従業員を雇用して給与を支払う事業者には、従業員の個人住民税を給与から天引きして市区町村へ納める「特別徴収」が原則として義務づけられています。新しく特別徴収を始めるとき、従業員が入社・退職・転勤したとき、毎月の納付をするときなど、場面ごとに提出する書類や期限が決まっており、どれか一つでも抜けると滞納や延滞金のリスクにつながります。
この記事では、事業者(給与支払者)が行う住民税の特別徴収の手続きを、必要な書類・提出先・提出期限の一覧から、年間の流れ、入社・退職などの場面別対応まで、実務に沿って整理します。自社のケースにあてはめて判断する材料としてご活用ください。
目次
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住民税の特別徴収とは?原則すべての事業主が担う義務
まず押さえておきたいのは、特別徴収が事業主に課された義務だという点です。特別徴収とは、事業主(給与支払者)が従業員に代わって、毎月の給与から個人住民税を天引きし、市区町村へ納める仕組みを指します。従業員が自分で納付書によって納める「普通徴収」に対して、特別徴収では納税の実務を会社が担います。
従業員に所得税を源泉徴収して国に納める義務がある事業主は、原則として住民税についても特別徴収を行う義務があります。地方税法(第41条・第321条の4・第328条の5第1項)にもとづき、こうした事業主は市区町村から「特別徴収義務者」として指定されるためです。給与所得についての指定根拠が第321条の4で、条文では次のように定められています。
市町村は、前条の規定により特別徴収の方法によつて個人の市町村民税を徴収しようとする場合には、当該年度の初日において同条の納税義務者に対して給与の支払をする者(他の市町村内において給与の支払をする者を含む。)のうち所得税法第百八十三条の規定により給与の支払をする際所得税を徴収して納付する義務がある者を当該市町村の条例により特別徴収義務者として指定し、これに徴収させなければならない。
出典:地方税法第321条の4第1項|e-Gov法令検索
対象となる従業員は、正社員に限りません。前年に給与の支払いを受けており、かつ当該年度の初日(4月1日)に給与の支払いを受けている人は、パートやアルバイトであっても原則として特別徴収の対象です。
「事務が増えるので行いたくない」「経理担当者がいない」といった理由で特別徴収を行わないことは、法令上は認められていません。
従業員本人が「自分で納めたい」と希望しても、事業主の判断で普通徴収に切り替えることは原則としてできない点にも注意が必要です(普通徴収にできる例外は後述します)。
出典・参考資料(2件)
この記事は事業者が行う手続きに絞って解説します。特別徴収と普通徴収そのものの違いや、どちらで納めるかが分かれる仕組みをあらためて整理したい場合は、次の記事で詳しく解説しています。
特別徴収の手続きで使う書類・提出先・提出期限の一覧
ここからは、特別徴収の手続きで使う主な書類を、提出先と期限とあわせて一覧で確認します。どの書類を・いつまでに・どこへ出すかを最初に把握しておくと、場面ごとの対応で迷いにくくなります。提出先は、多くの手続きで「従業員の1月1日時点の住所地の市区町村」が基準になる点を押さえておきましょう。
| 書類 | 提出期限 | 提出先 | どんなときに提出するか |
|---|---|---|---|
| 給与支払報告書(個人別明細書・総括表) | 毎年1月31日 | 従業員の1月1日時点の住所地の市区町村 | 前年に給与を支払った事業主が毎年提出する |
| 普通徴収切替理由書(兼仕切書) | 給与支払報告書と同時(1月31日) | 同上 | 普通徴収にする従業員がいるとき |
| 給与所得者異動届出書 | 異動が生じた月の翌月10日 | 従業員の1月1日時点の住所地の市区町村 | 入社・退職・転勤・休職などで特別徴収に変更が生じたとき |
| 特別徴収への切替申請書 | 随時(自治体の定めによる) | 従業員の1月1日時点の住所地の市区町村 | 普通徴収から特別徴収へ切り替えるとき |
| 特別徴収税額の納期の特例に関する申請書 | 随時(承認後の納期から適用) | 納入先の市区町村 | 従業員が常時10人未満で年2回納入にするとき |
| 特別徴収義務者の所在地・名称等変更届出書 | 変更後すみやかに | 納入先の市区町村 | 会社の所在地・名称・電話番号などが変わったとき |
| 納入申告書(退職所得等の分離課税に係る所得割) | 徴収した月の翌月10日 | 退職金の支払いを受けるべき日の属する年の1月1日時点の住所地の市区町村 | 退職金を支払い、退職所得の特別徴収をするとき |
給与支払報告書は、従業員ごとの「個人別明細書」と、その一覧である「総括表」をセットで提出します。給与支払報告書を1月31日までに提出することは、地方税法第317条の6が定める事業主の義務です。
書類の正式名称や提出方法、様式は市区町村ごとに異なる場合があります。事務手引きでも「区市町村により、名称等が異なる場合があります」と繰り返し案内されているため、実際の様式は納付先の自治体のウェブサイトで確認してください。
出典・参考資料(3件)
特別徴収の年間手続きの流れ
特別徴収は、1年を通じて決まった時期に手続きが発生します。給与支払報告書の提出から毎月の納入まで、年間の流れを1本のスケジュールとして把握しておくと、抜け漏れを防ぎやすくなります。基本的な流れは次のとおりです。

| 時期 | 手続き |
|---|---|
| 1月31日まで | 前年分の給与支払報告書を、従業員の1月1日時点の住所地の市区町村へ提出する |
| 5月31日まで | 市区町村から「特別徴収税額決定通知書」が事業主と従業員あてに届く |
| 6月〜翌年5月 | 通知された年税額の12分の1を、毎月の給与から天引きする(年12回。6月分は端数調整のため他の月と金額が異なる場合がある) |
| 毎月、翌月10日まで | 天引きした住民税を市区町村へ納入する |
納入の期限は、地方税法第321条の5第1項で定められています。天引きした税額を翌月10日までに納める義務があり、6月から翌年5月までの年12回という回数もこの条文にもとづきます。
前条の特別徴収義務者は、(略)当該通知に係る給与所得に係る特別徴収税額の十二分の一の額を六月から翌年五月まで、(略)給与の支払をする際毎月徴収し、その徴収した月の翌月の十日までに、これを当該市町村に納入する義務を負う。
出典:地方税法第321条の5第1項|e-Gov法令検索
住民税は前年の所得をもとに市区町村が計算するため、所得税のように事業主が税額を計算する必要はありません。年末調整のような年税額の計算作業も生じず、事業主は通知された金額を天引きして納めることが基本の役割になります。
出典・参考資料(1件)
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場面別の特別徴収の手続き
ここからは、実務で発生する場面ごとに、出す書類と期限を確認します。従業員の入社・退職・転勤などの多くは「給与所得者異動届出書」で対応しますが、退職の時期や退職金の有無によって扱いが変わります。自社のケースにあてはめて確認してください。
特別徴収を始めるとき(新規・普通徴収からの切替)
新しく特別徴収を始めるとき
新たに従業員を雇い、初めて特別徴収を行う場合は、翌年1月31日までに給与支払報告書を提出することで、市区町村が特別徴収義務者に指定します。年の途中で入社した従業員は、給与支払報告書の提出時点では前年分の情報を反映するため、その年度の途中から特別徴収を始めたいときは、後述の切替申請書を使います。
普通徴収から特別徴収へ切り替えるとき
すでに普通徴収で納めている従業員を年度の途中で特別徴収に切り替える場合は、「特別徴収への切替申請書」を従業員の1月1日時点の住所地の市区町村へ提出します。反映される月は自治体や申請時期によって異なるため、切り替えたい時期が決まっている場合は、余裕をもって納付先の市区町村に確認しておくと確実です。
ただし、すでに納期限を過ぎている普通徴収分の住民税は、特別徴収に切り替えることはできません。納期限を過ぎていない残りの税額が切替の対象になります。
従業員に異動があったとき(給与所得者異動届出書を提出)
従業員の入社・退職・転勤・休職などで特別徴収に変更が生じたときは、いずれも「給与所得者異動届出書」を、異動が生じた月の翌月10日までに提出します。場面ごとの取り扱いは次のとおりです。
従業員が入社したとき
前職で特別徴収を受けていた従業員が入社し、引き続き特別徴収を続ける場合は、前職から発行される給与所得者異動届出書を受け取り、自社の情報を記入して市区町村へ提出します。前年に所得がなかった新入社員など、前年の住民税が課税されていない人は、新たな切替手続きは不要で、翌年1月の給与支払報告書の提出により、その翌年度から特別徴収の対象になります。
従業員が退職したとき
従業員が退職すると、その後の給与から住民税を天引きできなくなります。残りの住民税をどう扱うかは退職の時期によって分かれ、特に1月1日から4月30日までの退職では、本人の申し出がなくても一括徴収の対象になります。地方税法第321条の5第2項では次のように定められています。
(略)その事由がその年の翌年の一月一日から四月三十日までの間において発生した場合には、当該納税義務者に対してその年の五月三十一日までの間に支払われるべき給与又は退職手当等で当該月割額の全額に相当する金額を超えるものがあるときに限り、(略)当該月割額の全額(略)を徴収し、その徴収した月の翌月十日までに、これを当該市町村に納入しなければならない。
出典:地方税法第321条の5第2項|e-Gov法令検索
6月1日から12月31日までの退職では、本人からの申し出があった場合に限り一括徴収します。申し出がなければ、残額は従業員が普通徴収へ切り替えて自分で納めることになります。いずれの場合も、退職した月の翌月10日までに給与所得者異動届出書を提出します。
退職の時期ごとの残りの住民税(当年度分)の扱いをまとめると、次のとおりです。
| 退職の時期 | 残りの住民税(当年度分)の扱い |
|---|---|
| 1月1日〜4月30日 | 本人の申し出がなくても、5月31日までに支払う給与・退職手当等から一括徴収する(死亡退職や、一括徴収額が退職手当等を超える場合を除く) |
| 5月中 | 当年度分は5月分で徴収が終わるため、通常は最終給与から5月分を天引きして完了する(翌年度分は6月からの徴収開始前のため、この時点では発生しない) |
| 6月1日〜12月31日 | 本人の申し出があった場合に限り一括徴収する。申し出がなければ残額は普通徴収へ切り替える |
従業員が転職・再就職したとき
従業員が転職・再就職で別の会社に移る場合、条件が整えば再就職先で特別徴収を継続できます。再就職先が給与所得者異動届出書を受け取り、市区町村へ提出することで、普通徴収に切り替えずに天引きを引き継げます。退職者に再就職先が決まっている場合は、この継続手続きの有無を本人と確認しておくとスムーズです。
同じ会社の中での転勤(勤務地の異動)の場合は、特別徴収の提出先は従業員の1月1日時点の住所地のままで変わりません。従業員の住所が変わらなければ、特段の手続きは必要ないことが一般的です。
従業員が休職・死亡したとき
休職などで給与の支払いがなくなり天引きができない場合は、給与所得者異動届出書を提出し、残りの税額を普通徴収へ切り替えます。死亡により退職した場合は、1月1日から4月30日の退職であっても一括徴収の対象にはなりません。この場合の残額は、相続人が普通徴収で納めることになります。
会社の情報や税額に変更があったとき
税額の変更通知が届いたとき
従業員の確定申告や扶養親族の状況の変更などにより、いったん通知された税額が再計算されることがあります。その場合は市区町村から税額変更の通知が届くため、通知された新しい金額にもとづいて、変更後の月割額を天引きします。
会社の所在地・名称が変わったとき
事業主の所在地・名称・電話番号などが変わったときは、「特別徴収義務者の所在地・名称等変更届出書」を納入先の市区町村へ提出します。通知書や納入書の送付先が変わるため、変更後はすみやかに届け出ることが必要です。
退職金を支払うとき(退職所得の分離課税)
退職金を支払う場合は、毎月の給与とは別に、退職所得に対する住民税を分離課税として特別徴収します。地方税法第328条の5にもとづき、退職手当等を支払う際に所得割を徴収し、徴収した月の翌月10日までに、納入申告書を添えて市区町村へ納入します。納入先は、退職手当等の支払いを受けるべき日の属する年の1月1日時点で従業員が住んでいた市区町村です。
退職所得は、退職金の収入金額から勤続年数に応じた退職所得控除を差し引き、原則としてその2分の1を課税対象とする分離課税で計算します(勤続年数5年以内の法人役員等は2分の1を適用しません)。控除額や税額の具体的な計算方法は、東京都主税局の事務手引きに沿って確認してください。
出典・参考資料(2件)
従業員が常時10人未満なら使える「納期の特例」
毎月10日の納入が負担になる小規模な事業所には、納入の回数を年2回にまとめられる「納期の特例」が用意されています。給与の支払いを受ける従業員が常時10人未満の事業所が対象で、市区町村長の承認を受けることで適用されます。
承認を受けると、6月から11月までに天引きした分を12月10日までに、12月から翌年5月までに天引きした分を6月10日までに納入します。地方税法第321条の5の2にもとづく制度で、事務手引きでは次のように案内されています。
給与の支払いを受ける者が常時 10 人未満の事業所は、申請により区市町村長の承認を受けることにより、毎月の納入から年 2 回の納入に変更することができます。(略)個人住民税の特別徴収分の 6 月から 11 月までの分を 12 月 10 日までに、12 月から翌年 5 月までの分を 6 月 10 日までに納入します。
出典:個人住民税 特別徴収の事務手引き(令和5年11月)|東京都主税局
注意したいのは、年2回にまとめられるのは「納入」だけだという点です。毎月の給与からの天引き自体は通常どおり行い、預かった税額を年2回に分けて納める仕組みになります。従業員が常時10人以上になり要件を満たさなくなったときは、要件を欠いた場合の届出書(様式名は自治体で確認してください)を提出する必要があります。
出典・参考資料(2件)
普通徴収にできる例外と、個人都合で変えられない理由
特別徴収が原則である一方で、一定の要件にあてはまる従業員は普通徴収にできます。東京都と都内の全62区市町村では、その理由を「普A〜普F」の符号で整理しています。普通徴収にする従業員がいる場合は、給与支払報告書と一緒に「普通徴収切替理由書(兼仕切書)」を提出します。
| 符号 | 普通徴収にできる要件 |
|---|---|
| 普A | 事業所の総従業員数が2人以下(他の符号で普通徴収とする対象者を除いた人数) |
| 普B | 他の事業所で特別徴収を受けている |
| 普C | 給与が少なく、住民税を天引きできない |
| 普D | 給与の支払いが不定期(毎月の支払いでない場合など) |
| 普E | 事業専従者(個人事業主のみ対象) |
| 普F | 退職者、または5月末日までの退職予定者(休職などで4月1日時点で給与の支払いを受けていない人を含む) |
この普A〜普Fという符号は、東京都と都内区市町村の運用にもとづくものです。他の地域では符号の名称や様式、区分が異なる場合があるため、実際の切替理由書の様式や記載方法は、納付先の自治体で確認してください。
これらの要件にあてはまらない限り、普通徴収は認められません。従業員から「副業を知られたくない」といった理由で普通徴収にしてほしいと求められても、事業主には特別徴収の義務があるため、本人の希望だけで普通徴収に変えることはできない点に注意が必要です。
出典・参考資料(1件)
eLTAXでの電子提出・電子納税(紙との違い)
給与支払報告書や異動届の提出、毎月の納入は、紙のほかに地方税ポータルシステム「eLTAX(エルタックス)」を使った電子手続きにも対応しています。複数の市区町村へ書類を提出したり納入したりする事業主ほど、電子化によって窓口ごとの手続きや郵送の手間を減らせます。
納入では、eLTAX内の「地方税共通納税システム」を使うと、全国の市区町村へパソコンから電子的に納税でき、複数の市区町村あてに一括で納入手続きができます。
対応ソフトウェア「PCdesk(ピーシーデスク)」を利用して、ダイレクト納付(口座振替)、インターネットバンキング、ATM、クレジットカードで納入する方法や、地方税統一QRコード「eL-QR」を読み取って専用サイト・スマートフォン決済アプリ・対応金融機関で納入する方法があります。
eLTAXを使うには、あらかじめ利用環境の設定と利用届出(新規)が必要です。納税そのものに電子署名は求められませんが、利用届出の際には電子証明書の登録が必須となります(顧問税理士が手続きを行う場合は省略できることがあります)。具体的な画面操作の手順は、地方税共同機構が公開する納付フローやPCdeskの操作ガイドで確認してください。
出典・参考資料(2件)
納入が遅れるとどうなる?延滞金・滞納処分のリスク
天引きした住民税を期限までに納入しないと、延滞金や滞納処分の対象になります。特別徴収義務者は、通知された税額を納期限内に納める義務があり、これを怠って納期限を過ぎると滞納として扱われます。事務手引きでは、地方税法にもとづく取り扱いが次のように示されています。
地方税法第 321 条の 5 の規定により、特別徴収義務者は特別徴収税額決定通知書に記載された税額を納期限内に納入する義務があります。したがって、特別徴収を拒否した結果、納期限を経過した場合は、税金を滞納していることとなり、地方税法第 331 条に基づく滞納処分を行うこととなります。
出典:個人住民税 特別徴収の事務手引き(令和5年11月)|東京都主税局
督促を受けてもなお納入しない場合は、財産の差押えなどの滞納処分に進むことがあります。延滞金の割合は、地方税法の本則では納期限の翌日から1か月以内が年7.3%、1か月を経過した後は年14.6%と定められています。
ただし、実際に適用される率は特例基準割合により毎年見直され、本則より低くなります。たとえば2026年(令和8年)は、1か月以内が年2.8%、1か月を経過した後が年9.1%です。適用率は年度により変わるため、最新年の率は納付先の自治体や総務省の告示で確認してください。
そもそも、給与から天引きした住民税は、事業主が従業員から預かっている預り金であり、会社の運転資金ではありません。資金繰りにかかわらず、期限までに市区町村へ納めることが求められます。
出典・参考資料(2件)
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事務負担を軽くする選択肢:給与計算のアウトソーシング
ここまで見てきたように、特別徴収は毎月の納入に加えて、従業員の入退社のたびに異動届を出し、年に一度は給与支払報告書を提出するなど、通年で細かな手続きが続きます。担当者が少ない事業所では、こうした住民税まわりの事務が負担になりがちです。給与計算そのものとあわせて外部に委託する選択肢を検討する価値があります。
委託でどこまで任せられるか
給与計算アウトソーシングでは、毎月の給与・賞与計算に加えて、住民税の徴収額更新(特別徴収税額通知の反映)や、入退社にともなう給与所得者異動届出書の作成、年末調整までを委託できるサービスがあります。どこまで任せられるかはサービスによって異なるため、住民税の特別徴収や異動届の対応が含まれるかを、契約前に確認しておくことが大切です。
住民税の特別徴収に対応する主な給与計算アウトソーシング
ここでは、住民税の特別徴収に関わる業務(徴収額の更新や異動届の作成)に対応する給与計算アウトソーシングを紹介します。対応範囲や料金は問い合わせベースのものが多いため、詳細は各社への確認が必要です。
| サービス名 | ペイロール | MHCトリプルウィン |
|---|---|---|
| 提供形態 | 給与計算特化型 (大企業向けの一括業務委託) | 給与計算特化型 (オーダーメイド/パッケージ/SaaS) |
| 住民税・異動届への対応 | ●地方税の特別徴収補助に対応。入退社手続きも代行 | ●特別徴収税額通知のデータ化・異動届出書の自動生成に対応 |
| 対応業務範囲 | 給与・賞与計算 年末調整補助 マイナンバー管理 入退社手続き 従業員の問い合わせ対応 | 給与・賞与計算 年末調整 住民税処理 社会保険(社労士連携) 勤怠・会計連携 |
| 対応企業規模 | 大企業向け (下限の閾値は非公開) | 小規模〜大規模 (公開事例は200〜3,000名規模) |
| 料金 | 要見積 (委託範囲に応じた個別見積り) | 要見積 (委託範囲に応じた個別見積り) |
| 詳細情報 | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る |
1. ペイロール(株式会社ペイロール)

1989年設立の株式会社ペイロールは、従業員数の多い大企業向けに給与計算業務のアウトソーシングを展開しています。給与・賞与計算に加え、年末調整補助、地方税の特別徴収補助、マイナンバー管理、入退社手続き、従業員からの問い合わせ対応まで請け負う、対応範囲の広さが特徴です。
279社・123万人超の受託実績を公式サイトで公表しています。既存の人事・勤怠システムとは、コネクタ連携・API連携・個別開発の3つの方式で接続でき、従業員向けのコールセンターも備えています。料金は従業員数や委託範囲に応じた個別見積りとなります。
2. MHCトリプルウィン(MHCトリプルウィン株式会社)

MHCトリプルウィン株式会社は、三菱HCキャピタルグループで給与計算・人事の業務委託(BPO)を手がける会社です。住民税については、特別徴収税額通知のデータ化や異動届出書の自動生成に対応しており、給与・賞与計算、年末調整、社会保険関連事務(提携社会保険労務士との連携)まで委託できます。
委託範囲を柔軟に設計する「オーダーメイド型」、コア業務を標準化した「パッケージ型」、システム環境を提供する「SaaS型」の3方式から、要件と予算に応じて選べます。プライバシーマーク、ISO/IEC 27001、内部統制の保証報告書であるSOC1 Type2を取得しています。料金は個社ごとの見積り制です。
ここで紹介した2社以外にも、給与計算アウトソーシングは数多くあります。以下の記事では、任せられる業務範囲や料金体系、企業規模ごとの選び方まで含めて比較しているので、委託先を本格的に検討する際にあわせてご覧ください。
給与計算アウトソーシングおすすめ34選を比較|業務範囲・料金体系・規模別の選び方
毎月の給与計算や賞与計算、年末調整、社会保険の手続きに、特定の担当者が追われていないでしょうか。社会保険料率や税制は毎年のように改正され、その都度の確認作業まで含めると、経理や人事、総務の少人数体制では業務が属人化しやすくなります。担当者が…
まとめ
住民税の特別徴収は、所得税を源泉徴収している事業主に原則として課された義務で、毎年1月末の給与支払報告書の提出から、5月の税額決定通知、6月からの毎月の天引きと翌月10日の納入まで、通年で手続きが続きます。入社・退職・転勤などの場面では給与所得者異動届出書を、普通徴収にする従業員がいるときは切替理由書を提出するなど、場面ごとに出す書類と期限が決まっています。
書類の様式や普通徴収にできる要件の細部、延滞金の割合は、自治体や年度によって異なります。自社のケースにあてはまるかは、納付先の市区町村の案内で確認してください。
毎月の納入や異動届の事務が負担になっている場合は、住民税の特別徴収に対応した給与計算アウトソーシングの活用も選択肢になります。委託できる業務の範囲や料金は各社で異なるため、まずは複数のサービスの資料を取り寄せて比較してみてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 住民税の特別徴収とは何ですか?
A. 住民税の特別徴収とは、事業主(給与支払者)が従業員に代わって毎月の給与から個人住民税を天引きし、市区町村へ納める制度です。従業員が自分で納付書を使って納める「普通徴収」に対して、特別徴収では納税の実務を会社が担います。
従業員に所得税を源泉徴収して国に納める義務がある事業主は、原則として住民税についても特別徴収を行う義務があり、市区町村から「特別徴収義務者」として指定されます(地方税法第41条・第321条の4・第328条の5第1項)。
Q. 従業員が少ない会社や家族だけの事業所でも、住民税の特別徴収は必要ですか?
A. 住民税の特別徴収は、従業員数や家族経営かどうかにかかわらず、所得税を源泉徴収している事業主であれば原則として行う義務があります。従業員が少ないことや家族だけの事業所であることは、それ自体では特別徴収を行わない理由になりません。
ただし、給与の支払いを受ける従業員が常時10人未満の事業所は、申請により納入を年2回にまとめる「納期の特例」を利用できます。また、事業所の総従業員数が2人以下の場合(普A)や、個人事業主の事業専従者(普E)など、一定の要件にあてはまる従業員は普通徴収にできます。
こうした符号や要件は東京都・都内区市町村の運用にもとづくもので、地域によって名称や区分が異なる場合があるため、納付先の自治体で確認してください(参考:東京都主税局「個人住民税 特別徴収の事務手引き」)。
Q. 他社ですでに特別徴収を受けている従業員は、自社でも住民税を天引きしますか?
A. 2か所以上から給与を受けている従業員の住民税の特別徴収は、主たる給与を支払う1社だけで行い、従たる給与の会社では天引きしません。どちらが主たる給与かは、通常は給与の金額が多い方で判断します。
自社が従たる給与の支払者にあたる場合、その従業員は普通徴収(符号は普B=他の事業所で特別徴収を受けている)として、給与支払報告書と一緒に普通徴収切替理由書を提出します(参考:東京都主税局「個人住民税 特別徴収の事務手引き」)。
Q. 前年に所得がなかった新入社員も、特別徴収への切替手続きが必要ですか?
A. 前年に所得がなく住民税が課税されていない新入社員については、特別徴収への切替手続きは必要ありません。前年に納めるべき住民税がない人には、その年度に天引きする税額そのものがないためです。
この場合は、入社の翌年1月に給与支払報告書を提出することで、その翌年度から自動的に特別徴収の対象になります。一方、前職で特別徴収を受けていた従業員をそのまま引き継ぐ場合は、前職から発行される給与所得者異動届出書による継続の手続きが必要です。
Q. 普通徴収で納め忘れている住民税を、特別徴収に切り替えて天引きできますか?
A. すでに納期限を過ぎている普通徴収分の住民税は、特別徴収に切り替えることはできません。特別徴収に切り替えられるのは、まだ納期限が到来していない残りの税額に限られます。
年度の途中で普通徴収から特別徴収へ切り替える場合は、「特別徴収への切替申請書」を従業員の1月1日時点の住所地の市区町村へ提出します。すでに滞納となっている分は、従業員本人が普通徴収のまま納めることになります。
Q. 毎月の給与から天引きする住民税の額は、毎月変わりますか?
A. 住民税の特別徴収額は、市区町村が計算した年税額を12分の1にした金額で、原則として1年間はほぼ一定です。所得税のように毎月の給与額に応じて事業主が計算し直す必要はありません。
6月分は端数調整のため他の月と金額が異なることがありますが、7月以降は同じ額が続きます。従業員の確定申告や扶養の変更などで税額が変わったときは、市区町村から税額変更の通知が届くため、その新しい金額にもとづいて天引き額を変更します。
Q. 住民税の特別徴収の書類は、どの市区町村に提出しますか?
A. 住民税の特別徴収に関する書類は、原則として従業員が1月1日時点で住んでいた住所地の市区町村に提出します。会社の所在地の市区町村ではない点に注意が必要です。
給与支払報告書も給与所得者異動届出書も、提出先は従業員の1月1日時点の住所地の市区町村です。従業員によって住所地の市区町村が異なる場合は、市区町村ごとに書類を分けて提出します。
Q. 給与計算をアウトソーシングすれば、住民税の特別徴収の事務も任せられますか?
A. 給与計算アウトソーシングでは、住民税の徴収額の更新や異動届出書の作成まで委託できるサービスがありますが、納入する義務そのものは特別徴収義務者である事業主に残ります。事務の代行を任せても、期限までに正しく納入されているかは事業主が把握しておく必要があります。
委託できる範囲はサービスによって異なるため、住民税の特別徴収や異動届の対応が含まれるかを契約前に確認しておくことが大切です。毎月の納入や異動届の事務が負担になっている場合は、対応範囲を各社の資料で比較してみてください。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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