不動産会社の給与計算では、基本給に歩合給やインセンティブが上乗せされ、外回りや直行直帰の勤怠も正確に拾う必要があります。基本給と歩合の二階建て賃金を表計算ソフトで処理していると、計算式の組み直しや転記に時間がかかり、月末の締めが近づくたびにミスの不安がつきまといます。
歩合給の計算式を自由に設定でき、外回りの勤怠や会計ソフトと連携できる給与計算ソフトを選べば、こうした負担は大きく軽くなります。では、自社の規模や働き方に合う一台をどう見極めればよいのでしょうか。
この記事では、不動産業に向く給与計算ソフト16サービスを比較し、歩合給への対応・勤怠や会計との連携・料金・対応規模の観点から選び方を整理しました。歩合給を含む残業代の計算など、不動産業ならではの実務もあわせて解説します。自社に合うソフトを見つける検討材料としてご活用ください。
また記事の後半では、いくつかの質問に答えるだけで自社に合う候補を絞り込める選定診断ツールもご用意しています。
目次
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本記事の対象範囲
この記事では、不動産会社の給与計算で生じやすい課題に対応できる給与計算ソフトを取り上げます。具体的には、基本給に歩合給やインセンティブを組み合わせた賃金計算、外回り・直行直帰スタッフの勤怠反映、繁忙期の残業、複数店舗の一元管理に対応できる製品です。売買・賃貸の仲介や賃貸管理など、数名規模から多店舗展開の中堅まで、自社で給与計算を行う不動産会社を想定しています。
不動産業だけに特化した給与計算ソフトは多くありません。そのため本記事では、歩合給の計算式を柔軟に設定でき、外回りの勤怠と連携できる汎用の給与計算ソフトを、不動産業の働き方に合うかという観点で選び分けていきます。
給与計算そのものを外部に任せたい場合は、業務範囲や料金体系で代行会社を比較した給与計算アウトソーシングおすすめ34選を比較もあわせてご検討ください。
歩合給の扱いに特有の論点が多いため、ここでは不動産業の働き方に合わせた選び方を中心に解説します。業種を問わない給与計算ソフト全般の基礎知識や幅広い製品比較を探している場合は、より広い範囲を扱った記事が役立ちます。
不動産業の給与計算が特殊な理由
ここからは、不動産業の給与計算が他業種と比べてなぜ手間がかかるのかを整理します。背景を押さえると、汎用的なソフトではなく自社の働き方に合う製品を選ぶ理由が見えてきます。
第一に、賃金が基本給と歩合給の二階建てになりやすい点です。成約件数や売上に応じたインセンティブは、固定歩合率・段階的な歩合率・件数単価など会社ごとに設計が異なり、毎月の計算式を正確に組む必要があります。完全歩合に近い設計でも、労働基準法は労働時間に応じた一定額の保障給を求めています。
出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。
出典:労働基準法 第27条(出来高払制の保障給)|e-Gov法令検索
第二に、外回りや直行直帰が多く、勤怠の把握が難しい点です。営業スタッフが事務所に立ち寄らず現地へ直行することも多く、出退勤の打刻をどう集めるかが給与計算の前提になります。勤怠データが正確に集まらなければ、残業代の計算も狂います。
第三に、繁忙期に労働時間が偏る点です。異動の多い時期や月末月初に業務が集中しやすく、時間外労働の割増賃金を正しく計算する場面が増えます。歩合給がある場合、残業代の計算は固定給だけの会社より複雑になります。
第四に、複数店舗を展開する会社では、拠点ごとに分かれた勤怠・給与データを一元管理する必要がある点です。店舗が増えるほど手作業での集計は現実的でなくなり、法人や拠点をまたいで管理できる仕組みが求められます。
これらの課題は、歩合給の計算・勤怠との連携・規模への対応という観点でソフトを選ぶことで解消に近づきます。次章では、具体的な選び方の軸を見ていきます。
不動産業向け給与計算ソフトの選び方
ここからは、不動産会社が給与計算ソフトを選ぶときに確認したい5つの軸を解説します。自社の働き方に当てはめながら読み進めてください。
歩合給の計算式を自由に設定できるか
不動産業で最も重要な軸です。固定歩合率・成約金額に応じた段階的な歩合率・件数単価など、自社の歩合設計をそのまま計算式として登録できるかが、まず見ておきたい点です。支給項目を自由に追加でき、独自の計算式を組めるソフトであれば、毎月の歩合計算を自動化できます。選択肢から選ぶだけの簡易な設定にとどまる製品では、複雑な歩合体系に対応しきれないことがあります。
外回り・直行直帰の勤怠と連携できるか
外回りスタッフの勤怠をどう給与へ反映するかは、不動産業ならではの課題です。スマートフォンやGPSで打刻できる勤怠システムと連携でき、残業時間や深夜勤務を自動で給与計算へ取り込めるかを確認しておきましょう。勤怠と給与が同じデータベースでつながっていれば、転記の手間とミスを減らせます。
歩合給の計算と外回り勤怠の反映を両方求める場合は、どちらを軸に選ぶかを決めておくと迷いません。勤怠一体型の製品は打刻から給与までの流れが滑らかな一方、歩合の計算式を自由に組めるかは製品ごとに差があります。歩合の計算式を組めるソフトを軸に、スマホ・GPS打刻の勤怠システムを連携する組み合わせも現実的な選択肢です。
会計ソフトと連携できるか
給与計算の結果は、仕訳として会計へ反映する必要があります。使っている会計ソフトと連携でき、給与データを自動で仕訳に落とせるかを確かめておきます。同じメーカーの会計ソフトを使うか、API連携やデータ出力に対応した製品を選ぶと、月次処理の流れが途切れません。
会計を別メーカーのソフトで使っている場合は、API連携やCSV出力に対応しているかを個別に確かめておきましょう。同一メーカーでそろえれば仕訳連携は滑らかですが、既存の会計を変えたくない場合は連携方式の有無が分岐点になります。
これから会計ソフトも選ぶ場合は、給与データとの連携のしやすさも含めてクラウド会計ソフト比較15選で候補を見比べておくと、給与から会計までの流れを設計しやすくなります。
自社の規模・店舗数に合い、料金は見合うか
従業員数や店舗数に対して、無理のない料金で使えるかを見極めます。数名規模の店舗であれば低コストで始められる製品、複数店舗や中堅規模であれば法人・拠点をまたいで管理できる製品が候補になります。
料金体系は、従業員1人あたりの従量課金と定額プランで損益分岐点が変わります。従量課金は数名規模なら割安でも、採用で人数が増えると定額の方が安くなる逆転が起きるため、数年先の人数も見込んで試算しておくと選び直しを避けられます。また、低コスト帯の製品は歩合給の計算式を自由に組めるかが公式に明示されないことも多く、費用を優先する場合も自社の歩合体系を組めるかは個別に確認が必要です。
法改正対応とサポート体制は十分か
社会保険料率や税額表、割増賃金のルールは法改正で変わります。クラウド型であれば税率テーブルや計算ロジックが自動で更新される製品が多く、担当者の更新作業を減らせます。年末調整や法定調書の作成、電子申請への対応範囲、導入時や繁忙期の問い合わせ対応といったサポート体制もあわせて確認しておくと安心です。
とはいえ、自社がどのタイプのソフトに向いているかの判断が難しいこともあります。そのような場合でも自社の状況に合わせて最適なサービスを最短で見つけられるよう、「30秒で終わる選定診断ツール」を以下にご用意しています。ぜひご活用ください。
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【比較表】不動産業向け給与計算ソフトを比較
ここからは、自社の課題や要件に合わせて客観的に比較・選定できるよう、不動産業に向く給与計算ソフト16サービスを4つの目的別(タイプ別)に分類してご紹介します。歩合給の計算式の自由度・歩合を含む残業代の自動計算・外回り勤怠との連携・会計連携・料金・対応規模を軸に並べました。

歩合給・多様な支給形態を柔軟に設定できるタイプ
歩合給や各種手当の計算式を自由に設計したい会社に向くタイプです。
| サービス名 | 弥生給与 Next | マネーフォワード クラウド給与 | freee人事労務 | ジンジャー給与 | SmartHR 給与計算 | PCA給与DX(PCAクラウド 給与) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 提供形態 | クラウド型 | クラウド型 | クラウド型 | クラウド型 | クラウド型 (労務の一機能) | クラウド型 |
| 歩合給の計算式の自由度 | ●ベーシックライト以上 | ●独自計算式に対応 | △固定制が中心 | ●雇用区分ごとに計算式設定 | ●計算式をカスタマイズ可 | ●支給項目50で対応 |
| 歩合を含む残業代の自動計算 | △計算式の設定で対応 | △計算式の設定で対応 | △公式記載なし | △計算式の設定で対応 | △計算式の設定で対応 | △計算式の設定で対応 |
| 外回り・直行直帰の勤怠連携 | ●弥生勤怠 Next・外部勤怠と連携 | ●API・CSVで20種以上と連携 | ●スマホ・LINEで打刻 | ●ジンジャー勤怠と連携 | △自社勤怠のみ自動連携 | ●外部勤怠とAPI・CSV連携 |
| 会計連携 | ●弥生会計 Next と連携 | ●クラウド会計と連携 | ●会計freeeと連携 | △公式記載なし | △公式記載なし | ●PCA会計と連携 |
| 対応規模・多店舗 | 中小企業向け (数名〜) | 1名〜大企業 (複数事業所) | 中小・小規模 | 中小〜中堅 | 複数事業所に対応 | 中小〜中堅 |
| 料金(初期・月額) | 初期0円 月1,700円〜(税抜) | 初期0円 月2,480円〜(税抜) | 初期0円 月2,000円〜(5名) | 初期・月額とも要問い合わせ (月300円〜/税別) | 初期0円 月額 要問い合わせ | 初期0円〜 月3,900円〜(税抜) |
| 年末調整・電子申請 | ●年末調整はベーシックライト以上 | △別製品(クラウド年末調整)連携 | ●年末調整に対応 | ●電子申請は別オプション | ●年末調整対応/電子申請は労務本体機能 | ●社保をe-Govで電子申請 |
| 無料体験 | ●最大2か月 | ●1か月 | ● | ●1か月 | ●15日間 | ●2か月 |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | サービス詳細を見る | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
※料金は2026年10月時点の各社公式情報に基づく税抜表記です(一部は要問い合わせ)。歩合給の計算式の自由度や各機能の対応可否は、プランやオプションにより異なる場合があるため各社公式でご確認ください。
勤怠(外回り・直行直帰)から給与まで一体で完結するタイプ
外回りスタッフの打刻から給与計算までを一つの仕組みで完結させたい会社に向くタイプです。
| サービス名 | KING OF TIME 給与 | ジョブカン給与計算 | レコル(RecoRu) |
|---|---|---|---|
| 提供形態 | クラウド型 | クラウド型 | クラウド型 (勤怠+給与オプション) |
| 歩合給の計算式の自由度 | △公式記載なし | △公式記載なし | △公式記載なし |
| 歩合を含む残業代の自動計算 | △公式記載なし | △公式記載なし | △公式記載なし |
| 外回り・直行直帰の勤怠連携 | ◎勤怠一体・スマホ/GPS打刻 | ●ジョブカン勤怠とAPI連携(有料) | ●勤怠一体・スマホ対応 |
| 会計連携 | △公式記載なし | △公式記載なし | △公式記載なし |
| 対応規模・多店舗 | 小規模〜大規模 (人数無制限) | 小規模〜 (500名以上は別料金) | 小規模〜中堅 |
| 料金(初期・月額) | 初期0円 月300円/人 | 無料〜 有料 月400円/人(税抜) | 初期0円 勤怠110円+給与300円/人 |
| 年末調整・電子申請 | △社保の電子申請は公式記載なし | ●年末調整は有料プラン | ●年末調整に対応 |
| 無料体験 | ●30日間 | ●30日間(無料プランあり) | ●30日間 |
| 詳細情報 | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
※料金・無料体験の条件は2026年10月時点の各社公式情報に基づきます。勤怠連携や各機能の対応範囲はプラン・オプションにより異なる場合があるため、各社公式でご確認ください。
小規模・個人店舗が低コストで始められるタイプ
数名規模の店舗が、費用を抑えて給与計算を始めたい場合に向くタイプです。
| サービス名 | フリーウェイ給与計算 | 給料王 |
|---|---|---|
| 提供形態 | クラウド型 | パッケージ・クラウド |
| 歩合給の計算式の自由度 | △公式記載なし | △公式記載なし |
| 歩合を含む残業代の自動計算 | △公式記載なし | △公式記載なし |
| 外回り・直行直帰の勤怠連携 | △タイムレコーダー連携は要確認 | △外部勤怠とCSV連携 |
| 会計連携 | △公式記載なし | △公式記載なし |
| 対応規模・多店舗 | 小規模 (数名規模向け) | 中小・個人事業主 |
| 料金(初期・月額) | 無料〜 月1,980円(税抜) | パッケージ初年度82,500円 クラウド月3,278円〜 |
| 年末調整・電子申請 | △社保の電子申請は非対応 | ●年末調整・e-Tax/eLTAX対応 |
| 無料体験 | ●5名まで無期限無料 | ●体験版あり |
| 詳細情報 | 公式サイト | 公式サイト |
※料金は2026年10月時点の各社公式情報に基づきます(税区分は各社表記に準拠)。歩合給の計算式の自由度は公式に明記のない製品があり、導入前に自社の歩合体系で計算できるか各社公式でご確認ください。
中堅・多店舗の人事給与を統合するタイプ
複数店舗や中堅規模で、人事・給与データを拠点横断で統合したい会社に向くタイプです。
| サービス名 | 給与奉行クラウド | CYBER XEED給与 | GrowOne 人事SX・給与SX | JDL IBEX給与net2 | MJSLINK DX 給与大将 |
|---|---|---|---|---|---|
| 提供形態 | クラウド型 | クラウド型 | クラウド・オンプレミス | クラウド型 | クラウド型(ERP) |
| 歩合給の計算式の自由度 | △公式記載なし | △給与体系別に対応 | ●自在な項目・計算式設定 | △公式記載なし | △公式記載なし |
| 歩合を含む残業代の自動計算 | △公式記載なし | △公式記載なし | △計算式の設定で対応 | △公式記載なし | △公式記載なし |
| 外回り・直行直帰の勤怠連携 | ●外部勤怠とAPI連携(有償) | ●就業(勤怠)と自動連携 | △外部就業システムと連携 | △タイムレコーダーとCSV連携 | ●Edge Tracker等と連携 |
| 会計連携 | △公式記載なし | △公式記載なし | ●会計(OPEN21 SIAS)と連携 | ●JDL出納帳netと仕訳連携 | △公式記載なし |
| 対応規模・多店舗 | 20〜1,000名 (5段階プラン) | 中堅〜大企業 | 中堅・グループ複数法人 | 最大300名 (99部門・多事業所) | 中堅・中小 (グループ・多店舗) |
| 料金(初期・月額) | 初期0円〜7万円 月5,500円〜 | 初期50万円〜 月2万円〜 | 初期・月額とも要問い合わせ | 初期 記載なし 月1,340円〜 | 初期・月額とも要問い合わせ |
| 年末調整・電子申請 | ●社保11種を電子申請 | ●電子申請は要確認 | ●年末調整に対応 | ●年末調整に対応 | ●年末調整・電子申請連携に対応 |
| 無料体験 | ●30日間 | △記載なし | △記載なし | △記載なし | △記載なし |
| 詳細情報 | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
※料金が要問い合わせの製品は、企業規模・要件に応じた個別見積もりです。各機能の対応可否・提供形態は2026年10月時点の各社公式情報に基づくため、最新情報は各社公式でご確認ください。
※各サービスの機能・料金は公式情報にもとづく2026年10月時点のものです。歩合給の計算式の自由度や歩合を含む残業代の扱いなど、公式に明記されない項目は「要確認」等で示しています。実際の機能搭載の有無・提供形態(標準・オプション等)・最新の料金は各社情報をご確認ください。
タイプ別 不動産業向け給与計算ソフト(サービス個別紹介)
ここからは、各サービスの特徴を、不動産業の歩合給・外回り勤怠・多店舗という観点からタイプ別に紹介します。自社に近い使い方のタイプから読み進めてください。
歩合給・多様な支給形態を柔軟に設定できるタイプ
自社の歩合設計をそのまま計算式として登録でき、手当や控除も柔軟に設定できる製品群です。
1. 弥生給与 Next(弥生株式会社)

弥生給与 Next は、弥生株式会社が提供するクラウド給与サービスです。給与・賞与計算から年末調整、Web給与明細の配信までをカバーします。
支給項目を追加して独自の計算式を組める「明細項目のカスタム計算式」は、ベーシックライト以上のプランで使えます。残業手当は1時間あたりの計算単価を自動算出し、明細項目に倍率を設定して計算する方式です。
弥生会計 Next へ給与・賞与の仕訳元データを連携でき、会計処理まで流れをつなげられます。料金はエントリーが年20,400円(月あたり1,700円・税抜)からで、初期費用は0円、最大2か月の無料体験があります。ただし歩合の計算式を組む場合はベーシックライト以上のプランが必要です。
2. マネーフォワード クラウド給与(株式会社マネーフォワード)

マネーフォワード クラウド給与は、会計・勤怠・人事管理などを揃えるマネーフォワード クラウドシリーズの一つで、シリーズ間のデータ連携を前提に設計された給与計算ソフトです。
支給・控除項目をカスタム設定でき、独自の計算式にも対応します。勤怠はAPI連携とCSV連携で合わせて20種類以上の外部勤怠管理システムに対応し、既存の勤怠を使ったまま給与計算だけを切り替えられます。
同シリーズのクラウド会計と連携すれば、給与から会計までの転記を減らせます。料金はひとり法人プランが年払いで月2,480円(税抜)から、初期費用は0円で、ビジネスプラン相当の機能を1ヶ月無料で試せます。
3. freee人事労務(フリー株式会社)

freee人事労務は、フリー株式会社が提供するクラウド労務管理システムです。勤怠・給与計算・年末調整・入退社手続き・マイナンバー管理を1つのIDで扱えます。
従業員はスマホアプリやLINEから勤怠打刻・給与明細の確認・各種申請まで行え、管理側は固定制の給与計算とWeb給与明細の発行に対応します。会計freeeと連携すれば、バックオフィス全体を一つの基盤に統合できます。
料金はミニマムプランが月2,000円(5名利用時)から、スタンダードプランが月3,000円からで、初期費用はかかりません。無料お試しも用意されています。
不動産業では、外回りスタッフがスマホやLINEから打刻でき、勤怠から給与・会計までを一つの基盤でつなげられる点が利点です。歩合給は設定で組む形になるため、自社の歩合体系を登録できるかは導入前に確認しておくとよいでしょう。
4. ジンジャー給与(jinjer株式会社)

人事・勤怠・労務を一つの基盤でそろえる「ジンジャー」シリーズの給与計算モジュールが、jinjer株式会社のジンジャー給与です。あらかじめ登録した計算式をもとに、支給額を自動で算出します。
正社員・アルバイトなど雇用区分ごとに複数の計算式パターンを設定でき、企業独自の手当や計算方法にも対応します。賞与計算・年末調整・Web給与明細の配信や、給与改定時の遡及計算にも対応します。
ジンジャー勤怠の勤怠データを給与計算に反映でき、ジンジャー人事労務とも共通IDで連携します。料金は利用製品と利用人数で決まり、公開ページに具体額の記載はなく要問い合わせで、1ヶ月の無料トライアルがあります。
5. SmartHR 給与計算(株式会社SmartHR)

SmartHRの給与計算は、労務管理クラウドSmartHRのオプション機能の一つとして2025年6月に提供が始まりました。単体の給与専用ソフトではなく、労務・勤怠まで扱うプラットフォーム上で動く点が特徴です。
労務管理や勤怠管理で集めた従業員データ・勤怠データを自動連携し、CSV転記なしで給与計算できます(勤怠の自動連携はSmartHR自社の勤怠管理機能が対象)。基本給・各種手当・残業代の自動計算や、月給・日給・時給制に合わせた計算式のカスタマイズに対応します。
複数事業所の計算にも対応します。給与計算は有料オプションで、料金は従業員数に応じた見積もり制のため要問い合わせです。15日間の無料トライアル(クレジットカード登録不要)が用意されています。
6. PCA給与DX(ピー・シー・エー株式会社)

PCA給与DXは、ピー・シー・エー株式会社の給与計算ソフトです。買い切りのパッケージ版は2024年3月末で新規販売を終了しており、現在はクラウド型の「PCAクラウド 給与」などが後継にあたります。
勤怠項目20・支給項目50・控除項目30の項目を備え、多様な業種や給与体系に対応します。月次の給与計算・賞与計算、算定基礎届・月額変更届の作成、年末調整、社会保険のe-Gov直接連動による電子申請までをカバーします。
PCA会計シリーズやPCA人事管理シリーズと連携できます。料金は、月額3,900円(税抜)からのサブスク版と、月額16,200円(税抜)からのクラウド標準版の2系統があり、いずれも初期費用0円・2か月の無料体験付きです。小規模から始めるならサブスク版が入口になります。
支給項目を50まで設定できるため、不動産業の歩合やインセンティブ、各種手当を支給項目として細かく組み込みたい会社に向いています。
勤怠(外回り・直行直帰)から給与まで一体で完結するタイプ
外回りの打刻データを給与計算まで途切れずにつなげられる製品群です。
7. KING OF TIME 給与(株式会社ヒューマンテクノロジーズ)

勤怠管理システム「KING OF TIME」の給与計算モジュールです。株式会社ヒューマンテクノロジーズが提供し、勤怠管理で記録した勤怠・人事労務データがそのまま給与計算へ自動連携される設計になっています。
外回りや直行直帰で記録した勤怠を二重入力なしで引き継ぎ、ワンクリックでの給与計算から年末調整までを処理できます。年末調整は申告書のWeb収集(AI-OCR・電子的控除証明書の取り込みに対応)から税額計算、給与支払報告書の出力まで一貫して行えます。導入企業64,000社・導入ID410万(2026年7月1日時点)はいずれも勤怠管理を含むシリーズ全体の実績です。
初期費用は0円で、勤怠管理の登録人数に応じた月額300円(1人あたり)の従量課金に、給与機能が追加料金なしで含まれます。30日間の無料体験が用意されています。
8. ジョブカン給与計算(株式会社DONUTS)

株式会社DONUTSが「ジョブカン」シリーズの一つとして提供するクラウド給与計算ソフトです。月例給与・賞与の自動計算、Web給与明細や源泉徴収票の配布、年末調整、社会保険・労働保険の書類作成までをオンラインで行えます。
同シリーズの「ジョブカン勤怠管理」とAPI連携でき、外回りで記録した勤怠データを自動で取り込んで給与計算につなげられます(API連携は有料プランが対象)。シリーズ累計の導入社数30万社・有料利用ユーザー300万以上は、いずれもシリーズ全体の数値です。
有料プランは1ユーザーあたり月額400円(税抜、最低利用料金2,000円)で、従業員5名以下なら無料プランを期間の制限なく使い続けられます。申込から30日間は、有料プラン相当の全機能をお試しプランで利用できます。
9. レコル(RecoRu)(中央システム株式会社)

中央システム株式会社が提供するクラウド勤怠管理システム「レコル」に、給与計算機能を追加して使う製品です。打刻・勤務アラート・有休の自動付与・36協定管理などの勤怠機能を備え、スマートフォンにも対応します。
給与計算は専用ソフトではなく、勤怠に追加する有償オプション「レコル給与」として提供されます。勤怠情報から残業代や手当、社会保険料を自動で計算し、Web給与明細の発行や年末調整まで対応します。
初期費用はなく、勤怠は1人あたり月額110円(税込、最低利用料金3,300円)から、レコル給与は1人あたり300円で利用できます。全機能を30日間無料で試せ、期間経過後に自動で課金されることはありません。導入実績は5,500社以上です。
小規模・個人店舗が低コストで始められるタイプ
費用を抑えつつ、必要な給与計算機能をそろえた製品群です。
10. フリーウェイ給与計算(株式会社フリーウェイジャパン)

従業員5人までなら初期費用・月額ともに0円、期間の制限なく使えるクラウド型の給与計算ソフトです。会計や勤怠などの業務システムを「フリーウェイシリーズ」として展開する株式会社フリーウェイジャパンが提供し、給与計算単体で148,977ユーザー(2026年9月30日時点)が利用しています。
無料プランでも給与・賞与計算、所得税や社会保険料・雇用保険料の自動計算、年末調整、源泉徴収票の作成、Web給与明細のメール配信、全銀データ出力まで利用できます。有料プランとの違いは従業員数・登録会社数の上限と、電話・メール・リモートサポートの有無に絞られています。
従業員が6人以上になった場合は月額1,980円(税抜、年間23,760円)の有料プランへ申し込む形で、人数が増えても登録会社数は無制限になります。インストール不要でブラウザから使えるため、低コストで給与計算を始めたい小規模な事業所に向いています。
11. 給料王(ソリマチ株式会社)

会計ソフト「会計王」などを中小企業・個人事業主向けに展開してきたソリマチ株式会社の給与計算ソフトです。給与・賞与計算から年末調整、マイナンバー管理、社会保険・労働保険の書類作成までを一括で処理できます。
買い切り型のパッケージ版(初年度82,500円)と、2026年4月に提供を開始した月額制のクラウド版(月額3,278円〜)の2形態から選べます。クラウド版はプランごとにアカウント数・管理できる会社数が異なり、1アカウント・1社のライトプランから利用できます。
「らくらくエスコート」による質問形式の初期設定や他社データの取り込みに対応し、導入時の設定負担を抑えられます。購入後3か月は電話によるフリーサポートが付くため、低コストで給与計算を始めたい小規模な事業者に向いています。
数名規模の不動産店舗が、費用を抑えて給与計算を始める入口として検討しやすい一本です。自社の歩合の計算式を組めるかは、導入前に確認しておくと安心です。
中堅・多店舗の人事給与を統合するタイプ
拠点をまたいだ人事・給与データの統合運用に強い製品群です。
12. 給与奉行クラウド(株式会社オービックビジネスコンサルタント)

給与奉行クラウドは、株式会社オービックビジネスコンサルタント(OBC)が提供するクラウド型の給与計算システムです。従業員20名規模から1,000名規模まで、人数に応じた5段階のプランを用意し、店舗や従業員が増えても段階的に移行できます。
給与・賞与計算や年末調整の計算に加え、賞与支払届・算定基礎届・月額変更届など社会保険関連の11種類の書類を電子申請できます。「奉行APIコネクトサービス」を介して外部の勤怠管理システムと連携し、勤怠データの受け渡しを自動化できます。
料金は20名までのプランが月額5,500円からで、従業員数に応じて上位プランへ段階的に移行できます。30日間の無料トライアルが用意されています。
13. CYBER XEED給与(アマノビジネスソリューションズ株式会社)

就業・人事・給与を同じデータベース上で扱うアマノの「CYBER XEED」シリーズのうち、給与計算の一連の機能をクラウドで提供する製品です。提供元はアマノビジネスソリューションズ株式会社です。
CYBER XEED就業をあわせて使うと勤務データが自動で連携され、就業・給与・人事の情報を一元管理できます。給与・勤怠データの入力やマスター保守を専任オペレーターが代行する「給与アウトソーシングオプション」を、フルまたは部分で追加できる点も特徴です。
料金は初期設定費用が50万円から、月次使用料が月2万円からです。法改正時には無償でアップデートが行われ、導入後のサポートは無料で提供されます。
14. GrowOne 人事SX・給与SX(株式会社ニッセイコム)

GrowOne 人事SX・給与SX は、人事情報を一元管理する「人事SX」と、給与計算を担う「給与SX」の2製品を組み合わせて使う、株式会社ニッセイコムの人事給与システムです。クラウドとオンプレミスのどちらでも導入できます。
人事SXと給与SXを連携させると、異動・昇給・手当変更といった人事情報の変更を給与計算へ反映できます。複数法人を一元管理できる「法人コード機能」を備え、グループ会社や子会社が2社目以降に導入する場合は割安な価格が適用されます。
給与SXは自在な項目・計算式の設定、グロスアップ計算、退職金管理などに対応し、モバイル給与SXで給与明細のWeb閲覧や年末調整申告も行えます。料金は公開されておらず、管理対象者数に応じて決まるため要問い合わせです。
15. JDL IBEX給与net2(株式会社日本デジタル研究所)

JDL IBEX給与net2は、月給・日給・時給が混在する給与計算に最大300人まで対応するクラウド型の給与計算ソフトです。提供元は会計システムの老舗である株式会社日本デジタル研究所(JDL)です。
最大99部門・99職種までの組織管理に対応し、複数事業所での運用を想定した設計です。給与・賞与計算、給与明細書・賃金台帳などの管理資料作成、年末調整、社会保険算定に加え、マイナンバー管理をオプションで利用できます。
同社の会計ソフト「JDL IBEX出納帳net」へ給与支払データを仕訳として取り込めるなど、JDL製品群内でのデータ連動を前提に作られています。料金は基本料金が月額1,340円から(契約単位は6か月または12か月)で、オプションは別料金です。
最大300人・99部門の組織管理に対応するため、複数の店舗や事業所を持つ不動産会社が、拠点をまたいだ給与を一つの仕組みでまとめたい場合に向く設計です。
16. MJSLINK DX 給与大将(株式会社ミロク情報サービス)

MJSLINK DX 給与大将は、中堅・中小企業向けのクラウド型ERP「MJSLINK DX」に含まれる給与計算・人事管理のモジュールです。提供元は東証プライム上場の株式会社ミロク情報サービスです。
給与・賞与計算に加え、一時金計算や賞与シミュレーション、昇給差額計算に対応します。複数事業所・複数の社会保険組合や、企業グループでの一括運用に対応し、人事管理モジュール「人事大将」と連携してグループ会社間の人事異動も一体で扱えます。
勤怠は、Edge Trackerやアマノ「タイムパック」、クロノス、マックス「楽々勤怠」といった外部の勤怠管理システムと連携します。料金は公開されておらず、企業規模や要件に応じた個別見積もりのため要問い合わせです。
複数事業所やグループ会社の人事給与を一括で扱えるため、多店舗展開やグループ経営に広がった不動産会社が、人事給与の基盤を統合したい場合に向きます。
不動産業が給与計算ソフトを導入するメリット
ここからは、不動産会社が給与計算ソフトを導入すると何が変わるのかを、具体的な効果として整理します。
最も変わるのは、月次の締め作業です。表計算ソフトでは、成約データを見ながら歩合の計算式を毎月組み直し、残業代や控除を手入力し、明細へ転記する一連の作業に時間がかかり、どこか1か所の入力ミスが支給額の誤りに直結していました。ソフトを導入すると、登録済みの計算式に成約件数や勤怠データを流し込むだけで支給額が確定し、この手戻りの温床がなくなります。
外回りスタッフの勤怠も、紙やメールで集めて転記していた状態から、打刻データが給与計算へ直接つながる状態に変わります。残業時間の拾い漏れや二重入力が減り、繁忙期に申告が集中しても締めが遅れにくくなります。複数店舗を運営していれば、拠点ごとにばらばらだった集計が一つの画面にまとまり、本部での確認がそろいます。
法改正への対応も、担当者が社会保険料率や税額表を調べて設定を直す作業から、クラウド型であればソフト側の自動更新に置き換わります。年末調整や給与明細の電子配信まで同じソフトで完結させれば、管理部門が少人数でも、担当者が代わっても、月次処理の品質を保ちやすくなります。
不動産業向け給与計算ソフトの料金相場(規模・店舗数別)
ここからは、規模・店舗数ごとの費用感を整理します。各サービスの具体的な料金は前掲の比較表をご確認ください。
数名規模の店舗であれば、一定人数まで無料のプランや、月数千円程度の低価格プランから始められる製品があり、初期費用を抑えて導入できます。従業員1人あたりで課金する従量型では、1人あたり月300円前後からが一つの目安です。
従業員が数十名規模になると、人数帯ごとの定額プランで月数千円から1万円台に収まる製品が中心になります。さらに複数店舗を一元管理する中堅規模では、人事・給与を統合する製品が候補となり、初期費用に数十万円、月額に2万円台以上がかかるケースや、個別見積もりになるケースもあります。
従量課金の製品は人数が増えるほど月額が上がるため、採用計画も踏まえて数年先の費用を見積もっておくと、規模が変わったときに選び直す手間を避けられます。各製品の具体的な料金は前掲の比較表で確認できます。
料金だけで選ぶと、歩合給の計算式に対応できない、勤怠や会計と連携できないといった理由で、かえって手作業が残ることがあります。費用は、必要な機能を満たしたうえで比較するのが安全です。
不動産業の歩合給計算に給与計算ソフトはどう対応するか
ここからは、不動産業の核心である歩合給の計算に、ソフトがどう対応するのかを具体的に解説します。歩合給の設計パターンと、見落としやすい歩合を含む残業代の計算を押さえておきましょう。
歩合給の主な設計パターン
不動産業の歩合給は、大きく3つのパターンに分かれます。1つ目は成約金額に一定の率をかける固定歩合率、2つ目は売上や件数の区分ごとに率が変わる段階的な歩合率、3つ目は1件あたりの単価を定める件数ベースです。これらを基本給と組み合わせ、さらに役職手当や歩合の上限・下限を加えると、計算式は会社ごとにかなり複雑になります。
支給項目を自由に追加でき、独自の計算式を登録できる給与計算ソフトであれば、こうした設計をそのまま自動計算に落とし込めます。設定した計算式に成約データを入力すれば、毎月の歩合額が自動で算出されます。
完全歩合に近い設計の場合は、成約がゼロの月でも労働時間に応じた保障給の支給が必要です。歩合額と保障給を比べて高い方を支給するといった処理を計算式として組めるかも、あわせて確認しておきたいポイントです。
歩合給を含む残業代の自動計算
見落としやすいのが、歩合給がある場合の残業代です。時間外労働の割増賃金は、通常の労働時間の賃金に割増率を加えて計算しますが、歩合給(出来高払制)の部分は固定給とは計算方法が異なります。
労働基準法施行規則は、出来高払制の賃金について、1時間あたりの単価を次のように定めています。
出来高払制その他の請負制によつて定められた賃金については、その賃金算定期間(賃金締切日がある場合には、賃金締切期間、以下同じ)において出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における、総労働時間数で除した金額
出典:労働基準法施行規則 第19条第1項第6号|e-Gov法令検索
歩合給部分の単価は、その期間の歩合給の総額を、残業時間も含めた総労働時間数で割って求めます。固定給が所定労働時間数で割るのに対し、歩合給は実際に働いた総労働時間数で割る点が実務の要です。この単価に、時間外労働なら2割5分以上の割増率をかけた額を、残業代として上乗せします。

使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
出典:労働基準法 第37条第1項|e-Gov法令検索
歩合給は、割増賃金の基礎となる賃金に含めて計算する必要があります。割増賃金の基礎から除外できるのは、家族手当・通勤手当のほか、労働基準法施行規則第21条が挙げる手当などに限られます。別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時に支払われた賃金・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金がこれにあたり、歩合給は除外対象に含まれません。歩合給を基礎から外して残業代を計算すると、未払いが生じるおそれがあります。
歩合を含む残業代の自動計算を公式に明記している製品は多くありません。各社とも給与計算ソフトとして割増賃金の計算自体には対応しますが、歩合給を基礎に含めた残業代まで自動で正しく処理できるかは、歩合の計算式をどこまで自由に組めるか(前掲の比較表「歩合給の計算式の自由度」)に左右されます。
そのため、歩合給の設計が複雑な会社ほど、導入前に自社の歩合体系で歩合込みの残業代が正しく算出されるかを各社へ試算依頼し、確かめておくのが最も確実です。これが、複数の候補から1社を絞り込む際の最重要の確認項目になります。
出典・参考資料(2件)
不動産業で給与計算ソフトを導入する際の注意点・よくある失敗
ここからは、導入時に見落としやすい点を整理します。ソフトを入れても設定や運用を誤ると、計算ミスや手戻りが残ります。
第一に、歩合給を含む残業代の計上漏れです。前章のとおり歩合給は割増賃金の基礎に含める必要があり、歩合を含む残業代の自動計算に対応していないソフトを選ぶと、手作業での補正が残ります。導入前に自社の歩合体系で正しく計算できるかを確認しておきましょう。
第二に、社会保険料や労働保険料の算定で歩合給を含め忘れることです。健康保険法や厚生年金保険法は、報酬を「労働の対償として受けるすべてのもの」と定めており、歩合給も標準報酬月額の算定対象に含まれます。労働保険料の算定基礎となる賃金総額も同様に、労働の対償として支払うすべてを含みます。歩合給を除いて計算すると、保険料の過不足が生じます。
第三に、勤怠・会計と連携できない製品を選んでしまうことです。外回りの勤怠を手入力したり、給与データを会計へ手作業で転記したりすると、ソフトを入れても月次処理の負担が残ります。自社で使っている勤怠・会計との連携可否は、導入前に必ず確認しておきましょう。
第四に、法改正への対応です。社会保険料率や税額表は改正されるため、自動更新に対応したクラウド型か、手動更新が必要なパッケージ型かを把握しておきます。パッケージ型の場合は、更新の手順と時期をあらかじめ運用に組み込んでおくと、更新忘れによる計算ミスを防げます。
出典・参考資料(2件)
よくある質問(FAQ)
Q. 不動産業向け給与計算ソフトとは何ですか?
A. 不動産業向け給与計算ソフトとは、基本給に歩合給やインセンティブを組み合わせた賃金計算や、外回り・直行直帰スタッフの勤怠反映に対応できる給与計算ソフトです。
一般的な給与計算ソフトとの違いは、歩合率や件数単価などの計算式を自由に設定でき、歩合を含む残業代の計算や、スマホ打刻の勤怠・会計ソフトとの連携に対応している点です。不動産仲介のように基本給と歩合の二階建て賃金が多い業種で、月次の給与計算を自動化しやすくなります。
Q. 不動産業の歩合給の計算式は給与計算ソフトで自動化できますか?
A. 不動産業の歩合給は、支給項目を自由に追加して独自の計算式を登録できるソフトであれば自動化できます。
固定歩合率・段階的な歩合率・件数ベースといった自社の歩合設計をそのまま計算式として登録し、成約データを入力すれば、毎月の歩合額が自動で算出されます。一方、あらかじめ用意された選択肢から選ぶだけの簡易な設定にとどまる製品では、複雑な歩合体系に対応しきれないことがあります。導入前に、自社の歩合体系で正しく計算できるかを確認しておくと安心です。
Q. 不動産業で歩合給を含む残業代はどのように計算しますか?
A. 歩合給を含む残業代は、歩合給の総額をその期間の総労働時間数で割った1時間あたりの単価に、時間外労働なら2割5分以上の割増率をかけて計算します。
固定給が所定労働時間数で割るのに対し、歩合給(出来高払制)は残業時間も含めた実際の総労働時間数で割る点が異なります。また歩合給は割増賃金の基礎となる賃金に含める必要があり、基礎から外して計算すると未払いが生じるおそれがあります。歩合を含む残業代の自動計算に対応したソフトであれば、この計算を毎月手作業で行う必要がなくなります。
出典・参考資料(2件)
Q. 不動産業の歩合給は社会保険料や年末調整の対象になりますか?
A. 歩合給は、社会保険料(標準報酬月額)の算定対象にも、年末調整の対象となる給与にも含まれます。
健康保険法・厚生年金保険法は、報酬を「労働の対償として受けるすべてのもの」と定めており、歩合給もこれに当たります。年末調整も、その年に支払うことが確定した給与が対象で、歩合給はその一部です。社会保険料の算定や年末調整で歩合給を除くと、保険料や税額に過不足が生じるため、歩合給を含めて処理する必要があります。
出典・参考資料(3件)
Q. 外回り・直行直帰スタッフの勤怠はどうやって給与に反映しますか?
A. 外回り・直行直帰スタッフの勤怠は、スマートフォンやGPSで打刻できる勤怠システムと連携し、勤務実績を転記なしで給与計算へ取り込むのが基本です。
事務所に立ち寄らず現地へ直行するスタッフの出退勤も、スマホ打刻ならその場で記録できます。勤怠と給与がAPIや同じデータベースでつながっていれば、残業時間や深夜勤務も自動で給与計算へ反映され、転記の手間とミスを減らせます。すでに使っている勤怠システムがある場合は、その製品と連携できるかを導入前に確認しておきましょう。
Q. 小規模の店舗と多店舗の不動産会社では、選ぶ給与計算ソフトは違いますか?
A. 規模や店舗数によって向く給与計算ソフトは異なります。
数名規模の単一店舗であれば、無料プランや低価格プランから始められる製品が向きます。複数店舗や中堅規模になると、法人・拠点をまたいで勤怠・給与データを一元管理できる製品が候補になります。従量課金の製品は人数が増えるほど月額が上がるため、採用計画も踏まえて数年先の費用まで見積もっておくと、規模が変わったときの選び直しを避けられます。
Q. 無料で使える不動産業向けの給与計算ソフトはありますか?
A. 従業員が一定人数までなら無料で使えるクラウド給与計算ソフトがあります。
数名規模の店舗であれば、無料プランや低価格プランから始めて初期費用を抑えられます。ただし、歩合給の計算式の自由度や、勤怠・会計との連携範囲は製品によって異なり、無料という理由だけで選ぶと手作業が残ることがあります。費用は、自社に必要な機能を満たしたうえで比較するのが安全です。
Q. 完全歩合(フルコミッション)の場合でも最低限の給与保障は必要ですか?
A. 完全歩合に近い賃金体系でも、労働基準法は労働時間に応じた一定額の保障給を支払うよう使用者に求めています。
成約がない月でも、労働時間に応じた最低限の賃金を保障する必要があるということです。給与計算ソフトを選ぶ際も、歩合額と保障給を比べて高い方を支給するといった処理に対応できるか、計算式の自由度を確認しておくと安心です。
出典・参考資料(1件)
まとめ
不動産業の給与計算ソフトは、歩合給の計算式を自由に設定できるか、外回り・直行直帰の勤怠と連携できるか、会計ソフトと連携できるか、自社の規模・店舗数に合うか、法改正対応とサポートが十分かという5つの軸で選ぶと、自社に合う一台を見極めやすくなります。特に歩合給を含む残業代の自動計算は、不動産業ならではの重要な確認ポイントです。
比較表と診断ツールで候補を絞り込んだら、資料請求に対応しているサービスはそのまま資料を取り寄せ、それ以外は公式サイトで、自社の歩合体系や勤怠の運用に合うかを確かめてみてください。歩合を含む残業代が自社の体系で正しく計算できるかは、各社に試算を依頼すると確実です。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

















