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ゼロトラスト セキュリティモデルとは?仕組み・構成要素と実現に必要なソリューションをわかりやすく解説

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クラウドサービスやテレワークの広がりによって、社内と社外を分ける「境界」を前提にした従来のセキュリティ対策だけでは、企業の情報を守りきれない場面が増えています。そこで広く使われるようになったのが、社内ネットワークからのアクセスであっても無条件には信頼せず、アクセスのたびに検証する「ゼロトラスト」という考え方です。

本記事では、ゼロトラストというセキュリティモデルの定義と、従来の境界型防御との違いを整理します。そのうえで、基本原則と、アイデンティティ・端末・ネットワーク・データなどの「守る対象」ごとの構成要素、実現に必要なソリューションの全体像を解説します。あわせて、自社で何から着手すればよいかの進め方と、導入後の運用で注意すべき点も取り上げます。

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ゼロトラストとは

ゼロトラストとは、社内ネットワークからの通信であっても無条件には信頼せず、アクセスのたびに利用者や端末を検証してから必要な範囲だけアクセスを許可する、という考え方に基づくセキュリティモデルです。「何も信頼しない・常に検証する」という前提に立つ点が、従来の考え方との最大の違いです。

米国国立標準技術研究所(NIST)は、ゼロトラストを「ネットワークはすでに侵害されている」という前提に立つ考え方と定義しています。リクエストごとに正確で最小権限のアクセス可否判断を下し、不確実性を最小化するための、概念と考え方の集合だと位置づけています。

特定の製品を1つ導入すれば完成するものではなく、認証やアクセス制御の仕組み・運用方針・構成要素の関係を含めた設計思想(アーキテクチャ)である点が、ゼロトラストを理解するうえでの出発点になります。

出典・参考資料(1件)

ゼロトラストの成り立ち(提唱者とNISTによる体系化)

ゼロトラストという言葉は、調査会社フォレスター・リサーチ在籍時のジョン・キンダーバーグ氏が生み出したものです。この帰属は NIST の文書にも明記されています。2010年のレポート「No More Chewy Centers」で、社内を「信頼できる内側」とみなす境界型の発想から脱却する考え方として提唱されました。

その後、2020年に NIST が「SP 800-207 Zero Trust Architecture」を公表し、ゼロトラストの定義・基本理念・構成要素を体系化しました。

先行して実装された例としては、2009年の大規模サイバー攻撃(オペレーション・オーロラ)を契機に Google が社内システムを「特権的な社内ネットワークを前提としない」形へ移行した取り組み「BeyondCorp」が知られています。こうした実装と公的機関による整理を経て、ゼロトラストは個別企業の方針から業界共通の設計思想へと広がりました。

出典・参考資料(2件)

境界型防御(ペリメータ型)との違いと、なぜ今ゼロトラストが必要なのか

従来主流だった境界型防御(ペリメータ型)は、社内ネットワークと社外インターネットの間に「境界」を設け、その境界をファイアウォールなどで守る考え方です。境界の内側は信頼できる領域とみなし、いったん社内に入った通信や端末には広くアクセスを許す設計でした。社外からのアクセスも、VPN(仮想専用線)で社内網に接続すれば内側の利用者として扱われます。

これに対してゼロトラストは、ネットワークのどこからの通信であっても信頼せず、アクセスのたびに検証します。英国の国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)も、ゼロトラストを「ネットワークへの本来的な信頼を取り除き、ネットワークは敵対的だと想定して、各リクエストをアクセスポリシーに基づいて検証するアーキテクチャ上のアプローチ」と説明しています。両者の違いを整理すると次のようになります。

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観点境界型防御(ペリメータ型)ゼロトラスト
信頼の前提社内ネットワークの内側は信頼するネットワークの内外を問わず信頼しない
検証のタイミング境界を越えるときに主に検証するリソースへのアクセスのたびに検証する
守る単位ネットワークの境界利用者・端末・アプリ・データなどの個々のリソース
社外からの利用VPNで社内網に入れば内側として扱う社内外で扱いを変えず、都度アクセスを判断する

境界型防御が守りにくくなった背景には、働き方と情報システムの変化があります。クラウドサービス(SaaS・IaaS など)の利用が広がり、守るべきデータやアプリケーションが社内のサーバーだけでなく社外のクラウドにも置かれるようになりました。

テレワークや私用端末の業務利用(BYOD)も一般的になり、社外から社内の情報にアクセスする機会が増えています。その結果、「社内か社外か」という境界そのものが曖昧になり、内側を一律に信頼する前提が成り立ちにくくなりました。

ゼロトラストは、この変化に合わせて「場所ではなく、検証の結果でアクセスを判断する」考え方だといえます。

出典・参考資料(1件)

ゼロトラストの基本原則

ゼロトラストの原則は、実務では「最小権限」「継続的な検証」「侵害前提」という3つの考え方に集約して語られます。アクセス権を業務に必要な最小限にとどめ、一度認証したら終わりにせず状態の変化に応じて繰り返し確かめ、ネットワークはすでに侵害されているとみなして監視する、という姿勢です。

これらは、NIST が「SP 800-207」で示す7つの基本理念(tenets)として正式に定義されています。各社の解説で表現が揺れても、公的な定義を押さえておけば混乱せずに読み解けます。要旨は次のとおりです。

  • すべてのデータソースとコンピューティングサービスをリソースとみなす
  • ネットワーク上の場所に関わらず、すべての通信を保護する
  • 個々のリソースへのアクセスは、セッション単位で許可する
  • アクセスは、利用者・アプリ・端末の状態などを踏まえた動的なポリシーで判断する
  • 自社が保有・関連するすべての資産の健全性とセキュリティ状態を継続的に監視・測定する
  • すべての認証・認可を、アクセス許可の前に動的かつ厳格に行う
  • 資産・ネットワーク・通信の状態について可能な限り多くの情報を収集し、セキュリティ強化に役立てる

通信を細かい単位に区切ってアクセスを限定する「マイクロセグメンテーション」も、原則そのものというより、ゼロトラストを実現するための代表的な実装手法として位置づけられます。

英国の NCSC も、次のような設計原則を示しています。

  • 利用者・端末・サービス・データを含め、自社のアーキテクチャを把握する
  • 利用者・サービス・端末のIDを把握する
  • 利用者の振る舞いや、端末・サービスの健全性を評価する
  • ポリシーに基づいてアクセス要求を認可する
  • あらゆる場所で認証と認可を行う
  • 利用者・端末・サービスに監視の焦点を当てる
  • 自社のものを含め、どのネットワークも信頼しない

NIST と NCSC では表現や粒度は異なりますが、「ネットワークを信頼せず、アクセスのたびに検証する」という芯は共通しています。民間各社が独自に整理した「7つの要件」などの表現に触れたときも、こうした公的な定義を基準にすれば、用語の違いに迷わず読み解けます。

出典・参考資料(2件)

ゼロトラストの構成要素:何を・どう守るのか

ゼロトラストは1つの製品ではなく、守る対象ごとに検証と制御を積み上げて実現します。全体像をつかむうえで参考になるのが、米国のサイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁(CISA)が公表する「ゼロトラスト成熟度モデル(バージョン2.0)」です。

このモデルは、守る対象を5つの柱(アイデンティティ/デバイス/ネットワーク/アプリケーションとワークロード/データ)に整理しています。さらに、それらを横断して支える機能として、可視化と分析・自動化とオーケストレーション・ガバナンスの3つを挙げています。全体像を図にすると次のとおりです。

ゼロトラストの全体像。守る対象の5つの柱(アイデンティティ、デバイス、ネットワーク、ワークロード、データ)が横並びに示され、それらを横断して支える3つの機能として、可視化・分析、自動化・オーケストレーション、ガバナンスが示されている。CISAゼロトラスト成熟度モデル2.0に基づく。

ここからは、5つの柱と横断機能について、それぞれ「何を検証・制御するのか」と「実現に使われるソリューションの分野」を対応させて見ていきます。

どのアクセスを許可するかを判断する仕組みとして、NIST は3つの論理構成要素を定義しています。アクセスの可否を決める「ポリシーエンジン」、それを実行に移す「ポリシー管理者」、通信を実際に有効化・遮断する「ポリシー実施ポイント」の3つです。以下の各要素は、この判断と実施の仕組みの上に成り立ちます。

出典・参考資料(2件)

以下の構成要素をすべて一度に揃える必要はありません。自社の守るべき情報と弱点に応じて、優先度の高い対象から段階的に取り入れていくのが現実的です。まず、5つの柱と対応するソリューション分野を一覧で示します。

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守る対象(5つの柱)アイデンティティデバイス(端末)ネットワークワークロードデータ
何を検証・制御するか利用者・機器のIDをアクセスのたびに検証し、最小権限で許可する端末の状態・安全性を検証し、脅威を検知・隔離する通信をアクセスのたびに検証し、必要な範囲だけに接続を絞るアプリ・サーバー等への接続と挙動を保護する所在や機密度に応じて保護し、持ち出し・漏えいを制御する
代表的なソリューション分野IAM・IDaaS・SSO・MFAEPP・EDR・MDMZTNA・SASE・SWGCWPP(クラウドワークロード保護)・マイクロセグメンテーションCASB・DLP・データレスPC

これら5つの柱を横断して、ログやイベントを可視化・分析する機能(SIEM)、対応を自動化する機能(SOAR)、そしてポリシーや権限・構成を統制する「ガバナンス」が全体を支えます。次の各項で、柱ごとに詳しく見ていきます。

アイデンティティ(誰がアクセスするか)

ゼロトラストが最初に検証するのが、アクセスしてくる利用者や機器のアイデンティティです。「本当に本人・本物か」をアクセスのたびに確かめ、業務に必要な最小限の権限だけを与えます。

ここで使われるのが、ID を一元管理する IAM(ID・アクセス管理)や、クラウドで提供する IDaaS です。さらに、一度の認証で複数サービスを使えるようにする SSO(シングルサインオン)や、パスワードに加えて別の要素で本人確認する MFA(多要素認証)も、この領域の中心的なソリューションです。

パスワードの使い回しや漏えいは侵入の主要な入口になるため、認証の強化はゼロトラストの中でも効果が実感しやすい領域です。

この判定の裏側では、前述のポリシーエンジンがアクセスの可否を決め、ポリシー実施ポイントが通信の許可・遮断を実行しています。

デバイス(どの端末からアクセスするか)

次に確かめるのは、アクセス元の端末(デバイス)が安全な状態かどうかです。承認された端末か、セキュリティ対策が最新か、マルウェアに感染していないかを確かめ、問題があれば検知・隔離します。

ここでは、端末を保護する EPP(エンドポイント保護プラットフォーム)、不審な挙動を検知して対応する EDR(エンドポイントでの検知・対応)、端末の設定や利用を管理する MDM(モバイルデバイス管理)などが使われます。社外に持ち出す端末が増えるほど、端末側の検証と監視の重要性は高まります。

ネットワーク(どこへ通信するか)

通信そのものも、アクセスのたびに検証し、必要な範囲だけに接続を絞ります。社内網に入れば広くアクセスできる VPN とは異なり、アプリケーション単位でアクセスを許可する ZTNA(ゼロトラスト・ネットワークアクセス)が代表的です。

ほかに、ネットワークとセキュリティ機能をクラウドで統合して提供する SASE(サシー)や、Web アクセスを安全に仲介する SWG(セキュアWebゲートウェイ)などが使われます。

通信を細かく区切ってアクセスを限定するマイクロセグメンテーションも、ここで機能します。また、社内を流れる通信を記録・分析して不審な動きを検知する仕組みは、侵入後の早期発見と事後の調査に役立ちます。

ワークロード(何を動かすか)

守る対象には、アプリケーションやサーバー、クラウド上で動く処理(ワークロード)も含まれます。利用者や端末と同じように、アプリケーションやサービスへのアクセスも都度検証し、不正な通信や想定外の挙動を抑えます。

実現手段としては、クラウド上のワークロードを保護する CWPP(クラウドワークロード保護)などが使われます。ネットワーク節のマイクロセグメンテーションが通信の分割だったのに対し、ここでは処理(ワークロード)どうしの分離としても働きます。

データ(最終的に何を守るのか)

最後に守るのが、データそのものです。その所在や機密度に応じて保護し、持ち出しや漏えいを制御します。クラウドサービスの利用状況を可視化して統制する CASB(キャスビー)や、情報の持ち出しを監視・制限する DLP(情報漏えい対策)などが使われます。

さらに、端末本体にデータを残さない仕組みを採り入れれば、端末の紛失・盗難が直ちに情報漏えいにつながる事態を避けられます。アイデンティティや端末の検証をすり抜けられた場合でも、最後にデータを守る層があることが重要です。

柱を横断して支える能力:可視化・分析と自動化

可視化・分析と自動化は、5つの柱そのものではなく、それらを横断して支える機能です。各柱から集まるログやイベントを一元的に可視化・分析して異常を見つけ、対応を自動化します。

ここでは、ログを集約・相関分析する SIEM(セキュリティ情報・イベント管理)や、検知した脅威への対応を自動化する SOAR(セキュリティの自動化・対応)などが使われます。守る対象を個別に固めても、全体を横断して監視・対応できなければ、検知の遅れや対応漏れが生じます。CISA のモデルが可視化・分析と自動化を横断機能として位置づけているのは、このためです。

ゼロトラスト導入の進め方と着手点

ゼロトラストは守る対象が多岐にわたるため、すべてを一度に置き換えようとすると負荷が大きくなります。公的機関や各社の解説に共通するのは、既存の対策を活かしながら段階的に進めるという考え方です。CISA の成熟度モデルも、現状から理想形までを複数の段階に分けてとらえ、少しずつ成熟度を高めていく枠組みを示しています。

最初の着手点として多くの解説が挙げるのが、アイデンティティ(ID・認証)の強化です。ID を一元管理して多要素認証(MFA)を導入することは、効果が見えやすく、他の対策の土台にもなります。

そのうえで、端末の検知・対応(EDR など)、通信のアクセス制御(ZTNA など)、クラウドやデータの保護へと広げ、最後に全体を横断する可視化・分析と自動化で運用を回していく、という順序が現実的です。自社の守るべき情報と現状の弱点を洗い出し、優先度の高い柱から着手することが、ゼロトラストを無理なく進めるうえでの基本になります。

ゼロトラスト導入の進め方を5つのステップで示した図。STEP1はID・認証の強化(IDの一元管理と多要素認証)、STEP2は端末の検知・対応(EDRなど)、STEP3は通信のアクセス制御(ZTNAなど)、STEP4はクラウド・データ保護、STEP5は可視化・分析と自動化(SIEM・SOAR)による横断的な監視・対応。効果が見えやすい対象から段階的に広げる。
出典・参考資料(1件)

特に専任担当者を置きにくい中小企業では、ゼロトラストに限らず、限られた人員と予算のなかでどの対策から着手するかの優先順位づけ自体が課題になりがちです。費用感も含めて「何から始めるか」を具体的に押さえておきたい場合は、次の記事が参考になります。

「導入すれば安全」ではない:ゼロトラストの運用と限界

ゼロトラストは、導入すればそれで安全が保証される「製品」ではなく、継続的な検証と運用があって初めて機能する設計思想です。その効果は、従来の境界型の経路(VPN など)をきちんと置き換え・保護できているか、そして脆弱性対応や設定の見直しといった運用を続けられるかに左右されます。

ポリシーを定めて仕組みを入れても、移行の過程で残った従来型の経路や、運用の手抜かりがあれば、そこが侵入の入口になります。この弱点を具体的に示す事例があります。

デジタル庁は2026年9月11日、同庁のガバメントソリューションサービス(GSS)への不正アクセスにより、個人情報を含むファイルの一部が外部に漏えいした可能性があると公表しました。漏えいした可能性がある個人情報は約24.6万件です。

調査の結果、第三者がネットワーク接続機器(VPN)の脆弱性を利用してシステムに侵入していたことが判明したとしています。侵入経路となった VPN は、社内網に入れば内側として扱う境界型の代表的な技術であり、ゼロトラストが置き換えようとしている仕組みです。

この事案が示すのは、ゼロトラストが置き換えようとしている境界型の経路(VPN)こそが弱点になり得るということです。設計思想としてゼロトラストを掲げても、こうした経路を残したまま脆弱性対応や運用の手を緩めれば、被害は起こり得ます。

ゼロトラストを「入れて終わり」にせず、各構成要素を継続的に検証・監視し、脆弱性や設定を定期的に見直す運用を回すこと。そして、前述の可視化・分析と自動化によって異常を早期に捉える体制を整えること。これらがそろって、はじめてゼロトラストは実効性を持ちます。

出典・参考資料(1件)

ゼロトラストの実現に役立つサービス

ここからは、守る対象ごとに整理した課題を実際に解決するサービスを紹介します。ここで取り上げるのは、アイデンティティ(ID・認証)、ネットワークの通信、端末、データに対応する代表的な4領域のサービスです。ワークロード保護や可視化・分析などは、記事末尾の比較記事もあわせてご覧ください。

自社でまず着手したい領域から、検討の手がかりにしてください。

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サービス名CloudGate UNONetwork BlackboxEye"247" Safety ZoneShadow Desktop
守る対象(ゼロトラストの構成要素)アイデンティティ
(ID・認証/アクセス制御)
ネットワーク
(通信の可視化・検知/NDR)
デバイス
(端末/EPP+EDR)
データ
(データレス)
主な役割・機能クラウド型のID基盤(IDaaS)。SSO・多要素認証(MFA)・パスキー(FIDO2)によるパスワードレス認証・アクセス制限・ID管理を1つのプラットフォームで提供ネットワークを流れる全パケットを収集・保存するNDR。収集・検知・ハンティング・フォレンジック・対応を備え、社内通信を可視化して不審な動きを検知EPPとEDRを1製品に搭載したエンドポイントセキュリティ。Bitdefender共同開発エンジンによる振る舞い検知(ATC)、ランサムウェア対策としてファイルの自動バックアップ・復元に対応PC内のユーザーデータをクラウド等へ自動退避し、端末にデータを残さないデータレスクライアント。ローカルキャッシュはAES256bitで暗号化、リモートワイプにも対応(オプション)
提供形態クラウド型(IDaaS)公表なし(ミラーリング方式で導入)端末インストール型ソフト+ブラウザ管理コンソール既存PCへのインストール型(保存先はクラウド/オンプレを選択)
料金の目安月額400円〜600円/ユーザー(税抜)。初期費用は別途(金額非公開)要お問い合わせ要お問い合わせ(導入台数・契約期間に応じた個別見積もり)月額950円〜/ユーザー(税込1,045円・公式価格表2024年10月現在版)。初期費用なし(公式カタログ記載)

1. CloudGate UNO(株式会社インターナショナルシステムリサーチ)

CloudGate UNOのウェブサイト

CloudGate UNO は、株式会社インターナショナルシステムリサーチが自社開発するクラウド型の ID 基盤(IDaaS)です。ゼロトラストの「アイデンティティ」に対応し、シングルサインオン(SSO)・多要素認証(MFA)・アクセス制限・ID 管理(プロビジョニング)を1つのプラットフォームでまとめて提供します。

認証では、パスキー(FIDO2)によるパスワードレス認証に対応し、パスワードの使い回しや漏えいに起因するリスクを抑えられます。アクセス制限では、端末証明書による制御や、利用者・端末の状態に応じた柔軟なポリシー設定が可能で、「最小権限」と「継続的な検証」というゼロトラストの原則を認証基盤として実装できます。ID 認証の強化を最初の着手点にしたい企業に向いた選択肢です。

ID 認証の強化による運用面の変化について、提供元は次のような事例を挙げています。

平澤氏
株式会社インターナショナルシステムリサーチ 営業本部マーケティング部
平澤氏
独自インタビューより

導入と同時にパスワードレス認証に切り替えた企業では、IT部門の業務の約20%を占めていたパスワード関連のヘルプデスク業務が「0%」になったという事例があります。

2. Network Blackbox(株式会社クワッドマイナージャパン)

Network Blackboxのウェブサイト

Network Blackbox は、ネットワークを流れる通信を記録・分析して脅威を検知する NDR(ネットワークでの検知・対応)製品です。ネットワーク節で触れた ZTNA のようなアクセス制御ではなく、通信を可視化して検知する側のサービスにあたります。

ゼロトラストの「ネットワーク」に対応し、社内を流れる全パケットを収集する全数検査を基盤に、収集・検知・ハンティング・フォレンジック・対応という機能を備えます。

通信をミラーリング方式で取り込むため、既存ネットワークへの影響を抑えながら導入できます。通信そのものを保存してパケット単位でさかのぼれるため、侵入の早期発見だけでなく、万一の際の事後調査や証跡の提示にも役立ちます。料金は要お問い合わせとなっています。

3. Eye”247″ Safety Zone(株式会社フーバーブレイン)

Eye247 Safety Zoneのウェブサイト

Eye”247″ Safety Zone は、株式会社フーバーブレインが提供するエンドポイントセキュリティソフトです。ゼロトラストの「デバイス(端末)」に対応し、端末を保護する EPP と、不審な挙動を検知・対応する EDR の両機能を1つの製品に備えます。

検知エンジンには Bitdefender と共同開発したものを採用し、アプリケーションの動作を常時監視する振る舞い検知(ATC)や機械学習ベースの検知を組み合わせます。ランサムウェア対策として、監視に加えてファイルを自動でバックアップし、被害時にはクライアントから直近の状態へ復元できる機能を標準で備えている点も特徴です。

社外に持ち出す端末の検証と保護を強化したい場合に適したサービスです。料金は導入台数や契約期間に応じた個別見積もりとなっています。

4. Shadow Desktop(アップデータ株式会社)

Shadow Desktopのウェブサイト

Shadow Desktop は、アップデータ株式会社が提供するデータレスクライアント製品です。ゼロトラストの「データ」に対応し、PC 内のユーザーデータをクラウドなどの外部ストレージへ自動的にアップロードして、PC 本体にはデータを物理的に残さない状態をつくります。

仮想デスクトップ(VDI)と違って OS やアプリケーションは仮想化しないため、通常の PC と同じ操作感で利用できます。開いたファイルは端末の専用領域に一時的にキャッシュされますが、このキャッシュは AES 256bit で暗号化され、ファイル名も変換されるため、紛失・盗難時に記憶装置を取り出しても内容を読み取れない設計です。

端末の検証をすり抜けられても、端末にデータが残らない形でデータ漏えいのリスクを下げたい場合に有効な選択肢です。

ここで取り上げたのは、守る対象ごとの代表的なサービスの一例です。社内セキュリティ全体で、守る対象別にどのようなタイプのサービスがあり、どう選べばよいかをまとめて見比べたい場合は、次の比較記事が参考になります。

まとめ

ゼロトラストは、社内ネットワークであっても信頼せず、アクセスのたびに検証する「何も信頼しない・常に検証する」という設計思想です。クラウドやテレワークで境界が曖昧になった環境では、場所ではなく検証の結果でアクセスを判断するこの考え方が、情報を守るうえで有効に働きます。

実現にあたっては、アイデンティティ・端末・ネットワーク・ワークロード・データという守る対象ごとに検証と制御を積み上げ、それらを可視化・分析と自動化で横断的に支える全体像を押さえることが出発点になります。

すべてを一度に整える必要はありません。まずは効果が見えやすく他の対策の土台にもなる ID 認証の強化から着手し、自社の守るべき情報と弱点に応じて段階的に広げていくのが現実的です。導入後も、継続的な検証と脆弱性対応の運用を欠かさないことが、ゼロトラストを実効性のあるものにします。自社の守る対象に合うサービスの資料を取り寄せ、最初の一歩の検討材料にしてください。

よくある質問(FAQ)

Q. ゼロトラストセキュリティモデルとは何ですか?

A. ゼロトラストセキュリティモデルとは、社内ネットワークからの通信であっても無条件に信頼せず、アクセスのたびに利用者や端末を検証してから、必要最小限の範囲だけアクセスを許可するセキュリティの設計思想です。

「何も信頼しない・常に検証する(Never trust, always verify)」という前提に立ち、米国国立標準技術研究所(NIST)が「SP 800-207」で定義・体系化しています。特定の製品を1つ導入すれば完成するものではなく、認証やアクセス制御の仕組み・運用方針・構成要素の関係を含めたアーキテクチャである点が特徴です。

Q. ゼロトラストとVPNはどう違いますか?

A. 最大の違いは、VPNが社内網に接続した利用者を「内側」として広くアクセスを許すのに対し、ゼロトラストはアクセスのたびに検証し、アプリケーション単位で必要最小限に接続を絞る点です。

VPNは、境界の内側を信頼する境界型防御の代表的な技術で、いったん社内網に入れば信頼される前提に立ちます。ゼロトラストはこの前提を置かず、社内外で扱いを変えずに都度アクセスを判断するため、認証情報やVPN機器の脆弱性を突かれても内部に広く侵入されにくくなります。

Q. ゼロトラストの導入は何から始めればよいですか?

A. 公的機関や各社の解説が共通して最初の着手点に挙げるのは、アイデンティティ(ID・認証)の強化です。IDを一元管理して多要素認証(MFA)を導入することは、効果が見えやすく、他の対策の土台にもなります。

そのうえで、端末の検知・対応、通信のアクセス制御、データの保護へと広げ、最後に全体を横断する可視化・分析と自動化で運用を回す、という順序が現実的です。すべてを一度に置き換えようとせず、自社の守るべき情報と現状の弱点を洗い出し、優先度の高い対象から段階的に進めます。

Q. ゼロトラストは中小企業でも導入できますか?

A. 企業規模にかかわらず導入できますが、規模や体制によって着手の負荷は異なります。ゼロトラストは大規模にすべてを一度に整える必要はなく、クラウドで提供されるID基盤(IDaaS)や多要素認証など、専任のセキュリティ担当者がいなくても始めやすい領域から段階的に取り入れられます。

自社の守るべき情報と現状の弱点に合わせ、効果が出やすい対象から優先して進めることが、無理なく導入するうえでの基本になります。

Q. ゼロトラストを導入すれば安全ですか?

A. 導入すれば安全が保証されるわけではなく、継続的な検証と運用があって初めて機能します。ゼロトラストは製品ではなく設計思想のため、脆弱性への対応や設定の見直しを怠れば、そこが侵入の入口になります。

特に、移行の過程で残った従来型の経路(VPNなど)は弱点になりやすく、実際にセキュリティ強化を進める組織でも、残存した経路や運用の不備を突かれて不正アクセスに至った事例が報告されています。各構成要素を継続的に監視・見直し、可視化・分析と自動化で異常を早期に捉える運用を回すことが欠かせません。

Q. ゼロトラストの実現にはどんなソリューションが必要ですか?

A. ゼロトラストは単一の製品では完成せず、守る対象ごとに、アイデンティティならIAM・IDaaS・多要素認証、端末ならEPP・EDR・MDM、ネットワークならZTNA・SASE・SWG、データならCASB・DLPやデータレスPCといったソリューションを組み合わせて実現します。

これらを横断して、ログを可視化・分析するSIEMや、対応を自動化するSOARも用いられます。守る対象ごとに検証と制御を積み上げる考え方のため、自社がまず強化したい対象に対応する分野から検討するのが分かりやすい進め方です。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
記事内でご紹介している製品・サービスは監修者が選定したものではなく、編集部が独自に選定したものです。
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

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