クラウドサービスやテレワークの普及により、社員が社内・社外のどちらからでも業務システムへアクセスするのが当たり前になりました。こうした環境の変化を背景に、「社内は安全・社外は危険」という前提で守る従来の境界型セキュリティから、「何も信頼せず常に検証する」ゼロトラストへと考え方を見直す動きが広がっています。
一方で、ゼロトラストという言葉はZTA・ZTNA・SASE・VPN・UTMといった似た用語と一緒に語られることが多く、「結局、従来の守り方と何がどう違うのか」「これらの用語はどういう関係なのか」が分かりにくい、という声も少なくありません。
本記事では、ゼロトラストと従来型(境界型防御)の違いを一目で掴める形で整理し、ZTA・ZTNA・SASE・VPN・UTMとの違いや関係、さらにゼロトラストを実現するために必要な構成要素までを解説します。社内のセキュリティ方針を検討する際の土台としてご活用ください。
目次
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ゼロトラストと従来型(境界型防御)の違い
ここからは、ゼロトラストと従来の境界型防御が「どこで守り方が逆転するのか」を、それぞれの考え方と対比表で整理します。
境界型防御とは(社内は信頼・社外は警戒する守り方)
境界型防御とは、社内ネットワークと社外(インターネット)の間に境界を引き、その境界をファイアウォールなどで守る考え方です。社内ネットワークの内側は信頼できる領域とみなし、境界を越えて入ってくる通信を重点的に検査します。オフィスに社員が出社し、業務システムもサーバー室に置かれていた時代には、守るべき資産とユーザーがともに社内にあったため、この「内側は安全」という前提が有効に機能していました。
しかし、クラウド上に業務データが置かれ、社員が社外から接続する環境では、守るべき資産もユーザーも境界の外へ広がります。一度境界の内側に入った通信は信頼されるため、攻撃者が何らかの方法で内部に侵入すると、そこから横方向に移動して被害が広がりやすい、という弱点が指摘されるようになりました。
ゼロトラストとは(何も信頼せず常に検証する考え方)
ゼロトラストとは、ネットワーク上の位置(社内か社外か)を信頼の根拠にせず、アクセスのたびに利用者・端末・通信を検証する考え方です。米国国立標準技術研究所(NIST)の文書「NIST SP 800-207」は、ゼロトラストを「ネットワークは侵害されているとみなしたうえで、リクエストごとに正確かつ最小権限のアクセス判断を下すための不確実性を最小化する、概念とアイデアの集合」と定義しています。
重要なのは、ゼロトラストが特定の製品名ではなく、セキュリティの「考え方(モデル)」を指す点です。2010年に調査会社フォレスター・リサーチのアナリスト、ジョン・キンダーバグ氏が提唱したもので、その後NISTがアーキテクチャとして体系化しました。1つの製品を導入すれば完成するものではなく、複数の仕組みを組み合わせてこの考え方を実現していきます。
境界型防御とゼロトラストの違い(対比表)
両者の違いを、守り方の前提となる観点ごとに整理すると、次のようになります。
| 観点 | 信頼の前提 | 検証のタイミング | 主に守る対象 | 内部での動き | 前提とする環境 |
|---|---|---|---|---|---|
| 境界型防御(従来型) | 社内ネットワークの内側は信頼し、社外を警戒する | 主に境界を越えるとき(入口)に検証する | 社内ネットワークという「境界」 | 一度内側に入れば比較的自由に移動できる | 社員・資産が主に社内にある働き方 |
| ゼロトラスト | 社内外を問わず、何も信頼しない(常に疑う) | アクセスのたび(リクエストごと)に検証する | 利用者・端末・データなど個々のリソース | 内部の通信も含めて都度認可し、最小権限に絞る | クラウド・テレワークで社内外に分散する働き方 |
※NIST SP 800-207の定義・原則に基づく一般的な整理です。
ひとことで言えば、境界型防御が「どこから来た通信か(場所)」を信頼の根拠にするのに対し、ゼロトラストは「場所に関係なく、そのつど正しく検証できたか」を根拠にします。この場所で信頼しないという前提の転換が、両者を分ける最大のポイントです。
ゼロトラストが拠って立つ原則(NIST SP 800-207の7つの基本原則)
ゼロトラストの考え方は、NIST SP 800-207が示す7つの基本原則(tenets)に集約されています。守り方の違いの根拠にあたる部分なので、要点を押さえておくと用語整理の際にも役立ちます。
- すべてのデータソースとコンピューティングサービスをリソースとみなす
- ネットワーク上の位置に関係なく、すべての通信を保護する
- 個々のリソースへのアクセスは、セッション単位で許可する
- リソースへのアクセスは、利用者・端末・アプリの状態などを含む動的なポリシーで決定する
- すべての資産の整合性とセキュリティ状態を監視・測定する
- すべてのリソースの認証と認可を動的に行い、アクセスを許可する前に厳格に実施する
- 資産・ネットワーク・通信の状態について可能な限り多くの情報を収集し、セキュリティ態勢の改善に活かす
とくに2番目の原則が、境界型防御との違いを端的に表しています。原文では次のように記されています。
All communication is secured regardless of network location.
出典:Zero Trust Architecture(NIST Special Publication 800-207)§2.1 Tenets of Zero Trust|National Institute of Standards and Technology
(ネットワーク上の位置に関係なく、すべての通信を保護する)
ただし、ゼロトラストは「ファイアウォールを全廃してすべての境界をなくす」という意味ではありません。NIST SP 800-207も、ゼロトラストの多くの定義が境界防御の除去を強調しつつ、実際にはマイクロセグメンテーションやマイクロペリメーター(小さな境界)といった形で境界の概念を機能の一部として残していると指摘しています。
既存の境界型の仕組みを土台にしながら、検証の考え方を変えていくのが現実的な進め方です。
出典・参考資料(2件)
- 出典:Zero Trust Architecture(NIST Special Publication 800-207)|National Institute of Standards and Technology(https://nvlpubs.nist.gov/nistpubs/SpecialPublications/NIST.SP.800-207.pdf)
- 参考資料:No More Chewy Centers: The Zero Trust Model Of Information Security(John Kindervag, Forrester Research)|Forrester(https://www.forrester.com/report/No-More-Chewy-Centers-The-Zero-Trust-Model-Of-Information-Security/RES56682)
関連用語(ZTA・ZTNA・SASE・VPN・UTM)の違いと仕分けマップ
ここからは、ゼロトラストと一緒に語られる紛らわしい用語を、「考え方か実装か」「ゼロトラストの一部か別物か」という軸で仕分けします。提案資料や製品説明を読み解くときの見取り図として使えます。
考え方か実装か:用語の全体マップ
まず全体像を「考え方・設計・実装・従来型の技術」という層で捉えると、それぞれの位置づけは次のように仕分けられます。

| 用語 | ゼロトラスト(ZT) | ZTA(ゼロトラストアーキテクチャ) | ZTNA(ゼロトラストネットワークアクセス) | SASE(サシー) | VPN | UTM |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 区分 | 考え方(セキュリティモデル) | 設計・アーキテクチャ | 実装(アクセス制御の仕組み) | 実装(統合の枠組み) | 従来型の技術 | 従来型の技術 |
| ゼロトラストとの関係 | 概念そのもの | 考え方を実際の構成に落とした設計図 | ゼロトラストを実現する手段の一つ | ZTNAを構成要素として含む上位の枠組み | 境界型の発想に基づく接続方式 | 境界上に置く多機能の防御装置 |
| ひとことで | 場所で信頼せず、アクセスのたびに検証する考え方 | ゼロトラストを企業の構成・ポリシーに落とし込んだ設計 | アプリ単位で都度認可するリモートアクセスの仕組み | ネットワークとセキュリティをクラウドで統合する枠組み | 社内ネットワークへ安全につなぐ仮想の通信路 | 複数の防御機能を1台に統合した境界用の機器 |
大きく捉えると、ゼロトラストは「考え方」、ZTAは「その考え方に沿った設計」、ZTNAやSASEは「設計を実現する具体的な仕組み」、VPNやUTMは「従来の境界型を支えてきた技術」という層の違いで整理できます。
ゼロトラスト/ZTA/ZTNAの関係
この3つは似た文字列ですが、抽象度が異なります。ゼロトラスト(ZT)は考え方そのもので、ZTA(ゼロトラストアーキテクチャ)はその考え方を、構成要素の関係・ワークフロー・アクセスポリシーとして企業のサイバーセキュリティ計画に落とし込んだものです。
NIST SP 800-207は、ZTAの論理的な構成要素も定義しています。アクセスの可否を判断するポリシーエンジン(PE)、通信経路を確立・遮断するポリシーアドミニストレーター(PA)、実際に接続を許可・監視・遮断するポリシー実施ポイント(PEP)などです。
ZTNA(ゼロトラストネットワークアクセス)は、このうち「利用者が業務アプリへアクセスする部分」を担う実装の一つです。ネットワーク全体への接続を許すのではなく、認証・認可を通ったアプリ単位でのみ接続を張る点が特徴で、ゼロトラストを実現する具体的な仕組みの一つと位置づけられます。「ZTNA」という呼称は、調査会社ガートナーが広めたものです。
SASEの位置づけ
SASE(Secure Access Service Edge、サシー)は、ガートナーが2019年に提唱した枠組みです。SD-WANなどのネットワーク(WAN)機能と、SWG(Webアクセスの安全な制御)・CASB(クラウド利用の可視化と制御)・FWaaS(クラウドで提供するファイアウォール)・ZTNAといったセキュリティ機能を統合し、主にクラウドサービスとして提供します。
ゼロトラストとの関係でいえば、SASEはZTNAを構成要素の一つとして内包する、より広い枠組みです。ゼロトラストが「検証の考え方」であるのに対し、SASEは「ネットワークとセキュリティをクラウドでまとめて提供する形態」を表しており、両者は対立する概念ではありません。ゼロトラストの考え方を、ネットワーク全体の設計まで広げて実現しようとするときにSASEが選択肢になります。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:Secure Access Service Edge (SASE)|Gartner Information Technology Glossary(https://www.gartner.com/en/information-technology/glossary/secure-access-service-edge-sase)
ゼロトラスト vs VPN・UTM・SASE:よくある疑問への個別の違い
ここからは、社内で検討する際に実際によく挙がる「VPNは不要になるのか」「UTMとどちらを選ぶのか」といった疑問に沿って、個別の違いを見ていきます。
ゼロトラストとVPNの違い(VPNは不要になるのか)
VPNは、既存の公衆ネットワークの上に暗号化した仮想の通信路(トンネル)を作り、社外の端末を社内ネットワークへ安全につなぐ技術です。いわば「社外から社内の境界の内側に入れてあげる」仕組みであり、境界型防御の発想を社外接続に延長したものといえます。
これに対しゼロトラストでは、ZTNAのように、いったん社内ネットワークに戻すことなく、認証・認可を通ったアプリやリソースへ直接・都度アクセスさせます。NIST SP 800-207も、社外の端末が社内インフラをまず経由しなくても企業リソースへアクセスできるべきだとし、クラウド上のサービスに接続するためにVPNで社内へ戻す必要はない、と例示しています。
では「VPNは不要になるのか」というと、一概には言えません。拠点間の接続や、ZTNAに対応していないレガシーなシステムへのアクセスでは、引き続きVPNが現実的な選択肢になる場面があります。多くの企業では、まずクラウドや主要業務アプリへのアクセスからゼロトラスト型に移し、VPNと併用しながら段階的に移行していくのが実態に近い進め方です。
出典・参考資料(2件)
- 出典:Zero Trust Architecture(NIST Special Publication 800-207)§2.2・§3.1.3|National Institute of Standards and Technology(https://nvlpubs.nist.gov/nistpubs/SpecialPublications/NIST.SP.800-207.pdf)
- 参考資料:virtual private network (VPN)|NIST Computer Security Resource Center Glossary(https://csrc.nist.gov/glossary/term/virtual_private_network)
ゼロトラストとUTMの違い(UTMとどちらを選ぶのか)
UTM(Unified Threat Management、統合脅威管理)は、ファイアウォール・不正侵入防御(IPS)・アンチウイルス・Webフィルタリングなど複数の防御機能を1台の機器に統合したものです。社内ネットワークと社外の境界に置き、出入りする通信をまとめて検査する、境界型防御を効率よく実現するための装置といえます。
UTMとゼロトラストは、同じ土俵で「どちらか一方を選ぶ」という関係ではありません。UTMが「境界で止める」ことを担うのに対し、ゼロトラストは「場所に関係なく、アクセスのたびに検証する」という考え方です。
守る範囲も前提も異なるため、オフィスの出入口を守るUTMを残しつつ、クラウドやテレワークのアクセスにはゼロトラストの仕組みを足す、という組み合わせが現実的です。自社のアクセスがどこまで社外・クラウドに広がっているかを基準に、境界の防御をどこまでゼロトラスト型で補うかを考えるとよいでしょう。
ゼロトラストとSASEの違い(併用・移行の考え方)
ここまで見たとおり、SASEはゼロトラストを実現する側の、より広い枠組みです。両者は選択肢として競合するものではなく、ゼロトラストが「何を信頼し、いつ検証するか」という方針であるのに対し、SASEは「その方針を、どの構成でクラウド提供するか」という実装・提供形態にあたります。
そのため「ゼロトラストかSASEか」ではなく、「ゼロトラストを、ZTNA単体で始めるか、SASEとしてネットワーク全体まで含めて統合するか」という段階の違いとして捉えると整理しやすくなります。まずリモートアクセスの課題を解きたいならZTNAから、ネットワーク構成ごと見直したいならSASEへ、という順序で検討する企業が多く見られます。
ゼロトラストを実現するために必要な構成要素
ゼロトラストは1つの製品ではなく、複数の仕組みの組み合わせで実現します。ここでは、「違い」を理解したうえで次に何を検討すべきかを、守る対象ごとの構成要素として整理します。いずれもNIST SP 800-207の原則に対応する要素です。
ユーザー認証・アクセス制御(誰が・何に・いつアクセスしてよいか)
ゼロトラストの出発点は、アクセスのたびに「誰が」を正しく確認し、その人に必要な範囲だけを許可することです。ID管理基盤(IDaaS)やシングルサインオン(SSO)、多要素認証(MFA)によって、利用者の認証を一元化し、最小権限でアクセスを制御します。NISTの原則でいう「セッション単位で許可する」「認証と認可を動的に、厳格に行う」を支える中核の要素です。
エンドポイントセキュリティ(端末の状態を常に検証する)
ゼロトラストでは、アクセス元の端末が安全な状態かどうかも判断材料になります。マルウェア対策や、不審な挙動を検知して対応するEDR(Endpoint Detection and Response)などで、端末の整合性やセキュリティ状態を継続的に監視します。NISTの「すべての資産の整合性とセキュリティ状態を監視・測定する」という原則に対応する要素です。
ネットワーク・通信の検知(内部の通信も監視する)
境界の内側であっても通信を信頼しないゼロトラストでは、社内ネットワークを流れる通信そのものを可視化し、不審な動きを検知する仕組みが重要になります。ネットワークの通信を記録・分析して脅威を見つけるNDR(Network Detection and Response)などが該当します。NISTの「可能な限り多くの情報を収集し、セキュリティ態勢の改善に活かす」という原則を支えます。
データの保護(端末に重要なデータを残さない)
守るべき最終的な対象はデータです。端末の紛失・盗難やマルウェア感染が起きても情報漏えいにつながらないよう、データの暗号化、持ち出しの制御、重要なデータを端末に残さない仕組みなど、複数のアプローチでデータそのものを守ります。
たとえば、ユーザーデータをクラウドなどの安全な場所に分離し、端末側にデータを残さない方法もその一つです。すべてのデータソースを保護対象のリソースとみなすゼロトラストの原則に沿った要素です。
自社の環境で、認証・端末・通信・データのどこに弱点があるかを整理すると、ゼロトラストに向けてどの構成要素から着手すべきかが見えてきます。多くの企業では、まず認証(ID管理や多要素認証)の強化から着手し、自社の弱点に応じて対象を広げていくケースが多く見られます。
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ゼロトラストの実現を支えるサービス
ここからは、前述の4つの構成要素(ユーザー認証・エンドポイント・ネットワークの検知・データの保護)を具体的に担うサービスを紹介します。自社でどこから着手するかを考える際の参考にしてください。
ここで挙げるのは各構成要素を担うサービスの一例です。ID・端末・ネットワーク・データなど守る対象ごとに、どんなタイプのソリューションがあり何を基準に選べばよいかをまとめて比較したい場合は、以下の記事をあわせてご覧ください。
社内セキュリティソリューション比較|守る対象別のタイプ・代表サービスと選び方
社内のセキュリティを強化したいものの、端末の保護から不正アクセス対策、情報漏えいの防止まで課題が広く、何から手をつければよいか判断がつかないという声は少なくありません。テレワークやクラウド利用が定着し、社外に持ち出される端末やIDが増えたこ…
| サービス名 | CloudGate UNO | Eye"247" Safety Zone | Network Blackbox | Shadow Desktop |
|---|---|---|---|---|
| 担う構成要素 | ①ユーザー認証・アクセス制御 | ②エンドポイント(端末) | ③ネットワーク・通信の検知 | ④データの保護 |
| 製品タイプ | IDaaS(SSO・ID管理) | エンドポイントセキュリティ(EPP+EDR) | NDR(ネットワーク検出・応答) | データレスクライアント |
| 守る対象 | クラウドサービスへのログイン・ID | PC・サーバーなどの端末 | 社内ネットワークを流れる通信 | PC内に保存される業務データ |
| 主な方式・特徴 | SSO+多要素認証に加え、パスキー(FIDO2)によるパスワードレス認証に対応。端末・場所・時間の3軸でアクセスを制限 | 振る舞い検知(ATC)と機械学習エンジンで不審な挙動を常時監視。ランサムウェア対策やEDRによる調査・復旧支援を搭載 | 通信をフルパケットキャプチャで収集し、シグネチャ検知・ユーザー行為ベースの検出・コンテンツ分析を併用。MITRE ATT&CKに基づく脅威ハンティングに対応 | PC内のデータをクラウド等へ分離し端末に残さない構成。ローカルキャッシュはAES256bitで暗号化し、紛失時のリモートワイプ(オプション)にも対応 |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | オンライン相談を予約 |
1. CloudGate UNO(株式会社インターナショナルシステムリサーチ)

CloudGate UNO(クラウドゲートウノ)は、株式会社インターナショナルシステムリサーチが提供する、ゼロトラストの考え方に基づいたシングルサインオン(SSO)とID管理を担うIDaaSです。一度の認証で複数のクラウドサービスへアクセスできる利便性と、最小権限の原則に基づくアクセス制御を組み合わせている点が特徴です。
多要素認証に対応し、パスワードに頼らないパスキー(FIDO2)や生体認証なども利用できます。ゼロトラストの入口にあたる「ユーザー認証・アクセス制御」を一元化したい場合の選択肢となります。
同社は、パスワードレス認証へ切り替えた導入企業での効果について、次のように述べています。

導入と同時にパスワードレス認証に切り替えた企業では、IT部門の業務の約20%を占めていたパスワード関連のヘルプデスク業務が「0%」になったという事例があります。
2. Eye“247” Safety Zone(株式会社フーバーブレイン)

株式会社フーバーブレインが提供するEye“247” Safety Zoneは、端末を守るエンドポイントセキュリティの製品です。ウイルス対策に加え、プログラムの不審な挙動を検知する振る舞い検知や、ランサムウェアの監視を組み合わせています。
ゼロトラストでは、アクセス元の端末が安全な状態かを継続的に確認することが欠かせません。社内の各PCの状態を監視し、脅威の兆候を早期に捉えたい場合に、構成要素としての「エンドポイント」を担うサービスです。
3. Network Blackbox(株式会社クワッドマイナージャパン)

Network Blackboxは、株式会社クワッドマイナージャパンが提供する、ネットワークの通信を検知・分析するNDR(ネットワーク検出・応答)製品です。ネットワークを流れる通信をフルパケットキャプチャで取り込み、シグネチャベースの検知、利用者の行為に基づく検知、通信内容の分析という複数の方式で不審な動きを捉えます。
境界の内側の通信も信頼しないゼロトラストでは、社内ネットワークの可視化が重要になります。端末側だけでなく、通信そのものから脅威の兆候を捉えたい場合に、「ネットワーク・通信の検知」を担うサービスです。
4. Shadow Desktop(アップデータ株式会社)

アップデータ株式会社が提供するShadow Desktopは、PC本体に業務データを残さない「データレスクライアント」と呼ばれる製品です。デスクトップやドキュメントなどのユーザーデータをクラウドのストレージへ自動的に保存し、端末側にはデータを物理的に残さない構成を取ります。
端末の紛失・盗難やマルウェア感染が起きても、端末内に重要なデータが残っていなければ情報漏えいのリスクを下げられます。ゼロトラストの構成要素のうち「データの保護」を、端末のデータレス化という形で担うサービスです。
まとめ
ゼロトラストと従来型(境界型防御)の最大の違いは、ネットワーク上の位置で信頼するかどうかにあります。境界型が「社内は安全」という前提で入口を守るのに対し、ゼロトラストは場所に関係なくアクセスのたびに検証します。ZTAはその考え方を落とし込んだ設計、ZTNAやSASEはそれを実現する仕組み、VPNやUTMは従来の境界型を支える技術、という層の違いで整理すると混同を避けられます。
ゼロトラストは1つの製品で完成するものではなく、ユーザー認証・エンドポイント・ネットワークの検知・データの保護といった構成要素を組み合わせて実現していきます。自社のアクセス環境のどこに弱点があるかを整理し、着手しやすい領域から段階的に進めるのが現実的です。
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よくある質問(FAQ)
Q. ゼロトラストとは何ですか?
A. ゼロトラストとは、ネットワーク上の位置(社内か社外か)を信頼の根拠にせず、アクセスのたびに利用者・端末・通信を検証するセキュリティの考え方です。米国国立標準技術研究所(NIST)の文書「NIST SP 800-207」が概念として体系化したもので、特定の製品名ではなくセキュリティのモデル(考え方)を指します。
2010年にフォレスター・リサーチのジョン・キンダーバグ氏が提唱し、その後NISTがアーキテクチャとして整理しました。
Q. ゼロトラストを導入するとVPNは不要になりますか?
A. ゼロトラストを導入しても、VPNが直ちにすべて不要になるとは限らず、用途によってはVPNと併用するのが現実的です。クラウドや主要な業務アプリへのアクセスは、ZTNAのように社内ネットワークへ戻さずアプリ単位で都度認可する方式へ置き換えられます。
一方で、拠点間の接続やZTNAに対応していないレガシーなシステムへのアクセスでは、引き続きVPNが現実的な選択肢になる場面があります。多くの企業では、移しやすい領域からゼロトラスト型に切り替え、VPNと併用しながら段階的に移行していくのが実態に近い進め方です。
Q. ゼロトラストとUTMはどちらを選ぶべきですか?
A. ゼロトラストとUTMは守る範囲も前提も異なるため、どちらか一方を選ぶのではなく、組み合わせて使うのが現実的です。UTMは社内と社外の境界に置き、出入りする通信をまとめて検査する「境界で止める」装置であるのに対し、ゼロトラストは場所に関係なくアクセスのたびに検証する考え方です。
オフィスの出入口を守るUTMを残しつつ、クラウドやテレワークのアクセスにはゼロトラストの仕組みを足す、という組み合わせが考えられます。自社のアクセスがどこまで社外・クラウドに広がっているかを基準に、境界の防御をどこまでゼロトラスト型で補うかを考えるとよいでしょう。
Q. ゼロトラストにおけるZTAとZTNAの違いは何ですか?
A. ZTA(ゼロトラストアーキテクチャ)はゼロトラストの考え方を企業の構成・ポリシーに落とし込んだ「設計」、ZTNA(ゼロトラストネットワークアクセス)はその設計を実現する「アクセス制御の仕組み」の一つで、抽象度が異なります。ZTAはNIST SP 800-207が定義する設計で、アクセスの可否を判断するポリシーエンジンなどの論理的な構成要素を含みます。
一方ZTNAは、ネットワーク全体への接続を許す代わりに、認証・認可を通ったアプリ単位でのみ接続を張る実装で、ガートナーが広めた呼び方です。ZTNAはゼロトラストを実現する具体的な手段の一つと位置づけられます。
Q. ゼロトラストは中小企業でも導入できますか?
A. ゼロトラストは中小企業でも、クラウド型のサービスを使って、着手しやすい領域から段階的に始められます。ゼロトラストは1つの製品を一度に導入するものではなく、認証・端末・通信・データといった構成要素の組み合わせで実現します。
そのため、専任のセキュリティ人材を置きにくい企業でも、まず多要素認証やID管理といった入口から着手し、自社の弱点に応じて少しずつ対象を広げていく進め方が可能です。自社のアクセス環境のどこに弱点があるかを整理することが、最初の一歩になります。
Q. ゼロトラストを導入すればサイバー攻撃を完全に防げますか?
A. ゼロトラストを導入しても、サイバー攻撃を完全に防げるわけではありません。ゼロトラストは「場所で信頼しない」前提でアクセスのたびに検証することで、不正アクセスや侵入後の被害拡大のリスクを下げる考え方ですが、単独であらゆる脅威を無効化できるものではありません。
ユーザー認証・エンドポイント・ネットワークの検知・データの保護といった構成要素を組み合わせ、運用や従業員教育も含めて多層で備えることで、はじめて効果を発揮します。
Q. ゼロトラストは製品を1つ導入すれば実現できますか?
A. ゼロトラストは、1つの製品を導入すれば完成するものではなく、複数の仕組みを組み合わせて実現する考え方です。NIST SP 800-207でも、ゼロトラストは特定の製品ではなく概念とアイデアの集合と位置づけられています。
具体的には、ユーザー認証・アクセス制御(ID基盤やMFA)、エンドポイントセキュリティ、ネットワーク・通信の検知、データの保護といった構成要素を、自社の環境に合わせて組み合わせていきます。どこに弱点があるかを整理し、着手しやすい領域から段階的に進めるのが現実的です。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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