キャビネットにたまっていく紙の契約書を、いつまで残して、いつから捨ててよいのか。取引件数が増えるほど保管スペースは圧迫され、電子帳簿保存法(電帳法)への対応や電子契約への切り替えをきっかけに、あらためて保管のルールを確かめたい場面は少なくありません。
実は、契約書そのものに「原本を保管しなさい」という一本の法律があるわけではありません。会社法や法人税法などが、それぞれの目的で一定期間の保存を義務づけており、契約書はその対象に含まれます。さらに「原本」という言葉の裏には、紙をスキャンしたPDFで原本を捨ててよいのか、という切実な疑問もあります。
本記事では、契約書の原本の保管義務の有無と根拠法ごとの保存期間を、条文とあわせて一覧で整理します。そのうえで、紙をスキャンして原本を廃棄してよいかを「税務上の保存要件」と「民事訴訟での証拠力」の2つの軸で切り分けて解説します。電子契約での原本の扱いや2024年以降の電子取引データの保存、保管・廃棄の方法、紛失時のリスクまで取り上げます。
目次
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契約書の原本に保管義務はあるのか
結論から言うと、「契約書の原本を保管しなさい」という単独の法律はありません。実際には、会社法・法人税法などの複数の法律が、それぞれの目的から一定期間の保存を義務づけており、契約書はその保存対象に含まれます。ここで義務づけられているのは「一定期間、保存すること」であって、「紙の原本でなければならない」という媒体の指定ではない点がポイントです。
たとえば会社法は、株式会社に対して会計帳簿と「その事業に関する重要な資料」の10年間の保存を求めています。
株式会社は、会計帳簿の閉鎖の時から十年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない。
出典:会社法 第四百三十二条|e-Gov法令検索
ただし、会社法の条文が契約書を名指ししているわけではなく、契約書はこの「事業に関する重要な資料」に含まれ得ると実務上は一般に解されています。一方、法人税法では、取引に関して作成・受領した書類を原則7年間保存するよう求めており、国税庁はこの書類の例として契約書・領収書を明記しています。このように契約書は、会社法と法人税法の両方の保存対象になり得ます。
「どちらに従えばよいのか」と迷うところですが、考え方はシンプルで、複数の法律が異なる年数を求める場合は、長い方の期間に合わせて保存しておけばどの要件も満たせます。契約書の場合に結局何年残せばよいかは、根拠法ごとの保存期間を次章の一覧で確認したうえで整理します。
根拠法・書類の種類別の保存期間一覧
契約書に関わる保存期間は、根拠となる法律や書類の種類によって変わります。自社のケースを確認できるよう、根拠条文とあわせて一覧にまとめました。
| 対象・根拠法 | 契約書・領収書など取引に関して作成・受領した書類(法人) | 会計帳簿・事業に関する重要な資料(株式会社) | 帳簿・書類(個人事業主) | 労働者名簿・賃金台帳・雇用に関する重要書類 | 産業廃棄物処理委託契約書 | 請負契約の内容を記載した帳簿・その添付書類(契約書の写し等を含む)/営業に関する図書 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 根拠法 | 法人税法 | 会社法 | 所得税法 | 労働基準法 | 廃棄物処理法 | 建設業法 |
| 保存期間 | 原則7年(欠損金の繰越控除を受ける事業年度は10年) | 10年 | 書類は原則5年・帳簿は7年 | 5年(経過措置により当分の間3年) | 契約終了日から5年 | 帳簿・添付書類5年(住宅を新築する工事は10年)/営業に関する図書10年 |
| 根拠条文 | 法人税法126条・施行規則59条(10年は施行規則26条の3) | 会社法432条2項 | 所得税法施行規則63条ほか | 労働基準法109条・附則143条 | 廃棄物処理法施行規則8条の4の3 | 建設業法40条の3 |
※2026年10月時点の各法令にもとづく。建設業法は請負契約書そのものではなく帳簿・添付書類・営業に関する図書が保存対象。
法人税法上の「書類」に契約書が含まれることは、国税庁のタックスアンサー「No.5930 帳簿書類等の保存期間」で明記されています。
法人は、帳簿(注1)を備え付けてその取引を記録するとともに、その帳簿と取引等に関して作成または受領した書類(注2)を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間(注3)保存しなければなりません。
出典:No.5930 帳簿書類等の保存期間|国税庁
(注2)「書類」には、例えば棚卸表、貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書などがあります。
労働基準法が定める労働関係の重要書類の保存期間は、2020年の改正で3年から5年に延長されましたが、経過措置として「当分の間は3年」とされています。「5年」と「3年」のどちらの記載も見かけるのはこのためで、現行は5年・経過措置で当分の間3年、と押さえておくのが正確です。
出典・参考資料(4件)
結局、自社の契約書は何年保管すればよいか
法人税法の7年と会社法の10年のどちらに合わせるかで迷う場合は、長い方の10年を目安に保存しておくのが安全です。契約書は法人税法上「原則7年」の書類に当たりますが、青色申告法人が欠損金の繰越控除を受ける事業年度については、税務上も10年間の保存が必要になります。
加えて、株式会社では会社法第432条第2項の「事業に関する重要な資料」に契約書が含まれ得ると一般に解されています(条文が契約書を名指ししているわけではなく、実務上の整理です)。法的な最低ラインは法人税法の7年(欠損金の繰越があれば10年)です。
ただし安全策として長い方の10年に統一しておくと、契約の種類ごとに年数を分けて管理する手間も省け、どの要件も確実に満たせます。
契約書の「原本」とは(謄本・正本・副本・写しとの違い)
「原本」という言葉を正確に押さえておくと、保管や証拠の場面で迷いにくくなります。原本とは、作成者が最初に作成し、署名・押印した文書そのものを指します。紙の契約書では、当事者が署名・押印した現物が原本です。これに対して、原本を複製した文書には、目的に応じて次のような呼び名があります。
| 文書の種類 | 原本 | 謄本 | 正本 | 副本 | 写し(コピー) |
|---|---|---|---|---|---|
| 意味 | 作成者が署名・押印して最初に作成した文書そのもの | 原本の内容の全部を写した文書 | 権限のある者が原本に基づき作成し、原本と同じ効力を持たせた謄本(判決正本など) | 原本の控えとして作成される同一内容の文書 | 原本をコピー機・スキャンなどで複製したもの |
| 証明力の目安 | 最も高い。契約の成立・内容を直接証明できる | 認証があれば高い(登記事項証明書など) | 原本に準じる | 用途による | 原本より劣る。原本の存在・内容を示す補助的な位置づけ |
契約書の2通を当事者がそれぞれ保管する場合、どちらも署名・押印された原本です。一方、一方が原本を保管し、もう一方はコピーを持つという取り決めもあります。この場合、コピー側は写しとなり、証明力は原本に劣ります。自社がどちらを保管するかは、契約書の末尾(後文)に記載されていることが多いため、確認しておくと安心です。
契約書の原本の提出・証明が必要になるケース
原本が重要になる典型的な場面は、裁判での証拠提出です。民事訴訟では、文書を証拠として提出する際に、原本によることが原則とされています。また、税務調査で取引の裏づけを求められたときや、金融機関・取引先に契約内容を証明する必要が生じたときにも、原本の提示が求められることがあります。
こうした場面に備えるため、重要な契約書は原本を確実に保管しておくことが基本です。原本をどのように扱えるかは、次章のスキャン・電子化の可否にも関わってきます。
紙の契約書をスキャンしたら原本を捨ててよいか
紙の契約書をスキャンしてPDFにしたら、紙の原本を捨ててよいのか——これは多くの担当者が迷う点です。結論は、「税務上の保存要件」と「民事訴訟での証拠力」という2つの軸で分けて考える必要があります。この2つは別の問題で、片方だけを見て「捨ててよい」「捨ててはいけない」と判断すると誤ります。
| 観点 | 税務上の保存(電子帳簿保存法) | 民事訴訟での証拠力 |
|---|---|---|
| 紙原本を捨ててよいか | 要件を満たすスキャナ保存を行えば、同等確認のうえ紙の原本を即時に廃棄できる | スキャンした写しは原本に比べ証拠力が劣り得る。重要な契約は紙原本を残す判断もある |
| 根拠 | 電子帳簿保存法4条3項/国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」問3 | 民事訴訟規則143条(提出は原本・正本・認証謄本による) |
税務上は電帳法スキャナ保存の要件を満たせば紙を廃棄できる
税務上の保存については、電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件を満たせば、スキャン後の紙の原本を廃棄できます。契約書は資金や物の流れに直結する「重要書類」に区分されます。
スキャナ保存の要件としては、解像度200dpi相当以上・カラー256階調以上での読み取りに加え、入力期間内のタイムスタンプの付与や訂正・削除の履歴が残るシステムでの保存(真実性の確保)が必要です。さらに、日付・金額・取引先での検索(可視性の確保)も求められます。
2021年度(令和3年度)の税制改正で、スキャナ保存に必要だった定期的な検査(適正事務処理要件)が廃止され、原本廃棄のハードルは下がりました。国税庁は次のように説明しています。
令和3年度の税制改正において、適正事務処理要件(旧規則第3条第5項第4号……)の規定が廃止され、令和4年1月1日以後に保存を行う国税関係書類については、定期的な検査を行う必要がなくなりました。そのため、スキャナで読み取り、折れ曲がり等がないか等の同等確認を行った後であれば、国税関係書類の書面(紙)は即時に廃棄することとして差し支えありません。
出典:電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】(令和7年6月)問3|国税庁
紙を廃棄できるのは、あくまで要件を満たすスキャナ保存を行った場合です。解像度や検索などの要件を満たさないまま原本を捨てると、保存義務を満たさないことになるため注意してください。
出典・参考資料(2件)
スキャナ保存の要件は、解像度やタイムスタンプ、訂正・削除履歴、検索要件などが細かく定められており、どれか一つでも欠けると原本を廃棄できません。要件の一覧と、紙の原本を廃棄してよい条件を手順に沿って確認したい場合は、次の記事で詳しく整理しています。
電子帳簿保存法のスキャナ保存とは?要件一覧と原本廃棄の条件を解説
紙で受け取った請求書や領収書をスキャンして電子データで保存し、できれば紙の原本は処分したい——そう考えたときにまず確認したいのが、電子帳簿保存法の「スキャナ保存」制度です。スキャナ保存には解像度やタイムスタンプ、検索といった保存要件が定めら…
民事訴訟ではスキャンは「写し」扱いで証拠力が原本に劣り得る
一方、民事訴訟の場面では話が変わります。裁判で文書を証拠として提出する際は、原則として原本によることとされており、スキャンしたPDFは「写し」に当たります。民事訴訟規則第143条は、文書の提出方法を次のように定めています。
文書の提出又は送付は、原本、正本又は認証のある謄本でしなければならない。
出典:民事訴訟規則 第百四十三条|裁判所
2 裁判所は、前項の規定にかかわらず、原本の提出を命じ、又は送付をさせることができる。
スキャンした写しでも証拠として提出できる場合はありますが、相手方が原本の提出を求めたり、裁判所が原本の提出を命じたりすることがあり、写しは原本に比べて証拠としての力(形式的証拠力)が弱くなり得ます。
したがって、税務上はスキャナ保存で紙を廃棄できる場合でも、訴訟リスクの高い重要な契約書は紙の原本を残しておく、という判断も実務ではあり得ます。たとえば不動産取引・M&A・継続的な取引の基本契約など、金額が大きい・期間が長い・紛争になりやすい契約は原本を残し、少額で定型的な契約はスキャナ保存で電子化する、といった使い分けが考えられます。
税務の保存要件と訴訟での証拠力は別の軸である、と理解しておくことが大切です。
電子契約での「原本」と2024年以降の電子取引データの保存
紙ではなく、はじめから電子で締結する電子契約では、原本の考え方が変わります。あわせて、メールやクラウドで受け取った契約書の保存ルールも、2024年(令和6年)以降は電子データでの保存が原則になっています。
契約書を電子で保存するときの電子帳簿保存法のルールは、「紙を自分でスキャンしたのか」「最初から電子で受け取ったのか」という入口の違いで、次の2つの区分に分かれます。

電子契約ではデータそのものが原本になる
電子契約では、電子署名やタイムスタンプが付与された電子データそのものが、契約の原本として扱われます。紙のように「印刷したものが原本」ではなく、印刷した紙はあくまで電子データの写しです。
電子データの信頼性を支えるのが電子署名法です。同法は、本人による電子署名が行われた電子データについて、真正に成立したもの(本人の意思で作成されたもの)と推定する効力を与えています。これは紙の文書で本人の押印があるときに真正な成立が推定される仕組みの、電子版にあたります。
第三条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
出典:電子署名及び認証業務に関する法律 第三条|e-Gov法令検索
電子署名法が与えるのは、電子データが「原本である」という定義ではなく、本人の電子署名があれば真正に成立したと推定するという効力です。この推定が働くことで、電子データが契約の成立を示す証拠として扱えるようになります。
2024年1月以降、電子で受け取った契約書は電子保存が原則
メールやWebサイト、クラウドサービスを通じて電子データで受け取った契約書は、電子帳簿保存法の「電子取引」に当たります。同法第7条は、電子取引で授受した取引情報を電子データのまま保存しなければならないと定めています。
所得税(源泉徴収に係る所得税を除きます。)及び法人税の保存義務者が取引情報(注文書、領収書等に通常記載される事項)を電磁的方式により授受する取引(電子取引)を行った場合には、その取引情報を電磁的記録により保存しなければならないという制度です(法7)。
出典:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和7年6月)問1|国税庁
以前は、電子取引データを紙に印刷して保存することも認められていましたが、この紙出力による保存措置は税制改正で廃止されました。経過措置(宥恕措置)として2023年(令和5年)12月31日までは紙出力での保存が事実上認められていましたが、2024年(令和6年)1月1日以降は、保存要件に従って電子データのまま保存することが原則です。
電子で受け取った契約書を、紙に印刷したものだけ残して電子データを削除する運用は、原則として認められません。
電子取引データの保存義務は、2022年と2024年の改正で段階的に変わってきました。何が・いつから義務になったのか、電子帳簿保存法全体の時系列と対応の要点を押さえておきたい場合は、次の記事で整理しています。
契約書の保管・管理方法
保存期間と原本の扱いを押さえたら、次は実際の保管・管理の方法です。紙のまま保管する場合も、電子化する場合も、保存期間中に必要な契約書をすぐに取り出せる状態にしておくことが基本になります。
紙で保管する場合は、施錠できるキャビネットや書庫で管理し、契約の種類・取引先・締結日で分類しておくと検索しやすくなります。保管スペースが不足する場合は、外部の書類保管サービスに預ける方法もあります。件数が多い企業では、どの契約書がどこにあるかを一覧化した管理台帳を作り、更新期限や解約通知期限もあわせて管理すると、確認漏れを防げます。
紙の契約書を取引先や契約の種類でどう分類し、ファイリングの型や保管ルールをどう決めるかは、次の記事で実務レベルの手順にまとめています。
電子で保管する場合は、前章のとおり、紙をスキャナ保存するか、電子契約・契約管理システムで電子データのまま保管することになります。いずれの場合も、日付・取引先・金額などで検索できる状態にし、保存期間が終わるまで確実に保全することが求められます。契約件数が多いほど、台帳への入力や更新そのものが手作業の負担になりやすいため、後述する契約書管理サービスで自動化する方法もあります。
保管期間を過ぎた契約書の適切な破棄方法
保存期間を満了した契約書は、廃棄してかまいません。契約書には取引先の情報や取引金額などが含まれるため、廃棄の際は内容が読み取れないようにします。紙の場合はシュレッダー処理や、溶解処理サービスの利用が一般的です。溶解処理は、箱のまま回収して溶かすため、機密性を保ったまま大量の書類を処分できます。
実務では、契約書を締結年度ごとにまとめ、保存終了日を明記して管理しておくと、廃棄してよい年度を判断しやすくなります。電子データで保存している場合も、保存期間を満たしたうえで、社内の文書管理規程に沿って削除します。産業廃棄物処理委託契約書のように、個別の法律で保存期間が定められている契約書は、その年数(契約終了日から5年など)を満たしてから廃棄してください。
原本を紛失・破棄したときの実害
契約書を保存しなかったこと自体を直接罰する「罰金」の規定があるわけではありません。ただし、保存が不十分だと、税務と訴訟の両面でさまざまな不利益につながります。
税務の面では、契約書を含む帳簿書類の保存義務全般を満たしていないと、不利益が生じます。たとえば青色申告法人が帳簿書類の保存を定めどおりに行っていないと、青色申告の承認が取り消される対象になります。青色申告の特典(欠損金の繰越控除など)を失うため、影響は小さくありません。
また、帳簿書類が整っていないと、税務署が所得を見積もって課税する推計課税の対象になり得るほか、消費税では帳簿・請求書等を保存していないと仕入税額控除が認められないことがあります。これらの結果として、追徴課税や加算税・延滞税といった負担が生じるおそれがあります。
訴訟の面では、原本を紛失・破棄していると、取引先とトラブルになったときに契約の内容や成立を立証しにくくなります。前章のとおり、民事訴訟では原本による提出が原則で、原本がないと写しや間接的な資料で立証せざるを得ず、不利になることがあります。会社法上も、会計帳簿・計算書類等の作成・記録に関する義務に違反した場合は、過料の対象となり得ます。
原本を紛失した場合は、取引先に再締結や写しの提供を依頼する、締結時のメールや関連資料で取引の事実を補うといった対応が考えられます。ただし、こうした代替手段は確実ではないため、日ごろから原本を確実に保管しておくことが基本です。
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紙の保管負担・電帳法対応・締結後の管理を軽くするサービス
契約書の保存期間や原本の扱いを押さえたら、次に課題になるのが、紙の保管負担と電子帳簿保存法への対応、そして締結後の契約書の管理です。電子契約・契約管理のサービスを使うと、紙の契約書のスキャン・電子保存、電子帳簿保存法に対応した形での保管、更新期限や解約通知期限の管理までをまとめて行え、保管・廃棄の運用を軽くできます。
ここでは、原本の保管負担の軽減や締結後の契約書管理に強みを持つサービスを紹介します。まずは主なサービスの特徴を比較表で整理します。
| サービス名 | クラウドサイン | 法務オートメーション「OLGA」 |
|---|---|---|
| 提供会社 | 弁護士ドットコム株式会社 | GVA TECH株式会社 |
| 紙契約書の取り込み・電子化 | ◎書類インポート+代行スキャン「クラウドサイン SCAN」 | △PDF等のアップロード・AI台帳化に対応(紙の代行スキャンは非提供) |
| 電子帳簿保存法への対応 | ●認定タイムスタンプ標準付与・検索要件に対応 | 公式サイトに明記なし |
| 締結後の契約書台帳 | ●書類情報(契約相手・締結日・終了日など)で一元管理・AI自動入力 | ◎受付・案件情報から管理台帳を自動生成 |
| 更新・解約通知期限のアラート | ●解約通知期限・契約終了日の1か月前に通知(有料プラン) | ●契約更新期限のアラート・期限通知 |
| 契約書の検索 | ●契約書名・会社名・契約期間・金額などで検索 | ●全文検索に対応 |
| 料金の目安 | 月額無料〜(Light 11,000円・Corporate 28,000円、税抜) 送信220円/件(税抜) | 標準プランは要問い合わせ 中小企業向け契約管理プラン 初期10万円・月額1万円〜(税抜) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | オンライン相談を予約 |
※2026年10月時点の各サービス公式サイトの記載にもとづく。料金は税抜。クラウドサインの書類インポート・「クラウドサイン SCAN」はコーポレートプラン以上が対象。OLGAの料金は標準プランが要問い合わせ、中小企業向け契約管理プランは年間契約が条件。
1. クラウドサイン(弁護士ドットコム株式会社)

クラウドサインは、弁護士ドットコム株式会社が提供する電子契約サービスです。書類のアップロード・送信から電子署名・タイムスタンプの付与、締結後の契約書の保管・検索までをオンラインで完結でき、印刷・押印・郵送を不要にします。電子契約で締結した書類は、電子署名と認定タイムスタンプが付いた電子データが原本として扱われます。
紙で締結した既存の契約書も、自社でスキャンしてアップロードする書類インポート機能で取り込め、電子データと同じ台帳で一元管理できます。締結相手の名称・契約締結日・契約終了日・解約通知期限・管理番号など書類情報の項目が用意されており、契約期間や管理番号での検索、解約通知期限などへのアラート設定にも対応します。
電子帳簿保存法への対応では、有料プランで真実性・可視性の確保に沿った運用ができます。
2. 法務オートメーション「OLGA」(GVA TECH株式会社)

GVA TECH株式会社が提供するOLGAは、法務案件の依頼受付から契約書管理、ナレッジ活用までを一元化するクラウド型の法務プラットフォームです。締結後の契約書の管理に強く、受付・案件情報から管理台帳を自動生成し、契約書のバージョン管理や全文検索に対応します。
締結から契約管理、期限通知までを自動化でき、契約更新期限のアラート機能で更新漏れ・解約漏れを防げます。AI契約レビューのモジュールでは、契約書から項目を自動抽出して管理台帳を作成することもできます。Excelの台帳や紙・PDFでの契約書管理から脱却し、締結後の契約書を検索・期限管理まで含めて整理したい企業に向いています。
締結後の契約書管理では、更新や解約の期限をどう管理し、漏れを防ぐかが実務上の課題になります。OLGAを提供するGVA TECHへの取材では、更新管理を自動化した企業の成果について次のように説明がありました。

ある企業様では、法務相談の受付から回答までの工数が40%削減され、月間で数百時間の工数削減につながりました。また、数千件以上の契約更新管理を行っている企業様では、AIによる自動化によって、更新漏れによる不利益な契約更新やタイミングの失念がゼロになったという定量的な成果も出ています。
ここで取り上げた2サービスのほかにも、契約書管理システムは対応する電帳法の区分や紙の取り込み方法、締結後の台帳・期限管理の機能、料金体系が各社で異なります。タイプ別の選び方とあわせて主要サービスを横断で比較したい場合は、次の記事を参考にしてください。
まとめ
契約書の原本には「原本を保管しなさい」という単独の義務はなく、会社法・法人税法などが目的ごとに一定期間の保存を義務づけています。契約書は法人税法上「原則7年(欠損金の繰越があれば10年)」の書類に当たり、株式会社では会社法の「事業に関する重要な資料」にも含まれ得るため、実務では長い方の10年を目安に保存しておくのが安全です。
紙の原本をスキャンして捨ててよいかは、税務上の保存要件(電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件を満たせば廃棄可)と、民事訴訟での証拠力(写しは原本に劣り得る)という2つの軸で分けて判断します。電子で受け取った契約書は、2024年1月以降は電子データのまま保存するのが原則です。
紙の保管負担や電子帳簿保存法への対応、締結後の契約書管理を軽くしたい場合は、電子契約・契約管理のサービスの活用も有効です。本記事で整理した年数と要件をもとに、自社の文書管理規程・保管ルール・廃棄スケジュールを見直してみてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 契約書の原本とは何ですか?
A. 契約書の原本とは、作成者が最初に作成し、当事者が署名・押印した文書そのものです。原本をコピー機やスキャナで複製した写し(コピー)は、契約の成立・内容を直接証明できる力が原本より劣ります。また、電子契約では、電子署名やタイムスタンプが付与された電子データそのものが原本として扱われ、印刷した紙はその写しにあたります。
Q. 契約書の原本に保管義務はありますか?
A. 契約書には、「原本を保管しなさい」という単独の義務はありませんが、会社法・法人税法などが目的ごとに一定期間の保存を義務づけており、契約書はその対象に含まれます。ここで課されているのは一定期間「保存」する義務であって、「紙の原本でなければならない」という媒体の指定ではありません。そのため、所定の要件を満たせば電子データでの保存も認められます。
Q. 契約書は何年保管すればよいですか?
A. 法人の契約書は、実務上は長い方の10年を目安に保存しておくのが安全です。契約書は法人税法上「原則7年(欠損金の繰越控除を受ける事業年度は10年)」の書類に当たり、株式会社では会社法第432条第2項の「事業に関する重要な資料」にも含まれ得るため、10年に統一するとどの要件も確実に満たせます。個人事業主は、所得税法により帳簿・書類を5〜7年保存します。
出典・参考資料(1件)
Q. 契約書をスキャンしたら紙の原本は捨ててよいですか?
A. 契約書をスキャンした後に紙の原本を捨ててよいかは、「税務上の保存要件」と「民事訴訟での証拠力」の2つの軸に分けて判断する必要があります。
税務上は、電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件(解像度200dpi相当以上・カラー、入力期間内のタイムスタンプ付与や訂正・削除履歴の確保、日付・金額・取引先での検索)を満たせば、同等確認のうえ紙の原本を即時に廃棄できます。
一方、民事訴訟では文書は原本による提出が原則で、スキャンした写しは証拠としての力(形式的証拠力)が原本に劣り得ます。したがって、税務上は廃棄できる場合でも、訴訟リスクの高い重要な契約は紙の原本を残しておく、という判断も実務ではあり得ます。
Q. 契約書の原本が1通しかない場合、どちらの当事者が保管すべきですか?
A. 契約書の原本が1通しかない場合は、契約書の末尾(後文)に「どちらが原本を保管し、どちらが写しを持つか」が記載されていれば、その取り決めに従います。記載がなければ、トラブル時のリスクが大きい側が原本を持つか、同一内容の原本を2通作成して各当事者が1通ずつ保管するのが一般的です。
ただし紙の原本を2通作ると収入印紙も2通分必要になるため、印紙が不要で双方が同じ電子データを原本として保持できる電子契約に切り替える方法もあります。
Q. 電子契約で締結した契約書は、印刷した紙とデータのどちらが原本ですか?
A. 電子契約で締結した契約書は、電子署名やタイムスタンプが付与された電子データそのものが原本で、印刷した紙はその写しにあたります。電子署名法第3条は、本人による電子署名が行われた電子データを真正に成立したものと推定する効力を与えており、これにより電子データが契約の成立を示す証拠として扱えます。
また、メールやクラウドで電子データとして受け取った契約書は電子帳簿保存法の「電子取引」に当たり、2024年(令和6年)1月以降は電子データのまま保存するのが原則で、印刷した紙だけを残して電子データを削除する運用は原則認められません。
Q. 契約書はコピー(写し)での保管でも問題ありませんか?
A. 契約書のコピー(写し)での保管は、原本に比べて証明力が劣るため、原則として原本を受け取って保管しておくのが安全です。民事訴訟では文書は原本による提出が原則とされ、税務調査でも原本の提示を求められることがあります。当事者間で「写しを保管する」と取り決めている場合を除き、重要な契約書ほど原本を保管し、保存期間が満了するまで残しておくことをおすすめします。
出典・参考資料(1件)
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

















