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反社会的勢力排除条項とは?契約書にそのまま使える5つの条項例と書き方を解説

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反社チェックツール比較表(2026年版)

新しい取引先と交わす契約書に反社会的勢力排除条項(反社条項・暴排条項)が入っていない、あるいは取引先から「反社条項を入れてほしい」と求められた——そうしたときに必要になるのが、契約書にそのまま加えられる条文です。定義や必要性を押さえるだけでなく、「どう書けばよいか」という具体的な条文を用意しておくことが、実務では欠かせません。

本記事では、契約書に加えられる反社会的勢力排除条項の文例を、表明保証・密接関係の否定・禁止行為・無催告解除・違約金の5つの要素に分けて紹介します。あわせて、各要素が何を担保しているか、反社会的勢力の定義に書き込む類型、暴力団排除条例上の位置づけ(義務か努力義務か)、既存の契約書への後付け方法までを整理しました。

条文を用意した後は、取引の相手方が実際に反社会的勢力でないかを確認する「反社チェック」も欠かせません。記事の後半では、その確認方法と、確認を効率化するツールもあわせて解説します。自社の契約書を整えるための実務的な材料としてご活用ください。

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そのまま使える反社会的勢力排除条項の文例(5要素・コピー用)

反社会的勢力排除条項は、①非該当の表明保証、②密接な関係の否定、③禁止行為の確約、④違反時の無催告解除、⑤損害賠償・違約金、の5つの要素で構成するのが基本です。ここでは、業種を問わず使える汎用的な文例を要素ごとに示し、最後にそのまま貼れる全文をまとめて掲載します。

以下の文例は、全国銀行協会が公表する暴力団排除条項の参考例や、国土交通省・警察庁のモデル条項をもとに、甲・乙の双方に義務を課す形へ整えたものです。自社の契約書に加える際は、契約類型や取引の実情に合わせて調整し、最終的な文言は顧問弁護士の確認を受けることをおすすめします。

各要素が何を担保するかを含めた全体像は、次のとおりです。

反社会的勢力排除条項を構成する5つの要素を縦のフローで示した図解。要素①非該当の表明保証、要素②密接な関係の否定、要素③禁止行為の確約、要素④無催告解除(条項の要)、要素⑤損害賠償・違約金の順に並び、①〜③で表明・確約させ、④で解除し、⑤で損害を処理する構成を表す。

①反社会的勢力への非該当の表明保証

まず、契約当事者の双方が「自らは反社会的勢力ではない」ことを表明し、将来にわたっても該当しないと約束する条項を置きます。反社会的勢力に含める類型は次の「反社会的勢力の定義に書き込む類型」で詳しく解説します。

甲及び乙は、それぞれ相手方に対し、自ら(法人の場合はその役員を含みます。)が、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等その他これらに準ずる者(以下「反社会的勢力」といいます。)に該当しないことを表明し、かつ、将来にわたっても該当しないことを確約する。

②反社会的勢力と密接な関係を有しないことの表明

自らが反社会的勢力でなくても、資金提供や経営関与などを通じて反社会的勢力と密接な関係を持っている場合があります。そこで、次の関係のいずれにも該当しないことを確約する条項を続けます。

甲及び乙は、それぞれ相手方に対し、次の各号のいずれにも該当しないことを表明し、かつ、将来にわたっても該当しないことを確約する。

  1. 反社会的勢力が経営を支配していると認められる関係を有すること
  2. 反社会的勢力が経営に実質的に関与していると認められる関係を有すること
  3. 自己、自社若しくは第三者の不正の利益を図る目的又は第三者に損害を加える目的をもってするなど、不当に反社会的勢力を利用していると認められる関係を有すること
  4. 反社会的勢力に対して資金等を提供し、又は便宜を供与するなどの関与をしていると認められる関係を有すること
  5. 役員又は経営に実質的に関与している者が反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有すること

③不当要求など禁止行為をしない確約

属性による該当だけでなく、暴力的・不当な要求といった行為そのものを禁止する条項も置きます。これは反社会的勢力の「行為要件」に対応する部分です。

甲及び乙は、それぞれ相手方に対し、自ら又は第三者を利用して、次の各号の一にでも該当する行為を行わないことを確約する。

  1. 暴力的な要求行為
  2. 法的な責任を超えた不当な要求行為
  3. 取引に関して、脅迫的な言動をし、又は暴力を用いる行為
  4. 風説を流布し、偽計を用い、又は威力を用いて相手方の信用を毀損し、又は相手方の業務を妨害する行為
  5. その他前各号に準ずる行為

④違反時の無催告解除

相手方が①〜③の表明・確約に反したことが判明したとき、催告(是正の求め)を経ずに直ちに契約を解除できるようにする条項です。反社会的勢力との関係を速やかに断つうえで、この無催告解除が条項の要になります。

甲又は乙は、相手方が①又は②の表明・確約に反することが判明した場合、又は③の各号に定める行為を行った場合には、何らの催告を要せず、直ちに本契約の全部又は一部を解除することができる。

⑤違反時の損害賠償・違約金(2つのパターン)

解除に伴う損害の扱いを定めます。あらかじめ違約金(損害賠償額の予定)を定めない場合と、定める場合の2パターンがあります。違約金を定めておくと、実際の損害額を立証しなくても定めた金額を請求できるため、契約金額が大きい取引では検討する価値があります。

パターンA:違約金を定めない場合
④により本契約が解除された場合、解除した者は、これにより生じた損害の賠償を相手方に請求することができる。この場合において、解除された者は、解除により生じた損害の賠償を解除した者に対して請求することができない。

パターンAの後段は、「反社会的勢力に該当したことで解除された側(=相手方)は、解除によって自分に生じた損害を、解除した側に請求できない」という意味です。反社会的勢力を排除するための解除で、排除された側が損害賠償を求められないようにする趣旨です。

パターンB:違約金(損害賠償額の予定)を定める場合
④により本契約が解除された場合、解除された者は、解除した者に対し、違約金として金〇〇円(又は本契約の取引金額の〇パーセントに相当する額)を支払うものとする。ただし、解除した者に生じた実際の損害額がこれを超えるときは、解除した者は、その超過額の賠償を別途請求することを妨げない。

不動産取引の公的なモデル条項では、違約金を売買代金の20パーセント相当額と定める例が示されています。金額の水準は取引の性質や規模に応じて設定してください。

契約書に組み込むときは、①〜⑤を続けて一つの条にまとめると管理しやすくなります。次の全文は、①〜⑤を第1項から第5項までの一つの条として整えたものです。すでに条番号のある契約書に加える場合は、条や項の番号を自社の契約書に合わせて調整してください。

契約書にそのまま組み込める条項(全文)

第○条(反社会的勢力の排除)

1 甲及び乙は、それぞれ相手方に対し、自ら(法人の場合はその役員を含みます。)が、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等その他これらに準ずる者(以下「反社会的勢力」といいます。)に該当しないことを表明し、かつ、将来にわたっても該当しないことを確約する。

2 甲及び乙は、それぞれ相手方に対し、次の各号のいずれにも該当しないことを表明し、かつ、将来にわたっても該当しないことを確約する。

  1. 反社会的勢力が経営を支配していると認められる関係を有すること
  2. 反社会的勢力が経営に実質的に関与していると認められる関係を有すること
  3. 自己、自社若しくは第三者の不正の利益を図る目的又は第三者に損害を加える目的をもってするなど、不当に反社会的勢力を利用していると認められる関係を有すること
  4. 反社会的勢力に対して資金等を提供し、又は便宜を供与するなどの関与をしていると認められる関係を有すること
  5. 役員又は経営に実質的に関与している者が反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有すること

3 甲及び乙は、それぞれ相手方に対し、自ら又は第三者を利用して、次の各号の一にでも該当する行為を行わないことを確約する。

  1. 暴力的な要求行為
  2. 法的な責任を超えた不当な要求行為
  3. 取引に関して、脅迫的な言動をし、又は暴力を用いる行為
  4. 風説を流布し、偽計を用い、又は威力を用いて相手方の信用を毀損し、又は相手方の業務を妨害する行為
  5. その他前各号に準ずる行為

4 甲又は乙は、相手方が第1項若しくは第2項の表明・確約に反することが判明した場合、又は前項各号に定める行為を行った場合には、何らの催告を要せず、直ちに本契約の全部又は一部を解除することができる。

5 前項により本契約が解除された場合、解除した者は、これにより生じた損害の賠償を相手方に請求することができる。この場合において、解除された者は、解除により生じた損害の賠償を解除した者に対して請求することができない。

上記の文例は、次の公的なモデル条項・参考例をもとにしています。

出典・参考資料(3件)

5要素が何を担保するか・書き漏らすと何が起きるか

ここからは、5つの要素がそれぞれ何のために置かれているか、そして書き漏らすとどのようなリスクがあるかを整理します。条文を自社の契約書に加える際の判断材料としてご覧ください。

①表明保証は、契約時点と将来にわたって相手方が反社会的勢力でないことを約束させる部分で、後の解除や損害賠償の起点になります。表明保証を欠くと、相手方が反社会的勢力だと後から判明しても「契約違反」を主張しにくくなります。

②密接な関係の否定は、相手方自身は反社会的勢力でなくても、資金提供や経営関与を通じて反社会的勢力とつながっている「共生者」を排除するための部分です。属性の列挙だけでは、こうした周辺関係者を捉えきれません。

③禁止行為の確約は、暴力的要求や不当要求といった行為そのものを禁じ、実際に不当要求を受けた場合の解除根拠にします。

④無催告解除は、この条項の実効性を左右する要です。民法では、契約を解除する前に相当の期間を定めて履行を催告するのが原則ですが、反社会的勢力が相手の場合に是正を待っていては関係遮断が遅れます。そこで、催告を要しないで直ちに解除できる特約を置きます。この特約が無いと、原則どおり催告が必要になり、速やかに契約を打ち切れないおそれがあります。

この「催告を要しない解除」は、暴力団排除条例でも事業者が契約に盛り込むよう努めるべき内容として挙げられています。東京都暴力団排除条例第18条第2項は、次のように定めています。

東京都暴力団排除条例 第18条第2項 事業者は、その行う事業に係る契約を書面により締結する場合には、次に掲げる内容の特約を契約書その他の書面に定めるよう努めるものとする。
一 当該事業に係る契約の相手方又は代理若しくは媒介をする者が暴力団関係者であることが判明した場合には、当該事業者は催告することなく当該事業に係る契約を解除することができること。

出典:東京都暴力団排除条例(平成23年3月18日条例第54号)第18条|東京都

⑤損害賠償・違約金は、解除に伴って生じる損害の負担を定める部分です。あらかじめ違約金(損害賠償額の予定)を定めておくと、実際の損害額を立証しなくても定めた金額を請求できるため、立証の負担が軽くなります。違約金を定めないパターンでも、解除した側から相手方に損害賠償を請求でき、逆に解除された側からは請求できない旨を定めておくのが一般的です。

反社会的勢力の定義に書き込む類型(属性要件・行為要件)

条項の実効性は、反社会的勢力の定義をどこまで書き込むかに左右されます。定義が「暴力団」だけにとどまると、暴力団を退会した直後の人物や周辺の関係者を捉えられません。反社会的勢力は、「属性要件」(何者であるか)と「行為要件」(どのような行為をするか)の両面から捉えるのが基本です。

属性要件として条項に盛り込むことが多い代表的な類型は、次のとおりです。これらに限らず、末尾に「その他これらに準ずる者」を加えて範囲を補うのが一般的です。

  • 暴力団・暴力団員
  • 暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者(いわゆる元暴5年)
  • 暴力団準構成員
  • 暴力団関係企業
  • 総会屋等
  • 社会運動等標ぼうゴロ
  • 特殊知能暴力集団等
  • その他これらに準ずる者

これらの属性要件と、経営支配や資金提供などの密接な関係(前掲②の5類型)を組み合わせることで、暴力団本体だけでなく、退会直後の人物や共生者まで幅広く排除できます。全国銀行協会が公表する参考例では、属性要件と密接関係が次のように整理されています。

私または保証人は、現在、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロまたは特殊知能暴力集団等、その他これらに準ずる者(以下これらを「暴力団員等」という。)に該当しないこと、および次の各号のいずれにも該当しないことを表明し、かつ将来にわたっても該当しないことを確約いたします。

出典:銀行取引約定書に盛り込む暴力団排除条項参考例|全国銀行協会

行為要件は、政府が公表する「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」でも、属性要件とあわせて着目すべきものとされています。同指針は、反社会的勢力を捉える視点を次のように示しています。

暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である「反社会的勢力」をとらえるに際しては、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等といった属性要件に着目するとともに、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件にも着目することが重要である。

出典:企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針(平成19年6月19日)|法務省

ただし、政府指針が挙げる属性要件には「元暴5年」「準構成員」「共生者」は含まれていません。これらを定義に盛り込みたい場合は、全国銀行協会や各業界団体のモデル条項を参照して類型を補うのが実務的です。

反社条項(暴排条項)とは・なぜ必要か

反社会的勢力排除条項(反社条項・暴排条項)とは、契約の相手方が反社会的勢力でないことを確認し、判明した場合に契約を解除して取引から排除できるようにする契約条項です。政府指針は、契約書や契約約款にこうした条項を盛り込んでおくことを「有効である」と位置づけています。

条項を置く理由は、主に3つあります。1つ目は、反社会的勢力からの不当要求を受けた際に、契約を速やかに解除して関係を断つ根拠になること。2つ目は、知らないうちに反社会的勢力との取引に加担し、自社が社会的な非難を受ける事態を避けること。3つ目は、暴力団排除条例が事業者に求める取り組みに対応することです。

条項が無いままだと、相手方が反社会的勢力と判明しても無催告での解除が難しく、関係の遮断が遅れるおそれがあります。

「義務」か「努力義務」か

反社条項について「暴力団排除条例で義務化されている」と説明されることがありますが、条文を確認すると、これは正確ではありません。暴力団排除条例が事業者に求めているのは「義務」ではなく「努力義務」です。東京都暴力団排除条例第18条は、契約時の反社会的勢力の確認と、契約書への特約の記載について、いずれも「努めるものとする」と定めています。

東京都暴力団排除条例 第18条第1項 事業者は、その行う事業に係る契約が暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなる疑いがあると認める場合には、当該事業に係る契約の相手方、代理又は媒介をする者その他の関係者が暴力団関係者でないことを確認するよう努めるものとする。

出典:東京都暴力団排除条例(平成23年3月18日条例第54号)第18条|東京都

大阪府暴力団排除条例でも、事業者は事業に関し暴力団との一切の関係を持たないよう「努める」と定められており、努力義務として整理されています。したがって、反社条項を入れなかったこと自体に罰則が科されるわけではありません。

ただし、努力義務であっても、これを果たさないまま反社会的勢力と取引を続ければ、自社の社会的信用や取引先からの評価に影響します。取引先の監査やデューデリジェンスで条項の有無を確認されることもあり、実務上は「入れておくべきもの」として扱うのが一般的です。

出典・参考資料(2件)

契約類型別のモデル条項の在りか(売買・賃貸・業務委託・建設)

反社条項の基本構成は契約類型を問わず共通ですが、業種や契約の種類ごとに公的なモデル条項・ひな型が公表されています。自社の契約類型に近いものを参照すると、文言の調整がしやすくなります。主な配布元は次のとおりです。

  • 不動産取引(売買・媒介・賃貸):国土交通省が、売買契約編・媒介契約編・賃貸住宅契約編のモデル条項を公表しています。警察庁と連携したモデル条項で、無催告解除や違約金の定めまで含みます。
  • 建設工事(工事請負契約約款):日本建設業連合会が、工事請負契約約款に導入するための暴力団排除条項のひな型と解説を公表しています。
  • 融資・預金など金融取引や汎用の商事契約:全国銀行協会が、暴力団排除条項の参考例を公表しています。属性要件・密接関係・行為要件が整理されており、業務委託契約など一般の取引にも応用しやすい内容です。

業務委託契約では、再委託先が反社会的勢力である場合の措置(再委託先の確認や、応じない場合の解除)を加えておくと、委託先を通じた関与のリスクにも備えられます。

出典・参考資料(3件)

既存の契約書に条項が無い場合の後付け(覚書・念書)

すでに締結済みで、反社条項が入っていない契約についても、後から条項を加えることができます。方法は、当事者間で「反社会的勢力の排除に関する覚書」を別途締結し、既存の契約に反社条項を追加する形が一般的です。

覚書には、前掲の5要素(①非該当の表明保証、②密接な関係の否定、③禁止行為の確約、④無催告解除、⑤損害賠償・違約金)を、対象となる既存契約を特定したうえで盛り込みます。覚書の締結には相手方の同意が必要なため、契約更新のタイミングや新たな取引の開始時にあわせて提示すると、応じてもらいやすくなります。相手方が覚書の締結に応じない場合は、その事実自体が取引継続を再検討する材料にもなります。

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条項を入れても必要な「反社チェック」:相手が反社でないかの確認方法

反社条項を契約書に入れても、それだけで相手方が反社会的勢力でないと確認できるわけではありません。条項は「判明した場合に排除できる」備えであり、取引を始める前に相手方の実態を確認する「反社チェック」とあわせて機能します。政府指針も、暴排条項の導入を、平素からの実態確認とあわせて行う取り組みとして位置づけています。

反社会的勢力への対応は2つの備えがセットで機能することを示した図解。左は取引前の確認である反社チェック(相手方の実態を公知情報などで確認する)、右は判明時の備えである反社条項(反社と判明したとき無催告解除で契約を打ち切り取引から排除する根拠になる)。どちらか一方では不十分で、2つをセットで運用してはじめて反社リスクに備えられることを表す。

反社会的勢力が取引先や株主となって、不当要求を行う場合の被害を防止するため、契約書や取引約款に暴力団排除条項を導入するとともに、可能な範囲内で自社株の取引状況を確認する。

出典:企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針(平成19年6月19日)|法務省

もっとも、反社チェックは相手方の会社名や代表者名を調べれば足りるわけではありません。弁護士の阿部由羅氏は、表面的な調査の限界と、確認で求められる水準について次のように指摘しています。

阿部由羅氏
ゆら総合法律事務所 代表弁護士(埼玉弁護士会)
阿部由羅氏
専門家コラムより

インターネット検索や新聞記事のデータベースなどを利用して、相手方の会社名や代表者名を検索しても、背後にいる反社会的勢力の存在は判明しません。相手方の実質的支配者まで遡って徹底的に反社チェックを行い、少しでも疑わしい要素があれば取引中止を検討するといった厳密な取り組みが求められます。

反社チェックの主な方法には、次のものがあります。自社で新聞記事やインターネットの公知情報を検索して確認する方法、専門の調査会社に依頼する方法、そして反社チェックツールを利用して公知情報の検索を効率化する方法です。取引先の件数が多い場合や、定期的な確認が必要な場合は、検索と証跡の保存を自動化できるツールの利用が現実的な選択肢になります。

契約時の反社チェックに使える主なツール

ここでは、取引先や採用候補者の反社チェックに使える主なクラウド型ツールを紹介します。いずれも会社名や個人名を入力すると、公知情報をもとに反社会的勢力とのつながりや不祥事の有無を確認でき、確認の証跡を残せます。検証のアプローチや料金体系に違いがあるため、自社の確認件数や運用に合わせて比較してみてください。

1. RiskAnalyze(リスクアナライズ)(KYCコンサルティング株式会社)

RiskAnalyze(リスクアナライズ)

RiskAnalyzeは、危機管理の専門家が選別・編集した判定済みのデータベースを参照する反社チェックツールです。個人名・企業名を入力すると、反社会的勢力とのつながり・逮捕歴・行政処分・訴訟歴・風評などを調査した結果を、1件あたり最短0.4秒で表示します。CSVによる一括検索にも対応し、1,000件を約1分で処理できます。

調査の証跡はクラウド上に7年間自動保存され、監査対応や社内での確認履歴の管理に役立ちます。CRMや基幹システムと連携するAPIを利用料無料で提供しており、Salesforce・kintoneとの連携にも対応します。情報セキュリティマネジメントの国際規格ISO/IEC 27001を取得しており、管理体制を第三者認証で担保している点も特徴です。

判定済みのデータベースを使った確認で、実際の工数がどの程度変わるのかについて、提供元のKYCコンサルティングは独自インタビューで導入事例の数値を挙げています。

片桐氏
KYCコンサルティング株式会社 セールス事業部 / InsideSales
片桐氏
独自インタビューより

数字として大きなインパクトが出た事例では、IPO審査を控えていた企業様で、既存の取引先に対する年次スクリーニングの工数を約98%削減し、大きく効率化を実現できたケースがございます。この企業様は無事にIPO審査をクリアし、上場されました。一括検索では1件あたり約1分で結果が返ってくるため、これまで手作業で1ヶ月ほどかかっていたチェックが、半日から1日程度で完了するようになったというお声もいただいています。

2. RISK EYES(リスクアイズ)(ソーシャルワイヤー株式会社)

RISK EYES(リスクアイズ)

WEBニュース記事や新聞記事などの公知情報から取引先・従業員をスクリーニングできるのが、ソーシャルワイヤーの反社チェック専用ツールRISK EYESです。法人名・人名と、逮捕などのネガティブワードを組み合わせて検索し、反社会的勢力との関係の疑い・犯罪関与・不祥事の有無をチェックします。独自の反社データベースや除外ワードの自動抽出により、チェックに不要な記事を除いて確認の手間を抑える設計です。

前回の検索でヒットしなかった新規記事だけを対象にする差分検索や、登録した対象にリスク報道があると懸念レベル5段階で自動通知するリスクアラート機能を備え、定期的なチェックや継続的な監視を効率化できます。日米が公表する制裁リストの検索にも対応し、海外取引先の確認にも使えます。提供元は東証グロース上場企業で、上場準備を意識した運用にも向いています。

反社チェックにかかる工数が実際にどの程度変わるのかについて、提供元のソーシャルワイヤーは独自インタビューで導入事例の数値を挙げています。

杉山賢人氏
ソーシャルワイヤー株式会社 事業部長
杉山賢人氏
独自インタビューより

導入事例では、広報支援会社で検索業務を約93%削減、オンラインマッチングサービスを運営する企業で反社チェック業務を約95%削減、採用管理システムを提供する企業で従来比約85%の工数削減を実現しています。採用管理システムを提供する企業では、日次20~30件の確認に100~150分かかっていた業務が大幅に短縮されました。

3. RoboRoboコンプライアンスチェック(オープン株式会社)

RoboRoboコンプライアンスチェック

Excelデータをドラッグ&ドロップで取引先を一括登録し、1クリックでまとめて確認できるクラウド型のサービスが、RoboRoboコンプライアンスチェックです。取引先や採用候補者が法令を遵守しているか、社会規範に反する活動がないかを自動でチェックします。インターネット記事・新聞記事・海外情報のデータベースを組み合わせて確認します。

検索結果を高・中・低の3段階で自動分類し、生成AIが記事を要約・解析することで確認作業を効率化します。約190カ国・約540万件のデータベースで海外の法人・個人もチェックでき、SBI証券が上場企業に求められるコンプライアンスチェックの要件の観点で監修しています。証跡はPDF・CSV・Excel形式でまとめてダウンロードでき、API連携による自動化にも対応します。

反社チェックの結果は、必ずしも白か黒かで割り切れるとは限りません。判断が分かれるグレーゾーンの情報について、提供元のオープンは独自インタビューで次のように述べています。

関根氏
オープン株式会社 RoboRobo事業部 マーケティング部 部長
関根氏
独自インタビューより

単体の反社チェックのスピードだけを比較すると、データベース検索に特化した他社ツールの方が速い場合もあります。ただし当社はリアルタイムのネット検索も行うため、白黒だけでなくグレーゾーンの情報まで取得できます。会社によってはグレーゾーンでも取引を進める判断もあれば、取引しないという判断もある。

4. アラームボックス パワーサーチ(アラームボックス株式会社)

アラームボックス パワーサーチ

アラームボックス パワーサーチは、新規取引先の与信判断・反社チェック・企業調査を、会社名の入力だけで実施できる与信管理クラウドサービスです。反社チェックは、専門調査会社の情報・新聞記事・WEB情報を組み合わせて実施でき、ポイントを消費する従量利用の形で使えます。AIが情報を収集・解析したうえで、専任の調査担当者が与信判断の見解やアドバイスコメントを付す点が特徴です。

反社チェック単体にとどまらず、新規取引時の与信判断から継続的なモニタリング、売掛金の保証までを一体で扱えるため、取引先の与信管理とあわせて反社チェックを行いたい企業に向いています。商業登記簿の情報をオンラインで取得する機能もあり、取引先調査を一つのサービスにまとめられます。

反社チェックツールの比較表

以下はご紹介した反社チェックツールの比較表です。料金体系や検索の対象、機能に違いがあるため、自社の確認件数や運用に合わせて比較してください。

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サービス名RiskAnalyze(リスクアナライズ)RISK EYES(リスクアイズ)RoboRoboコンプライアンスチェックアラームボックス パワーサーチ
初期費用無料無料無料無料
月額費用(最低)月額27,500円〜
(ライトプラン・年間600検索まで)
15,000円〜(税別)0円〜(従量プラン)
ミニマムは月5,000円〜
3,000円〜
(ライトプラン・ポイント制)
1件あたりの費用年間検索数に応じた定額
(プロは約116〜175円/件)
300円〜/件
(1媒体ごと)
250円〜/件
(新聞併用は350円〜)
500円〜/件
(範囲により1,000〜1,500円)
検索対象データソース危機管理の専門家が
判定済みのデータベース
WEBニュース・新聞・
ブログ/掲示板・独自反社DB
ネット記事・新聞・
海外情報DB(生成AIが要約)
専門調査会社・新聞・
WEB情報(4プランで選択)
API連携●利用料無料●●有料オプション△エンタープライズプランのみ
海外取引先の対応海外240以上の国・地域
(PEPs・制裁リスト)
日米の制裁リストに対応海外約190ヵ国
(約540万件のデータベース)
国内取引先が中心
詳細情報公式資料を見る公式資料を見る公式資料を見る公式資料を見る

※料金は2026年6月時点の各社公式情報にもとづきます。税区分は各社の表記に準じます。最新の料金・仕様は各社の公式情報をご確認ください。

ここで挙げた4つのほかにも、反社チェックツールは数多くあります。次の記事では、主要な反社チェックツールを料金・データソース・検索精度の観点で比較し、確認件数や運用に合ったツールの選び方を解説しています。取引先の反社チェックの仕組みを本格的に整えたい場合の判断材料としてご覧ください。

まとめ

反社会的勢力排除条項は、①非該当の表明保証、②密接な関係の否定、③禁止行為の確約、④無催告解除、⑤損害賠償・違約金の5つの要素で構成します。定義には属性要件と行為要件の両面を書き込み、退会直後の人物や共生者まで捉えられるようにしておくことが重要です。

  • 条文の要は無催告解除:民法の催告原則の例外として、催告を要しないで解除できる特約を必ず入れます。
  • 暴排条例上は努力義務:反社条項の設置は「義務」ではなく「努力義務」です。ただし取引先の信用や監査対応の観点から、実務上は入れておくべきものといえます。
  • 既存契約には覚書で後付け:締結済みの契約でも、覚書で5要素を追加できます。
  • 条項と反社チェックはセット:条項は「判明した場合の備え」であり、取引前の相手方確認とあわせて機能します。

条文を用意したら、顧問弁護士の確認を受けたうえで自社の契約書に反映し、あわせて取引先の反社チェックの方法を整えておくと安心です。

料金や機能は各社の資料でまとめて比較できます 【無料】反社チェックツールの資料を
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よくある質問(FAQ)

Q. 反社会的勢力排除条項(反社条項・暴排条項)とは何ですか?

A. 反社会的勢力排除条項とは、契約の相手方が反社会的勢力でないことを確認し、判明した場合に契約を解除して取引から排除できるようにする契約条項です。反社条項・暴排条項とも呼ばれます。

一般に、①反社会的勢力への非該当の表明保証、②密接な関係の否定、③禁止行為の確約、④違反時の無催告解除、⑤損害賠償・違約金、の5つの要素で構成します。政府指針は、契約書や取引約款にこうした条項を盛り込むことを有効な取り組みと位置づけています。

Q. 反社会的勢力排除条項は契約書に入れる法的義務がありますか?

A. 反社会的勢力排除条項の設置は、暴力団排除条例上は「義務」ではなく「努力義務」です。東京都暴力団排除条例第18条は、契約書への特約の記載について「努めるものとする」と定めており、条項を入れなかったこと自体に罰則が科されるわけではありません。

ただし、取引先の監査やデューデリジェンスで条項の有無を確認されることもあり、実務上は「入れておくべきもの」として扱うのが一般的です。「義務化されている」と説明する情報も見られますが、条文上は努力義務が正確です。

出典・参考資料(1件)

Q. 反社会的勢力排除条項に違約金は必ず定める必要がありますか?相場はどのくらいですか?

A. 反社会的勢力排除条項の違約金(損害賠償額の予定)は、必ずしも定める必要はありません。違約金を定めなくても、解除した側から相手方に損害賠償を請求できます。ただし、あらかじめ違約金を定めておくと、実際の損害額を立証しなくても定めた金額を請求できるため、契約金額が大きい取引では有効です。

相場は取引の性質や規模によりますが、不動産取引の公的なモデル条項では、違約金を売買代金の20パーセント相当額と定める例が示されています。金額の水準は取引の実情に合わせて設定してください。

Q. 個人事業主や個人との契約にも反社会的勢力排除条項は必要ですか?

A. 反社会的勢力排除条項は、相手が法人か個人事業主・個人かを問わず入れておくのが望ましい条項です。反社会的勢力への該当性は法人格の有無や事業規模とは関係がなく、個人との取引でも反社会的勢力とつながるリスクは残るためです。条文中の「(法人の場合はその役員を含みます。)」といった法人を前提とした文言は、個人が相手の場合は当事者本人を対象とする表現に調整すると、そのまま使えます。

Q. 海外企業との契約にも反社会的勢力排除条項は使えますか?

A. 海外企業との契約に反社会的勢力排除条項を入れること自体は可能ですが、「反社会的勢力」という定義は日本の暴力団排除の枠組みを前提とするため、海外の相手にはそのまま当てはめにくい点に注意が必要です。

実務では、マネー・ローンダリングや各国が公表する制裁対象者(サンクションリスト)への非該当を含めた表現に広げたり、準拠法・紛争解決条項とあわせて設計したりする調整を行います。制裁対象者リストとの実際の照合手順や対応ツールは、反社チェックの海外制裁リスト対応とは?OFAC・EU・国連制裁リストの照合手順と対応ツールで詳しく解説しています。

相手国や契約類型に応じて、顧問弁護士に相談して文言を整えることをおすすめします。

Q. 反社会的勢力排除条項の無催告解除は本当に有効ですか?

A. 反社会的勢力排除条項の無催告解除は、当事者間の特約として有効に機能します。民法では、契約を解除する前に相当の期間を定めて履行を催告するのが原則ですが、契約で「催告を要せず直ちに解除できる」と定めることで、この原則の例外を設けられます。

東京都暴力団排除条例第18条第2項も、契約の相手方が暴力団関係者であると判明した場合に催告することなく解除できる特約を、契約書に定めるよう求めています。個別の事案で解除が認められるかは事実関係にもよるため、適用の判断は弁護士に確認すると安心です。

出典・参考資料(1件)

Q. 既存の契約書に反社会的勢力排除条項が入っていない場合はどうすればよいですか?

A. 既存の契約に反社会的勢力排除条項が無い場合は、当事者間で「反社会的勢力の排除に関する覚書」を別途締結して後付けするのが一般的です。覚書には、対象となる既存契約を特定したうえで5つの要素(①非該当の表明保証、②密接な関係の否定、③禁止行為の確約、④無催告解除、⑤損害賠償・違約金)を盛り込みます。

覚書の締結には相手方の同意が必要なため、契約更新や新たな取引の開始にあわせて提示すると応じてもらいやすくなります。相手方が締結に応じない場合は、その事実自体が取引継続を再検討する材料になります。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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