金融機関を狙うサイバー攻撃は、ランサムウェアによる業務停止や委託先経由の侵入など年々巧妙さを増しています。一方で、監視や検知後の対応を担う人員を自社だけで24時間維持するのは容易ではなく、外部のセキュリティ監視サービスに運用を任せる金融機関が増えています。
検討のきっかけは、金融庁の監督指針や「金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン」への対応であることが少なくありません。求められる監視・検知・対応の水準を満たしつつ、自社の規模と守るべき対象に合うサービスを選ぶには、どの観点で比較すればよいのでしょうか。
本記事では、金融機関向けのセキュリティ監視・運用サービスを、守る対象(ネットワーク・端末・アクセス)と担い方(自社運用かマネージドか)で整理します。金融庁ガイドラインや監督指針が求める監視・検知・対応や委託先管理を選定の視点に据えてまとめました。
比較表では主要な9サービスを守る対象と運用の担い方で横断的に比べ、評価・診断など比較表にない主要サービスも本文で位置づけを示します。金融庁ガイドラインや監督指針が求める要件を選定の視点に据えて整理しました。
自社の監視体制を見直す検討材料としてご活用ください。
本記事は、機械警備やATMの防犯といった物理セキュリティではなく、サイバー攻撃の監視・検知・対応を担うサービスを扱います。
また、自社の規模や守りたい対象に合うサービスを最短で見つけられるよう、「30秒で終わる選定診断ツール」をご用意しています。あわせてご活用ください。
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本記事は金融機関向けに絞って整理しています。業種を問わず、守る対象(ネットワーク・端末・アクセス)別に社内セキュリティソリューション全般を見比べたい場合は、各タイプの特徴と代表サービス・選び方をまとめた以下の記事が出発点になります。
社内セキュリティソリューション比較|守る対象別のタイプ・代表サービスと選び方
社内のセキュリティを強化したいものの、端末の保護から不正アクセス対策、情報漏えいの防止まで課題が広く、何から手をつければよいか判断がつかないという声は少なくありません。テレワークやクラウド利用が定着し、社外に持ち出される端末やIDが増えたこ…
目次
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なぜ金融機関にセキュリティ監視・運用サービスが必要か
ここでは、金融機関が外部のセキュリティ監視サービスを検討する背景を整理します。動機は大きく3つに分かれます。
1つ目は規制対応です。金融庁は監督指針とサイバーセキュリティガイドラインで、監視・検知・インシデント対応の態勢整備を求めています。これらは銀行・保険・証券・資金移動業者など幅広い業態に及びます。
2つ目は人員の制約です。攻撃の兆候を見逃さないための監視は常時の運用を伴いますが、専任のセキュリティ要員を自社で抱えきれない金融機関は少なくありません。監視や検知後の対応を外部に委ねる動機はここにあります。
3つ目はインシデント対応の確実さです。攻撃を受けた際の封じ込め・根絶・復旧、そして当局への報告までを滞りなく進めるには、平時からの備えと専門知見が欠かせません。これらを単独で完結させる難しさが、運用まで任せられるサービスへの関心につながっています。
金融機関特有のセキュリティ監視要件
ここからは、サービス選定の土台となる金融業界特有の要件を、金融庁が示す内容をもとに確認します。後半の比較軸は、ここで整理する要件に対応しています。

まず前提として、金融庁は「金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン」(令和6年10月策定、令和7年7月一部改正)を公表しています。このガイドラインは、監督指針にサイバーセキュリティ管理の定めがある幅広い金融機関を適用対象としています。
対象には、主要行等、中小・地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者等、資金移動業者、暗号資産交換業者などが含まれます。
出典・参考資料(1件)
- 出典:金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン(1.4 適用対象)|金融庁(リンク)
監督指針・ガイドラインが求める監視・検知・対応態勢
ガイドラインは、サイバー攻撃の端緒を検知するための監視を基本的な対応事項として求めています。該当箇所は次のとおりです。
サイバー攻撃の端緒を検知するために、以下について継続的な監視を実施すること。
出典:金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン 2.4.1 監視|金融庁
いわゆる24時間365日の常時監視については、「顧客サービスの提供内容を踏まえた常時監視(24時間365日)を行うこと」として、対応が望ましい事項に位置づけられています。全ての金融機関に一律で義務づけられた基準ではなく、提供するサービスの性質に応じて望ましいとされる水準である点を押さえておくと、過不足のない構成を選びやすくなります。
監視体制は外部のリソースを活用して整えることも認められています。ガイドラインは、経営陣が整備すべき体制の例としてSOC(Security Operation Center)を挙げています。
SOCは、ネットワークやサーバー等を監視し攻撃の検出・分析を行う組織です。ガイドラインはそこに「外部のリソースの活用を含む」と明記しており、監視や運用をマネージドサービスとして外部に委ねる選び方は、この考え方に沿うものです。
インシデントが発生した際は、法令等に従って規制当局へ速やかに報告することが求められます。報告の具体的な様式と時限は監督指針が定めており、主要行等向けの総合的な監督指針は次のように規定しています。
コンピュータシステムの障害やサイバーセキュリティ事案の発生を認識次第、直ちに、その事実を当局宛てに報告を求めるとともに、「障害等発生報告書」(様式・参考資料編 様式4-46)にて当局宛て報告を求めるものとする。
出典:主要行等向けの総合的な監督指針 Ⅲ-3-7(新旧対照表)|金融庁
この報告義務は主要行等に限らず、前述の各業態の監督指針・事務ガイドラインにも同趣旨で置かれています。検知後の封じ込めや根絶では、ガイドラインも必要に応じた外部専門家の活用を認めており、検知から報告・対応までを外部と連携して進める前提が規範の側にも示されています。
出典・参考資料(2件)
委託先管理(サードパーティリスク管理)とFISC安全対策基準
監視や運用を外部に任せる場合でも、委託先の管理責任は金融機関に残ります。ガイドラインは外部委託先の管理を「サードパーティリスク管理」として規定しています。
委託先が遵守すべきセキュリティ要件を明確化したうえで、契約やSLA(サービスレベルアグリーメント、提供される水準の取り決め)に役割分担・監査権限・再委託手続・インシデント発生時の対応や報告などを明記するよう求めています。さらに、契約の履行状況をリスクの重大性に応じて継続的にモニタリングすることも挙げています。
サービスを選ぶ際は、自社が委託先管理の責任を果たせる形で情報提供や報告を受けられるかが実務上の着眼点になります。監視を外部に委ねても「任せきり」にはできない、というのが規範の立場です。
出典・参考資料(1件)
- 出典:金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン(2.6 サードパーティリスク管理)|金融庁(リンク)
実務の現場では、FISC(金融情報システムセンター)の「金融機関等コンピュータシステムの安全対策基準・解説書」も参照されます。これは金融機関の情報システムの開発・導入・運用における安全対策を基準として示したもので、金融庁ガイドラインも参考資料として位置づけています。具体的な対策を検討する際の実務基準として押さえておくとよいでしょう。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:金融庁・FISC意見交換会(FISC安全対策基準の位置づけ)|金融庁(リンク)
これらの要件を自社でどう満たすかは、守る対象や運用の担い方によって選ぶサービスが変わります。次の章で、サービスのタイプと比較の着眼点を整理します。
金融機関向けセキュリティ監視サービスのタイプと選び方
ここからは、金融機関向けのセキュリティ監視サービスを「何を守り、どこまで外部に任せたいか」で4つのタイプに分けて解説します。自社がどのタイプを必要としているかを見極めることが、候補を絞る第一歩になります。

ネットワークを監視して脅威を検知・対応するタイプ(NDR/マネージド検知)
NDR(Network Detection and Response、ネットワーク上の通信のふるまいを監視して異常や侵害を検知する仕組み)を中心としたタイプです。社内ネットワークを通る通信を解析し、既知の攻撃パターンだけでなく、ふだんと異なる挙動から未知の脅威の兆候を捉えます。
検知後の調査・対応まで運用チームが担うマネージドサービス(MDR、Managed Detection and Response)として提供される場合もあり、専任要員を抱えにくい金融機関でも常時の監視体制を整えやすい点が特徴です。
端末を監視して脅威を検知・対応するタイプ(EDR/XDR)
EDR(Endpoint Detection and Response、PCやサーバーなどの端末を監視して不審な挙動を検知・対応する仕組み)を中核とするタイプです。マルウェア感染や内部不正の兆候を端末単位で捉え、隔離や調査を行います。
端末に加えてメールやクラウドなど複数の領域の情報を統合して分析する製品はXDR(Extended Detection and Response)と呼ばれます。リモートワークや拠点分散が進んだ環境で、端末を起点とした侵入への備えを強めたい場合に適しています。
不正アクセスを防ぐゼロトラスト・ID/アクセス制御タイプ
ゼロトラスト(社内外を問わず全てのアクセスを信頼せず検証する考え方)にもとづき、SSO(シングルサインオン)や多要素認証、アクセス制限で不正なログインや権限の悪用を防ぐタイプです。監視・検知とは守り方の軸が異なり、侵入の入口そのものを絞ることで被害の発生を抑えます。委託先やリモート、クラウド利用が広がるなかでアクセスの統制を強めたい金融機関に向いています。
ガイドライン到達度を評価・診断するタイプ
自社の対策が金融庁ガイドラインやFISC安全対策基準の求める水準にどこまで達しているかを評価・診断し、課題を可視化するタイプです。
ガイドラインは、リスクの大きさやシステムの重要度を考慮した脆弱性診断・ペネトレーションテスト(擬似的な攻撃で防御の弱点を検証するテスト)の定期実施を基本的な対応事項としています。さらに、脅威ベースのペネトレーションテスト(TLPT)を対応が望ましい事項として挙げています。
この領域はCTC(伊藤忠テクノソリューションズ)・EY・Penteraなどが担っており、本記事が扱う監視・検知とは領域が異なります。監視・検知のサービスを導入する前に現状を測りたい場合の選択肢として、比較の文脈で押さえておくとよいでしょう。
出典・参考資料(1件)
- 出典:金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン(2.2.4 脆弱性診断及びペネトレーションテスト)|金融庁(リンク)
評価・診断そのものを依頼先から比べたい場合は、担当者への聞き取りによる組織評価から技術的な脆弱性診断まで、調査の進め方のタイプ別に費用相場・実施期間・成果物を並べた以下の記事が、現状把握の入口を選ぶ助けになります。
金融機関が比較すべきポイント
タイプの見当がついたら、次の観点で比較すると、自社に合う候補を絞りやすくなります。これらは後半の比較表のカラムに対応しています。
- 守る対象:ネットワーク・端末・アクセスのどこを主に守るか。自社が強化したい領域と合うかを確認します。
- 運用の担い方:自社で運用するか、監視・検知後の対応までマネージドで任せるか。常時の監視(24時間365日)を望むなら、その体制を外部で確保できるかを見ます。
- ガイドライン・FISC対応の観点:委託先管理に必要な情報提供やインシデント発生時の報告・連携に対応できるか。
- 監視範囲:オンプレミス・クラウド・端末・IDなど、カバーする範囲が自社環境と一致するか。
- 料金・提供形態:規模に見合った構成か。導入形態(クラウド型・アプライアンス型など)と費用の考え方が自社の計画に合うか。
「監視・運用をまるごと任せる(SOC/マネージド)」は特定のタイプというより、上の各タイプに共通する運用の担い方です。比較表では「運用形態」の列で、自社運用かマネージドかを横断的に確認できるようにしています。
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自社に合うセキュリティ監視サービスがわかる選定診断
守りたい対象や運用の担い方など、いくつかの質問に答えると、自社の条件に合うサービスのタイプと候補を絞り込めます。
金融機関向けセキュリティ監視サービスを比較
ここまで整理したタイプと比較ポイントをもとに、主要なサービスを横断で比較します。守る対象・運用形態・監視範囲・委託先管理の参考となるセキュリティ認証・料金の考え方を一覧で確認できます。表のサービス名からは、各サービスの詳しい紹介に移動できます。
| サービス名 | Network Blackbox | Darktrace | Vectra AI | Trend Vision One | CrowdStrike Falcon | SentinelOne | CloudGate UNO | Soliton OneGate | IIJ IDサービス |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 守る対象 | ネットワーク | ネットワーク | ネットワーク | 端末(PC・サーバー) | 端末(PC・サーバー) | 端末(PC・サーバー) | アクセス(ID・認証) | アクセス(ID・認証) | アクセス(ID・認証) |
| 運用形態 | 自社運用 | 自社運用/MDR 24時間365日(グローバルSOC) | 自社運用/MDR グローバルのVectra MXDRは24時間365日。国内はマクニカが監視を代行 | 自社運用/MDR 24時間365日 | 自社運用/MDR 24時間365日(Falcon Complete) | 自社運用/MDR マネージド検知・対応を提供 | 自社運用(クラウド型IDaaS) | 自社運用(クラウド型IDaaS) 有償の運用支援サービスあり | 自社運用(クラウド型IDaaS) |
| 監視・対応範囲 | 社内ネットワーク全体(EDRを入れにくい機器も対象) | ネットワーク/メール/クラウド/OT/ID/エンドポイント | オンプレ/マルチクラウド/ID/Microsoft 365/IoT・OT | エンドポイント/サーバー/メール/ネットワーク/クラウド/ID | エンドポイント中心(ID・クラウドへ拡張可) | エンドポイント起点(クラウド・ID・ネットワークへ拡張) | クラウドサービスのアクセス(SSO・多要素認証・アクセス制限) | クラウド/社内システム/VPN/Wi-Fi | クラウドサービス/AD連携/統合Windows認証 |
| 主なセキュリティ認証(委託先管理の参考) | 要お問い合わせ | ISO/IEC 27001・27018・42001/Cyber Essentials | SOC 2 Type 2 | ISO/IEC 27001・27017/SOC 2 Type II/ISMAP(トレンドマイクロのSaaS・クラウド) | ISO/IEC 27001・42001/SOC 2 Type II/FedRAMP High | 要お問い合わせ | ISMS(ISO/IEC 27001)/Pマーク/FIDO2認定 | ISO/IEC 27001・27017ベース/ISMAP登録 | ISO/IEC 27017/ISMAP登録 |
| 料金・提供形態 | 要お問い合わせ ミラーリング方式で導入 | 要お問い合わせ 監視デバイス数に応じた個別見積もり | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ クレジット型ライセンス(SaaS・30日無料体験) | 要お問い合わせ 国内は販売代理店の個別見積もり(SaaS) | 要お問い合わせ エンドポイント単位の年額(代理店見積もり) | 月額400〜600円/ユーザー(税抜) クラウド型(30日無料トライアル) | 月額150〜600円/ユーザー クラウド型(30日無料トライアル) | 初期0円+月額120〜240円/ID(税抜) クラウド型 |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | 公式資料を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る |
また、各サービスが金融庁ガイドラインやFISC安全対策基準の求める水準を満たせるかは製品ごとに異なり、資料請求や問い合わせで個別に確認する必要があります。表のセキュリティ認証の列は、委託先管理の判断材料として示したもので、金融機関への導入実績を保証するものではありません。
料金・提供形態・監視範囲の考え方
セキュリティ監視サービスの料金は、守る対象や監視範囲、運用をどこまで任せるかによって幅があります。ここでは、規模に見合った構成を選ぶための考え方を整理します。
端末を監視するEDR/XDRは、守る端末の台数(ライセンス数)に応じた課金が一般的です。導入する端末が多いほど費用は増えますが、守る範囲が明確で見積もりやすい点が特徴です。ネットワークを監視するNDRは、監視する拠点や通信量、アプライアンス(専用機器)の有無によって構成が変わります。
監視・検知後の対応までマネージドで任せる場合は、運用サービスの費用が上乗せされます。自社に専任要員を置く人件費と比べてどちらが現実的かという視点で考えると、過不足のない構成を選びやすくなります。多くのサービスは個別見積もりとなるため、守りたい対象と運用の範囲を決めたうえで複数社の資料を取り寄せ、同じ条件で比べることをおすすめします。
サービス個別紹介
ここからは、タイプ別に主要なサービスを個別に紹介します。それぞれの特徴・監視範囲・運用の担い方を確認し、自社の要件と照らし合わせてください。
ネットワークを監視して脅威を検知・対応するタイプ(NDR/マネージド検知)
1. Network Blackbox(株式会社クワッドマイナージャパン)

ネットワークを流れる全パケットを取り込み、脅威の検知から事後の追跡調査までを一製品で担うNDR(ネットワーク検知・対応)製品です。韓国のQuad Miners社が開発し、日本では日本法人の株式会社クワッドマイナージャパンが提供しています。
検知は、既知の攻撃を捉えるシグネチャベースに加え、ユーザーの行為を記録して異常を見つける検出(BAD)と、送受信データを復元して調べるコンテンツ分析を併用します。収集・検知・ハンティング・フォレンジック・対応の5つの機能を備え、MITRE ATT&CK(攻撃手口を体系化した知識ベース)に基づく脅威ハンティングにも対応します。
エージェント不要のミラーリング方式で導入するため、EDRを入れにくい機器を含めてネットワーク全体を監視対象にできます。保存したパケットは後から検索でき、検知後に通信の宛先や時系列、やり取りされたファイルを遡って調べられます。EDRやSIEM(ログを集約して脅威を分析する仕組み)とはSyslog・REST APIで連携し、料金は要お問い合わせです。
EDRを入れにくい機器を含めてネットワーク全体を監視し、保存パケットで検知後の経緯を遡れるのが本製品の特徴です。継続的な監視が基本的な対応事項とされ、検知後は事実を当局へ報告する必要がある金融機関で、この監視と事実確認に対応します。ただし監視は自社運用が前提で、運用まで代行するマネージド監視は製品標準としては確認できていません。
2. Darktrace(Darktrace Limited)

英国で2013年に設立されたDarktrace社が開発する、自己学習型AI(Self-Learning AI)を中核としたセキュリティプラットフォームです。国内はダークトレース・ジャパン株式会社が展開しています。
組織ごとの「正常な挙動」をAIが学習し、その逸脱から既知・未知の脅威を検知する仕組みで、シグネチャに依存しません。中核のDarktrace/NETWORKがネットワークのふるまい分析(NDR)を担い、メール・クラウド・OT(工場や設備の制御システム)・エンドポイントまでを単一プラットフォームで横断します。
検知した異常はCyber AI Analystが自動で調査・優先度付けし、デバイス隔離やIPブロックといった封じ込めも自律的に行います。検知後の運用まで任せたい場合に向けて、英国・米国・シンガポールの3拠点による24時間365日体制のマネージド検知・対応(MDR)も用意されています。導入は全世界で約10,000社、料金は監視対象デバイス数に応じた個別見積もりです。
検知した異常はAIが自動で調査し、封じ込めまで自律的に行うほか、24時間365日のMDRも選べます。常時監視(24時間365日)が顧客サービスの内容に応じて対応が望ましい水準とされる金融機関で、検知後の対応をどこまで外部に委ねるかを運用体制に合わせて決められます。
3. Vectra AI(Vectra AI, Inc.)

社内ネットワークに侵入した高度な脅威を、AIによる振る舞い分析で検知するNDRです。米国のVectra AI, Inc.が開発し、国内ではマクニカ株式会社が販売・サポートを担っています。
検知エンジンのAttack Signal Intelligenceは、150以上のAIモデルで攻撃者の振る舞いを捉え、大量のアラートを緊急度の高い順に絞り込みます。対象はオンプレミスのネットワークに加え、AWS・Azureなどのマルチクラウド、Active DirectoryやMicrosoft 365、IoT・OTまで広がります。
CrowdStrikeやMicrosoft Defenderなどの他社EDR、Splunk・QRadarといったSIEMと連携でき、既存のセキュリティ基盤に組み込めます。国内ではマクニカがセキュリティアナリストによる監視・脅威分析の代行(MDR)を提供し、トライアル相談にも対応します。導入はグローバルで2,000社を超え、料金は要お問い合わせです。
オンプレからマルチクラウド、ID、IoT・OTまで広く監視でき、国内ではマクニカが監視・脅威分析を代行します。監視を外部に委ねる場合も委託先管理の責任が自社に残る金融機関では、代行範囲や報告の受け方を、委託先管理に必要な情報提供の観点で確認しておくとよいでしょう。
端末を監視して脅威を検知・対応するタイプ(EDR/XDR)
4. Trend Vision One(トレンドマイクロ株式会社)

Trend Vision One は、トレンドマイクロ株式会社が提供する統合サイバーセキュリティプラットフォームです(現行の公式表記は TrendAI Vision One)。エンドポイントやサーバーに加え、メール・ネットワーク・クラウドなど複数レイヤーのデータを1つの基盤で相関分析し、攻撃の全体像を可視化します。
端末を監視するEDRと、領域をまたいで検知するXDRを中核に据え、収集したテレメトリをもとに侵入の痕跡を横断的に捉えます。SaaS型で提供され、24時間365日体制の総合サポートやマネージド検知・対応(MDR)もメニューとして用意されています。
料金は、30以上の機能を1つのライセンスで扱うクレジット型の「TrendAI Flex」に一本化されており、具体的な価格は公開されておらず個別見積もり(要お問い合わせ)です。全機能を対象とした30日間の無料体験も案内されています。
複数レイヤーのデータを1基盤で相関分析し、24時間365日の運用サポートやMDRも選べるのが本製品の強みです。端末やクラウドを横断した継続的な監視と、検知後の対応をどこまで自社で担うかが選定の分かれ目になる金融機関で、検知から対応までの体制を自社の人員に合わせて組めます。
5. CrowdStrike Falcon(クラウドストライク合同会社)

単一の軽量エージェントに次世代アンチウイルス(NGAV)・EDR・脅威ハンティングなどを集約しているのが、CrowdStrike Falcon の基本設計です。クラウドネイティブのエンドポイント保護プラットフォームとして、端末を起点とした侵入への対策を追加エージェントなしに拡張できます。
NGAVの「Falcon Prevent」は、機械学習と攻撃の兆候(IOA)をもとに既知・未知のマルウェアやファイルレス攻撃を実行前に阻止します。EDRの「Falcon Insight」は端末を継続的に監視し、プロセスの遠隔停止・ファイル隔離・通信遮断といった対応を行えます。
検知後の対応まで専門家に委ねたい場合は、24時間365日のマネージド検知・対応(MDR)「Falcon Complete」を選べます。料金はプランごとに段階的に設定されていますが、日本国内向けの正式価格は公開されておらず、国内の販売代理店経由での個別見積もりが基本です。
端末を継続的に監視してプロセス停止や隔離まで行え、24時間365日のMDR「Falcon Complete」で検知後の対応を任せられます。専任要員を置きにくい場合に検知後の対応まで外部へ委ねられるかが論点になる金融機関で、自社運用かマネージドかを体制に応じて選べます。
6. SentinelOne(SentinelOne Japan株式会社)

SentinelOne(Singularity Platform)は、エンドポイントで稼働するAIが脅威を自律的に検知し、不正なプロセスやファイルをリアルタイムに隔離・停止する点を中核に据えています。EPP(端末を保護するソフト)・EDR・XDRを単一の軽量エージェントと統合コンソールで提供します。
検知した個々のイベントを特許技術「Storyline」が時系列で自動的に関連づけ、攻撃の全体像を手作業の解析なしで可視化します。ランサムウェアでファイルが暗号化された場合も、OSの再構築なしに攻撃前の状態へ自動復旧する1クリックのロールバック(特許取得済み)を備えます。
保護範囲は端末を起点に、クラウド・アイデンティティ・ネットワークへ広げられます。料金はエンドポイント単位の年額ライセンスで、公式には価格を開示しておらず、国内では代理店経由の見積もりが基本です。
エンドポイントのAIが脅威を自律的に検知・隔離し、ランサムウェアで暗号化されたファイルを攻撃前へ戻すロールバックを備えます。攻撃を受けた後の封じ込めから復旧までを滞りなく進める備えが求められる金融機関で、インシデント発生後の復旧の確実さを重視する場合に向きます。
不正アクセスを防ぐゼロトラスト・ID/アクセス制御タイプ
7. CloudGate UNO(株式会社インターナショナルシステムリサーチ)

株式会社インターナショナルシステムリサーチが100%自社開発する、SSO(シングルサインオン)・多要素認証・アクセス制限・ID管理を統合したクラウド型のIDaaS(クラウドでID認証を提供する仕組み)です。ゼロトラストの考え方にもとづき、一度の認証で複数のクラウドサービスへアクセスできる環境を整えます。
アクセス制限は、IPアドレスやデバイス証明書に加え、国・地域、曜日・時間帯、ブラウザなど複数の条件を組み合わせて設定できます。私用端末からのアクセス禁止や業務時間外の制限など、端末・場所・時間の軸で不正なログインを抑えられます。
認証方式はFIDO2準拠のパスキーや生体認証、ワンタイムパスワードなどに対応します。パスキーによるパスワードレス認証を全プラン・全ユーザーで制限なく利用できる点が特徴です。月額料金はStandard Plusが1ユーザー400円から(税抜)で、30日間の無料トライアルが用意されています。
開発元の株式会社インターナショナルシステムリサーチは、この認証方式を採用した理由を次のように説明しています。

当社が採用しているパスキーのパスワードレス認証は、フィッシング攻撃に対して非常に強い耐性を持ちます。SMS認証やワンタイムパスワードなどの一般的な多要素認証を突破する攻撃手法が顕在化する中、より安全な認証環境を提供します。
金融機関では、委託先やリモート、クラウド利用が広がるなかで不正ログインや権限悪用を防ぐアクセス統制が重要になります。本製品はIP・デバイス証明書・国地域・時間帯など複数条件でアクセスを制御でき、フィッシングに強いパスキー認証を全プランで使えるため、ログインの入口を絞る備えに向きます。
8. Soliton OneGate(株式会社ソリトンシステムズ)

デジタル証明書(クライアント証明書)による多要素認証を中核に、SSOとID管理を組み合わせたクラウド型の認証基盤(IDaaS)です。株式会社ソリトンシステムズが開発・提供する国産サービスで、公開鍵暗号方式の証明書を認証に用いることで、フィッシングや多要素認証の突破を狙う攻撃への耐性を高めます。
認証局(CA)機能を標準搭載し、クライアント証明書の発行から配布、失効までを1製品で完結できる点が特徴です。クラウドサービスのSSO(SAML/OIDC、連携数は無制限)だけでなく、Wi-Fi・有線LAN(IEEE802.1X EAP-TLS)やVPNのネットワーク認証、Active Directory連携まで一元管理できます。
認証方式はデジタル証明書に加え、FIDO2、顔認証、ICカード、スマートフォンアプリなどを組み合わせられます。料金は1ユーザーあたり月額150円からの3プラン構成で、ISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)のクラウドサービスリストにも登録されています。
デジタル証明書による多要素認証で、クラウドから社内システム、VPN・Wi-Fiまでアクセスの入口を束ね、ISMAPのクラウドサービスリストにも登録されています。アクセスの入口を一元的に統制したい場面がある金融機関で、委託先やサービスの選定を判断する際の材料にもなります。
9. IIJ IDサービス(株式会社インターネットイニシアティブ)

オンプレミスのActive Directoryとクラウドサービスを1つのIDでつなぐことを想定した、クラウド型のID管理・認証サービス(IDaaS)です。国内通信事業者の株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)が自社で開発・運用し、SSOを中核に多要素認証とアクセス制御を提供します。
多要素認証はFIDO2、自社CA・外部CAのデバイス証明書、メールのワンタイムパスワード、スマートフォンアプリ(SmartKey)、統合Windows認証などから選べます。Active DirectoryのID・グループ情報を同期してグループ単位で認証・認可を制御でき、AD基盤を持つ組織のクラウド利用にも対応します。
社内・社外などの条件に応じて、ユーザーごとにログイン時の認証条件を設定できます。初期費用は0円で、1IDあたりの月額はSSOのみと多要素認証込みの2段階に分かれます(2026年10月時点の公式表記で120円・240円、いずれも税抜)。連携するクラウドサービスの数が増えても料金は変わりません。
金融機関では、オンプレミスのActive Directoryを運用しながらクラウド利用を広げる局面で、アクセスの統制が課題になりがちです。本製品はADのID・グループ情報を同期して認証・認可を一元管理でき、社内外などの条件ごとにログイン時の認証を制御できるため、AD基盤を持つ組織のアクセス統制に向きます。
導入・運用の注意点と自社運用との役割分担
サービスを選ぶ前に、運用の分担と導入時のつまずきやすい点を押さえておくと、導入後のギャップを避けられます。
自社運用と外部委託の役割分担
監視・検知・対応のどこまでを外部に任せ、どこを自社で担うかを最初に決めることが重要です。ツールだけを導入して運用は自社で行う形から、検知後の対応まで任せるマネージドまで、分担の設計はさまざまです。前述のとおり、外部に委託しても委託先管理の責任は自社に残るため、インシデント発生時に誰がどう動き、どのように報告を受けるかを契約やSLAで明確にしておきます。
検知後の対応をどこまで外部に任せられるかは、MDR(マネージド検知・対応)サービスごとに代行範囲が大きく異なります。業種を問わず、通知・トリアージ・調査・封じ込め・復旧支援のどこまでを委託先が手を動かすのか、課金単位はどうかまで見比べたい場合は、以下の比較が分担の設計を具体化する材料になります。
導入時の注意点
守るべき対象を広げすぎて過剰な投資になっていないか、逆に重要な資産の監視が抜けていないかを、導入前に自社の環境と照らして確認します。監視ツールは導入して終わりではなく、アラートの確認や検知後の対応を回せる体制があってはじめて機能します。自社の運用リソースを踏まえ、無理のない範囲から始めて段階的に広げる進め方が現実的です。
よくある質問(FAQ)
Q. 金融機関向けのセキュリティ監視サービスとは何ですか?
A. 金融機関向けのセキュリティ監視サービスとは、ネットワークや端末などを常時監視してサイバー攻撃の兆候を検知し、必要に応じて検知後の対応までを担う外部サービスです。金融庁の監督指針やガイドラインが求める監視・検知・対応の態勢を、自社に専任要員を置かずに整える手段として利用されます。守る対象(ネットワーク・端末・アクセス)や運用の担い方(自社運用かマネージドか)によってタイプが分かれます。
Q. 金融機関はセキュリティ監視サービスの導入が義務づけられていますか?
A. 金融機関に特定のセキュリティ監視サービスの導入が義務づけられているわけではありませんが、継続的な監視・検知・対応の態勢を整えること自体は、金融庁の監督指針とガイドラインで求められています。
ガイドラインはサイバー攻撃の端緒を検知するための継続的な監視を基本的な対応事項とし、その体制にはSOCなど外部リソースの活用を含めてよいとしています。どの製品でどのように態勢を満たすかは、各金融機関の判断に委ねられています。
Q. 金融機関は24時間365日の監視が必須ですか?
A. 24時間365日の常時監視は、全ての金融機関に一律で義務づけられた基準ではなく、提供するサービスの内容を踏まえて「対応が望ましい事項」に位置づけられています。自社が扱う顧客サービスの性質やリスクに応じて必要な水準を見極めることが、過不足のない構成につながります。常時監視を望む場合に自社の要員だけで回すのが難しければ、マネージドサービスで体制を確保する選び方があります。
Q. 監視を外部に委託する場合、契約やSLAに何を明記すべきですか?
A. 監視を外部に委託する場合は、役割分担・監査権限・再委託の手続き・インシデント発生時の対応や報告などを契約やSLAに明記することがガイドラインで求められています。これは外部委託先の管理(サードパーティリスク管理)の一環で、監視を委ねても管理責任は金融機関に残ります。
あわせて、契約の履行状況をリスクの重大性に応じて継続的にモニタリングすることも必要です。サービスを選ぶ際は、これらを満たせる形で情報提供や報告を受けられるかが着眼点になります。
Q. 金融機関でセキュリティインシデントが発生したとき、当局への報告はどう進めますか?
A. 金融機関は、システム障害やサイバーセキュリティ事案の発生を認識次第、直ちにその事実を当局へ報告し、「障害等発生報告書」を提出することが監督指針で求められています。
この報告義務は主要行等に限らず、中小・地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者等、資金移動業者、暗号資産交換業者などの監督指針・事務ガイドラインにも同趣旨で置かれています。
検知後の封じ込めや根絶では、必要に応じて外部の専門家と連携して進めることも認められており、検知から報告・対応までを外部と連携できるかも選定の観点になります。
Q. セキュリティ監視は自社運用とマネージド(SOC)のどちらを選ぶべきですか?
A. 監視や検知後の対応を回せる専任要員を自社で確保しにくい場合は運用まで任せられるマネージド(MDR/SOC)が選びやすく、要員と知見が社内にあれば自社運用も選択肢になります。判断の軸になるのは自社の運用リソースです。
ツールだけを導入して運用は自社で担う形から、検知後の対応まで委ねる形まで分担の設計には幅があるため、監視・検知・対応のどこまでを外部に任せるかを先に決めると候補を絞りやすくなります。委託する場合も、委託先管理の責任は自社に残る点を踏まえて体制を設計します。
Q. 金融機関向けセキュリティ監視サービスの費用はどのくらいですか?
A. 費用は多くが個別見積もりで、守る対象・監視範囲・運用をどこまで任せるかによって変わります。端末を監視するEDR/XDRは守る端末の台数(ライセンス数)に応じた課金が一般的で、ネットワークを監視するNDRは監視する拠点数や通信量、専用機器(アプライアンス)の有無によって構成が変わります。
検知後の対応までマネージドで任せる場合は運用サービスの費用が上乗せされます。守りたい対象と運用の範囲を決めたうえで、複数社の資料を同じ条件で取り寄せて比べることをおすすめします。
Q. セキュリティ監視サービスの導入はどのくらいの期間を見込めばよいですか?
A. 導入期間は守る対象や監視範囲、運用をどこまで任せるかによって幅があり、個別見積もりのなかで確認するのが確実です。クラウド型で提供される製品は比較的短期間で始めやすい一方、ネットワーク全体を監視する構成やマネージド運用の立ち上げには、要件のすり合わせや体制づくりの時間がかかります。
自社の現状がガイドラインの水準にどこまで達しているかを評価・診断で先に把握し、優先度の高い領域から段階的に広げる進め方も現実的です。
まとめ
金融機関向けのセキュリティ監視サービスは、守る対象(ネットワーク・端末・アクセス)と運用の担い方(自社運用かマネージドか)で整理すると、自社に合う候補を絞りやすくなります。金融庁ガイドラインや監督指針は、継続的な監視・インシデント発生時の当局報告・委託先管理を求めており、これらに対応できるかが選定の軸になります。
24時間365日の常時監視やTLPTは対応が望ましい水準として位置づけられています。自社の規模とリスクに見合った構成を見極め、複数社の資料を同じ条件で比べることが、過不足のない選定につながります。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

















