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給与計算の方法|総支給・6つの控除・手取りの計算式と2026年度の最新料率をモデル例で解説

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給与計算ソフト比較表(2026年版)

毎月の給与計算を引き継いだものの、総支給額から何をどう引けば手取りになるのか、全体像がつかめず不安を感じていませんか。

給与計算は「総支給額を出す」「控除額を計算する」「差引支給額(手取り)を確定する」という3つのステップの積み重ねです。難しく見えるのは、社会保険料や税金の控除に、それぞれ決まった計算式と毎年度見直される料率があるためです。順番と料率さえ押さえれば、担当者が自分の手で計算を再現できます。

本記事では、給与計算の手順と計算式を、6つの控除それぞれの令和8年度(2026年度)の最新料率と、月給30万円のモデルを使った通しの計算例つきで解説します。端数処理や料率改定への追随といったミスしやすいポイント、手計算が限界になったときの効率化の選択肢まで整理しました。

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給与計算の全体フロー|総支給額・控除・差引支給額の3ステップ

はじめに、給与計算の全体像を押さえます。毎月の給与は、次の3ステップで金額が決まります。

  1. 総支給額を計算する:基本給に各種手当と割増賃金(残業代など)を加えた、額面の合計を求めます。
  2. 控除額を計算する:総支給額から差し引く社会保険料と税金を計算します。差し引く項目は健康保険・介護保険・厚生年金・雇用保険・所得税・住民税の6つが基本です。
  3. 差引支給額(手取り)を確定する:総支給額から控除額の合計を引いた金額が、実際に従業員へ振り込む差引支給額です。

式にすると「総支給額 − 控除額 = 差引支給額(手取り)」です。総支給額を積み上げる作業と、控除額を一つずつ正確に計算する作業が、給与計算の中心になります。

給与計算とは(手取りまでの流れ)

給与計算とは、従業員ごとに総支給額を算定し、法令にもとづいて社会保険料と税金を控除し、差引支給額を確定して支払うまでの一連の業務です。単に金額を出すだけでなく、控除した社会保険料・税金を期日までに納付し、給与明細や賃金台帳を整える作業までが含まれます。

控除する社会保険料や所得税は、会社が従業員の給与からいったん預かり、本人に代わって納める性質のものです。そのため、計算を誤ると納付額の過不足や従業員への支払いミスに直結します。計算式と料率を正確に押さえることが、給与計算の信頼性を支えます。

賃金支払いの五原則(労働基準法24条)と始める前に確認すること

給与の支払い方には、労働基準法第24条が定める「賃金支払いの五原則」というルールがあります。給与計算の前提となる原則なので、最初に押さえておきます。

賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。(中略)賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。

出典:労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第24条|e-Gov法令検索

五原則とは、①通貨払い、②直接払い、③全額払い、④毎月1回以上払い、⑤一定期日払いの5つです。このうち③全額払いの原則には「法令に定めがある場合や労使協定がある場合は賃金の一部を控除して支払える」というただし書きがあり、これが社会保険料・税金を給与から天引きできる根拠になっています。

計算を始める前には、各従業員の基本給・手当・扶養親族の数・社会保険の加入状況・住所地(都道府県)といった情報を確認しておきましょう。これらは控除額の計算に直接影響するため、入社・異動・扶養の変更があったときは最新の情報に更新しておく必要があります。

社会保険料(健康保険・介護保険・厚生年金)を控除するのは、健康保険・厚生年金の加入対象になる従業員です。正社員のほか、1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が正社員の4分の3以上のパート・アルバイトも加入対象になります。

加えて、従業員数51人以上の企業では、短時間労働者も加入対象になります(社会保険の適用拡大)。対象は、週の所定労働時間20時間以上・所定内賃金が月額8.8万円以上・2か月を超える雇用の見込み・学生でない、の要件をすべて満たす人です。誰が対象かで控除の有無が変わるため、加入状況は毎月の計算前に確認しておきましょう。

総支給額の計算|基本給・各種手当・割増賃金と割増率

ここからは、1つ目のステップである総支給額の計算を見ていきます。総支給額は「基本給+各種手当+割増賃金」で積み上げます。

基本給と各種手当

基本給は、就業規則や雇用契約で定めた月額(または時給×労働時間)が基準です。これに、役職手当・通勤手当・住宅手当・家族手当などの各種手当を加えます。手当のうち、通勤手当は一定額まで所得税が非課税になるなど、税や社会保険の扱いが項目ごとに異なる点に注意が必要です。

割増賃金の種類と割増率

法定労働時間を超える労働や深夜・休日の労働には、通常の賃金に一定割合を上乗せした割増賃金を支払う必要があります。割増率は労働基準法第37条と、同条の委任を受けた割増賃金令(政令)が定めており、下限は次のとおりです。

割増の種類対象割増率(下限)
時間外労働法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える労働25%以上
時間外労働(月60時間超)1か月の時間外労働が60時間を超えた部分50%以上
深夜労働午後10時〜午前5時の労働25%以上
休日労働法定休日(週1日または4週4日)の労働35%以上
割増率の根拠:労働基準法第37条・割増賃金令(労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)

時間外労働が深夜に及んだ場合は25%+25%=50%、法定休日の深夜労働は35%+25%=60%というように、条件が重なると割増率は加算されます。時間外25%・休日35%という具体的な率は労働基準法第37条本体ではなく割増賃金令が定めている点も、根拠を示すときに押さえておきます。

労働基準法第三十七条第一項の政令で定める率は、同法第三十三条又は第三十六条第一項の規定により延長した労働時間の労働については二割五分とし、これらの規定により労働させた休日の労働については三割五分とする。

出典:労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令(平成六年政令第五号)|e-Gov法令検索

割増賃金の基礎となる時間単価の求め方

割増賃金は「1時間あたりの賃金単価 × 割増率 × 時間数」で計算します。月給制の場合、1時間あたりの単価は「月の所定賃金 ÷ 1か月の平均所定労働時間」で求めます。1か月の平均所定労働時間は「(年間の所定労働日数 × 1日の所定労働時間)÷ 12」で算出します。

たとえば割増賃金の基礎となる月給が24万円、1か月の平均所定労働時間が160時間なら、1時間あたりの単価は24万円 ÷ 160時間 = 1,500円です。この月に法定時間外労働が10時間あれば、割増賃金は1,500円 × 1.25 × 10時間 = 18,750円となり、この額を総支給額に加えます。

この単価計算の基礎には、家族手当・通勤手当・住宅手当など一部の手当は含めないことが法令で定められています。どの手当を基礎に含めるかで割増賃金額が変わるため、自社の賃金規程と照らして確認してください(端数処理の扱いは後述の「ミスしやすいポイント」で整理します)。

給与から引く6つの控除|計算式と2026年度の最新料率

給与計算でつまずきやすいのが、2つ目のステップである控除額の計算です。総支給額から差し引く控除は、健康保険・介護保険・厚生年金・雇用保険の社会保険料4種と、所得税・住民税の税金2種を合わせた6つが基本です。それぞれの計算式と令和8年度(2026年度)の最新料率を順に見ていきます。

社会保険料の考え方(標準報酬月額 × 料率 ÷ 2=労使折半)

健康保険・介護保険・厚生年金の3つは、「標準報酬月額 × 料率」で計算し、会社と従業員が半分ずつ負担します(労使折半)。従業員の給与から控除するのはその半分です。標準報酬月額とは、毎月の報酬を区切りのよい幅で等級分けした金額で、原則として毎年4〜6月の報酬をもとに決まります。

自社の従業員の標準報酬月額は、入社時や毎年の定時決定(算定基礎届)で決まった等級の金額で、毎月の総支給額そのものとは別物です。協会けんぽの保険料額表で自社の支部(都道府県)の表を開き、報酬月額の幅から該当する等級と折半額を読み取ります。残業などで毎月の総支給額が変動しても、標準報酬月額(=保険料の計算基礎)は原則として年度の途中では変わりません(大幅な変動があった場合の随時改定を除く)。

標準報酬月額は、原則として毎年4〜6月に支払った報酬の平均をもとに決め直され(定時決定)、その年の9月分から翌年8月分までの保険料に適用されます。昇給・降給など固定的賃金の変動があり、変動した月以降3か月の報酬の平均で標準報酬月額が2等級以上変わる場合は、年度の途中でも改定されます(随時改定)。いずれも等級の引き直しのため、通知された等級の折半額をそのまま控除額として用います。

協会けんぽや日本年金機構が公表する保険料額表には、あらかじめ折半後の金額(折半額)が記載されています。表の折半額を使えば、割り算をせずにそのまま控除額を把握できます。ただし、雇用保険だけは標準報酬月額ではなく、その月の賃金総額に料率を乗じて計算する点が異なります(後述)。

①健康保険料

健康保険料は「標準報酬月額 × 健康保険料率 ÷ 2」で求めます。協会けんぽの健康保険料率は都道府県(支部)ごとに異なり、令和8年度の東京都は9.85%です(令和7年度の9.91%から引き下げ)。たとえば標準報酬月額30万円・東京都の場合、従業員負担は30万円 × 9.85% ÷ 2 = 14,775円です。

加えて、令和8年4月分(5月納付分)からは、全国一律の子ども・子育て支援金(0.23%)が、上記の9.85%とは別に健康保険料へ上乗せされます。これも労使折半のため、従業員負担は標準報酬月額 × 0.23% ÷ 2 です。この支援金は健康保険料の一部として徴収されるため、6つの控除では健康保険に含めて扱います。

健康保険料率は支部ごとに違うので、自社の所在地の料率を協会けんぽの一覧で確認してください(健康保険組合に加入している場合は組合ごとの料率によります)。

②介護保険料(40歳以上65歳未満のみ)

介護保険料は、40歳以上65歳未満の従業員(介護保険第2号被保険者)だけが対象です。令和8年度の介護保険料率は全国一律で1.62%(令和7年度の1.59%から引き上げ)で、健康保険料と同じく労使折半です。標準報酬月額30万円なら、従業員負担は30万円 × 1.62% ÷ 2 = 2,430円です。39歳以下と65歳以上の従業員には、この介護保険料は発生しません。

③厚生年金保険料

厚生年金保険料率は平成29年9月以降18.300%で固定されており、労使折半のため従業員負担は9.150%です。計算は「標準報酬月額 × 9.150%」です。標準報酬月額30万円なら、30万円 × 9.150% = 27,450円が従業員負担になります。標準報酬月額には上限(等級の上限)があり、高額報酬でも一定額で頭打ちになる点も押さえておきます。

④雇用保険料

雇用保険料は、社会保険3種とは計算の基礎が異なり、「その月の賃金総額 × 雇用保険料率」で求めます。令和8年度の一般の事業の料率は、労働者(従業員)負担が5/1,000(=0.5%、令和7年度の5.5/1,000から引き下げ)です。賃金総額30万円の月なら、30万円 × 5/1,000 = 1,500円が従業員負担です。

雇用保険は健康保険などと違い労使折半ではなく、事業主が従業員より多く負担します(一般の事業は労働者5/1,000・事業主8.5/1,000)。農林水産・清酒製造業や建設業は料率が異なるため、自社の事業の種類を確認してください。

⑤所得税(源泉徴収)

毎月の給与から天引きする所得税(源泉所得税)は、国税庁の「給与所得の源泉徴収税額表」を使って求めます。手順は次のとおりです。

  1. 総支給額から社会保険料(健康保険・介護保険・厚生年金・雇用保険の従業員負担分)を引いた「社会保険料等控除後の給与等の金額」を求める
  2. 「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している従業員は甲欄、提出がない従業員は乙欄を使う
  3. 月額表で、1の金額が含まれる行と、扶養親族等の数の列が交わる額がその月の所得税額

令和8年分の源泉徴収税額表は、基礎控除の見直しにともない税額や扶養親族等の数の数え方(源泉控除対象親族の区分)が変更されています。計算には必ず令和8年分の表を使ってください。社会保険料等控除後の金額が一定額未満(扶養0人・甲欄の場合)であれば税額は0円になります。

⑥住民税(特別徴収)

住民税は、ほかの5つと違い会社が計算しません。市区町村が前年の所得をもとに年税額を計算し、毎年5月ごろに「特別徴収税額の決定通知書」を会社へ送付します。会社は、通知された月割額を6月から翌年5月までの12回に分けて給与から天引きし、市区町村へ納めます。

特別徴収の場合は、特別徴収義務者が毎月の給料から住民税を天引きし、6月から翌年5月までの12回に分けて市町村へ住民税を納めます。

出典:千葉市「住民税が給与から差し引かれるしくみについて知りたいのですが。」

月割額は通知書に記載された金額をそのまま控除すればよく、会社側で按分の計算をする必要はありません。新入社員など前年の所得がない従業員は、原則として入社1年目の途中までは住民税の天引きが発生しないこともあります。

6つの控除の料率一覧(令和8年度)

ここまでの6つの控除の料率と計算の基礎を、令和8年度(2026年度)の最新値で一覧にまとめます。社会保険料率は毎年度見直されるため、実際の計算では下記の出典で最新の値を確認してください。

控除項目料率(令和8年度)従業員負担計算の基礎
健康保険料(東京都の例)9.85%4.925%(労使折半)標準報酬月額
子ども・子育て支援金0.23%(全国一律・令和8年4月〜)0.115%(労使折半)標準報酬月額
介護保険料(40〜64歳)1.62%(全国一律)0.81%(労使折半)標準報酬月額
厚生年金保険料18.300%9.150%(労使折半)標準報酬月額
雇用保険料(一般の事業)13.5/1,000(労使合計)5/1,000(=0.5%)その月の賃金総額
所得税(源泉徴収)税額表による社会保険料控除後の金額と扶養親族等の数で表引き月額表・甲欄(令和8年分)
住民税(特別徴収)市区町村の通知額年税額を12分割した月割額前年の所得
健康保険料率は都道府県(支部)ごとに異なるため東京都の例を記載。子ども・子育て支援金は健康保険料に上乗せして徴収される項目で、6つの控除では健康保険に含めます。雇用保険料だけは標準報酬月額ではなくその月の賃金総額に料率(1,000分率)を乗じます。料率は令和8年度(2026年度)の値。

また、事業主が全額を負担する子ども・子育て拠出金(0.36%)は、従業員の給与から天引きする控除には含めません。6つの控除は、いずれも従業員の給与から差し引く項目である点に注意してください。

各料率の一次情報は次のとおりです。

出典・参考資料(5件)

モデル給与でわかる給与計算の通し計算例

ここまでの計算式を、1人分のモデル給与で最初から最後まで通して計算してみます。次の条件で、総支給額から各控除を引き、差引支給額(手取り)までを求めます。

  • 総支給額:30万円(基本給27万円+役職手当3万円、当月の残業なし)。この従業員の標準報酬月額も30万円の等級に該当するものとします
  • 勤務地:東京都/年齢:42歳(介護保険の対象)/扶養親族:0人/扶養控除等申告書の提出あり(甲欄)

まず、控除する社会保険料と税金を一つずつ計算します。

控除項目計算式控除額
健康保険料30万円 × 9.85% ÷ 214,775円
子ども・子育て支援金30万円 × 0.23% ÷ 2345円
介護保険料30万円 × 1.62% ÷ 22,430円
厚生年金保険料30万円 × 18.300% ÷ 227,450円
雇用保険料30万円 × 5/1,0001,500円
社会保険料の合計上記5項目の合計46,500円

次に所得税です。総支給額30万円から社会保険料の合計46,500円を引いた「社会保険料等控除後の給与等の金額」は253,500円です。令和8年分の源泉徴収税額表(月額表・甲欄)で、253,500円が含まれる「251,000円以上254,000円未満」の行と扶養親族等の数0人の列が交わる額は6,220円です。したがって所得税は6,220円になります。

社会保険料等控除後の給与等の金額扶養0人扶養1人扶養2人
248,000円以上251,000円未満6,110円4,490円2,880円
251,000円以上254,000円未満(当モデル)6,220円4,590円2,980円
254,000円以上257,000円未満6,320円4,710円3,090円
令和8年分 給与所得の源泉徴収税額表(月額表・甲欄)の抜粋。該当する金額帯の行と扶養親族等の数の列が交わる額がその月の所得税です。

住民税は会社が計算せず、市区町村からの通知書に記載された月割額を控除します。ここでは通知額を仮に12,000円とします(住民税は前年の所得や自治体によって金額が変わります)。

最後に、総支給額から控除額の合計を引いて差引支給額(手取り)を求めます。

項目金額
総支給額300,000円
社会保険料の合計(健康・子育て支援金・介護・厚生年金・雇用)▲46,500円
所得税▲6,220円
住民税(通知額の例)▲12,000円
差引支給額(手取り)235,280円

このモデルでは、総支給額30万円に対して手取りは235,280円になりました。39歳以下の従業員であれば介護保険料(2,430円)が発生しないため、その分だけ手取りは増えます。料率や扶養人数、住民税の通知額を自社の条件に置き換えれば、同じ手順で従業員ごとの手取りを計算できます。

上の例は残業のない月ですが、残業があった月は割増賃金が総支給額に乗る点に注意が必要です。この従業員が当月に法定時間外労働を10時間行ったとします。時間単価は、割増の基礎となる月給30万円 ÷ 1か月の平均所定労働時間160時間 = 1,875円です。割増賃金は1,875円 × 1.25 × 10時間 = 23,438円(端数処理後)となり、これが加わって総支給額は323,438円になります。

このとき、健康保険・介護保険・厚生年金の保険料は変わりません。標準報酬月額をもとに計算するため、当月に残業があっても影響を受けないからです。一方、雇用保険料はその月の賃金総額をもとに計算するため増え(323,438円 × 5/1,000 = 1,617円)、所得税も社会保険料控除後の金額が上がるぶん増えます。住民税は通知額どおりで変わりません。

総支給額が増えた月は、どの控除が連動して増え、どの控除が変わらないのかを区別しておくと、計算ミスを防げます。

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給与計算でミスしやすいポイントと防ぎ方

計算式どおりに進めても、実務では間違えやすい箇所があります。特につまずきやすい3点を押さえておきます。

端数処理の扱い

給与計算では、割増賃金の時間単価、社会保険料、差引支給額などで1円未満の端数が生じます。社会保険料の端数は、被保険者負担分を給与から控除する場合、50銭以下は切り捨て・50銭超は切り上げという扱いが一般的に認められています。

たとえば従業員負担の健康保険料を計算して13,790.5円のように端数が出た場合、0.5円(50銭)は50銭以下にあたるため切り捨てて13,790円、13,790.6円であれば切り上げて13,791円とします。

割増賃金の端数処理にも行政通達で認められた方法があります。自社で処理ルールを就業規則などに定めて一貫して運用することが重要で、独自の丸め方で従業員が不利になる処理は認められません。

料率・税額表の改定に毎年度追随する

社会保険料率・雇用保険料率・源泉徴収税額表は、毎年度見直されます。本記事で示した令和8年度の料率も、翌年度には変わる可能性があります。古い料率のまま計算し続けると、控除額の誤りが毎月積み重なります。協会けんぽ・日本年金機構・厚生労働省・国税庁の公式発表を年度替わりに確認し、改定の適用月(社会保険料は原則3月分=4月納付分から、雇用保険・所得税は4月から)を取り違えないようにします。

締め日・支払日と納付期限の管理

勤怠の締め日から支払日までのスケジュールがタイトだと、集計ミスや確認漏れが起きやすくなります。控除した社会保険料・源泉所得税・住民税には、それぞれ納付期限があります(源泉所得税は原則として翌月10日など)。納付が期限に遅れると、延滞税・延滞金や不納付加算税といったペナルティが生じるため、納付期限の管理は特に欠かせません。

給与の支払いと納付の両方の期日を計算スケジュールに組み込み、余裕をもって確認する時間を確保しておきましょう。従業員の個人情報を扱うため、計算データの管理やアクセス権限にも注意が必要です。

手計算・エクセルが限界なら給与計算ソフトやアウトソーシングで効率化

従業員数が増えてくると、毎月の手計算やエクセルでの管理は、工数と計算ミスの両面で限界が見えてきます。計算の仕組みを理解したうえで、効率化の手段を検討する段階です。主な選択肢が、給与計算ソフトの導入と、アウトソーシング(外部委託)です。

給与計算ソフトでできること

給与計算ソフトは、勤怠データの取り込みから社会保険料・税額の自動計算、給与明細の発行、賃金台帳の作成までを自動化します。特に、本記事で見たような社会保険料率や源泉徴収税額表の改定に自動で追随する機能があれば、毎年度の料率更新の手間とミスを減らせます。クラウド型のソフトなら、法改正への対応もアップデートで反映されます。

代表的な給与計算ソフトを、提供形態や対応範囲などの観点で軽く比較します。ここでは効率化の当たりをつけるための代表例を取り上げています。

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※料金・仕様は各社公式情報にもとづき2026年10月時点で作成した目安で、プランや契約条件により異なります。最新の内容は各社公式サイトでご確認ください。

上の表はあくまで代表例で、ほかにも多くの給与計算ソフトがあります。自社の従業員規模・勤怠管理との連携・予算に合う1本を選ぶには、複数サービスを同じ軸で見比べるのが近道です。

どのソフトが自社に合うかを具体的に見極めるには、主要な製品を一覧で比較した記事が役立ちます。以下の記事では、給与計算ソフトを機能・料金・対応規模の観点で比較し、失敗しない選び方まで解説しています。コストを抑えてまず導入したい場合は、無料で使える給与計算ソフト15選を条件別に比較した記事もあわせて参考になります。

アウトソーシング・社労士という選択肢

給与計算そのものを外部に任せる方法もあります。給与計算アウトソーシングサービスや社会保険労務士に委託すれば、計算・明細発行・社会保険の手続きまでをまとめて代行してもらえます。社内に専任者を置きにくい場合や、法改正への対応に不安がある場合に有効です。一方で、月額のランニングコストがかかり、社内に計算のノウハウが蓄積しにくい面もあるため、ソフト導入とどちらが自社に合うかを比較して選びます。

まとめ

給与計算は、「総支給額 → 控除額 → 差引支給額」の3ステップで進めます。総支給額は基本給・手当・割増賃金で積み上げ、控除額は健康保険・介護保険・厚生年金・雇用保険・所得税・住民税の6つを、それぞれの計算式と最新料率で算出します。料率は毎年度見直されるため、令和8年度の値も公式発表で確認しながら計算することが大切です。

計算の手順と料率を押さえれば、担当者が自分の手で手取りまで計算できます。従業員数が増えて手計算が負担になってきたら、給与計算ソフトやアウトソーシングで効率化し、計算ミスと法改正対応の手間を減らすことを検討してください。

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給与計算に関するよくある質問(FAQ)

Q. 給与計算とは何ですか?

A. 給与計算とは、従業員ごとに総支給額を算定し、法令にもとづいて社会保険料と税金を控除して差引支給額(手取り)を確定し、支払うまでの一連の業務です。金額を計算するだけでなく、控除した保険料・税金を期日までに納付し、給与明細や賃金台帳を整えるところまでが含まれます。会社が従業員の保険料・税金をいったん預かって本人に代わり納める性質のため、正確さが強く求められます。

Q. 給与の手取り額(差引支給額)はどうやって計算しますか?

A. 給与の手取り額は、総支給額から控除額の合計を差し引いて計算します(総支給額 − 控除額 = 差引支給額)。控除額は、健康保険・介護保険・厚生年金・雇用保険の社会保険料と、所得税・住民税を合算した金額です。

本記事の月給30万円・東京都・扶養0人のモデルでは、控除額の合計が約6.5万円で、手取りは235,280円になりました。料率や扶養人数、住民税の通知額を自社の条件に置き換えれば、同じ手順で従業員ごとの手取りを求められます。

Q. 給与計算で1円未満の端数が出たときはどう処理すればよいですか?

A. 給与計算の端数は、行政通達で認められた範囲で処理し、その方法を就業規則などに定めて一貫して運用します。社会保険料の被保険者負担分を給与から控除する場合は、50銭以下は切り捨て・50銭超は切り上げという扱いが一般的に認められています。割増賃金の端数にも通達で認められた丸め方がありますが、従業員が一方的に不利になる独自の処理は認められない点に注意してください。

Q. 給与の締め日と支払日にはどのような関係がありますか?

A. 締め日と支払日は、締め日までの勤怠を集計し、その後の支払日に給与を支払うという前後関係にあります(例:月末締め・翌月25日払い)。締め日から支払日までが短いほど集計・確認にかけられる時間が限られ、ミスが起きやすくなります。賃金は毎月1回以上、一定の期日を定めて支払う必要があるため(労働基準法第24条)、支払日は毎月固定して運用します。

Q. 賞与(ボーナス)や年末調整の計算は、毎月の給与計算と何が違いますか?

A. 賞与や年末調整は、毎月の給与計算とは控除の計算方法や実施するタイミングが異なる、別の計算業務です。賞与の社会保険料は「標準賞与額 × 料率」で計算し、所得税も賞与専用の源泉徴収税額表を使うため、月次の計算式とは異なります。

年末調整は、毎月源泉徴収した所得税の合計と、その年に本来納めるべき所得税額との差額を年末に精算する手続きで、毎月の給与計算とは別に年1回行います。本記事は月次の給与計算に絞って解説しています。

Q. 給与計算で間違いが見つかった場合、どう修正すればよいですか?

A. 給与計算の誤りは、不足していた分は速やかに差額を支払い、過剰に支払っていた分は翌月以降の給与で精算するのが基本です。ただし、過払い分を翌月の給与から差し引く際は、労働基準法第24条の「全額払いの原則」との関係に注意が必要で、控除できる時期・金額には一定の制約があります。金額が大きい場合は、あらかじめ本人の同意を得るなど慎重に対応し、必要に応じて社会保険労務士に相談してください。

出典・参考資料(1件)

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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