原価計算や工業簿記を扱っていると、「配賦(はいふ)」と「賦課(ふか)」という字面も意味も近い2つの言葉に出くわします。どちらも費用を「割り当てる」点は同じで、手元の費用がどちらにあたるのか、なぜ呼び方が分かれるのかが分かりにくいところです。
結論を先にいえば、違いは「割り当てる費用の種類」にあります。特定の製品・案件のためと分かる直接費を1対1でひもづけるのが賦課、複数にまたがる間接費を一定の基準で按分するのが配賦です。
本記事では、2つの違いを冒頭の対比表で一目で押さえたうえで、それぞれの意味と具体例、使い分けの理由、取り違えないための覚え方までを、原価計算基準の定義にもとづいて整理します。
目次
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配賦と賦課の違いを一目で
まずは2つの違いを表で押さえます。賦課と配賦は、どちらも発生した費用を製品の原価に割り当てる処理ですが、対象となる費用の性質と割り当て方が異なります。
| 比較項目 | 賦課(ふか/直課) | 配賦(はいふ) |
|---|---|---|
| 対象の費用 | 直接費(特定の製品・案件のためと分かる費用) | 間接費(複数の製品・部門に共通する費用) |
| 割り当て方 | 1対1で直接ひもづける | 配賦基準で割合を決めて按分する |
| 計算 | 基準による按分は不要 | 配賦基準・配賦率の計算が必要 |
| 別の呼び方 | 直課(ちょっか) | - |
| 代表例 | 製品専用の材料費、直接工の賃金 | 工場の電気代、間接工の賃金、減価償却費 |
この「直接ひもづけられる費用は賦課、できない費用は基準で配賦する」という線引きは、原価計算の実践規範である原価計算基準にも示されています。部門への割り当てを例にした条文では、直接認識できる費用と共通費用を次のように書き分けています。
部門個別費は、原価部門における発生額を直接に当該部門に賦課し、部門共通費は、原価要素別に又はその性質に基づいて分類された原価要素群別にもしくは一括して、適当な配賦基準によって関係各部門に配賦する。
出典:原価計算基準(企業会計審議会, 1962)一七 部門個別費と部門共通費
「直接に賦課」と「適当な配賦基準によって配賦」が一文で並んでいます。直接ひもづけられるかどうかが、賦課と配賦を分ける境目です。
賦課とは・配賦とは|それぞれの意味・具体例と使い分けの理由
ここからは、対比表で押さえた結論を一歩掘り下げます。賦課と配賦それぞれの定義と具体例を確認し、最後になぜ間接費は賦課できず配賦になるのかを整理します。まずは、費用が賦課と配賦に分かれる流れを図で押さえておきます。

賦課とは|直接費を特定の製品に直接ひもづける(直課)
賦課とは、特定の製品・案件のために使われたと分かる直接費を、その製品・案件の原価に1対1で直接ひもづけることです。按分の計算をはさまず、かかった費用をそのまま割り当てるため、直課(ちょっか)とも呼ばれます。
原価計算基準は、個別の製造指図書(製品・案件ごとの原価計算の単位)ごとに直接費を割り当てる処理を、次のように定めています。
個別原価計算における直接費は、発生のつど又は定期に整理分類して、これを当該指図書に賦課する。
出典:原価計算基準(企業会計審議会, 1962)三二 直接費の賦課
具体例としては、ある製品だけに使った主要材料費や、その製品の製造に直接たずさわった直接工の賃金が賦課の対象です。いずれも「どの製品のために使ったか」が明確なので、按分せずそのまま原価に計上できます。
たとえば、A製品のためだけに使った材料費10万円は、そのまま全額をA製品の原価に計上します。これが賦課(直課)です。
これらの費目は、原価計算基準が定める直接材料費・直接労務費・直接経費の区分に対応します。
出典・参考資料(2件)
- 出典:原価計算基準 八(製造原価要素の分類基準)(三) 製品との関連における分類|企業会計審議会, 1962
- 出典:原価計算基準 一〇(費目別計算における原価要素の分類)|企業会計審議会, 1962
「賦課」にはもう一つの意味がある|税・社会保険料の賦課金との違い
検索すると、原価計算とは別の文脈で「賦課」という言葉が出てくることがあります。税金や社会保険料などの分野では、賦課は国や自治体が負担額を割り当てて課すという意味で使われます。地方税法でも、税を課して徴収する手続きを「賦課徴収」と表現しています。
再生可能エネルギーの電気料金に上乗せされる「再エネ賦課金」や、固定資産税の賦課も同じ系統の使い方です。本記事が扱うのは原価計算の賦課(直課)で、税・公課の賦課とは別物として区別しておくと混乱しません。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:地方税法(昭和25年法律第226号。「賦課徴収」等)|e-Gov法令検索
配賦とは|間接費を配賦基準で複数に按分する
配賦とは、複数の製品や部門に共通してかかる間接費を、一定の基準(配賦基準)にしたがって各製品・部門に割り振ることです。どの製品のために使ったかを直接たどれない費用を、合理的な割合で分け合わせる処理といえます。
原価計算基準は、間接費を指図書へ割り当てる処理を次のように定めています。
個別原価計算における間接費は、原則として部門間接費として各指図書に配賦する。(中略)間接費は、原則として予定配賦率をもって各指図書に配賦する。
出典:原価計算基準(企業会計審議会, 1962)三三 間接費の配賦
具体例としては、工場全体で使う電気代、複数製品の製造を支える間接工の賃金、製造設備の減価償却費などが配賦の対象です。これらは特定の製品だけのための費用ではないため、配賦基準を決めて按分します。原価計算基準の費目分類でも、電力料や減価償却費は間接経費、間接工賃金は間接労務費に区分されています。
出典・参考資料(2件)
- 出典:原価計算基準 八(製造原価要素の分類基準)(三) 製品との関連における分類|企業会計審議会, 1962
- 出典:原価計算基準 一〇(費目別計算における原価要素の分類)|企業会計審議会, 1962
なぜ間接費は賦課できず配賦になるのか
賦課も配賦も「費用を製品の原価に割り当てる」点では同じです。それでも呼び方が分かれるのは、間接費が特定の製品に1対1でひもづけられないからです。
たとえば工場の電気代は、A製品とB製品のどちらにいくら使ったかを正確に測れません。そこで、直接作業時間や生産数量などの配賦基準を使い、一定の割合で各製品に振り分けます。直接たどれる費用は賦課、たどれない費用は基準で配賦する、という役割分担になっているわけです。
間接費をあえて配賦するのは、製品ごとの原価をより正確に把握するためです。共通費を無視すると各製品の本当のコストが見えず、価格設定や採算の判断を誤りかねません。配賦によって間接費まで含めた原価が分かり、正確な原価計算につながります。
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賦課と配賦の覚え方・取り違えない工夫
字面が似ているため、学習中はどちらがどちらか迷いがちです。意味の中心をつかむと取り違えにくくなります。
身近なたとえでいえば、飲み会の会計に似ています。自分が頼んだ料理の代金をそのまま払うのが賦課、全員で頼んだ大皿料理を人数で割り勘にするのが配賦です。「本人のためと分かる費用はそのまま=賦課」「みんなの費用は割って配る=配賦」と結びつけると区別しやすくなります。
簿記の勘定の流れで覚える方法もあります。材料費・労務費・経費といった費目から仕掛品へ直接振り替わるのが賦課、いったん製造間接費に集めてから仕掛品へ振り分けるのが配賦です。「間接費を経由するかどうか」で見分けられます。
配賦の進め方(配賦基準の設定から配賦額の計算まで)
違いを押さえたところで、配賦が実際にどう計算されるかを簡単に確認します。配賦は、配賦基準を決めてから、配賦率と配賦額を計算する流れで進みます。

配賦基準を決める
配賦基準とは、間接費をどの割合で各製品・部門に割り振るかを決めるものさしです。間接費の発生と関係の深い基準を選ぶのがポイントで、原価計算基準は物量基準の例として直接作業時間・機械運転時間・生産数量を挙げています。
実務では、これらに加えて床面積(建物の減価償却費や地代の配賦)や売上高などを基準に使うこともあります。費用の性質に合った基準を選ぶことで、より実態に近い原価が計算できます。
出典・参考資料(1件)
- 出典:原価計算基準 三三(間接費の配賦)|企業会計審議会, 1962
配賦率・配賦額を計算する
配賦基準が決まったら、間接費の総額を基準の合計で割って配賦率を求め、各製品・部門の基準の実績に配賦率を掛けて配賦額を計算します。
たとえば、工場の間接費の合計が600万円で、配賦基準を直接作業時間(全体で3,000時間)とした場合、配賦率は1時間あたり2,000円です。ある製品の直接作業時間が500時間なら、その製品への配賦額は100万円になります。このように、基準の使用量に応じて共通費を各製品へ割り当てます。
間接費をいったん部門ごとに集計し、部門から部門、部門から製品へと順に割り振る場合は、配賦を複数回くり返します。これを多段階配賦と呼びます。
間接費の配賦を効率化する|配賦を自動化できる管理会計システム
配賦は、配賦基準の設定や、部門から部門、部門から製品へと段階的に割り振る多段階の計算が手作業になりやすく、担当者に依存しがちな業務です。Excelで配賦表を組んでいると、基準を見直すたびに数式の修正が必要になり、集計ミスや属人化の温床にもなります。
こうした配賦の手間は、配賦ルールを設定して自動計算できる管理会計システムで軽くできます。配賦基準や配賦ルールをシステム上で定義しておけば、同じ配賦を繰り返し実行でき、基準を変えた場合の比較もしやすくなります。サービスによっては、部門から部門へ段階的に割り振る多段階配賦にも対応します。
ここでは、管理会計システムのうち配賦に対応するサービスを比較します。配賦を予実管理のなかで使いたいか、製品・工事ごとの原価計算で使いたいかによって、見るべきサービスの系統は変わります。製品や工事・案件ごとの原価計算に深く踏み込みたい製造業・建設業では、原価管理システムも選択肢になります。
| サービス名 | DIGGLE(ディグル) | AVANT Cruise | Loglass 経営管理 | 勘定奉行クラウド | Manageboard |
|---|---|---|---|---|---|
| 配賦基準の設定 | ● | ● | ● | ●原価配賦は上位iSエディション | ●売上高比・人数比に対応 |
| 多段階配賦 | ● | ● | △公式に明示なし | △公式に明示なし | △公式に明示なし |
| 配賦の対応内容 | 配賦元・配賦先・配賦基準を設定し、ルール単位でON/OFF・スナップショット比較 | マスタ設定のみで多段階配賦・異なる配賦ルールに対応 | 配賦ルールを設定し、ワンクリックで配賦の有無を切り替え | 複数の配賦基準・配賦パターンを設定、一括配賦(勘定奉行iクラウド[個別原価管理編]) | 共通費配賦(配賦基準=売上高比・人数比)、最大10階層の部門グルーピング |
| 初期費用 | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 50,000円〜(個別原価管理編) | 要問い合わせ |
| 月額費用 | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 27,500円〜(個別原価管理編iAシステム) | 要問い合わせ |
| 対象規模 | 中堅〜上場企業 | 成長企業〜大企業 | 中堅〜大企業 | 中小〜中堅企業 | 中小〜中堅企業 |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る |
ここでは、比較表のうち配賦機能を公式に詳しく説明しているサービスを例に、配賦の具体的な使い方を見てみます。
DIGGLE(ディグル)

DIGGLEは、ディグル株式会社が提供する、予算・実績・見込をクラウド上で一元管理する予実管理(予算実績管理)特化のサービスです。Excel中心の管理で起こりがちな属人化や集計の手間を抑え、会計システムからのデータ取り込みと予実の突合を自動化します。
配賦については、配賦元・配賦先・配賦基準を設定できる多段階配賦機能を公式に備えています。配賦ルールごとにワンクリックで適用のオン・オフを切り替えられ、配賦を反映した後の数値をスナップショットとして保存して見比べることもできます。配賦の条件を変えながら損益への影響を確認したい場面に向いています。
配賦への対応はサービスごとに差があります。ここで取り上げた以外の製品も含めて、管理会計システムを目的や企業規模から比較して選びたい場合は、次の記事で選び方とおすすめを詳しく解説しています。
管理会計システムおすすめ16選を比較|目的・規模別の選び方とタイプ別の違い
月次の予実管理がExcelに集約され、各部門からファイルを回収して集計し終えた頃には数字が古くなっている。部門別・事業別の損益が見えず、原価の配賦や分析軸ごとの集計は手作業に頼っている。こうした状態は、事業の多角化や拠点の増加とともに限界を…
まとめ
賦課と配賦の違いは、割り当てる費用の種類にあります。特定の製品・案件のためと分かる直接費を1対1でひもづけるのが賦課(直課)、複数にまたがる間接費を配賦基準で按分するのが配賦です。間接費は直接ひもづけられないため、正確な原価計算のために基準を決めて配賦します。
配賦は配賦基準の設定や多段階の計算で手間がかかりやすい業務です。配賦ルールを設定して自動化できる管理会計システムを使えば、属人化や集計ミスを抑えられます。自社の配賦業務に合うサービスを探すときは、資料をまとめて取り寄せて比較してください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 配賦と賦課の違いを一言でいうと何ですか?
A. 配賦と賦課の違いは割り当てる費用の種類にあり、特定の製品・案件のためと分かる直接費を1対1でひもづけるのが賦課、複数にまたがる間接費を配賦基準で按分するのが配賦です。どちらも発生した費用を製品の原価に割り当てる処理で、直接ひもづけられるかどうかが両者を分ける境目になります。
Q. 「配賦」「賦課」はどう読みますか?
A. 配賦は「はいふ」、賦課は「ふか」と読みます。賦課は直接費をそのまま割り当てる処理で「直課(ちょっか)」とも呼ばれ、配賦は間接費を一定の基準で按分する処理を指します。字面も読みも似ていますが、別の処理を表す言葉です。
Q. 賦課と直課は同じ意味ですか?
A. 賦課と直課は同じ意味で、どちらも直接費を特定の製品・案件の原価に1対1でひもづける処理を指します。按分の計算をはさまず、かかった費用をそのまま割り当てることから、賦課は「直課(ちょっか)」とも呼ばれます。間接費を配賦基準で按分する「配賦」とは対になる言葉です。
Q. 手元の費用が賦課と配賦のどちらになるかは、どう見分ければよいですか?
A. その費用が特定の製品・案件のためだけに使ったと言い切れるなら賦課、複数の製品・部門に共通してかかっているなら配賦です。たとえば、ある製品専用の材料費や製造に直接たずさわった直接工の賃金は賦課、工場全体の電気代や複数製品を支える設備の減価償却費は配賦になります。特定の製品に1対1でひもづけられるかどうかで判断します。
Q. 税金や社会保険料の「賦課金」は、原価計算の賦課と同じ意味ですか?
A. 税・社会保険料の「賦課」と原価計算の「賦課」は別の意味です。税や社会保険料の分野では、賦課は国や自治体が負担額を割り当てて課すことを指し、再エネ賦課金や固定資産税の賦課がこれにあたります。一方、原価計算の賦課は直接費を特定の製品にひもづける直課の意味です。同じ字でも文脈で意味が異なるため、区別しておくと混乱しません。
Q. 配賦基準にはどんな種類がありますか?
A. 配賦基準には、直接作業時間・機械運転時間・生産数量といった物量基準のほか、床面積や売上高などがあります。原価計算基準は物量基準の例として直接作業時間・機械運転時間・生産数量を挙げており、実務ではこれらに加えて床面積(建物の減価償却費や地代の配賦)や売上高なども使われます。間接費の発生と関係の深い基準を選ぶほど、より実態に近い原価を計算できます。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















