般書留として差し出す必要があります。
- 取り扱う郵便局が限られる:集配郵便局など、内容証明を扱う郵便局から差し出します。
内容証明では、受取人へ送る内容文書と、それと同じ文面の謄本を提出し、郵便局はこの謄本によって文書の存在を証明します。字数・行数の制限はこの謄本にかかるため、実務上は送る文面そのものを下表のルールに収めて書くことになります。
横書きの場合は次の3つのパターンから選べ、縦書きとあわせて書き方で上限が変わります(句読点や記号も1字として数えます)。Wordで作成するなら、1行の文字数と1枚の行数をこの制限に合わせて設定しておくと、そのまま謄本として使えます。
| 内容証明(謄本)の字数・行数の制限 | 縦書き | 横書き(パターン1) | 横書き(パターン2) | 横書き(パターン3) |
|---|---|---|---|---|
| 1行の字数 | 20字以内 | 20字以内 | 13字以内 | 26字以内 |
| 1枚の行数 | 26行以内 | 26行以内 | 40行以内 | 20行以内 |
窓口から差し出す場合は、内容文書1通と謄本2通、受取人・差出人の住所氏名を書いた封筒を用意し、封をせずに内容証明を扱う郵便局の窓口へ持参します。「内容証明でお願いします」と伝えれば、局員が文書と謄本を照合し、証明の日付印を押したうえで、その場で封をして発送してくれます。同時に配達証明も依頼すると、相手に届いた日付も証拠として残せます。

パソコンから差し出せる「e内容証明(電子内容証明)」なら、Wordファイルで作成した文書をインターネット経由で24時間発送でき、郵便局へ出向く必要がありません。Wordの標準的な様式で1枚あたり約1,584文字まで記載でき(窓口より多め)、文書量が多いときはe内容証明のほうが1枚に収めやすくなります。
出典・参考資料(3件)
内容証明を送る費用はいくらか
内容証明郵便の費用は、基本の郵便料金に、内容証明・一般書留・配達証明の加算料金を積み上げて計算します。文書1枚を、差し出すときに配達証明を付けて窓口から送る場合の内訳は次のとおりです。
| 内容証明+配達証明で1通送る場合の費用(文書1枚・窓口) | 基本の郵便料金(定形50g以内) | 内容証明の加算 | 一般書留の加算 | 配達証明の加算 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 金額 | 110円 | 480円 | 480円 | 350円 | 1,420円 |
| 備考 | 2024年10月改定後の料金 | 文書が2枚以上なら1枚ごとに290円増 | 内容証明に必須 | 差し出すときに依頼。差出後の請求は480円 | 上記各料金を積み上げた金額 |
※2026年10月時点の日本郵便公式料金による。合計は各料金を積み上げた金額です。
配達証明を付けると、相手に「いつ配達されたか」を証明でき、後述する時効の管理でも役立ちます。差し出すときに依頼すれば350円ですが、差出後にあとから請求すると480円になるため、売掛金の請求では差し出すときに一緒に依頼しておくのが実務的です。配達証明を付けない場合の合計は1,070円が目安で、e内容証明を使う場合は文書1枚・通常送付で1,295円が目安です。
出典・参考資料(4件)
内容証明・普通郵便・配達証明・支払督促・少額訴訟の違い
売掛金の回収では、内容証明のほかにもいくつかの手段が登場します。それぞれ効力・費用・強制力が異なり、今が内容証明を送る段階なのか、すでに裁判所の手続きへ進む段階なのかを見極めることが大切です。主な手段を一覧で整理します。
| 売掛金回収で使う主な手段の違い | 普通郵便での督促 | 内容証明郵便 | 配達証明(内容証明に併用) | 支払督促 | 少額訴訟 |
|---|---|---|---|---|---|
| 主な役割・効力 | 支払いのお願い・リマインド。送った内容や日付は証明されない | いつ・どんな内容の書面を送ったかを公的に証明。催告として時効の完成を6ヶ月猶予できる | いつ配達されたか(配達の事実)を証明 | 簡易裁判所の書記官が支払いを督促。異議がなければ仮執行宣言が付き強制執行が可能 | 60万円以下の支払いを原則1回の審理で判断。判決により強制執行が可能 |
| 費用の目安 | 基本郵便料金(110円〜) | 1,070円〜(配達証明付き1,420円/e内容証明1,295円) | 内容証明に+350円 | 申立手数料(請求額に応じ、通常訴訟の半額程度) | 訴額に応じた手数料+予納郵券 |
| 法的強制力 | なし | なし(文書の存在を証明するのみ) | なし | あり(仮執行宣言付支払督促=債務名義) | あり(確定判決=債務名義) |
| 向くケース | 支払期日直後の初期の催促 | 正式な請求・最終通告、時効が迫るとき | 催告が相手に届いた日を証拠化したいとき | 書類審査で迅速に債務名義を得たいとき | 60万円以下を1回の期日で決着させたいとき |
※費用・強制力は各制度の一般的な整理です。支払督促・少額訴訟の手数料は請求額により異なります。
内容証明や配達証明は、あくまで「送った事実・届いた事実」を証明するもので、それ自体に支払いを強制する力はありません。相手が応じないときは、支払督促や少額訴訟といった裁判所の手続きで「債務名義」(強制執行の根拠となる文書)を得る段階へ進みます。
内容証明で送る法的効果とできないこと
売掛金の請求を内容証明で送ると、普通郵便での督促以上の効果が得られます。ここでは、得られる効果と、送る前に知っておきたい「できないこと」の両方を確認します。
時効の完成を6ヶ月猶予できる
最も大きな効果が、売掛金の消滅時効に対するものです。売掛金は、権利を行使できることを知った時(通常は支払期日)から原則5年で時効により消滅します(2020年4月の民法改正より前に発生した売掛金は、改正前のルールで時効期間が異なる場合があります)。
(債権等の消滅時効)
出典:民法 第百六十六条|e-Gov 法令検索
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
この時効が迫っているとき、内容証明で支払いを求める「催告」を行えば、時効の完成を一定期間先延ばしにできます。民法は、催告があるとその時から6ヶ月を経過するまで時効は完成しないと定めています。
(催告による時効の完成猶予)
出典:民法 第百五十条|e-Gov 法令検索
第百五十条 催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。
催告したことを確実に主張するためにも、催告の事実を証拠として残せる内容証明郵便で送る意味があります。配達証明を付ければ、いつ催告が届いたかまで残せます。
「完成猶予」と「更新(リセット)」は違う
注意したいのは、催告による効果はあくまで完成猶予であって更新(リセット)ではない点です。インターネット上の解説には時効が「リセットされる」「中断する」といった表現が見られますが、これは正確ではありません。催告で得られるのは6ヶ月間の一時的な猶予で、しかも条文の2項にあるとおり、その間に再び催告しても効力は延長されません。猶予は1回きりです。
時効を「更新」(進行していた期間をゼロに戻し、あらためて進行させること)するには、下記のような裁判上の手続きが必要です。催告で得た6ヶ月の猶予の間に、これらへ進むことで時効の完成を防ぎます。
(裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新)
出典:民法 第百四十七条|e-Gov 法令検索
第百四十七条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(略)までの間は、時効は、完成しない。
一 裁判上の請求
二 支払督促
三 民事訴訟法第二百七十五条第一項の和解又は民事調停法(略)若しくは家事事件手続法(略)による調停
これらの手続きで権利が確定すると、時効はその終了の時から新たに進行を始めます(同条2項)。内容証明での催告は「6ヶ月の時間稼ぎ」であり、その間に支払督促や訴訟へ進んで初めて時効が更新される、という関係です。

遅延損害金を請求できる
売掛金の支払いが遅れた場合、遅延損害金を請求できます。契約で利率を定めていなければ、民法の法定利率(2026年10月時点で年3%)で計算します。金銭の支払いが遅れたことによる損害賠償は、損害が実際に出たことを証明しなくても請求できると民法で定められており、起算点(通常は支払期日の翌日)の法定利率が適用されます。
ただし、「商事債権は年6%」と説明する古い情報が残っていますが、年6%の商事法定利率を定めていた商法514条は2020年4月1日施行の民法改正で削除され、現在は商取引の売掛金でも民法の法定利率(年3%)が適用されます。
裁判の証拠になり、相手への心理的な圧力にもなる
内容証明郵便は、いつ・どんな内容の書面を送ったかを郵便局が証明します。配達証明を付ければ、相手に届いた日付まで残せます。後に裁判へ進んだときに「催告した事実」を客観的に示せるため、証拠としての価値があります。
加えて、内容証明という形式そのものが、相手に「本気で回収に動いている」という印象を与えます。普通郵便やメールの督促を放置していた相手が、内容証明の受け取りをきっかけに支払いに応じるケースもあり、心理的な圧力としての効果が期待できます。
内容証明だけではできないこと
一方で、内容証明が証明するのは「その文書を送った事実」だけで、相手に支払いを強制する力はありません。相手が内容証明を受け取っても支払わなければ、それ以上の効果はなく、預金や財産を差し押さえるには、支払督促や訴訟で得た債務名義に基づく強制執行が別途必要です。
また、内容証明で相手に強い姿勢が伝わるため、取引関係が悪化する可能性もあります。今後も取引を続けたい相手には、まず電話や普通郵便での督促を尽くしたうえで、最終的な手段として検討するのが無難です。送っただけで安心せず、支払われなかった場合の次の動きまで見据えておくことが大切です。
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内容証明を送っても払われないときの次の手段
内容証明を送っても支払われないときは、法的手続きで回収する方法と、繰り返す未回収や督促の負担を仕組みで減らす方法の2方向があります。
まず、内容証明を送ったあとの相手の出方別に、次に取る手段を整理します。相手の反応によって、取るべき手段が変わります。
- 分割や支払猶予を申し出てきた:合意できるなら、支払金額・期日・遅延損害金の扱いを明記した合意書を交わします。執行認諾文言を付けた公正証書にしておくと、約束が守られないときに訴訟を経ずに強制執行へ進めます。
- 金額や契約の事実を争ってきた:契約書・発注書・納品書・請求書など債権を裏づける証拠を整理し、支払督促(異議が出れば訴訟へ移行)や訴訟での決着を見据えます。
- 反応がない・連絡が取れない:下記の法的手続きへ進みます。催告による時効の完成猶予は6ヶ月・一度きりのため、猶予期間内に支払督促や訴訟へ着手します。
法的手続きで回収する
催告で得た6ヶ月の猶予の間に、次のような法的手続きへ進むことで、時効の完成を防ぎながら回収を図れます。金額や状況に応じて選びます。
- 支払督促:簡易裁判所の書記官を通じて、書類審査で相手に支払いを命じてもらう手続きです。相手が受け取ってから2週間以内に異議を申し立てなければ仮執行宣言が付き、強制執行の申立てができます。異議が出ると通常の訴訟へ移行します。
- 少額訴訟:60万円以下の金銭の支払いを求める場合に利用でき、原則として1回の期日で判決に至る簡易な訴訟です(同じ簡易裁判所で年10回まで)。
- 通常訴訟:金額が大きい、または相手が支払いを争う場合に、判決による解決を求める手続きです。
- 強制執行(差押え):確定判決や仮執行宣言付支払督促などの債務名義に基づき、相手の預金や財産を差し押さえて回収する手続きです。
これらのうち、裁判上の請求・支払督促は、民法でも時効の完成猶予・更新の対象として定められています。手続きが複雑な場合や金額が大きい場合は、弁護士へ相談することも検討します。
自分で出すか、弁護士に依頼するか
少額で相手との争いが小さいケースでは、本記事の文例をもとに自分で作成・送付して差し支えありません。一方、金額が大きい・相手が支払いを争っている・時効が迫っている・支払督促や訴訟など次の手続きを見据えている場合は、弁護士への依頼を検討しましょう。弁護士名で送る内容証明は相手に与える心理的な圧力が強く、その後の法的手続きにもそのまま移行しやすくなります。
費用の目安として、弁護士に内容証明の作成・送付を依頼する場合は一般に数万円程度からが相場で、請求額や事案の難しさ、顧問契約の有無によって幅があります。これとは別に、郵便局へ支払う実費が1通あたり1,000〜1,500円程度かかります。費用対効果を踏まえて、自分で出すか依頼するかを判断します。
依頼先は弁護士だけではありません。売掛金の回収を専門に請け負う回収代行会社や、未回収分を立て替える保証・ファクタリングなど、依頼先にはいくつかのタイプがあり、対応できる金額帯・費用の相場・向くケースがそれぞれ異なります。自社の状況に合った依頼先を比べて選びたいときは、依頼先タイプ別の選び方と費用相場を整理した次の記事が役立ちます。
繰り返す未回収・督促の負担は仕組みで防ぐ
目の前の1件に対応したい方は、ここまでの内容で内容証明を書いて送るところまで進められます。ここからは、未回収が繰り返し起きていて、督促の手間そのものを減らしたい方に向けた内容です。
内容証明の作成や督促は、一件ごとに手間がかかります。未回収が繰り返し発生している場合は、請求・督促・回収の工程そのものを仕組み化したり、未回収リスクを外部に移したりするサービスを使う方法があります。大きく分けて、次の3つの型があります。以下の比較表で全体像を示したうえで、各サービスを型ごとに紹介します。
| 督促・売掛金回収代行サービスの比較(解決手段の型別) | 請求管理ロボ | 請求まるなげロボ | NP掛け払い | RP掛け払い | 債権回収ロボ | DHKクラウドオートコール | オーロラSMS by メディアSMS | SMSマルチPay |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| タイプ | 型1:請求・督促の仕組み化 | 型2:売掛金保証でリスク移転 | 型2:売掛金保証でリスク移転 | 型2:売掛金保証でリスク移転 | 型3:督促・回収の自動化 | 型3:督促・回収の自動化 | 型3:督促・回収の自動化 | 型3:督促・回収の自動化 |
| 主な役割 | 請求書発行〜入金消込〜未入金検知を自動化するクラウド請求・債権管理 | 与信〜請求・回収・消込・督促を丸ごと代行する請求代行 | BtoB後払い決済・請求代行(与信〜回収・入金管理・督促を代行) | BtoB掛け払い(後払い)決済代行(与信〜回収・消込・督促) | 未入金の督促〜回収を多チャネルで自動実行するSaaS(自社運用型) | 督促架電を自動化するオートコール・IVR(1時間5,000件以上の自動架電) | 支払いリマインド・督促連絡をSMSで一斉・自動送信 | SMS通知〜本人認証〜決済までをオンライン完結する請求・未収金回収 |
| 督促チャネル | 自動催促メール(電話・SMS・IVRは債権回収ロボ連携で拡張) | メール・電話・弁護士法人(提供会社が代行) | メール・はがき・電話・弁護士法人への委託など(提供会社が代行) | メール・電話(提供会社の窓口が代行) | メール・SMS・オートコール(IVR)・郵送の4チャネル | オートコール(自動音声)・SMS・メール | SMS(双方向。携帯番号宛て) | SMS(督促連携)+督促架電・督促状発送BPO(連携先が保有) |
| 売掛金保証 | × | ●与信通過した適格債権に限り100%保証 | ●規約所定の除外事由を除き100%保証 | ●与信通過した適格債権に限り100%保証(法人間取引が対象) | × | × | × | × |
| 料金体系 | 月額+請求件数の従量(具体額は要問い合わせ) | 月額+手数料1.0%〜(初期費用は要問い合わせ) | 初期0円+手数料・固定費(料率は個別提案で非開示) | 手数料2.0%〜(同ページFAQは1.0%〜。初期・月額は要問い合わせ) | 要見積(初期・月額とも公式非開示) | 初期5万円〜/月額5万円〜(月1,000応答込み、以降は応答課金) | 初期0円/月額基本0円/送信成功分の従量(単価は要問い合わせ) | 初期2万円〜/月額0円/送信20円〜(決済手数料は別途要問い合わせ) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | オンライン相談を予約 | オンライン相談を予約 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る |
型1:請求・督促を仕組み化して未回収を早期に見つける。まず、請求と入金管理を仕組み化し、入金の遅れを早い段階で検知できるようにする方法があります。都度の書面作成に頼らず、未回収の芽を早く見つけたい場合に向きます。
1. 請求管理ロボ(株式会社ROBOT PAYMENT)

請求書の発行・送付から入金消込、未入金への自動催促メールまでを一つの画面で回せる、クラウド型の請求・債権管理システムです。株式会社ROBOT PAYMENTが提供し、単発・定期などの請求タイプを設定して請求書を自動で発行できます。
入金の消込を自動化して未入金をすぐに検知でき、期日を過ぎた取引先へは催促メールを自動で送れます。電話やSMS、自動音声を使った本格的な督促は同社の「債権回収ロボ」と連携して拡張する形で、単体での督促は自動催促メールが中心です。請求から回収管理までを仕組み化し、未回収を早い段階で見つけたい企業に有効です。
型2:与信と売掛金保証で未回収リスクを移す。次に、与信審査と未回収リスクの引き受け(売掛金保証)を外部に移し、貸し倒れそのものを避ける方法があります。いま滞っている1件の回収そのものというより、今後の取引で同じ未回収を繰り返さないための備えで、新規取引先の与信に不安がある場合や、回収の手間ごと任せたい場合に向きます。
2. 請求まるなげロボ(株式会社ROBOT PAYMENT)

与信審査から請求書の発行・送付、代金回収、入金消込、督促までを、ROBOT PAYMENTが代行する企業間取引向けの請求代行サービスです。自社の与信を通過した適格債権については、回収できなくても売掛金を100%保証します(保証は与信を通過した債権に限られます)。
与信を通過した取引分は、回収結果にかかわらず指定日に入金されるため、未回収のリスクを提供会社側へ移せる点が中核です。請求業務そのものを外部に委ね、貸し倒れの負担を軽くしたい企業に適しています。
3. NP掛け払い(株式会社ネットプロテクションズ)

企業間取引(BtoB)専業の後払い決済・請求代行サービスです。買い手企業の与信審査から請求書の発行・郵送、代金回収、入金管理、督促までを株式会社ネットプロテクションズが代行し、支払い遅延などで回収できない場合も売掛金を保証します(規約所定の除外事由を除きます)。2011年の提供開始以来、累計取扱高は1兆円を突破しています。
督促は、公式のFAQでメール・はがき・電話・弁護士法人への委託などの手段で段階的に行うとされています。与信通過率は99%(2026年3月末時点)で、請求業務を丸ごと委ねつつ未回収リスクを移したい企業に向いています。前述の請求まるなげロボと同じく、新規取引先の与信に不安がある場合の選択肢になります。
4. RP掛け払い(株式会社ROBOT PAYMENT)

ROBOT PAYMENTが提供する、企業間取引の掛け払い(後払い)を代行するサービスです。与信審査・請求書発行・代金回収・入金消込・督促までを引き受け、与信を通過した適格債権は、貸し倒れや入金遅延が起きても100%保証されます(法人間取引が対象です)。
取引先への与信と未回収リスクの引き受けを外部化できるため、利用企業は請求情報を登録して入金を待つ流れで完結します。掛け払いの提供と回収保証をまとめて任せたい企業に向いています。
型3:督促・回収の工程そのものを自動化する。最後に、督促の連絡や架電といった手間のかかる工程を自動化し、担当者の負担を抑えながら回収につなげる方法があります。督促の件数が多く、対応が属人化している場合に向きます。
5. 債権回収ロボ(株式会社ROBOT PAYMENT)

未入金の督促から回収までを、メール・SMS・オートコール(自動音声)・郵送などの手段を組み合わせて自動で実行するサービスです。債務者の属性や債権額に応じた督促の流れを設計でき、やり取りの履歴も一元管理します。2026年3月に提供が始まりました。
属人化しやすく負担の大きい督促を標準化し、催促のタイミングを自動で最適化する技術で特許を出願しています。ただし、これは自社で督促を自動化するためのSaaSであり、第三者が代わりに取り立てる回収代行会社や弁護士とは性質が異なります。
同社の「請求管理ロボ」と連携して請求から督促・回収まで一気通貫にできるほか、単独でも導入でき、内容証明を送っても支払われず督促そのものを仕組みで回したい場合の直接的な選択肢です。
6. DHKクラウドオートコール(株式会社電話放送局)

あらかじめ用意した発信リストへ自動で一斉に架電し、音声で案内を流すクラウド型のオートコール・IVR(自動音声応答)サービスです。株式会社電話放送局が提供し、未入金者への督促架電を人手に頼らず、大量かつ定時に実施できます。
1時間あたり5,000件以上の自動架電に対応し、在宅率の高い時間帯にまとめて発信できます。料金は応答した分に課金される従量型のため、郵送のように全件へコストがかかりません。ライフカードやAGミライバライなど督促用途での導入事例があり、督促の電話工程を無人化したい場合に適した手段です。
督促の連絡は、伝え方しだいで相手とのトラブルや苦情につながりやすい業務でもあります。オートコールで督促を自動化するうえで何に気をつけているかについて、提供元の電話放送局は次のように述べています。

入金案内や督促は、伝える内容が定型化しやすい一方で、案内の仕方によってはトラブルや苦情につながりやすい業務です。一方で、入金コールは人が案内する場合と比べて、トラブルや苦情を軽減できる側面ももあります。だからこそ、まずは“自動化しても顧客体験を損ねにくい設計”をすることが大切だと考えています。
オートコールは使い方を間違えると社会問題になりかねません。だから当社としては、用途の相性を見極めて、やめた方がいいケースは止める。その線引きも含めて一緒に考えています。
7. オーロラSMS by メディアSMS(株式会社メディア4u)

株式会社メディア4uが提供する、国内の携帯キャリアと直接接続する法人向けのSMS配信サービスです。支払いのリマインドや催告の通知をSMSで届けることで、電話がつながりにくい相手にも文字で連絡を残せ、督促連絡の負担を軽くします。
公式は、検証試験にもとづく99.9%(受信拒否・圏外・電源オフを除く)の到達率を掲げています。デロイト トーマツ ミック経済研究所の調査では、国内の法人向けSMS配信数で首位とされています。督促の一次リマインドを仕組み化したいときの選択肢になります。
出典・参考資料(1件)
8. SMSマルチPay(株式会社ネクスウェイ)

SMSでの支払い通知から本人認証、決済までをオンラインで一括して行う、請求・未収金回収サービスです。株式会社ネクスウェイがアグレックスと連携して提供します。到達率の高いSMSで支払い案内を届け、利用者ごとに生成した専用ページで複数の決済手段から選んで支払ってもらう設計で、回収率の向上と貸し倒れの低減を狙います。
SMSを送って終わりではなく、未入金者へのリマインド(督促連携)や、アグレックスのコールセンターからの督促架電・督促状発送といった業務委託(BPO)とも組み合わせられます。通知だけでなく「実際に回収まで進める導線」をSMSで作りたい企業に向いています。
まとめ
内容証明郵便は、支払期日を過ぎても入金されない売掛金に対する、法的手続きの一歩手前の正式な請求です。本記事の文例をもとに、債権の特定・支払期限・法的措置の予告を明確に記載し、配達証明を付けて送れば、催告の事実を証拠として残しながら、時効の完成を6ヶ月猶予できます。ただし猶予は1回きりで、内容証明だけで支払いを強制することはできません。
送っても支払われないときは、猶予の6ヶ月の間に支払督促や少額訴訟などの手続きへ進みます。あわせて、未回収が繰り返し起きているなら、請求・督促・回収の工程を仕組み化したり、売掛金保証で未回収リスクを移したりするサービスを検討すると、一件ごとの負担を根本から減らせます。自社の状況に合った回収の仕組みを、資料で比較しながら選んでみてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 内容証明郵便とは何ですか?
A. 内容証明郵便とは、いつ・どんな内容の文書を・誰から誰あてに送ったかを、差出人が作成した謄本によって郵便局(日本郵便)が証明する郵便制度です。売掛金の請求では、支払いを求めた事実とその日付を客観的な証拠として残せるため、口頭やメールの督促より一歩進んだ正式な請求手段として使われます。
ただし証明されるのは「その文書を送った事実」であって、記載内容が正しいことや相手に支払義務があることまでを証明するものではありません。
出典・参考資料(1件)
Q. 売掛金の時効は何年ですか?内容証明を送れば時効の進行は止められますか?
A. 売掛金の消滅時効は権利を行使できることを知った時(通常は支払期日)から原則5年で、内容証明による「催告」を行うとその時から6ヶ月間だけ時効の完成が猶予されます。ただし、この猶予は一時的なもので1回きりです。
再度催告しても延長されないため、時効を確定的に先延ばし(更新)するには、6ヶ月の猶予期間内に支払督促や訴訟などの裁判上の手続きへ進む必要があります。内容証明での催告は「6ヶ月の時間稼ぎ」と理解しておくのが正確です。
Q. 売掛金の内容証明は自分で書いても法的効力がありますか?弁護士名義でないとだめですか?
A. 自社の名義で作成・送付しても、催告による時効の完成猶予や証拠としての効力は、弁護士名義の場合と変わりません。内容証明を弁護士名義で出さなければならないという法律上の決まりはなく、本記事の文例をもとに自分で送ることもできます。
ただし弁護士名で送る内容証明は相手に与える心理的な圧力が強く、その後の法的手続きへ移行しやすい利点があります。少額で争いが小さいケースは自分で、金額が大きい・相手が支払いを争っている・時効が迫っている場合は弁護士への依頼を検討するとよいでしょう。
Q. 内容証明を送っても相手に無視された場合はどうすればよいですか?
A. 内容証明を送っても支払われないときは、支払督促や少額訴訟など裁判所の手続きへ進み、強制執行の根拠となる「債務名義」を得る段階に移ります。 内容証明自体には支払いを強制する力はなく、無視されたまま放置すると時効も進んでしまいます。催告で得た6ヶ月の猶予のうちに、60万円以下なら少額訴訟、書類審査で迅速に進めたいなら支払督促、といった形で金額や状況に応じて手続きを選びます。
出典・参考資料(2件)
Q. 内容証明を相手に受け取り拒否された・不在で届かない場合でも効力はありますか?
A. 相手が正当な理由なく受け取りを拒否した場合は、民法97条2項により、通常であれば到達したはずの時に到達したもの(みなし到達)として扱われ、催告の効力が生じます。 一方、長期の不在などで実際に届かなかった場合は到達が認められないこともあるため、配達証明で経緯を記録しておくと安心です。相手の所在が分からないときは、訴訟上の公示送達など別の方法を検討することになります。
Q. 内容証明と普通の督促(メール・FAX・普通郵便)は何が違いますか?
A. 最大の違いは「証明力」で、内容証明は送った文書の内容・差出人・受取人・差出日を郵便局が公的に証明し、配達証明を付ければ相手に届いた日付まで残せます。メール・FAX・普通郵便は手軽ですが、後から「そのような請求は受けていない」と否定されるおそれがあり、裁判で催告の事実を示す証拠としては弱くなります。
支払期日直後のリマインドは普通郵便やメールで足りますが、時効が迫っているときや最終通告として正式に請求するときは、内容証明を使う意味が大きくなります。
Q. 売掛金に遅延損害金は請求できますか?いくらになりますか?
A. 売掛金の支払いが遅れた場合は遅延損害金を請求でき、契約で利率を定めていなければ民法の法定利率(2026年10月時点で年3%)で計算します。金銭の支払いが遅れたことによる損害は、実際に損害が出たことを証明しなくても請求できると民法で定められており、起算日は通常、支払期日の翌日です。
ただし「商事債権は年6%」という古い情報が残っていますが、年6%を定めていた商法514条は2020年4月の民法改正で削除され、現在は商取引の売掛金でも年3%が適用されます。
Q. 売掛金の内容証明を弁護士に依頼すると費用はいくらかかりますか?
A. 弁護士に内容証明の作成・送付を依頼する場合の費用は、一般に数万円程度からが目安ですが、請求額や事案の難しさ、顧問契約の有無などによって幅があります。これとは別に、郵便局へ支払う実費(内容証明・一般書留・配達証明の加算料金)が1通あたり1,000〜1,500円程度かかります。
費用対効果を考え、少額で争いが小さいケースは本記事の文例で自分で、金額が大きい・次の法的手続きを見据える場合は弁護士への依頼を検討するとよいでしょう。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















