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リース会計基準の改正で何が変わる?2027年4月適用の新基準をわかりやすく解説

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リース会計基準の改正とは、これまでのリース会計のルールが全面的に見直され、借手が結ぶオペレーティング・リースも原則として貸借対照表に載せる(オンバランスする)ことになる変更を指します。上司や監査法人から「2027年から対応が必要になる」と聞き、まずは全体像をつかもうとして検索された方が多いのではないでしょうか。

最初に知りたいのは、たいてい「結局、何が・いつから・自社にどう効くのか」の3点だと思います。特に、これまで費用処理で済んでいたオフィスや設備の賃借が資産・負債として計上されると、貸借対照表が膨らみ、財務指標にも影響します。ここが自社にとっての本題です。

本記事では、まず押さえるべき3つの要点を結論から示し、新旧の対比・適用時期(決算月別)・自社が対象かの判定・仕訳の型・少額や短期の例外までを、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」に沿って順に解説します。加えて、対応の起点になる「リース契約の棚卸し」を効率化する契約管理システムの選択肢も整理しました。自社の準備を始める下敷きとしてご活用ください。

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新リース会計基準(リース会計基準改正)で何が変わる?まず押さえる3つの要点

ここからは、新リース会計基準の全体像を3つの要点にしぼって結論から示します。細かい会計処理に入る前に、この3点だけ先に押さえておけば、社内で「何が変わるのか」を説明できる状態になります。

  • ① 借手は原則オンバランス化:これまで賃貸借処理(オフバランス)で済んでいたオペレーティング・リースも、借手はリースを「使用権の取得」と捉え、使用権資産とリース負債を貸借対照表に計上します。
  • ② 2027年4月1日以後に開始する事業年度から強制適用:早期適用は2025年4月1日以後に開始する事業年度から可能です。
  • ③ 主な対象は上場企業・大会社とその連結子会社など:会計監査人を設置する会社や会社法上の大会社などが中心で、中小企業は原則として任意適用です。ただし上場親会社の連結対象となる子会社は、実務上は対応が必要になります。

この改正は、企業会計基準委員会(ASBJ)が2024年9月13日に公表した企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」と、企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」によるものです。以降、本記事ではこの2つをまとめて「新リース会計基準」と呼び、条項の根拠を示しながら解説します。

本記事で引用する基準の出典は、次のとおりです。

出典・参考資料(2件)
  • 出典:企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」|企業会計基準委員会(2024年9月13日公表)
  • 出典:企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」|企業会計基準委員会(2024年9月13日公表)

新リース会計基準の主な変更点【現行基準(第13号)との新旧対比つき】

ここからは、何がどう変わったのかを、新旧の対比・個別の変更点・財務指標への影響の順に見ていきます。まずは現行基準と新基準の違いを一覧で押さえましょう。

現行基準(第13号)と新基準(第34号)の新旧対比表

現行の企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」と、新しい企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」の主な違いは、次のとおりです。名称も「リース取引に関する会計基準」から「リースに関する会計基準」へと変わっています。

比較項目現行基準(第13号)新基準(第34号)
借手のリース分類ファイナンス・リースとオペレーティング・リースに区分借手の会計処理では区分せず、単一の会計処理モデルに一本化
オペレーティング・リースの借手処理賃貸借処理(オフバランス)。支払リース料を費用計上原則オンバランス。使用権資産とリース負債を計上
借手の費用科目支払リース料使用権資産の減価償却費+リース負債にかかる利息相当額
貸手の会計処理ファイナンス/オペレーティングの区分あり区分を維持(借手のような一本化はしない)
簡便的取扱い少額・短期などに簡便的取扱いあり借手の全リースが原則オンバランスになる中で、その例外として短期リース・少額リースの簡便法を整備
現行基準(第13号)と新基準(第34号)の主な違い。最大の変更点は、借手のオペレーティング・リースが原則オンバランスになる点

この表からわかるとおり、影響がもっとも大きいのは借手のオペレーティング・リースです。次の項目で、その中身をもう少し詳しく見ていきます。

区分廃止・原則オンバランス化・使用権モデルへの一本化

新基準の核心は、借手がすべてのリースを「使用権(資産を使う権利)を取得したもの」と捉え、資産と負債を計上する点にあります。従来のようにファイナンス・リースかオペレーティング・リースかで処理を分けるのではなく、借手の会計処理を1つのモデルに統一しました。企業会計基準第34号は、その考え方を結論の背景で次のように説明しています。

本会計基準では、すべてのリースを使用権の取得として捉えて使用権資産を貸借対照表に計上するとともに、借手のリースの費用配分の方法については、リースがファイナンス・リースであるかオペレーティング・リースであるかにかかわらず、使用権資産に係る減価償却費及びリース負債に係る利息相当額を計上するIFRS第16号と同様の単一の会計処理モデルによることとした。

出典:企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」結論の背景BC39|企業会計基準委員会

ここで正確に押さえておきたいのは、この「区分の廃止」「単一のモデル」が借手(リースを借りる側)の会計処理についての話だという点です。貸手(リースを貸す側)については、新基準でもファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分が残ります。「区分がなくなった」と一括りにされることがありますが、正しくは「借手の会計処理で区分をなくした」という限定つきの変更です。

リースの定義・識別の見直し

もう1つの重要な変更が、「何をリースとして扱うか」という定義・識別の見直しです。新基準では、契約の名前が「リース契約」かどうかではなく、契約に「特定された資産を、一定期間、対価と引き換えに使用を支配する権利」が含まれているかという実態で判断します。

この考え方によって、契約書のタイトルが「賃貸借契約」「レンタル契約」「サービス利用契約」であっても、実態としてリースに該当すれば会計上のリースとして扱われる場合があります。オフィスや店舗の不動産賃貸借、社用車、複合機、サーバーやIT機器などが対象になりやすく、自社が結んでいる契約を実態で洗い出す作業が必要になります。ここが、後述する「リース契約の棚卸し」につながる部分です。

特にレンタル契約やサブスクリプション契約がオンバランスの対象になるかは、判断に迷いやすいところです。契約の類型ごとにどう判定するかを詳しく確認したい場合は、以下の記事で具体例とともに整理しています。

オンバランス化で財務諸表・財務指標はどう変わるか

オペレーティング・リースがオンバランス化されると、貸借対照表の資産の部に使用権資産、負債の部にリース負債が新たに計上されます。これまで注記のみだった賃借契約が資産・負債として表に載るため、企業によっては貸借対照表の総額が膨らみます。

たとえば年間120万円・期間4年のオフィス賃貸が1件あるだけでも、後述の設例と同じ条件なら約436万円(正確には4,355,874円)の使用権資産とリース負債が新たに計上されます。こうした契約が積み上がるほど、影響は大きくなります。

この変化は、いくつかの財務指標に波及します。負債が増えることで自己資本比率は低下し、負債資本倍率(D/Eレシオ)は上昇する方向に動きます。これまで営業費用に含まれていた支払リース料が、減価償却費と支払利息に置き換わるため、EBITDA(利払い・税金・減価償却前利益)や営業利益は見かけ上増える傾向があります。

財務指標は、金融機関の融資審査や財務制限条項(コベナンツ)、投資家への説明にも関わります。影響の大きい企業ほど、数値がどう動くかを早めに試算し、社内や取引先・投資家に説明できるよう準備しておくことが重要になります。

変わるのは表の数字だけではありません。新基準では、注記(財務諸表の脚注)で開示すべき情報も拡充されます。リースに関する定性的な情報に加え、使用権資産の額や種類ごとの内訳、リース負債の返済スケジュール、短期・少額リースの費用、リースに係る支出額などを注記することが求められます。表面の計上額だけでなく、こうした開示への対応も準備の対象になる点を押さえておきましょう。

出典・参考資料(1件)

新リース会計基準はいつから?適用時期と早期適用【決算月別スケジュール】

ここからは、いつから適用されるのかを確定します。適用時期は企業会計基準第34号の第58項に定められており、原文は次のとおりです。

本会計基準は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。ただし、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から本会計基準を適用することができる。

出典:企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」第58項|企業会計基準委員会

ポイントは「2027年4月1日以後開始する事業年度から」という点で、決算月によって実際の開始タイミングが変わります。自社の決算月に当てはめると、次のようになります。

決算月強制適用が始まる事業年度早期適用が可能な事業年度
3月決算2027年4月1日開始の事業年度(2027年度)から2025年4月1日開始の事業年度(2025年度)から
6月決算2027年7月1日開始の事業年度から2025年7月1日開始の事業年度から
9月決算2027年10月1日開始の事業年度から2025年10月1日開始の事業年度から
12月決算2028年1月1日開始の事業年度から2026年1月1日開始の事業年度から
決算月別に見た強制適用・早期適用の開始事業年度(第34号第58項をもとに、決算月に当てはめて整理)。12月決算は2027年4月1日より前に始まる2027年の年度が対象外となるため、2028年1月開始の年度から

準備期間は決して長くありません。強制適用の初年度には、前年度との比較情報の整備も必要になるため、実質的な着手はさらに前倒しになります。次章で、自社が強制適用の対象かどうかを確認しましょう。

自社は強制適用の対象か【判定チェックリスト】

ここからは、自社が新リース会計基準の強制適用対象かを確認します。新基準そのものは「どの企業に強制適用するか」を定めておらず、強制適用の枠組みは金融商品取引法と会社法に由来します。おおまかには、次のいずれかに当てはまる企業が対象です。

  • 上場企業か:有価証券報告書の提出会社は、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準(ASBJの会計基準)に従うため、対象になります
  • 会計監査人を設置している会社か:会社法上、会計監査人設置会社は同基準による監査を受けます
  • 会社法上の「大会社」か:資本金5億円以上、または負債総額200億円以上の株式会社。大会社は会計監査人の設置が義務づけられています
  • 上場企業・大会社の連結子会社・関連会社か:親会社が連結財務諸表で新基準を適用するため、子会社・関連会社も実務上は新基準ベースの数値が必要になります

このうち「大会社」の金額基準は、会社法第2条第6号に定義があります。

大会社 次に掲げる要件のいずれかに該当する株式会社をいう。イ 最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が五億円以上であること。ロ 最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が二百億円以上であること。

出典:会社法(平成十七年法律第八十六号)第2条第6号|e-Gov法令検索

中小企業(中小企業の会計に関する指針・要領を採用する企業)には、原則として強制適用されません。ただし上場企業・大会社の連結対象となる子会社は、親会社の連結決算のために新基準ベースのデータを求められるため、実質的に対応が必要になる点に注意が必要です。

連結子会社側の実務としては、多くの場合、親会社の連結決算に取り込むための連結パッケージ用データを、新基準ベース(使用権資産・リース負債・減価償却費など)で作成して提出することになります。自社単体の計算書類(会社法上は中小指針・要領ベースでよいケース)を新基準に切り替える義務とは別問題になるため、親会社の経理部門と、どの範囲を新基準ベースで用意するかを早めにすり合わせておくと安全です。

グループ全体で、子会社から集めた新基準ベースの数値を取り込み、連結財務諸表としてまとめる仕組みそのものを見直したい場合は、以下の記事で連結会計システムをタイプ別に比較しています。

会計処理と仕訳の型

ここからは、実際にどう会計処理するのかを、計上額の前提となるリース期間の決め方、基本となる仕訳の型、そして例外となる少額・短期リースの簡便的取扱いに分けて解説します。

借手の会計処理の流れを示す図解。リース開始時に使用権資産とリース負債を同額で両建て計上し、毎期のリース料支払時は支払額を支払利息とリース負債の返済に分け、決算時に使用権資産をリース期間にわたって減価償却する。費用科目は従来の支払リース料1本から、新基準では減価償却費と支払利息の2本に分かれる。

リース期間の決定(延長・解約オプションの扱い)

使用権資産・リース負債の計上額は「リース期間」を何年とみるかで変わります。そのため、仕訳を組む前に、まずリース期間を確定させる必要があります。新基準のリース期間は、契約上の解約不能期間をそのまま使うのではなく、次の要素を加味して決めます。

  • 解約不能期間:借手が原資産を使用する権利をもつ、解約できない期間が土台になります。
  • 延長オプションの期間:延長できる期間のうち、借手が延長を行使することが「合理的に確実」な場合は、その期間もリース期間に含めます。
  • 解約オプションの期間:途中解約できる場合でも、借手が解約を行使しないことが「合理的に確実」なら、その期間はリース期間に含めます。

「合理的に確実」かどうかは、更新料の水準、原状回復や移転にかかるコスト、その場所・設備が事業に不可欠かどうかといった、オプションの行使を後押しする経済的な要因を総合的に見て判断します。たとえば契約上は2年でも、立地や設備の都合で更新がほぼ確実な店舗賃貸なら、更新見込み期間を含めた年数でリース期間をとらえます。契約年数だけを機械的に当てはめると計上額を見誤るため、実態に即した判断が求められます。

出典・参考資料(1件)

開始時・毎期・決算時の仕訳【数字入り一例】

借手は、リース開始日に使用権資産とリース負債を両建てで計上します。リース負債は、未払のリース料から利息相当額を控除し、現在価値に割り引いて算定します。企業会計基準第34号は、当初測定を次のように定めています。

借手は、リース開始日に、第34項に従い算定された額によりリース負債を計上する。また、当該リース負債にリース開始日までに支払った借手のリース料、付随費用及び資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除した額により使用権資産を計上する。

出典:企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」第33項|企業会計基準委員会

考え方を数字でつかむために、次の設例で見てみます(金額は理解のための一例です)。年間のリース料1,200,000円、リース期間4年、割引率(追加借入利子率)年4%、期末払いとします。

各年のリース料を現在価値に割り引くと、1年目1,153,846円・2年目1,109,467円・3年目1,066,796円・4年目1,025,765円となります。その合計約4,355,874円(年4%・4年の年金現価係数約3.63を1,200,000円に掛けた額にほぼ一致します)が、使用権資産・リース負債の当初計上額です。

リース開始時の仕訳は、使用権資産とリース負債の両建てです。

借方金額貸方金額
使用権資産4,355,874リース負債4,355,874
リース開始時の仕訳(設例・単位:円)

毎期のリース料支払時は、支払額を利息相当額と元本の返済に分けます(利息法)。1年目は、リース負債の期首残高4,355,874円に4%を掛けた174,235円が利息相当額、残りの1,025,765円が元本の返済です。

借方金額貸方金額
リース負債
支払利息
1,025,765
174,235
現金預金1,200,000
1年目のリース料支払時の仕訳(設例・単位:円)。利息はリース負債の期首残高に割引率を掛けて計算する

決算時は、使用権資産を減価償却します。所有権が移転しないリースでは、原則としてリース期間を耐用年数、残存価額をゼロとして償却します。この設例では、4,355,874円を4年で定額償却するため、1年あたり約1,088,969円が減価償却費になります。

借方金額貸方金額
減価償却費1,088,969使用権資産1,088,969
決算時の減価償却の仕訳(設例・単位:円)。減価償却累計額を用いる方法もある

このように、従来は「支払リース料」1本だった費用が、新基準では減価償却費と支払利息の2つに分かれます。同じリースでも、費用の合計は期間を通じて同じでも、各期の費用の出方(前半に利息が多い)が変わる点が実務上のポイントです。

この設例では利息相当額を利息法で各期に配分しましたが、使用権資産の総額に重要性が乏しい場合などには、利息相当額の総額をリース期間にわたって定額で配分する簡便的な方法も認められています。どの配分方法を採用するかは、あらかじめ会計方針として定めておきます。

新基準のもとでは、ここで計上した使用権資産を、ほかの固定資産と同じように減価償却しながら台帳で管理し続けることになります。対象となる資産が増えるほど管理は煩雑になるため、使用権資産を含む固定資産をまとめて管理できるシステムを比較したい場合は、以下の記事で選び方や機能を解説しています。

少額リース・短期リースの簡便的取扱い

すべてのリースをオンバランスすると実務の負担が大きいため、新基準には簡便的取扱い(オフバランスのまま費用処理できる例外)が用意されています。短期リースと少額リースの2つについて、適用指針第33号の定めを整理します。

まず短期リースは、次のように定義されます。

「短期リース」とは、リース開始日において、借手のリース期間が12か月以内であり、購入オプションを含まないリースをいう。

出典:企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」第4項(2)|企業会計基準委員会

短期リースに該当すれば、使用権資産・リース負債を計上せず、リース料を原則として定額法で費用計上できます。

次に少額リースですが、ここで注意したいのは、適用指針の本文には「300万円」も「5,000米ドル」も、金額の閾値としては書かれていないという点です。「300万円以下」「5,000米ドル(約75万円)以下」と説明されることもありますが、これらは新基準本文が定める一律の閾値ではありません。適用指針第33号第22項は、少額リースの簡便的取扱いを、(1)と(2)の2系統として定めています。

次の(1)と(2)のいずれかを満たす場合、借手は、会計基準第33項の定めにかかわらず、リース開始日に使用権資産及びリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたって原則として定額法により費用として計上することができる。

出典:企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」第22項|企業会計基準委員会

この(1)(2)を、原文の構成に沿って整理すると次のようになります。

  • (1) 企業が採用する少額資産の費用処理基準額以下のリース:重要性が乏しい減価償却資産について購入時に費用処理する方法を採っている場合に、その基準額以下のリースが対象になります。
  • (2)① 契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリース:事業内容に照らして重要性が乏しいリースのうち、この判定には旧・適用指針第16号の「契約1件当たりのリース料総額300万円以下」で判定する方法を踏襲できます。
  • (2)② 新品時の原資産の価値が少額であるリース:IFRS第16号の結論の根拠が示した「新品時に5,000米ドル程度以下」という考え方に整合する選択肢です。

つまり「300万円」は(2)①で旧基準の判定方法を引き継いだ実務上の目安、「5,000米ドル」は(2)②が整合するIFRS第16号由来の考え方であって、どちらも新基準本文が定める一律の閾値ではありません。

実務では、自社が固定資産ですでに用いている少額資産の取得価額基準に(1)をそろえると社内の判断基準を統一しやすく、それに収まらない契約は(2)①(300万円の踏襲)で拾う、といった組み立て方が考えられます。いずれにしても、どの簡便法を採用するかは会計方針として明文化し、監査法人とすり合わせておくことが必要です。

適用初年度の経過措置(既存リースの移行)

新基準を適用する初年度には、それまで注記のみでオフバランスだった既存のオペレーティング・リースも、原則として使用権資産・リース負債として計上し直す必要があります。この移行時の取扱いが経過措置です。

原則は、過去から新基準を適用していたものとして扱う遡及適用ですが、実務負担を抑えるための簡便的な取扱いも認められています。代表的なのは、適用初年度の期首時点で残っている未経過のリース料を割り引いてリース負債を計上し、使用権資産をこれと同額または一定の調整をした額で計上する方法です。

この場合、移行による累積的な影響額は、適用初年度の期首の利益剰余金に加減します。すでにオンバランスされている既存のファイナンス・リースは、原則として従来の帳簿価額を引き継ぎます。

どの経過措置を選ぶかによって、適用初年度の数値の出方と作業量が変わります。前年度との比較情報をどこまで作り直すかにも関わるため、早めに方針を固めておくと、直前の負担を避けられます。

出典・参考資料(1件)

ここまで見たリース期間の判定、使用権資産・リース負債の計算、既存リースの遡及計算や注記対応を契約ごとに手作業で積み上げるのは、対象が多い企業ほど負担が大きくなります。こうした会計処理そのものをシステムで効率化したい場合は、以下の記事で遡及計算・注記への対応を軸にリース資産管理システムを比較しています。

なぜ改正されたのか(IFRS第16号・ASC842との整合)

改正の背景には、国際的な会計基準との整合(コンバージェンス)があります。国際会計基準審議会(IASB)は2016年1月に国際財務報告基準(IFRS)第16号「リース」を公表しました。米国財務会計基準審議会(FASB)も同年2月に会計基準のコード化体系Topic 842(ASC842とも呼ばれます)を公表し、いずれも借手の全リースを原則オンバランスとしています。

日本基準だけがオペレーティング・リースをオフバランスのままにしていると、国際的な財務諸表の比較可能性が損なわれます。企業会計基準第34号は、この経緯を結論の背景で説明しています。

IFRS第16号とTopic 842とでは、借手の会計処理に関して、主に費用配分の方法が異なるものの、原資産の引渡しにより借手に支配が移転した使用権部分に係る資産(使用権資産)と当該移転に伴う負債(リース負債)を計上する使用権モデルにより、オペレーティング・リースも含むすべてのリースについて資産及び負債を計上することとしている。

出典:企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」結論の背景BC7|企業会計基準委員会

適用までに何を準備するか(棚卸し→影響度試算→会計方針→システム→本番の並行運用)

ここからは、適用日までに何を進めればよいのかを、実務のステップに沿って解説します。準備は大きく5段階に分けられ、いずれも起点になるのが「リース契約の棚卸し」です。

新リース会計基準の適用までに準備する5ステップを示す図解。起点となるSTEP1はリース契約の棚卸しで、全社の契約を実態で洗い出し該当を特定する。STEP2は影響度の試算で計上額と財務指標への影響を試算する。STEP3は会計方針の決定で簡便法・割引率を定め監査法人と協議する。STEP4は社内規程・システムで会計・契約管理の仕組みを準備する。STEP5は本番適用・並行運用で前年度から比較情報を整備し並行運用する。
  1. リース契約の棚卸し:全社のリース・賃貸借・レンタル契約を洗い出し、新基準でリースに該当する契約を特定します。契約書のタイトルではなく実態で判断するため、対象は不動産賃貸・社用車・複合機・IT機器など広範に及びます。ここが後続すべての土台になります。
  2. 影響度の試算:洗い出した契約から、使用権資産・リース負債の計上額と、財務指標への影響を試算します。金額的な影響が大きいかどうかで、対応の優先度が変わります。
  3. 会計方針の決定と監査法人との協議:短期・少額の簡便法をどう採用するか、割引率をどう設定するかなどを会計方針として定め、監査法人とすり合わせます。
  4. 社内規程の整備とシステム対応:新しい会計処理に対応できるよう、社内規程を整え、会計システムや契約管理の仕組みを準備します。
  5. 本番適用と並行運用:強制適用の初年度は比較情報の整備も必要になるため、前年度から実質的な運用を始め、現行基準と並行して数値を確認します。

この5段階のなかで、最も工数がかかり、かつ後戻りしにくいのが最初の「棚卸し」です。対象契約が数百・数千件に及ぶ企業では、紙やPDFに散在する契約を手作業で洗い出すのは現実的ではありません。次章で、この棚卸しを仕組み化する選択肢を整理します。

リース契約の棚卸しを仕組み化する

新基準への対応でつまずきやすいのが、「そもそも自社にどんなリース・賃貸借契約があるのか」を正確に把握する段階です。契約が部門ごとに管理され、紙とPDFが混在していると、対象契約の抜け漏れがそのまま計上漏れにつながります。

この棚卸しを仕組み化する手段が、締結済みの契約を取り込んで一覧管理できる契約管理システムです。紙やPDFの契約書をアップロードするだけでAIが契約先・契約期間・自動更新の有無などを読み取って台帳を自動生成し、更新期限のアラートや全文検索まで備えるサービスが増えています。

ここでは、リース・賃貸借契約の棚卸しと台帳化に適したサービスを比較します。自社の契約量や管理したい範囲に合うものを見比べてみてください。

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サービス名TOKIUM契約管理Contract OneOPTiM Contract契約管理DX ConPassHubble mini
提供会社株式会社TOKIUMSansan株式会社株式会社オプティム株式会社日本パープル株式会社Hubble
月額料金の目安月1万円〜+契約書件数の従量課金要問い合わせ要問い合わせ月3万円〜(ライト)/5万円〜(スタンダード)要問い合わせ
紙契約書の取り込み・スキャン代行●非破壊スキャン・原本保管を代行●スキャン代行を初期費用に含む●電子化代行あり●原本保管・廃棄までBPO代行△紙はOCRで取り込み(代行の記載なし)
AIによる契約台帳の自動生成●●●●●
リース該当の自動判定(新リース会計基準対応)◎該当取引をAIで自動識別(標準提供)××××
更新期限アラート●●●●●
全文検索●●●●●
電子帳簿保存法対応●●●●△オプション対応
無料トライアル公式に記載なし公式に記載なし●全機能・上限100通公式に記載なし公式に記載なし
詳細情報サービス詳細を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見るオンライン相談を予約

※料金・機能は2026年9月時点の各社公式情報にもとづく目安です。◎は特に強みのある機能、●は対応、△は一部・オプション対応、×は公式に該当機能の記載が確認できないこと(提供の有無は各社にご確認ください)を示します。「要問い合わせ」の項目や最新の内容は各社にご確認ください。

1. TOKIUM契約管理(株式会社TOKIUM)

TOKIUM契約管理のウェブサイト

TOKIUM契約管理は、締結済みの紙・電子の契約書をクラウド上で一元管理する契約管理システムです。紙の契約書はTOKIUMに郵送するだけで非破壊のスキャン代行・原本保管まで任せられ、AI-OCRで全文をデータ化したうえで、取引先名・契約期間・自動更新の有無などを生成AIが自動抽出します。

新リース会計基準への対応という点では、2025年に新基準に該当する取引をAIで識別する機能を標準提供している点が、棚卸しの実務と直結します。料金は基本利用料が月額1万円からで、契約書の件数に応じた従量制が加わります(アカウント数は無制限、2026年8月時点、初期費用は要問い合わせ)。紙の契約書が大量に残っている企業の棚卸しに向いています。

2. Contract One(Sansan株式会社)

Contract Oneのウェブサイト

Contract Oneは、Sansanが提供する「AI契約データベース」です。紙・PDF・電子契約と形式を問わず契約書を取り込み、複数のデータ化エンジンとオペレーターによる手入力補正を組み合わせてデータ化する点が特徴で、名刺管理事業で培ったデータ化オペレーションを活かしています。

過去に取り交わした紙の契約書のスキャン代行やデータ化を初期費用に含む「紙の契約書も取り込む型」で、全文検索で会社名・担当者名・契約内容を横断的に探せます。料金は契約書の取り込み数などに応じた見積制で、ユーザー数・契約書の保存件数に上限はありません。過去分を含めて契約を漏れなく台帳化したい企業に適しています。

3. OPTiM Contract(株式会社オプティム)

OPTiM Contractのウェブサイト

OPTiM Contractは、契約書をアップロードするだけでAIがタイトル・企業名・契約締結日・契約終了日などの管理項目を読み取り、契約書1通ごとに情報を管理できるサービスです。AI-OCRによる紙・PDFの読み取りと、AI解析による管理項目の自動抽出で、契約管理台帳をつくる工数を抑えられます。

締結後の契約書ライフサイクル管理(台帳化・検索・更新期限管理)に特化しており、契約締結そのものを担う電子契約サービスとは性質が異なります。初期費用は原則不要で、全機能を試せる無料トライアル(アップロード上限100通)が用意されています。月額料金は契約書の件数に応じた提案制のため、詳細は公式への確認が必要です。まず試してから導入を判断したい企業に向いています。

4. 契約管理DX ConPass(株式会社日本パープル)

契約管理DX ConPass(コンパス)のウェブサイト

ConPass(コンパス)は、機密文書の廃棄・保管を長年手がけてきた日本パープルが提供する契約書管理特化型のクラウドサービスです。紙の契約書をPDF化してアップロードすると、AIが契約書名・相手先・契約日などを読み取って契約台帳を自動生成し、更新期限のアラート通知や全文検索にも対応します。

提供会社の強みを活かし、契約書原本の倉庫保管・スキャン・データ入力・原本廃棄までワンストップで代行できる点が、ソフトウェア専業のサービスと異なる特徴です。料金はライトプランが月額3万円から、スタンダードプランが月額5万円から(アカウント数は無制限、初期費用は要問い合わせ)。紙の原本管理まで含めて外部に任せたい企業に向いています。

5. Hubble mini(株式会社Hubble)

Hubble miniのウェブサイト

Hubble miniは、締結後の契約書管理に特化した契約書管理クラウドです。締結済みの契約書PDFをアップロードするだけで、OpenAIのGPT-4系のAI(Microsoft Azure OpenAI Serviceを利用)が契約内容を解析し、契約書名・相手方・開始日・終了日・自動更新の有無などを自動で読み取って契約台帳を作成します。

締結前から締結後まで一気通貫で提供する本体のHubbleに対し、Hubble miniは締結後管理に範囲を絞ったスモールスタート向けのプロダクトです。紙・デジタルを横断した全文検索やOCRに対応し、電子帳簿保存法対応はオプションで用意されています。料金は要問い合わせで、まず締結後の契約台帳づくりから小さく始めたい企業に向いています。

棚卸しの対象になる契約は部門ごとに散在しやすく、更新・満了の期限管理も担当がばらつきがちです。この分散した管理の実態について、提供元のHubbleでパートナーセールスを担当する安田氏は、次のように話しています。

安田氏
株式会社Hubble Partner Sales Manager
安田氏
独自インタビューより

契約期限の管理は会社によって運用が異なりまして、総務や法務がExcelで管理して各事業部にアラートを飛ばしているケースもあれば、事業部側がそれぞれ管理しているケースもあります。どちらの場合も漏れが発生しやすいのですが、Hubble miniでは「期限がいつまでですよ」というアラートメールが自動で担当の方に届きますので、管理の部分が非常に楽になったというお声をいただいています。

ここで取り上げたのは、リース・賃貸借契約の棚卸しへの適性を軸に絞ったサービスです。料金の実額や電子帳簿保存法対応なども含めて契約管理システム全体を見比べたい場合は、以下の記事でタイプ別の選び方や機能を詳しく解説しています。導入を検討される方はあわせてご覧ください。

まとめ

新リース会計基準(企業会計基準第34号)は、借手のオペレーティング・リースを原則オンバランス化し、使用権資産とリース負債を計上する大きな改正です。2027年4月1日以後に開始する事業年度から強制適用され(早期適用は2025年4月1日以後)、上場企業・大会社とその連結子会社などが対象になります。

対応の第一歩は、自社のリース・賃貸借契約を実態で洗い出す「棚卸し」です。対象が広範に及ぶため、契約を一覧管理・台帳化できる契約管理システムを活用すると、棚卸しから更新期限の管理までを効率化できます。まずは自社の契約量に合うサービスの資料を比べるところから始めてみてください。

よくある質問(FAQ)

Q. リース会計基準の改正(新リース会計基準)とは何ですか?

A. リース会計基準の改正(新リース会計基準)とは、借手のオペレーティング・リースも原則として貸借対照表に計上(オンバランス)する会計処理へ見直すものです。企業会計基準委員会(ASBJ)が2024年9月13日に公表した企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」および適用指針第33号によるものです。

借手はリースを「使用権の取得」と捉え、使用権資産とリース負債を計上します。2027年4月1日以後に開始する事業年度から強制適用されます。

Q. 新リース会計基準では、オフィスや店舗の家賃(不動産賃貸借)も対象になりますか?

A. 新リース会計基準では、オフィスや店舗などの不動産賃貸借も原則として対象となり、使用権資産・リース負債の計上が必要です。不動産の賃借は金額が大きく契約期間も長いため、オンバランス化したときの財務諸表への影響が大きくなりやすい領域です。

ただし、借手のリース期間が12か月以内の短期リースに該当する場合や、少額リースの簡便的取扱いを適用できる場合は、これまでどおり費用処理(オフバランス)が認められます。

Q. レンタルやサブスクリプション契約も、新リース会計基準の「リース」に該当しますか?

A. レンタルやサブスクリプション契約がリースに該当するかは、契約の名称ではなく「特定された資産を一定期間、対価と引き換えに使用を支配する権利」が含まれるかという実態で判断します。この条件を満たせば、契約書のタイトルが「レンタル契約」「利用契約」であっても会計上のリースとして扱われます。

反対に、対象となる資産が特定されない契約や、実質的にサービスの提供を受けているだけの契約はリースに該当しません。該当する場合でも、リース期間が12か月以内であれば短期リースの簡便的取扱いを検討できます。

Q. すでに契約している既存のファイナンス・リースは、新リース会計基準でどうなりますか?

A. 既存のファイナンス・リースは、新基準でも引き続きオンバランス(資産・負債の計上)が維持されます。もともと貸借対照表に計上されているため、オフバランスからの大きな移行は生じませんが、新基準の規定に沿った再測定が必要になる場合があります。適用にあたっては経過措置が設けられており、これを選択することで簡便的な対応も可能です。

出典・参考資料(1件)
  • 参考資料:企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(適用時期・経過措置は第58〜60項)|企業会計基準委員会(PDF)

Q. 新リース会計基準で、金額が変動するリース料(変動リース料)はどう処理しますか?

A. 変動リース料は、指数やレートに連動する部分はリース開始日のレートでリース負債に含め、それ以外の変動部分は発生した期の費用として処理するのが原則です。売上高などに連動して変わるリース料は、リース開始時点では金額が確定しないためリース負債には含めず、実際に発生したときに費用計上します。

出典・参考資料(1件)
  • 参考資料:企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」/適用指針第33号(借手のリース料・変動リース料の取扱い)|企業会計基準委員会(適用指針PDF)

Q. 中小企業も新リース会計基準への対応が必要ですか?

A. 中小企業は、「中小企業の会計に関する指針・要領」を採用している限り、新リース会計基準は原則として強制適用されません。ただし、上場企業や大会社の連結子会社・関連会社にあたる場合は、親会社が連結財務諸表で新基準を適用するため、実務上は新基準ベースの数値が必要になり、実質的に対応が求められる点に注意が必要です。

Q. すでにIFRSを任意適用している企業に、新リース会計基準の影響はありますか?

A. IFRSを任意適用している企業は、すでにIFRS第16号でリースをオンバランス処理しているため、原則として大きな影響はありません。新基準はこのIFRS第16号と整合する使用権モデルを採用しているためです。ただし、日本基準でのみ開示している個別財務諸表などがある場合は、その範囲で新基準への対応が必要になるケースがあります。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
記事内でご紹介している製品・サービスは監修者が選定したものではなく、編集部が独自に選定したものです。
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

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