全社では黒字なのに、どの事業や店舗が利益を生み、どこが赤字なのかが見えないままになっていませんか。
部門別採算制度は、部門ごとに売上・費用・利益を切り出し、採算(儲け)を数字で見える化する管理会計の仕組みです。全社の決算では埋もれてしまう部門単位の損益を明らかにし、どこに手を打つべきかを判断できるようにします。
本記事では、部門別採算制度とは何か、財務会計との違い、導入のメリットと注意点、そして部門の区切り方・共通費の配賦ルール・部門別損益の作り方・月次運用までを、数値例を交えて具体的に解説します。あわせて、京セラのアメーバ経営をはじめとする導入事例と、運用を支える管理会計システムも紹介します。
部門の区切り方から共通費の配賦、月次運用まで、自社で部門別採算制度を始めるための具体像をつかんでいきましょう。
目次
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部門別採算制度とは
ここからは、部門別採算制度が結局どういう仕組みなのかを、数字のイメージとあわせて解説します。
部門別採算制度の定義
部門別採算制度とは、会社を事業・店舗・拠点などの部門に分け、部門ごとに売上・費用・利益を集計して採算を見える化する管理会計の仕組みです。全社をひとまとめにした損益計算書では見えない「どの部門が稼ぎ、どの部門が赤字か」を明らかにし、経営の打ち手を部門単位で判断できるようにします。
数字で見る部門別損益のイメージ
部門別損益は、部門の売上から、その部門が直接使った費用(直接費)と、全社で共通してかかる費用を割り振った分(配賦費用)を差し引いて、部門の利益を求めます。たとえば、ある事業部(A事業部)の1か月の数字を単純化すると次のようになります(金額は説明のための例で、本記事ではこのA事業部の数字を通して使います)。
| 売上高 | 直接費(変動費+部門の個別固定費) | 配賦費用(本社費・家賃などの共通費の割り振り分) | 部門利益 | |
|---|---|---|---|---|
| A事業部(例) | 10,000,000円 | 7,000,000円 | 2,000,000円 | 1,000,000円 |
このように部門ごとの利益を同じ形で並べると、全社では黒字でも、どの部門が利益を押し上げ、どの部門が足を引っ張っているのかが一目で分かります。段階的な損益の作り方や配賦の具体的な決め方は、後半で詳しく解説します。
社内売買(部門間取引)という考え方
部門別採算を徹底する際に使われるのが、社内売買(部門間取引)という考え方です。部門どうしで仕事やモノをやり取りするときに、社内で取引価格を設定して売上・費用として計上することで、直接の外部売上がない製造・間接部門でも採算を測れるようにします。この仕組みを徹底した代表例が京セラのアメーバ経営で、具体的な運用は後述の導入事例で紹介します。
ただし、社内売買は部門別採算を始める前提ではありません。外部への売上がある事業部・店舗ごとの採算から始めれば、社内売買を設けなくても部門別損益は作れます。まずは外部売上のある部門で回し、間接部門の採算まで踏み込む段階で社内売買の導入を検討する、という進め方が現実的です。
事業部制・独立採算制との関係
部門別採算と近い言葉に、事業部制や独立採算制があります。事業部制は、事業ごとに製造・販売などの権限を持たせた組織の形を指し、独立採算制は、その部門が自分の収入で費用をまかなう運営方針を指します。
部門別採算制度は、これらの組織形態や運営方針を支える「採算を測る会計の仕組み」にあたります。事業部制をとっていなくても、既存の組織に部門別の損益管理を導入することは可能です。
財務会計との違い
ここからは、なぜ通常の決算書では部門ごとの採算が見えにくいのかを、財務会計との違いから整理します。部門別採算は管理会計に位置づけられ、社外に報告する財務会計とは目的もルールも異なります。
| 主な目的 | 対象とする時間 | 集計の単位 | ルール | |
|---|---|---|---|---|
| 部門別採算(管理会計) | 社内の意思決定・業績管理 | 過去の実績に加え、予算・見込みなど未来も扱う | 部門・事業・拠点・プロジェクトなど自由に設定 | 会社が自由に設計できる |
| 財務会計 | 株主・税務署など社外への報告 | 確定した過去の実績が中心 | 会社全体(法人単位) | 会社法・会計基準・税法などの制度に従う |
財務会計は会社全体を制度に沿ってまとめるため、部門ごとの採算はそのままでは見えません。部門別採算制度は、同じ会計データを部門という切り口で組み替え、経営判断に使える形にする取り組みといえます。
部門別採算は管理会計の一分野です。管理会計と財務会計の違いを、目的・ルール・扱う数値など複数の観点からより詳しく押さえたい場合は、以下の記事で整理しています。
部門別採算制度を導入するメリット
部門別採算制度を導入すると、全社の損益を見ているだけでは得られない情報と行動の変化が生まれます。主なメリットは次の4点です。
赤字部門を特定できます。全社が黒字でも、その内訳には利益を生む部門と損失を出す部門が混在していることがあります。部門別に採算を見える化すると、どこで利益が生まれ、どこで失われているのかを具体的に把握でき、改善の優先順位を付けられます。
利益責任が明確になります。部門ごとに損益の数字が出ることで、部門長が自部門の採算に責任を持つようになります。成果と費用の関係がはっきりするため、評価の納得感も高まります。
現場の採算意識が高まります。自分たちの働きが数字としてすぐに返ってくると、社員はコストや売上への意識を持ちやすくなります。経営者だけでなく現場も採算を考えて動くようになる点が、制度の大きな効果です。
意思決定が速くなります。部門ごとの損益が毎月そろうと、業績の変化に早く気づき、増員・撤退・価格見直しといった判断を根拠を持って下せます。勘や経験だけに頼らない経営に近づきます。
部門別採算制度のデメリット・運用の注意点
一方で、部門別採算制度には運用上の難しさもあります。あらかじめ注意点を押さえておくことで、制度が形だけになったり、かえって社内の対立を生んだりするのを防げます。
特に重要なのは、導入の目的を全部門で共有しておくことです。部門別の数字は、うまくいっていない部門を責めるためではなく、どこに手を打てば全社の利益が増えるかを考えるための共通言語です。目的を共有しないまま数字が独り歩きすると、不公平感から制度そのものへの反発を招きかねません。配賦ルールやKPIを決める前に、何のために採算を見える化するのかを経営層と現場で合意しておくことが、定着の土台になります。
部門間の対立・間接部門の扱い・配賦のもめごと
採算を部門ごとに競わせると、自部門の数字を優先して部門間の協力が薄れることがあります。社内売買の価格や共通費の配賦ルールに納得感がないと、「なぜこの費用を自部門が負担するのか」という不満が生まれやすくなります。
総務・経理・情報システムなどの間接部門は、直接の売上を持たないため採算の測り方が難しいという課題もあります。無理にすべての部門を利益で評価しようとせず、費用の管理に責任を持つ部門(コストセンター)として扱うなど、部門の性質に応じた設計が必要です。
「配賦後に赤字」でも即撤退とは限らない
部門別損益を見るときに注意したいのが、共通費を配賦した後の利益だけで撤退を判断しないことです。配賦される本社費や家賃などの共通費は、その部門をやめても多くが会社に残り続けます。
そこで役立つのが、売上から変動費を差し引いた貢献利益という考え方です。配賦後は赤字でも貢献利益が黒字の部門は、共通費の一部を負担して全社の利益に貢献しています。その部門をやめると、残った共通費を他部門で抱えることになり、かえって全社の利益が減ることもあります。配賦後の数字は目安としつつ、貢献利益もあわせて見て判断することが大切です。
部門別採算制度の作り方(5ステップ)
ここからは、部門別採算制度を自社で始めるための手順を5つのステップで解説します。部門の区切り方から月次の回し方まで、順を追って設計していきます。
STEP1 部門(責任単位)を切る
まず、採算を測る単位となる部門を決めます。目安は、損益に責任を持つ責任者を1人ひもづけられる単位まで区切ることです。細かすぎると集計の手間が増え、大きすぎると問題のある箇所が埋もれるため、自社の組織に合わせて粒度を調整します。
部門は、責任の持ち方に応じた責任センターとして整理すると設計しやすくなります。代表的なのは、費用の管理に責任を持つ費用責任部門(コストセンター)と、売上と費用の両方(すなわち利益)に責任を持つ利益責任部門(プロフィットセンター)です。
さらに、利益に加えて設備投資などの投資効率(投下資本に対する利益率)にも責任を持つ投資責任部門(インベストメントセンター)もあります。どのセンターとして扱うかで追うべき指標が変わるため、部門の役割に合わせて選びます。費用のうち部門長が自分で動かせる管理可能費に責任を負わせるのが、責任会計の基本です。直接の売上を持たない間接部門をコストセンターとして扱うのも、この考え方に沿った設計です。
STEP2 部門別損益のフォーマットを作る
次に、部門ごとの損益を同じ形で並べるフォーマットを決めます。売上からその部門が直接負担する費用(直接費)を引いて部門の一次的な利益を出し、そこから共通費の配賦を引いて最終的な部門利益を求める、という段階を踏むと、どの段階で利益が削られたかが分かります。

先ほどのA事業部に、もう1つのB事業部を並べた例が次の表です(金額は説明のための例です)。変動費を引いた貢献利益と、配賦後の部門利益を分けて見せることで、前述の撤退判断にも使えるフォーマットになります。
| 売上高 | 変動費 | 貢献利益 | 個別固定費(部門が直接負担する固定費) | 配賦費用(共通費の割り振り分) | 部門利益 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A事業部 | 10,000,000円 | 4,000,000円 | 6,000,000円 | 3,000,000円 | 2,000,000円 | 1,000,000円 |
| B事業部 | 6,000,000円 | 3,000,000円 | 3,000,000円 | 1,500,000円 | 1,800,000円 | ▲300,000円 |
A事業部では、変動費を引いた貢献利益6,000,000円から個別固定費3,000,000円と配賦費用2,000,000円を差し引いて、部門利益は1,000,000円です。一方のB事業部は配賦後に300,000円の赤字ですが、貢献利益は3,000,000円の黒字です。共通費を負担しながらも全社の利益に貢献しているため、配賦後の赤字だけを見て撤退を決めるのは早計だと分かります。
STEP3 共通費の配賦ルールを決める
本社費や家賃など、複数の部門で共通してかかる費用(共通費)を、どの基準で各部門に割り振るかを決めます。この割り振りを配賦と呼びます。配賦の基準に納得感がないと制度全体への不信につながるため、ここは丁寧に設計します。
配賦基準を決めるときに、実務上の指針として一般に挙げられるのが次の3点です。1つ目は、費用の発生と関わりの深い基準を選ぶこと(因果関係)。2つ目は、現場で集計できる無理のない基準にすること(簡便性)。3つ目は、一度決めた基準を期中でむやみに変えないこと(一貫性)です。この3点を満たす基準なら、部門長も配賦の根拠に納得しやすくなります。
具体的な費目と配賦基準の対応や計算のイメージは、次の章で詳しく解説します。
STEP4 部門のKPIと目標を設定する
損益のフォーマットができたら、各部門が追うべき目標と指標(KPI)を設定します。設定のポイントは、部門が自分の責任範囲で動かせる指標にそろえることです。利益責任部門なら売上や部門利益、費用責任部門なら費用の予算達成率やコスト削減率など、責任の性質に合わせて選びます。
STEP5 月次で予実を回す
最後に、毎月の実績を予算と見比べて、差が出た原因を確かめ、次の行動につなげる運用を回します。予算と実績の差(予実差異)を把握し、なぜ差が出たのかを部門と話し合い、具体的な打ち手まで落とすことで、制度が数字を出すだけで終わらず経営に生きます。
この月次のサイクルを続けることが、部門別採算制度を定着させる鍵になります。集計に時間がかかると翌月の行動が遅れるため、できるだけ早く数字をそろえる仕組みづくりも重要です。
月次で予算と実績を見比べる進め方や、差が出た原因を掘り下げる差異分析のやり方、Excelでの予実管理表の作り方は、以下の記事で手順を追って解説しています。
共通費の配賦の具体例
部門別採算でつまずきやすいのが、共通費の配賦です。ここでは、どの費目をどの基準で割り振るか、実際にどう計算するかを具体的に解説します。
費目ごとの配賦基準の考え方
配賦基準は、その費用がどの要因で増減するかに合わせて選ぶと納得感が高まります。代表的な費目と、よく使われる配賦基準の対応は次のとおりです(自社の実態に合わせて調整してください)。
| 本社管理部門の人件費 | オフィスの家賃・水道光熱費 | 物流費・配送センター費 | 情報システム費 | |
|---|---|---|---|---|
| よく使われる配賦基準 | 各部門の人数比 | 各部門の使用面積比 | 売上高比または出荷量比 | 利用者数比またはPC台数比 |
| 考え方 | 人数が多い部門ほど管理の手間がかかるため | 占有スペースに応じて負担するため | 取扱量に応じて費用が増えるため | 利用規模に応じて負担するため |
配賦の計算イメージ
先ほどのA事業部の配賦費用2,000,000円が、実際にはどう計算されるのかを見てみます。この配賦費用は複数の共通費を積み上げた合計で、たとえばそのうちの本社管理部門の人件費1,500,000円を人数比で配賦するケースを考えます。A事業部30人・B事業部20人の合計50人で負担するとします。

この人件費のA事業部への配賦額は1,500,000円 × 30人 ÷ 50人で900,000円、B事業部へは1,500,000円 × 20人 ÷ 50人で600,000円となります。A事業部の配賦費用2,000,000円は、この本社人件費900,000円に、家賃や物流費などを配賦した分を積み上げた合計です。
家賃は使用面積比、物流費は売上高比、というように費目ごとに基準を変えて按分していきます。費目や基準が増えるほど計算は煩雑になるため、基準は因果関係が説明できる範囲で絞り込むのが運用のコツです。
部門別採算制度の導入事例
ここでは、部門別採算制度を公式に掲げている代表的な企業の事例を紹介します。考え方を具体的にイメージする参考になります。
京セラのアメーバ経営
部門別採算制度の代表例としてしばしば挙げられるのが、京セラのアメーバ経営です。同社は、会社を「アメーバ」と呼ぶ小さな組織に分け、市場の動きに即座に対応できる部門別採算管理を行うと説明しています。各アメーバを独立採算で運営するために部門間で売買を発生させ、全社員が理解できる採算表を用いる点が特徴です。
会社経営の原理原則は、売上を最大にして、経費を最小にしていくことです。この原則を全社にわたって実践していくために、社内を小さな組織「アメーバ」に分けて、市場の動きに即座に対応できる部門別採算管理を行います。
出典:市場に直結した部門別採算制度の確立|京セラ株式会社
JALの路線別・部門別採算
日本航空(JAL)も、部門別採算制度を公式に掲げる企業の一つです。多数の路線という細かな単位を抱える大企業が、路線や部門ごとに採算を把握する仕組みを経営に取り入れていることを企業サイトで示しています。部門別採算の考え方が、事業単位の多い大規模な組織でも経営管理の土台として使えることを表す例といえます。
出典・参考資料(1件)
自社で部門別採算を回すにあたり、予実管理や配賦を支えるツールの資料をまとめて取り寄せて比較できます。
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部門別採算制度の運用を支える管理会計システム
ここからは、部門別採算を無理なく回すための手段として、管理会計システムを紹介します。配賦・予実・部門別損益の集計を自動化することで、月次のサイクルを速く正確に回せるようになります。
Excelで部門別採算を回す限界
部門別採算は、Excelでも始められます。ただし、部門や配賦基準が増えるにつれて、会計データの取り込み・配賦計算・予実の突合といった作業が膨らみ、毎月の集計に時間がかかるようになります。担当者に作業が集中して属人化し、数字が出るころには打ち手が遅れる、という状態に陥りがちです。
こうした集計作業を自動化し、部門別・拠点別・プロジェクト別の予実と損益を素早く見える化する手段が、管理会計システム(予実管理・経営管理ツール)です。配賦や予実突合を自動で処理できるため、分析と打ち手の検討に時間を使えるようになります。
ここからは、部門別採算の運用に役立つ管理会計システムを紹介します。まずは主なサービスの特徴を比較表で確認してください。
| サービス名 | DIGGLE(ディグル) | Amoeba Pro 管理会計クラウド | Loglass 経営管理 | Manageboard |
|---|---|---|---|---|
| 配賦への対応 | ●多段階配賦に対応。配賦元・配賦先・配賦基準を設定し、ルールのON/OFF切替とスナップショット比較が可能 | ●配賦・徴収など、既存の管理会計の運用ルールに合わせた処理に対応 | ●配賦機能を備え、配賦の有無をワンクリックで切り替えて結果を比較できる | ●最大10階層の部門グルーピングに対応。共通費を売上高比・人数比などで配賦 |
| 部門別・セグメント損益の分析 | 勘定科目より細かい粒度で損益を管理・分析。計画/見込/実績の対比や多年度分析に対応 | 部門・事業・商品・プロジェクトなど最大6セグメントで採算を分析。マトリックス分析に対応 | 多軸・ドリルダウン分析に対応。差異を仕訳・摘要レベルまで遡れ、連結にも対応 | 財務三表とKPIを連動。PLから配下KPIや総勘定元帳の明細へドリルダウン、タグ分析も可能 |
| 予実管理 | 予算策定・予実突合・見込管理・レポーティングを一元管理(予実管理特化) | 予算編成・実績集計・見通し(予算・見込み)の集計に対応 | 予算・実績・見込を自由に組み合わせて比較。予算策定から予実管理まで対応 | 予算編成・予実管理・着地見込み・業績シミュレーションを一元管理 |
| 会計データ連携 | freee会計・マネーフォワード クラウド会計・勘定奉行クラウド・弥生などとAPI/CSV連携 | Excel・会計パッケージ・販売管理システムとファイル連携。勘定奉行クラウドとの財務連携オプションあり | 表計算ソフトや会計ソフトと連携し、所在・形式の異なるデータをローデータのまま収集・統合 | マネーフォワード クラウド会計・freee・勘定奉行クラウドとAPI連携。Googleスプレッドシート・CSV取込に対応 |
| 料金 | 要問い合わせ (Standard/Enterpriseの2プラン、見積制) | 要問い合わせ (個別見積もり。最低利用期間12か月) | 要問い合わせ | 要問い合わせ (3プラン、ユーザー数に応じた従量課金) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る |
※2026年10月時点の各社公式情報による。料金・機能の詳細は各社の最新情報をご確認ください。
ここでは、部門別採算の運用に役立つ管理会計システムを紹介します。管理会計システム全体を目的・規模別に見比べて選びたい場合は、以下の記事で主要サービスをまとめて比較しています。
1. DIGGLE(ディグル株式会社)

DIGGLEは、予算・実績・見込みをクラウド上で一元管理する、予実管理に特化したサービスです。会計システムからデータを取り込んで予実の突合を自動化し、勘定科目より細かい粒度での損益管理・分析に対応します。
配賦については、配賦元・配賦先・配賦基準を柔軟に設定できる多段階配賦機能を備え、各配賦ルールをワンクリックで切り替えて結果を比較できると公式に説明されています。属人化しがちなExcelの予実管理を置き換える用途に向いています。なお、ディグル株式会社は、富士キメラ総研の調査で同社製品が予実管理ソフトウェア(SaaS/PaaS区分)のベンダーシェア1位になったと公表しています。
出典・参考資料(2件)
2. Amoeba Pro 管理会計クラウド(京セラコミュニケーションシステム株式会社)

京セラコミュニケーションシステム株式会社(KCCS)が提供するAmoeba Proは、部門別採算の考え方に直結した管理会計クラウドです。京セラグループが提供する点も、アメーバ経営を参考にしたい企業にとって分かりやすい特徴です。
部門・事業・商品・プロジェクトなど最大6つのセグメントで予実・採算を分析でき、セグメントを組み合わせたマトリックス分析にも対応します。公式には、配賦や徴収など現状の管理会計の運用ルールに合わせた処理が可能とされており、アメーバ経営を導入していない一般企業への導入実績も多数あると説明されています。
3. Loglass 経営管理(株式会社ログラス)

Loglass 経営管理は、散在するExcelや会計ソフトの予算・見込み・実績・KPIデータを収集・統合する経営管理クラウドで、株式会社ログラスが提供しています。予算策定から予実管理、多軸分析、レポーティングまでを1つの基盤で扱えます。
配賦機能を備え、配賦の有無をワンクリックで切り替えて結果を確認できる点が特徴です。部門別の損益を複数の切り口で分析したい企業に向いています。
出典・参考資料(1件)
4. Manageboard(マネーフォワードコンサルティング株式会社)

Manageboardは、マネーフォワードコンサルティング株式会社が提供する予算管理・経営管理のクラウドです。予算編成・予実管理・着地見込み・業績シミュレーションを1つのクラウド上で扱い、会計ソフトとのAPI連携やGoogleスプレッドシート連携で実績データを取り込めます。
最大10階層の部門グルーピングに対応し、共通費の配賦を売上高比・人数比などで行える点が、部門別採算の運用に役立ちます。KPIと財務をつないでレポートを柔軟に作成できることを公式サイトは特徴として挙げています。
出典・参考資料(1件)
まとめ
部門別採算制度は、部門ごとに売上・費用・利益を切り出し、採算を数字で見える化する管理会計の仕組みです。全社の決算では見えない部門単位の損益を明らかにし、赤字部門の特定や利益責任の明確化、現場の採算意識の向上につながります。
導入にあたっては、部門の区切り方・共通費の配賦ルール・部門別損益のフォーマット・月次運用を順に設計することが大切です。配賦後の赤字だけで撤退を判断せず、貢献利益もあわせて見る視点も欠かせません。配賦や予実の集計が負担になってきたら、管理会計システムの活用もあわせて検討してください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 部門別採算制度とは何ですか?
A. 部門別採算制度とは、会社を事業・店舗・拠点などの部門に分け、部門ごとに売上・費用・利益を集計して採算(儲け)を見える化する管理会計の仕組みです。全社をひとまとめにした損益計算書では見えない「どの部門が稼ぎ、どの部門が赤字か」を明らかにし、経営の打ち手を部門単位で判断できるようにします。
京セラのアメーバ経営やJAL(日本航空)の路線別採算が、この制度の代表例として知られています。
Q. 部門別採算制度と財務会計(決算)は何が違うのですか?
A. 部門別採算制度と財務会計の違いは、目的と集計の単位にあります。財務会計が株主・税務署など社外への報告を目的に会社全体を制度に沿ってまとめるのに対し、部門別採算制度は社内の意思決定のために同じ会計データを部門という切り口で組み替えます。そのため財務会計の決算書だけでは部門ごとの採算は見えず、ルールを自由に設計できる管理会計として部門別採算を別に用意する必要があります。
Q. 部門別採算と部門別損益は何が違うのですか?
A. 部門別採算と部門別損益の違いは、部門別損益が「部門ごとの利益の数字を出すこと」を指すのに対し、部門別採算(制度)はその数字に責任と行動を結びつけて毎月回す運用まで含む点です。数字を出すだけでは経営は変わらないため、部門別損益を部門長の利益責任や月次の予実管理につなげて初めて、採算制度として機能します。
Q. 部門別採算制度では共通費をすべての部門に配賦すべきですか?
A. 部門別採算制度では、共通費を必ずしもすべて無理に配賦する必要はありません。費用の発生と部門の関わり(因果関係)が薄いものまで強引に割り振ると、配賦の根拠に納得感がなくなり、制度全体への不信につながります。因果関係が説明しにくい費用は配賦せず、共通費として別に表示する方が、部門長の納得を得やすくなります。
Q. 部門別採算制度の共通費の配賦基準はどうやって決めればよいですか?
A. 配賦基準は、費用の発生と関わりの深い基準を選ぶこと(因果関係)・現場で集計できる無理のない基準にすること(簡便性)・一度決めた基準を期中でむやみに変えないこと(一貫性)の3点を指針に決めます。たとえば本社管理部門の人件費は人数比、オフィスの家賃・水道光熱費は使用面積比、物流費は売上高比や出荷量比など、その費用が増減する要因に合わせて選ぶと納得感が高まります。
Q. 間接部門にも利益責任を持たせるべきですか?
A. 総務・経理・情報システムなどの間接部門は、無理に利益で評価せず、費用の管理に責任を持つコストセンターとして扱うのが基本です。直接の売上を持たない部門を強引にプロフィットセンター(利益責任部門)化すると、採算の測り方が曖昧になり、社内の対立を招きやすくなります。部門の性質に応じて、利益責任部門と費用責任部門を使い分けることが大切です。
Q. 部門別採算制度は何部門から始めればよいですか?
A. 部門別採算制度は、損益に責任を持つ責任者を1人ひもづけられる単位を目安に、まずは主要な部門から段階的に始めるのが基本です。細かく区切りすぎると集計の手間が増え、大きすぎると問題のある箇所が埋もれるため、自社の組織に合わせて粒度を調整します。最初から全部門を完璧に区切ろうとせず、主要部門で回しながら広げていくと定着しやすくなります。
Q. 部門別採算制度の導入にはどれくらいの期間がかかりますか?
A. 部門別採算制度の導入期間は会社の規模や部門数によって異なりますが、部門別損益のフォーマットと配賦ルールの設計から、月次での予実運用が定着するまで数か月単位をかけて段階的に進めるのが一般的です。一度仕組みを作れば終わりではなく、毎月の予実を回しながら配賦基準やKPIを見直し、精度を高めていきます。
Q. 部門別採算制度で配賦後に赤字の部門はすぐ撤退すべきですか?
A. 配賦後に赤字の部門でも、共通費を配賦する前の貢献利益(売上から変動費を引いた利益)が黒字であれば、すぐに撤退と判断するのは早計です。配賦される本社費や家賃などの共通費は、その部門をやめても多くが会社に残り続けます。
貢献利益が黒字の部門は、共通費の一部を負担して全社の利益に貢献しているため、撤退するとかえって全社の利益が減ることもあります。配賦後の数字は目安としつつ、貢献利益もあわせて見て判断してください。
Q. 部門別採算制度はExcelでも運用できますか?
A. 部門別採算制度はExcelでも始められますが、部門や配賦基準が増えるほど、会計データの取り込み・配賦計算・予実の突合といった作業が膨らみ、手作業では限界が出てきます。担当者に作業が集中して属人化し、数字が出るころには打ち手が遅れがちです。配賦や予実の集計が負担になってきたら、これらを自動化する管理会計システムの活用もあわせて検討するとよいでしょう。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















