工場やプラントの生産設備・制御システム(OT)を狙った攻撃が増え、ランサムウェア感染による生産ライン停止や、保守経由での不正侵入といった事例が報じられています。情報系システムと違い、設備は「止められない」ことが前提のため、どこから手をつければよいか判断に迷う担当者も少なくありません。
OT環境は可用性と安全性を最優先し、サポートの切れた古いOSや専用プロトコルで動く機器も多いため、情報系で使うセキュリティ対策をそのまま当てはめられません。工場・制御システム向けの対策サービスには、現状を可視化する診断から、守りの設計・導入、導入後の監視・運用、ネットワークを検知する製品まで複数の種類があります。自社の状況に合うのはどれかを見極める必要があります。
本記事では、工場・制御システム(OT)を守るセキュリティ対策サービスを4つのタイプに整理し、対応領域・導入方式・対象環境・提供形態で比較・解説します。それぞれのタイプがどんな状況の企業に向くかを具体的に示しますので、資料請求や相談に進める候補を数社に絞り込むための判断材料としてご活用ください。
また、自社の状況に合わせて最適なサービスを最短で見つけられるよう、「30秒で終わる選定診断ツール」をご用意しています。ぜひこちらもご活用ください。
目次
一括ダウンロードする
OTセキュリティとは|ITセキュリティとの違いとOT専用の対策が必要な理由
ここからは、工場・制御システム向けの対策サービスを比較する前提として、OTセキュリティとは何か、なぜ情報系の対策をそのまま当てられないのかを整理します。OTセキュリティとは、工場やプラントの生産設備・制御システム(OT:Operational Technology)を対象に、サイバー攻撃や不正アクセスから守る取り組みを指します。
OTとITの違い(守るべき優先順位:可用性 vs 機密性)
情報系システム(IT)のセキュリティは、データの機密性を最優先します。問題が起きればシステムを一時停止して対処することも選択できます。これに対してOTは、生産ラインや設備を動かし続けることが前提で、可用性と安全性を最優先します。稼働を止めると生産停止や物理的な事故に直結するため、再起動・パッチ適用・通信遮断を安易に行えません。
制御システムは、サポートが終了したレガシーOSや、機器メーカー独自の専用プロトコルで動いていることが多い点も特徴です。このため、情報系で一般的なウイルス対策ソフトやエンドポイントでの検知・対応(EDR)を、そのまま導入できない機器が数多く存在します。
米国立標準技術研究所(NIST)が公開するOT向けガイド(SP 800-82 Rev.3)も、OTは物理環境と相互作用するため、固有の性能・信頼性・安全性の要件を踏まえた対策が必要だと示しています。情報系と同じ対策をそのまま当てられないからこそ、OT環境の制約を前提に設計された専用サービスが求められます。
出典・参考資料(1件)
工場・制御システムが対策を迫られる背景(規制動向・サプライチェーン)
かつて工場ネットワークは外部から隔離されていましたが、スマート工場化によるIT/OTの融合で外部接続が増え、攻撃の経路が広がりました。自社を直接狙う攻撃だけでなく、取引先や保守事業者を経由して侵入する、いわゆるサプライチェーン型の攻撃も確認されています。
サプライチェーン型攻撃の具体的な手口や、取引先を含めて取るべき対策は『サプライチェーン攻撃とは?3つの手口・被害事例・取引先を含めた対策を解説』で詳しく解説しています。
また、スマート工場では制御システムそのものだけでなく、ネットワークにつながるIoT機器も侵入の入口になります。どんな脆弱性があり、自社で何から確認すべきかは、以下の記事で優先順位とともに整理しています。
規制の動きも対策を後押ししています。EUのサイバーレジリエンス法(Cyber Resilience Act。Regulation (EU) 2024/2847)は、デジタル要素を持つ製品にセキュリティ要件を課す市場規制です。2024年12月10日に発効し、2027年12月11日に全面適用されます。EU市場に製品を出す日本の製造業・製品ベンダーにも影響するため、対策を進める根拠のひとつになります。
国内では、経済産業省が工場向けのセキュリティ対策ガイドラインを示しており、国際標準IEC 62443とあわせて対策の物差しとして参照されています。これらの詳細は後半で整理します。
ここまではOT(工場・制御システム)に絞って整理しましたが、情報系の端末やネットワーク、クラウドなど社内のほかの領域も含めて、守る対象ごとにセキュリティソリューションのタイプと代表サービスを見渡したい場合は、以下の記事が全体像の把握に役立ちます。
OTセキュリティ対策サービスの4タイプ(やりたいことから選ぶ)
ここからは、OTセキュリティ対策サービスを「対策のどの段階に手を打ちたいか」で4つのタイプに整理します。現状把握から防御の導入、導入後の監視、そして制御ネットワークを検知する製品という流れで、自社に今必要なのはどれかを自己判断しやすくなります。また、各タイプは排他的なものではなく、1つの提供元が複数のタイプにまたがって対応する例も多くあります。

リスク診断・アセスメント型(まず現状を可視化してリスクを評価する)
工場内のOT資産・通信・脆弱性を洗い出し、どこにどんなリスクがあるかを評価して対策の優先順位を付けるタイプです。無料の簡易診断から、資産台帳の作成、本格的なアセスメントまで幅があります。「何から手をつければよいか分からない」「社内に現状把握の材料がない」という、対策の入口に立つ企業に向いています。経済産業省のガイドラインや国際標準IEC 62443を評価の物差しにする例が多く見られます。
防御・対策の設計導入型(止めない前提で守りを設計・導入する)
ネットワークのセグメント分割(領域ごとの区切り)やアクセス制御、USBメモリ経由の持ち込み対策、エンドポイントの保護など、具体的な守りを設計して導入するタイプです。生産を止めないことを前提に、どの機器にどの対策を適用するかを設計する点が重要になります。診断で課題が見えた後、実際の対策を現場に落とし込みたい企業に適しています。
監視・運用(MDR/SOC)型(導入後の監視・対応を専門チームに任せる)
検知製品が出すアラートを、専門のアナリストチームが監視・分析し、対応まで担うタイプです。24時間365日の監視・分析を代行する運用代行(MDR)や、監視拠点(SOC)によるサービスが該当します。OTに詳しい人材が社内におらず、アラートを捌ききれない企業にとって有力な選択肢です。工場はITと異なり専門知識を持つ人材が不足しがちなため、監視・対応を外部に任せたいニーズは根強くあります。
OT可視化・検知の製品型(IDS/NDR。制御ネットワークを可視化・検知する)
OTネットワークを流れる通信を可視化し、異常や不正な通信を検知する製品そのものを指します。通信を監視して侵入を検知する仕組み(IDS)や、ネットワーク全体を解析して検知・対応する仕組み(NDR)が中心です。制御機器にソフトを入れずに導入できる方式が多く、EDRを入れられない制御機器環境でも使える点が特徴です。まず可視化・検知の基盤を自社に持ちたい企業に向いています。
これら4つのタイプは、1社で複数をまたいで提供されることも珍しくありません。現状把握から防御の導入、監視・運用までを一社に任せたい場合は、診断から監視までワンストップで担う提供元も候補になります。これは5つ目のタイプではなく、上記の4タイプを横断して一社でまとめて引き受ける提供形態であり、本記事の後半でも個別に紹介します。
しかし、自社がどのタイプに適しているか、といった判断が難しいケースも存在します。そのような場合でも貴社の状況に合わせて最適なサービスを最短で見つけられるように、「30秒で終わる選定診断ツール」を以下にご用意しています。ぜひこちらもご活用ください。
一括ダウンロードする
【比較表】OTセキュリティ対策サービスを対応領域・導入方式で比較
ここからは、自社の課題や対策の段階に合わせて客観的に比較・選定できるよう、主要なOTセキュリティ対策サービスを対応領域・対象環境・導入方式・提供形態で横並びに整理します。工場を止めずに入れられるか、自社の制御環境に合うかという視点で見比べてください。
| サービス名 | Network Blackbox | Darktrace | Nozomi Networks | Claroty | Tenable OT Security | Microsoft Defender for IoT | Palo Alto Networks IoT Security(Industrial OT Security) | Cisco Cyber Vision | OsecT(NTTコミュニケーションズ) | TXOne Networks | Dragos | Armis | Fortinet OT Security | 三井情報 OTセキュリティサービス | EY OTセキュリティ | GSX OTセキュリティサービス | SCSKセキュリティ OTセキュリティ | NTT-AT OTセキュリティモニタリング | ソフトバンク OTセキュリティ Type N | ネットワンシステムズ OTセキュリティサービス | NTTセキュリティ・ジャパン | 三菱電機 OTセキュリティ | NEC IoT/OTセキュリティ | 富士通 OTセキュリティ | アイディルート OT/IoTセキュリティ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 対応領域 | 可視化・検知(NDR) | 可視化・検知(NDR) | 可視化・検知(+脆弱性管理) | 可視化・検知〜エクスポージャー管理(横断) | 診断・可視化(エクスポージャー管理) | 可視化・検知 | 可視化・検知(+セグメンテーション) | 可視化・検知(+セグメンテーション) | 可視化・検知(+運用支援) | 防御・可視化(横断) | 可視化・検知〜監視(横断) | 可視化・検知(エクスポージャー管理) | 防御の設計・導入(横断) | 診断+防御導入(SIer) | 診断・アセスメント/ガバナンス | 診断・アセスメント+教育・体制構築 | 監視・運用(MDR/SOC) | 監視・運用(運用代行) | 監視・運用+導入 | 監視・運用+導入 | 診断・アセスメント〜監視(横断) | 診断〜防御〜監視(横断) | 監視+機器保護+コンサル(横断) | 診断〜防御〜監視(横断) | 診断〜監視(横断・コンサル) |
| 対象環境 | IT・OT両対応 | IT・OT両対応 | OT・IoT横断 | OT・IoT横断(CPS) | OT・IoT・IT横断 | OT・IoT横断 | OT・IoT横断 | OT・ICS専用 | OT・ICS専用 | OT・ICS専用 | OT・ICS専用 | OT・IoT・IT横断 | OT・ICS専用 | OT・ICS専用 | OT・ICS専用 | OT・ICS専用 | OT・ICS専用 | OT・IoT横断 | OT・ICS専用 | OT・ICS専用 | OT・IoT横断 | OT・ICS専用 | OT・IoT横断 | OT・ICS専用 | OT・IoT横断 |
| 導入方式 | エージェントレス(ミラーリング) | エージェントレス(パッシブ検知) | エージェントレス(パッシブ監視) | ネットワーク監視型(SaaS/オンプレ) | パッシブ監視+非破壊クエリ | エージェントレス(パッシブ監視・アクティブ併用) | NGFW基盤(追加センサー不要) | 産業用スイッチにセンサー内蔵(追加機器不要) | エージェントレス(ミラーポート接続・工事不要) | OT専用製品群(止めない設計) | ネットワーク監視+マネージド運用 | エージェントレス(SaaS) | NGFW・ゲートウェイ基盤(仮想パッチ) | 人手・コンサル+機器導入 | 人手・コンサル(監査・助言) | 人手・コンサル+調査機器による可視化 | 既存OT-IDSのアラート監視(SOC) | エージェントレス(ミラーリング受動監視)+アナリスト運用 | エージェントレス(パッシブモニタリング) | Nozomi Guardian(パッシブ監視)+SOC | 人手・コンサル+診断(簡易診断は無料Web) | 3フェーズ一括(マルチベンダー) | 監視は受動/機器保護はソフト導入 | アセスメント〜運用監視をワンストップ | 人手・コンサル+Nozomi導入・OTSOC運用 |
| 提供形態 | 製品(NDR) | 製品(MDRあり) | 製品 | 製品(CPSプラットフォーム) | 製品 | 製品 | 製品(NGFWアドオン) | 製品(NW機器内蔵) | 製品(国産OT-IDS)+運用支援 | 製品 | 製品+運用代行 | 製品(SaaS) | 製品(Security Fabric) | SIer一括(診断→導入) | サービス(アセスメント・助言) | サービス(コンサル・教育) | サービス・運用代行(SOC監視) | サービス・運用代行(OsecT基盤) | SIer一括(導入〜監視運用) | SIer一括(計画〜監視) | サービス(診断〜運用) | SIer一括(ワンストップ) | SIer一括(監視・コンサル横断) | SIer一括(ワンストップ) | サービス(コンサル+OTSOC運用) |
| IEC62443・経産省GL | 記載なし | 記載なし | IEC 62443ほか | 記載なし | IEC 62443ほか(自動マッピング) | 記載なし | IEC 62443(ゾーニング) | IEC 62443 | 記載なし | IEC 62443ほか | 記載なし | 記載なし | IEC 62443-4-1 ML2 | 経済産業省ガイドライン | IEC 62443(IPAガイダンス) | 記載なし(Purdueモデル使用) | 記載なし | 記載なし | 記載なし(公式では明示なし) | 記載なし | 経済産業省ガイドライン/IEC 62443 | 記載なし(業界GL総称) | IEC 62443 | 記載なし | IEC 62443/NIST/CPSF |
| 料金 | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | ライセンスに含む(要問い合わせ) | 要問い合わせ | 対象スイッチのライセンスに付帯(価格非掲載) | 初期27.5万円/月額6.6万円〜(税込・2022年時点) | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | パック70: 888,000円〜/パック100: 個別見積もり | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ(PoCは有償) | 要問い合わせ | 要問い合わせ(簡易診断は無料) | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | サービス詳細を見る | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | サービス詳細を見る | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
※対応領域・対象環境・導入方式・準拠規格は各社公式情報(2026年10月時点)に基づきます。非開示の料金は「要問い合わせ」と記載しています。対応可否・詳細は各社公式情報でご確認ください。
サービス個別紹介
ここからは、タイプごとに代表的なOTセキュリティ対策サービスを紹介します。各サービスの対応領域・対象環境・導入方式を具体的に確認し、自社に合う候補を絞り込んでください。
OT可視化・検知の製品型(IDS/NDR)
制御ネットワークの通信を可視化し、異常を検知する製品を中心に紹介します。
1. Network Blackbox(株式会社クワッドマイナージャパン)

ネットワークを流れる通信をミラーリングで取り込み、全パケットを保存して可視化・検知・フォレンジック(事後調査)まで担うNDR(ネットワーク検知・対応)製品です。提供するのは株式会社クワッドマイナージャパンで、2024年には国内総代理店のフーバーブレインが資本参加しています。
シグネチャによる既知攻撃の検知に加え、利用者の行為を記録して異常を見つける検知や、データ内容を復元して調べるコンテンツ分析を併用します。機器にエージェントを入れず、通信をミラーリングして取り込む方式のため、ネットワークへの影響を抑えて導入できます。
EDRを導入しづらい制御機器を含む環境でも、ネットワーク側から通信を捉えられます。国内代理店の導入事例でも、EDRを入れられない制御コンソールを抱えるスマート工場での活用が紹介されています。料金は公開されておらず、要お問い合わせです。
2. Darktrace(Darktrace Limited)

組織ごとの「正常な挙動」をAIが学習し、そこからの逸脱で既知・未知の脅威を捉える自己学習型AIを中核に据えたサイバーセキュリティ製品です。英Darktrace Limitedが開発し、日本ではダークトレース・ジャパンと販売代理店が提供しています。
工場・制御システム向けには専用のDarktrace/OTを用意しています。産業環境の機器ごとに平常の通信を学習し、シグネチャやルールに頼らず、運用を止めないパッシブ(受動)な方式で検知すると公式が説明しています。
ネットワークを起点に、メール・クラウド・エンドポイントなども横断して相関分析できます。料金は監視対象の規模に応じた個別見積もりです。
3. Nozomi Networks(Nozomi Networks Inc.)

OT/ICSや重要インフラの可視化・検知に特化した産業用サイバーセキュリティのプラットフォームです。開発元のNozomi Networks Inc.は、2026年1月に三菱電機の完全子会社となりました。
ネットワークセンサーGuardianをミラーポートやタップに接続し、通信を妨げずに資産や異常を把握するパッシブ監視が中心です。必要に応じて、機器へ問い合わせるSmart Pollingや、エンドポイント用センサーのArcで見る範囲を広げられます。
完全オンプレミスやエアギャップ環境に対応するGuardianと、複数拠点をまとめて管理するSaaSのVantageを揃えます。国内はテリロジーなどの代理店経由での提供です。
4. Claroty(Claroty Ltd.)

工場の制御システムに加え、IoT・医療機器(IoMT)やビル設備まで、サイバーフィジカルシステム(CPS)と呼ばれる機器全般を対象にした保護プラットフォームです。開発はClaroty Ltd.。
資産の可視化から脆弱性(エクスポージャー)管理、ネットワーク保護、脅威検知までを一体で提供します。新たな機器を増やさず、既存のファイアウォールやスイッチ、NAC(ネットワークアクセス制御)を使ってネットワークをセグメント化できる設計を採ります。
SaaS版のxDomeとオンプレミス版のCTDがあり、環境に合わせて選べます。国内ではFirstQA Systemsとの協業を通じた提供実績があります。
5. Tenable OT Security(Tenable, Inc.)

OTネットワークの資産を洗い出し、脆弱性を「実際に悪用される可能性」で優先順位づけして露出(エクスポージャー)を管理する製品です。米Tenable, Inc.が提供し、現在はエクスポージャー管理基盤Tenable Oneの一部として「Tenable One OT Exposure」の名称になっています。
通信を監視するパッシブ方式と、稼働を乱さない非破壊のアクティブクエリ(Safe Active Query)を併用し、通信が稀な機器のファームウェアや構成まで把握します。IT・IoT・OTを横断して資産を一元管理できます。
SIEM/SOARやファイアウォール、JIRA・ServiceNowと連携し、既存のセキュリティ運用にOTを取り込めます。IEC 62443やNERC CIPなどへの準拠状況を自動でマッピングする機能も備えます。
6. Microsoft Defender for IoT(Microsoft Corporation)

WindowsやAzureで知られるMicrosoft Corporationが、OT/ICSとIoT機器向けに提供する監視製品です。SCADA(監視制御システム)やPLCといった制御機器から、プリンタ・カメラなどの管理外IoTまでを対象にします。
エージェントレスのパッシブ監視を軸にしており、EDRを入れにくい制御端末でも資産の把握や脅威検知ができます。挙動分析や機械学習を使った検知を行う点も公式が挙げています。
Defender for EndpointやDefender XDR、SIEMのMicrosoft Sentinelと組み合わせ、IT側の既存のMicrosoftセキュリティ運用にOTを取り込めます。料金はeIoT(エンタープライズIoT)とOTで体系が分かれ、OTはサイト単位のライセンスです。
7. Palo Alto Networks IoT Security(Palo Alto Networks, Inc.)

IoT・OT機器の可視化とリスク管理を、次世代ファイアウォールの技術と組み合わせて提供する製品群です。提供元は米Palo Alto Networks, Inc.で、公式ページ上ではEnterprise IoT SecurityやIndustrial OT Securityなどの名称が使われています。
機械学習とApp-ID・Device-IDで機器を識別し、資産のインベントリを構築します。産業環境向けには、追加のセンサーを導入せずにパッシブで非侵入の資産検出を行うと公式が説明しています。
検出した機器に対し、最小権限のアクセスポリシーの推奨やセグメンテーション、仮想パッチ(Frontier Virtual Patching)を提供します。料金は公開されておらず、要お問い合わせです。
8. OsecT(NTTコミュニケーションズ株式会社)

NTT研究所の通信フロー解析技術をもとに製品化された、国産のOT-IDS(制御システム向け不正侵入検知)です。NTTコミュニケーションズ株式会社(現・NTTドコモビジネス株式会社)が「OsecT(オーセクト)」として提供しています。
工場内スイッチのミラーポートにセンサーを挿すだけで導入でき、制御システム本体の改変は不要です。通信のコピーをクラウドへ送り、OT資産やネットワーク、EOL(サポート切れ)のOSを使う端末などを学習ベースで検知します。
センサーにはLTE回線が付属し、新たなネットワーク工事なしで始められます。料金は提供開始時点(2022年)で初期費用27万5000円・月額6万6000円(いずれも税込)とされ、現行の金額や運用支援オプションの料金は要お問い合わせです。
9. TXOne Networks(TXOne Networks Inc.)

トレンドマイクロと台湾MOXAの合弁で立ち上がった、工場・産業環境のOT/ICSに特化する専業ベンダーです。日本法人としてTXOne Networks Japan合同会社があります。
稼働を止めない(zero operational disruption)ことを前提に設計し、レガシーなWindowsを含む産業用エンドポイントの保護(Stellar)、ネットワーク防御(Edge)、持ち込み媒体の検査(Element)、集中管理(Sennin)を製品群で揃えます。
EdgeはISA/IEC 62443などの規格に沿い、180以上の産業プロトコルに対応すると公称しています。国内はNRIセキュアテクノロジーズや東京エレクトロンデバイスなどの認定パートナー経由で提供されます。
10. Dragos(Dragos, Inc.)

電力・石油ガス・製造・水道といった重要インフラのOT/ICSに照準を合わせた、OT専業のプラットフォームです。開発はDragos, Inc.で、日本へは代理店のマクニカ経由で提供されています。
ネットワーク監視による資産の可視化と脅威検知を中心に、脆弱性を「Now/Next/Never」で絞り込んで優先順位づけします。製品だけでなく、脅威インテリジェンス(WorldView)やマネージドの脅威ハンティング(OT Watch)といった運用支援まで併せて提供します。
重要インフラ領域を主な対象としています。2026年には日本のカントリーマネージャーを設置し、国内体制を強化しています。
11. Armis(Armis, Inc.)

ネットワーク上のIT・IoT・OT・医療機器までを、機器にソフトを入れずに検出・可視化するエージェントレスの資産可視化プラットフォームです。提供はArmis, Inc.。
エージェントを入れると稼働に支障が出かねない制御機器でも、稼働を止めずに資産を検出・分類できる点を強みに据えます。AIを使ったAsset Intelligence Engineで、各機器の種別やリスク、挙動といったコンテキストを補います。
資産管理、OT/IoTセキュリティ、医療機器セキュリティ、脆弱性管理などの製品ラインを単一のプラットフォームで持ちます。国内はサイバネットシステムが販売代理店として取り扱っています。
防御・対策の設計・導入型
工場を止めない前提で、ネットワークの区切りやアクセス制御などの守りを設計・導入するサービスを取り上げます。
12. Fortinet OT Security(フォーティネットジャパン合同会社)

ファイアウォール(FortiGate NGFW)を核に、スイッチ・無線・エンドポイント・リモートアクセス・SOC分析を Security Fabric で束ねた OTセキュリティのプラットフォームです。国内提供はフォーティネットジャパン合同会社と認定パートナーが担い、IT と OT を単一OS(FortiOS)で統合して守る設計を打ち出しています。
守りの中心はネットワークの分離で、マイクロセグメンテーションで横移動を抑え、FortiLink によりスイッチのポート単位でポリシーを適用します。粉塵・衝撃・振動のある現場向けには FortiGate・FortiSwitch・FortiAP などの堅牢化(Rugged)モデルがあります。
FortiGuard OT Security Service と併用すれば、レガシー機器に仮想パッチをあてられます。
保守業者やベンダーのアクセスは FortiPAM で制御し、エンドポイントは FortiEDR が検知・ブロックを担います。製品開発ライフサイクルは IEC 62443-4-1 の成熟度レベル2(ML2)認証を取得しています。料金は非開示で、国内はパートナー経由の問い合わせとなるため、構成と費用は導入パートナーに確認する流れです。
13. 三井情報 OTセキュリティサービス(三井情報株式会社)

製造業の産業用制御システムを対象に、現状のリスク診断から Fortinet の OT 機器導入までを一括で引き受けるのが、三井情報株式会社の「Fortinet OT スターターパック」です。診断は経済産業省「工場システムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン」(2022年11月)に沿って実施します。
診断・簡易コンサルティングで現状を把握したうえで、Fortinet OT セキュリティ機器の選定・調達・導入・構築まで SIer として続けて支援する流れです。何から着手するか決めきれない段階でも、診断を入口にして対策の実装へつなげられます。
企業規模別に2つのパックがあり、従業員100〜500名向けのパック70は888,000円〜、500名以上向けのパック100は個別見積もりです。パック100にはセキュリティコンサルティングが含まれます。ただしこの価格は2023年8月の発表時点の公表値で、税込・税抜の別は公表資料に記載がないため、現行の料金と内容は三井情報へ確認してください。
リスク診断・アセスメント型
まず自社のOT資産や通信、脆弱性を洗い出し、リスクを評価するサービスです。ただし、診断から入れる提供元はここで取り上げるアセスメント専業だけではありません。後述のワンストップ提供元各社(例:NTTセキュリティ・ジャパンの無料のOT簡易診断、アイディルートコンサルティングの3段階のアセスメント)も現状把握の診断から着手できるため、あわせて検討してください。
14. EY OTセキュリティサービス(EY Japan)

EY OTセキュリティサービスは、監査・アドバイザリーを手がけるEY Japan(担当はEY新日本有限責任監査法人 Technology Risk事業部)が、制御システム(OT)のセキュリティリスクを評価・監査するサービスです。防御製品の導入や監視運用ではなく、リスクの評価とガバナンスの高度化という上流の支援に特化しています。
特徴は、自社でOTセキュリティの製品やサービスを販売しない立場から、特定ベンダーに寄らない視点でリスクを評価する点です。リスクアセスメントは資産ベースと被害発生シナリオベースの両面でリスクを識別・評価し、監査はIPA等がガイダンスとして示すリスクシナリオベースで進めます。
提供メニューは、OTセキュリティリスクアセスメント、サプライチェーン全体を対象とするOTサプライチェーンセキュリティリスクアセスメント、評価結果をもとにガバナンスとマネジメントの強化を助言するOTセキュリティガバナンス高度化支援の3つです。料金は公開されておらず、個別の問い合わせが前提となります。
監視・運用(MDR/SOC)型
導入後のアラートを専門チームが監視・分析し、対応まで担うサービスを紹介します。
15. SCSKセキュリティ OTセキュリティサービス(SCSKセキュリティ株式会社)

OTセキュリティ製品が検知したアラートを24時間365日リアルタイムで監視・分析し、環境内の資産情報と脆弱性情報を可視化するサービスです。提供元はSCSKセキュリティ株式会社で、すでに導入済み、またはこれから導入するOT向け製品に、監視・運用を足す位置づけになります。
検知したインシデントはアラートとして通知され、通知内容に関する問い合わせにも対応します。月次レポートでは資産・脆弱性の統計情報をカスタマーポータルで確認でき、オプションの報告会では訪問またはWeb会議で説明を受けられます。
対応するOT-IDS/可視化製品は、Nozomi Guardian・Cisco Cyber Vision・Palo Alto NetworksのIoT Security Subscriptionです。
初期導入作業や月次レポートの提供は平日9時〜17時30分の対応です。料金は公式に公開されていないため、導入時は個別の問い合わせが必要になります。
16. OTセキュリティモニタリング(NTTアドバンステクノロジ株式会社)

NTTコミュニケーションズが提供するOT/IoT監視基盤「OsecT(オーセクト)」をベースに、NTTアドバンステクノロジ株式会社がその運用を支援するマネージド型サービスです。工場やビルで稼働する制御システム(OT)・IoT機器のネットワークを対象とします。
導入方式は、既存スイッチのミラーポートにセンサー端末を接続して通信をパッシブに取得するもので、機器へのエージェント導入や構成変更を伴わず、稼働を止めずに導入できる点を公式が前面に出しています。接続機器や通信はSaaSポータルから可視化し、サイバー脅威・脆弱性・異常通信を検知します。
検知した結果はアナリストが分析し、週次レポートまで含めて提供する運用代行型です。初期設計から運用まで専門エンジニアが対応します。料金は公式ページに明示がないため、問い合わせが必要です。
17. OTセキュリティ Type N(ソフトバンク株式会社)

ソフトバンク株式会社が、OT可視化・検知製品のNozomi Networks Guardianを軸に、導入から運用監視までをワンストップで提供するソリューションです。工場やスマートファクトリーを目指す企業のOT環境を対象としています。
導入前のリスクアセスメントやPoC(有償)、導入設計といったコンサルティングから、Nozomi Guardianの導入・保守、24時間365日の運用監視までを一社で引き受けます。資産・通信の可視化はスイッチのミラーポートを使うパッシブモニタリングで行うため、稼働中の制御システムへの影響を抑えて導入できます。
監視(MSS)で検知したインシデントは解析のうえ、重要度に応じたアラート通知と推奨対処方法の提案で早期対応を支援します。料金は公開されていないため、問い合わせが必要です。
診断から監視までワンストップで担う提供元
現状把握から防御の導入、監視・運用までを一社で引き受ける提供元を取り上げます。これは独立した5つ目のタイプではなく、前述の4タイプを横断して一社でまとめて提供する形態です。
18. OTセキュリティ(エヌ・ティ・ティ・セキュリティ・ジャパン株式会社)

NTTグループのサイバーセキュリティ専業会社であるエヌ・ティ・ティ・セキュリティ・ジャパンが、工場・制御システム向けに展開するOTセキュリティのメニュー群です。現状把握の診断から監視運用までを、自社のサービスとして段階的に用意しています。
入口には、経済産業省のガイドラインに基づく32問に答えるOTセキュリティ簡易診断があり、Webから無料でセキュリティレベルをA〜Dの4段階で把握できます。そのうえで、工場内の通信データ(PCAP)を分析する資産台帳作成や、約1.5カ月で課題を評価するアセスメントQuickへと進められます。
対策フェーズではネットワークのセグメント分割やOT-IDSの導入支援を担い、導入後はOT-IDSの運用支援や、IT/OTを横断して監視するMDRまで引き受けます。診断から監視運用までを一社に任せたい企業に向いています。
19. 三菱電機 OTセキュリティソリューション(三菱電機株式会社)

制御機器(FA)のメーカーである三菱電機のOTセキュリティソリューションは、「アセスメント(課題抽出・対策立案)→対策導入→運用」の3フェーズをワンストップで引き受けます。制御機器で培ったOTの知見に、金融分野で培ったITセキュリティの経験を組み合わせる点を強みに掲げています。
対策導入では、通信の可視化・異常検知、保守業者などのアクセスを監視・制御するゼロトラストリモートアクセス、ネットワークのマイクロセグメント化やエンドポイント防御まで扱います。運用フェーズでは24時間365日のSOC監視を用意しています。
三菱電機以外のOT機器にも対応すると明記しており、複数メーカーが混在する制御環境でも相談しやすい提供元です。工場の可用性と安全性を優先しながら、設計から監視運用までを一社に任せたい企業に適しています。
20. NEC IoT/OTセキュリティ(日本電気株式会社)

日本電気株式会社(NEC)は、工場や社会インフラの制御システム(OT)・IoT機器のセキュリティを、複数の製品・サービスを束ねて提供しています。確認できる範囲では、ネットワーク監視・機器側の保護・診断コンサルを組み合わせる構成です。
ネットワーク監視は、Nozomi Networks Guardianを採用したマネージドサービス「ActSecure χ」が担います。機器側では、許可リスト型でアクセス制御・異常検知を行う「IoT Device Security Manager」を用意しています。
診断面では、IEC 62443-2-1(CSMS)に基づく工場セキュリティのリスクアセスメントやポリシー策定を支援します。監視・機器保護・診断を大手SIerとして一社で束ねられる点が、ワンストップを求める企業の選択肢になります。
21. OT/IoTセキュリティ(アイディルートコンサルティング株式会社)

アイディルートコンサルティングのOT/IoTセキュリティは、資産調査から脆弱性評価、ポリシー策定、技術実装、CSIRT(インシデント対応チーム)/SOC構築・OTSOC運用までを一貫して支援するコンサルティング型のサービスです。対応規格としてIEC 62443・NIST・CPSFを掲げています。
アセスメントは3段階で用意され、約1時間の質問シートによる簡易評価、標準約2カ月でレポートまで出すハイレベル評価、IEC 62443ベースの詳細評価から必要な深さを選べます。可視化や検知にはNozomi Networks Guardianなどを用います。
診断で見えた課題に対し、Nozomi Networksの導入からOTSOCでの運用までつなげられるため、現状把握から監視運用までを一社に任せたい製造業などに向いています。チェンジホールディングスのグループ会社として、会社単位でISO/IEC 27001を取得しています。
自社に合うOTセキュリティ対策サービスの選び方
ここからは、候補を数社に絞り込むための選び方を整理します。対応領域・導入方式・対象環境・運用体制という観点から、自社の状況に当てはめて確認してください。
どの対策段階(対応領域)に手を打つべきか
最初に、自社が対策のどの段階にいるかを見極めます。工場のOT資産や通信の現状すら把握できていない場合は、診断・アセスメント型でリスクを可視化するのが出発点です。課題が見えているなら防御・対策の設計導入型、すでに検知の仕組みがあり運用に手が回らないなら監視・運用型、というように、必要な対応領域からサービスの種類を逆引きします。
段階をまたいで複数を進めたい場合は、診断から監視までを担うワンストップの提供元を軸に検討すると、窓口が一本化できます。
OTネットワークを止めずに守る検知・防御方式の違い(NDR・エージェントレス型とエンドポイント型・製品型)
OT環境では「止めずに入れられるか」が選定の分かれ目になります。情報系で主流のEDRは制御機器にソフト(エージェント)を常駐させる必要があり、サポート切れのOSや専用プロトコルで動く制御機器には導入できないことが多いためです。

そこで有効なのが、通信をミラーリング(複製)して解析するネットワーク型の検知方式です。機器にソフトを入れないエージェントレス方式のため、制御システム本体に手を加えず、生産ラインへの影響を抑えて導入できます。
代表例が、ネットワークを流れる全通信を保存して解析するフルパケットキャプチャ型の製品です。工場内スイッチのミラーポートにセンサーを接続するだけで導入できる国産のOT-IDS(制御システム向け不正侵入検知)も、同じネットワーク型にあたります。いずれも通信を監視するだけで遮断は行わないパッシブ型のため、誤って正常な通信を止めてしまうリスクが小さいのが利点です。
一方、機器側で守るエンドポイント型や、ネットワーク機器(ファイアウォールなど)に検知・防御機能を組み込む製品型は、より踏み込んだ防御ができる反面、対象機器や導入時の影響を事前に確認する必要があります。自社の制御環境で「エージェントを入れられるか」「通信をミラーリングできるポートがあるか」を起点に、止めずに入れられる方式から候補を絞るのが現実的です。
自社の制御システム環境(プロトコル・機器)に対応しているか
OTで使われる通信プロトコルやPLC(制御装置)などの機器は、業種やメーカーによって多岐にわたります。検知・可視化製品が自社で使っている産業用プロトコルに対応していなければ、資産や通信を正しく把握できません。対応プロトコルの種類や数、自社で導入している制御機器メーカーへの対応実績を、資料や問い合わせで確認してください。
グローバルで実績のある製品ほど対応範囲は広い傾向がありますが、国内の導入支援・保守体制があるかもあわせて見ておくと安心です。
監視・運用まで任せられる体制が社内にあるか
検知の仕組みを入れても、アラートを読み解いて対応できる人材が社内にいなければ、運用は続きません。OTセキュリティに詳しい人材は不足しがちで、情報システム部門だけで24時間の監視を回すのは負担が大きいのが実情です。社内に運用人材を確保しにくい場合は、監視・運用(MDR/SOC)型や、監視まで含むワンストップの提供元を選び、アラートの監視・分析・対応を外部に委ねる前提で設計します。
逆に社内に運用体制がある場合は、可視化・検知の製品型を自前で運用する選択肢も現実的です。
OTセキュリティ対策サービスの費用の目安と提供形態
ここからは、OTセキュリティ対策サービスの費用の目安と提供形態を整理します。OTの対策費用は、対象環境の規模や導入する対応領域によって幅が大きく、個別見積もりを前提とするサービスが多い点を押さえておく必要があります。
提供形態はおおまかに3つに分かれます。可視化・検知の製品を導入する形態(クラウド型の月額課金や、オンプレミス型の買い切り+保守)、診断・コンサルティングなどのサービスを個別に依頼する形態、そして監視・運用までを継続的に任せるマネージドサービス型です。製品の導入費用に加え、診断や運用代行の費用が別途かかる構成が一般的です。
具体的な金額を公開している例は多くありませんが、提供形態の異なる2つの実額の目安が参考になります。まず可視化・検知の製品型(初期費用+月額)では、初期27万5000円・月額6万6000円〜(税込・2022年時点)といった公表例があります。
次に診断込みパッケージ型(従業員100〜500名向け)では、セキュリティ診断・簡易コンサルティングとOTセキュリティ機器の選定・導入・設置を含めて88万8000円〜という公表例があります(2023年8月発表時点の価格。税区分は公表資料に記載なし。各サービスの詳細は比較表を参照)。
このように診断から機器導入までをパッケージ化したサービスでは金額の起点が見えやすい一方、監視・運用まで含める場合や、大規模な工場を対象とする場合は、見積もりが前提になるのが通常です。実際の費用は、対象とする工場の数・機器の規模・依頼する対応領域によって変わるため、複数社から資料を取り寄せて比較するのが確実です。
一括ダウンロードする
OT対策で参照される公的ガイドライン・国際標準への対応(経産省工場ガイドライン・IEC 62443・CRA)
ここからは、OT対策の物差しとして複数の提供元が参照する公的ガイドライン・国際標準・規制動向を整理します。それぞれがどの対策フェーズの判断材料になるかを紐づけておくと、社内で対策の必要性を説明する際の根拠として使えます。
経済産業省「工場システムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン」
国内のOT対策で最も参照されるのが、経済産業省が公表した「工場システムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン」(Ver 1.0、2022年公表)です。工場のセキュリティ対策を、内外の要件と保護対象の整理、対策の立案、対策の実行と体制の見直しという段階で進める枠組みを示しています。
各業界・業種が自ら工場の対策を立案・実行することを目的としており、診断・アセスメント型で現状を整理し、防御・対策の設計導入型で対策を立て、監視・運用型で実行・改善につなげる、という本記事の4タイプと対応づけて読めます。
国際標準 IEC 62443
IEC 62443は、産業用制御システムのセキュリティに関する国際標準のシリーズです。多くのOT対策サービスが「IEC 62443準拠」をうたいますが、どのパートに沿うかで意味が変わるため、代表的なパートを押さえておくと読み解きやすくなります。
資産をリスクに応じて区切るゾーンと、その間の通信路(コンジット)の考え方は62443-3-2で、セキュリティレベルを含むシステムの技術要件は62443-3-3で、製品を安全に開発するためのプロセスは62443-4-1で、それぞれ定められています。
この対応関係から、62443-3-2はリスクアセスメントや防御の設計(診断・アセスメント型/防御・対策の設計導入型)の、62443-3-3は防御の要件定義(防御・対策の設計導入型)の、62443-4-1は検知・可視化製品の調達やサプライヤ選定(OT可視化・検知の製品型)の判断材料になります。
規制動向:EUサイバーレジリエンス法(CRA)
規制動向として押さえておきたいのが、前述のEUサイバーレジリエンス法(Cyber Resilience Act。Regulation (EU) 2024/2847)です。デジタル要素を持つ製品にセキュリティ要件を課す市場規制で、2024年12月10日に発効し、2027年12月11日に全面適用されます。
EU市場に出荷する製品が対象となるため、海外に製品を供給する製造業・製品ベンダーでは、調達する検知・可視化製品のセキュア開発(IEC 62443-4-1に通じる考え方)や、自社製品のセキュリティ対応を進める根拠になります。
まとめ
本記事では、工場・制御システム(OT)を守るセキュリティ対策サービスを、リスク診断・アセスメント型/防御・対策の設計導入型/監視・運用(MDR/SOC)型/OT可視化・検知の製品型の4タイプに整理し、比較・選び方を解説しました。
選定で最も大切なのは、自社が対策のどの段階にいるかを見極め、必要な対応領域からサービスの種類を逆引きすることです。その上で、工場を止めずに入れられる方式か、自社の制御環境に対応しているか、監視・運用まで社内で回せるかを確認すると、候補を絞り込めます。
現状把握から始めたいなら診断・アセスメント型、EDRを入れられない制御機器環境を止めずに可視化したいならネットワーク型の検知製品、監視・対応まで任せたいなら監視・運用型やワンストップの提供元、といった形で、自社の状況に合うタイプから検討を進めてください。
MCB FinTechカタログでは、OTセキュリティ対策サービスの詳細な資料を無料で請求できます。ぜひ各社の資料をご覧になって、比較検討を進めてください。
一括ダウンロードする
よくある質問(FAQ)
Q. OTセキュリティ対策サービスとは何ですか?
A. OTセキュリティ対策サービスとは、工場やプラントの生産設備・制御システム(OT:Operational Technology)を、サイバー攻撃や不正アクセスから守るための専門サービスの総称です。
データの機密性を最優先するITセキュリティと異なり、OTは生産ラインの可用性・安全性を最優先します。稼働を止められない、サポート切れのレガシーOSや専用プロトコルで動く機器が多い、といったOT特有の制約を前提に設計されている点が特徴です。リスクを可視化する診断から、防御の設計・導入、導入後の監視・運用、制御ネットワークを検知する製品まで、対応領域の異なる複数の種類があります。
Q. OTセキュリティ対策は何から始めればよいですか?
A. OTセキュリティ対策は、まず工場内のOT資産・通信・脆弱性を洗い出す「現状把握(リスク診断・アセスメント)」から始めるのが基本です。
自社の資産や通信を把握できていない段階で防御製品を導入しても、どこを優先して守るべきか判断できません。無料の簡易診断や資産台帳の作成から着手できるサービスもあり、低リスクに現状のセキュリティレベルを確認したうえで、必要な対策へ段階的に進められます。
Q. OTセキュリティ対策サービスの導入にはどのくらいの期間がかかりますか?
A. 導入期間は対応領域と規模によって幅がありますが、現状把握の診断・アセスメントは数週間〜1.5カ月程度、防御対策の導入は規模に応じて数カ月単位が目安です。
簡易診断であればWeb上で短時間に完了するものもあり、本格的なアセスメントは1〜2カ月程度かけてレポートまで出すのが一般的です。対策の設計・導入や監視・運用の立ち上げは、対象とする工場の数や機器の規模によってさらに変わるため、候補サービスに個別に確認してください。
Q. OTセキュリティ対策サービスの費用相場はどのくらいですか?
A. OTセキュリティ対策サービスの費用は、対象環境の規模や導入する対応領域によって幅が大きく、個別見積もりを前提とするサービスが多いのが実情です。
可視化・検知製品はクラウド型の月額課金やオンプレミス型の買い切り+保守、診断・コンサルティングは個別依頼、監視・運用は継続課金のマネージドサービス型、と提供形態で費用の形が変わります。
金額を公開している例では、診断から機器導入までをパッケージ化した三井情報「Fortinet OT スターターパック 70」(従業員100〜500名向け)が888,000円からと案内されています(2023年8月発表時点の価格)。正確な費用は複数社から資料を取り寄せて比較するのが確実です。
Q. OTセキュリティ対策サービスは工場の稼働を止めずに導入できますか?
A. OTセキュリティ対策サービスは、通信をミラーリングして解析するネットワーク型(パッシブ)の方式を選べば、生産ラインを止めずに導入できるものが多くあります。
制御機器にソフト(エージェント)を常駐させず、スイッチのミラーポートから通信のコピーを取得して可視化・検知する方式なら、制御システム本体に手を加えずに済みます。通信を監視するだけで遮断しないパッシブ型は、正常な通信を誤って止めてしまうリスクも小さいのが利点です。自社環境にミラーリングできるポートがあるかを起点に確認してください。
Q. EDRを導入できない制御機器でもOTセキュリティ対策はできますか?
A. サポート切れのOSや専用プロトコルでEDRを導入できない制御機器でも、ネットワーク型の検知方式(NDR/OT-IDS)を使えばOTセキュリティ対策は可能です。
情報系で主流のEDRは制御機器にエージェントを常駐させる必要があり、レガシー機器には導入できないことが多くあります。これに対し、ネットワークを流れる通信を解析して異常を検知するNDRや、制御システム向けの不正侵入検知(OT-IDS)は、機器にソフトを入れずネットワーク側から脅威を捉えられるため、EDRを入れられない環境でも可視化・検知の基盤を確保できます。
Q. 社内にOTセキュリティの専門人材がいなくても運用できますか?
A. 社内に専門人材がいなくても、監視・運用(MDR/SOC)型や、監視まで含むワンストップの提供元を選べば、アラートの監視・分析・対応を外部に委ねて運用できます。
検知の仕組みを導入しても、アラートを読み解いて対応できる人材がいなければ運用は続きません。OTに詳しい人材は不足しがちで、情報システム部門だけで24時間の監視を回す負担は大きいのが実情です。監視・対応を代行するサービスを前提に設計すれば、社内体制が薄くても運用を継続できます。逆に社内に運用体制があるなら、可視化・検知の製品型を自前で運用する選択肢も現実的です。
Q. OTセキュリティ対策サービスは経済産業省ガイドラインやIEC 62443への対応を支援してくれますか?
A. 多くのOTセキュリティ対策サービスが、経済産業省「工場システムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン」や国際標準IEC 62443を物差しに、診断やポリシー策定を支援しています。
診断・アセスメント型ではこれらの基準に沿って現状を評価し、対策の優先順位づけやガイドライン策定支援まで行う提供元があります。IEC 62443はパートごとに扱う範囲が異なるため、リスク評価(62443-3-2)・技術要件(62443-3-3)・製品開発プロセス(62443-4-1)のどれに対応するかを確認すると、自社に必要な支援を見極めやすくなります。
出典・参考資料(2件)
OTセキュリティ対策サービスの料金・資料を一括チェック
MCB FinTechカタログでは、工場・制御システム(OT)を守るセキュリティ対策サービスの最新資料を無料で一括請求できます。対応領域や導入方式、対象環境を見比べて、自社に合う候補を効率的に絞り込めます。
一括ダウンロードする
MCB FinTechカタログに掲載しませんか?
MCB FinTechカタログでは、掲載企業様を募集しています。マネックスグループの金融実務ノウハウを活かした独自の評価軸と検索設計により、導入検討者が最適なサービスを効率的に発見できる法人向け比較プラットフォームです。掲載後は管理画面から料金表や導入事例を随時更新でき、常に最新の情報を訴求可能。まずは下記フォームより、お気軽にお問い合わせください。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















