会議やメールで「KYC」という3文字が当たり前のように使われ、意味が取れないまま話が進んでしまう——そんな場面は少なくありません。KYCは「Know Your Customer」の略で、日本語では本人確認・顧客確認を指します。金融機関などが口座開設や取引の際に、相手が本当にその人かを確かめる一連の業務のことです。
近年はマネー・ローンダリング対策の強化やオンライン取引の拡大を背景に、対応を迫られる事業者の範囲が広がっています。会議や資料で前提知識のように飛び交うこの言葉を、意味だけでなく業務の全体像まで押さえておきたい担当者は少なくありません。
本記事では、KYCの意味と読み方をまず押さえたうえで、何を確認する業務なのか、なぜ必要なのか、どの事業者に関係するのかを整理します。あわせて、犯罪収益移転防止法(犯収法)が定める顧客確認業務の中身、eKYC・AML・CDDといった関連用語との違い、2027年4月に予定される法改正のポイント、そして本人確認を効率化する手段までを解説します。
自社にKYCが必要かを判断し、次の一歩に進むための材料としてご活用ください。
目次
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KYCとは?(Know Your Customer=本人確認/顧客確認)
KYCとは「Know Your Customer」の略で、読み方はノウ・ユア・カスタマー(ケーワイシー)、日本語では本人確認・顧客確認を意味します。KはKnow(知る)、YはYour(あなたの)、CはCustomer(顧客)の頭文字で、直訳すれば顧客を知ること、すなわち取引の相手が誰であるかを事業者が確かめる業務を指します。
身近な例では、銀行口座を開設するときや証券・暗号資産のアプリに登録するとき、本人確認書類の写真とあわせて自分の顔を撮影するよう求められることがあります。あの手続きがKYCにあたります。事業者が顧客の実在性や属性を確認し、なりすましや不正な取引を防ぐための業務全体を指す言葉です。
何を確認する業務か
KYCで確認する中心は、顧客の「本人特定事項」です。犯収法では、自然人(個人)の場合は氏名・住居・生年月日、法人の場合は名称・本店または主たる事務所の所在地が本人特定事項と定められています。口座開設やアプリ登録の際に運転免許証やマイナンバーカードの提示を求められるのは、これらの事項を書類で確かめるためです。
確認する事項は本人特定事項だけにとどまりません。取引の目的や顧客の職業・事業内容なども確認の対象になります。こうした確認項目の全体像は、後述する「犯収法上の三本柱」で詳しく整理します。
身元確認と当人認証(本人確認の2要素)
本人確認は、「身元確認」と「当人認証」という2つの要素に分けて考えると整理しやすくなります。一般社団法人OpenIDファウンデーション・ジャパンが公開している「民間事業者向けデジタル本人確認ガイドライン」は、両者を次のように定義しています。
本人確認は、「身元確認」と「当人認証」の2つの要素に分かれます。「身元確認」は、本人確認書類を確認する等により、「実在性」を確認することであり、一般的にはユーザー登録等が該当します。「当人認証」は、あらかじめ登録されているパスワードやパスキー等の認証情報と手続を行う際に入力された認証情報を照合する等により、事前に登録された者と同一人物であることを確認することであり、一般的にはログインが該当します。
出典:民間事業者向けデジタル本人確認ガイドライン 第1.2版 本人確認手法編|OpenIDファウンデーション・ジャパン
KYCで主に問題になるのは前者の身元確認、すなわち取引の相手が実在する本人かを確かめる部分です。当人認証はログインなど本人確認後の場面で使われる仕組みで、両者は目的も使う場面も異なります。この区別を押さえておくと、後述するeKYCなどの手法を理解しやすくなります。
KYCを行う目的(なぜ必要か)
KYCが求められる最大の理由は、マネー・ローンダリング(資金洗浄)やテロ資金供与、なりすましによる不正利用を防ぐことにあります。取引の相手を確かめずにサービスを提供すると、犯罪で得た資金の移転や口座の不正利用に事業が使われるおそれがあるためです。
この目的は、KYCの根拠となる犯罪収益移転防止法(犯収法)の目的規定そのものに示されています。
この法律は、犯罪による収益が組織的な犯罪を助長するために使用されるとともに、これが移転して事業活動に用いられることにより健全な経済活動に重大な悪影響を与えるものであること…に鑑み、特定事業者による顧客等の本人特定事項…等の確認、取引記録等の保存、疑わしい取引の届出等の措置を講ずることにより…犯罪による収益の移転防止を図り、併せてテロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約等の的確な実施を確保し、もって国民生活の安全と平穏を確保するとともに、経済活動の健全な発展に寄与することを目的とする。
出典:犯罪による収益の移転防止に関する法律 第1条|e-Gov法令検索
ここからわかるように、KYC(本人特定事項等の確認)は、取引記録の保存や疑わしい取引の届出とセットで、マネー・ローンダリング対策およびテロ資金供与対策(AML/CFT)の一環として位置づけられています。
実際、犯収法では、収受した財産が犯罪による収益である疑いがあると認められる場合、事業者は速やかに行政庁へ届け出なければならないと定められており(同法第8条)、KYCはこうした疑わしい取引を検知する土台にもなります。
事業者の視点で言い換えると、KYCは「犯罪に巻き込まれないためのリスク管理」であり、同時に取引の相手を確かめることで顧客自身を守る消費者保護の役割も担います。単なる登録時の事務手続きではなく、事業の信頼性を支える基盤といえます。
出典・参考資料(1件)
KYCが求められる事業者・場面(自社は該当するか)
「自社にKYC(本人確認)の義務があるのか」は、多くの担当者が最初に気になる点です。ここで注意したいのは、本人確認義務の根拠となる法律が業種によって異なることです。犯収法で本人確認を義務づけられているのは「特定事業者」と呼ばれる事業者ですが、それ以外の業種でも別の法律で本人確認が求められる場合があります。
犯収法第2条第2項は特定事業者を列挙しており、代表的なものとして次の事業者が含まれます。
- 金融機関等:銀行、金融商品取引業者(証券会社等)、貸金業者、資金移動業者、暗号資産交換業者、両替業務を行う者など
- 不動産関連:宅地建物取引業者
- 士業:弁護士、司法書士、行政書士、公認会計士、税理士など
出典・参考資料(1件)
一方で、日常的に本人確認を行っている業種のなかにも、犯収法の特定事業者にはあたらないものがあります。これらは別の法律が本人確認の根拠になります。
- 古物商(リユース・中古品の買取など):古物営業法にもとづき、買い受けの相手方の住所・氏名・職業・年齢などを確認する義務があります。
- 携帯電話などの通信事業者:携帯電話不正利用防止法にもとづく契約者の本人確認が求められます。
- マッチング・出会い系サービス:出会い系サイト規制法にもとづく年齢確認等が求められます。
出典・参考資料(1件)
このように、金融・決済・暗号資産・不動産・士業などは犯収法にもとづくKYC、古物・通信・マッチングなどはそれぞれの業法にもとづく本人確認が必要になります。上に挙げた業種は代表例で、これ以外にも人材紹介やシェアリングサービスなど、顧客と継続的に取引や金銭のやり取りを行う事業では本人確認が論点になりやすいものがあります。
自社がどの法律の対象になるかは、提供するサービスの内容によって変わります。リストに自社の業種が見当たらない場合でも、不特定の相手と継続的に取引する事業は対象になりうるため、該当しそうなときは根拠となる法律を確認したうえで対応範囲を見極めることが重要です。
KYCの中身=犯収法上の三本柱
ここまでで、自社が犯収法の特定事業者に該当するかの当たりがついたら、次に気になるのは「では具体的にどこまで対応すればよいのか」でしょう。犯収法が特定事業者に求める顧客確認業務は、大きく「取引時確認」「継続的顧客管理」「実質的支配者の確認」の3つに整理できます。これらを顧客確認業務の三本柱として順に見ていきます。
ここで解説するのは、犯収法の特定事業者に求められる確認業務です。前節で触れた古物商・通信・マッチングなど、犯収法以外の業法が根拠になる業種では、確認する項目や方法が各法律で異なります。また、後述する実質的支配者の確認は取引時確認の一部(犯収法第4条第1項第4号)でもありますが、法人取引で特に重要なため、ここでは独立した柱として扱います。

取引時確認(犯収法第4条)
取引時確認は、口座開設などの特定取引を行う際に顧客を確認する、KYCの中核となる手続きです。犯収法第4条第1項は、確認すべき事項を次のように定めています。
出典:犯罪による収益の移転防止に関する法律 第4条第1項|e-Gov法令検索
- 一 本人特定事項(自然人にあっては氏名、住居…及び生年月日をいい、法人にあっては名称及び本店又は主たる事務所の所在地をいう。以下同じ。)
- 二 取引を行う目的
- 三 当該顧客等が自然人である場合にあっては職業、当該顧客等が法人である場合にあっては事業の内容
- 四 当該顧客等が法人である場合において、その事業経営を実質的に支配することが可能となる関係にあるものとして主務省令で定める者があるときにあっては、その者の本人特定事項
個人であれば氏名・住居・生年月日に加えて取引目的や職業を、法人であれば名称・所在地に加えて取引目的・事業内容と、後述する実質的支配者を確認します。取引時確認を行った場合、事業者は確認記録を作成し、取引に係る契約が終了した日などから7年間保存することが義務づけられています(同法第6条)。確認して終わりではなく、記録として残す点まで含めて対応が必要です。
継続的顧客管理
継続的顧客管理は、取引開始時の確認で終わらせず、取引の継続中も顧客情報を最新に保ち、リスクを見直し続ける取り組みです。犯収法第11条は、取引時確認等の措置を的確に行うため、確認した事項に係る情報を最新の内容に保つための措置を講ずるものとすると定めています。あわせて施行規則第32条第1項第3号は、確認記録や取引記録等を継続的に精査することを求めています。
「継続的な顧客管理」という業務の具体的な期待水準を示しているのが、金融庁の「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」です。ガイドラインは、対応が求められる事項として次のように記しています。
出典:マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン(令和8年3月)|金融庁
- イ.取引類型や顧客属性等に着目し…調査の対象及び頻度を含む継続的な顧客管理の方針を決定し、実施すること
- ニ.各顧客のリスクが高まったと想定される具体的な事象が発生した場合等の機動的な顧客情報の確認に加え、定期的な確認に関しても、確認の頻度を顧客のリスクに応じて異にすること
すべての顧客を一律の頻度で確認するのではなく、リスクの高い顧客ほど頻度を上げ、低い顧客は簡素にするという、リスクに応じた運用が求められる点が特徴です。顧客数が増えるほど確認対象は膨らむため、継続的顧客管理は実務担当者にとって負担の大きい業務になりやすい領域です。
出典・参考資料(2件)
確認の頻度やリスク評価の基準づくりといった運用の具体的な進め方や効率化の手法は、以下の記事で詳しく解説しています。
実質的支配者の確認
実質的支配者の確認は、法人顧客との特定取引において求められる手続きです。法人の名義だけを確認しても、その背後で実際に事業を支配している個人が誰かがわからなければ、なりすましや不正な資金移転を見抜けません。そこで、法人の事業経営を実質的に支配する自然人まで確認することが定められています。
実質的支配者とは、簡単にいえば「議決権の4分の1(25%)を超える議決権を持つなどして、その法人を実際に支配している個人」を指します。犯収法施行規則第11条は、その範囲を次のように定義しています。
法第四条第一項第四号…に規定する主務省令で定める者(以下「実質的支配者」という。)は、次の各号に掲げる法人の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める者とする。一 …その議決権の総数の四分の一を超える議決権を直接又は間接に有していると認められる自然人…/当該自然人
出典:犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則 第11条|e-Gov法令検索
議決権の総数の4分の1(25%)を超える議決権を持つ自然人などが実質的支配者にあたり、その本人特定事項を、代表者等からの申告を受ける方法で確認します。実質的支配者の確認は法人顧客の特定取引に限って求められるもので、個人が顧客の場合には必要ありません。法人取引を扱う事業者にとっては、取引時確認とあわせて押さえておくべき手続きです。
KYCとeKYC・AML・CDDの違い
KYCの周辺には、eKYC・AML・CDDなど似た用語が並び、混同されがちです。それぞれが指す範囲は異なり、上下の階層関係にあるものもあります。まず全体像を対比表で整理します。
| 用語 | KYC | KYB | eKYC | AML | CDD |
|---|---|---|---|---|---|
| 正式名称・読み方 | Know Your Customer(ケーワイシー) | Know Your Business(ケーワイビー) | electronic Know Your Customer(イーケーワイシー) | Anti-Money Laundering(エーエムエル) | Customer Due Diligence(シーディーディー) |
| 意味 | 顧客の本人確認・顧客確認を行う業務全体 | 取引相手が法人の場合の、法人そのものの確認(登記情報・実質的支配者など) | スマートフォン等を用い、本人確認をオンラインで完結させる手法 | マネー・ローンダリング(資金洗浄)対策の取り組み全般 | 顧客ごとにリスクを調査・評価し低減措置を判断・実施する一連の流れ(顧客管理) |
| KYCとの関係 | 基準となる概念。他の用語はKYCとの関係で捉える | 個人向けのKYCに対する法人版。法人取引では両方が必要 | KYCを実現する一つの手段。KYC⊃eKYC | 上位の枠組み。KYCはAMLを構成する中核業務。AML⊃KYC | KYCと重なる中核概念。金融庁ガイドライン上の「顧客管理」に相当 |
※各用語の一般的な位置づけを整理したものです。文脈により指す範囲が異なる場合があります。

ポイントは、これらが並列の別物ではなく階層で捉えられることです。マネー・ローンダリング対策(AML)という大きな枠組みのなかに顧客確認業務(KYC)があり、KYCを実現する手法の一つがオンライン完結型のeKYCです。CDDは、金融庁ガイドラインが定義する「顧客管理」にあたり、KYCと重なる中核概念です。ガイドラインはCDDを次のように位置づけています。
リスク低減措置のうち、特に個々の顧客に着目し、自らが特定・評価したリスクを前提として、個々の顧客の情報や当該顧客が行う取引の内容等を調査し、調査の結果をリスク評価の結果と照らして、講ずべき低減措置を判断・実施する一連の流れを、本ガイドラインにおいては、「顧客管理」(カスタマー・デュー・ディリジェンス: CDD)と呼んでおり、これはリスク低減措置の中核的な項目である。
出典:マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン(令和8年3月)|金融庁
用語を混同すると、必要な対応の範囲を見誤りかねません。「AMLの一環としてKYC(顧客確認)を行い、その手段としてeKYCを使う」「CDDはKYCの中核をなす顧客管理の考え方」と押さえておくと、社内やベンダーとの会話でも齟齬が生じにくくなります。
2027年4月の犯収法改正のポイント
本人確認の実務は、2027年4月に予定される犯収法施行規則の改正で見直しを迫られます。改正の中心は、なりすましのリスクが高い本人確認方法を廃止し、より偽造されにくい方式へ重心を移すことです。オンラインで本人確認を行う事業者にとって、対応する方式の切り替えが必要になります。
廃止されるのは、本人確認書類の画像と本人の容貌の画像を送信して確認する方法(施行規則第6条第1項第1号ホ、いわゆる「ホ方式」)です。画像は加工や偽造が比較的容易で、なりすましのリスクが高いことが理由とされています。
ここで注意したいのは、この改正を「マイナンバーカードの公的個人認証(JPKI)への一本化」と単純化しないことです。警察庁(JAFIC)の改正Q&Aは、ICチップ付きの本人確認書類を持たない人などへの対応として、原本の送付を受ける方法を残すと説明しています。
今回の改正は、本人確認書類の偽変造等によるなりすまし等のリスクの高い方法の廃止等を内容とするものであるところ、ICチップ付きの本人確認書類を保有しない者等への対応として、偽造を防止するための措置が講じられた一定の本人確認書類の原本の送付を受ける方法を存置することとしています。
出典:犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則の改正に係るQ&A|警察庁(JAFIC)
整理すると、改正はホ方式(画像送信方式)の廃止と、ICチップ読み取りへの原則移行が柱であり、ICチップ付き書類を持たない人のために原本送付の方法は残される、という内容です。新しい規則にもとづく取引時確認は、施行日である令和9年(2027年)4月1日以降の取引から必要になります。移行の準備が間に合わないと本人確認の運用に支障が出るおそれもあるため、対応方式の見直しは早めに検討しておくのが安全です。
出典・参考資料(1件)
ここでは2027年4月改正の要点を整理しましたが、2025年に先行した改正の内容や、公的個人認証(カ方式/JPKI)への移行の考え方まで踏み込んで確認したい方は、改正のポイントを掘り下げた以下の記事もご参照ください。
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KYCを効率化するには(eKYC等サービスの選び方と次の一歩)
ここまで見てきたように、KYCは取引時確認から継続的顧客管理、実質的支配者の確認、記録の保存まで含む業務で、対象顧客が増えるほど負担が大きくなります。さらに2027年4月の改正で対応方式の見直しも必要です。こうした業務を効率化する手段として、本人確認をオンラインで完結させるeKYCサービスや、確認業務そのものを外部に委託できる本人確認ソリューションが提供されています。
選ぶ際は、自社が必要とする本人確認方式(ICチップ読み取り・公的個人認証など)への対応、改正への移行のしやすさ、目視確認やBPO(業務代行)の有無、料金体系、既存システムへの組み込みやすさを確認しておくと、導入後のミスマッチを防げます。ここでは、KYC・本人確認の効率化に活用できる主なサービスを紹介します。
| サービス名 | ネクスウェイの本人確認(eKYC)ソリューション | ProTech ID Checker | TRUSTDOCK | LIQUID eKYC |
|---|---|---|---|---|
| 提供会社 | 株式会社ネクスウェイ | 株式会社ショーケース | 株式会社TRUSTDOCK | 株式会社Liquid |
| 対応する本人確認方式 | IC読取+容貌撮影(ヘ方式) 公的個人認証(カ方式/JPKI) 容貌撮影(ホ方式) 郵送(リ方式) | IC認証(マイナンバーカード・免許証等のICチップ読取) 撮影認証(ホ方式) 書類アップローダー | IC読取(ヘ方式) 容貌撮影(ホ方式) 公的個人認証(JPKI) ほか多方式に対応 | 公的個人認証(カ方式/JPKI) IC読取+容貌撮影(ヘ方式) スマホ搭載マイナンバーカード(ル方式) |
| 実装形態 | Web完結型 (JPKIはAPI・アプリ提供) | タグ設置型(ローコード) | API・アップローダー・アプリ | JavaScript組み込み・API・SDK |
| 目視確認・BPO | ● | △提携先(ネクスウェイ)と連携 | ●24時間365日対応 | ● |
| 法人確認(KYB) | ● | △登記簿謄本の確認に対応 | ●法人番号による確認 | 公式に記載なし |
| 初期費用 | 50,000円〜 | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ | 50,000円〜 (カスタムは1,000,000円〜) |
| 月額費用 | 25,000円〜 (従量課金制) | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ | 30,000円〜 |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る |
表中の「ホ方式」「ヘ方式」「カ方式」などは犯収法が定める本人確認方式の区分で、括弧内に確認方法を併記しています。前述のとおりホ方式(容貌画像と書類画像の送信)は2027年4月に廃止が予定されており、各サービスはICチップ読み取りや公的個人認証への移行に対応しています。
※料金・対応状況は変動するため、最新の内容は各社の公式情報・資料でご確認ください(2026年8月時点)。
1. ネクスウェイの本人確認(eKYC)ソリューション(株式会社ネクスウェイ)

株式会社ネクスウェイが提供する、犯収法に準拠したクラウド型の本人確認トータル支援サービスです。オンライン本人確認(eKYC)に加え、公的個人認証(JPKI)、書類の目視確認・突合、法人確認、確認後工程を代行するBPO、転送不要郵便の発送追跡までを1つのサービスでワンストップに提供します。
本人確認の複数の方式に対応し、審査オペレーションを社内に持たない事業者でもBPOを組み合わせて運用できる点が強みです。2027年4月の改正を見据えた公的個人認証(JPKI)サービスは、マイナアプリを使うアプリ提供型と、自社システムへ組み込むAPI(ライブラリ)提供型の2系統で提供されています。
導入実績は300社以上(うち犯収法の特定事業者100社以上、公式料金ページ)で、暗号資産交換業や金融商品取引業など幅広い業種で採用されています。
出典・参考資料(1件)
2. ProTech ID Checker(株式会社ショーケース)

東京証券取引所スタンダード市場に上場する株式会社ショーケースが提供する、オンライン本人確認(eKYC)サービスです。対象ページにタグを設置するだけで導入できるローコード型の実装が特徴で、システム開発を伴わずに本人確認をWebサイト上で完結させられます。
ICチップ読み取り(IC認証)と容貌撮影による確認(撮影認証)を運用上で切り替えられる設計で、2027年4月のホ方式廃止を見据えた移行手段として、公式は「最短5日、タグ設置だけ」での切り替え対応を訴求しています。AIによる自動審査で目視の確認工数を削減できる点も特徴です。
累計導入社数は450社以上(2026年8月時点、公式トップページ)にのぼり、金融・古物・通信・不動産クラウドファンディングなど導入企業は多岐にわたります。
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AIによる自動審査は、実際の運用でどの程度の精度になるのか。開発元である株式会社ショーケースは、MCB FinTechカタログの独自インタビューで、審査の運用方法と実運用での精度について次のように述べています。

当社ではAIや機械による自動審査の仕組みを採用しており、完全に自動化することも、1次審査をAIが担い2次審査を人が行うハイブリッド型の運用も可能です。完全自動化のケースでも、実際の運用で90%以上の精度を確認いただいた事例があります。一般的にこうしたサービスの精度は90%台後半と示されることが多い一方で、実際に使ってみると60〜80%程度だったというお声を伺うこともあります。
3. TRUSTDOCK(株式会社TRUSTDOCK)

個人向けのeKYCと法人確認(KYB)を一つのプラットフォームでカバーするのが、株式会社TRUSTDOCKのサービスです。犯収法に準拠し、個人向けの身分証確認・公的個人認証(JPKI)に加え、法人番号を活用した法人確認にも対応します。確認業務の一部または全部を専任スタッフに委託できるBPOを24時間365日体制で提供している点が特徴です。
実装は、API・JavaScriptアップローダー・専用アプリの3系統から選べます。目視確認まで含めて委託する形態から、システム基盤のみを利用して確認業務は自社で行う形態、機械判定のみで即時に結果を返す形態まで、確認業務をどこまで自社で担うかに応じて提供形態を選択できます。法人確認では、履歴事項全部証明書の提出を不要とする法人番号による確認にも対応しています。
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4. LIQUID eKYC(株式会社Liquid)

アカウント登録や口座開設、契約締結時の本人確認をオンラインで完結できるのが、株式会社LiquidのLIQUID eKYCです。本人確認書類のICチップ読み取りまたは撮影と、自撮り顔写真の照合、公的個人認証(JPKI)を活用した方式に対応します。
料金体系を公式サイトで公開している点が特徴で、ベーシックプランは初期費用50,000円・月額30,000円、従量課金は書類撮影のみ1件50円、書類+容貌撮影1件150円と明示されています(2026年8月時点)。顔認証やOCRによる自動審査に加え、なりすましやカメラの制御を悪用した攻撃を検知する不正検知機能を備えます。金融や通信、古物買取、暗号資産取引といった業種で導入が進んでいます。
出典・参考資料(1件)
ここで取り上げたのは、代表的な4サービスです。対応する本人確認方式や料金、失敗しない選び方まで含めて、より多くのeKYCサービスを比較して検討したい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
まとめ
KYC(Know Your Customer)は、事業者が取引の相手を確かめる本人確認・顧客確認の業務であり、なりすましやマネー・ローンダリングを防ぐための土台です。犯収法の特定事業者にとっては、取引時確認・継続的顧客管理・実質的支配者の確認という三本柱への対応が求められ、古物・通信・マッチングなどでも業種ごとの法律にもとづく本人確認が必要になります。
自社に本人確認が必要かを見極めるうえで、押さえておきたいポイントは次のとおりです。
- 根拠法を確認する:金融・決済・暗号資産・不動産・士業は犯収法、古物・通信・マッチングは各業法と、業種で根拠が異なる。
- 業務範囲を把握する:取引時の確認だけでなく、継続的な顧客管理や記録の7年保存まで含めて対応する。
- 改正に備える:2027年4月の改正でホ方式が廃止され、ICチップ読み取りへ原則移行する。対応方式の切り替えを早めに検討する。
本人確認の業務は、対象顧客が増えるほど負担が重くなります。eKYCサービスや本人確認ソリューションを活用すれば、法令に沿った確認と業務効率化の両立が可能です。自社の対応範囲と必要な方式を踏まえ、複数のサービスを比較して検討することをおすすめします。
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よくある質問(FAQ)
Q. KYCとは何ですか?
A. KYCとは、事業者が取引の相手が誰であるかを確かめる本人確認・顧客確認の業務を指す言葉です。「Know Your Customer(ノウ・ユア・カスタマー)」の略で、読み方は「ケーワイシー」、日本語では本人確認・顧客確認を意味します。日本では犯罪収益移転防止法(犯収法)にもとづき、なりすましやマネー・ローンダリングを防ぐための顧客確認業務として位置づけられています。
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Q. KYCとeKYCの違いは何ですか?
A. KYCは本人確認・顧客確認の業務全体を指す言葉で、eKYCはその本人確認をスマートフォン等を使ってオンラインで完結させる手法です。つまりeKYC(electronic Know Your Customer)はKYCを実現する手段の一つで、両者は「業務全体(KYC)」と「その一手法(eKYC)」という包含関係にあります。KYCそのものは、対面や郵送を含むオンライン以外の方法でも行えます。
Q. KYCとAMLの違いは何ですか?
A. AMLはマネー・ローンダリング対策の取り組み全般を指す上位の枠組みで、KYCはそのAMLを構成する中核業務です。AML(Anti-Money Laundering)という大きな枠組みの中に顧客確認業務であるKYCがあり、KYCで確かめた顧客情報が、疑わしい取引の検知や届出などAML全体の土台になる、という関係です。
Q. KYCとKYBの違いは何ですか?
A. KYCが主に個人を含む顧客の本人確認を指すのに対し、KYB(Know Your Business)は法人そのものの確認を指します。犯収法の取引時確認は個人・法人の双方が対象ですが、法人顧客については、法人の実在性の確認に加えて、その事業を実質的に支配している個人(実質的支配者)まで確認する必要があり、こうした法人向けの確認をまとめてKYB(法人確認)と呼ぶことがあります。
Q. 実質的支配者とは何ですか?
A. 実質的支配者とは、法人の事業経営を実際に支配している自然人(個人)のことで、代表的には議決権の総数の4分の1(25%)を超える議決権を持つ人が該当します。犯収法では、法人顧客と特定取引を行う際に、名義上の法人だけでなくこの実質的支配者の本人特定事項まで、代表者等からの申告を受ける方法で確認するよう定めています。
実質的支配者の確認は法人顧客の特定取引に限って求められるもので、個人が顧客の場合には必要ありません。
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Q. なぜ継続的顧客管理が必要なのですか?
A. 継続的顧客管理が必要なのは、取引開始時に確認した顧客情報が時間とともに古くなり、取引に潜むリスクの変化を見逃すおそれがあるためです。犯収法は確認した事項を最新の内容に保つための措置を求めており(第11条)、金融庁のガイドラインも、リスクの高い顧客ほど確認の頻度を上げるといった、リスクに応じた継続的な顧客管理を求めています。取引時の一度きりの確認では足りない、という点が特徴です。
Q. 自社にKYC(本人確認)の義務があるかはどう判断すればよいですか?
A. 自社にKYC(本人確認)の義務があるかは、提供するサービスがどの法律の対象になるかで判断します。業種によって根拠となる法律が異なる点に注意が必要です。金融・決済・暗号資産交換業・不動産・士業などは犯収法の「特定事業者」として本人確認が義務づけられています。
一方で、古物商は古物営業法、携帯電話などの通信は携帯電話不正利用防止法、マッチングサービスは出会い系サイト規制法と、犯収法以外の業法が根拠になる業種もあるため、該当しそうな場合は自社のサービスに対応する根拠法を確認することが重要です。
出典・参考資料(2件)
Q. 顧客がKYC(本人確認)を拒否した場合はどうなりますか?
A. 顧客が本人確認に応じない場合、事業者は口座開設などの取引を進めることができません。犯収法は、特定取引を行うに際して取引時確認を行わなければならないと定めているため(第4条)、確認が完了しない相手とは取引を開始・継続できないのが原則です。本人確認は取引を行うための前提であり、事業者が任意で省略できるものではありません。
出典・参考資料(1件)
Q. KYCで必要な本人確認書類には何がありますか?
A. KYCでは、運転免許証やマイナンバーカードなど、顧客の氏名・住居・生年月日(本人特定事項)を確認できる公的な本人確認書類が必要です。オンラインで完結するeKYCの場合は、これらの書類の画像やICチップの読み取りに加えて、本人の容貌(顔)の撮影を求められることが一般的です。法人が顧客の場合は、登記事項証明書など法人の実在を示す書類が必要になります。
Q. 2027年4月の犯収法改正でKYCの何が変わりますか?
A. 2027年4月の犯収法施行規則の改正では、なりすましのリスクが高い「ホ方式」(本人確認書類の画像と本人の容貌の画像を送信する方法)が廃止され、ICチップの読み取りを用いる方式へ原則として移行します。ただし、ICチップ付きの書類を持たない人などのために、偽造防止措置が講じられた本人確認書類の原本の送付を受ける方法は残されます。
新しい規則にもとづく取引時確認は、施行日である2027年(令和9年)4月1日以降の取引から必要になるため、オンラインで本人確認を行う事業者は対応方式の切り替えを早めに検討しておくと安全です。
出典・参考資料(1件)
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

















