3交替の24時間連続操業、深夜手当や交替手当、危険物や特殊作業に対する手当。正社員に加えて契約社員やパート、技能系・研究開発・生産技術と職種も入り組み、工場の打刻データを本社でまとめて給与に反映する——化学メーカーの給与計算は、こうした要素が重なって他業種より複雑になりがちです。
工場ごとのタイムカードやExcelでの集計に月末のたびに追われ、計算方法が担当者しか分からない属人化に不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
従業員数が多く社会保険の特定適用事業所に該当しやすいこと、変形労働時間制や時間外労働の集計が欠かせないことも、化学業界の労務管理を難しくしています。こうした化学・製造業特有の給与計算を効率化するには、自社の現場運用や雇用形態に合った給与計算ソフトをどう選べばよいのでしょうか。
本記事では、化学業界の給与計算に対応できる給与計算ソフト12製品を比較・解説します。交替勤務・変形労働時間制、現場の特殊手当、工場のIC打刻・勤怠連携、特定適用事業所を含む社会保険の電子申請といった化学業界の要件ごとに、各製品の対応可否を横並びで整理しました。自社の規模や工場の運用に合ったソフトを見つけるための検討材料としてご活用ください。
また、自社の現場運用や従業員規模に合わせて最適なソフトを最短で見つけられるよう、「30秒で終わる選定診断ツール」をご用意しています。ぜひこちらもご活用ください。
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目次
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本記事が扱う「化学業界向け給与計算ソフト」の範囲
本記事で扱うのは、従業員の勤務実績をもとに給与額を計算し、給与明細の発行・年末調整・社会保険や税の手続きまでを担う「給与計算ソフト」です。
そのうち本記事で「化学業界向け給与計算ソフト」として取り上げるのは、化学業界・製造業に特有の事情に対応できる製品です。具体的には、工場の交替勤務・変形労働時間制、深夜・交替手当や危険・特殊作業手当、多様な雇用形態・職種、工場のIC打刻・勤怠連携、特定適用事業所を含む社会保険の電子申請といった要件への対応を指します。
勤務時間を記録する勤怠管理システムや、工場の工数を集計する工数管理システム、給与計算業務そのものを外部に委託する給与計算アウトソーシングは、化学メーカーの労務効率化と関わりが深いものの、給与額を自社で計算するという本記事の対象とは役割が異なります。ここでは、勤怠データを取り込んで自社で給与を計算するソフトに絞って比較します。
また、化学業界に特化した専用製品が数多くあるわけではなく、実際には製造業での実績を持つ製品や汎用のクラウド給与を、手当の自由設定や勤怠連携によって化学業界の要件に合わせて使うのが一般的です。
化学業界という絞り込みを外して、業種を問わず給与計算ソフト全般を比べたいときは、主要製品を企業規模・目的別に比較した次の記事が出発点になります。
給与計算そのものを自社で抱えず、外部の専門会社へ委託する選択肢もあります。任せられる業務範囲や料金体系から委託先を比べたい場合は、次の記事を参考にしてください。
なぜ化学業界の給与計算・労務管理は難しいのか
化学業界の給与計算が他業種より複雑になるのは、勤務形態・手当・雇用区分・勤怠収集・組織構成のそれぞれに業界固有の事情が重なるためです。まず、工場の勤務形態が挙げられます。装置を止められない化学プラントでは24時間の連続操業が多く、2交替・3交替のシフト勤務が組まれます。

月内や季節の繁閑に合わせて労働時間を配分する変形労働時間制を採る工場も多く、法定労働時間を基準にした単純な残業計算では対応しきれません。
手当の種類が多く、支給条件が職場ごとに変わる点も特徴です。深夜勤務に対する深夜手当、交替勤務のシフトに応じた交替手当に加え、危険物・高圧ガス・有機溶剤などを扱う作業への危険手当、特殊作業手当といった化学業界ならではの手当が加わります。これらを一人ひとり手作業で計算すると、月末の締め業務に大きな負担がかかります。
雇用形態・職種が多岐にわたることも、計算を複雑にします。正社員に加えて契約社員やパート、交替勤務に就く技能系の従業員、研究開発や生産技術の職種が一つの会社に混在し、それぞれ給与体系や社会保険・税の扱いが異なります。従業員数が多い化学メーカーでは、この区分ごとの処理がそのまま事務負担に直結します。
勤怠の集め方も難所です。工場では交替勤務の打刻や勤務実績を正確に取り込まなければ給与計算が始まりませんが、タイムカードを各工場から本社へ送って手入力する運用では、集計に時間がかかり転記ミスも生じやすくなります。水や油、薬品を扱う現場では、手がふさがっていてもかざすだけで打刻できるICカードのような手段が向くこともあります。
さらに、本社と複数の工場・事業所の給与を取りまとめる負担があります。拠点ごとにばらばらの様式で集めたデータを本社でまとめ直すとなると、拠点が増えるほど作業量が膨らみます。
加えて、従業員数が多い化学メーカーは社会保険の特定適用事業所に該当しやすく、算定基礎届や賞与支払届などの手続き、短時間労働者への適用拡大への対応も求められます。こうした事情が重なるため、汎用の表計算ソフトや手作業では限界が生じやすく、化学業界の実務に対応できる給与計算ソフトの導入を検討する企業が増えています。
自社の現場運用や従業員規模によって、適した製品のタイプは変わります。次の30秒診断では、いくつかの質問に答えるだけで、自社の条件に合う製品の候補を絞り込めます。
化学業界向け給与計算ソフトの選び方(求められる機能・比較軸)
ここからは、化学業界向けの給与計算ソフトを選ぶときに確認したい比較軸を解説します。まず自社が製造業に強い製品を求めるのか汎用クラウドで要件に対応するのかを見極め、そのうえで化学業界固有の機能をどこまで満たせるかを確認する順に見ていきます。
製造業向け製品と汎用クラウド給与、どちらを軸にするか決める
化学業界向けの給与計算ソフト選びで最初に見極めたいのは、製造業の現場要件に作り込まれた製品をそのまま使いたいのか、汎用のクラウド給与を自社に合わせて使いたいのか、という方向性です。どちらを軸に据えるかで、その後に比べる製品群が大きく変わります。
製造業での導入実績が豊富で、交替勤務や変形労働時間制、工場の勤怠取り込みを前提に設計された製品は、化学メーカーの複雑な勤務区分や手当をそのまま扱いやすい傾向があります。大企業や多拠点の人事・給与を一つのシステムに統合したい場合は、人事労務全体をカバーする統合型が候補になります。
一方、汎用のクラウド給与でも、手当の自由設定・変形労働への対応・勤怠連携・社会保険の電子申請がそろっていれば化学業界の要件に対応でき、価格や拡張性、導入のしやすさで有利なことがあります。従業員規模や現場の複雑さ、既存システムとの兼ね合いから、自社がどちらに近いかを最初に決めておくと、以降の比較が進めやすくなります。
交替勤務・変形労働時間制に対応できるか
24時間操業の工場では2交替・3交替のシフトが組まれ、月単位や年単位で労働時間を配分する変形労働時間制が採られることが少なくありません。給与計算ソフトを選ぶ際は、交替勤務のシフトや変形労働時間制の設定にもとづいて、所定内労働時間と時間外・深夜・休日労働を正しく切り分けて集計し、割増賃金を計算できるかを確認しましょう。
変形労働時間制では、特定の週や日に法定労働時間を超えて働いても、期間を平均して基準内に収まっていれば割増の扱いが変わります。この計算を給与計算ソフト単体で行うのか、勤怠管理システム側で労働時間を確定させてから給与へ渡すのかは製品によって異なります。自社の勤務制度を登録でき、シフトパターンや期間平均の計算に無理なく対応できるかを、実際の勤務区分に当てはめて見ておくとよいでしょう。
深夜・交替手当や危険・特殊作業手当など現場の手当を自由に設定できるか
化学業界では手当の種類が多く、支給条件も職場や作業内容で変わります。手当の項目を自由に追加でき、支給額や計算式を柔軟に設定できるかが確認したいポイントです。
深夜手当や交替手当のようにシフトと連動して支給額が決まる手当、危険物・高圧ガス・有機溶剤などを扱う作業への危険手当や特殊作業手当は、製品側にあらかじめ用意されていないことが一般的です。
任意の手当項目を作成し、「このシフトに入ったら」「この作業区分なら」といった条件で計算ルールを組める製品であれば、自社の給与規程に合わせて運用できます。設定できる手当の数や、勤務実績と連動した自動計算にどこまで対応できるかまで見ておくと、導入後の手作業を減らせます。
正社員・契約社員・パート・技能系など多様な雇用形態・職種に対応できるか
化学メーカーには、月給制の正社員に加え、契約社員や時給制のパート、交替勤務の技能系、研究開発や生産技術の職種が混在します。複数の給与体系を一つのソフトで並行して計算でき、雇用区分ごとに計算方法を切り替えられるかを見ておきましょう。
雇用形態によって、割増の起点となる所定労働時間、社会保険の加入要件、控除の扱いが変わります。従業員ごとに給与体系を設定でき、締め日や支払サイクルの違いも扱える製品であれば、区分の多い組織でもまとめて処理できます。短時間労働者が多い場合は、後述する社会保険の適用判定とあわせて、加入・非加入の管理まで見据えて確認すると安心です。
工場のIC打刻・勤怠実績と連携できるか(自社勤怠で一気通貫 or 既存の勤怠・工数管理システムと外部連携)
化学メーカーでは、工場の交替勤務の打刻と勤務実績の集計が給与計算の前工程になります。ここをどうつなぐかで候補が分かれるため、勤怠データと給与計算の結びつけ方を大きく2つの型で捉えると選びやすくなります。

1つは、給与計算ソフトと同じシリーズの勤怠機能で、工場での打刻から給与計算までを自社で完結させる型です。ICカードをかざす打刻やタイムレコーダーからの実績取り込みに対応した勤怠機能を持つ製品なら、交替勤務の勤務データがそのまま給与計算へ流れ、転記の手間がなくなります。勤怠と給与を一つのサービスでそろえたい、これから勤怠管理も含めて整えたい企業に向きます。
もう1つは、すでに使っている勤怠管理システムや工数管理システムを残したまま、給与計算ソフトと外部連携させる型です。勤怠データをAPIやCSVで取り込んで給与を計算する製品を選べば、現場で定着している既存の仕組みを変えずに給与計算だけを効率化できます。
工場の打刻や工数の集計を既存システムで運用している化学メーカーでは、その連携のしやすさが選定の分かれ目になります。自社の運用がどちらに近いかで、候補となる製品が変わります。
特定適用事業所を含む社会保険の電子申請・法改正の自動対応があるか
従業員数が多い化学メーカーは社会保険の特定適用事業所に該当しやすく、算定基礎届・賞与支払届・月額変更届といった手続きの量も多くなります。これらの社会保険関連の帳票を電子申請できるか、税率や社会保険料率の改定・年末調整の様式変更にソフト側のアップデートで自動的に追随するかを確認しましょう。
e-Govやマイナポータルと連携して社会保険の電子申請まで一気通貫で行える製品であれば、紙やCSVでの提出にかかる手間を減らせます。
短時間労働者への適用拡大のように要件が段階的に変わる制度では、法改正への自動対応や、時間外労働が上限に近づいた際に知らせるアラートの有無も、担当者が制度変更を都度追いかける負担を左右します。これらの法令前提については、記事後半で製品選びとの結びつけ方をあらためて整理します。
料金・対応規模、本社+複数工場の集計に対応できるか
料金体系は、初期費用の有無や、従業員数・利用人数に応じた月額課金など製品ごとに異なります。自社の従業員規模で月々いくらになるかを試算し、交替勤務のパートや契約社員を含めた人数の増減で料金がどう変わるかも見ておきましょう。製品によっては従業員規模別にプランが分かれており、中小向けと大企業・多拠点向けで想定する規模が異なります。
本社と複数の工場・事業所の給与をまとめる化学メーカーでは、拠点をまたいだデータの集計や、部門・事業所別の集計に対応できるかも重要です。拠点ごとの入力を一つのシステムに集約でき、全社の給与と社会保険をまとめて処理できる製品であれば、拠点が増えても事務の流れを揃えられます。自社の拠点構成と将来の拡大も見据えて、対応規模と集計機能を確認するとよいでしょう。
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【比較表】化学業界向け給与計算ソフトを対応可否で比較
ここからは、自社の課題や要件に合わせた客観的な比較・選定ができるよう、化学業界の給与計算に対応できる主要12製品を、化学業界で求められる要件ごとに整理してご紹介します。
交替勤務・変形労働時間制への対応、深夜・交替手当や危険・特殊作業手当の自由設定、多様な雇用形態への対応、工場のIC打刻・勤怠連携の型、社会保険の電子申請・法改正の自動対応、料金、対象規模、化学・製造業での導入実績といった項目を横並びで比較できます。
記号は、◎=標準で手厚く対応、●=対応、△=要確認または連携する勤怠・労務側で対応、×=非対応または公表事例を確認できず、を表します。
「化学・製造業での導入実績」の欄は、化学メーカーの公表事例を確認できた製品は実名で示し、確認できない製品は交替勤務のある製造業など近い業態の事例で代替し、×は製造業の公表事例も確認できなかったことを表します。自社に近い業態の実績があるかという視点で見てください。
| サービス名 | 弥生給与 Next | 給与奉行クラウド | マネーフォワード クラウド給与 | SuperStream-NX | CYBER XEED給与 | PROSRV | COMPANY | POSITIVE | PCAクラウド 給与 | freee人事労務 | オフィスステーション給与 | ジョブカン給与計算 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 対象規模・提供形態 | クラウド型 中小企業向け | クラウド型 中小〜中堅(20〜1,000名) | クラウド型 小規模〜中堅 | オンプレ/クラウド 中堅〜大企業 | クラウド型 中堅〜大企業 | クラウド型+BPO 中小〜大企業 | 統合人事システム 大企業向け | 統合HCM 大企業向け | クラウド型 中小〜中堅 | クラウド型 小規模〜中小 | クラウド型 中小〜中堅 | クラウド型 小〜中規模 |
| 交替勤務・変形労働時間制 | ●変形労働制の給与計算に対応(交替割増は計算式で設定) | △勤怠連携側で対応(給与側の変形労働の明記は確認できず) | △勤怠連携で集計(独自計算式で手当に対応) | △多様な賃金体系に対応(給与モジュール単体の個別仕様は要確認) | △就業連携で勤務データを反映(変形労働の個別対応は要確認) | △勤怠は提携パートナー併用(変形労働の個別対応は要確認) | ◎工場の交替勤務・変形労働に標準対応 | △就業管理で多様な勤務実績・36協定に対応(変形労働の個別仕様は要確認) | △勤怠20・支給50・控除30項目で多様な給与体系に対応(変形労働は勤怠連携側) | ×公式案内は固定制の給与計算が中心 | △勤怠連携で法定内外残業・深夜・休日の区分別割増を受け渡し(変形労働の明記なし) | △ジョブカン勤怠(シフト・交替に強い)とAPI連携で実績を反映 |
| 手当の自由設定 | ●明細項目の計算式で手当を設定(ベーシックライト以上) | △残業・通勤手当等を計算(任意手当の自由設定は要確認) | ●支給・控除項目を独自計算式で設定可 | △多様な賃金体系に対応(手当設定の個別仕様は要確認) | △給与体系ごとに計算(任意手当の自由設定は要確認) | △給与計算・代行に対応(手当設定の個別仕様は要確認) | ●大手法人の複雑な給与・賞与計算を標準自動化 | △大規模な給与計算に対応(手当設定の個別仕様は要確認) | ●支給50・控除30項目を設定可 | △基本的な手当計算に対応(特殊手当の自由設定は公式で要確認) | ●各種手当・控除の計算設定に対応 | △月例給与・賞与を自動計算(任意手当の自由設定は要確認) |
| 多様な雇用形態・職種 | ●雇用区分ごとに給与体系を設定可 | ●規模別5プランで多様な給与体系に対応 | ●規模別プランで多様な給与体系に対応 | ●多様な雇用形態・賃金体系に対応(公式) | ●給与体系ごとに計算可 | ●人事情報を最大6,000項目で管理し多様な区分に対応 | ●大手法人の複雑な給与区分を標準対応 | ●統合HCMで多様な人事・給与区分に対応 | ●業種・雇用区分ごとの給与体系に対応 | △時給・月給に対応(固定制中心) | ●雇用区分ごとの給与計算に対応 | ●月給・時給など多様な給与体系に対応 |
| 工場のIC打刻・勤怠連携 | ●外部連携(弥生勤怠 Next・KING OF TIME等) | ●外部連携(奉行APIコネクト/CSV、一部有償) | ●外部連携(API・CSVで20種類以上) | ●勤怠管理モジュールを含む統合型(工場IC打刻の仕様は要確認) | ◎CYBER XEED就業と同一DBで一気通貫(アマノの工場勤怠に強み) | △勤怠は提携パートナーのシステムを組み合わせ(連携方式は要確認) | ◎自社勤怠(ICカード打刻)で給与まで自動連携 | ◎就業管理がICカード・タイムカード機器から取り込み給与へ連携 | ●外部連携(API/Web-API/CSV。ジョブカン勤怠・KING OF TIME等) | △自社勤怠はスマホ・LINE打刻中心(工場IC打刻は要確認) | ●外部連携(オフィスステーション勤怠・KING OF TIME・Touch On Time/CSV) | ●ジョブカン勤怠管理とAPI連携(有料プラン) |
| 社会保険の電子申請・法改正対応 | ●電子申請はベーシック以上/法改正に自動対応 | ◎社会保険11種を電子申請/法改正はプログラム自動更新 | △電子申請は別製品クラウド社会保険/法改正に自動対応 | △給与モジュール単体の社保電子申請は公式で要確認 | △帳票のe-Tax/eLTAX形式出力に対応(直接送信は要確認)/法改正は無償更新 | ●社保5帳票をマイナポータルAPIで電子申請 | ◎e-Gov電子申請・e-Tax/eLTAX連携/法改正対応は追加費用なし | ●マイナポータルAPI経由で電子申請 | ●社会保険をe-Gov直接連動で電子申請 | △労務手続きの電子化に対応(社保電子申請の範囲は公式で要確認) | ●労務連携で社保・労保を電子申請/法改正に自動対応 | △社保・労保の書類作成とe-Tax/eLTAX向けCSV出力(電子申請は労務HR等と連携) |
| 料金(初期費用/月額) | 初期費用0円 月1,700〜7,000円(税抜) | 初期費用0〜7万円 月5,500〜121,000円 | 初期費用0円 月2,480円〜(税抜) | 要問い合わせ | 初期50万円〜 月2万円〜 | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 初期費用0円 月16,200円〜(税抜) | 初期費用なし 月2,000円〜(5名) | 登録料110,000円 月440円/人(税込) | 無料プラン有(5名まで) 有料は月400円/人(税抜、最低2,000円) |
| 化学・製造業での導入実績 | ×公表事例は建設・卸売等(製造業の事例なし) | △奉行シリーズ82万社(製造業特化の公表事例は公式サイトでは確認できず) | ×公表事例は印刷・飲食・医療等(製造業特化なし) | ●製造業を含む大企業に導入(日本電波工業等) | △アマノグループ(工場勤怠に実績)/給与の製造業事例は公式サイトでは確認できず | △約2,000社・月55万人(製造業特化の公表事例は公式サイトでは確認できず) | ●山崎製パン等の製造業大手が導入 | ●KYB・エスペック等の製造業で工数削減事例 | ●化学関連の製造業(日進化学)に導入事例(旧製品PCA給与X+就業管理クロノス。現行はPCAクラウド 給与) | ×個人・小規模も対象(製造業特化の事例なし) | △第一稀元素化学工業など化学・製造業の導入ロゴあり(給与単体の事例詳細は要確認) | ×導入事例は非公表(製造業特化なし) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
化学業界向け給与計算ソフトおすすめ12選(サービス個別紹介)
ここからは、化学業界の給与計算に対応できる12製品を1つずつ紹介します。製造業での導入実績を持つ統合型の人事給与システムから、手当の自由設定や勤怠連携によって化学業界の要件に対応できる汎用のクラウド給与まで含めています。各製品の交替勤務・手当設定への対応、工場の勤怠の取り込み方、社会保険の電子申請、料金、化学・製造業での実績を、自社の現場運用に照らして読み進めてください。
1. 弥生給与 Next(弥生株式会社)

「弥生給与 Next」は、会計ソフトで知られる弥生株式会社が提供するクラウド型の給与計算サービスです。給与・賞与計算から社会保険料・所得税の自動計算、年末調整、Web明細の配信までをプランに応じて扱えます。
残業手当などの割増は、明細項目に倍率の計算式を設定して組み立てる方式で、深夜手当・交替手当や危険・特殊作業手当のような独自の手当も項目を追加して計算できます。料金表では固定時間制に加え、フレックス制・変形労働制・裁量労働制の給与計算が全プランで対象とされています。
工場の勤怠は、弥生勤怠 NextやKING OF TIMEなどとのAPI連携のほか、各種勤怠システムとCSVで取り込めます。算定基礎届・月額変更届・賞与支払届はベーシックライト以上で作成でき、行政への電子申請はベーシックプラン以上で対応します。公式サイトは従業員20名を境に案内を分けており、中小企業を主な対象としています。
交替勤務の割増や危険・特殊作業手当も明細項目の計算式で設定できるため、小規模から中規模の化学関連企業が給与計算を効率化する用途に向きます。
2. 給与奉行クラウド(株式会社オービックビジネスコンサルタント)

従業員20名規模から1,000名規模まで、人数に応じた5段階のプランが用意されたクラウド型の給与計算システムです。提供元は会計・給与の「奉行シリーズ」を手がける株式会社オービックビジネスコンサルタントです。
給与・賞与計算では、残業手当や通勤手当、遅刻・早退・欠勤の控除計算に対応します。賞与支払届・算定基礎届・月額変更届や資格取得・喪失届など11種類の社会保険・労働保険の書類を電子申請でき、従業員数が多い事業所の手続き負担を抑えられます。
工場の勤怠は、奉行APIコネクトサービスやCSVを介して、KING OF TIME、ジョブカン勤怠管理、Touch On Timeなど外部の勤怠管理システムと連携して取り込みます(一部の連携は別途利用料が必要)。制度改正にはプログラムの自動更新で追加費用なく対応するとしています。
3. マネーフォワード クラウド給与(株式会社マネーフォワード)

会計・勤怠・人事などのクラウドサービスを展開する株式会社マネーフォワードの給与計算ソフトです。シリーズ内のデータ連携を前提に設計され、勤怠から給与、会計までの転記作業を減らせる構成になっています。
所得税・雇用保険料・社会保険料の計算に加え、支給・控除項目を独自の計算式で設定できるため、現場ごとに異なる手当にも項目を作って対応できます。工場の勤怠は、KING OF TIMEやジョブカン勤怠管理など、API・CSV合わせて20種類以上の外部システムと連携して取り込めます。
料金はひとり法人向けの月額2,480円から、利用者4名以上向けのビジネスプランは月額6,480円(いずれも税抜・年払い時)で、51名以上は個別見積もりです。社会保険の電子申請は別製品「クラウド社会保険」の機能とされており、必要な範囲を公式で確認するとよいでしょう。
4. SuperStream-NX(キヤノンITソリューションズ株式会社)

SuperStream-NXは、財務会計から人事給与までを一連のモジュールで扱う、中堅〜大企業向けの統合型バックオフィス基盤です。キヤノンITソリューションズ株式会社が提供し、公式表記で11,000社以上の導入実績を掲げています。
人事給与ソリューションは人事管理・給与管理・人事諸届・勤怠管理で構成され、公式サイトは多様な雇用形態・賃金体系への対応を掲げています。給与モジュール単体での年末調整や社会保険の電子申請といった個別機能は公式ページで細部まで確認できないため、自社要件との適合は見積もり時に確認が必要です。
提供形態はオンプレミスとクラウド(SuperStream-NX Cloud)の両方があり、NECや日立システムズなど多数の販売パートナーが導入・運用を支援します。本社と複数工場を統合した基幹システムとして運用したい企業に向く構成です。
5. CYBER XEED給与(アマノビジネスソリューションズ株式会社)

勤怠管理機器を手がけるアマノグループのアマノビジネスソリューションズ株式会社が提供する、勤怠・人事・給与クラウド「CYBER XEED」シリーズの給与計算製品です。
給与体系ごとの給与計算で残業手当・社会保険料・所得税を自動計算し、年末調整やWeb明細・Web源泉徴収票にも対応します。給与・勤怠データの入力やマスター保守を専任オペレーターが代行するアウトソーシングオプションを、フルと部分から選んで追加できる点が特徴です。
同シリーズの勤怠管理「CYBER XEED就業」をあわせて使うと、就業・給与・人事を同一データベースで扱え、勤務データが自動連携されます。初期設定費用は50万円から、月次使用料は2万円からです。
6. PROSRV(三菱総研DCS株式会社)

三菱総研DCS株式会社が1970年の創業当初から手がけてきた給与計算事業を基盤とする、人事給与システムとアウトソーシングを組み合わせたサービスです。導入社数は約2,000社、月間の給与処理は55万人規模としています。
クラウド型の「PROSRV on Cloud」で人事・給与情報の管理や給与・賞与・年末調整・社会保険の計算を行い、年末調整や月次の社会保険事務などを代行サービスとして委託することもできます。システムのみの利用から業務全般の委託まで、段階的に範囲を選べます。
マイナポータルAPI対応により、算定基礎届・月額変更届・賞与支払届・資格取得届・資格喪失届の社会保険5帳票を電子申請できます。従業員数が多く手続き件数がかさむ事業所の負担軽減につながります。勤怠は提携パートナーのシステムを組み合わせて提供し、料金は要問い合わせです。
7. COMPANY(株式会社Works Human Intelligence)

COMPANYは、大手企業の人事・勤怠・給与・タレントマネジメントを一つのシステムで扱う統合人事システムです。株式会社Works Human Intelligenceが提供し、大手約1,200法人グループが導入しているとしています。
自社の勤怠管理モジュールはICカード・Web・モバイルでの打刻に対応し、フレックス・裁量労働・変形労働に加え、工場の交替勤務にも標準で対応するとされています。勤怠管理を使うと勤務実績が給与計算へ自動連携され、長時間労働を事前に検知するアラートも備えます。
社会保険手続きはe-Govでの電子申請に対応し、e-Tax・eLTAXとも連携します。導入事例には山崎製パン株式会社など製造業の大手企業が挙げられています。料金は要問い合わせです。
8. POSITIVE(株式会社電通総研)

給与計算を4万名分10分以内で処理できることを掲げる、株式会社電通総研の統合HCMソリューションです。人事・給与・就業管理やタレントマネジメントを1つのシステムで提供し、10万人を超える従業員規模にも対応するとしています。
就業管理では、ICカードやタイムカード機器からのデータ取り込みなど多様な出退勤実績の管理に対応し、就業申請で管理した勤務実績を給与管理へ連携できます。36協定の時間を1か月・3か月・6か月・年間で設定し、上限に近づくと本人・上長へ注意を促す機能も備えます。
給与管理はマイナポータルAPI経由の電子申請に対応します。導入は3,000社を超え、KYB株式会社やエスペック株式会社など製造業での工数削減事例が公開されています。料金は要問い合わせです。
9. PCAクラウド 給与(ピー・シー・エー株式会社)

「PCA給与DX」の名で知られる給与計算ソフトは、現在はクラウド型の「PCAクラウド 給与」などに引き継がれています。提供元は東証プライム上場のピー・シー・エー株式会社で、公式サイトは25,000法人を超える利用実績を掲げています。
勤怠20・支給50・控除30の給与項目を設定でき、業種や雇用区分ごとに異なる給与体系に合わせて計算を組み立てられます。社会保険のe-Gov直接連動による電子申請や、算定基礎届・月額変更届の作成、年末調整にも対応します。
工場の勤怠は、API(HRBrainなど)やWeb-API、CSVを介して、ジョブカン勤怠管理やKING OF TIMEなど外部の勤怠管理システムと連携して取り込みます。料金はクラウド標準版で月額16,200円(税抜)から、2か月の無料体験があります。
化学関連の製造業での実績として、化粧品・医薬部外品・エアゾール製品の受託製造を手がける日進化学(本社と3工場・約300名)の導入事例が公開されています。各工場からタイムカードを本社へ送って手計算していた給与業務を見直した例です。
同社は旧製品「PCA給与X」と就業管理「クロノス」を組み合わせ、ICカードをかざすだけの打刻で勤怠を自動集計し、算定基礎届や賞与支払届といった社会保険業務の負担を減らしたとしています(現行の後継はPCAクラウド 給与)。
10. freee人事労務(フリー株式会社)

freee人事労務は、勤怠・給与計算・年末調整・入退社手続き・マイナンバー管理までを一つのIDで扱うクラウドの労務管理システムです。提供元はフリー株式会社です。
給与計算やWeb給与明細、会計ソフトとの連携に対応し、従業員はスマートフォンアプリやLINEから勤怠打刻・給与明細の確認・各種申請を行えます。公式サイトで案内されているのは固定制の給与計算が中心で、交替勤務や変形労働時間制、工場のIC打刻への対応可否は公式情報で確認するとよいでしょう。
料金は初期費用なしで、ミニマムプランが月額2,000円から(5名利用時)、スタンダードプランが月額3,000円からです。無料でのお試しもでき、公式サイトは個人・小規模事業者の利用も案内しています。
このため、交替勤務のない研究開発拠点や小規模な化学関連企業など、固定制の給与計算が中心の職場に向きます。工場の交替勤務や特殊作業手当が多い現場では、本記事で挙げた製造業向けの製品とあわせて適合を確認するとよいでしょう。
11. オフィスステーション給与(株式会社エフアンドエム)

株式会社エフアンドエムの人事労務クラウド「オフィスステーション」シリーズのうち、給与計算に特化した製品です。労務・年末調整・給与明細など機能ごとに製品が分かれ、必要なものだけを選んで契約するアラカルト型を採ります。
社会保険料・所得税の自動計算や、各種手当・控除の計算設定に対応します。自社の「オフィスステーション勤怠」との連携では、法定内外の残業や深夜残業、法定休日勤務、法定休日の深夜勤務といった区分別の勤怠項目を給与計算へ受け渡せるため、交替勤務の割増計算にも使えます。
勤怠データの自動連携はオフィスステーション勤怠・KING OF TIME・Touch On Timeに対応し、その他はCSVで取り込みます。社会保険・労働保険の電子申請は、同シリーズの「労務」との連携時に行えます。料金は登録料110,000円(税込)と、従業員1名あたり月額440円(税込)です。
公式の給与計算ページには、第一稀元素化学工業や日本製鉄など化学・素材・製造業の企業ロゴが導入先として並びます。ただしオフィスステーションシリーズ全体での導入先を示すもので、給与単体での化学メーカーの事例の詳細は公式で確認が必要です。
12. ジョブカン給与計算(株式会社DONUTS)

株式会社DONUTSの「ジョブカン」シリーズの給与計算ソフトで、従業員5名以下なら無料プランを期限なく使い続けられます。有料プランは1ユーザーあたり月額400円(税抜、最低利用料金2,000円)です。
月例給与・賞与を所得税・社会保険料とともに自動計算し、Web給与明細・源泉徴収票の配布、年末調整、社会保険・労働保険の書類作成に対応します。給与支払報告書・総括表は、e-Tax・eLTAX向けのCSVデータとして出力できます。
工場の勤怠は、同シリーズの「ジョブカン勤怠管理」とのAPI連携(有料プラン)で取り込めるほか、「ジョブカン労務HR」とも情報を連携できます。従業員500名以上や既存利用者は特別料金の対象で、小規模から中規模の事業所が主な対象です。
化学業界向け給与計算ソフト導入で解決できること
給与計算ソフトを導入すると、化学メーカーの労務管理で生じがちな負担が、実際の運用でどう変わるのかを整理します。
まず、Excelや手計算による属人化と計算ミスを解消できます。交替勤務の割増や深夜・交替手当、危険・特殊作業手当の計算ルールを登録しておけば、勤務実績から自動で計算され、担当者が代わっても同じ基準を保てます。月末の締めが、人手の計算中心から確認と承認が中心の運用へ変わります。
ICカードの打刻や既存の勤怠・工数管理システムから実績を取り込めば、各工場からタイムカードを本社へ送って手入力する作業がなくなり、転記ミスや集計の遅れを抑えられます。拠点ごとにばらばらだった入力も一つのシステムに集約でき、本社と複数工場の給与・社会保険をまとめて処理できます。
社会保険業務の負担も軽くできます。算定基礎届では標準報酬の新等級への反映が容易になり、賞与データを一度入力すれば関連帳票に反映されます。e-Govやマイナポータル経由で電子申請できる製品なら提出の手間と転記の誤りを減らせ、保険料率の改定や年末調整の様式変更にもソフト側が自動で追随します。
化学業界の社会保険(特定適用事業所)・法令対応と給与計算ソフト
化学メーカーが給与計算ソフトを選ぶとき、社会保険や労働時間に関する法令の前提を押さえておくと、どの機能を重視すべきかが見えてきます。ここでは、化学業界で特に関わりの深い制度を整理し、製品選びとの結びつけ方を確認します。
特定適用事業所と社会保険の適用拡大
従業員数が多い化学メーカーは、社会保険の「特定適用事業所」に該当しやすい立場にあります。特定適用事業所に該当すると、一定の要件を満たす短時間労働者も健康保険・厚生年金保険の加入対象になります。日本年金機構は、特定適用事業所を次のように定義しています。
特定適用事業所とは、1年のうち6月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業等のことです。
特定適用事業所に該当する適用事業所の範囲は段階的に拡大され、令和9年10月から、厚生年金保険の被保険者数が36人以上の企業等で働く短時間労働者は、健康保険・厚生年金保険の加入対象となります。
出典:短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大|日本年金機構
被保険者の総数は、同一の法人番号を持つすべての適用事業所を合算して判定します。本社と複数の工場を抱える化学メーカーでは、拠点ごとに人数を見るのではなく全社で合算するため、現行の基準である51人以上に達しやすい立場にあります。
さらに2027年(令和9年)10月に基準が36人以上へ拡大されると、対象となる企業はいっそう広がります。加入対象となる短時間労働者は、週の所定労働時間が20時間以上で学生ではない方などが該当します。
短時間労働者を含めた加入・非加入の管理や、算定基礎届・賞与支払届・月額変更届の作成と提出の件数は、従業員数が多いほど増えます。給与計算ソフトを選ぶ際に、これらの帳票を給与データと連動して作成し、e-Govやマイナポータル経由で電子申請できるか、申請状況を従業員別に確認できるかを重視したいのは、こうした社会保険の前提があるためです。
変形労働時間制と時間外労働の上限規制
24時間操業や季節変動のある化学工場では、労働時間を一定期間で平均して配分する変形労働時間制が用いられます。労働基準法では、1か月単位の変形労働時間制(第32条の2)と、1か月を超え1年以内の対象期間を定める1年単位の変形労働時間制(第32条の4)が定められています。
いずれも、期間を平均して1週間あたりの労働時間が週40時間を超えない範囲で、特定の週や日に法定労働時間を超えて働かせることができる仕組みです。給与計算では、この制度にもとづいて所定内と時間外を切り分け、割増賃金を正しく計算できるかが前提になります。
時間外労働には上限規制があります。労働基準法第36条では、時間外労働の限度時間を原則として「一箇月について四十五時間及び一年について三百六十時間」と定めています。臨時的な特別の事情があって労使で特別条項を結ぶ場合でも、年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計が単月100時間未満・複数月平均80時間以内という上限が設けられています。
交替勤務や繁忙期の残業が生じやすい化学工場では、勤怠データと連携して時間外労働を集計し、上限に近づいたらアラートで知らせる機能があるかを確認しておくと、労働時間管理と給与への反映を一体で行えます。
「2024年問題」として知られる時間外労働の上限規制は、適用が猶予されていた建設業・自動車運転の業務・医師などを対象とするもので、化学業界の工場が直接の対象というわけではありません。化学工場には原則として以前から上限規制が適用されており、混同しないよう注意が必要です。いずれにしても、残業時間を正確に把握できる体制づくりが労務管理では重要になります。
出典・参考資料(1件)
導入・運用でつまずかないための注意点
化学メーカーが給与計算ソフトを導入する際につまずきやすい点を、移行・現場定着・複数拠点の運用の3つの観点から整理します。導入前に押さえておくと、切り替え後の混乱を避けやすくなります。
まず、既存のExcelや自作ソフトからの移行です。これまで担当者が独自に組んでいた計算ロジックには、交替手当や危険・特殊作業手当の支給条件、雇用区分ごとの控除ルールが暗黙のうちに織り込まれていることがあります。
移行にあたっては、これらのルールを洗い出してソフト上に設定し直し、既存の勤怠・工数管理のデータを取り込めるかを事前に確認しておきましょう。並行稼働の期間を設けて、新旧の計算結果が一致するかを検証しておくと安全です。
次に、工場現場での打刻・勤怠連携の定着です。給与計算の起点は現場の勤怠なので、ここが揃わなければ計算そのものが始まりません。
交替勤務の従業員が無理なく打刻でき、水や薬品を扱う環境でも記録できる手段を選び、既存の勤怠・工数管理システムと連携する場合は、データの受け渡しが自動かCSV経由かで運用の手間がどう変わるかを見ておきましょう。導入時に現場向けの説明や試用期間を設け、定着するまでフォローすることも欠かせません。
最後に、複数拠点を展開する際の運用設計です。本社と複数工場で給与や社会保険をまとめて処理するには、拠点ごとの入力ルールや締めのスケジュールを揃えておく必要があります。
拠点ごとに手当の運用が異なる場合は、どこまでを共通化し、どこを拠点裁量とするかを整理しておくと、集計時の食い違いを防げます。将来の拠点増加も見据えて、対応規模や集計機能に余裕のある製品を選んでおくと、組織の拡大に合わせて使い続けられます。
まとめ
化学業界の給与計算は、工場の交替勤務や特殊作業手当、多様な雇用形態、本社と複数工場の取りまとめ、特定適用事業所を含む社会保険など、前述した業界固有の事情が重なって手作業では負担が大きくなりがちです。
給与計算ソフトを選ぶときは、まず製造業に強い製品を求めるのか、汎用クラウドで要件に対応するのかを見極めましょう。そのうえで、前述した交替勤務や手当設定、勤怠連携、社会保険の電子申請、料金と対応規模といった比較軸を、自社の現場運用に照らして確認するとよいでしょう。
本記事の比較表と診断ツールを使えば、これらの要件ごとに各製品の対応可否を見比べ、自社に合う候補を絞り込めます。気になる製品が見つかったら、資料を取り寄せて料金や機能の詳細を確認し、導入の検討を進めてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 化学業界向け給与計算ソフトとは何ですか?
A. 化学業界向け給与計算ソフトとは、工場の交替勤務・変形労働時間制や深夜・交替手当、危険・特殊作業手当、多様な雇用形態・職種、工場のIC打刻・勤怠連携、特定適用事業所を含む社会保険といった化学・製造業に特有の事情に対応できる給与計算ソフトのことです。
化学業界に特化した専用製品が数多くあるわけではなく、製造業での導入実績を持つ製品や汎用のクラウド給与を、手当の自由設定や勤怠連携によって化学業界の要件に合わせて使うのが一般的です。
Q. 化学業界向け給与計算ソフトは、交替勤務や変形労働時間制の割増賃金も計算できますか?
A. 化学業界向け給与計算ソフトは、交替勤務のシフトや変形労働時間制の設定にもとづいて所定内・時間外・深夜・休日労働を切り分け、割増賃金を計算できる製品を選べば対応できます。2交替・3交替のシフトや、1か月単位・1年単位の変形労働時間制に自社の勤務制度を登録できるかを確認しましょう。
ただし、この計算を給与計算ソフト単体で行うのか、勤怠管理システム側で労働時間を確定させてから給与へ渡すのかは製品によって異なります。自社のシフトパターンや期間平均の計算に無理なく対応できるかを、実際の勤務区分に当てはめて見ておくと確実です。
Q. 化学業界向け給与計算ソフトで、危険手当や特殊作業手当など独自の手当も設定できますか?
A. 化学業界向け給与計算ソフトは、手当の項目を自由に追加でき、支給額や計算式を柔軟に設定できる製品であれば、危険手当・特殊作業手当や深夜・交替手当も自社の給与規程どおりに計算できます。こうした手当は製品にあらかじめ用意されていないことが一般的なため、任意の手当項目を作れるかが選定のポイントになります。
「このシフトに入ったら」「この作業区分なら」といった条件で計算ルールを組め、勤務実績と連動して自動計算できる製品であれば、導入後の手作業を減らせます。設定できる手当の数や、計算式の自由度まで見ておくとよいでしょう。
Q. 化学業界向け給与計算ソフトは工場のIC打刻や既存の勤怠システムと連携できますか?
A. 多くの製品が、同じシリーズの勤怠機能で打刻から給与まで完結する方式と、既存の勤怠・工数管理システムとAPIやCSVで連携する方式の両方に対応します。ただし工場のICカード打刻にそのまま対応するかは製品差があるため、現場の打刻機器との相性を確認しておきましょう。
連携でつまずきやすいのは、勤怠側と給与側で部門コードや雇用区分コードのマスターを揃える作業です。自動連携できる外部システムは限られ、対象外はCSV取り込みになること、API連携が有償オプションの製品があることも、運用の手間と費用を左右します。
Q. 化学業界向け給与計算ソフトは、特定適用事業所の社会保険手続きや電子申請に対応していますか?
A. 化学業界向け給与計算ソフトの多くは、算定基礎届・賞与支払届・月額変更届などの社会保険帳票を給与データと連動して作成し、e-Govやマイナポータル経由で電子申請できます。従業員数が多く手続き件数がかさむ事業所では、電子申請への対応可否と、申請状況を従業員別に確認できるかを重視するとよいでしょう。
社会保険の特定適用事業所は、同一法人番号のすべての事業所を合算した厚生年金保険の被保険者が、現行では51人以上の企業が対象で、2027年(令和9年)10月からは36人以上へ拡大されます。本社と複数工場を抱える化学メーカーは全社で合算するため該当しやすく、短時間労働者を含めた加入・非加入の管理まで見据えて製品を選ぶと安心です。
Q. 化学業界では専用の給与計算ソフトが必要ですか、汎用のクラウド給与でも足りますか?
A. 化学業界では、専用製品にこだわる必要は必ずしもなく、製造業での実績を持つ製品や汎用のクラウド給与を、手当の自由設定・変形労働への対応・勤怠連携・社会保険の電子申請で化学業界の要件に合わせて使うのが一般的です。手当や交替勤務への対応がそろっていれば、汎用クラウドでも価格や拡張性、導入のしやすさで有利なことがあります。
一方、大企業や多拠点で人事・給与を一つのシステムに統合したい場合や、現場の勤務区分が複雑な場合は、製造業向けに作り込まれた統合型が候補になります。従業員規模・現場の複雑さ・既存システムとの兼ね合いから、自社がどちらに近いかを最初に決めておくと比較が進めやすくなります。
Q. 化学業界向け給与計算ソフトは本社と複数の工場の給与をまとめて集計できますか?
A. 化学業界向け給与計算ソフトは、拠点ごとの入力を一つのシステムに集約し、全社や部門・事業所別に給与と社会保険をまとめて処理できる製品を選べば、本社と複数工場の集計に対応できます。拠点が増えても事務の流れを揃えられるため、組織の拡大に合わせて使い続けられます。
拠点ごとに手当の運用や締めのスケジュールが異なる場合は、どこまでを共通化し、どこを拠点裁量とするかを整理しておくと、集計時の食い違いを防げます。将来の拠点増加も見据えて、対応規模と集計機能に余裕のある製品を選ぶとよいでしょう。
Q. 化学業界向け給与計算ソフトの料金相場はどのくらいですか?
A. 化学業界向け給与計算ソフトの料金は、従業員1名あたり月額数百円程度から使える汎用クラウド給与と、初期費用数十万円・月額数万円以上の統合型やアウトソーシング型に大きく分かれます。汎用クラウド給与は従業員1名あたり月額400〜440円程度や月額数千円からの小規模向けプランがある一方、統合型は規模別のプランや個別見積もりが中心です。
交替勤務のパートや契約社員を含めた人数で月額がどう変わるか、初期費用や勤怠連携の追加料金まで含めて試算しておくと、規模の近い製品を比べやすくなります。製品ごとに従業員規模別でプランが分かれていることも多いため、自社の人数に合うプランで比較しましょう。
Q. 化学工場も「2024年問題」の時間外労働の上限規制の対象ですか?
A. 「2024年問題」の時間外労働の上限規制は、適用が猶予されていた建設業・自動車運転の業務・医師などが対象で、化学工場が直接の対象ではありません。化学工場には以前から上限規制が適用されており、勤怠と連携して残業時間を正確に把握できる製品を選ぶことが労務管理では重要です。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

















