6月になると、労働局から緑や青の封筒が届き、労働保険の年度更新の時期を迎えます。年に一度の手続きのため、「今年はいつまでに、何をすればいいのか」を毎回確認し直すという担当者は少なくありません。
年度更新は、前年度の確定保険料を精算し、今年度の概算保険料を申告・納付する手続きです。賃金集計から保険料の計算、申告書の記入、提出・納付までを期限内に終える必要があり、料率は年度によって改定されることもあります。
本記事では、令和8年度(2026年度)の申告期間と納付期限、概算保険料・確定保険料の計算方法と計算例、e-Govでの電子申請や分割納付のやり方、間違えやすい点までを解説します。年度更新を期限内に正しく申告・納付するための手順を確認していきましょう。
年度更新の手続きは、おおまかに次の流れで進みます。全体像をつかんでから、各ステップの詳細を順に見ていきましょう。
まず前年度の賃金総額を集計し、確定保険料を計算して前年度に納めた概算保険料との差額を精算します。次に今年度の概算保険料を計算し、申告書に確定保険料・概算保険料・差額の充当・一般拠出金を記入します。
最後に、郵送・窓口・e-Govのいずれかで申告書を提出し、保険料を納付します。一括納付は7月10日までで、条件を満たせば分割納付(延納)も可能です。
目次
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今年の労働保険の年度更新はいつまで?申告期間と納付期限
はじめに、読者の多くが最初に確認したい「今年の申告期間」と「納付期限」を整理します。労働保険の年度更新は、毎年6月1日から7月10日までの間に申告・納付を行うのが基本です。
| 項目 | 令和8年度(2026年度) |
|---|---|
| 申告期間 | 6月1日〜7月10日 |
| 保険料の納付期限(一括納付) | 7月10日 |
| 口座振替の引落日(一括納付・第1期分) | 9月7日 |
今年の申告期間(令和8年度は6月1日〜7月10日)
令和8年度(2026年度)の年度更新の申告期間は、2026年6月1日から7月10日までです。厚生労働省は、年度更新に係るお知らせで次のように案内しています。
令和8年度労働保険の年度更新期間は 6月1日(月)~7月10日(金) です。
出典:労働保険年度更新に係るお知らせ|厚生労働省
※年度更新の申告書は、管轄の都道府県労働局や労働基準監督署への郵送、または「電子申請」でも受け付けており、直接窓口へ出向くことなく申告することができます。
申告期間は毎年6月1日から7月10日までで固定されており、年によって初日・最終日の曜日が変わります。最終日が土日祝に重なる年は翌開庁日が期限になるため、その年の公式のお知らせで確認してください。
今年の納付期限(一括納付は7月10日まで)
保険料を一括で納める場合、令和8年度の納付期限は申告期限と同じ2026年7月10日です。口座振替を利用している場合は引き落とし日が後ろ倒しになり、一括納付(第1期分)の引落日は2026年9月7日になります。保険料を3回に分けて納める延納を選んだ場合の各期の期日は、記事後半の「保険料の分割納付(延納)」で整理します。
出典・参考資料(1件)
期限を過ぎるとどうなる(追徴金・督促)
期限に関わる不利益は、「申告をしなかった・申告に誤りがあった場合」と「正しく申告したが納付が遅れた場合」で性質が異なります。両者を分けて理解しておくと、余計な負担を避けられます。

申告をしなかったり、申告内容に誤りがあって保険料の不足が生じたりした場合は、政府が保険料額を決定したうえで、不足分に加えて追徴金が課されます。追徴金の額は、労働保険の保険料の徴収等に関する法律(徴収法)第21条で、納付すべき額の100分の10(10%)と定められています。厚生労働省も、一括有期事業の実地調査で申告誤りが確認された場合について、次のように案内しています。
申告誤りにより、保険料の不足が確認された場合には、不足分の保険料の追加納付や追徴金(保険料の10%)の納付手続を行っていただく必要があります
出典:労働保険年度更新に係るお知らせ|厚生労働省
一方、申告は正しく行ったものの納付が期限に遅れた場合は、追徴金ではなく督促の対象です。徴収法第27条は、保険料を納付しない者があるときは政府が期限を指定して督促しなければならないと定めています。督促状の指定期限までに納めないと延滞金が加算され、最終的には財産の差押えなど滞納処分に進むことがあります。「期限に遅れると一律10%の追徴金」ではない点に注意してください。
出典・参考資料(1件)
労働保険の年度更新とは
ここからは、年度更新がどのような手続きで、誰の賃金を対象にするのかを確認します。手続きの全体像をつかんでおくと、後半の計算や申告の作業が理解しやすくなります。

概算保険料を納め、確定保険料で精算する仕組み
労働保険料は、保険年度(4月1日から翌年3月31日まで)の初めに、その年度の賃金総額の見込みをもとに概算保険料を計算して前払いします。そして翌年度の年度更新で、実際に支払った賃金総額から確定保険料を計算し、前年度に前払いした概算保険料との差額を精算します。
このように年度更新では、「前年度の確定保険料の精算」と「今年度の概算保険料の申告・納付」を1枚の申告書でまとめて行います。確定保険料が前年度の概算保険料を上回っていれば差額を追加で納め、下回っていれば超過分を今年度の概算保険料などに充てる仕組みです。この充当・還付は徴収法第19条に根拠があります。
対象となる労働者(労災保険と雇用保険で範囲が違う)
賃金集計で最初につまずきやすいのが、労災保険と雇用保険で対象となる労働者の範囲が違う点です。労災保険は、パート・アルバイトや日雇いを含め、その事業に雇用されるすべての労働者が対象です。これに対し雇用保険は、原則として1週間の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがあるなど、被保険者の要件を満たす人が対象になります。
このため、短時間のパートが多い事業所では、労災保険の対象となる賃金総額のほうが雇用保険の対象となる賃金総額より大きくなるのが一般的です。賃金集計表も労災保険用と雇用保険用で欄が分かれており、それぞれの対象者の賃金を別々に集計します。役員報酬や退職金など賃金に含めないものの扱いは、後半の計算方法で整理します。
概算保険料・確定保険料の計算方法
ここからは、実際に手を動かして計算できるよう、賃金の集計から保険料の算出、精算までを順に見ていきます。令和8年度の料率を使った計算例も示します。
賃金集計表に集計するもの(賃金に含む・含まない)
保険料の計算の出発点は、前年度に支払った賃金総額の集計です。賃金総額には、基本給のほか、通勤手当・住宅手当・時間外手当・賞与など、労働の対償として支払われるものを含めます。一方で、役員報酬(労働者としての賃金部分を除く)、退職金、結婚祝金や見舞金などの恩恵的給付、出張旅費の実費弁償などは賃金総額に含めません。
集計は、労災保険の対象者(全労働者)と雇用保険の対象者(被保険者)に分けて行います。厚生労働省が配布する確定保険料算定基礎賃金集計表を使うと、月ごとの人数と賃金を入力して年間の賃金総額を求められます。入手先は後述の公式様式の案内で紹介します。
労災保険率・雇用保険率・一般拠出金率(令和8年度の料率)
保険料は、集計した賃金総額に料率を掛けて計算します。労働保険料は「労災保険分」「雇用保険分」からなり、確定保険料と併せて石綿健康被害救済のための一般拠出金も申告・納付します。令和8年度は、雇用保険率が前年度から引き下げられた点に注意が必要です。
雇用保険率は、令和8年4月1日から令和9年3月31日までの期間について定められています。保険料の計算では、賃金総額に労使合計の雇用保険率を掛けます。確定保険料は令和7年度、今年度の概算保険料は令和8年度の料率を使うため、両年度の雇用保険率を事業の種類別に示します。前年度(令和7年度)と比べ、全区分で合計1.0/1,000の引き下げです。
| 事業の種類 | 令和8年度 労働者負担 | 令和8年度 事業主負担 | 令和8年度 雇用保険率(合計) | 令和7年度 雇用保険率(合計) |
|---|---|---|---|---|
| 一般の事業 | 5/1,000 | 8.5/1,000 | 13.5/1,000 | 14.5/1,000 |
| 農林水産・清酒製造の事業 | 6/1,000 | 9.5/1,000 | 15.5/1,000 | 16.5/1,000 |
| 建設の事業 | 6/1,000 | 10.5/1,000 | 16.5/1,000 | 17.5/1,000 |
雇用保険率は労使合計(単位:/1,000)。両年度の値は厚生労働省「令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内」に基づきます。
労災保険率は事業の種類ごとに異なり、令和8年度は令和6年4月の改定後の料率から据え置かれています。たとえば「その他の各種事業」は3/1,000、「金融業、保険業又は不動産業」は2.5/1,000です。自社の業種の率は、厚生労働省の労災保険率表(下記のPDF)で確認してください。一般拠出金率は、すべての労災保険適用事業主に共通で1,000分の0.02(0.02/1,000)です。
出典・参考資料(4件)
確定保険料と前年概算の差額を精算する考え方
確定保険料を計算したら、前年度に申告・納付した概算保険料と比べます。確定保険料が前年度の概算保険料を上回っていれば、不足分を今年度の概算保険料と一緒に納めます。下回っていれば、超過分を今年度の概算保険料に充て、充てきれない分は還付を受けられます。この精算と今年度の概算保険料の申告・納付を、同じ申告書で行います。
具体的な計算例
一般の事業で、労災保険率が「その他の各種事業」の3/1,000にあたる事業所を例に、令和8年度の年度更新を計算してみます。前年度(令和7年度)に支払った賃金総額を、労災保険の対象(全労働者)5,000万円、雇用保険の対象(被保険者)4,500万円とします。
具体的には、次のように計算します。
| 区分 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 令和7年度 確定・労災保険分 | 5,000万円 × 3/1,000 | 150,000円 |
| 令和7年度 確定・雇用保険分 | 4,500万円 × 14.5/1,000 | 652,500円 |
| 令和7年度 確定保険料(労働保険料) | 150,000円 + 652,500円 | 802,500円 |
| 前年度に納付済みの概算保険料 | (前年に申告済み) | 780,000円 |
| 精算(確定 − 前年概算) | 802,500円 − 780,000円 | 22,500円(不足・追加納付) |
| 令和8年度 概算・労災保険分 | 5,000万円 × 3/1,000 | 150,000円 |
| 令和8年度 概算・雇用保険分 | 4,500万円 × 13.5/1,000 | 607,500円 |
| 令和8年度 概算保険料 | 150,000円 + 607,500円 | 757,500円 |
| 一般拠出金(確定保険料と併せて納付) | 5,000万円 × 0.02/1,000 | 1,000円 |
| 今年度に納める額 | 757,500円 + 22,500円 + 1,000円 | 781,000円 |
雇用保険率が令和8年度に引き下げられたため、賃金総額が同じでも概算保険料は前年度の確定額より少なくなります。実際の料率・賃金は事業所ごとに異なるため、自社の業種の労災保険率と最新の賃金総額を用いて計算してください。
労働保険の年度更新の申告・納付のやり方
賃金集計と保険料の計算ができたら、申告書を作成し、提出・納付します。ここでは申告書の書き方の要点と、提出経路・納付方法の選び方、公式様式の入手先を整理します。
申告書の書き方(確定保険料・概算保険料の記入のポイント)
年度更新申告書には、賃金集計表で求めた確定保険料(先ほどの例では802,500円)、今年度の概算保険料(同757,500円)、確定保険料と前年度の概算保険料の差額(充当または不足の額)、一般拠出金、最終的な納付額(同781,000円)を記入します。
記入にあたっては、労災保険分と雇用保険分の賃金総額を取り違えないこと、確定保険料は令和7年度・概算保険料は令和8年度の料率で計算した額を記入すること、差額を充当欄・不足額欄に正しく振り分けることが要点です。
申告書や納付書の印字された数字・文字は訂正できないため、金額の記入は慎重に行います。厚生労働省は申告書の書き方を事業の種類別に案内しており、記入例も公開しています。入手先は後述します。
提出経路(郵送・窓口・e-Gov電子申請)の選び方
申告書の提出方法は、管轄の都道府県労働局・労働基準監督署への郵送、窓口への持参、e-Govを使った電子申請の3通りです。窓口に出向かずに済ませたい場合は郵送か電子申請を選びます。電子申請は、申告から納付までをオンラインで完結でき、繁忙期の窓口の混雑を避けられます。
e-Govによる電子申請の手順
電子申請は、政府の電子申請システムe-Govから行います。あらかじめGビズIDを取得しておくと、電子証明書がなくても申請できます。手続きの基本的な流れや操作方法は、厚生労働省の電子申請案内ページと電子申請操作マニュアルで確認できます。令和8年度のe-Govでの受付は申告期間(6月1日〜7月10日)に合わせて行われ、受付開始日などの最新情報はe-Govの新着情報で告知されます。
出典・参考資料(2件)
電子申請が義務となる事業所の条件
一定の大規模法人は、年度更新を含む労働保険の手続きで電子申請が義務づけられています。対象は、資本金・出資金などの額が1億円を超える法人、相互会社、投資法人、特定目的会社です。これらの事業所には、令和8年度の年度更新から紙の申告書が送付されなくなり、代わりに電子申請に必要な情報を記載した通知書が、従来の緑・青の封筒ではなく茶封筒で届きます。
電子申請が義務付けられている事業場は、今年度(令和8年度)の年度更新から、例年お送りしている紙の申告書の送付がなくなり、代わりに、電子申請に必要な情報を記載した通知書等を送付いたします。
出典:労働保険年度更新に係るお知らせ|厚生労働省
納付方法(納付書・口座振替・ペイジー電子納付)
保険料の納付は、金融機関や所轄の労働局・労働基準監督署の窓口で納付書を使って納める方法のほか、口座振替、ペイジーによる電子納付が利用できます。口座振替を利用すると引落日が通常の納期限より後ろ倒しになり、納付忘れも防げます。電子申請で電子納付を選べば、領収済通知書(納付書)に記載された番号を使い、ペイジー対応の金融機関からオンラインで納付できます。
公式様式・記入例・計算支援ツールの入手先
賃金集計表(Excel)、申告書の記入例(PDF)、年度更新申告書計算支援ツール(継続事業用・雇用保険用・建設事業用)は、厚生労働省の主要様式ダウンロードコーナーから入手できます。計算支援ツールは、賃金総額を入力すると保険料を自動計算できるため、手計算のミスを防ぐのに役立ちます。
出典・参考資料(1件)
保険料の分割納付(延納)の条件と各期の納付期日
概算保険料がまとまった額になる場合、一定の条件を満たせば、保険料を3回に分けて納める延納(分割納付)を申請できます。ここでは延納できる条件と各期の納付期日を整理します。
延納できる条件(概算保険料の額・労働保険事務組合への委託)
延納できるのは、今年度の概算保険料の額が40万円以上の事業です。ただし、労災保険または雇用保険のどちらか一方のみが成立している事業では、20万円以上で延納できます。また、労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託している事業は、概算保険料の額にかかわらず延納できます。延納するには、申告書を提出する際に延納の申請を行います。これらは徴収法第18条と同法施行規則第27条に定められています。
有期事業以外の事業であつて法第十五条第一項の規定により納付すべき概算保険料の額が四十万円(労災保険に係る保険関係又は雇用保険に係る保険関係のみが成立している事業については、二十万円)以上のもの又は当該事業に係る労働保険事務の処理が労働保険事務組合に委託されているもの(略)についての事業主は、同項の申告書を提出する際に法第十八条に規定する延納の申請をした場合には、その概算保険料を、(略)各期に分けて納付することができる。
出典:労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則 第27条|e-Gov法令検索
各期(第1〜3期)の納付期日
延納する場合、概算保険料を3期に分けて納めます。令和8年度の各期の納付期限は、納付方法によって次のとおりです。
| 区分 | 第1期 | 第2期 | 第3期 |
|---|---|---|---|
| 通常の納期限 | 令和8年7月10日 | 令和8年11月2日 | 令和9年2月1日 |
| 口座振替を利用する場合 | 令和8年9月7日 | 令和8年11月16日 | 令和9年2月15日 |
| 労働保険事務組合 | 令和8年7月10日 | 令和8年11月16日 | 令和9年2月15日 |
労働保険の年度更新で間違えやすい点
年に一度の手続きのため、毎年同じところでつまずきがちです。ここでは、申告誤りにつながりやすい点を先回りして整理します。
賃金の集計に含める・含めないの取り違え
通勤手当や住宅手当は賃金に含める一方、退職金や結婚祝金などの恩恵的給付、出張旅費の実費弁償は含めません。含めるべき手当を落とすと確定保険料が過少になり、後の調査で不足が判明すると追加納付や追徴金につながります。賞与を含め忘れるケースも起きやすいため、年間の支給実績を漏れなく拾います。
料率改定(雇用保険率など)の反映漏れ
雇用保険率は令和8年4月1日から改定され、一般の事業で前年度の14.5/1,000から13.5/1,000へ引き下げられました。確定保険料は令和7年度の料率、今年度の概算保険料は令和8年度の料率と、適用する年度を取り違えないよう注意します。前年と同じ料率表のまま計算すると、概算保険料の額がずれます。
出向労働者の取扱い(在籍出向・移籍出向)
出向者がいる場合、その賃金をどちらの事業所の集計に含めるかを誤りやすい点です。労災保険は、出向者が実際に指揮命令を受けて働いている出向先の賃金として扱うのが原則です。雇用保険は、主たる賃金を支払う事業所で被保険者とするため、出向元・出向先のどちらで賃金を支払っているかによって集計先が変わります。自社が出向元か出向先かで取扱いが分かれるため、賃金の支払い実態を確認して集計します。
65歳以上の高年齢労働者の雇用保険の取扱い
65歳以上の労働者も、週の所定労働時間などの要件を満たせば雇用保険の被保険者です。以前は高年齢労働者の雇用保険料が免除されていましたが、現在は免除がなく、保険料の対象になります。対象者を集計から外さないよう確認します。
建設業と一般事業の計算方法の違い
建設業では、労災保険と雇用保険で保険関係の成立の仕方が分かれ、労災保険料を請負金額に労務費率を掛けて計算する方法を用いる場合があります。賃金総額に料率を掛ける一般の事業とは計算の枠組みが異なるため、建設業の事業所は建設事業用の計算支援ツールや記入例を使って計算します。
提出前の最終チェック(桁誤り・対象者の算入漏れ)
計算が終わったら、提出前に賃金総額の桁や料率の適用年度を見直します。確定保険料と前年概算の差額が想定より大きいときは、賃金総額の桁誤りや、短時間労働者・出向者の算入漏れを疑うと原因を見つけやすくなります。申告書の印字は訂正できないため、計算支援ツールの結果と突き合わせてから記入すると安心です。
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自分でやるか、労働保険の手続きごと任せるか
年度更新は、賃金集計や対象者の切り分け、毎年の料率改定の確認など、年に一度しか触れないわりに手間がかかり、誤ると追加納付や追徴金のリスクを伴う手続きです。自社で正確にやり切るのが難しいと感じる場合は、給与計算に加えて労働保険の年度更新を含む手続きまで任せられるアウトソーシングを利用する選択肢があります。
給与計算アウトソーシング全般について、委託できる業務範囲や料金体系、従業員規模別の選び方まで詳しく比較したい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
給与計算アウトソーシングおすすめ34選を比較|業務範囲・料金体系・規模別の選び方
毎月の給与計算や賞与計算、年末調整、社会保険の手続きに、特定の担当者が追われていないでしょうか。社会保険料率や税制は毎年のように改正され、その都度の確認作業まで含めると、経理や人事、総務の少人数体制では業務が属人化しやすくなります。担当者が…
ここでは、給与計算とあわせて労働保険の年度更新の受託を公式に示しているサービスを紹介します。受託範囲(申告・納付まで含むか、社会保険の手続きまで任せられるか)やスポット依頼の可否はサービスごとに異なるため、依頼時に確認してください。
| サービス名 | freee人事労務アウトソース | NOC給与計算アウトソーシング | COMIT HR | エスペイロール | 東京丸の内社会保険労務士法人 | 社会保険労務士東京福寿事務所 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 提供形態 | システム提供一体型(BPaaS) | 給与計算特化型 | 給与計算特化型 | 給与計算特化型(社労士法人) | 社労士法人(給与計算+手続きの一括電子申請) | 社労士事務所(社保・労保手続き+給与計算) |
| 労働保険の年度更新の受託 | ●年次業務として明記(申告・納付の範囲は要問い合わせ) | ●「労働保険年度更新処理」を明記(申告・納付の範囲は要確認) | ●概算・確定保険料の計算・納付書作成まで明示(申告書作成・提出は要確認) | ●金額集計から申告書記入まで代行(社会保険手続き代行サービス) | ●給与計算と併せて一括電子申請(公式訴求) | ●手続き代行として明記(月額顧問料の範囲で対応とされる) |
| 社会保険手続きの代行 | 要問い合わせ 公式に社会保険手続きの明記なし | ●社会保険労務士法人・提携社労士が担当 | ●提携社会保険労務士法人が担当 | ●社労士法人が代行(給与計算とは別サービス) | ●月額変更届・算定基礎届等を代行 | ●社保新規適用・資格取得喪失・算定基礎届等を電子申請で代行 |
| スポット依頼 | 要問い合わせ | ●可(住民税年度更新・年末調整等。小規模は断る場合あり) | 要問い合わせ 委託業務の組み合わせ・部分委託は可 | ●可(合併手続きをスポット依頼した事例あり) | 要問い合わせ | ●可(単発の手続きに対応) |
| 料金 | 月額95,000円(50名分込み)+追加1人1,900円/月(税抜) | 要問い合わせ(業務範囲・従業員規模に応じた個別見積) | 要問い合わせ(価格シミュレーションあり) | 要問い合わせ(給与計算は3パッケージ) | 給与計算代行 月額10,000円+2,000円×対象者数(税別、賞与別途) | 社労士顧問料 1〜3名 月8,000円〜/給与計算代行 5,500円〜(税別) |
| 詳細情報 | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | 公式サイト | 公式サイト |
※上記は2026年10月時点の各社公式サイトの情報に基づきます。労働保険の年度更新の受託範囲(申告・納付まで含むか)・社会保険手続きの代行・スポット依頼の可否・料金は、依頼前に各社の最新情報でご確認ください。
1. freee人事労務アウトソース(フリー株式会社)

クラウド人事労務ソフト「freee人事労務」の上で、フリー株式会社が給与計算・労務業務を代行するサービスです。代行した業務の情報がソフト上に蓄積され、企業の成長に合わせて外注から内製へ移していける設計になっています。
月次給与計算・賞与計算・年末調整・入退社手続きのサポートに加え、年に一度の業務として労働保険の年度更新・定時決定が受託業務に挙げられています。料金は、アウトソースプランで月額95,000円(50名分の利用料を含む)に、追加1名あたり月額1,900円(税抜)という体系が公開されています。
既存の顧問社労士とはクラウド上で書類を共有するなどの連携ができ、社労士がいない場合はフリーから紹介を受けることも可能です。
2. NOC給与計算アウトソーシング(芙蓉アウトソーシング&コンサルティング株式会社)

芙蓉アウトソーシング&コンサルティング株式会社(旧NOCアウトソーシング&コンサルティング)が提供する給与計算アウトソーシングです。給与・賞与計算や年末調整を基本サービスとし、社会保険・労働保険業務の区分に「労働保険年度更新処理」が明示されています。社会保険・労働保険の手続きは、NOC社会保険労務士法人または提携する社会保険労務士事務所が担います。
対応企業規模は従業員300名以上を目安としつつ、300名以下も相談可能とされています。住民税の年度更新や年末調整などのスポット業務の依頼にも応じるとされており、料金は業務範囲や従業員規模に応じた個別見積もりです。年度更新について申告・納付まで含むかは依頼時に確認するとよいでしょう。
3. COMIT HR(株式会社InfoDeliver)

株式会社InfoDeliverが運営する、給与計算を基盤とした人事労務の業務代行(BPO)サービスです。給与・賞与計算、勤怠管理、年末調整、入退社手続き、従業員からの問い合わせ対応まで、委託したい業務を組み合わせて利用できます。BPO運営実績20年を掲げ、導入は約3か月でスタートするとしています。
労働保険の年度更新は、概算・確定保険料の計算と納付書の作成を標準業務として明示しています。社会保険・労働保険の申請と手続き代理は社会保険労務士の独占業務にあたるため、提携する社会保険労務士法人が担い、問い合わせ窓口はCOMIT HRに一本化できます。すでに社労士に委託している場合は、その契約を続けながら給与計算などだけを委託することも可能とされています。
4. エスペイロール(社会保険労務士法人エスネットワークス)

社会保険労務士法人エスネットワークスが提供する給与計算アウトソーシング「エスペイロール」です。標準・ビジネス・マネージメントの3つのパッケージで委託範囲を段階的に選べる点が特徴で、社会保険労務士が9名在籍しています。
労働保険の年度更新は、同法人の社会保険手続き代行のサービスとして、金額の集計から申告書の記入まで代行すると明示されています。申請先は労働基準監督署などで、電子申請または郵送に対応します。合併に伴う手続きのみをスポットで依頼した事例もあり、必要な手続きだけを切り出して委託することもできます。給与計算と社会保険手続きは別サービスのため、併せて依頼する場合の条件は問い合わせて確認します。
5. 東京丸の内社会保険労務士法人

中小企業を対象に、給与計算代行と社会保険・労働保険の手続きを組み合わせて提供する社会保険労務士法人です。月次給与計算・賞与計算・住民税処理・経理用資料の作成に加え、社会保険の月額変更届・算定基礎届、労働保険の年度更新を、給与計算と併せて一括で電子申請できる点を訴求しています。
給与計算代行の料金は、月額10,000円に対象者数×2,000円を加えた体系(消費税別、賞与は別途)を公開しています。社会保険・労働保険の手続きをまとめて任せたい場合は、月額制の労務顧問が近く、給与計算と手続きの窓口を社労士に一本化できます。
6. 社会保険労務士東京福寿事務所

社会保険・労働保険の手続き代行を中核に、給与計算代行も扱う社会保険労務士事務所です。労働保険成立10,000円〜、社会保険新規適用15,000円〜、給与計算代行5,500円〜といった手続き単位の起点価格と、従業員数別の月額顧問料を公開している点が特徴で、資格取得・喪失や算定基礎届、労働保険年度更新は月額顧問料の範囲で対応するとされています。
SmartHRやマネーフォワード社会保険などのクラウド労務ソフト上で、社労士アカウントによる電子申請に対応します。単発の手続きをスポットで依頼することもでき、必要なときに年度更新だけを任せたい小規模事業者にも向きます。全国の企業を電子申請で対応するとしています。
まとめ
労働保険の年度更新は、令和8年度は6月1日から7月10日までに申告・納付を行い、前年度の確定保険料の精算と今年度の概算保険料の申告をまとめて済ませる手続きです。賃金集計では労災保険(全労働者)と雇用保険(被保険者)で対象者が違う点に注意し、令和8年度に引き下げられた雇用保険率を正しく反映して計算します。
概算保険料が40万円以上などの条件を満たせば3回に分けて納める延納も申請でき、申告・納付はe-Govでの電子申請でも行えます。賃金集計や毎年の料率確認の負担が重い場合は、年度更新を含む手続きまで任せられる給与計算アウトソーシングの利用も検討できます。自社に合った進め方で、期限内に正しく申告・納付を終えましょう。
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よくある質問(FAQ)
Q. 労働保険の年度更新の封筒(緑・青の封筒)が届かない場合はどうすればよいですか?
A. 封筒が届かなくても申告・納付の義務は変わらないため、まず管轄の都道府県労働局または労働基準監督署に問い合わせて申告書の再交付を受けるか、厚生労働省の「主要様式ダウンロードコーナー」から様式を入手して申告します。
また、電子申請が義務づけられている資本金1億円超の法人などには、令和8年度から紙の申告書が送られなくなり、従来の緑・青の封筒ではなく茶封筒で電子申請用の通知書が届きます。封筒が届かない・色が違う場合は、この切り替えが理由のこともあります。
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Q. 労働保険の年度更新を忘れて申告期限を過ぎてしまった場合はどうなりますか?
A. 期限を過ぎたことに気づいたらできるだけ早く申告・納付するのが基本で、不利益の内容は「申告の有無・誤り」と「納付の遅れ」で性質が異なります。
申告をしなかったり内容に誤りがあって保険料が不足したりした場合は、政府が保険料額を決定したうえで、不足分に加えて納付すべき額の10%の追徴金が課されます(徴収法第21条)。一方、正しく申告したものの納付が期限に遅れた場合は、追徴金ではなく督促の対象です。督促の指定期限までに納めないと延滞金が加算され、最終的に財産の差押えなど滞納処分に進むことがあります(徴収法第27条)。
Q. 労働保険の年度更新の申告後に間違いが見つかった場合、修正できますか?
A. 申告後に誤りが判明した場合は、管轄の都道府県労働局・労働基準監督署に連絡して訂正(修正申告)の手続きを行います。計算し直した結果、保険料が不足していれば差額を追加で納付し、納めすぎていた場合は超過分を今年度の概算保険料に充当するか還付を受けられます(徴収法第19条)。なお、申告書や納付書に印字された数字・文字は訂正できないため、提出前の金額の記入は慎重に行ってください。
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Q. 従業員が年度途中で退職・入社した場合、労働保険の年度更新の賃金集計はどうすればよいですか?
A. 年度の途中で退職・入社した従業員も、その保険年度(4月1日〜翌年3月31日)に実際に支払った賃金を、在籍していた期間の分だけ賃金集計表に含めます。
労災保険はパート・アルバイトを含むすべての労働者の賃金を、雇用保険は被保険者であった期間の賃金を対象にするため、年の途中で入退社した人の賃金を数え漏らさないよう注意します。退職時の最終給与や在職中に支払った賞与も、年度内に支払ったものは集計の対象です。
Q. 労働保険の年度更新は、保険関係が成立した加入初年度も必要ですか?
A. 保険関係が成立した初年度は、前年分を精算する「年度更新」ではなく、成立したときにその年度の概算保険料を申告・納付します。初年度はまだ前年度に納めた概算保険料がなく精算すべき確定保険料がないため、前年分を確定精算して今年度分を申告する年度更新は翌年度から始まります。成立初年度に概算保険料を申告していることが、翌年度以降の年度更新の前提になります。
Q. 労働保険の年度更新の概算保険料は、いくらから分割納付(延納)できますか?
A. 分割納付(延納)できるのは、今年度の概算保険料の額が40万円以上の事業です(労災保険か雇用保険のどちらか一方のみが成立している事業は20万円以上)。また、労働保険事務組合に事務処理を委託している事業は、概算保険料の額にかかわらず延納できます。延納する場合は保険料を3期に分けて納め、申告書を提出する際に延納の申請を行います。これらは徴収法第18条と同法施行規則第27条に定められています。
Q. 労働保険の年度更新を自社で行うのが難しい場合、外部に任せられますか?
A. 労働保険の年度更新は、給与計算アウトソーシングや社会保険労務士に委託できます。賃金集計から概算・確定保険料の計算、申告書の作成までを代行するサービスがあり、労働局などへの申告・納付の代理は社会保険労務士の独占業務のため、提携する社労士が担う形が一般的です。
年に一度だけのスポット依頼に応じる事業者もあります。受託範囲(申告・納付まで含むか、社会保険の手続きまで任せられるか)や依頼方法はサービスごとに異なるため、依頼時に確認してください。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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