取引先から届いた請求書をどう保存すればよいか、調べるほど混乱していないでしょうか。「電子帳簿保存法が変わって電子データは紙保存できなくなった」「インボイスは7年保存」といった話が飛び交い、メールで届いたPDFをこれまで印刷してファイリングしていた担当者ほど、自社のやり方が正しいのか不安になりがちです。
請求書の保存方法は、「受け取った請求書か、自社が発行した請求書か」と「電子データで授受したか、紙で授受したか」の組み合わせで変わります。この記事では、まず自分のケースに当てはまる保存方法を早見表で示し、電子帳簿保存法の条文と国税庁の見解を出典とともに引きながら、保存要件・保存期間・紙原本の扱いまでを順に整理します。
後半では、受領・発行・保存の要件を手作業で満たし続ける負担が大きいと感じる場合に向けて、電子帳簿保存法に対応した請求書の受領・発行サービスも紹介します。まずは「自社の請求書はどの保存方法に当たるのか」というところから読み進めてください。
目次
【早見表】受領・発行 × 電子・紙|あなたのケースの保存方法
請求書の保存方法は、その請求書を「どう受け取ったか・どう発行したか」で決まります。結論を先に示すと、電子データ(メール添付のPDF・Web上でダウンロードした請求書など)でやり取りしたものは電子データのまま保存する義務があり、紙でやり取りしたものは紙のまま保存できます。自社のケースを下表で確かめてください。
| 受領・発行 × 電子・紙|請求書の保存方法早見表 | 電子データ(PDF・メール等)で受け取った請求書 | 紙で受け取った請求書 | 電子データで発行・送信した請求書の控え | 紙で発行した請求書の控え |
|---|---|---|---|---|
| 電帳法上の区分 | 電子取引 | スキャナ保存の対象(紙保存が原則) | 電子取引 | スキャナ保存の対象(紙保存が原則) |
| 保存の原則 | 電子データのまま保存(義務) | 紙のまま保存(スキャナ保存して電子化も任意で可) | 電子データのまま保存(義務) | 紙のまま保存(スキャナ保存も任意で可) |
| 紙に印刷して紙だけで保存 | 不可(電子データの保存が必要) | 紙のまま保存でOK | 不可(控えも電子データで保存) | 紙のまま保存でOK |
※電子帳簿保存法・同施行規則および国税庁の一問一答にもとづく整理です。
ポイントは、電子でやり取りした請求書(受領・発行の控えとも)は「電子取引」に当たり電子データでの保存が義務になる一方、紙でやり取りした請求書は電子化が任意で紙のまま保存してよい、という非対称です。以下では、特に間違えやすい「電子で受け取った請求書を印刷して紙で保存してよいか」から確認します。
電子データで受け取った請求書は「印刷した紙だけ」では保存できない(令和6年1月以降)
メールに添付されたPDFや、取引先のシステムからダウンロードした請求書は「電子取引」に当たります。電子帳簿保存法7条は、電子取引を行った場合に「当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない」と定めており、受け取った電子データはデータのまま保存する義務があります(電子帳簿保存法7条)。
かつては電子データを紙に出力して保存する方法も認められていましたが、令和4年(2022年)1月にこの紙出力による保存は廃止されました。その後、当面は紙保存も認める宥恕(ゆうじょ)措置が令和5年(2023年)12月末まで設けられていました。「令和6年(2024年)1月から義務化された」といわれるのは、この宥恕措置が終了した時点を指します。
国税庁は、令和6年1月以降の電子取引について次のように示しています。
令和5年12月末までに行う電子取引を対象とした宥恕措置では、出力書面のみを保存する方法で対応することが認められていましたが、令和6年1月以降に行う電子取引を対象とした猶予措置では、出力書面のみを保存することで対応することは認められておらず、出力書面の提示等に加え、電子データそのものも保存しておき、提示等ができるようにしておく必要があります
出典:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問89(令和8年7月)|国税庁
注意したいのは、これは「印刷してはいけない」という意味ではない点です。電子データを画面や書面に出力すること自体は問題なく、禁止されているのは印刷した書面だけを保存して電子データを残さない対応です。電子データを保存したうえで、必要に応じて印刷して使うのは差し支えありません。
令和6年1月以降も、要件どおりに保存するためのシステムやワークフローの整備が間に合わない「相当の理由」がある場合には、猶予措置が設けられています。この場合、税務調査の際に電子データと出力書面の提示等に応じられるようにしていれば、検索機能などの要件を満たさなくても電子データを保存できます。
この猶予措置には現時点で期限の定めはありませんが、猶予されるのは要件の一部であって、電子データそのものの保存が免除されるわけではありません。
令和5年度の税制改正において創設された新たな猶予措置の「相当の理由」とは、例えば、その電磁的記録そのものの保存は可能であるものの、保存時に満たすべき要件に従って保存するためのシステム等や社内のワークフローの整備が間に合わない等といった、自己の責めに帰さないとは言い難いような事情も含め、要件に従って電磁的記録の保存を行うための環境が整っていない事情がある場合
出典:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問93(令和8年7月)|国税庁
この猶予措置の適用に、事前の申請や届出は必要ありません。税務調査の際に、保存した電子データと、その内容を出力した書面の提示・提出(データのダウンロードの求め)に応じられるようにしておけば適用を受けられます。
これまで電子で受け取った請求書を印刷した紙だけで保管し、元のデータを残していなかった場合は、取引先に電子データの再送を依頼できるものは依頼し、難しいものは今後受け取る分からデータで保存する運用に切り替えるとよいでしょう。令和6年1月以降に要件を満たせていなくても、この猶予措置があるため直ちに重い処分につながるわけではありませんが、電子データが残っていない状態は早めに解消しておくのが安全です。
電子帳簿保存法の3つの保存区分と4ケースの対応
早見表で保存方法が分かれるのは、電子帳簿保存法が保存の対象と方法によって次の3つの区分を設けているためです。国税庁は、①国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存等、②国税関係書類のスキャナ保存、③電子取引を行った場合の取引情報に係る電磁的記録の保存、の3区分を示しています。
- 電子帳簿等保存:会計ソフトなどで最初から電子的に作成した帳簿・書類を、そのまま電子データで保存する区分(任意)
- スキャナ保存:紙で作成・受領した書類をスキャンして電子データで保存する区分(任意)。紙で受け取った・発行した請求書はここに当たります
- 電子取引:メール添付のPDFやWeb上でダウンロードした請求書など、最初からデータで授受した取引情報を保存する区分(義務)。電子で受け取った・発行した請求書はここに当たります
電子帳簿等保存とスキャナ保存は「電子データで保存してもよい」という任意の制度で、電子取引だけが「電子データで保存しなければならない」義務です。早見表の「紙はそのまま保存可/電子はデータ保存が義務」という違いは、この区分の性質の差から生じています。
出典・参考資料(1件)
受け取った請求書の保存方法(電子データ/紙)
ここからは、取引先から受け取った請求書を形式別に見ていきます。受領した請求書は、電子データで届いたか紙で届いたかで保存方法が分かれます。
電子データ(PDF・メール等)で受け取った場合
メール添付のPDF、取引先のWebサイトやシステムからダウンロードした請求書、EDI(電子データ交換)で授受した請求データなどは「電子取引」に当たり、受け取った電子データをそのまま保存します。前述のとおり、印刷した紙だけで保存して電子データを残さない対応は認められません。
保存先に特別な決まりはなく、クラウドストレージでも自社パソコンの共有フォルダでもかまいません。後述の検索要件を満たせる形であれば、専用システムの導入は必須ではありません。参考に印刷した紙は、電子データを要件どおり保存していれば保管義務がなく、破棄しても問題ありません(保存の義務があるのは電子データのほうです)。
保存の際は、改ざんされていないことを担保する「真実性の確保」と、必要なときに確認できる状態にする「可視性の確保」という2つの要件を満たす必要があります。具体的な中身は後述の電子取引データの保存要件で整理します。
紙で受け取った場合
郵送や手渡しで紙の請求書を受け取った場合は、これまでどおり紙のままファイリングして保存できます。スキャンして電子データにする「スキャナ保存」は行ってもよい制度であって、義務ではありません。
保管スペースや検索の手間を減らすためにスキャナ保存を選ぶこともできますが、その場合は一定の要件を満たす必要があり、要件を満たせばスキャン後に紙の原本を破棄することも可能です。詳しくは紙の請求書をスキャナ保存して原本を破棄する方法と要件で解説します。
発行した請求書(控え)の保存方法(電子データ/紙)
自社が発行した請求書についても、その控え(写し)を保存します。インボイス制度では、適格請求書を交付した発行事業者に対し、交付した適格請求書の写しを保存する義務が定められているためです(詳しい期間は請求書の保存期間で後述します)。発行側の控えも、電子で発行したか紙で発行したかで保存方法が分かれます。
電子データで発行・送信した場合
請求書をPDFでメール送付したり、請求書発行システムからデータで送信したりした場合、その取引情報の授受は「電子取引」に当たります。発行側が保存する控え(写し)も、受領側と同じく電子データのまま保存します。電子で送った請求書の控えを紙に印刷した書面だけで保存する対応は、受領側と同様に認められません。
紙で発行した場合
紙に印刷して郵送・手渡しした請求書の控えは、紙のまま保存できます。発行した請求書を複写で控えとして残す運用も、従来どおり問題ありません。紙の控えをスキャナ保存して電子化することも任意で可能で、その要件は受領した紙の請求書と同じです。
電子取引データの保存要件|真実性・可視性の確保
電子で受け取った・発行した請求書(電子取引)を保存するときは、「真実性の確保」と「可視性の確保」の2つの要件を満たす必要があります。どちらも、やみくもに高価なシステムを入れなければ満たせないわけではありません。ここでは、実務で判断できるように要件の中身を整理します。
真実性の確保:4つの措置のいずれか1つを行えばよい
真実性の確保は「タイムスタンプが必須」と説明されることがありますが、これは正確ではありません。電子帳簿保存法施行規則は、次の4つの措置のうちいずれか1つを行えばよいと定めています。

一 タイムスタンプが付された後の授受
出典:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】保存要件(規則4条1項)|国税庁
二 速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付す
三 データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用して、授受及び保存を行う
四 訂正削除の防止に関する事務処理規程を定め、備付け、運用する
このうち4つ目の「事務処理規程」は、訂正・削除を正当な理由なく行わないことを社内ルールとして定めて運用する方法で、タイムスタンプの契約や専用システムがなくても満たせます。しかも、国税庁が規程のサンプル(法人の例・個人事業者の例)をWord形式で公開しているため、自社でゼロから作文する必要はありません。
タイムスタンプを使わず、訂正・削除の履歴が残るシステムや事務処理規程で真実性を確保する具体的な条件は、次の記事で条文に沿って詳しく整理しています。タイムスタンプの契約なしで対応できるか判断したいときに役立ちます。
可視性の確保:取引年月日・取引金額・取引先で検索できる状態にする
可視性の確保は、保存したデータを後から正しく確認・検索できるようにするための要件です。保存場所にパソコン・ディスプレイ・プリンタ等を備え、画面や書面に整然とした形式・明瞭な状態で速やかに出力できることに加え、次の検索機能を備える必要があります。
イ 取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先(ロ及びハにおいて「記録項目」という。)を検索の条件として設定することができること。
出典:電子帳簿保存法施行規則 第2条第6項第5号|e-Gov法令検索
ロ 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。
ハ 二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。
検索項目は「取引年月日その他の日付・取引金額・取引先」の3つが基本です。ファイル名を「20260401_株式会社○○_110000」のように統一したり、索引簿(一覧表)を作ったりすれば、専用システムがなくても検索要件を満たせます。
また、税務職員からのデータのダウンロードの求めに応じられるようにしている場合は、上記ロ・ハの範囲指定・組み合わせ検索は不要になります。さらに、基準期間(2期前)の売上高が5,000万円以下などの小規模な事業者で、ダウンロードの求めに応じられるようにしているときは、検索機能そのものが不要とされています。中小企業や個人事業主では、この緩和にあてはまるケースも少なくありません。
小さな事務負担で電子取引データの保存を始めるなら、次の3ステップが目安になります。
- 受け取った請求書の電子データを、決まったフォルダに保存する
- ファイル名を「日付_取引先_金額」の形に統一するか、取引年月日・取引金額・取引先を記した索引簿(一覧表)を用意する
- 国税庁が公開する事務処理規程のサンプルを自社向けに整えて備え付ける(真実性の確保)
紙の請求書をスキャナ保存して原本を破棄する方法と要件
紙で受け取った・発行した請求書は紙のまま保存できますが、保管スペースや検索性を考えてスキャナ保存で電子化し、紙の原本を破棄したい場合もあります。ここで押さえておきたいのが、「紙→電子」は任意なのに対し「電子→紙だけ」は不可という非対称です。

電子帳簿保存法4条3項は、紙の国税関係書類について、一定の要件のもとで電磁的記録の保存をもって「当該国税関係書類の保存に代えることができる」と定めており、スキャナ保存は選択できる制度です(電子帳簿保存法4条3項)。
スキャナ保存を行うには、改ざん防止(真実性)に加え、読み取りの品質と検索に関する要件を満たす必要があります。請求書は重要書類に当たるため、読み取りは次の品質が求められます。
- 解像度200dpi以上(25.4ミリメートル当たり200ドット以上)
- 赤・緑・青の各色256階調以上のカラー(約1,677万色)での読み取り
- 入力期間内の入力と、タイムスタンプ付与または訂正・削除の履歴が残るシステムでの保存
- 取引年月日・取引金額・取引先による検索機能、カラーディスプレイ・カラープリンタ等の備付け
スキャナ保存で多くの担当者が気にするのが、「スキャンした後に紙の原本を捨てられるのか」という点です。結論として、要件を満たしてスキャナ保存を行い、スキャン画像と紙の記載内容が同等であること(折れ曲がり等がないかを含む最低限の同等確認)を行った後であれば、原本は即時に破棄して差し支えありません。国税庁も次のように示しています。
令和4年1月1日以後に保存を行う国税関係書類については、以下(※)の場合を除いて、スキャナで読み取り、最低限の同等確認(電磁的記録の記録事項と書面の記載事項とを比較し、同等であることを確認(折れ曲がり等がないかも含みます。)することをいいます。…)を行った後であれば、即時に廃棄して差し支えありません。
出典:電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】問3(令和8年7月)|国税庁
以前は破棄前に社内の定期検査が必要でしたが、令和3年度(2021年度)の改正でその要件がなくなり、検査の完了を待たずに破棄できるようになりました。ただし、受領からの入力期間を過ぎてスキャンした場合などは、電子データとあわせて紙の原本も保存しておく必要があります。
入力期間や解像度、タイムスタンプなどスキャナ保存の要件と、原本をいつ破棄できるかの条件をもう一段詳しく確認したい場合は、次の記事で要件を一覧に整理しています。
自社の保存方法が要件を満たしているか不安な場合は、まず国税庁の資料や事務処理規程のサンプルで運用を固めるか、要件への対応をうたうシステムの利用を検討するとよいでしょう。電子帳簿保存法に対応したサービスを使えば、受領から要件を満たした保存までをまとめて任せられます。
請求書の保存期間(法人・個人・インボイス)
保存方法とあわせて押さえておきたいのが、何年間保存すればよいかです。保存期間は事業形態や請求書の種類によって異なり、紙のまま保存する場合も電子保存する場合も期間の考え方は変わりません。
法人:確定申告書の提出期限の翌日から7年(欠損金が生じた事業年度は10年)
法人が受領・作成した請求書は、法人税法上の書類として7年間保存します。国税庁は保存期間について次のように示しています。
法人は、帳簿(注1)を備え付けてその取引を記録するとともに、その帳簿と取引等に関して作成または受領した書類(注2)を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間(注3)保存しなければなりません。
出典:No.5930 帳簿書類等の保存期間|国税庁
起算点は「その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日」です。ただし、青色申告書を提出した事業年度で欠損金額(青色繰越欠損金)が生じた事業年度などは、保存期間が10年間に延びます。赤字が出た事業年度の請求書は10年間保存すると考えておくと確実です。
起算日の具体的な数え方(いつから7年を数えるか)や、10年保存になる条件を自社の決算にあてはめて確認したい場合は、請求書の保存期間だけを掘り下げた次の記事が参考になります。
個人事業主:請求書は原則5年(帳簿は7年)
個人事業主の場合、請求書は原則5年間の保存でよいとされています。国税庁は青色申告者の保存書類について、7年保存が原則としつつ「5年間の保存でよい書類には、例えば、請求書、見積書、納品書、送り状などがあります」と示しています。
注意したいのは、同じ個人事業主でも仕訳帳や総勘定元帳などの帳簿は7年間の保存が必要な点です。「個人は一律5年」と誤解しないよう、請求書(5年)と帳簿(7年)を分けて管理すると安全です。
適格請求書(インボイス)の保存期間
インボイス制度では、受け取った側も発行した側も、適格請求書を一定期間保存する必要があります。受領側が仕入税額控除を受けるために保存する請求書等は、その課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間の保存が求められます(6年目・7年目は帳簿または請求書等のいずれか一方でよいとされています)。
発行側も、交付した適格請求書の写しを保存する義務があります。消費税法施行令70条の13は、適格請求書発行事業者が交付した適格請求書等の写しを「その交付した日…の属する課税期間の末日の翌日から二月…を経過した日から七年間」保存しなければならないと定めています。インボイス制度の開始にともない、発行側にも控えの作成・保存が必要になった点に注意してください。
起算点は厳密には課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日ですが、実務上は、受領した適格請求書も交付した控えも、帳簿書類と同じ7年間を目安に保存しておけば足りると考えておくと分かりやすいでしょう。
保存要件を満たす対応システムの選び方
ここまで見てきたとおり、真実性の確保は事務処理規程でも満たせ、小規模事業者には検索要件の緩和もあるため、請求書の電子保存は必ずしもシステム導入を前提としません。一方で、取引先ごとにバラバラの形式で届く請求書を毎月受け取り、要件を満たしてデータ化・保存し、保存期間を管理し続けるのは、経理担当者にとって小さくない負担です。
受領から保存までをまとめて担うのが請求書受領サービス、発行から控えの保存までを担うのが請求書発行システムです。システムで対応する場合に目安になるのが、電子帳簿保存法の要件を満たしていることを第三者が確認したJIIMA認証(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会による法的要件認証)の有無です。
認証には電子取引ソフト法的要件認証とスキャナ保存ソフト法的要件認証があり、自社が必要とする保存区分に対応しているかを確認するとよいでしょう。JIIMA認証の種類や確認方法はJIIMA認証とは?認証の種類・電子帳簿保存法との関係・確認方法をわかりやすく解説で整理しています。
以下では、電子帳簿保存法に対応した請求書の受領・発行・保存に対応するサービスを比較します。受領・発行のどちらに対応するか、どの保存区分に対応するかを見比べる際の参考にしてください。
| サービス名 | マネーフォワード クラウド債務支払 | マネーフォワード クラウド請求書Plus | TOKIUMインボイス | invox受取請求書 | invox発行請求書 | BtoBプラットフォーム 請求書 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 対応業務 | 受領 | 発行 | 受領 | 受領 | 発行 | 発行・受取 |
| 電子帳簿保存法対応(JIIMA認証) | 電子取引ソフト スキャナ保存ソフト | 電子取引ソフト (スキャナ保存ソフトは非対応) | 電子取引ソフト スキャナ保存ソフト | 電子取引ソフト スキャナ保存ソフト (invoxシリーズ名義) | JIIMA認証取得 (令和3年改正法令基準) | 電子取引ソフト (第1号認証) |
| 対応する保存区分 | 電子取引・スキャナ保存 | 電子取引 (発行控えの保存) | 電子取引・スキャナ保存 | 電子取引・スキャナ保存 | 電子取引 (発行控えの保存) | 電子取引 |
| インボイス制度対応 | ● | ● | ● | ● | ● | ● |
| 料金 | 初期費用0円 クラウド含むプラン月2,480円〜(税抜・年払い)/単体は要問い合わせ 電帳法オプション月980円 | 初期費用・月額とも要問い合わせ | 基本利用料 月1万円〜+請求書件数の従量課金 プラン別は要問い合わせ | 初期費用0円 月額980円〜(税抜)+データ化の従量課金 | 初期費用0円 月額0円〜(フリー)・1,980円〜(税抜) | 要問い合わせ(無料プランあり。月100件発行まで無料) |
| 詳細情報 | オンライン相談を予約 | オンライン相談を予約 | 詳細を見る | 詳細を見る | 詳細を見る | 詳細を見る |
1. マネーフォワード クラウド債務支払(株式会社マネーフォワード)

受け取った請求書のデータ化から社内承認、支払(振込データ生成・銀行API連携)までを一元管理する債務管理システムです。Web受け取り・メール自動取込・一括アップロードに加え、紙・電子の請求書を代理受領する受領代行(BPO)もオプションで利用でき、紙とデータが混在する受領業務をまとめて整理できます。
紙と電子データが混在する受領業務のどこに課題が生じやすいかについて、提供元の株式会社マネーフォワードは独自インタビューで次のように述べています。

紙とデータの受領が混在している企業がまず1つ大きなターゲットです。取引先によって紙の請求書、電子データ、SaaS上からのダウンロードなど、複数の方法で請求書が届いている企業は、その煩雑さの解消に大きな価値を感じていただけます。
電子帳簿保存法については、JIIMAの電子取引ソフト法的要件認証とスキャナ保存ソフト法的要件認証を取得しており、受領した請求書を要件にあわせて電子保存できます。AI-OCRで支払先・支払期日・請求金額などを読み取り、適格請求書発行事業者の登録番号を照合する機能も備えます。マネーフォワード クラウド会計など同シリーズとの連携で、受領から仕訳までをつなげられる点も特徴です。
料金は、クラウド債務支払を含むマネーフォワード クラウドのプラン料金が初期費用0円・月額2,480円(税抜・年払い)からで、電子帳簿保存法オプションは月額980円(税抜)です。単体契約時の金額や中堅以上の規模向けプランは問い合わせで案内されます。
2. マネーフォワード クラウド請求書Plus(株式会社マネーフォワード)

中堅・上場企業やIPO準備企業向けの請求書発行システムで、発行側の控えを電子取引データとして保存する用途に向きます。CRM・販売管理システムと連携して受注データから請求書を作成し、分割請求・合算請求・サブスクリプションの按分といった複雑な請求にも対応します。
発行した請求書をデータで送付・保存する流れに対応し、電子帳簿保存法についてはJIIMAの電子取引ソフト法的要件認証を取得しています。最大10ステップの申請・承認ワークフロー(操作履歴の記録付き)を備え、内部統制を求められる企業の請求業務に向いています。マネーフォワード クラウド会計Plusへ売上仕訳を連携できる点も、発行から会計までを一気通貫で進めたい企業に適します。
紙の請求書のスキャナ保存には対応していないため、受け取った紙の請求書の電子化が目的の場合は、受領側のサービスと組み合わせる前提で検討するとよいでしょう。料金は従業員数または請求書の発行件数に応じて決まる形で、具体的な金額は問い合わせで案内されます。
3. TOKIUMインボイス(株式会社TOKIUM)

郵送・メール添付PDF・FAX・取引先Webサイトからのダウンロードなど、届き方を問わず請求書の受領を代行するサービスです。取引先のWebサイトからの自動ダウンロードにも幅広く対応し、受け取りからデータ化・保存までを任せられます。
データ化は専任オペレーターの入力とAI-OCRを組み合わせる方式で、TOKIUMが受け取った紙の原本の保管まで追加費用なしで代行するため、社内でのファイリングや保管がなくなります。電子帳簿保存法にはJIIMAの電子取引ソフト法的要件認証とスキャナ保存ソフト法的要件認証を取得して対応し、タイムスタンプ付与・検索機能も備えます。
料金は基本利用料が月あたり1万円からで、請求書の件数に応じた従量課金が加わります。アカウント数は無制限です。プラン別の具体的な月額や単価は、公式の料金表で案内されます。
4. invox受取請求書(株式会社invox)

紙・メール・PDF・電子インボイスなど、どの形式で届いた請求書もデータ化し、受け取りから入力・支払・仕訳までを自動化するクラウド型の請求書受領システムです。郵送で届く紙の請求書の代行受領にも対応します。
データ化はAI-OCRとオペレーター確認を組み合わせる方式で、急ぎのときはオペレーター確認なしのAI-OCR単独で即時にデータ化することもでき、精度とスピードを使い分けられます。
電子帳簿保存法・インボイス制度に対応し、invoxシリーズとして電子取引ソフト法的要件認証・スキャナ保存ソフト法的要件認証を取得しています。freee・マネーフォワード・弥生・勘定奉行など50種類以上の会計システム・ERPと連携できる点も強みです。
料金は初期費用0円、月額基本料金はミニマムプランが980円(税抜)からで、データ化は1件あたりの従量課金(AI-OCR即時は50円、オペレーター確認ありは100円、いずれも税抜)です。ユーザー数は無制限で、小規模から導入しやすい体系です。
5. invox発行請求書(株式会社invox)

請求データを取り込んで送付方法を指定することで、紙・電子を問わずインボイス制度に対応した請求書を発行できる請求書発行システムです。請求書のほか見積書・納品書・支払通知書も発行でき、見積書から納品書・請求書へ情報を引き継いで自動生成する運用にも対応します。
発行した請求書を電子で送付・保存する流れに対応し、電子帳簿保存法については令和3年改正の法令基準に沿ったJIIMA認証とISMS(ISO/IEC 27001)認証を取得しています。メール・郵送代行・FAX・SMSと送付経路が多彩で、発行に加えて売上計上・入金消込・督促までを自動化できます。電子インボイス推進協議会の正会員でもあります。
料金は初期費用0円で、月額基本料金はフリープラン0円・ミニマム1,980円・ベーシック9,800円・プロフェッショナル29,800円(いずれも税抜)の4段階です。フリープランでは標準レイアウトの請求書などを毎月15件までメールで送付できます。
6. BtoBプラットフォーム 請求書(株式会社インフォマート)

請求書の発行・受取・支払通知書の発行までを1つのプラットフォームで扱う電子請求書サービスです。PDF等への変換を介さずデータのまま授受する「データtoデータ」方式を軸にしつつ、受取側ではAI-OCRで紙・PDFの請求書をデータ化して一元管理できます。
発行側では請求データの連携・アップロードによる自動発行、郵送代行、承認フロー(承認リレー)に対応し、受取側ではデジタル受領と会計システムへの自動連携に対応します。電子帳簿保存法・インボイス制度に対応し、電子化した請求書を保管できます。取引先がプラットフォームのIDを持たない場合でも、メールでPDFを送付して受け取ってもらえる機能も備えます。
料金は、具体的な初期費用・月額が公式ページで非公開のため問い合わせが必要です。月間100件までの発行が無料で受取は無制限という無料プラン(DXお試しプラン)も用意されています。発行と受取の両方を1つの基盤でまとめたい企業に向いています。
まとめ
請求書の保存方法は、「受け取ったか・発行したか」と「電子か・紙か」の組み合わせで決まります。電子でやり取りした請求書(受領・発行の控えとも)は電子取引に当たり電子データのまま保存する義務があり、印刷した紙だけで保存することはできません。一方、紙でやり取りした請求書は紙のまま保存でき、スキャナ保存での電子化は任意です。
電子取引データの保存では、真実性の確保(タイムスタンプや事務処理規程など4つの措置のいずれか1つ)と可視性の確保(取引年月日・取引金額・取引先での検索)が要件です。真実性は国税庁が公開する規程サンプルを使えばシステムなしでも満たせ、小規模事業者には検索要件の緩和もあります。
保存期間は、法人が原則7年(欠損金が生じた事業年度は10年)、個人事業主の請求書は原則5年、適格請求書は受領側・交付側とも7年が目安です。
要件を手作業で満たし続ける負担が大きい場合は、JIIMA認証など電子帳簿保存法への対応を確認したうえで、請求書の受領・発行サービスの活用も検討し、自社に合った保存の形を選んでください。
請求書に限らず、見積書・納品書なども含めて電子帳票全般を扱うシステムまで視野を広げて比較したい場合は、電子帳票システムのまとめ記事も参考にしてください。タイプ別の選び方や価格を一覧で確認できます。
よくある質問(FAQ)
Q. 同じ請求書が紙と電子データの両方で届いた場合、どちらを保存すればよいですか?
A. 電子請求書の保存方法では、電子データで受け取った事実があれば、基本的にその電子データを保存します。
メール添付のPDFなどデータで受け取った分は「電子取引」に当たり、電子データのまま保存する義務が生じるためです(電子帳簿保存法7条)。紙は補助的に手元へ残してもかまいませんが、紙だけを保存して電子データを残さない対応は認められません。郵送された紙が正本で、メールは送付の案内にすぎないと明確に区別できる場合は紙の保存で足りますが、迷うときは電子データを保存しておくと確実です。
出典・参考資料(1件)
Q. 取引先の指定するURLからダウンロードした請求書も、電子データとして保存が必要ですか?
A. はい、取引先のWebサイトやシステムの指定URLからダウンロードした請求書も「電子取引」に当たり、電子データのまま保存する必要があります。
受け取り方が郵送やメール添付でなくても、取引情報をデータで授受していれば電子取引に該当します。ダウンロードできる期間が限られているケースもあるため、閲覧できるうちに自社側でPDF等として保存しておきましょう。画面表示のみでダウンロード機能がない場合は、画面を印刷・PDF化して取引年月日・取引金額・取引先が分かる形で保存します。
出典・参考資料(1件)
Q. 紙で届いた請求書を白黒(グレースケール)でスキャナ保存してもよいですか?
A. 請求書を紙で受け取ってスキャナ保存する場合は、白黒ではなく、赤・緑・青の各色256階調以上のカラーでの読み取りが必要です。
請求書はスキャナ保存の要件が厳しい「重要書類」に当たるため、解像度200dpi以上かつカラーでの保存が求められます(グレースケールで足りるのは一般書類の一部です)。白黒でスキャンした画像では要件を満たさず、紙の原本を破棄できなくなる点に注意してください。また、最初からカラーのPDFなどデータで受け取った請求書は、そのデータを保存すればよく、改めてスキャンする必要はありません。
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Q. 受け取った請求書にメモや確認印などの書き込みをして保存しても問題ありませんか?
A. 記載事項を書き換えたり覆い隠したりする書き込みは避け、請求書そのものは受け取ったままの状態で保存するのが原則です。
電子データ・スキャナ保存のいずれも、改ざんされていないこと(真実性の確保)が求められるため、保存した請求書の記載内容に手を加える運用は望ましくありません。社内の確認印・承認メモ・支払予定などを残したい場合は、請求書の記録項目と区別できる備考欄や管理台帳、ワークフローシステムの履歴で管理すると安全です。
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Q. 1つのPDFファイルに複数の請求書をまとめて保存してもよいですか?
A. 複数の請求書を1つのPDFにまとめること自体は禁止されていませんが、取引年月日・取引金額・取引先で1件ずつ検索できる状態を保てることが条件です。
まとめて保存すると個々の請求書を検索条件で探しにくくなり、可視性の検索要件を満たせなくなるおそれがあります。原則は請求書1件ごとにファイルを分け、検索項目に沿ったファイル名を付けるのが安全です。どうしてもまとめる場合は、索引簿で各請求書を取引年月日・金額・取引先から特定できるようにしておきましょう。
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Q. 請求書と領収書は、両方とも保存しなければなりませんか?
A. 請求書と領収書はどちらも取引に関して受領・作成した国税関係書類に当たり、両方とも保存が必要です。
どちらか一方を残せばよいというものではなく、それぞれ受け取った形式(電子データ/紙)に応じた方法で保存します。保存期間の考え方も請求書と同じで、法人は原則7年、個人事業主は原則5年が目安です。消費税の仕入税額控除を受ける場合は、適格請求書などの保存が要件になる点にも注意してください。領収書の紙・電子別の保存方法と要件は別の記事で詳しく解説しています。
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Q. 自社が発行した請求書データは、販売管理システムのデータベース上で保存してもよいですか?
A. はい、真実性・可視性の要件を満たせば、PDFファイルに限らず販売管理システム等のデータベース上での保存でも認められます。
記載内容が事後的に確認でき、取引年月日・取引金額・取引先で検索できる状態であれば、保存の媒体やファイル形式は限定されません。システムで発行データをそのまま保管し、必要なときに画面や書面へ整然とした形式で出力できるようにしておけば、改めてPDFとして保存し直す必要はありません。
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Q. FAXで受け取った請求書はどのように保存すればよいですか?
A. FAXの請求書は、複合機で紙に出力して受け取ったか、データとして受信したかで保存方法が分かれます。
複合機で紙に印字して受け取った場合は、紙で受領した請求書と同じ扱いになり、紙のまま保存できます(スキャナ保存での電子化は任意)。一方、ペーパーレスFAXやFAX複合機でPDF等のデータとして受信・保存した場合は「電子取引」に当たり、受信データを電子データのまま保存する必要があります。同じFAXでも受け取り方で区分が変わるため、自社の受信方法を確認してください。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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