従業員の昇給や降給で固定的な賃金が変わると、社会保険の「随時改定」に当たり、管轄の年金事務所へ「被保険者報酬月額変更届(月額変更届)」を提出する必要が生じます。様式はダウンロードしたものの、①被保険者整理番号から⑱備考まで欄が並び、どの欄に何を書けばよいか手が止まった経験はないでしょうか。
とくに「改定年月はいつを書くのか」「給与支給月は計算対象の月か支払った月か」「総計と平均額はどの月を足して割るのか」「備考はどこに○を付けるのか」は、公式の様式を見ただけでは判断に迷いやすいポイントです。ここを誤ると、受け付けた届書が返却され、再提出を求められることもあります。
本記事では、1つのモデルケースで全欄①〜⑱が実際の数値・文字で埋まった記入済みの見本を示したうえで、間違えやすい欄の判断ルール、随時改定の対象になる3つの要件と例外、提出期限・提出先、電子申請のやり方、書き間違い・出し忘れたときの対応までを解説します。最後に、月額変更届の作成・電子申請に対応する給与計算ソフトも紹介します。
解説の対象は、健康保険・厚生年金保険の被保険者について事業主が提出する月額変更届です。加入している健康保険が協会けんぽではなく健康保険組合の場合、健康保険分の提出先が組合になるなど一部の取り扱いが異なるため、組合の案内もあわせて確認してください。
目次
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月額変更届(被保険者報酬月額変更届)の記入例|全欄①〜⑱の記入済み見本
まず、1つのモデルケースを設定し、全欄①〜⑱に実際の値を入れた記入済みの見本を示します。次のケースを前提にします。
- 月給制の従業員が、令和7年4月に基本給の昇給(固定的賃金の変動)があった
- 昇給後の給与を令和7年4月・5月・6月に支払い、3か月とも支払基礎日数は17日以上
- 従前の標準報酬月額は280,000円(厚生年金18等級)、改定後は320,000円(同20等級)で2等級以上の差が生じた
このケースでは、変動後の給与を初めて支払った4月から起算して4か月目の令和7年7月が改定年月になります。各欄の記入は次のとおりです。金額や日数は解説のための設定値で、公式の記入例PDFに載っている数値そのものではありませんが、改定年月の数え方・総計や平均額の算出方法・2等級差の判定は、いずれも日本年金機構が公表する計算ルールに沿っています。
| 月額変更届の記入例(モデルケース) | ①被保険者整理番号 | ②被保険者氏名 | ③生年月日 | ④改定年月 | ⑤従前の標準報酬月額 | ⑥従前改定月 | ⑦昇(降)給 | ⑧遡及支払額 | ⑨給与支給月 | ⑩給与計算の基礎日数 | ⑪通貨によるものの額 | ⑫現物によるものの額 | ⑬合計(⑪+⑫) | ⑭総計 | ⑮平均額 | ⑯修正平均額 | ⑰個人番号[基礎年金番号] | ⑱備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| モデルケースの記入例 | 5 | 健保 太郎 | 7-020401(平成2年4月1日) | 令和7年7月 | 健保280千円/厚年280千円 | 令和6年9月 | 令和7年4月/昇給に○ | (空欄) | 4月・5月・6月 | 30日・31日・30日 | 320,000/321,000/320,000 | 0/0/0 | 320,000/321,000/320,000 | 961,000 | 320,333 | (空欄) | (空欄) | 「4.昇給・降給の理由」に○/基本額の変更 |
| 記入のポイント | 資格取得時の通知書や健康保険証で確認できる番号を記入します | 氏名を記入します | 元号は番号で記入します(5=昭和、7=平成、9=令和) | 変動後の賃金を支払った月から4か月目を記入します(4月昇給→7月) | 現在の標準報酬月額を千円単位で記入します | ⑤が適用された年月(直近の定時決定なら9月)を記入します | 変動のあった月の支払月を記入し、昇給・降給のどちらかに○を付けます | さかのぼって差額を支給した月がある場合のみ記入します | 変動後の給与を初めて支払った月から連続3か月を記入します | 月給者は暦日数、日給・時給者は出勤日数を記入します | 金銭で支払った報酬(基本給・諸手当・残業代など)を月ごとに記入します(例では5月に残業手当が加わり他月より1,000円多い) | 社宅・食事など現物支給があれば換算額を記入します | 各月の⑪と⑫を合計した額です | 支払基礎日数17日以上の月を合計します(本ケースは3か月とも対象) | 総計÷17日以上の月数(961,000÷3)の1円未満を切り捨てます | 遡及支払いなどで平均額を修正する場合のみ記入します | 70歳以上被用者のみ記入します | 該当する理由(1〜6)を選び、昇降給は理由を記入します |
※上記は解説のためのモデルケースです。実際の記入は自社の給与台帳の数値にもとづき、日本年金機構の記入例を確認してください。
このケースでは⑮平均額が320,333円となり、標準報酬月額は320,000円の等級に当たります。従前の280,000円から2等級以上の差が生じているため、随時改定の対象になります。
自社の従前の標準報酬月額は、直近の標準報酬決定通知書や、健康保険・厚生年金保険の保険料額表(等級表)で確認できます。平均額を出したら、その金額が入る区分の標準報酬月額を同じ等級表で探し、従前との等級差を確かめます。等級や対象の判定の詳しい考え方は、次の節以降で解説します。
出典・参考資料(3件)
- 出典:被保険者報酬月額変更届(記入例)|日本年金機構(PDF)
- 出典:【入力例】被保険者報酬月額変更届/70歳以上被用者月額変更届|日本年金機構(https://www.nenkin.go.jp/denshibenri/denshishinsei/e-gov/rei_getsugakuhenkou.html)
- 参考資料:保険料額表(令和2年9月分〜)|日本年金機構(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/ryogaku/ryogakuhyo/20200825.html)
間違えやすい欄の書き方と判断ルール
ここからは、記入で迷いやすい欄を取り上げ、判断の根拠となる公式のルールとあわせて解説します。改定年月・給与支給月・総計・平均額・備考は、取り違えると再提出や保険料の精算につながるため、ひとつずつ確認しておきましょう。
④改定年月は「変動後の賃金を支払った月から4か月目」
改定年月は、固定的賃金の変動後の賃金を初めて支払った月から起算して4か月目を記入します。モデルケースのように4月に昇給後の給与を支払った場合は、4か月目の令和7年7月が改定年月です。日本年金機構も次のように案内しています。
「改定年月」欄(下図赤枠部分)には、固定的賃金の変動後の賃金が支給された月から、4カ月目の年月を記入してください。
出典:被保険者報酬月額変更届の届出不備や誤りの多い事例|日本年金機構
例:固定的賃金の変動後の賃金が令和7年10月に初めて支給された場合、改定年月は令和8年1月になります。
改定年月の記入漏れや誤りは、届書が返却されて再提出が必要になる代表的な不備です。⑨給与支給月に書いた3か月の翌月にあたる年月、と対応づけて確認すると間違いを防げます。

出典・参考資料(1件)
- 出典:被保険者報酬月額変更届…の届出不備や誤りの多い事例|日本年金機構(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/info/jireishokai/henreigetsugakuhenko.html)
⑨給与支給月・⑩給与計算の基礎日数はどう数えるか
⑨給与支給月には、昇給・降給を反映した給与を初めて支給した月から連続する3か月を記入します。起算の基準は「◯月分」という締め月ではなく、実際に支給した月です。たとえば給与を翌月に支払う会社で、4月に決めた昇給を反映した給与を初めて支払うのが5月であれば、起算月は5月、改定年月はその4か月目の8月になります。
⑩給与計算の基礎日数は、月給者は暦日数、日給者・時給者は出勤日数を記入します。日本年金機構の入力例では次のように説明されています。
「給与支給月」:変動後の給与を初めて支払った月から連続する3ヵ月を記入してください。
出典:【入力例】被保険者報酬月額変更届/70歳以上被用者月額変更届|日本年金機構
「給与計算の基礎日数」欄:各月の給与支払いの対象となった日数を入力してください。月給者は暦日数、日給者・時給者は出勤日数を入力してください。
月給者で欠勤控除がある場合は、所定日数から欠勤日数を差し引いた日数を基礎日数とします。基礎日数が17日未満の月があると、その月は次の総計・平均額の計算から外れるため、3か月それぞれの日数を正確に把握しておくことが大切です。
⑭総計は「17日以上の月だけ」、⑮平均額は「1円未満切り捨て」
⑭総計と⑮平均額は、計算の対象にする月と端数処理を誤りやすい欄です。総計は支払基礎日数が17日以上の月だけを合計し、平均額はその総計を17日以上の月数で割って1円未満を切り捨てます。
「総計」欄:支払基礎日数17日以上の月を総計した額を入力してください。
出典:【入力例】被保険者報酬月額変更届/70歳以上被用者月額変更届|日本年金機構
「平均額」欄:総計を支払基礎日数17日以上の月数で割った額の1円未満を切り捨てて入力してください。
モデルケースは3か月とも17日以上なので、3か月の合計961,000円が総計、961,000円÷3=320,333.33…円の1円未満を切り捨てた320,333円が平均額です。仮に1か月だけ基礎日数が17日未満なら、その月を除いた2か月で総計を出し、2で割って平均額を求めます。
⑯修正平均額が必要になるケース
⑯修正平均額は通常は空欄ですが、計算対象の3か月に、さかのぼった昇給分(遡及差額)が含まれている場合に記入します。たとえば過去にさかのぼって昇給が決まり、その差額が対象月に一括で支払われたときは、差額分を除いて計算し直した平均額を修正平均額として記入します。遡及差額があるときは⑧遡及支払額にもその月と金額を記入します。
⑱備考欄の選び方
⑱備考欄は、該当する理由を選んで○を付けます。選択肢は次のとおりで、基本給の昇給が理由のモデルケースでは「4.昇給・降給の理由」を選び、理由として「基本額の変更」などを記入します。
1.70歳以上被用者月額変更 2.二以上勤務 3.短時間労働者(特定適用事業所等) 4.昇給・降給の理由(基本額の変更/70歳到達時の契約変更等) 5.健康保険のみ月額変更 6.その他
出典:被保険者報酬月額変更届(記入例)|日本年金機構
70歳以上の被用者や、2か所以上の事業所に勤務する人、短時間労働者が対象のときは、該当する番号にも○を付けます。短時間労働者の場合は、後述する支払基礎日数の要件が11日に変わる点ともあわせて確認します。
出典・参考資料(1件)
- 出典:被保険者報酬月額変更届(記入例)|日本年金機構(PDF)
役員報酬が変わったときの書き方
役員報酬も、毎月決まって支払われる固定的な賃金に当たるため、改定によって2等級以上の差が生じ、3か月の支払基礎日数の要件を満たせば随時改定の対象になります。記入の流れは従業員と同じで、役員報酬を改定して初めて支払った月から3か月分の報酬を⑨〜⑮に記入し、4か月目を④改定年月とします。
役員報酬は月額が一定で支払基礎日数が暦日数となることが多いため、基礎日数の要件は満たしやすい傾向があります。一方で、改定の決議日ではなく、実際に改定後の報酬を支払った月を起点に数える点には注意が必要です。
そもそも随時改定(月額変更届)の対象か—3要件と例外
記入の前に、自社のケースが本当に随時改定に当たるかを確認しておきましょう。要件を満たさない場合は月額変更届の提出は不要です。
随時改定とは(定時決定との違い)
随時改定は、昇給や降給などで報酬が大きく変わったときに、次の定時決定を待たずに標準報酬月額を見直す手続きです。標準報酬月額は、健康保険料・厚生年金保険料や将来の年金額の計算の基礎になる金額で、毎年7月の定時決定(算定基礎届)で1年分を決めます。年の途中で報酬が大幅に変わった場合に、実態に合わせて改定するのが随時改定であり、そのために提出するのが月額変更届です。
随時改定の3つの要件
随時改定は、次の3つの要件をすべて満たしたときに行います。
随時改定は、次の(1)から(3)の要件にすべて該当した場合に行います。
出典:随時改定(月額変更届)|日本年金機構
(1)昇給または降給等により固定的賃金に変動があった
(2)変動月以後引き続く3カ月の報酬の平均額により算出した標準報酬月額と従前の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた
(3)変動月以後引き続く3カ月の報酬の支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である
(1)の固定的賃金とは、基本給や役職手当・住宅手当など、毎月決まって同じ額で支払われる賃金です。残業代のように月によって変わる非固定的賃金だけが増減しても、随時改定の対象にはなりません。(3)の支払基礎日数は3か月すべてで満たす必要があり、1か月でも17日(短時間労働者は11日)に届かない月があれば対象外です。

出典・参考資料(1件)
- 出典:随時改定(月額変更届)|日本年金機構(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20150515-02.html)
1等級差でも対象になる例外
原則は2等級以上の差が必要ですが、標準報酬月額の上限または下限にわたる等級変更の場合に限り、1等級差でも随時改定の対象になります。日本年金機構は次のように示しています。
随時改定は、固定的賃金の変動月以後引き続く3カ月の報酬の平均額により算出した標準報酬月額と従前の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じることが要件の1つですが、標準報酬月額の上限または下限にわたる等級変更の場合は、1等級差でも随時改定の対象となります。
出典:随時改定(月額変更届)|日本年金機構
これは等級表の最上位・最下位付近で、本来なら2等級動くはずの変動が表の端で1等級分しか動けないケースを救済するための例外です。上限・下限にかからない通常の等級帯では、あくまで2等級以上の差が必要である点は変わりません。
提出が不要なケース
3つの要件のいずれかを満たさない場合は、月額変更届の提出は不要です。とくに固定的賃金と非固定的賃金が逆方向に動いたケースは対象外になります。
次の場合は、随時改定の対象とはなりません。固定的賃金は上がったが、残業手当等の非固定的賃金が減ったため、変動月以後引き続く3カ月の報酬の平均額により算出した標準報酬月額が従前より下がり、2等級以上の差が生じた場合。固定的賃金は下がったが、非固定的賃金が増加したため、変動月以後引き続く3カ月の報酬の平均額により算出した標準報酬月額が従前より上がり、2等級以上の差が生じた場合。
出典:随時改定(月額変更届)|日本年金機構
また、休職による休職給を受けた場合は固定的賃金の変動に該当しないため、随時改定の対象になりません。固定的賃金の変動がそもそも無いときも(1)を満たさず対象外です。
月額変更届の提出期限・提出先
提出期限は「いつまで」と日数で定められてはおらず、該当する被保険者が出たら速やかに提出します。提出先は事務センターまたは管轄の年金事務所です。
事業主が随時改定に該当する被保険者の報酬月額等を「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額変更届/厚生年金保険 70歳以上被用者月額変更届」に記入し、速やかに日本年金機構へ提出します。
出典:随時改定(月額変更届)|日本年金機構
提出時期 速やかに 提出先 事務センターまたは管轄の年金事務所 提出方法 電子申請、郵送、窓口持参
この「速やかに」という取り扱いは、健康保険法施行規則にも定められています。
健康保険法施行規則第26条は、報酬月額の変更の届出について「速やかに、様式第五号による健康保険被保険者報酬月額変更届を機構又は健康保険組合に提出することによって行うものとする」と定めています。健康保険組合に加入している場合は、健康保険分の提出先が組合になる点も、この条文から読み取れます。
月額変更届の添付書類は原則不要です。ただし、遅れて提出すると後述のとおり保険料の遡及精算の負担が大きくなるため、要件を確認できしだい提出します。
出典・参考資料(2件)
- 出典:随時改定(月額変更届)|日本年金機構(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20150515-02.html)
- 出典:健康保険法施行規則 第二十六条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/325M50000100036)
電子申請の提出方法と義務化の対象(e-Gov・届書作成プログラム)
月額変更届は、電子申請・郵送・窓口持参のいずれでも提出できます。電子申請の主な方法は、政府の電子申請窓口「e-Gov」を使う方法と、日本年金機構が無料で提供する「届書作成プログラム」で届書データを作成して提出する方法です。給与計算ソフトや労務管理ソフトのAPI連携から直接申請できる製品もあります。
e-Govで申請する場合は、GビズIDまたは電子証明書で認証したうえで、画面の入力フォームや、届書作成プログラムで作成した届書データを送信します。届書作成プログラムは、CSVなどの届書データをまとめて作成・申請できる無料ツールです。
一定の法人は電子申請が義務化されています。日本年金機構は2020年(令和2年)4月からの義務化について、対象の法人と手続きを次のように案内しています。
2020年4月から特定の法人※について電子申請の義務化が始まっています。
出典:2020年4月から特定の法人について電子申請の義務化が始まっています|日本年金機構
※特定の法人とは ○資本金、出資金または銀行等保有株式取得機構に納付する拠出金の額が1億円を超える法人 ○相互会社 ○投資法人 ○特定目的会社
義務化対象の手続き ○健康保険・厚生年金保険被保険者 報酬月額算定基礎届 ○健康保険・厚生年金保険被保険者 報酬月額変更届 ○健康保険・厚生年金保険被保険者 賞与支払届
義務化の対象手続きに報酬月額変更届が含まれています。資本金1億円以下などの中小企業は書面での提出も可能ですが、提出のたびの郵送・持参の手間を省けるため、電子申請や届書作成プログラムの活用が広がっています。
出典・参考資料(1件)
- 出典:2020年4月から特定の法人について電子申請の義務化が始まっています|日本年金機構(PDF)
書き間違い・出し忘れたときの対応
提出後に記入の誤りに気づいたときや、提出そのものを忘れていたときの対応も押さえておきましょう。いずれも早めに提出先へ相談することで、被保険者への影響を小さくできます。
書き間違えたときの訂正方法
とくに改定年月の誤記や記入漏れは、受け付けた届書が返却されて再提出が必要になる不備として日本年金機構が注意を促しています。誤りに気づいたら、提出先の年金事務所・事務センター(健康保険組合に提出した分は組合)の案内に従って訂正・再提出し、⑱備考欄に訂正の事由を記載します。
訂正時に、正しい内容を黒、誤った内容を赤で記載するといった書き方を案内されることもあります。ただし様式や記載方法は提出先によって異なる場合があるため、提出先の指示を確認するのが確実です。
出典・参考資料(1件)
- 出典:被保険者報酬月額変更届…の届出不備や誤りの多い事例|日本年金機構(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/info/jireishokai/henreigetsugakuhenko.html)
出し忘れたときの対応
月額変更届を出し忘れると、本来改定されるはずだった標準報酬月額の適用が遅れ、保険料をさかのぼって精算することになります。社会保険料を徴収する権利の消滅時効は2年とされており、気づいた時点から最大で2年分の精算が生じる可能性があります。厚生年金保険法第92条は次のように定めています。
厚生年金保険法第92条(時効)は「保険料その他この法律の規定による徴収金を徴収し、又はその還付を受ける権利は、これらを行使することができる時から二年を経過したとき」に時効によって消滅すると定めています。健康保険料についても同様に2年の時効が定められています。
出し忘れに気づいたら、速やかに管轄の年金事務所へ連絡して提出します。報酬の変動から長期間が経過している場合は、遅延理由書の提出を求められることがあるため、提出先の案内に従って対応します。
出典・参考資料(1件)
- 出典:厚生年金保険法 第九十二条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115)
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月額変更届の作成・電子申請に対応する給与計算ソフト
ここまで見てきたとおり、月額変更届は、随時改定に当たるかの判定(固定的賃金の変動・2等級以上の差・支払基礎日数の要件)と、総計・平均額の計算、改定年月の数え方など、手作業では間違えやすい工程が重なります。
給与計算ソフトの中には、毎月の給与データから月額変更届そのものを作成(PDF出力や帳票出力)し、電子申請まで行えるものがあります。製品によっては、固定的賃金の変動や2等級以上の差といった随時改定の対象者の判定まで自動化できます。手書きや転記、端数処理のミスを減らしたい場合は、こうしたソフトの活用が選択肢になります。
以下では、月額変更届の作成・電子申請に対応する給与計算ソフトを紹介します。対応できる範囲は製品によって異なります。
以下はご紹介した給与計算ソフトの比較表です。
| 月額変更届の作成・電子申請に対応する給与計算ソフトの比較 | 弥生給与 Next | 給与奉行クラウド | PROSRV | SMILE V 2nd Edition 人事給与 |
|---|---|---|---|---|
| 提供形態 | クラウド型 | クラウド型 | クラウド型(BPO併用可) | オンプレミス/クラウド |
| 随時改定の対象者判定 | ●固定的賃金の変動・2等級差などから自動判定 | — | — | — |
| 月額変更届の作成・出力 | ●随時改定手続きからPDF作成(ベーシックライト以上) | ●社会保険関連書類として作成 | ●人事給与システムで作成 | ●帳票出力(日本法令A4様式・70歳以上対応) |
| 電子申請(e-Gov・マイナポータルAPI等) | △ベーシック以上で対応(ベーシックライトは電子申請不可) | ●社会保険関連11種を電子申請 | ●マイナポータルAPIで5帳票を電子申請 | ●e-Gov・マイナポータルAPI対応 |
| 提供会社 | 弥生株式会社 | 株式会社オービックビジネスコンサルタント | 三菱総研DCS株式会社 | 株式会社OSK(大塚商会グループ) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る |
1. 弥生給与 Next(弥生株式会社)

弥生給与 Nextは、弥生株式会社が提供するクラウド型の給与計算サービスです。給与・賞与計算や年末調整に加え、随時改定の手続きから月額変更届を作成し、PDFファイルでダウンロードできます。
随時改定の手続きでは、固定的賃金の変動があったか、対象期間の支払基礎日数が17日(短時間労働者は11日)以上あるか、標準報酬月額の差が2等級以上か、固定的賃金の変動方向と報酬月額の差の方向が一致するか、といった条件をもとに対象者を判定したうえで月額変更届を作成できます。
月額変更届などの社会保険関連の手続きに対応するのは、ベーシックライト(2026年10月時点で月あたり3,000円から、税抜・年契約時)以上のプランです。初期費用は0円で、最大2か月の無料体験も用意されています。
2. 給与奉行クラウド(株式会社オービックビジネスコンサルタント)

OBC(株式会社オービックビジネスコンサルタント)の給与奉行クラウドは、賞与支払届・算定基礎届・月額変更届などの社会保険関連書類の電子申請に対応するクラウド型の給与計算システムです。給与・賞与計算や年末調整の機能も備えています。
社会保険・労働保険の電子申請は、月額変更届のほか資格取得届・資格喪失届・労働保険申告書など11種類に対応します。健康保険・厚生年金・雇用保険などの社会保険料は、保険料率の改定を含めて自動計算されます。従業員規模に応じた複数のプランが用意されています。
3. PROSRV(三菱総研DCS株式会社)

PROSRV(プロサーブ)は、三菱総研DCSが提供する人事給与システムとアウトソーシングを組み合わせたサービスです。クラウド型人事給与システム「PROSRV on Cloud」から、マイナポータルAPI連携により、算定基礎届・月額変更届・賞与支払届・資格取得届・資格喪失届の5つの帳票を電子申請できます(2021年9月発表)。
システムのみの利用から、年末調整や月次の社会保険事務などを委託するアウトソーシングまで、検討段階に応じて委託範囲を選べる設計です。公式サイトによると導入社数は約2,000社、給与処理人数は月間55万人としています。
4. SMILE V 2nd Edition 人事給与(株式会社OSK/大塚商会グループ)

SMILE V 2nd Editionは、株式会社OSK(大塚商会グループ)が提供する統合基幹業務システムで、販売管理・会計・人事給与などのモジュールで構成されます。人事給与モジュールでは、算定基礎届・月額変更届を日本法令製のA4様式で出力でき、70歳以上被用者の様式にも対応しています。
電子申請は、算定基礎届・月額変更届のデータを出力してe-Govの電子申請アプリケーションや届書作成プログラムで申請する方法のほか、マイナポータルAPI連携により人事給与システムから直接申請する方法に対応しています。
一方、固定的賃金の変動にもとづく随時改定の該当判定や届書の自動作成の仕様は、公式ページでは明示されていないため、対応状況は提供元に確認することをおすすめします。
ここで紹介したのは月額変更届への対応が特徴の4サービスですが、給与計算ソフトを機能・料金・提供形態まで幅広く比較して自社に合う1台を選びたい場合は、以下の記事で選び方とあわせて解説しています。
まとめ
月額変更届は、随時改定に当たるかを3つの要件(固定的賃金の変動・2等級以上の差・3か月すべて支払基礎日数17日以上)で判定したうえで、全欄①〜⑱を記入して速やかに提出します。改定年月は変動後の賃金を支払った月から4か月目、総計は支払基礎日数17日以上の月だけを合計し、平均額は1円未満を切り捨てる、といった公式のルールを押さえておくと、再提出につながる誤りを防げます。
電子申請は一定の法人で義務化されており、中小企業でもe-Govや届書作成プログラムで手続きを電子化できます。毎回の対象判定や記入の手間を減らしたい場合は、随時改定の判定から月額変更届の作成・電子申請までを担える給与計算ソフトの導入も検討してみてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 月額変更届(被保険者報酬月額変更届)とは何ですか?
A. 月額変更届は、昇給・降給で固定的賃金が大きく変わったときに、健康保険・厚生年金保険の標準報酬月額を年の途中で見直す「随時改定」のために事業主が提出する書類です(正式名称は被保険者報酬月額変更届)。
毎年7月の定時決定(算定基礎届)を待たずに、実態に合わせて保険料の計算基礎を改定するための手続きです。随時改定の3つの要件を満たしたときに、管轄の年金事務所または事務センター(健康保険組合に加入している場合は組合にも)へ提出します。
Q. 月額変更届を出すと、保険料はいつから新しい金額になりますか?
A. 改定後の標準報酬月額にもとづく保険料は、改定年月(変動後の賃金を支払った月から4か月目)の分から適用されます。たとえば令和7年4月に昇給後の給与を支払ったケースでは、令和7年7月分の保険料から新しい標準報酬月額で計算されます。実際に給与から控除する額が変わるタイミングは、会社が保険料を当月控除・翌月控除のどちらで運用しているかによって異なります。
出典・参考資料(1件)
- 出典:随時改定(月額変更届)|日本年金機構(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20150515-02.html)
Q. 定時決定(算定基礎届)と随時改定が重なるときはどうなりますか?
A. 7月・8月・9月のいずれかの月に随時改定に該当する場合は、随時改定で決定された標準報酬月額が優先されます。4月昇給で7月改定となるケースのように、7月改定の月額変更届を提出する人は、その年の定時決定(算定基礎届)の提出は不要です。
8月・9月に随時改定が予定されている人は、事業主の申し出により算定基礎届の提出を省略できます(紙の様式では報酬月額欄を空欄にし、備考欄の「月額変更予定」に○を付けます)。予定どおり随時改定に該当しないことが判明した場合は、算定基礎届を速やかに提出します。
出典・参考資料(2件)
- 出典:定時決定(算定基礎届)|日本年金機構(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20121017.html)
- 出典:算定基礎届と月額変更届(7月・8月・9月改定分)では、どちらの標準報酬月額が優先されますか。|日本年金機構(https://www.nenkin.go.jp/section/faq/kounen/hyoujunhoushu/hyoujyunhousyuu05.html)
Q. 月額変更届に添付書類は必要ですか?
A. 月額変更届の提出に、添付書類は原則として必要ありません。届書に記入した内容だけで提出できます。ただし、さかのぼった昇給(遡及支払)がある場合など、年金事務所から内容の確認を求められるケースもあるため、提出先の案内に従って対応してください。
Q. パートや短時間労働者も月額変更届の対象になりますか?
A. 健康保険・厚生年金保険の被保険者であれば、パートや短時間労働者も随時改定(月額変更届)の対象になります。ただし支払基礎日数の要件が異なり、特定適用事業所に勤務する短時間労働者は3か月とも11日以上、それ以外は17日以上を満たす必要があります。固定的賃金の変動があり、2等級以上の差が生じるという要件は一般の従業員と共通です。
Q. 月額変更届の作成や随時改定の判定は給与計算ソフトで自動化できますか?
A. 給与計算ソフトの中には、毎月の給与データから随時改定の対象者を自動判定し、月額変更届の作成(PDF・帳票出力)や電子申請まで行えるものがあります。固定的賃金の変動・2等級以上の差・支払基礎日数といった要件の判定や、総計・平均額の計算、改定年月の数え方など、手作業では間違えやすい工程を自動化でき、手書きや転記のミスを減らせます。
対応範囲はサービスによって異なるため、自社の運用に合うかを資料で確認してください。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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