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ERP・原価管理システムで原価管理を行う仕組みとメリット|専用システムとの違い・費用まで解説

ERP・原価管理システムで原価管理を行う仕組みとメリット|管理会計システム
管理会計システム比較表(2026年版)のプレビュー

主要16サービスの料金・機能を無料で一覧比較

管理会計システム比較表(2026年版)

製造業や建設業、受託開発など、案件や製品ごとに原価を積み上げる事業では、材料費・労務費・外注費・経費といった費目を集計します。さらに間接費を配賦して、案件別・製品別の採算を把握する作業も欠かせません。しかし、Excelへの転記や複数システムへの二重入力で原価を集計していると、月次の数字が固まるのが遅れ、赤字の案件に気づくのが後手に回りがちです。

こうした課題を解決する手段が、ERP(統合基幹業務システム)や原価管理システムによる原価管理の仕組み化です。本記事では、ERP・原価管理システムで原価管理を行うと具体的に何ができるのか、導入でどのような変化が生まれるのかを整理し、ERP統合型と専用システムの違い、自社に必要な原価計算の考え方までを解説します。

さらに、製造業・建設業・受託開発といった業種別の原価管理の仕組みや、原価の集計・配賦を担う具体的なサービス、費用・導入期間の目安も紹介します。システム化を検討する際の判断材料としてご活用ください。

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ERP・原価管理システムで原価管理を行う仕組み(できること)

ここからは、ERPや原価管理システムで原価管理を行うと、具体的に何ができるのかを解説します。原価管理システムとは、材料費・労務費・経費といった費用を集計し、製品や案件ごとの原価を計算・分析するためのシステムです。ERPの場合は、会計や販売、在庫などの基幹業務と同じ基盤の上で、この原価管理の機能を扱います。

原価計算から連携まで:システムでできる6つの機能

ERP・原価管理システムが原価管理のために備える機能は、おおむね次の6つに整理できます。

  • 原価計算:材料費・労務費・経費のデータを費目別・部門別・製品別(案件別)に集計し、原価を積み上げます。工数の入力データから労務費を自動で計算する製品もあります。
  • 原価差異分析:あらかじめ立てた予算・標準原価と、実際にかかった原価を突き合わせ、差異がどの費目・どの工程で生じたかを把握します。
  • 配賦計算:特定の製品・案件に直接ひもづかない間接費を、工数比率や売上比率などの配賦基準に沿って各製品・案件へ割り当てます。
  • 損益計算:売上から原価を差し引き、製品別・案件別・部門別の損益を算出します。仕掛かり中でも途中段階の採算を確認できる製品もあります。
  • 原価シミュレーション:数量や単価、人員計画などの前提を変えて、原価や採算がどう変化するかを試算します。見積もりや受注判断の材料に使えます。
  • 会計・販売・在庫との連携:会計システムの仕訳や販売管理の受注データ、在庫データを取り込み、原価計算の入力を自動化します。ERPの場合はこれらを同じ基盤の中で一元管理します。

これらの機能は単独で動くのではなく、費用データの集計から配賦、損益の可視化までが一連の流れとしてつながっている点が、表計算ソフトでの管理との大きな違いです。

Excel集計の何が自動・一元化されるか(手作業からシステムへの対応)

原価管理をシステム化すると、これまで手作業で行っていた集計・配賦の多くが自動化・一元化されます。具体的にどの作業がどう変わるかを、表計算ソフトや手集計で管理していた場合と対比して整理します。

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作業原価の集計間接費の配賦月次の原価把握案件・製品別の採算
これまで(Excel・手集計)費目別の数字を各部門からExcelで集め、部門別・製品別に転記して積み上げる配賦基準を手計算し、製品・案件へ按分する月次が締まってから集計するため、数字が固まるのが遅い案件ごとにファイルが分かれ、横断的な採算の比較が難しい
システム導入後費目別から部門別・製品別への集計を同じ基盤で管理し、入力データから自動で積み上げる工数比率や売上比率などの配賦基準を設定し、間接費を自動で配賦する日々の入力が反映され、月の途中でも進行中の原価を確認できる案件別・製品別の損益を同じ基盤でリアルタイムに可視化する

手作業では、集計そのものに時間がかかるうえ、担当者しか中身が分からない属人化も起こりがちです。システム化によって、入力から集計・配賦・損益の可視化までが自動でつながり、月次の数字を早く正確に把握できるようになります。

ERP・原価管理システムを導入するメリット

前章の仕組みは、実務に次のようなメリットをもたらします。いずれも、原価の集計・配賦・可視化が自動でつながることから生まれる効果です。

月次決算・原価把握の早期化です。費用データの集計と配賦が自動化されることで、月次が締まってから原価を集計していた作業が短縮され、経営判断に使える数字を早く得られます。日々の入力が反映される製品では、月の途中でも進行中の原価を確認できます。

案件別・製品別の採算をリアルタイムに把握できる点も挙げられます。案件や製品ごとに原価と売上がひもづくため、赤字に向かっている案件を早い段階で見つけ、値決めや人員配置の見直しといった手を打ちやすくなります。

さらに、二重入力や属人化の解消につながります。会計・販売・勤怠などのデータを取り込んで原価計算に使うため、同じ数字を複数の表に入力し直す手間が減り、特定の担当者しか集計方法を把握していない状態も避けやすくなります。

これらのメリットの現れ方は、ERP統合型と原価管理に特化した専用型とで少し異なります。その違いは、次章で詳しく見ていきます。

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ERP(統合型)と原価管理システム(専用)の違い・使い分け

原価管理のシステム化を検討するとき、最初に迷いやすいのが「基幹業務全体を統合するERPで行うか、原価管理に特化した専用システムで行うか」という選択です。両者は、カバーする業務範囲や既存システムとの関係、導入の重さが異なります。

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観点カバーする業務範囲既存システムとの関係導入の重さ・期間向いている会社
ERP(統合型)会計・販売・購買・在庫・人事などを単一基盤に統合し、原価管理はその一部として扱う基幹システムごと置き換える、または一体で運用する対象業務が広く、設計・データ移行に数か月規模の期間を見込む基幹システムの刷新・統合を同時に進めたい、海外拠点を含め一元管理したい会社
原価管理システム(専用型)原価の集計・配賦・案件別損益に特化し、会計や販売は外部システムと連携する既存の会計・販売システムを残したまま追加しやすい対象範囲が限定され、比較的短期間で導入しやすいまず原価管理の精度と可視化を上げたい、既存システムは変えたくない会社

基幹システムの老朽化や、会計・販売・在庫がばらばらに動いている状態を同時に解消したいなら、統合型のERPが選択肢になります。一方、会計システムはそのまま使い続けたい、まずは原価管理の精度を上げたいという場合は、専用の原価管理システムから始めるほうが導入の負担を抑えられます。自社の優先課題が「全社の統合」か「原価管理の強化」かで、向き不向きが分かれます。

ERPの中には、プロジェクト・案件型ビジネスに特化した「案件型ERP」もあります。販売・購買・勤怠・原価管理を一つにまとめている点は統合型ERPと同じですが、全社の基幹を刷新する大規模な統合型ERPより軽量で、短期間・低コストに導入できる製品もあります。このあと紹介するサービスも、全社を統合する統合型ERP・案件型ERP・原価管理に絞った専用型の3つに分かれます。

原価管理に使えるシステムを3タイプで位置づけた図解。左から、会計・販売・購買・在庫・人事まで全社を統合する統合型ERP、販売・購買・勤怠・原価管理を案件型向けに一つにまとめ統合型より軽量な案件型ERP、原価の集計・配賦・案件別損益に特化し既存システムに追加しやすい原価管理特化型。カバーする業務範囲が広いほど導入は重く、特化するほど軽い。

原価管理の強化を優先し、専用型の原価管理システムを軸に検討する場合は、より多くの製品を見比べておくと候補を絞りやすくなります。次の記事では、原価計算の方式・原価差異をどこまで分解できるか・配賦基準を自社に合わせられるかという3つの観点で、原価管理システム24製品を整理しています。

自社に必要な原価計算の考え方(標準・実際×個別・総合)

システムを選ぶ前に、自社がどのような原価計算を必要とするかを押さえておくと、製品が自社の原価の扱いに合うかを見極めやすくなります。原価計算の考え方は、2つの軸で整理すると分かりやすくなります。1つは「標準原価か、実際原価か」(原価をどう見積もるか)、もう1つは「個別原価計算か、総合原価計算か」(どの生産形態に対応するか)です。

ここで示す定義は、原価計算の統一的な基準として企業会計審議会が定めた「原価計算基準」(1962年〔昭和37年〕設定)にもとづいています。

原価計算を整理する2つの軸を示した図解。軸1は計算目的で、実際にかかった消費量で計算する実際原価と、あるべき消費量を見積もる標準原価に分かれる。軸2は生産形態で、案件ごとに原価を積み上げる個別原価計算と、同種の製品を反復生産し完成品数量で割る総合原価計算に分かれる。

計算目的で分ける:標準原価と実際原価

実際原価は、実際にかかった消費量にもとづいて計算した原価です。原価計算基準は実際原価を「財貨の実際消費量をもって計算した原価」と定めています(第一章 四)。実績をそのまま反映するため、月次の実態把握に用いられます。

一方の標準原価は、あるべき消費量をあらかじめ見積もって計算した原価です。原価計算基準では次のように定義されています。

標準原価とは、財貨の消費量を科学的、統計的調査に基づいて能率の尺度となるように予定し、かつ、予定価格又は正常価格をもって計算した原価をいう。

出典:企業会計審議会「原価計算基準」第一章 四 原価の諸概念(定義文は金融庁 公認会計士・監査審査会 公表資料に引用)

このように原価計算基準は、標準原価と実際原価を、原価をどの消費量で計算するか(実際の消費量か、科学的・統計的に予定した消費量か)という算定方法で区別しています。標準原価と実際原価の違いは、原価をどう見積もるか(計算の目的)という観点で捉えると、自社の原価管理にどう生かすかが見えてきます。

標準原価のねらいは「能率の尺度」で、あらかじめ決めた原価と実際原価の差異を分析し、無駄やロスを管理する点にあります。特に同じ製品を繰り返し作る製造業では、標準原価による差異分析で原価改善を進めます。一方、案件ごとに内容が異なるプロジェクト型の事業では、立てた予算(実行予算)と実績を比べる予実管理が中心になります。

生産形態で分ける:個別原価計算と総合原価計算

もう1つの軸は、どの生産形態に対応するかです。原価計算基準は、製品別の原価計算を「経営における生産形態の種類別に対応して」区分するとしています(第二章 第四節)。

個別原価計算は、種類の異なる製品を個別に生産する形態に用います。受注生産のように案件ごとに仕様が異なる場合に適しており、製造指図書(案件)ごとに直接費と間接費を集計して原価を算出します。建設や受託開発のように、案件単位で原価を積み上げる事業はこの考え方に近いといえます。

総合原価計算は、同じ種類の製品を反復・連続して生産する形態に用います。一定期間に発生した原価を集計し、完成品の数量で割って単位あたりの原価を求める方法で、同一品目を大量に生産する製造業で使われます。

自社の原価(製造原価・工事原価・案件別のプロジェクト原価)はどの考え方か

この2軸を自社に当てはめると、必要な原価計算の形が見えてきます。同じ製品を大量生産する製造業では、工程ごとに原価を集計する総合原価計算が中心になります。一方、受注生産の機械・設備や、建設の工事、受託開発のプロジェクトのように、案件ごとに内容が異なる事業もあります。こうした事業では、案件単位で原価を積み上げる個別原価計算の考え方が土台になります。

システムを選ぶ際は、自社の原価が製品別・工事別・案件別のどの単位で積み上がるのか、標準原価による差異分析まで必要かを整理しておくと、製品の得意領域と照らし合わせやすくなります。プロジェクト型の事業向けに作られた製品と、製造業の工程別原価に対応した製品では、得意とする原価の扱いが異なるためです。

業種別に見る原価管理の仕組み(製造業・建設業・受託開発)

原価管理の具体的な仕組みは、業種によって重点が異なります。ここでは、案件や製品ごとに原価を積み上げる代表的な3業種について、どのように原価を管理するかを整理します。

製造業・建設業・受託開発の3業種で原価の積み上げ方を比較した図解。製造業は材料費・労務費・経費を工程別・品目別に集計。建設業は工事ごとの個別原価計算で、3費目に外注費が加わる。受託開発・サービス業は原価の大半が人件費で、工数に労務単価を掛けて案件別に積み上げる。

製造業:工程別・品目別の製造原価

製造業では、材料費・労務費・経費を費目ごとに集計し、工程や品目に沿って原価を積み上げます。同じ製品を連続して生産するラインでは総合原価計算で単位原価を求め、受注仕様の異なる機械・装置などでは個別原価計算で製品ごとに原価を算出します。工程間で仕掛品が移動するため、どの工程でどれだけ原価が発生したかを工程別に把握し、材料の歩留まりや作業時間の差異を分析する点が、製造業の原価管理の中心になります。

建設業:工事原価・実行予算と出来高の連動

建設業では、工事(案件)ごとに原価を積み上げる個別原価計算が基本です。工事の財務報告では、完成工事原価を材料費・労務費・外注費・経費に区分して報告します(建設業法施行規則 別記様式第十六号 完成工事原価報告書)。製造業の3つの費目に外注費が加わるのは、工事の多くを協力会社へ発注する建設業の実態を反映したものです。

実務では、工事ごとに実行予算を組み、工事の進み具合(出来高)に応じて原価と売上を計上しながら、予算と実績の差を管理します。長期にわたる工事では、月をまたいで原価が積み上がるため、進行中の工事原価をタイムリーに把握できる仕組みが重視されます。

出典・参考資料(1件)

受託開発・サービス業:案件別のプロジェクト原価

システム開発や広告制作、コンサルティングなどのサービス業では、原価の大半が人件費(労務費)です。案件ごとに担当者の工数を記録し、工数に労務単価を掛けて人件費を算出し、外注費や経費とあわせて案件原価を積み上げます。案件単位で原価を把握する個別原価計算の考え方に沿った管理です。

これらの業種では、工数の入力が原価計算の起点になるため、勤怠や工数管理と原価管理がつながっているかが重要です。間接部門の費用や共通経費を、工数比率などの基準で各案件へ配賦できるかも、案件別採算を正しく把握するうえで確認したい点です。

受託・案件型のビジネスで、工数から案件別の原価や粗利を管理できるシステムを具体的に探したい場合は、プロジェクト収支管理に特化した製品の比較が参考になります。次の記事では、工数から人件費原価が作られる仕組みや会計・販売との連携範囲、料金の観点で20製品を整理しています。

原価管理に使えるERP・原価管理システムの例と費用・導入の目安

ここからは、原価の集計・配賦を担う具体的なサービスを紹介します。これらは、全社を統合する統合型ERP、プロジェクト型に特化した案件型ERP、原価管理に絞った専用型に分かれ、いずれも案件・プロジェクト単位の原価管理に強い製品です。

同じ品目を量産する製造業で工程別・総合原価の計算を主眼にする場合は、生産管理システムや製造業向けERPなど別ジャンルの製品が原価計算を担うことが多く、本記事で紹介する案件別原価中心の製品とは対象が異なります。まず主要なサービスを一覧で比較し、続いて各サービスの特徴を解説します。

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サービス名Oracle NetSuiteクラウドERP ZACマネーフォワード クラウド個別原価プロカンReforma PSAMA-EYES
タイプ統合型ERP
(統合基幹)
案件型ERP原価管理特化型原価管理特化型案件型ERP
(小規模向け)
案件型ERP
対応する原価案件別(プロジェクト)
在庫の原価計算
案件別(プロジェクト)
工事進行基準に対応
案件別(プロジェクト)案件別(プロジェクト)
建設・工事向けも展開
案件別(プロジェクト)案件別(プロジェクト)
工事進行基準に対応
配賦・原価計算の特徴購買発注を案件にひもづけ、直接費・間接費を案件予算に配賦。在庫は先入先出法・後入先出法・平均原価法を選択直接作業は案件に直課、間接作業は部門配下へ再配賦。共通費・販管費も配賦部門・プロジェクトへ間接費を多段階配賦。基準は工数比率・従業員数比率・売上予算比率・面積比率・カスタム工数×労務単価で人件費を原価換算し、間接費を按分して案件原価を算出工数登録を前提に労務費配賦・共通費配賦を計算工数×基準時間単価で労務費を算出。配賦基準は工数・人数・売上高・人件費比率に加え面積なども設定可
料金の目安要問い合わせ
(定価非公開)
初期10万円+月額要問い合わせ
(公式料金ページ)
要問い合わせ
(公式非公開)
初期15万円〜/月額3万円〜
(公式料金ページ)
初期0円/月額3万円〜(税抜)
(公式料金ページ)
要問い合わせ
(提供形態により変動)
詳細情報公式資料を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見る

※上記は2026年10月時点の各社公式サイト等の公開情報にもとづく内容です。料金・機能は変更される場合があるため、最新の詳細は各社の公式情報や資料でご確認ください。

1. Oracle NetSuite(日本オラクル株式会社)

Oracle NetSuiteのウェブサイト

財務会計から販売・購買・在庫管理、CRMまでを単一のクラウド基盤に統合した、統合型ERPです。原価管理の面では、在庫品目の原価計算方法として先入先出法・後入先出法・平均原価法を選べ、ロット単位でのコスト追跡にも対応します。

案件別の原価管理は、追加モジュール「SuiteProjects」のプロジェクト会計で行えます。購買発注を案件にひもづけて直接費・間接費を案件予算に対して配賦し、請求可能・不可のコストを把握できます。会計・販売・在庫と同じ基盤で原価を扱えるため、基幹システムごと統合したい中堅〜大企業や、海外拠点を含めて一元管理したい企業に向きます。

標準原価計算・製造原価計算への対応は公式ページで明示されていないため、これらを重視する場合は個別の確認が必要です。料金は定価非公開で、ベースライセンスに利用ユーザー数とデータ量を組み合わせた年間契約が基本です。

業務ごとにシステムが分かれている状態を一つの基盤に統合するという発想が生まれた背景について、日本オラクルの担当者は次のように説明しています。

福宮氏
日本オラクル株式会社 理事 NetSuite事業統括 営業統括本部長
福宮氏
独自インタビューより

会計は会計のシステム、在庫は在庫のシステム、というように業務ごとにシステムが分かれていると、データが分断されてしまって、経営者が全体を見ようとしてもなかなか正確な数字がつかめません。(中略)そこで、あらゆる業務を一つの基盤で一元管理して、経営者がどこからでもリアルタイムにデータを確認できるようにしたい、という発想からクラウドERPという形にたどり着きました。

2. クラウドERP ZAC(株式会社オロ)

クラウドERP ZACのウェブサイト

株式会社オロが、案件・プロジェクト単位で業務が進む業種(IT・システム開発、広告・クリエイティブ、コンサルティングなど)に向けて提供するクラウドERPで、前述の案件型ERPにあたります。プロジェクト別の収支管理を軸に、販売・購買・勤怠/工数・経費・管理会計を一元化します。

プロジェクト単位で原価を積み上げ、案件損益をリアルタイムに可視化できる点が特徴です。導入実績は1,100社を超え、要件に合わせた設定変更に対応できる点が強みです。公式の比較ページでは、従業員50名以上を対象の目安とし、導入期間は3〜6か月程度としています。価格は初期設定費用10万円からで、月額はモジュールと利用人数に応じた見積もりです。

3. マネーフォワード クラウド個別原価(株式会社マネーフォワード)

マネーフォワード クラウド個別原価のウェブサイト

プロジェクトごとに工数・費用から原価を計算し、間接費を配賦する個別原価管理システムです。IPO準備・中堅〜上場企業向けで、IT・システム開発、SaaS、クリエイティブ、コンサルティングなど、プロジェクト単位で収益・原価を管理する事業を対象としています。

労務費・外注費・経費のデータからプロジェクト別の原価を算出し、会計システムの仕訳帳を取り込んで、部門・プロジェクトへ間接費を多段階で配賦します。配賦基準は、工数比率や従業員数比率のほか、売上予算比率や面積比率など任意に作成できます。マネーフォワード クラウド会計Plusや勤怠システムと連携し、月次決算の早期化につなげられます。料金は要問い合わせです。

4. プロカン(株式会社PROCAN)

プロカンのウェブサイト

案件単位で予算・実績・原価・工数を集約し、収支をリアルタイムに可視化するクラウド型のプロジェクト収支管理システムです。IT・システム開発、イベント・映像制作、広告・PR、デザイン・Web制作、建設・工事の各業種向けに、業種別のラインナップを展開しています。

工数実績を労務単価で人件費に換算し、外注費や間接費とあわせて案件原価を算出します。見積・請求・発注などの帳票管理や、会計ソフト・経費精算システムとの連携にも対応します。中小企業規模を主な対象とし、IT導入補助金の対象ツールにもなっています。公式サイトでは初期費用150,000円〜・月額30,000円〜(いずれも税抜、利用人数により変動。2026年10月時点)と案内されています。

5. Reforma PSA(株式会社オロ)

Reforma PSA(リフォルマ PSA)のウェブサイト

ZACと同じ株式会社オロが、より小規模な企業向けに提供するクラウドERPです。ZACの機能のうち、案件・プロジェクト型ビジネス向けの標準機能に絞ってパッケージ化した製品で、従業員50名以下の中小・成長企業を主な対象としています。

工数の予定と実績を対比しながら、労務費配賦・共通費配賦を行い、実行予算(利益計画)と対比して案件別の損益を仕掛かり中でも把握できます。公式の比較ページでは、初期費用0円・月額30,000円(税抜)から、導入期間は1〜2か月程度とされており、コストを抑えて案件別の原価・採算管理を始めたい企業に向きます。

6. MA-EYES(株式会社ビーブレイクシステムズ)

MA-EYESのウェブサイト

システム開発・SES・受託開発・コンサルティングなど、プロジェクト型ビジネスに特化したクラウド型ERPです。工数・原価をリアルタイムに集約し、部門別・案件別・顧客別など複数の切り口で損益を可視化します。

工数に、メンバーごと(または職位ごと)に設定した基準時間の単価を掛けて労務費を算出します。原価の把握単位は標準ではプロジェクトですが、製品・ジョブ・案件など別の単位にもカスタマイズでき、配賦の設計を自社に合わせやすい点が特徴です。工事進行基準にも対応しています。導入形態はSaaS・一括・SaaS+の3種類から選べます。

費用・導入期間の目安(規模・提供形態による幅と前提)

原価管理に使えるシステムの費用は、提供形態と対象範囲によって幅があります。案件型ERPや原価管理に特化した専用型には、初期費用0〜15万円程度・月額3万円程度から始められる製品があり、導入期間も1〜2か月程度と比較的短めです。

一方、会計・販売・在庫まで統合する統合型ERPは、利用人数やモジュール構成に応じた個別見積もりが基本で、年間ライセンス費用に導入時の初期費用が加わります。対象業務が広いぶん、設計・データ移行を含めて数か月規模の導入期間を見込むのが一般的です。

多くは人数・機能単位の課金で、対応範囲を広げるほど費用が上がるため、まず必要な範囲を絞り、複数社から見積もりを取って比較するのが現実的です。個別の料金は、各サービスの比較表や資料で確認してください。

導入前に押さえたい注意点(費用・期間・自社適合)

導入で失敗を避けるために、あらかじめ確認しておきたい点が3つあります。

1つ目は、費用と導入期間です。とくに統合型ERPは対象業務が広く、ライセンス費用も導入にかかる期間も大きくなりやすいため、必要な機能の範囲を絞って見積もりを取り、投資に見合う効果が見込めるかを確認します。

2つ目は、自社の原価の扱いに合うかです。前章で整理したように、製造業の工程別・総合原価計算と、案件別の個別原価計算では、必要な機能が異なります。プロジェクト型の事業向けに作られた製品が製造原価の計算に対応しているとは限らず、標準原価による差異分析まで必要な場合も対応範囲は製品ごとに異なります。

自社の原価が積み上がる単位(製品別・工事別・案件別)と、必要な計算の種類を整理したうえで、製品の得意領域と照らし合わせることが重要です。

3つ目は、既存システムとの連携です。専用型を選ぶ場合は、既存の会計・販売・勤怠システムと原価データを受け渡せるか、連携方式(API・CSVなど)を確認しておくと、二重入力の発生を防げます。これらの注意点は、資料請求やデモで具体的に確かめておくと安心です。

ここで取り上げたのは原価管理に使えるERP・原価管理システムですが、原価管理は管理会計の一領域です。予実管理や部門別損益も含めて、管理会計システム全体を目的・規模別に見比べたい場合は、次の記事で選び方とタイプ別の違いを解説しています。

まとめ

ERP・原価管理システムで原価管理を行うと、費用の集計から配賦、損益の可視化までが一連の流れとして自動化され、Excelや手集計で生じていた月次の遅れや属人化を解消できます。

導入にあたっては、会計・販売・在庫まで統合するERPと、原価管理に特化した専用型のどちらが自社の課題に合うかをまず見極め、さらに自社の原価が「製品別・工事別・案件別」のどの単位で積み上がり、標準原価による差異分析まで必要かを整理しておくと、製品選びの軸が定まります。

本記事で整理した仕組み・メリット・原価計算の考え方は、情報システム部門や経営層に導入を説明する際の資料としても活用できます。具体的な機能や料金は各サービスの資料で比較できるため、自社の原価管理に合う候補を絞り込む材料としてご利用ください。

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よくある質問(FAQ)

Q. ERPの原価管理とは何ですか?

A. ERPの原価管理とは、会計・販売・在庫などの基幹業務と同じ基盤の上で、材料費・労務費・経費を集計し、製品や案件ごとの原価を計算・配賦・分析する仕組みです。ERPは原価計算に必要な販売・在庫・工数などのデータを内包しているため、これらを取り込んで集計を自動化できます。

Excelや会計ソフトを行き来していた手作業を一元化でき、原価管理に特化した専用システムでも同じ機能を扱えます。ただしERPの場合は、全社の基幹データと同じ基盤で原価を管理できる点が特徴です。

Q. ERP・原価管理システムで原価管理を行うと、どんなメリットがありますか?

A. 主なメリットは、月次決算・原価把握の早期化、案件別・製品別採算のリアルタイムな把握、二重入力や属人化の解消の3点です。費用データの集計と配賦が自動でつながるため、月次が締まるのを待たずに原価を把握でき、赤字に向かう案件を早い段階で見つけられます。会計・販売・勤怠のデータを取り込むため、同じ数字を複数の表に入力し直す手間も減り、特定の担当者しか集計方法を把握していない状態も避けやすくなります。

Q. ERP統合型と原価管理システム(専用型)は、どちらを選べばよいですか?

A. 会計・販売・在庫を含む基幹システムをまとめて刷新・統合したいならERP統合型、既存の会計・販売システムを残して原価管理の精度と可視化を高めたいなら専用型が向いています。ERP統合型は対象業務が広く、設計・データ移行に数か月規模の期間を見込む一方、全社の数字を一気通貫で見られます。

専用型は対象範囲が限定される分、比較的短期間で導入しやすく、既存システムに追加しやすいのが利点です。自社の優先課題が「全社の統合」か「原価管理の強化」かで判断するとよいでしょう。

Q. 標準原価と実際原価、個別原価計算と総合原価計算は何が違いますか?

A. 標準原価と実際原価は「原価をどう見積もるか」という計算目的の軸、個別原価計算と総合原価計算は「どの生産形態に対応するか」という軸の違いです。実際原価は実際にかかった消費量にもとづく原価、標準原価はあるべき消費量をあらかじめ見積もった原価で、両者の差異を分析して無駄やロスの改善につなげます。

個別原価計算は受注生産のように案件ごとに仕様が異なる場合に、総合原価計算は同じ製品を反復・連続して生産する場合に用います。これらの定義は、企業会計審議会が定めた「原価計算基準」(1962年〔昭和37年〕設定)にもとづきます。

出典・参考資料(1件)

Q. ERP・原価管理システムは、既存の会計システムや販売システムと連携できますか?

A. 多くの原価管理システムは、会計・販売・勤怠システムと連携し、仕訳や受注・工数のデータを取り込んで原価計算に利用できます。これにより、同じ数字を複数のシステムへ二重入力する手間を省けます。

ERP統合型はこれらを同じ基盤で一元管理し、専用型はAPIやCSVなどの連携方式で既存システムとデータを受け渡します。導入前に、自社の会計・販売システムと連携できるか、どの連携方式に対応するかを、資料請求やデモで確認しておくと安心です。

Q. 中小企業でもERP・原価管理システムを導入できますか?

A. 中小企業でも導入できます。初期費用を抑え、月額数万円程度から始められるクラウド型の製品があります。たとえば案件型ビジネス向けの製品には、初期費用0円・月額30,000円(税抜)程度から利用できるものや、IT導入補助金の対象となるものもあります。

まずは原価管理の精度と可視化を高めたいという場合は、会計・販売を含めて統合するERPよりも、対象範囲を絞った専用型から始めるほうが、導入の負担を抑えられます。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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